シナリオ詳細
山賊討伐RTA!
オープニング
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「うわああああお頭! 神使の連中が――ぐあああ!!」
「ち、畜生! 俺たちはただこの辺りを通りがかる連中を襲って身包み剝いで、もののついでに人身売買してただけなのに……どうしてこんな酷いことをしやがる! 俺たちが何をしたっていうんだ――!!」
豊穣。そのとある地域に山賊団がいた。
位置的には東よりの山岳部だろうか――だが彼らは今、神使……つまりイレギュラーズ達により滅亡の憂い目にあっていた。それは彼らが近隣の住民により彼らの殲滅という依頼を請け負ったが為。
小規模な山賊団であったという事もあってか、英雄たるイレギュラーズ達に叶う筈もなく。
また一人、また一人と倒れて――そして。
「はい! これで終わりね――忙しいんだからさっさと倒れてよね!」
長月・イナリ (p3p008096)の撃が山賊の頭目へと。
さすれば当たり所が良かったのか一撃にて頭は昏倒する。碌に抵抗もままならず、山賊団は壊滅して……さすれば生き残りは縛り上げて完全に無力化すればさぁこれで依頼終了――
ではなかった。
「ふぅ。あと四件ぐらいだったかしら……!? も――忙しいったらないわね!」
そう、これは。この山賊団の壊滅はあくまで依頼の一部。
まだ残りの山賊団共がいるのだからと――
イナリは息を整えつつ、依頼書に再度目を通していた。
●
事の発端は少し前。イナリはローレットの依頼掲示板の片隅を眺めていた。
ここに長く通う者であれば今更説明するまでもないが――ローレットには混沌各地にてなにがしかの助けを求める声が集まってくる。それは魔物の被害に困っているからであったり、時には人からは『悪』とみなされる依頼もありと千差万別だ。
昨今では練達より齎されたR.O.O関連の依頼が多いだろうか。
まぁあれは練達上層部からも齎された大規模な調査。そういった情報が多く記されるのも当然である――が。
「なによこれ。五……六、いや七件も溜まっているの?」
その一方でイナリは見つけていた。
とある場所で山賊が出ているから討伐してほしいと――こういう依頼もあるものだ、が、しかし。R.O.Oに多く人員が出向いているためか、それとも偶々一斉に生じたのか分からないが――手付かずの案件が幾つもローレットにあったのだ。
いずれもが小規模の山賊団。故にか、それぞれ一件ずつは少額の報酬。
イレギュラーズ達が出向けば恐らくそう苦労する事はないだろう。
……しかし問題はいずれもが『至急』『重要』『緊急』『要返信』とかいう見出しで、とにかく時間に余裕がないと見受けられる事だ。これを一件一件受けて個別に処理していては恐らく達成する事が出来ない案件もあろう……ていうかこの題名、どれが本当に一番重要なのか分かりづらいよね。
ともあれ、ではどうするか。
「…………うん! じゃあ『全部』行っちゃえばいいわよね!」
瞬間。イナリは依頼書を一度に引っぺがした。
彼女の指先にあるは全ての山賊討伐依頼書――そう! 何も一件ずつ片付けて帰ってまた来るなんて事はしなくて良いのだ!
須らく始末をつければそれでヨシ!
敵は豊穣の山岳部に潜む者共。奴らの拠点の位置はおおよそ割り出せているらしく……「まぁ全部合わせると流石に『ちょっと』数は多いし『ちょっと』距離もあるみたいだけど、イレギュラーズの皆なら大丈夫よね。R.O.Oに行ってない人もいるでしょうし……誘ってみようかしら」
無論複数案件となれば流石に個人ではどうしようもないが、ローレットには多くの仲間もいるのだ。皆が皆練達の電子空間に行っている訳でもあるまい――現実世界の依頼もこなす必要性もあるのであれば、暇してる……もとい手の空いている者と共に行こうかと。
幾つもの山賊団の一斉討伐。
近くに山賊団を狩っている存在がいると気づかれればどこぞへ逃げられる可能性もある故――迅速なる動きも必要だ。情報が各地に出回る前に……そう。一日以内に全てを片す必要性があろう、つまり。
大 急 ぎ で 全 部 狩 る !
