シナリオ詳細
Magna Moralia
オープニング
●僕らは道徳と一緒に産まれては来ない
森の中の赤レンガハウスが、今日ももくもくと煙をあげている。
熱を発する魔法鉱石による薄紫の煙だ。翡翠(エメラルド)で火を炊くものは良い顔をされぬがため、自力で加熱の魔法が使えな者にとってこの魔法鉱石は必需品なのだ。
窓から覗き込んだなら、『彼』が作業をするさまが見えるだろう。
彼の作り出す、美しく可愛らしいビスクドールが。
「やあ、おはよう。今日はとても顔色がいいね」
頬をほんのりと赤く染めた、幼児にもにたドールに語りかける男性。
白いエプロンをつけた彼はいつでも持ち出せるようにと開いたままの革鞄からモノクルを取り出して装着すると、ドールたちのメンテナンスを始めていた。
目尻のたれた優しそうな、深いオレンジ色の瞳の奥で、ドールがどこか幸せそうに微笑んだようにみえた。
ある界隈において、可愛らしさは魔法であった。
はるか古代にある男の子が、神の奇跡で可愛さを物理的な力に変えたことがすべての始まりと言われ、今でも『可愛さの魔法』として一部の技師たちに伝わっている。
彼――ウジェーヌ森のドールマイスター『コウ』の作り出す人形たちは、強い魔法を持った。
「多くの場合、コウの作り出す球体関節人形――『コウドール』はファルカウに暮らす人々の家に実行力を持つ防犯用のお守りとして置かれ、家族を害するものが現れたときその力を行使して家を守るとされている」
暗い暗い、夜の砂地。焚き火の前に立つ男の手にはビスクドール。
ウィッグパーツを外してみると、二度焼きされた陶器でできた頭の部分があらわとなる。ビスクドールがビスク(二度焼きされたビスケット)と呼ばれる所以である。
後頭部の、あまりにも人間的なまるみを撫でると、首の付根のあたりにぽっこりとくぼみができているのがわかった。
「これだけの技術。高い魔力を持たないはずはない」
ごふ、と男は小さく非を吹いた。
首から上が炎につつまれた、タキシード姿の怪物が、ビスクドールの頭部を握りしめ、そしてばきりと砕いてしまう。
「奴の工房に隠された、『兵器』どもを手に入れれば、ハーモニアどもの森を焼き払うこともあるいは……」
●ROOとネクスト
ここは練達、首都セフィロト。練達の悲願である混沌法則解明のために進められていたProjectIDEAは、不明なバグによって停滞していた。
マザーのリソースを使ってまで作られた『第二の混沌』ともいうべき仮想世界ネクスト。
多くの研究員たちにこの世界で活動するためのアバターを作らせ介入(ログイン)していたが、不明なバグによって世界は大きく変容。そして研究員たちも意識ごとシステム内に囚われてしまった。
彼らを救出するにはそれぞれ解明された『フラグ』を解放する必要があり、その作業のため――アダム(p3x006934)たちアバター化したローレット・イレギュラーズへの依頼が行われたのである。
「それで、今回はその『レッドウォーカー』というのを倒せばいいのかな」
切り株の椅子にこしかけた大きな兎のぬいぐるみが、胸に桜色の羊ぬいぐるみを抱えて首を傾げた。彼もとい彼女こそイーハトーヴのROO内アバター、アダムである。彼の作り出したぬいぐるみオフィーリアに似せて作られたそれは、彼の作品らしくとても可愛らしい質感に仕上がっている。惜しむらくは、彼の能力であるところの『作成したぬいぐるみと会話ができる』という能力がROO内にまで持ち込めないことか。アバターであるアダムにその能力を付与すればその限りでないが。
「レッドウォーカーは翡翠(エメラルド)……つまり混沌でいう新緑を燃やそうとする破滅主義の宗教結社でね、研究員救助の名目がなくても倒したくなるような連中さ」
