PandoraPartyProject

シナリオ詳細

悪党には悪党を

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●惨劇の夜
 嵐のような激しい雷雨の夜。とある宿屋でその惨劇は起こった。
 深夜の悲鳴を聞きつけ、宿中の客たちが集まる。フロント、食堂、厨房、談話室がまとまっている民宿の大広間――そこには1人の男が倒れていた。冷たくなった男の傍らで、女が1人すすり泣いていた。
「夫が……夫が……!」
 宿泊客の1人である女は、夫の変わり果てた姿を前にして震え続けていた。
「どうして……誰がこんなことを?!」
 宿屋の女将は妻を気遣い、落ち着かせようと背中をさする。
「安心して、奥さん――」
 女将は穏やかな口調で接していたが、次の瞬間に態度を一変させる。
「すぐに旦那さんのところへ送ってあげる」

●望まぬ再会
 依頼人から直々の指名を受けたことで、『月夜に吠える』ルナ・ファ・ディール(p3p009526)はローレットを訪れた。
 ルナの特徴的な見た目――ヒトの胴体に獅子の四肢を持つ獣種の姿から、強く印象に残っていたのかもしれない。ルナは見覚えのある青年の姿を見つけ、前髪の向こうに隠れた両目を剥いた。
「やあ、久し振りだね。『有能』なイレギュラーズのお兄さん」
 ルナはその一言に失笑しながらも、青年――シンガに向けて皮肉を飛ばす。
「あぁ? どちら様だ? まさか金欲しさにクソ貴族の親父に加担して、俺らに楯突いたいつかのチンピラじゃねぇよな?」
 ルナの皮肉に反応するように、シンガは更に口角を釣り上げた。だが、ルナとの再会を果たしたシンガは、どこか満足そうな表情を見せていた。
「そうそう、覚えていたなら話は早い――」
 ルナの反応は、シンガとの初対面からすれば当然と言える。シンガは気を取り直して「今回はいい関係になれると思うけど」
と言って意味深な笑みを浮かべた。シンガは、とある宿屋のことについて話し始める。

 ――宿屋の主人が盗族団と手を組んで、性悪な商売をやっている。盗旋団の一味は宿の客のフリをし、盗族の女ボスは女将のフリをしているんだ。
 全員で共謀し、客を襲って身ぐるみはがして、金目のものを命ごと奪う――そんな商売に勤しんでいるのさ。
 宿屋の場所は、王都と地方の境界の辺りにあるんだけど、山間のへんぴな場所と言えばへんぴな場所だね。それでも旅の中継地点として利用する獲物――客もそこそこいるからこそ成立してる商売のようだね。金持ちそうな客は特に歓迎されるんじゃないかな。

●依頼を引き受けますか?
「――放っておけば犠牲者は増えるばかりって奴だ。これは見過ごせないと思い、君らに声をかけたのさ」
 一通り盗賊らの悪事について説明したシンガに対し、「で? お前の目的はそれだけか?」とルナは問いただす。シンガは「察しがいいねぇ」とニヤつきながら、真の目的を語る。
「宿屋の一味は結構貯め込んでるらしいって噂なんだ。俺はその財産が欲しい、だから全員殺してよ」
 害獣駆除でも依頼するかのようなノリで、シンガは盗賊たちの討滅を打診した。
「宿屋の情報は教えるよ。その代わりに、一味を殺してその財を奪いたいから、協力してほしい」
 シンガは、「何人も殺してる悪党共なんだから、同情の余地はないだろう?」と協力を促す。
 不信感を抱いたままのルナに対し、シンガは更にまくし立てた。
「まあ、気乗りがしないなら、別の人に頼むだけだけどね」
 シンガは依頼を請け負う意志がある者にだけ、盗賊団が巣食う宿屋の詳しい情報を明かした。

 ――盗賊団と宿屋の主人を含めた人数は8人で、宿の客室は6部屋まであるね。その内の3部屋は盗賊が占有しているから、客として行った場合、残りの3部屋に案内されることになる。いずれの部屋も盗賊たちの部屋と向かい合わせになる位置だ。ちなみに客室に向かうには、フロント、食堂、厨房、談話室がまとまっている大広間を必ず通ることになるよ。探せば裏口くらいはありそうだね。
 相手は寝込みを襲うはずだから、そのつもりで来てね。

