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シナリオ詳細

<ナグルファルの兆し>子ペリオンオバーライド

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「フゥーハハハハハ! 拙者の名は怪盗グルメ侍。美味しそうな者であればイレギュラーズであろうが神であろうが喰らう者!」
 片手にお茶碗片手に箸、腰にガスバーナーと中濃ソースを装備した侍が笠をかぶって現れる。咲々宮 幻介(p3p001387)である。
 笠の下からギラリと目を光らせたそのさきに、『たべないで』と書かれた段ボールに入った小型のハイペリオン通称『子ペリオン』が身を寄せ合っていた。
「ペ、ペリヤデ……」
「クククこれはこれは美味しそうにまるまるとした鳥ではないか。まずは貴様らを鶏鍋に、塩焼き鳥に、いや照り焼きもいい!」
「ハイペリオン様の分裂体が食べられちゃう! みんなー! あの人を呼んで!」
 そのそば。マイクを持ったミスト(p3p007442)が振り返った。
 幻介やミストたちの立つステージの下。観客席に並ぶ子供達。
 せーの、のかけ声で子供達が声を上げた。
「「たすけてー! ハンマーマーン!」」
「トゥォウッ!」
 ステージ脇から両手にハンマーを持ち頭のハチマキにもハンマーを刺しなぜか頭からだくだく血を流したハロルド(p3p004465)が日イチで人をヤっちゃってそうな殺人スマイルでダブルハンマーをかざした。臨戦態勢のヒグマみてーなフォームだった。
「ハァ゛ーーッハッハッハッハァ! 子供達の夢とハイペリオン様を狙う奴は許さん。殺して晒して引き回してやる!」
「発言が完全に悪役だけどがんばってハンマーマン!」
「トリヤデッ」
 ミストの頭上でうずくまっていたトリヤデさんがプルプル震え始めるが、ハロルドは更にハッスルした。
「死ねェエ侍野郎が! まずは目だ! 次は耳! 鼻! 無感の闇で怯えて震えろ!」
「侮るなよハンマーマン。貴様を今から十八等分にしてくれる!」
 二人のマジなやつらがオラァって言いながら殺し合いを開始し、血という血が噴き荒れた。
 子供達は震え上がり、そこへ遊園地ハンマーランドのスタッフたちが集まってくる。
「大丈夫だよボクちゃんイヒヒヒヒヒヒ!」
「俺たちは怖くないぜェー!? 優しいゼェェェェェ!?」
「ヒャーーーッハーーーーー!!」
 キャンディや苺ジャムのついたチュロスをペロォって舐めながら両目かっぴらいて笑うモヒカン棘パッドのスタッフたち。子供達は悲鳴をあげて逃げ出した。
 がらーんとなったステージの上、ヒューヒューいいながら向きあい『おら来いよ、トドメを刺しに来て見ろ心臓はここだぁ!』とか叫んでるハロルドと心を無にして必殺剣を繰り出しまくる幻介がそこにいた。
 震え上がる子ペリオンとトリヤデ。二匹を腕に抱え、ミストもミストで震え上がっていた。ゴトンと落ちたマイクに、ハウリングがひびく。

 ここは幻想王国。生ける伝説の土地、神翼庭園ウィツィロ。
 かつて勇者と共に大陸を冒険した神獣ハイペリオンが復活したことで、これらを観光資源にした遊園地ハンマーランドがKHK(急にハロルドが来たので)再建され、没落貴族扱いされていたウィツィロ家も勇者ブームも相まって派手に再興されていた。
 具体的にはこう。
「お疲れさまなのだー。あっはっはー」
 両手の指という指に指輪をつけ白くてなんかキラキラした服をきた領主サニーサイド・ウィツィロがうきうきウィツィロくんカートに乗ってやってきた。
「ハロルドたちが働いてくれたおかげで大もうけなのだ。王家も最近いい顔してくるし、いろんな貴族からパーティーに誘われるのだ。うはうはなのだ!」
 はっはっはーと言いながらおでこをぺかぺかさせるウィツィロ。そのおでこを幻介とハロルドが同時にペチーンとやった。一瞬で指輪(プラスチック製)が吹っ飛んで服がびりいって破けいつものオーバーオール姿に戻った。
「調子にのるな」
「奢りは足下をすくわれるで御座るぞ」
「ごめんなのだ……」
 おでこを押さえてシュンとなるサニーサイド。
「ごめんついでに……こんなショーとかしてていいのだ? 大丈夫なのだ?」
「大丈夫かって」
「そりゃあ……」
「うん……」
 カートから立ち上がって振り向くサニーサイド。
 ミストとハロルド、そして幻介は同じ方向を見上げた。
 遠くに見える黒い殻。正体不明の巨大な黒き卵からは、日に日に大きな力を感じていた。


