シナリオ詳細
砂の足跡
オープニング
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「よお! 俺はバルバロッサ。『魔法少女』マリン☆バルバロッサだ。よろしくな」
煌めくパライバトルマリンのスカートを揺らしウィンクをして見せたのは『魔法少女(マジカルリリィ)』マリンバルバロッサだ。
潮風と共に波の音がイレギュラーズの耳に届く。
パライバトルマリンのスカートが陽光を反射し輝いていた。ブーツの靴底には錨マークをあしらってお洒落にも気を配っているらしい。頭の上に付いているリボンが歩く度に波打ち際の様に揺れる。
背中の大きく開いたデザインと、引き締まった筋肉を縛る編み上げが眩しい。
何処かで見覚えがある、ような気がする。
そう。無辜なる混沌において絶望の青を共に踏破した戦友『赤髭王』バルバロッサ。のはずなのだが。
R.O.Oで発生しているというバグの影響なのだろうか。
いやむしろ、現実世界でこの姿を見た様なきがするのだ。
『自慢のナイスバディで色気ムンムンの海洋魔法少女。
水着回には必ず一枚絵がなめ撮りされフィギュアは売れコンビニ一番くじでは必ずクリアファイルになりコ〇ケに島ができる 創造神:GOD of SAICHI』
ほら、これまでのお話にあるマジカルリリィ特設ページに書いてあるじゃないか!
え? 覚えてない? そんな日のことはプレイヤーしかしらない?
はは、そんな。
こまけえことはいいんだよ!
無辜なる混沌への強制召喚を打ち破り、元の世界へと帰還することを目標にしている練達の科学者達によってつくりだされた仮想環境『Rapid Origin Online』――通称『R.O.O』の中に、イレギュラーズはダイブしていた。
事の発端は予期できないエラーによるシステムの暴走。
フルダイブ型の仮想空間に深刻なバグが発生し、練達科学者、及びR.O.Oのゲームマスター(三塔主)の権限の一部を拒絶したのだという。
つまり、ログイン中の『プレイヤー』が閉じ込められるという深刻な状況が発生した。
三塔主からの依頼を受けてローレットのイレギュラーズ達は早速『R.O.O』へとプレイヤー登録をする事となった。何故エラーが起きたのかを探り、閉じ込められたプレイヤーを救い出すのがイレギュラーズの目的なのだ。
情報を整理しよう。
イレギュラーズの目の前に居るキラキラなバルバロッサはR.O.Oの住人。
すなわち『ネクスト』のNPCだ。
もしかしたら、『赤髭王』バルバロッサも居るかも知れないが、イレギュラーズの目の前に居るのは『魔法少女』マリン☆バルバロッサの方だった。マジきらめいている。
「――それでだ。お前らにちょいと手伝って欲しいことがあんだよ」
バルバロッサは着いてこいと言わんばかりに白いグローブをクイクイとしてみせる。
前を行くバルバロッサを追いかけるイレギュラーズ。
●
「砂浜にな、手が出んだよ」
「――手」
イレギュラーズはバルバロッサの突拍子もない台詞に思わず繰り返す。
「まあ、見てろ」
バルバロッサは茂みの中から砂浜へと歩み出した。
砂をギュッギュと踏みしめて、パライバトルマリンのスカートを揺らしながら砂浜を歩いて行くバルバロッサ。目を凝らすと、彼の付けた足跡がブルブルと震え、次第に大きな手になっていく。
巨大な手に追いかけられる『魔法少女』マリン☆バルバロッサ。絵面は中々にシュールだ。
「バーストウォール!」
バルバロッサの声に呼応するように地面から炎の壁が吹き上がる。
なるほど、炎の壁で時間を稼ぎ新たな技を繰り出すという訳なのだろう。
「バーストウォール! バーストウォール!」
バルバロッサは炎の壁を一杯に広げると、後ろへは隠れず、並ぶように仁王立ちする。