そう語るのは黒猫のぬいぐるみめいたアバターだった。ローレットの情報屋が、ROO内の仮拠点のひとつ『きりかぶはうす』で内容の説明をしてくれていた。
空中に現れるウィンドウには、首から上が炎になったタキシード姿の男たちの写真が表示されている。これがレッドウォーカーということらしい。
「彼らの中に研究員の意識が囚われている……というか、彼らを倒すことが解放フラグになっているんだ。これまで足取りがつかめず依頼もだせずにいたんだけど、今回次にとる行動がわかってね」
黒猫のぬいぐるみが次に表示したのは、森の中にある赤レンガハウス。外においたガーデンチェアに座る青年の姿に、アダムはぴくりと耳を動かした。
「彼の名はコウ。翡翠でくらす人形職人だ。彼の作である魔力をもった人形を狙って。レッドウォーカーは襲撃を計画しているらしい。僕らはそこへ駆けつけ、レッドウォーカーを倒すって寸法さ」
レッドウォーカーは炎を中心として扱う怪物の集団で、戦闘力もなかなかに高いという。
直接先頭を行うだけでもこちらに死傷者がでることが予測されるが……。
「なにも現実の肉体が死ぬわけじゃないし、戦いが終わればリスポーンした状態でまたこの場所へ再訪できるよ。リソースをうまく使って、レッドウォーカーを倒してね」
- Magna Moralia完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年05月30日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●
灰の香りが、熱のこもった風とともに流れてくる。
鋭敏な感覚をもっていなくとも、これが森を焼くにおいだとすぐにわかるだろう。むしろ、この『アバター』の鼻が良くなくて助かったと思ったほどである。
「仮想世界なのに匂いまで再現してるとは凄いですね。五感を頼りに進むこともできて大助かりです」
『nayunayu』那由他(p3x000375)は手のひらの感覚を確かめつつ、炎の気配がゆれる先へと足を進めていた。森を結構な速度で走っていくその疲労感もリアルに身体へかかる。もしかしたら脳に直接その感覚だけが流し込まれているのかもしれないが、那由他にとっては同じ事だ。
(今回のクエストのメインは討伐。サブは救援といった所ですか。
どうせだったら両方達成して気持ちよく終わりたいですよね?
襲われてる方の知人もいらっしゃるようですし。
その気持ち、私も汲みましょう……)
彼女たちは翡翠の森の中を情報を頼りに走っている。
人形技師コウを、厳密には彼の作る『力をもつドール』たちを狙った怪物レッドウォーカーたちの襲撃から彼らを守るため……というのがこの世界基準での話。
クエスト内容はあくまでこの場所を襲撃するレッドウォーカーの撃滅。それによりデータ内に囚われた研究員の救出である。
森の中を漆黒の騎乗メカユニットに跨がって突き進む『汎用人型機動兵器』Λ(p3x008609)。
(森の中で炎属性の敵とか……何それコワイって感じよね~。大事にならなきゃ良いけど)
混沌ではこの場所は新緑と呼ばれ、炎の扱いは強く忌避される傾向にある。とはいえイレギュラーズが依頼の一環として炎を放ったくらいで激怒されたりはしないのだが。近年似たような『森を焼く怪物』が現れた際には深緑の民や深緑出身のイレギュラーズたちがかなりの激怒を見せていたように、森と炎はクリティカルな問題なのである。
小枝を折るなら腕を折るというネクスト世界の翡翠民の感覚からすれば、より過激な形で怒りをみせそうな話である。