奴らは全て弱者を襲う悪魔共。容赦する必要性はなく。
この国の太平の為にも――さぁいざ!
豊穣に蔓延る賊の退治と相成ろう!
- 山賊討伐RTA!完了
- GM名茶零四
- 種別リクエスト
- 難易度-
- 冒険終了日時2021年05月30日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費150RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
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――オーッホッホッホッ!
――長期戦ならばこのわたくし!
――きらめけ! ぼくらの! タント様! に、お任せですわ――!
静かなる山中に高らかな笑い声が響か――ない。
頬に沿うように手を添えながら口だけ動かしているのは『きらめけ!ぼくらの』御天道・タント(p3p006204)様である……! 本来ならいつものように盛大に行う所なのだが、今回は『まだ』そういう訳にはいかない。
「……音が響きますからね。接近がバレては流石に困りますもの……!」
「あちらにこちらにと……山賊たちもよくこれだけ湧くものだな」
タントは心の中だけで宣言するに留めて『Meteora Barista』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)と共に――潰すべき次なる山賊たちのアジトを探すべくの行動を。
残るは四団体。制限時間はあと十二時間。
もしもどこかを手間取れば――逃げられる恐れがある!
「いいじゃない、ローレット最速タイムで山賊達を潰してあげるわ! 一つも逃がさず大掃除ね!」
だが、だからこそ『狐です』長月・イナリ(p3p008096)は燃えるものである。
困難があるからこそ打破した時の喜びもまた大きい――特にこれほどの同時攻撃依頼はローレットでも恐らくそうそうあるまい。複数依頼最速タイム更新のチャンスを狙い、行くのだ!
故にまず狙うのは山中にあるとされる『宇像武像』山賊団のアジトだ。
おおよその位置の情報ある為、イナリは己が情報網を駆使しつつ更に潜伏地域の特定を行っていた――いやそれだけではない。同時に鳥型のファミリアーを二体使役して上空からの索敵もさせるのである。
見るのは特に焚火の跡、だ。
如何に山の中にいるとはいえ、火を全く使っていないとは思えない――必ずどこかに生活の痕跡があるはずだ。そういった要素を考慮すれば、水辺も確認できればなお良し。
「しかし長月殿。このあたりの賊の数は一際多いように思えるでありますが……何か理由でもあるのでありましょうか。そもそもここに至るまでに複数の山賊団を潰してきたばかりでありますが」
同時。『鬼菱ノ姫』希紗良(p3p008628)もまたファミリアーの小鳥で索敵を行いつつ、イナリへと声を掛けるものだ。
豊穣を揺るがす事件が収まってから相応の時間が流れ、皆平和を享受している筈である。いや、百歩譲って魑魅魍魎の類がまだ影に蔓延っている、と言う話なら分かるが……まさか人が人を襲う輩がこれほどいようとは。
「結局――悪心を持つ者はどこにでもいる、って事かしらね。或いは豊穣の動乱があった時代に誕生した連中がまだ残ってた、という事も考えられるわ……」
「……真の平和とはかくも遠きでありますか。太平の世はいずこにあるのか……」
微かな落胆。されど、俯く暇はないのだと――希紗良は前を向く。
ほんの少しずつでも己が刃が平穏を導くのだと信じて、今は山賊らを討滅しよう。
探す。イナリらの探知に山賊らの痕跡を発見し、哨戒の者達を躱して。
少しでも移動をスムーズにするために飛行を兼ねる事が出来る者は地を這うように飛び向かい、そして。
「さぁ――空繰舞台の幕を上げようか」
強襲する。ここからは神速たる事が重要なのだと『零れぬ希望』黒影 鬼灯(p3p007949)の一閃が舞うのだ。彼の指先により操られし気糸が斬撃となりて油断せしめし山賊団へと繰り出される。
「今日は鬼灯くんと一緒! 山賊さんにめっするのだわ! めっー!」
「ああ章殿と共に参加できて嬉しいよ――おいたをする子には、躾をせねばね」
