シナリオ詳細
巨大カズラは拘束がお好き
オープニング
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鬱蒼と茂る高い草、そして頭上をも覆う程枝葉を広げた木々。
一度迷い込んだ者達がいくら歩いても、そこは……迷宮森林は彼らを手放すことはない。
日光すらも届かぬその迷宮の底を、3人の冒険者が歩く。
「ちっ、また同じところか……」
屈強な刀剣士が数刻前に自らが木へと刻んだ印を目にし、舌打ちする。
「ねえ、場所の把握はできないの?」
「申し訳ないけど、今の能力では……」
グラマラスな格闘家女性の問いに、ゆったりとした体のラインを隠す衣服を纏う魔術師が小さく首を振った。
彼らはかれこれ数時間、この近辺をぐるぐると彷徨っている。
アバターである彼らは『R.O.O』のテストプレイヤー達だ。ログアウトもすることができず、この森林に閉じ込められたに等しい形となっている。
アオオオオォォォォ……ン。
鳥のさえずりに合わせ、聞こえてくる肉食モンスターと思われる遠吠え。
出口のわからぬ迷宮内で、いつ獲物として狙われるかもわからず、警戒を高める冒険者達だが、神経を尖らせ続けるのにも限界がある。
「このままでは消耗するだけだ。一度、休もう」
刀剣士の提案に、格闘家、魔術師が同意し、大きな木の影へと腰掛ける。
ファミリア―を飛ばして頭上から位置を確認しつつ、携帯食料を口にして体力の回復をはかる。
「…………」
「………………」
気力を擦り減らしていた3人だ。一度腰を落とせばすぐさま眠りへと落ちてしまう。
だが、彼らは休んだ場所が悪すぎた。
木に擬態していたそれが突然動き出し、3人の体を触手で縛り付けたのだ。
「シャアアアアアアアア……ッ!」
それに気づき、冒険者達は目を覚ますが、時すでに遅く。
「うわああっ!」
「きゃっ、どこ触ってんの!」
「…………巨大カズラ」
茎が異様なまでに太いその巨大カズラは根を蠢かせ、頭上の蔓を触手として操っている。
そいつは捕えた冒険者達を手放しはしない。
しばらくの間の栄養分とすべく、巨大カズラは冒険者達を連れて森の奥へと去っていくのである……。
●
『Rapid Origin Online』……略称『R.O.O』。
その仮想空間では、様々な異変が起きている。
「混沌と似て非なるネクストという世界には、多数の研究者やテストプレイヤーが閉じ込められているという報告があります」
アバターとなったイレギュラーズ達は、ネクスト内の翡翠、大樹ファルカウの麓で幻想種達に見つからない様に物陰へと集まり、『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)話を聞いていた。
迷宮森林に聳え立つ神話的大樹ファルカウ。
混沌では深緑と呼ばれる国と非常に似たその場所は、ネクストにおいて『翡翠』……エメラルドを呼ばれる。
幻想種の国であるのは混沌と変わらないが、極度に排他的な点が大きく異なっており、幻想種を思わせる種族以外の相手には塩対応とされてしまうという。
現状、翡翠の幻想種に見つからぬようにしているのはその為だ。
「それだけではありません」
森林迷宮には多数の魔物も野放し状態となっている。
幻想種達も自分達に危害が及ばぬ程度にしか、魔物の対処をしていないのかもしれない。
それはそれとして、アクアベルはこのネクストでの情報収集を進める間に、とある冒険者達について話を聞いたそうだ。
「どうやら、この冒険者達はテストプレイヤーとなった練達、希望ヶ浜にある『佐伯製作所』の学生達のようです」
冒険者の数は3人。
最初からテストプレイと聞かされていた彼らは、比較的本人に近いアバターで登録、テストプレイヤーとなったらしい。
彼らは翡翠へと向かうことにしたものの、森林迷宮に阻まれて身動きが取れなくなっているものと思われる。
森林内は、肉食モンスターや植物モンスターも徘徊している。
なかなかログアウトしないところを見るに、それらに捕まってしまっている可能性は極めて高い。