これでは壁の意味がないのでは――
「ちょっとな、こう動くんだ、こうだ。ここに立つ」
だがバルバロッサに向かってくる敵は炎の壁の端へ猛進し――もろもろと崩れる。
「――どうだ! これが俺の考えたバーストウォール縦置きだ! 勝手に刺さる!」
それROOのシステム有効利用してるみたいなこといってるけど、攻撃スキルだからな。
「炎の壁の正面は薄いが、横はめっちゃ分厚いから、そこへ敵を誘導すれば効果大って寸法よ」
アクティブスキル1の特殊化だからな。
「うるせえ!」
「というわけで、お前らにはこの手――ハンディサンディを倒してほしい。でも、気を付けろよ。捕まったら砂の中に引きずり込まれるぞ」
「引きずり込まれる……」
それは、すなわち。デスカウント待った無しということなのだろう。
「誰かがおびき出して、出てきた所とさっと叩けば大丈夫だ! 囮が必要なら俺がやってやるからよ!」
バルバロッサの煌めく笑顔が眩しい頼もしい。
「早く砂浜で遊ぶガキ共の姿を見てえんだよ」
ぽつりと呟いた魔法少女マリンバルバロッサの背中は大きかった。
- 砂の足跡完了
- GM名もみじ
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年05月29日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
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漣の音が耳を打つ。煌めくパライバトルマリンの海が何処までも広がっていた。
美しい風景に『きつねうどん』天狐(p3x009798)は目を細める。
「こんなに美しい砂浜で遊べないなんて可哀想です。頑張ってこの砂浜に平和を取り戻しましょう!」
天狐の声に『クレーデンスユスティティアム』レオン(p3x009373)が頷いた。
「砂浜を歩く奴を後ろから引きずり込む手、かー……。確かにほっといたら危ねえよなぁ。
よっしゃ、みんなが安心して遊べるように頑張るぞー!」
二人の元気な声に『魔法少女』マリン☆バルバロッサが顔を綻ばせる。
「ありがとな。お前ら。なんて頼もしいんだ!」
「子供達が危ない目に遭うのは悲しいからね」
「そうですね」
照れくさそうにレオンと天狐はバルバロッサにハイタッチをした。
――バルバロッサ。ああバルバロッサ。バルバロッサ。
三人のやり取りを眺めていた『合成獣』アルス(p3x007360)はマリンスタイルのバルバロッサの背中を見てほぅと息を吐く。
「アンタすげぇよ、カッコいいよ。でもその姿で絶対ガキ共の前に出ていくなよ?
ハンディサンディってのよりお前の方がうんと怖いから……」
「なんでだぁ? 愛と正義のマジカルリリィだぞ? 子供達も喜ぶだろうがよ」
アルスの肩を捕まえてガクガクと揺さぶるバルバロッサ。
拗ねたように唇を少しだけ尖らせてアルスを見つめる。
「いや、うん……」
アルスをガクガクと振るバルバロッサに『雨紅のアバター』アメベニ(p3x008287)が視線を上げた。
「魔法少……少女???」
「おう、どうした? 俺は『魔法少女』マリン☆バルバロッサだぜ」
アメベニの口から零れた小さな言葉を聞き漏らさなかったバルバロッサはアルスの肩から手を離し、少女の元へやってくる。普段の身長より小さくなってしまったアメベニにはバルバロッサは一層大きく見えた。
端的に言うとマリンスタイルも相まって圧が強かった。
「あ、いえ、マリンバルバロッサ様は炎使いなのですね。少し親近感がありますし、子供たちを思う姿と背には、力になりたくなるような魅力を感じます」
微笑んだアメベニにバルバロッサはにっかりと笑顔を向ける。