腕に抱く己が伴侶と共に豊穣の為に戦おう――
しかしこの国での依頼ならば喜んで参加するが……なんとまさか複数の依頼を引っ括めてしまうとは。イナリ殿はなかなか豪胆だな。
「嫌いではない、むしろその勢いは好ましい。どのみち山賊と言う存在は害だしな」
「山賊山賊山賊……いやー、悪い奴が沢山居るのは海の向こうでも同じだね!」
敵襲だー! 出会え出会えー! と山賊達が声を張り上げてくるのを見て『森ガール』クルル・クラッセン(p3p009235)は思わず自らの領土を思い起こすものだ。幾度このような輩が来ることか……
「うちの領に被害が及んでも困るし、さくさくーっとやっつけちゃおうっ! これから後もまだまだあるんだしね!」
「さてさて。緑豊かな場所とは聞いておりましたが、その陰にはこのような者もいるのですね」
クルルは至る山賊達へと、絶叫せしマンドレイクを撃ち放ち――直後に『砂漠の蛇』サルヴェナーズ・ザラスシュティ(p3p009720)は周囲の自然を見据えながら敵の渦中へと突き進んだ。
この国、初めて来たが――もう少しばかり治安が良ければ素晴らしいだろうに。
そう思いながら、いや『そう』する為に彼女は往こう。
敵の注意を引き付ける様に飛び込むのだ――『宇像武像』の山賊団は幸いにしてそう戦闘能力が高い者達で構成されていない。彼らに包囲されないようにだけ気を付けておけばそう苦戦はしないもの。
タントの魔力の弾丸を形成し、モカも敵を薙ぎ払うように蹴撃を。
その勢いはとても止めきれるようなものではなく――
「う、うわあああ! なんだこいつらの強さは……まさか、神使か!?」
「どうしましたか。その程度の攻撃では、私を殺すことは出来ませんよ?」
そしてサルヴェナーズはうっかり命を奪う事が無いように気を付けている。
罪を償って更生する機会は与えられるべきだろうから――と、もう一つ。
「ああ。近くの山賊団の居場所を知っていたりなどしますか?」
もしも教えてくれれば罪が軽くなるやもしれぬと。
大蛇の幻影を見せて脅しながら――彼女は言葉を紡ぐ。
もしも答えぬならば。
この牙が現実になるやもしれぬと、彼女の瞳は恐怖せし山賊へと物語って。
「レギュレーションは、any……? 100%……? 練達では、こういう状況をそう表現されるとお伺いしました、が……ともかく、この人たちを倒しきれば良いわけですね……?」
やがて崩れ始める山賊団の戦線――『うつろう恵み』フェリシア=ベルトゥーロ(p3p000094)は順調たる状況を見ながら、ふと練達で使われている言葉を思い出していた。なんだったか……Real……なんとか……まぁいいか。
「タイマーストップまで頑張らないといけないので……皆さん、次にいきましょうかね」
山賊団の反撃も勿論あるものだが――そこへ彼女が満たすは天使が如き歌声。
皆の体力を治癒する癒しの紡ぎが、山賊団に逆転を許さず踏みつぶした。
●
――さて。
『宇像武像』山賊団は全員で襲撃したこともありさほど大した事もなかった――希紗良達の優れし捜索の力もあって、素早く見つけ出す事が出来たのも順調と言えよう。
されどここからは時間をも気にしなくてはならなかった。
如何に一つ一つを迅速に打破出来ても、日が暮れてしまい全てを潰す前にタイムアップが来てしまえば失敗だ――故に。
「ここからは二手に、だね。最後の山賊団を倒すときにまた会おうね!」
「それぞれを平らげた後に、必ず」
神使達はそれぞれ二つに分かれるのだ。
クルルと希紗良が言葉を交わす――
隠れる事に適している『鷹目』山賊団にはフェリシア、イナリ、クルル、サルヴェナーズの四名が。力自慢の『阿修羅』山賊団にはタント、鬼灯、モカ、希紗良で相対を。
それらを潰した後に最後の『普』山賊団の周辺にて合流する。
――戦力を分けることが吉と出るか凶と出るかは成した後にのみ分かろう。
『鷹目』の方へと向かうイナリは引き続きファミリアーでの索敵を続けるものだ。だが二体同時に操る事が出来る彼女は、その内の一体を別方面――『普』の山賊団がいるであろう方向へと飛ばす。
それはこの後の事も見越した上での行動故だ。
「とにかく時間を優先しないとね――先手先手で手を打っていくわよ!」
兵は神速を貴ぶ。イナリは無為に時間を使う気など毛頭ないのだ。