「早く解放してあげたいところですね」
首肯したイレギュラーズ達は、草をかき分けてそのまま森林迷宮へと突入していく。
しばらく、森の中を歩いていた一行は、比較的新しい足跡を見つける。
明らかにその近辺を周回していたと思われる複数の痕跡。
そして……。
丁度、それは樹上の蔓で胴体を縛った冒険者3人をいずこかへと連れ去るところだった。
「シャアアアアアァァァ……!」
樹高が5m程もある巨大カズラは、やってきたイレギュラーズのアバター達をもまた栄養分とすべく、蔓触手を勢い良く伸ばしてきたのだった。
- 巨大カズラは拘束がお好き完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年05月30日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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ネクスト、翡翠。
改めて依頼に臨むイレギュラーズ……『R.O.O』参加メンバー達は、アバターの姿で顔合わせを行う。
「はいどうも、【P-Tuber】のアリスです!」
性別不詳の配信者『リデル』■■■■■(p3x007903)は状況によって姿を変えようと考えているが、今回は冒険者風の姿をしたリデルの姿での参加だ。
この場の仲間だけでなく、後々動画化することを意識しつつポージングしながら挨拶するリデルだが、ROOがまだ練習中である為、今回の録画を使うかどうかはまだ決めてはいない。それでも念の為、リデルはしっかりとロールプレイしておこうというスタンスで依頼に臨んでいた。
(目線が高い! 女の子が小さい! 男性が同じくらいの目線! 目線が違うのって……こんなに凄い事なのね!?)
竜鱗族の大柄な男性、『クリムゾン・ドラゴニア』アクセル(p3x007325)は普段とのギャップがあまりにも新鮮で、目を輝かす。
仲間の視線を感じて、少し慌てた様子のアクセルは一つ咳払いして我に返ってから乞う言葉を返す。
「翡翠か……聞いてた通り混沌とはまた違った雰囲気……って、なんだ? なんかジロジロ見られるな……気の所為か?」
アクセルは事前情報から、ネクストにおいて翡翠と砂嵐は仲が悪かっただろうかと思い返す。
(……確か翡翠のあの姉妹は仲良く存命なのよね。カノンさんが生きてる世界線は嬉しいけれど……)
脳内で混沌の事情と照らし合わせるアクセルは、砂嵐が嫌われているという理由を推察する。ある男とは、きっと、多分、クラウスなのではないか、と。
その間にも、メンバーの挨拶は進む。
仲間達の中身とアバターが一致しない猫の耳と尻尾が生えた金髪碧眼の少年『星の魔法少年☆ナハトスター』ナハトスター・ウィッシュ・ねこ(p3x000916)は首を傾げつつ。
「……えーっと、巨大カズラ倒して、冒険者さん達助ければいいんだよねー☆」
それに、アクセルの考えていた翡翠の女王の妹と同じ名を持つ金髪碧眼の魔術少女『仮想世界の冒険者』カノン(p3x008357)が同意して。
「深い森林内で捕獲されるのは、心得が無ければそのまま森の養分一直線ですからね……」
ここは巧遅よりも拙速が必要。森の歩き方なら多少自分にも心得があると、カノンはすぐにでも出発することを提案する。
「先駆けてた冒険者達の救出……ま、適当にこなしてくか」
アクセルもそれに異論はなく、仲間達についていくことにしたのだった。
●
少しずつ大樹ファルカウから遠ざかり、深い森の中へと踏み入る参加メンバー達。
できるだけ早く対象を発見すべく、カノンやナハトが前に出る。
カノンは冒険者としての技能をフル活用して森の探索に当たり、迷わぬ様に、加えてモンスターの奇襲に備えて先を急ぐ。
ナハトスターはというと召喚した猫を使って周囲を軽く調査し、周囲の探索を行う。
そこで2人が感知した物体を目指し、一行が進むと……。
「巨大カズラ……お出ましだな」
最初に気付いたアクセルが見上げた先を、他メンバーも見つめる。
シャアアアアアアァァァ……!