同じく森の中を走り抜ける『ヨシ!プリンセス』指差・ヨシカ(p3x009033)。
「救出クエストに見せかけて実は討伐クエストかあ。
いや、て言うかえ? え? あの頭燃えてる人たちに研究員の魂が囚われている……。聞いてないんだけど! これただのゲームじゃないの!?」
「依頼主……練達の方々はそのように説明していた筈ですが」
「ああああ聞いてなかった!」
頭を抱えるヨシカの横で、『人形遣い』イデア(p3x008017)が受けてしまった以上仕方在りませんねと肩をすくめた。
日常的なことなので忘れがちだが、ローレットイレギュラーズはギルド条約(ハイルール)のひとつとして受けた依頼には達成努力をすべきというものがある。『受けた以上は達成しなければならない』という文句は、ローレットではよく聞くものである。
「とはいえ、ゲームの中でも人助けをするのは変わりませんね。研究員さんたちも大変そうですが」
イデアは長いメイド服のスカートをなびかせながら、草や木の根の多い森の中を器用に抜けていく。
平地を走るのと森を走るのとでは使う神経や体力がまるで違う。こういう場所に慣れているのか、もしくは適応したAIによる自動操縦が働いているのかはわからないが、イデアはどうも平気そうである。
「少々厄介なシチュエーションですができることはやりましょう。まずは敵を倒すことが最優先です」
大体話は分かりましたわ! と二本指たててみせる『なよ竹の』かぐや(p3x008344)。
「三匹の子豚では、狼の攻撃すらものともしないレンガの家。
しかし今回ばかりは相手が悪かった、ということでしょうか。
堅牢さとしなやかさ、そして優美さを兼ね備えた竹の家であれば、
炎マンの侵入など許さなかったのですが……まあ今更言っても仕方ありませんわね。
ですがやはり家を建てるなら竹! 竹の家こそ最高最強でありますのよ!」
さて、この辺りで、『コウ』という人物について話さねばならないようだ。
このネクスト世界においては翡翠民に愛用されるドール技師であり、作られたドールは翡翠民の家の中で大切に飾られるという。防犯用のお守りとされるが、実のところはインテリアである。そもそもデリケートでケアの難しい道具であるために。
そんな彼が混沌では……もとい『イーハトーヴの世界』ではどうであったのかといえば……。
(コウがいるの?
コウに、会えるの?
でも、彼のドールを『兵器』として使おうとしてる輩がいて……。
……頭がぐるぐるして気持ち悪いけど、混乱してる場合じゃない。
今度は、コウを助けられる。
ドール達にだって、怖くて辛いことなんてさせるもんか)
可愛らしいぬいぐるみの姿をした『うさぎのおひめさま!』アダム(p3x006934)が、ぴょんぴょんと飛び跳ねるようにして森の中を走り抜ける。時折木をよじ登っては、枝から枝へと飛び移った。
「あの絶望を、俺は、絶対に繰り返さない」
「コウさんを助けたいのは僕も一緒だよ。だから僕も、正義の義賊として悪いレッドウォーカーを倒し、コウさん達を助けるぞ!」
枝からぴょんと飛び降りた『オオカミ少年』じぇい君(p3x001103)。
同じく飛び降りてきた熊のぬいぐるみ『ちいさなくまのこ』ベル(p3x008216)と共に頷くと、アダムと並んで走り始める。
「アダムさんは、伝えたい事、守りたい気持ち、山盛りだって、ベルは思いました。
だから、コウさんを守る為に、ベルは敵さんを、倒します。
だってベルは、勇者ですから」
そして彼らは、白く煙る炎の中へと飛び込んでいく。
正義のために、あるいは……。
●
森にひっそりとたたずむ赤煉瓦の家へ、白い煙がゆっくりとはうように近づいていく。