優れし五感をファミリアーの鳥たちにも併用し探っていく――そしてハイセンスたるその感覚を用いているのはサルヴェナーズも、だ。
「この辺りの筈ですね。罠などもあるかもしれませんので、注意していかねば」
「ええ……あ、ここに糸がありますね……恐らく踏んだら音が出るのかと」
必ず手がかりがあるはずだと彼女は確信している。故にフェリシアと共に罠にも注意を向けながら行くのだ。
先程の連中もそうであったが、生活の跡を隠しきるなどまず出来る筈がない。
それらを飛行の力を用いて調べていくのだ――こちらの方へと来たものはなにがしか飛行する力を宿している者。道中が山の中であろうとも足を止められぬのであればスムーズに行軍も進み。
「……あっ! あったよ、多分あれが拠点だよね……!」
そうしていればクルルの視界にそれらしきモノを発見した。
見つからぬ様に、木々に紛れる様に偽装を施しているようだが間違いない。突入――する前に少しだけ準備しておこうか。なんでも前情報では、そうまで戦闘は得手な者達ではないという。ならばすぐさま逃げる可能性も考慮し、クルルはファミリアーの鴉を高所に設置。
「これでよし、と。逃げたりしたら監視させて、そっちの方に追わせれば倒せそうだよね」
「ええ――万全ね。それじゃあ……行きましょうか!」
同時。イナリは己が大剣に乗る様に飛行しつつ強襲の一手を担う。
クルルの行った手もあれば敵の逃走は防げよう――無論、初めから逃がすつもりなど気概ではあるが。拠点の扉をぶち破る様に侵入しつつ、山賊らを強襲して。
一方で『阿修羅』の方へと向かった者達は『鷹目』よりは早くに敵の所在を見つけていた。
それは山賊団の性質が故か? 戦闘には優れど隠匿には無頓着な者達だったようで。
「――キサにできるのは、その首を一つずつ刎ねることであります。
法の裁きを受けるならそれも良し。命惜しくば投降するでありますよ」
故に。希紗良は己が刀を構えて敵に警告す。
もしも投稿するならば命を奪う事はあるまい――しかし抗うというならば容赦は出来ぬ。
法を犯し、民草を苦しめる者らに加減など必要ないのだから。
「へっ、何が『投降するでありますよ』だ。俺らに勝てると思ってんのか嬢ちゃんよ――」
「警告はしたであります」
だが山賊団の中でも実力に長ける者らは希紗良達を見てむしろせせら笑うように。
数の上でも優勢なのが気を強くしているのか――? ならば愚かと言うほかあるまい。
――一瞬で踏み込む。距離を詰めて、薙ぐは敵の腹から肩へ。
魔性の切っ先で対象を惑わし――見惚れる隙があるならば首へと届こう。
激突する。激しい戦闘音が鳴り響き、しかし。
「成程これは中々! しかしこちらも、あなた方の事は承知の上で来ておりますのよ――!」
タントの支援により万全を保っていたと言える神使達の地力は高かった。
奴らに挑む前に、太陽の系譜に属する彼女は皆に恩寵を齎していたのだ。それは誰をも照らし、そして活力を齎すタントの権能とも言える力。未来は不滅なのだと信じさせるが如き――絶対の煌めき。
傷は紡がれし福音が癒しており、先程の山賊団との交戦による疲弊はなさそうだ。
そしてダメ押しとばかりに奴らを横から強襲する。
希紗良に気を取られていた彼らはタントの紡ぐ一撃をモロに受けて。昏倒する者もおらば、更に。
「吠えるは結構。しかし頭までは伴っていないようだな……真正面からだけ挑むとでも?」
モカの一撃が山賊の顎を打ち砕く。
木々や岩に身を隠しながら、しかし隙を見て急速接近した彼女の一撃は正に強烈だ。移動するという事そのものを力に変えて強襲し、至ればそのまま残像を残すかの様な勢いと共に――敵の集団の中で縦横無尽に実力を謳歌する。
まるでスズメバチの群れの如く。蹴り砕く勢いが彼らを圧倒するのだ。
「ぬ、こ、このクソ共が……! 舐めるなよッ――!」
されど彼らも当然他と比べて比較的、力を持つ者達であれば反撃もするもの。
数を削られながらもモカ達を薙ぐべく反抗の体勢を整え、故に。
「そうはいかんよ。貴様らに機を齎さん――このまま沈んでいきたまえ」
鬼灯が反撃の流れを潰すのだ。
斧振るう一閃を躱し、その間隙を縫うように踏み込んだと同時に掌を敵の腹へ。