 『黒き卵』。
 その辺の建物よりもはるかに巨大なこの物体が突然ウィツィロに現れてから半月ほどが経った。
 勇者総選挙が集結し、幻想は新勇者誕生に湧いている。そんな賑わいの裏では、ひっそりと、しかし確実に黒い現象が起き始めていたのだ。
「まただ、今度は幻想の北側。北方戦線だ」
 新聞をテーブルへ投げるハロルド。ステージ衣装を着替えてラフな姿になった幻介がスポーツドリンク片手に新聞を手に取ると、『北方戦線に謎の黒卵』という見出しが躍っている。
 北幻想辺境貴族ボリス・トパロフが管理する『永続戦争地帯』と呼ばれるエリアがある。
 彼の方針である、鉄帝と幻想の戦争が永続することによって両国の平和は護られるという考えのもと、きわめて狡猾に戦いを長引かせ続けている不思議なエリアだ。
 だがそんな場所に突如現れた巨大な卵。
 卵は僅かにヒビが入り、その小さな隙間から様々なモンスターが現れては周囲の兵達へ無差別に襲いかかったという。
「ヤデ……」
 新聞紙をのぞき込むトリヤデさん。窓の外に目をやると、全く同じ卵が鎮座している。
「そうだね、あれと無関係とは思えないよね」
 今回のように『黒き卵』が幻想各地に現れては無差別に人間を襲うという事件が頻発していた。
 大抵の場合現地の兵力によって対応できているが、ウィツィロほど巨大なものが現れ沈黙状態に入ったので対応に困るというケースもいくつかあった。
「いざとなれば、ローレット全体に救援要請をする必要があるかもしれんな」
「いざとなれば、でござるな」
 ハロルドと幻介は、ほんの一秒だけ同じ顔をした。
 どういうこと? と二人の顔をきょろきょろ見るミスト。とトリヤデ。と子ペリ。
 答えを示すかのように、ハロルドが椅子から立ち上がった。
「ステージバイトのついでだ。ちょっとついてこい」

 マイクロバス『ハイペリオン号』が、ハンマーファームをはしっていく。
 あまりに巨大すぎて遠近感が狂いそうになるが、確実にあの『黒き卵』に向かっているのが窓からの風景でわかった。
 ハンドルを握るハロルドと、その助手席で風景を眺めるミスト。
 幻介は後部座席で腕を組んで瞑目いたが、バスが停車したことで目を開ける。
 扉を開き外の芝生へ出ると、ハンマーフォースの防衛部隊とバリケードによって黒い卵を囲む厳戒態勢が敷かれていた。
 そのなかには、ローレットのイレギュラーズたちの姿も僅かにあった。
「揃ったな。見ろ」
 ハロルドが指さすと、黒い卵の一部にヒビが入っているのがわかった。
 新聞の内容を思い出し、反射的に刀に手をかける幻介。
 まるで自分に向けられた殺意を理解しているかのように、殻は僅かにやぶれ、内側から無数の魔物――古代獣が現れた。
 その多くが蛇の頭をもつ巨人や、翼ある獅子頭の巨人。いずれも身体を真っ黒に染め、目だけをぎらぎらと白く光らせている。
「こうやって魔物が湧き出ている。まだ数は少ないが、ハンマーフォースで対処するにもいつか限界がくるだろう。こいつはウィツィロ領主サマからの依頼だ。魔物退治に付き合っていけ」
 いいものが見られるかもしれんぞ、とハロルドは聖剣に手をかけた。
 巨人達が咆哮をあげ、こちらへと挑みかかってくる。
 戦いは、避けられない。