「おう! そうか! お前も炎を使うのか! 良いじゃネェか、ロマンだよな! 昔は電撃や吹雪も使ってたんだが、こう、燃えるバーニングって感じじゃなかったからな。やっぱ炎が一番だぜ!」
「ええ。そうですね」
目の前のバルバロッサはR.O.Oの中に存在するデータの塊。ネクストの住人としてコピーされたものだ。
だから本物のバルバロッサでは無いし現実世界の彼に影響を与える事も無い。
けれど、例えそうなのだとしても力にならない理由は無いとアメベニは思い馳せる。
「なぜここでも魔法少女が……」
アメベニとバルバロッサの姿を眺め、『人形遣い』イデア(p3x008017)は逡巡した。
「いえ、今の私はメイドのイデア。魔法少女とはなんの関係もありませんとも。ええ」
頭の中に過る記憶を掻き消すようにイデアは首を振り、メイド服を摘まんでみせる。
「メイドはどこでもメイド服。たとえそれが美しいビーチであっても変わりません。
この砂浜で早く皆様が遊べるように今回は頑張りましょう」
イデアはメイド服のスカートを僅かに摘まみ、バルバロッサにぺこりと頭を下げた。
「おう。お前さんもよろしくな!」
「歩かなければいいなら飛べばいいッス! 駄目なら泳ぐッス!」
フヨフヨと低空飛行する『神の仔竜』リュート(p3x000684)がバルバロッサの頭の上に乗る。
「お! お前賢いな!」
「えっへん! リュートは賢い! ちっこいリュートは捕まったらドブンなのだ!」
「確かに、お前さんほど小さいと掴まったら逃げられねぇかもな。気を付けろよ!」
「任せるのだ!」
バルバロッサの頭をぽこぽこ叩いたリュートは再びふよふよと飛び立つ。
「ハイドレンジャーAdam、参上しました! 平和を守るために……!」
「おお、お前も正義の味方なのか!?」
真っ黒なボディに金属の装甲を着けた『Hide Ranger』Adam(p3x008414)が砂浜を颯爽と歩いてきた。
スタイリッシュなラインが白い砂浜に立てば、一種の神々しさのようなものが感じられる。
「と、柄でもないことを言ってみた。やっぱ魔法少女といえば……じゃん? 戦隊系も欲しいじゃん?」
手の平をバルバロッサに向けて握手を求めるAdam。
「それに子供たちの遊ぶ姿俺も見たいし! 分かりますその気持ち
……えーとマリン☆バルバロッサさん……だっけ。魔法少女……? と、ともかく頑張ります!」
「よっし、その調子だ! 皆行くぜ!」
「おー!」
バルバロッサの声に『ブッ壊し屋』レニー(p3x005709)が拳を振り上げ応える。
白い砂浜に煌めく子供達の笑顔の為。イレギュラーズは走り出す――
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「じゃあ、手分けして囮役を務めるぜ」
レニーはレオンと共に砂浜を進んで行く。
「子供達にカッコつける見せ場を、独り占めさせるわけにはいかねえしな?」
歯を見せて笑うレニーにつられてレオンも笑みを浮かべた。
「しっかし、リアルのオレと比べて多少防御が甘くなっちまってるが……レベルダウンしたウォーカーもこんな感じだったかねぇ?」
「確かに。このR.O.Oの世界に着た時ってレベル1からスタートだからなぁ」
レニーとレオンは技と砂を踏みならし、大きな声で喋りながら砂浜に足跡を付けていく。
「まっ、何とかなるだろうさ。一人だけじゃ心許ないけど、皆が居るしな」
「そうだな。よし……! 早く出てこいハンディサンディ!」
アルスは『モード・オートパイロット』を発動させ、CPUに行動命令を下す。
身体の操作や口調を任せるのだ。あとはアイドル口調を崩さず絶対に正体がバレないように。決してバレてはならない。絶対にだ!