コウはドールをあらんかぎり保管用のボックスへ詰め込むと、配送用の馬車へと積み込んでいく。
たった一人のドールでさえ、そのいちパーツでさえ炎に晒したくはないという感情がその動きには見える。
不思議なのは、この期に及んで焦る様子がないところである。
「人形職人のコウだな?」
首から上を炎に包まれたタキシード姿の男が、高熱の足跡をつけながら赤煉瓦ハウスの前で立ち止まる。
馬車から手を話したコウは、そんな彼ら……レッドウォーカーへと振り返った。
「うん。そうだけど……人形は渡せないよ?」
「貴様の意見は聞いていない。我らは――」
「ううん。ちがう」
コウはゆっくりと首を振り、そしてピッと人差し指でレッドウォーカー……のすぐ後ろを指さした。
「彼らがそれを許さないだろう、ってことさ」
「――!?」
とっさに振り返るレッドウォーカー。だがわざわざ教えてやっただけあってもはや遅い。
Λの騎乗ユニットが激突し、レッドウォーカーを撥ねていく。空中で回転し転落したレッドウォーカーが起き上がると、Λは騎乗ユニットから飛び降りブレーキ。素早く変形したユニットが彼女を包み込み機動魔導甲冑『黒麒』へと変化した。
「自己紹介はあとだ。ここは逃げて」
コウにそう呼びかけると、肩から開いた魔道ロケットランチャーからロケットミサイルを発射。
爆発から飛び退き防御姿勢をとるレッドウォーカーたちだが、そこへじぇい君の強烈な打撃が繰り出された。
丁度死角となる白煙の中から飛び出したことでレッドウォーカーは対応できずに打ち払われ、手をついて転がり姿勢をたてなおそう――とした瞬間にイデアが襲いかかった。
アタッシュケースを開き専用のグローブを装着したイデアは、クロスした両腕を大きく回し、魔法の糸で繋がった人形を起動させる。
執事風のからくり人形が立ち上がり、仕込みステッキによって斬りかかる。
真っ二つに切断されたレッドウォーカーが霧散するその一方で、ベルとアダムはぴょんと飛び上がると二人同時にぬいぐるみキックを別のレッドウォーカーへと浴びせた。
くるりと反転して着地するベル。
アダムはコウのそばまで駆け寄ると、馬車へ丁寧に詰め込まれたドールたちを見た。
そして、コウの顔を見る。
コウはアダムの……オフィーリアというぬいぐるみをモチーフとしたアバターの顔を見て、優しく微笑んだ。
「可愛らしいぬいぐるみ、だね」
その言葉に。イントネーションに。どこか悲しみを含んだ声色に、アダムは……イートハーヴはたまらない懐かしさに胸をしめられた。
けれど、言わねばならない。
「あのね、絶対にあとで会おうね。君と話したいことが、いっぱいあるんだ。だから……」
「うん。ここは任せたよ。また後でね」
意図を汲んだらしいコウは馬車に飛び乗ると、レッドウォーカーたちの対応を任せて走り出す。
追いかけようと身を乗り出したレッドウォーカーだが、剣を構えて立ち塞がるベルを越えていくことはできそうになかった。
「ここは、通しません。がおぉっ、です」
「なぜ邪魔が入った。ファルカウの虚は完全についたはず」
「むしろこちらに穴があったのだろう。砂の蛮族どもまで使ったというのに……」
「これだから人間は頼りにならんと言ったのだ」
最初に引かれたレッドウォーカーが立ち上がり首を振って側頭部(というか炎)をぽんぽんと叩く。
「その話、興味ありますけど……それはそれとして、ここから先へは進ませませんよ」
那由他は巨大な斧をずりずりと引きずると、両手で握って振り上げる。
「理想、信念を持つのは大変素晴らしいと思います。
それが叶うか果てるか、私にも見せてください!