GMコメント

●注意事項
 この依頼は『悪属性依頼』です。
 成功した場合、『幻想』における名声がマイナスされます。
 又、失敗した場合の名声値の減少は0となります。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●成功条件
 依頼人、シンガが無事であることと、宿屋の盗賊団らのせん滅。

●NPC『シンガ』について
 宿屋までついていきますが、周辺で待機させてもいいし、何かしらの雑用、下準備やら囮をやらせるなどの指示を与えてもいいです。
 自由にさせておいた場合、客室でゴロゴロしてます。「え? 俺、依頼人だし、戦わなくてもよくない?」というスタンス。ですが、自分の身を守る行動はある程度取れます。
 「報酬(GOLD)上乗せしろやゴルァ!」とアクションを起こさない限り、シンガはしらばっくれます。

●宿屋についてまとめ
・アットホームな雰囲気を演出している。
・建物は1階建てです。フロント、食堂、厨房、談話室が1か所に集中している大広間がある。
・大広間を抜けた奥に客室が6部屋ある。
・6部屋の内、3部屋は盗賊団が使用している。その部屋と向かい合う形で空室がある。
・部屋はすべて3〜4人用。
・宿屋を訪れるタイミングはいつでも可能ですが、盗賊団は皆が寝静まった頃を狙うでしょう。
・金持ちそうな客は歓迎される。

●盗賊団についてまとめ
・盗賊団の女ボスは女将を演じている。他の盗賊6人は宿泊客のフリをしている。
・宿屋の主人以外はそこそこ強い。
・基本的な攻撃は物至単。女ボスと3人は、クロスボウ【通常レンジ3】を扱う。

 個性豊かなイレギュラーズの皆さんの参加をお待ちしています。

  • 悪党には悪党を完了
  • GM名夏雨
  • 種別通常(悪)
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年05月30日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ジョージ・キングマン(p3p007332)
絶海
ピリム・リオト・エーディ(p3p007348)
復讐者
チェレンチィ(p3p008318)
暗殺流儀
マリカ・ハウ(p3p009233)
冥府への導き手
ウィルド=アルス=アーヴィン(p3p009380)
微笑みに悪を忍ばせ
レべリオ(p3p009385)
特異運命座標
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
ルナ・ファ・ディール(p3p009526)
ヴァルハラより帰還す

リプレイ

 変わった一行と言えば変わった一行だったが、宿屋の盗賊団にとっては、『金持ちの客』という印象がすべてであった。
 あまり堅気らしくない雰囲気を持つ『微笑みに悪を忍ばせ』ウィルド=アルス=アーヴィン(p3p009380)は、囮役として宿屋に潜入を試みた1人だった。
 上等そうなスーツを着こなすウィルドは、王都のために商談に向かう豪商として振る舞う。高価そうなスーツに加え、その手指には大きな宝石が目立つ指輪がはめられていた。
 盗賊たちの期待を煽るには充分なエサをちらつかせれば、宿屋の主人と女将は実に上機嫌そうに接客する。
 女将が旅の目的を尋ねれば、「部下と王都に向かう途中です」とウィルドはそれとなく他の3人との関係を示唆した。
 『《戦車(チャリオット)》』ピリム・リオト・エーディ(p3p007348)、『トリック・アンド・トリート!』マリカ・ハウ(p3p009233)、『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)の3人の中でも、特に目を引いたのがピリムの存在だった。身長2メートルのピリムは、ウィルドを超えるほどの背丈を有していた。
「1部屋でいいんですか?」
 ピリムを見上げる女将はそう尋ねてきた。
「お客さんは大きいから、部屋が狭く感じるんじゃないかしら」
 ――おや、部屋を分けた方が都合のいいことでもあるのでしょうかー?
 女将のさりげない一言だったが、ピリムはその真意を探るように女将の表情を見つめた。
「1部屋でいいよね〜? 皆と一緒の方が楽しいもん♪」
 マリカは無邪気な子どもを装い、女将からの提案を一蹴した。
 宿泊の手続きを終えて、早速4人は部屋へと案内される。その際に、宿屋の主人は「荷物をお持ちしましょう」と、イズマが抱えていたケースに手をかけようとした。
「これは、自分で運びます。とても貴重な楽器なので――」
 そう断ったイズマは、さも大事そうにケースを抱え直し、廊下を進む主人らの後に続く。イズマが抱えたケースも、盗賊らを食いつかせるためのフェイク――エサの1つだった。
 宿のフロントからも、食堂にいる6人の男たちの姿がよく見えていた。シンガの情報によれば、あの男たちが盗賊に違いない。ウィルドは一瞬鋭い目付きで食堂の方を一瞥したが、すぐに廊下の向こうへと姿を消した。