「それじゃ、ちゃちゃっと倒して沢山浜辺遊びしよっ! ☆彡」
ハンディサンディは歩くとその足音を聞きつけて襲ってくる。
だから、囮のレニーとレオン以外は静かに待機なのだ。
天狐とAdamは注意深く砂浜を観察する。
――ザラザラ。
二人の足跡が小さく崩れて行く。
先ずは指先が出てきて次に間接が姿を現した。
それはまるで大きな手だった。
ジリジリとレニーとレオンの背後に忍び寄り。
「ハンディサンディが来たよ!」
Adamは二人の背後から伸びる大きな手に叫んだ。
その声に瞬時に反応したのはレニーだ。
「わったった!? あっぶね!?」
一瞬遅れてレオンがハンディサンディへ振り向く。迫り来る大きな手。
レオンは踵を返し砂浜を踏み込んだ。
されど、レオンの行く手を阻むように洗われたもう一つのハンディサンディ。
「挟み撃ちだと!?」
二人分の足音に二体のハンディサンディが現われたのか、それとも確実にレオンを捕食しようと狙い撃ちしていたのか定かでは無いが。レオンの身体が瞬く間に砂浜へと引きずり込まれた。
「レオン――!!!!」
レニーの叫び声が砂浜に木霊し、レオンの体力ゲージが『0』を指し示す。
――――
――
「いや、まじで苦しかった。こんな所までリアルにしなくても良いと思うんだが」
サクラメントから戻って来たレオンが眉を寄せて溜息を吐いた。
「ゲームで良かった……それで、現状は」
レオンは草木の影に待機していたバルバロッサに声を掛ける。
「おお、すげえなお前。噂に聞く特異運命座標ってヤツだな」
死に戻りが出来るイレギュラーズはネクストでは神がかり的な凄い能力を持った人物として認識される。
現実世界でもきっと普通の人々はイレギュラーズの事をそんな風に思っているのかもしれない。
「まぁな。それでレニーは大丈夫なのか?」
「ああ、二体を同時に相手しながら上手く立ち回ってるぜ。他の連中がサポートしてっからな。ほら、お前も今度は引きずり込まれないように行って来い」
「おう。任せろ!」
レオンはレニーが相手取るハンディサンディへと駆けて行く。
●
「るぅーっ!」
リュートの鳴声が砂浜に響き渡った。その声は愛らしくも勇敢。
「リュート知ってるッス! 《コオリオニ》っていう遊びッスね! 捕まっても指をへし折って逃げきればセーフっす!」
ハンディサンディが現われたサインだ。リュートの鳴声に呼応するようにアルスが瞬時に接敵し囮役の二人を守るように翼を広げる。
「さ、アルスちゃんの手を取って!」
「ありがとう!」
アルスの手を掴んだレニーは砂浜をバックダッシュし、ハンディサンディとの距離を取った。
「引きずり込まれてメイド服が砂で汚されてはかないませんので……」
イデアは糸を繰り黒騎士人形をハンディサンディへと走らせる。
「おい! こっちに寄越せ!」
「分かりました」
バルバロッサの放ったバーストウォールにイデアはハンディサンディを転がした。
そして、バルバロッサに習い、ハンディサンディがバーストウォールに衝突するように移動する。
「バルバロッサちゃん、あと少しだよ!」
アルスの応援にバルバロッサの炎が勢いを増した。
魔法少女というものは声援があると力が漲ってくるのだ。
「早く止血しないと大変なことになりますよ、ってな!」
Adamはハンディサンディに後ろを取られぬよう、砂浜を駆け巡る。
掴まれば砂の中にに引きずり込まれ、デスペナを追ってしまう。ゲームの中といえど、苦しさは再現されるのだ。死ぬような体験はできる限り避けて行きたい。
Adamの攻撃にレニーの剣が重なる。
「奪わせたオレの半分の体力は、ポーン一つ分程度ってな!
切り開かれた道筋。剣尖がハンディサンディの指を切り落とした。
「行きます!」
アメベニはハンディサンディに近寄らぬよう、相手の動向を観察する。
なるべく仲間を巻き込まない位置で繰り出す『叢原火踊』。
赤き炎が舞い上がり、鬼火となってハンディサンディへと顎を向けた。
砂の手を貪り炎柱を燃え上がらせる。
「一気に削ってしまいましょう!」
天狐は拳をハンディサンディに突き出す。
重なるエフェクトが物凄い勢いで叩き込まれた。
ボロボロと崩れて行くハンディサンディ。
そして――『うどん×1』がドロップしましたの文字が画面の端に表示される。
説明しよう。この天狐の持つ『麺神の手』は攻撃した敵に食材適正を付与し、なんと様々な種類の『うどん』が(器と箸もセットで)ランダムで1つドロップするというものなのだ!
ボロボロと崩れる砂手とうどんセットが砂浜に現われる。
――――
――
「よし! 勝ったー! 待ってた! めっちゃ遊ぶ!」
ハンディサンディがパーティクルの粒子を散らして消え去り、砂浜に平穏が訪れた。
Adamは両手を挙げて勝ち鬨を上げる。
「海! 砂浜! といえばバーベキュー……? NO! うどんです!」
天狐はハンディサンディから手に入れたうどんセットを両手に抱え、腹ごしらえの準備を始める。
「まぁ串焼きも美味しいですけどね、いっそ両方作っちゃいますか!」
「お? いいねぇ! 俺もその辺の村から肉買ってくるからよ」
「やったー! ありがとうございます!」
天狐はバルバロッサに肉や野菜の調達をお願いし、早速うどんセットを手に取った。
うどんを食べるにはまずゆでなければならない。
真水……は丁度海に流れ込む川の水がある。なんて都合が良い!