直後に紡がれるは零距離で放たれる――極撃。
内部に浸透させる絶大の一撃が意識なんぞ一瞬で刈り取るものだ。
一撃が重い者達はこうした隙も多い……故、動きをしかと見れば優位を取るのも可能。
悶絶する山賊。その様子を見降ろしながら頭領は――
「痛いか――? 痛いだろうな」
俺もびっくりだもんその威力。『知らない間に沢山充填重ねてたのだわ!』とえっへんと、まるで自分の事の様に語る嫁殿が愛おしい……と。
「む、待て待てあそこまで張り切っておきながら逃げるんじゃない――狙撃中なんてずるい? 知らん」
その時。彼の目に留まった逃げる影を狙撃した。
霜月の名を関する一撃にて。ああこれは戦いだ、卑怯などとは言うまいな? と。
「さぁさ、さぁさぁ! この程度ですの!? 啖呵を切った割には大したことがありませんのね――まぁそっちの方がわたくし達にとっては都合が良いとも言えますが!」
やがて戦闘が幕を迎えた頃には、立っているのは神使の者達だけであった。
であればとタントは『オーッホッホッホ!』と言いたくなるのをもうちょっと我慢しながら。
「では――皆さま! お茶とサンドイッチは如何でしょうか!? どうぞささっと補給下さいましー! あまり沢山、という訳にはいきませんが、それでも腹ごなしにはなりますわ!」
次なる場所に向かう途上で、用意していた食料補給を行おうと思考するのだ。
人は魔力や神秘によって回復する術のみに生くるものに非ず!
多くの物を食らい、水にて潤す――そうしてこそ初めて『生きる』と言えるのだと。
「おお、これはありがたいな――頂くとしよう」
「あと一つの山賊団を潰す前に重要な補給でありますな。さて、向こうも順調だと良いのでありますが……」
モカが呟き、希紗良もタントからの申し出を受け取れば――巡らせる思考は『鷹目』の方へと進んだ者達の事。順調ならばこの後合流できる筈だと考えながら、サンドイッチの端を口の中へと運んでいた。
●
日は暮始め夕刻へと差し迫る。
周辺を駆け抜け、それでも山を越えてともなればやはり時間もかかるものだ――
それでも。
「な、なんだぁ……!? おい敵襲だ! 敵が来てるぞ――!!」
完全なる闇を迎える前に最後の盗賊団の拠点へと到達せしめた神使達は最早勝利を確信していた――これも班を分けた事が良い方向へと作用したが故か。流石に暗闇の中となれば、拠点の探しも難航したことだろう。
されど『鷹目』も『阿修羅』も潰された。
「さぁ最後だよ! 流石に疲れてきたし、なるはやで捕まえて帰りたいね……! 痛い目にあうだろうけど――まーだ足を洗ってなかった昨日までの自分を恨んでね!」
「ああ――だが皆が揃ったのであれば大丈夫だろう」
クルルの射撃。再び初手でマンドレイクを敵の中枢へと打ち込んで、生じる混乱の最中にモカが突っ込むものだ――ここまで来たのなら後はない。全力全霊を目前に投じるのみだと。
「貴様らが謳歌せし一時もこれにて仕舞だ。幕が下りれば役者もまた消えるのみ」
「逃がさない……ですよ……! 他の人たちも……捕まえてきましたから……!」
次いで鬼灯も気糸の一撃を放てば、それらを援護するようにフェリシアの英雄譚が紡がれるものだ――彼女の一手は常に味方の為に在り『鷹目』を襲撃した際もその優れた支援で皆に活力を齎していた。
そして山賊達を逃がさないようにも気を付けていたのだ。
生きている者は捕縛し、情報が漏れないように。
事が済めば彼らは然るべき所に突き出すとして――
「これで――終わりよッ! ジャスト、五時間!!」
その時。最後の一人をイナリの一撃が捉えて。
その者が倒れる音がすると同時に――戦闘の音もまた途絶えた。
思わず息が深く、深く何度も零れるものだ。
流石に緊張が解けて疲弊が表に出てきたか。タントの差し入れもなければ厳しい所だった。
「ここに活動している盗賊団なのか、束ねるものがいるのか。
後者ならば厄介極まりないでありますが……いえ、今は潰せたことを良しとしますか」
「後でもう少し『聞いて』見ましょうか――ふふ、いい子だと良いのですが」
希紗良も刀を仕舞い思考を巡らせれば、サルヴェナーズが再び大蛇の幻影を見せようかと。巨大な山賊組織などなければ幸いなのだが……と。
そうだ。山賊団を潰したのならば――一番大事な事があった!