 刻々と夜は深まっていく――。
「脚占い?」
「無駄にでかいし、妙な女だよ……」
 声をひそめて会話する宿屋の主人と女将は、厨房や食堂を徘徊する1匹のネズミの存在に気づくことはなかった。
 ネズミの使い魔――『絶海武闘』ジョージ・キングマン(p3p007332)のファミリアーは、テーブルの脚の影などに隠れながら、盗賊たちの動向を探っていた。
 食堂のテーブルに腰掛ける6人の男たちも、客の印象について話していた。
「俺はガキには興味ねえよ」
「もう1人の男には、注意した方がいいかもな」
「ビビってんのか? 相手は女子連れだぜ?」
 ――そんなことを言ってられるのも、今夜限りだがな。
 使い魔とあらゆる五感を共有することが可能なジョージは、宿中の会話を盗み聞きすることができた。
 ジョージはすでに、厨房の奥に宿屋の裏口があることも把握し、使い魔の目を通して更に屋内の様子を探り続ける。
 1人集中するジョージの横で、『青き砂彩』チェレンチィ(p3p008318)はあくびを噛み殺すシンガの姿にふと視線を向けた。
(盗賊団もなかなか大胆な商売をしてるけど――)
 改めて、いかにもなゴロツキ風情のシンガの風体を眺めながら、チェレンチィは心中でつぶやいた。
(それを皆殺しにして、金を奪いたいという彼もなかなかなものです)
 『特異運命座標』レべリオ(p3p009385)は馬車の中を遮る幕の隙間から周囲を窺い、宿屋の人の出入りを見逃さないよう警戒していた。
 「中の様子はどうだ?」とレベリオに尋ねられたジョージは、
「うまくやっているな、ウィルドたちは」
 そう言って、使い魔を通して盗賊たちの様子を探り続ける。ウィルドたちの身なりや振る舞いから、盗賊らは4人をすっかり上客として扱っていた。
 使い魔を使役するジョージ以外にも、『月夜に吠える』ルナ・ファ・ディール(p3p009526)は偵察のために宿屋に踏み入った。見張りを続けていたレベリオは、そのルナが宿屋から出てくる姿を確認する。
 客として宿屋の食堂を利用したルナは、獅子の姿を現した獣種の姿から、二足歩行の人間の姿へと変化していた。
 ひそかに馬車へと戻ったルナは、眠りこけていたシンガを叩き起こすと、
「お前に任せたいことがある――簡単に逃がすタマじゃねぇだろ?」
 シンガにあることを指示した。