「丁度料理スキル『美食家』がありますから、美味しい物沢山作ってワイワイ遊んじゃいましょう!」
ビーチバレー。それは白い砂浜で行われる戦いだ。
普段よりも足を掬われやすい砂の足場。風で簡単に方向を変えてしまうボール。
意地と矜持の張り合いに永遠とも呼べる時間が過ぎ去っていくのだ。
「遊ぶのも依頼のうちだからなー、めいっぱい遊ぼーぜ! 俺ビーチバレーやりたい! ビーチバレー!」
「ビーチバレーで砂浜を踏み荒らすぜ! 水着は一応用意したが……やばめだしな……濡れなきゃ私服で十分だぜ!」
レニーとレオンはいの一番にコートの準備を始める。
落ちていた大きな枝で枠線を引いて、メンバーを選出する。
作戦は優先的に取るレシーブ役か、アタッカー役か。
「では私はビーチバレーに参加しましょうか。身体を動かすのは得意な方ですので」
イデアはメイド服のままビーチバレーのコートへと足を踏み入れた。
「もちろん遊ぶ時もメイド服のままです。これがメイドの正装です。
アバターなので少々勝手は違いますが存分に楽しみましょう」
試合はバルバロッサの合図で始まる。
アルスは初めてのビーチバレーに楽しげな表情を見せた。
「そーれ、あたーっく!」
目的は遊ぶ事なので、アバターであるCPUに存分に遊ばせてやるのだ。
(しかし、こうも動いてると暑い……海に浮き輪でも浮かべてぷかぷか日光浴したいけど……黒くなったりしないよな?)
ジリジリと肌を焼く太陽に日焼けをするのだろうかとアルスは疑問を浮かべる。
「必殺のメイドスパイクの出番です。鉄壁のメイドレシーブもありますよ」
イデアのメイドレシーブは相手のコートに跳ねて砂に穴を穿つ。
それはこの砂浜にハンディサンディが寄りつかないように放たれる渾身の一撃だ。
きっと、ハンディサンディは地面の震動を感じ取り、逃げて行くだろう。
「オレは味方に花を持たせるサポート優先希望だが……譲られちゃ遠慮はいらねえな!
――派手にダイビングレシーブだ!!!!」
レニーの声と共に意外と力強く砂浜を打ったビーチボール。
「あー! 負けたー! もっかいやろもっかい!!」
悔しそうに砂を掴んだレオンは顔を上げて立ち上がる。
「波打ち際チキンレースっす!」
リュートは波打ち際に立って仲間に振り返る。
波打ち際チキンレースとは、波打ち際のぎりぎりに立ち、どちらが長くその場にじっとしていられるか比べる根比べである。
アメベニとAdamは波打ち際チキンレースへと参戦する。
「せっかくの海、波打ち際で遊びたいです」
「道路の白線から出たら死ぬってやつ思い出すな……そう思うとすぐ降りたくなる!」
波打ち際にじっと立って、波が足下を攫う感触を楽しむ三人。
「波って結構強いのですね。そういえば水かけあう遊びなども本で見たことがあります」
「掛けてもいいっす! ぱしゃーって!」
パライバトルマリンの水面から水飛沫が上がり、陽光に反射して煌めく。
「もっと掛けますよ!」
「あはは!」
リュートは水かけが楽しくなって波打ち際をぴょんぴょんと跳び回った。
「あわわ!?」
ズルリと足を滑らせたリュートが其の儘波に攫われていく。
「はー冷てー……生き返るー……」
レオンの前をリュートを追いかけるAdamが過ぎ去って行った。
ビーチバレーの後は少しゆっくり砂遊びでもしようかとイデアはバルバロッサを誘う。
「バルバロッサ様もいかがです?ちょっと砂でお城でも作ろうかと」
「おお、いいねぇ。Adamもどうだ?」
近くを通りかかったAdamを呼んで三人で砂遊びに興じる。
「ふふ、腕が鳴りますね」
「俺はいい感じの棒あるから砂でアートしたい! 格好いいヒーローとか魔法少女とか」
Adamは白い砂浜に奇っ怪な絵を仕上げていく。
「これは……何だか凄いですね」
「うーん、ろくに美術してないから夜妖に居そうなやつが出来たね。……土に還して帰ろう。イデアさんも何だか大きいの作ったね」
作り出してしまった夜妖の絵を消しながらAdamはイデアが作り上げた『城下町と遠くに見える山々』を見上げる。ディティールの細かい風景は壊すのが勿体ない程の超大作だった。