まあ、取り合えず。真っ二つになります?」
「ぬかせ!」
両手に炎を溜め込み、突き出すことで放射するレッドウォーカー。
那由他はその中をあえて突っ切ると、真正面から繰り出した斧によってレッドウォーカーの胴体を切り裂いていった。
「なっ――!?」
「炎は効きませんわ」
次の瞬間、かぐやによって投擲された竹槍がレッドウォーカーの胸を貫通。ごとりと落ちてもがきはじめる。
かぐやは新たな竹槍を生成すると、その先端を火にあぶらせた。
「イデアが施した火避けの術がかかっている間は、私達に火をつけて殺すことはもはや不可能。仮に付与効果を貫いて燃やせたとて、わたくしの纏う『火鼠の裘』がその力を激減させるでしょう」
「どういうことだ。用意が良すぎる……!」
文句を言いながらおきあがろうとしたレッドウォーカーに竹槍を突き立て、ぐりぐりとやるかぐや。
指差・ヨシカはそんな現場にやっと到着すると、グローブをはめて腰から下げていた誘導棒を振り上げた。
「先手必勝、大事になる前に終わらせましょう――プリンセスチャージ!」
突然謎の電飾が現れヨシカを照らし出すと、プリティ★プリンセスのインフラ魔法少女へと変身。ユウドーブレードを輝かせながら斬りかかる。
「工事現場にはね、火災事故も織り込み済みなのよ。勿論その対処方もね!」
炎の剣を生成して受け止めるレッドウォーカー。残るレッドウォーカーたちは距離を取って集中砲火を浴びせる作戦をとりはじめた……が、ヨシカは更に魔法を発動。
「かかったわね――プリンセスパイルハンマー!」
途端、離れた場所へ巨大な杭が出現。レッドウォーカーたちめがけてたたき込まれる。
上がる悲鳴。巻き上がる土煙。焦げ付いた木が倒れ、炎が吹き上がっていく。
●
レッドウォーカーを次々と倒していくかぐやたち。
しかし、あまりに優勢に進みすぎる戦闘にどこか不気味さを感じてもいた。
「この手の異形頭系エネミーは、いやらしい奥の手を隠しもっていると相場が決まっておりますわ。気をつけて!」
「「そうそう止められはせぬ!」」
レッドウォーカーは二体ほど固まって融合すると二倍の大きさの怪物へと変化した。
「ほらやっぱり! 全員集合したら厄介ですわ! くらえtakeyari!」
助走をつけてソラァっていいながら竹槍をぶん投げるかぐや。
槍はレッドウォーカーの膝に突き刺さり、『この程度なんともないわ』と言って突き進もうとしたその時、イデアがメイドランチャーを肩に担いでレバーをひいた。
発射された謎の爆弾が命中。爆発。竹槍を刺した箇所から崩壊が広がりレッドウォーカーは大きく耐性を傾けた。
「Λ様、今です」
「よしきた」
構えた『連装魔導噴進砲』を容赦なく連発していくホバリングモードのΛ。
立て続けに起こった爆発によって融合したレッドウォーカーが徐々に崩壊していく。
対してレッドウォーカーは死なば諸共とばかりに特攻をかけてくる。
Λは両手にニヒリスティックソードを展開するとスタスターによって急発進。
自爆特攻を仕掛けてくるレッドウォーカーの腹を貫いて飛んでいく。
「私の変身シーンでは待って貰うけれど、敵を待つ必要は無いわよね」
一方。指差・ヨシカはユウドーブレードによって融合合体しようとするレッドウォーカーたちを切り裂くと、返す刀で『プリンセスパイルハンマー』を発動させた。
「事故に巻き込まれた研究員、無事助けて見せるわ。それが現場監督者の責任の取り方と言うものよ!」
燃えさかる木々と個別に融合した巨大なレッドウォーカー。ヨシカは飛来する巨大な杭を、大きく振りかぶり投げつけるようなリンク動作によって相手に叩きつけた。
そのタイミングを狙って一斉に飛びかかるじぇい君と那由他。
じぇい君の激しい突きがレッドウォーカーの胸へと突き刺さり、反撃にとじぇい君をつかみ取るレッドウォーカー。じぇい君の身体が燃え上がるが、那由他は回収よりもレッドウォーカーの排除を優先して動いた。大胆に繰り出した斧による斬撃が、レッドウォーカーを斜めに切り裂いていく。
霧散し消え去るレッドウォーカー。
一方、ずっと攻撃を代行し続けたじぇい君のアバター体が限界を迎えたようで、徐々にその身体がかすんでいった。
「戦闘終了までは耐えきったかな。上出来上出来。流石に戦闘中に死んだらサクラメントが遠すぎて戦闘復帰できないからね。
あとでまたサクラメント経由で戻ってくるから、その時はコウの人形さんを見せて貰いたいな」