そこにいたのは、全長5m程もある巨大なカズラだった。
「なんだっけ、カズラってツルアジサイとかきゅうりみたいな細い植物じゃなかったっけ」
純情可憐な銀髪少女、『Dirty Angel』ニアサー(p3x000323)が自らの知るカズラについて口にし、ここまで大きいとは聞いていないと本音を漏らす。
茎が異様なまでに太い巨大カズラは頭上の蔓を触手として操り、根を蠢かせて移動も可能なようだ。
「んー、触手プレイってのはちょーっと趣味じゃないかしらねぇ」
2mを超えるレガシーゼロ、『大型』ジオ(p3x002157)はその巨大カズラに捕らわれた冒険者を見上げる。
触手に縛られた冒険者は3人。刀剣士男性と格闘家女性に性別不詳の魔術師。女性はジオのお眼鏡に合ったようである。
「あんなに触手がうねって……あれに絡まれたら、すごいことになってしまいそうです……」
ストレートのピンク髪のお姫様、『清純なる聖愛姫』フィリア・フィル・フィルス(p3x000674)はその大きな敵に。そして、体をきつく縛られて気を失う冒険者達の姿に冷や汗を流す。
「とにかく、とりあえずアバターの人たちを救わないとね」
「え、ええ! 何とか捕まっておられる方々を助けませんと……」
「それほど複雑な作戦は立てずシンプルに、それぞれの役割をこなせばしっかり回りそうだね!」
ニアサー、フィリアが身構える中、リデルが気楽な態度で作戦を立てる。
それを聞いていたカノンと獣耳のメイド少女『デッドリーヘブン』アリシア(p3x004649)は駆け出し、敵の抑えと冒険者達の奪還へと乗り出すのである。
●
アバターとなったイレギュラーズの中で、最も早く巨大カズラへと接敵したのはアリシアだ。
救出対象の冒険者達は縛られたまま空中に吊るされている。
「行きます。踊りのご挨拶……そして」
取り出した提灯の導火線に、アリシアは火を点けて。
「燃え燃えキューンです!」
腕力に任せ、彼女は勢いよくそれを投擲する。
その提灯の中には、大量の薬物と火薬が詰め込められており、敵に近づいたところで破裂し、強烈な爆風を巻き起こす。
さすがの巨大カズラもこれには大きく吹き飛ばされる形となり、森の木を破壊しながら大きく後退してしまう。
シャアアアアアアアアッ!!
怒り狂い、触手を振るってくる敵に、カノンは魔の杖ワンドオブダークネスを向けて。
「……複数の痕跡が発見されているのですから、カズラだけに注意を払う訳にも行きませんし、早く事を終えたいですからね」
現状は周囲に別のモンスターの気配は感じられないが、自己強化を行うカノンはそれらへの注意も怠らず。
「意思疎通は出来ないと思いますが……それ以上はさせないですよ!」
触手が意思をもって個別に動くというなら、範囲攻撃で一網打尽にされぬ様カノンは巨大カズラから距離をとったままで詠唱を行う。
彼女が発動させたのは、妨害の魔法インタラプト。
杖から放たれたヤミの一撃は巨大カズラの操る蔓の根本へと撃ち込まれる。敵は満足には動けなくなっていたようだが、捕えた冒険者をそれだけでは離そうとはしないところがなんともいやらしい。
カノンはなおも冒険者に当てぬ様気遣いながら、彼らを解放すべく魔法を繰り出す。
「ほらほら、そんな大きな図体してたら狙わなくても当たっちゃうよ!」
別方向から、リデルもまたフリントロックライフルを華麗に構えて。
やはり、後の動画のことを意識する彼女はシャープシュートで見る者を魅せる射撃で巨大カズラを撃ち抜いていく。
相手に視覚などあろうはずもないが、そのリデルの射撃には引き付けられる何かがあるのだろう。しばし、操る蔓触手の動きが止まっていたようだ。
「コイツには挑発は効くのかね?」
仲間達の様子を見て、アクセルも紅い遠吠えによって敵の触手を引き付けようとして。
「ほらほらどうした? 俺はまだくたばってないぜ!」
触手の一部がこちらへと向いてきたのをいいことに、アクセルは全力で殺意を飛ばし、巨大カズラを攻め立てる。
「いったんぶった切れば、変な動きとか復活とかしないから。そういうのはちょっと苦手……」
思わず、ニアサーは『背後』が出そうになりつつも、巨大カズラに向かって一気に飛び込む。
冒険者達が狙われている蔓を見定めながらも、ニアサーは一気に切断しようとする。
「動かないでねー外れちゃうから」
さらに、後方にいたジオがしゅこしゅことポンプから音を立てたアサルト水鉄砲からウォータージェットを噴射し、冒険者救出を援護する。
しかしながら、敵は器用に冒険者を縛る蔓を入れ替えているのが実に面倒だ。
シャアアアアアアアアッ!!