――オーッホッホッホッ!
瞬間。山中に響くは今度こそ本物だ。
心中にあるのではない、確かな言の葉の紡ぎ、それは指を鳴らして紡がれる!
そう! 今こそ名乗るは太陽の雫!
この! わたくし!
\きらめけ!/
\ぼくらの!/
\\\タント様!///
「──の! 勝利ですわ――!」
決めるラブリーヘヴンリービクトリーポーズ!
後光差すが如き煌めきとは――潜む為に今まで抑えていたが故か――
「……やっと使えましたわ、ギフト!」
常よりも一段と輝いて見えた――様な気がした。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
複数の依頼案件が纏まっていたRTA依頼、お疲れさまでしたイレギュラーズ!
途中で班を分けたが故に夜を迎える前に片付けることが出来たようです!
実力も伴っており、うまくいきました。素晴らしい勝利だったと言えるでしょう……!
それでは、ありがとうございました!
GMコメント
リクエストありがとうございます!
R.O.Oが活発的ですが、依頼は混沌各地にも勿論。という訳で以下詳細です!
●依頼達成条件
下記四つの山賊勢力を残り12時間以内に壊滅させる事!
山賊団の人員を必ずしも一人残らず捕縛したり撃破する必要性はありませんが、逃げられた人数が多いとそれだけ情報の伝達が早まる危険性があり、タイムリミットが縮まる可能性があります。
●フィールド
豊穣の山岳部です。時刻は昼から始まります。
この山岳部のどこかにいる山賊団四つを殲滅してください。
依頼主達からの情報から敵の拠点の『おおまかな位置』は判明していますので、そこからの正確な位置は探していけばやがて見つかる事でしょう――なお、大雑把ですが後述するA、B、C、D四つの盗賊団の位置は下記の様になっています。
森森森森山
森A 山 B山
森森山山山
森C 山 D山
森森山山山
・Bの周囲は『ほぼ』山。
・Dの周囲は山ばかり。
・山と記されている部分を通る場合は通常よりも時間がかかる可能性がある。(飛行などその他なんらかの手段によってこの効果が軽減される可能性はあります)
●敵戦力
・山賊団A『普』×敵人数6
この山賊団は質が平均的な(つまりあんまり特徴のない)山賊団です。
・山賊団B『鷹目』×敵人数5
この山賊団は隠れる事や罠の設置に優れておりそれなりに力をいれて捜索する必要性があるかもしれません。反面、直接的な戦闘能力は一番大した事はないので、見つけることが出来ればあとは余裕でしょう。
・山賊団C『阿修羅』×敵人数8
この山賊団は個人ごとの戦闘力が比較的優れています。
槍や斧などの近接パワータイプが多いようです。
また、人数もそれなりにいるので油断は禁物でしょう。
・山賊団D『宇像武像』×敵人数16
この山賊団は手下の数が多いです。質はそこそこ~弱い 程度。
拠点の近くを哨戒してる者もいるようですので、そういった面々を素早く無力化できるかがカギになるでしょう。
●備考
この依頼は非常に長丁場になることが想定されます!
時間が掛かれば掛かるほど体力は減っていき、全体的な戦闘能力に影響が及んでくる可能性がある事でしょう。その為、再生や充填能力、その他体力の消耗を抑えることが出来る非戦やアイテムなどがあると便利かもしれません。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
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