「コウさんですか」
振り向き、目を細める那由他。
「感動の再会ならぬ初対面? いやー、感動的ですね。うんうん」
丁度その頃。
コウの乗った馬車が、森の中で止まった。
「連中をけしかけたかいがあった……な」
ナイフを手に行く手を阻む男たちの姿。身なりからして砂嵐(サンドストーム)の盗賊だろうか。
「人形をよこしな。命まではとらないでおいてやるよ」
そう言って歩み寄ろうとした、その時。
「がおぉっ、です!」
咆哮がはしり、盗賊たちはガクンと身体のバランスを崩した。というより、意識をそちら側へ強制的に向けさせられたのだ。
森を抜けて次々に飛んでくる小さなウサギのぬいぐるみ。
ぬいぐるみたちは盗賊を次々に殴り倒すと、ぽふんと音をたてて消えていった。
やがて森を駆け抜け現れる、大きなうさぎとくまのぬいぐるみ。
「怪我はない、ですか?」
振り返るくま。もといベルに、コウは『ん』とだけ返して笑った。
盗賊たちはといえば、無防備なコウから人形をまきあげるのが目的だったらしく慌てて引き上げていく。
アダムはゆっくりとコウに近づき、そして、彼の膝の上にあったドールを見た。
何を言うべきだろう。決して彼が生き返ったわけじゃないのに。だったら……。
「コウ」
たとえ世界線を越えた先でも、変わらないものがあるのなら。
「可愛いドールだね」
「うん。君も」
きっとそれが、俺たちを繋ぐだろうから。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
――クエストを完了しました
――研究員が救出されました
――NPCコウが生存しました
――NPCコウのドールが守られました
GMコメント
●クエスト内容
コウの赤レンガハウスへの襲撃を行う『レッドウォーカー』へ乱入するかたちで戦闘に持ち込み、これを撃破します。
先回りや罠の準備といったものは作戦の性質上難しそうですが、襲撃が行われる最中に乱入できるので奇襲やそれに似たアクションは可能そうです。
●エネミーとフィールド
森の中にあるフィールドです。レッドウォーカーは周囲を燃やしまくって自分の力を高める性質があるため、森がやたら燃えることになります。
コウはおそらく人形たちをつれて避難することになるでしょう。
レッドウォーカーは炎を中心とした力をつかう怪物です。
分裂する能力をもち、襲撃の最にはそこそこの数に増えています。
首から下は人間っぽいですが、その気になれば全身を炎に変えることもできるようです。
戦闘の際には炎系のBSに注意すべし。
また攻撃力がかなり高めで、今の段階でぶつかると1~3人くらいの死亡者がでそうです。
また、レッドウォーカーは一定個数を倒すと再集合(合体)して強力な個体にかわることがあります。
このあたりにも対応できるとグッドです。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
●ROOとは
練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界をR.O.O(Rapid Origin Online)と呼びます。
練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、原因不明のエラーにより暴走。情報の自己増殖が発生し、まるでゲームのような世界を構築しています。
R.O.O内の作りは混沌の現実に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在する等、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されるようです。
練達三塔主より依頼を受けたローレット・イレギュラーズはこの疑似世界で活動するためログイン装置を介してこの世界に介入。
自分専用の『アバター』を作って活動し、閉じ込められた人々の救出や『ゲームクリア』を目指します。
特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline
※重要な備考
R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。
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