 客室の1つに侵入したジョージの使い魔は、そこで襲撃の準備を進める女将や男たちの姿を捉えた。
 襲撃を実行しようとする盗賊たちは、忍び足で気配を殺し、廊下へと出た。
 触れた相手の足の位置を感知することができるピリムは、その能力を発揮する。脚占いという口実で全員の脚に触れていたピリムは、盗賊たちの動きがまざまざとわかった。
「動き出しましたよ」
 そう告げたピリムの声は、客室のベッドの下から聞こえてきた。
 獣種のピリムは真っ白なオオムカデに姿を変え、平たい体をくねらせてベッドの下に潜んでいた。
 イズマはドアの裏の死角に隠れられるように、壁に張り付いた状態で盗賊らを待ち構える。
 ――ルームサービスにはチップを送らないとネ♪
 マリカは毛布の中で笑いを堪えながら寝たフリを続ける。空いている2つのベッドやクローゼットには、マリカの能力によって召喚された魑魅魍魎たちが、襲撃者を出迎えようと姿を潜めていた。
 マリカと同様にベッドの上に横になっているウィルドも寝たフリに徹し、盗賊たちの足音に耳を澄ます。
 しばらくして、ゆっくりと鍵が差し込まれ、ドアノブが回される音が響く。わずかに軋みながらドアが開かれ、壁際のイズマはその裏に隠れる形となった。そのことに微塵も気づかない盗賊たち。夜目がきくイズマは、部屋に来た3人の男の姿を確認した。
 男たちから見て左奥のベッド――ベッドの上で体を丸め、頭から毛布をかぶった状態で、片方の足先だけが見えていた。その真っ白な足を見た男3人は、誰もがピリムのものだと思い込んだ。
 目の前の毛布に手をかけようとした瞬間、ベッドの主は勢いよく起き上がった。廊下から漏れる明かりによって、その姿を間近で認識した男らは縮み上がる。ピリムの代わりにベッドにいたのは、顔の半分がえぐり取られた女性の亡者だった。男と目を合わせた亡者は、腐敗した顔を歪めながら奇声をあげ、更に男たちを震え上がらせた。
「サプラーイズ!」
 飛び起きたマリカのその一言を合図に、もう1つのベッドやクローゼットからも亡者たちの姿が飛び出す。青白く浮かび上がる複数の亡者たちが男らを取り囲もうとすると、腰を抜かしそうになりながらも一様に後ずさる。
 男の1人は何かに足を取られて尻もちをつく。ベッドの間を這う白いオオムカデ――ピリムの姿に躓いた男はたまらず悲鳴をあげ、男たちは一斉にパニックを起こす。ウィルドとイズマは、その隙を突いて一斉に男たちへ襲いかかった。
 男の1人――盗賊Fは不意を突かれ、
ウィルドに打ち据えられた拍子に床へと倒れ込む。混濁する意識の中で、盗賊Fは厳つい微笑を浮かべるウィルドを見上げる。
「もっと上手くやりたいなら、秘密は漏らさないことです――」
 そうささやいたかと思えば、ウィルドは即座に盗賊Fの心臓を短剣で貫くと――。
「……さもなきゃ、こうして自分たちが罠にはめられることになりますから、ね」
 幌馬車の上に止まっていたカラス――ウィルドの使い魔は鳴き声を発し、馬車の待機班に向けて突入の合図を告げた。

 奥の客室から絶叫が響き渡るのを前にして、女将とその手下たちは、廊下と大広間の境界でクロスボウを構えて固まっていた。そこへ正面入り口のドアを蹴破ったイレギュラーズが現れる。
 先陣を切って踏み込んだルナは、即座に盗賊らに向けて銃を構えた。奇襲を受けて面食らう一味だったが、ルナの銃撃から逃れようと、ソファーや暖炉がある応接間の方へと駆け込む。
 ルナの影から飛び出すようにして、チェレンチィは応接間に逃げ込もうとした盗賊Cを捕えた。盗賊Cは急所を外させるために、ナイフを構えたチェレンチィともみ合う。急所は外れたものの、チェレンチィの後に続くレベリオは、手甲をはめた手を瞬時に突き出す。レベリオの一撃によって、盗賊Cはその鮮血を散らした。
 一瞬にして1人が仕留められる中、女将と盗賊A、Bはソファーを盾にして応戦を始める。ルナの銃撃はソファーを穴だらけにしていくが、相手はそれにも怯まずクロスボウの矢を打ち込む。
 それぞれが引き倒したテーブルなどの家具を盾にして、互いの動きを窺っていた。その一方で、のん気に厨房で料理の仕込みをしようとしていた宿屋の主人は、目の前の抗争に目を見張る。
 イレギュラーズの視界に入ることなく身を屈め、主人はこそこそと裏口を目指す。しかし、裏口の扉を開けた先には、ルナの指示を受けたシンガが待ち構えていた。目が合った瞬間、シンガは容赦なく主人を殴り飛ばした。
 ジョージはクロスボウの攻撃を誘うと共に、裏口から逃亡を図る恐れがある敵の抑えに回ろうと、厨房の方へ走り込む。ジョージが食堂と厨房を仕切るカウンターを乗り越えた瞬間、カウンターの縁に矢が突き刺さった。

 銃声の直後、「この宿屋は、客のもてなしも出来ないのか?」と悪態をつくジョージの声を認識すると、
「向こうも始めているようですね」
 ウィルドは返り血を拭いながらつぶやいた。
 盗賊3人の息の根を止め、ウィルドたちの客室はむごたらしい状態になっていた。致命傷を負いながら廊下まで這い出た男の1人は、その場で絶命している。
「寝込みを襲ってくるなんて、お兄ちゃんたちヤ~らしぃ~♡」
 死体を見下ろしながら、マリカはおどけた口調で言った。
「ここに3人いるとなると……大広間側にいるのは、主人と――あと3人か」
 イズマは盗賊の死体を跨ぎ、廊下の向こうを覗き込もうと移動する。
 ピリムは男の一部だったものを眺め、1人満足そうな表情を浮かべてつぶやいた。
「16本もあれば、報酬としては充分ですねー」