その上で、まだ獲物が足りないと言わんばかりに、ニアサーを捕えようと空いている蔓を振り下ろしてくる。
ニアサーはぶわっと堕天使の六枚翼を広げて見せ、見かけを大きくして敵を僅かに怯ませる。
とはいえ、何度も通じる手ではなく、次はしっかりと彼女の体を捕えようと翼ごと蔓は締め上げようとしてくる。
そこで、フィリアは誘引の香りを振りまき、触手を自分の方へと伸ばすよう仕向ける。
仲間を狙っていたものまで、フィリアの方へと向かってくる。
「え、や、そんな、お待ちになって……!?」
思いっきりスタイルの良い体を強調するように、巨大カズラは彼女の体を縛り付けてくる。
「星猫魔法その2……降ってこい流れ星ー☆」
そこで、ナハトスターが宝玉の弓から流れ星の如きキラキラ光る星型の者を放ち、蔓を引きちぎって見せた。
シャアアアアアアアッ!!
ナハトスターの一撃で体の一部を失った為か、巨大カズラは苛立ちげに周囲へと消化液を振りまいてくる。
イレギュラーズもその回避に動いていたが、ナハトスターは避けられずにそれを全身に浴びてしまう。仮想空間なのに、その不快感まで本人にしっかりと伝わったようで。
「もう、べとべとして気持ち悪いよぉー!」
絶叫する彼は早くお風呂に入りたいと本音をぶちまけていた。
思ったより注意散漫な敵を抑えようとするアリシア。
仲間達がうまく注意を引きつけ、包囲している敵めがけ、アリシアは四聖刀『陣』を振るって踊る。
彼女のアクセスファンタズム「バーサーク☆アイドル」によって、狂気に似たエネルギーが周囲へと伝染していく。
それもあって、戦場となる迷宮森林の木々すらも踊っているように感じられたのだった。
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この場のアバター達は全力を尽くし、冒険者達の救出に当たる。
現実世界である混沌においては、力あるイレギュラーズであるメンバーばかりとあって、目の前の巨大カズラがさほど強くなさそうに感じた者もいたことだろう。
だが、ここは『R.O.O』内のネクストだ。皆の力はアバターが持ちうる力が全て。かつ、巷ではクソゲ―とも揶揄される敵の強さ。しっかりと戦っていてなお、倒されてしまうことも往々にしてあるという。
防御を高めて敵の攻撃に耐えていたフィリアは再び蔓触手にその身を絡めとられてしまっていた。
「い、いやっ、見ないでくださいまし……っ」
周囲へと撒き散らされる消化液によってドレスが溶かされており、肌が露わになってしまい、その豊かなスタイルがより強調される。
「は、恥ずかしいです……っ。こんな格好……」
体をくねらせて抵抗を続ける彼女だが、動けば動くほどあられもない恰好をさらしてしまう。
「彼等も僕等も、食べさせないよ。ごめんねー☆」
それに気づいたナハトスターが攻撃の手を止め、呼び出した猫や子猫に可愛らしいしぐさをさせることで仲間の回復に当たる。
フィリアもそれで少し持ち直すが、巨大カズラはしつこく彼女に絡みつく。
(険者アバターの皆さんが逃げられれば良いのですが……ううっ)
彼女が冒険者の無事を祈る間、 ジオは水鉄砲を飛ばし続ける。
「さぁ、落ちて頂戴!」
ただ、巨大カズラは蔓を器用に操り、捕えた冒険者を渡すまいと蔓を絡ませて移動させており、なかなか解放しようとはしない。
それでも、カノンが根本めがけてヤミの力を飛ばして追撃すると、蔓は根元から引きちぎれ、刀剣士男性が地面へと落ちていく。
しかしながら、そのタイミング、触手に縛られたフィリアが触手の締め付けもあって力尽きてしまって。
「も、もう、ダメ……」
その場からゆっくりと、フィリアの姿は消え去ってしまった。
彼女だけではない。前線で戦士の如きメイドの底力で耐えきっていたアリシアにも限界が迫る。
アリシアは相手する巨大カズラに冒険者が捕えられたままとあって、提灯を叩き込んで敵を攻め立てる。
ただ、相手も花粉でアリシアの体を包み込み、弱体化したその体を触手で殴りつける。