GMコメント

■オーダー:古代獣の退治
 『黒き卵』から生まれ出る魔物を退治するという依頼内容です。
 が、このシナリオには隠しギミックがあります。説明しちゃった時点で隠れちゃいないのですが、これをおやつにしてプレイングをお楽しみください。

■隠し要素『子ペリオン・オーバーライド』
 皆さんが古代獣を倒せば倒すほど、古代獣が内包しているハイペリオンエネルギーが解放され、それをたまたまバスに乗ってきた子ペリオンが吸収していきます。
 一定以上エネルギーを吸収した子ペリオンは一時的に『進化』し、あなた専用のバディとして今回だけ一緒に戦ってくれます。
 (戦闘が終わると力を使い果たし元の子ペリオンに戻ってしまいます)

 進化した子ペリオンはPCの特徴をちょっと引き継いだ外見となり、同じような戦い方をしようとします。
 例えば幻介ペリオンなら赤い一房の毛がちょろっとさがったポニテ髪(?)のペリオンとなり、羽根を硬質化させた刀で高反応斬撃を繰り出す戦い方をします。
 ミストペリオンならペリヤデって言いながら翼を広げ炎のパンチでゴリゴリ物理で戦うでしょう。

 序盤はエネルギーを確保するため(実際には依頼に応えるため)がしがし敵に攻撃していき、子ペリオンがオーバーライドしたら自分と相性ぴったりの子とタッグを組んで古代獣を倒しましょう。
 コツは、序盤はなるたけ攻撃に参加することです。参加することに意義があるきがします。

■エネミー
 敵は多数。三種類ほどおり、担当をわけつつ得意な敵にあたっていくスタイルがお勧めです。
 特にアーヴァンクとグラントォルを一緒に相手どると厄介なのでぜひ引き離しましょう。

・アーヴァンクΔ(デルタ)
 蛇の頭をもつ巨人。攻撃に毒の力があり、毒系以外にも様々な種類のBS効果をもった攻撃を仕掛けてくる。
 ダメージ系、拘束系、弱体系ととにかく山盛り。

・ケンロクエンΔ
 身体から松の樹木が生え鎧のように纏っている巨人です。
 翼をもっており、針葉を機関銃のように発射したり溜めたエネルギーで強烈な近接攻撃を放ったりと厄介なダメージディーラーです。地味に鎧に【反】効果があります。

・グラントォルΔ
 赤い稲妻を纏う巨人です。神秘系の攻撃に優れ、見た目の割に動きが速く捕らえづらいという特徴があります。
 また攻撃には【呪殺】効果がついていますがグラントォルの与えるBSの種類は少ないので、これ単体ではそんなに脅威ではありません。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <ナグルファルの兆し>子ペリオンオバーライド完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年05月24日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

咲々宮 幻介(p3p001387)
刀身不屈
ハロルド(p3p004465)
ウィツィロの守護者
ジェック・アーロン(p3p004755)
冠位狙撃者
ミスト(p3p007442)
トリヤデさんと一緒
伊達 千尋(p3p007569)
Go To HeLL!
胡桃・ツァンフオ(p3p008299)
ファイアフォックス
耀 澄恋(p3p009412)
六道の底からあなたを想う
日高 天(p3p009659)
特異運命座標