「……少々やりすぎましたかね?」
「がはは! すげぇなイデア!」
イデアの背をバンバンと叩きながらバルバロッサは大声で笑った。
「さあ、うどんの用意が出来ましたよ! ついでに串焼きもありますので!」
「お、天狐のうどんか。腹ごしらえに丁度いいな。ありがたく頂くぜ」
天狐から椀を受け取ったレニーは出汁のきいたうどんを啜る。
アメベニは天狐から渡された椀の中を見つめ、不思議そうに首を傾げた。
「敵がうどんに?」
「美味しいうどん、たんと召し上がれ!」
「なるほど、これを食べて捕食回避行動を起こさせるのですね。こちらでも味がするのは不思議で……おいしいですねぇ」
アメベニは天狐が作ったうどんに舌鼓を打つ。
「そういえば……最近は男も魔法少女になるのじゃな?
心は乙女とかいうヤツか、ハイカラじゃのぅ……え、違う?」
「俺か? いや、俺は子供達がこういう魔法少女が好きって言ってたから、この格好をしてんだよ。皆を抱えて振り回したりするうちに、魔法みたいって言ってくる子供が居てな。つい、魔法少女なのって聞かれて頷いちまった。子供の夢を壊したくなかったからな」
「ほう、それはまた」
にんまりと微笑んだ天狐はうどんを啜り、パライバトルマリンの海を見つめた。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
お疲れ様でした。如何だったでしょうか。
子供達の笑顔がこれで戻ってくる事でしょう。
MVPはうどんが面白すぎたので。
GMコメント
もみじです。魔法少女マリン☆バルバロッサの登場です!
子供達の笑顔のために。
●目的
・ハンディサンディを撲滅する
・砂浜で遊ぶ
●ロケーション
広い砂浜。綺麗なのでギュッギュって鳴ります。
燦々と輝く太陽。暑い眩しい。
●敵
ハンディサンディ×6
巨大な手の形をしています。
砂浜を誰かが歩くとその背後から襲いかかってきます。
砂の中に引きずり込み養分にしているようです。
●砂浜で遊ぶ
ハンディサンディを粗方追い払ったあとは、砂浜で遊びましょう!
他にも仲間が居るようですが、砂浜で遊ぶ事により、ここは住みにくいと思わせる必要があるためです。
知り合った仲間と仲良くなるチャンス!
ビーチバレーやビーチフラッグ、砂遊びに波打ち際ではしゃいだり。
暑くなったら少しだけ海に浸かってもいいですね。ひんやり冷たいです。
●NPC
『魔法少女』マリン☆バルバロッサ
煌めくパライバトルマリンのスカートを揺らした魔法少女です。
バーストウォール(攻撃魔法)で敵を攻撃したり、囮になってくれたりします。
子供達の笑顔を取り戻す為、奮闘しています。
●ROOとは
練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界をR.O.O(Rapid Origin Online)と呼びます。
練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、原因不明のエラーにより暴走。情報の自己増殖が発生し、まるでゲームのような世界を構築しています。
R.O.O内の作りは混沌の現実に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在する等、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されるようです。
練達三塔主より依頼を受けたローレット・イレギュラーズはこの疑似世界で活動するためログイン装置を介してこの世界に介入。
自分専用の『アバター』を作って活動し、閉じ込められた人々の救出や『ゲームクリア』を目指します。
特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline
※重要な備考
R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。
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