「死んだらどうするっ!」
本心から叫ぶアリシアはワザモノの包丁で敵の蔓を切り払う。
ただ、隙を見せた彼女は蔓触手で殴り倒されて。
「まだ、まだたたか、え……」
アリシアもまた意識を失い、その姿は森からかき消えてしまった。
シャアアアアアアアッ!!
獲物が倒れる度に消えることもあり、巨大カズラは栄養分となる相手を探してさらに蔓触手を振り上げ、苛烈な攻撃を仕掛けてくる。
「そーんなに私が気になるの?」
問いかけるジオへと、巨大カズラ本体は引付役のメンバーと交戦しながらも近づいていき、触手を叩き付けてきた。
殴られるジオは接近されたならやむなしとそのまま攻撃を続ける。回復は仲間頼り。彼女は力で敵を圧倒しようとする。
「おかえりはあちらでーす!」
力を込めてジオは巨大カズラの守りを崩そうとするが、敵は彼女に対して消化液と触手殴打を繰り出す。
仲間の回復が間に合わず、彼女は次第に体力をすり減らして。
「うそ、でしょ……」
周囲を包む花粉がとどめとなり、ジオは崩れ落ちて森から姿をなくしてしまう。
しつこくまとわりつく花粉は非常にうっとうしく、ニアサーは苛立ちながら刃でそれらを払いのけようとして。
「あなたのおかげでどれだけ鼻が苦しくなるか、わかってるの」
涙を流し、ニアサーは切り込んでいく。
まだ冒険者は2人が捕らわれたまま。カノンはその救出をと蔓の根本への攻撃を続ける。
そこで、回復と攻撃を続けるナハトスターの打ち出した星状の一撃。
粘液で不快感を露わにしたまま、ナハトスターは傷ついた蔓触手の根本を粉砕する。蔓触手が減ってきていたことで、冒険者の受け渡しができなくなってきていた巨大カズラは、格闘家女性を離してしまう。
「あと1人」
火力を集中させて敵を撃破する為にはまだ縛られたままの魔術師の解放をと、カノンは妨害の魔法を使う。
敵の勢いは弱まっては来ていたが、すでにイレギュラーズのアバターを3人も倒していることもあり、最後まで油断ならない。
アクセルは近場から殺意と合わせて、ロングスピアで敵の触手を切り払う。
頭上から叩きつけられる触手。それをギリギリ回避したアクセルはなおも闘志を燃やして。
「例え死ぬ事になっても、ここじゃあカウントが増えるだけなら儲けもんだ」
『R.O.O』内では現状、パンドラ減少は確認されない。それだけに、アクセルも思いっきり立ち回っているのだろう。
リデルは残る1人の救出の為、銃撃での応戦を続ける。だいぶ慣れてきたのか、ある程度はピンポイントに狙った蔓触手の根本を撃ち貫けるようになってきていた。
シャアアアァァ……。
ただ、巨大カズラも身の危険を感じてか、そのまま逃げ出そうとして。
「逃がさないにゃ!」
素早くリデルはライフル銃の引き金を引く。
リデルの一射によって残る魔術師が蔓から離れて落下したのは良いのだが、巨大カズラの動きを完全に止めるとはいかない。
メンバーはそいつを足止めしようと動くものの、減った人員では満足に包囲できず、巨大カズラを逃がしてしまう。
倒した敵から光の柱を立てる力を持つニアサーだが、それが叶わず些か不満顔のようだった。
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巨大カズラは森の奥へと逃げてしまい、その行方すらつかめなくなってしまった。
メンバー達は今後のことも考えて捜索を続けるものの、徐々に日が傾いてきた為、やむなく捜索を打ち切った。
もし、デスペナルティを受けたメンバー達がこの場に残っていたら何をしようとしていただろうか。
事前のタイミングでは、ジオなどは深緑には詳しいからと興味を抱いていた素振りを見せていた。また、フィリアなどはあられもない姿になりながらも、冒険者についてを最後まで気遣っていたようだったが……。
「巨大カズラを追いかけたいところだけれどね」