 一方、大広間での乱戦は激しさを増していく。
 射撃直後の隙を狙い、ソファーの裏から飛び出した盗賊Aは、ルナの銃を奪おうとつかみかかる。女将と盗賊Bは連携して動き、チェレンチィとレベリオを狙う。矢を避けるためにバリケードにされていたテーブルごと、2人を蹴り飛ばす勢いで飛びかかった。
 レベリオと同時に散開しようとしたチェレンチィは、わずかな差で左腕をテーブルに強打した。女将はその瞬間にも振りかぶり、クロスボウの持ち手でチェレンチィに殴りかかろうとした。ナイフを振りさばくチェレンチィによってクロスボウを取り落とすが、女将はロングスカートの裾を翻し、躊躇なくチェレンチィを蹴り倒そうとする。
 レベリオに向かった盗賊Bは、レベリオの眼前で矢を打ち出そうとしてきた。その流れ矢が廊下側にいる4人の方にも飛び出し、イズマの目の前を矢が過ぎった。
 ジョージは盗賊Aともみ合うルナに加勢し、鉄甲をはめた拳で盗賊Aの脇腹を強打し、激しく突き飛ばす。ルナはその隙に銃を構え直し、盗賊Aに向けて引き金を引いた。銃弾に晒された盗賊Aは絶命し、抗戦する女将たちは決死の構えを強めた。
 手下を従えるほどの手練でもある女将を相手に、チェレンチィは奮戦する。その動きを捉えたチェレンチィのナイフは女将の腕を浅くなぞったが、女将は大袈裟に倒れ込むと、
「ま、待って……! お願い、殺さないで――」
 チェレンチィの同情を引く素振りを見せながらも、女将はスカートと床の間に覆い隠したものをまさぐる。
 レベリオとつかみ合いを続けていた盗賊Bだったが、ジョージやルナの動きを阻むようにして、2人の方へレベリオを突き飛ばした。盗賊Bに意識が逸れた瞬間に、女将はスカートの下のクロスボウを引き出した。ほんのわずかな間に、女将はチェレンチィに向けてクロスボウを構える。しかし、そこへ瞬時に駆けつけたピリムは、女将が突き出したクロスボウを寸断してみせた。更にピリムの後に続いたイズマは、自らの細剣で女将の心臓をまっすぐ貫いた。
 最後に残された盗賊Bは、レベリオからの反撃をまともに食らい、倒れ込む。
「フフフフフ……滑稽ですねー」
 床に這いつくばる盗賊Bに対し、ピリムはゆっくりと距離を詰めながら、言葉を続ける。
「狩ろうとした者が逆に狩られる、しかしこれも自然の摂理、弱肉強食――」
 刀を構えたピリムは、絶望に染まる盗賊Bの顔を覗き込むようにして言った。
「大人しく脚を狩られて下さいましー」

 ウィルドは人知れず、廊下の更に奥にある部屋へと足を運んでいた。そこは宿屋を探索していて見つけた従業員用の部屋で、ウィルドはそこでいかにもな大きい金庫を見つけた。
 間もなくして、シンガも奥の部屋へとやって来たが、ウィルドはすでに金庫を破壊し、中身を確認していた。
「お目当てのものはこちらですか?」
 ウィルドは何食わぬ顔でシンガに向けて言ったが、すでにその懐には、金庫の中身の一部が収まっていた。
 シンガは多少ウィルドを訝しんだが、金庫の中身を確認する内に、瑣末な疑念は忘れ去ったようだ。中の金品を上機嫌な様子で品定めする。
「今回は相手が賊だから依頼を請けたがよ――」
 そのシンガの背中にルナは声をかけた。
「ただの金目当ての人攫いや殺しの依頼だったら、次はナシだ」
 シンガにとっては満足な結果を得られたことがすべてであり、特にルナの主義について言及するつもりはないようだった。
「まあ、仕方ないね。いろいろな足かせが人生にはあるものだからね」
 シンガの何気ない一言は、部族の長の一族という鎖に縛られているルナを現わしているようにも聞こえた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

ご参加ありがとうございました。今後もまたどこかで悪依頼を出せたらと思います。

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