敵の所在を気がけるナハトスターは巨大カズラの一部を刻んで持ち帰りたいとも考えていたようだったが、今は救出できた冒険者を安全な場所に運ぶのが先と判断する。
「うう……」
「ここは……?」
目覚めた冒険者達を介抱するメンバー達は、救出に来たことを伝える。
皆救出できたのは良かったが、巨大カズラを逃がしてしまった事実も併せて伝えた。
「これが初陣なものでね、許してくれよ」
アクセルが謝るが、冒険者達も憔悴した様子で仲間の安否を気遣う。
森の奥深くへと消えてしまった巨大カズラ。それだけではなく、迷宮森林には得体のしれないモンスターが多数存在しているはず。
その気配を、視線を感じながらも、イレギュラーズ達は冒険者を連れて大樹ファルカウの傍にあるサクラメントまで戻ることにしたのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
リプレイ、公開です。
MVPは敵の発見と冒険者の救出と依頼成功に貢献した貴女へ。
ご参加いただき、誠にありがとうございました。
GMコメント
イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
『Rapid Origin Online』のシナリオをお届けします。
●目的
冒険者アバター全ての救出。
●敵
○巨大カズラ×1体
全長5mもある蔓植物を元としたモンスターです。
いくつかの触手が独立して攻撃し、2,3回程度の連続行動を行うことができます。ただ、本体は1つの為、全ての部位の攻撃は本体へのダメージとなります。
その全ての行動に置いて、触手での縛り付け、叩き付け、消化液噴射、花粉と多様な攻撃を仕掛けてきます。
●NPC
○冒険者アバター×3人
屈強な刀剣士男性、スタイル抜群な格闘家女性、ゆったりとした衣服を着用した性別不詳の魔術師。
いずれも、それなりの力量は持ちますが、巨大カズラの触手に縛り付けられて動けなくなってしまっております。
なお、彼らは意識を失っている為、敵との交戦はできません。
●状況
幻想、アーベントロート領の裏通りで、クルル・クラッセン(p3p009235)さんが深緑の幻想種と思われる奴隷を引き連れた奴隷商人数名を発見しております。
それらの動向を見ながら敵戦力を探り、タイミングを見て介入、奴隷の保護と奴隷商人達の確保を願います。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
●ROOとは
練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界をR.O.O(Rapid Origin Online)と呼びます。
練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、原因不明のエラーにより暴走。情報の自己増殖が発生し、まるでゲームのような世界を構築しています。
R.O.O内の作りは混沌の現実に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在する等、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されるようです。
練達三塔主より依頼を受けたローレット・イレギュラーズはこの疑似世界で活動するためログイン装置を介してこの世界に介入。
自分専用の『アバター』を作って活動し、閉じ込められた人々の救出や『ゲームクリア』を目指します。
特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline
※重要な備考
R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。
それでは、よろしくお願いいたします。
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