リプレイ

●防衛、迎撃、ハンマーランド!
 空!
 芝生!
 そして――
「トリヤデ!」「ペリヤデ!」
 同時にY字のポーズをとったトリヤデさんと子ペリオン。
 流れる『おはようございました』のテロップ。
 視線を上げると同じポーズしていた『トリヤデさんと一緒』ミスト(p3p007442)がカッと振り向いた。
「古代獣があんなにたくさん! 一体どれだけ……。
 早くここが安全な場所になるように頑張ろうね、トリヤデさん!
 ハイペリオン様と子ペリオンさんと、ハンマーランドのために!」
 一度三羽(?)同時に両腕をさげると、Y字ポーズで飛び上がった。
「わふー☆」「「ヤデ!」」
 さあ、そうと決まれば戦闘態勢。
 『裏咲々宮一刀流 皆伝』咲々宮 幻介(p3p001387)はお茶碗と箸をぽいっと肩越しに放り投げ腰から抜刀。まるで意思をもつかのごとく刃がギラリと陽光を照り返す。
「バイトに来ただけで御座ったが、面倒事を押し付けられたで御座るなぁ。
 どちらかといえば、此方が本命な気がせぬでもないが……知らぬ仲の者の領地でもなし、放ってはおけぬか」
 その隣では『聖断刃』ハロルド(p3p004465)がハンマーマンの仮面を同じく放り投げ、聖剣リーゼロットを抜刀した。
 彼の意思や覚悟を示すかのごとく聖剣が光を燃え上がらせる。
「卵の周辺は既に決戦の場として整えてある。さぁ、HLRC名誉会員の諸君! 遠慮はいらん! 存分に暴れてやろうじゃねぇか!!!」
「「イエス! ハンマーランド!」」
 棘付きの肩パットのモヒカン警備員(警備員だよ)たちが一斉に斧や棘ハンマーを掲げて叫ぶ。彼らの役目はもし万が一古代獣たちが外へ出てしまった際確実に迎撃すること。周辺住民の安全を確実に守ることだ。
 古代獣を倒す第一迎撃部隊は、ハロルドたち八人のイレギュラーズに任されているのだ。
「黒い卵から漏れてくる奴らは、なるべく倒さないとね。
 ……真ノワールクロウはいずれ倒さなきゃだけど。
 なるべく力は集めたくないから……今の内に削らないと」
 『神翼の勇者』ジェック・アーロン(p3p004755)はガスマスクを装着し、組み立て終わったライフルのセーフティーを解除。弾を込めレバーをガッチャンと操作した。
 その横で子ペリオンがジェックをチラ見しながら『こうかな?』みたいな感じでライフルガッチャンの動作を木の枝でやっていた。
 それに気づいて振り向くジェック。目があってまばたきする子ペリオン。
 なんか翼をグッてやってちからこぶジェスチャーをしたので、とりあえずジェックもグッてしておいた。ミラーリングは基本。

「コャー……。なるほど、これがハンマーランドの体験型アトラクション……。あとらくそん?」
 自分で言って自分で首を傾げる『ファイアフォックス』胡桃・ツァンフオ(p3p008299)。
「ともかく。これも行き掛けの駄賃というやつなのよ。魔物が発生するとか厄介な卵なの」
 戦闘態勢に入るべく、狐型の炎をぽぽっと召喚しシャドウボクシングのポーズをとる胡桃。
「勇者が選ばれて少しは市民の不安も減るかと思ったら、そんなの関係ないとばかりに魔物を生み出す黒い卵が次々と現れるとはな。全く騒動と危険のネタには事欠かない世界だぜ」
 『特異運命座標』日高 天(p3p009659)はブレスレットをかちんと装着すると、剣を抜いていつでも戦えるように気合を入れた。
「だがそれを何とかするのが俺たちだ。今回も全力で当たらせてもらう。
 さっさと終わらせて『子ペリオン』や子供たち、そしてアナトラと一緒にハンマーランドのヒーローショーの続きを観たいんでな!」
「はいブンブンブブブン、ハローブンブンハンマーランド! なんかドデカエッグのせいで大変みたいじゃねーの」
「はいブンブンブブブン、ハローブンブンハンマーランド! 先日の海上島の黒い卵からは小鴉で今回は巨人ですか。以前戦った輩の特徴を引継いでいるとは成長が見られますね」
 左右からヒュウンってスライドインしてくるシンメトリーポーズの『Go To HeLL!』伊達 千尋(p3p007569)と『花嫁キャノン』澄恋(p3p009412)。
 ふたりともかけていたハンマーサングラス(ハンマーの形してるサングラス)を外して放り投げると、片手をピストルみたいにして顔の横で立てるポーズをとった。ふたりして。
「真ノワールクロウの再誕も近いと見ました、雑魚共は即ぶっ潰してウィツィロの平和を取り戻しましょう!」
「オーケェーイ! 『悠久ーUQー』の伊達千尋に任せておきなって!」
 レディーゴー! て言いながら走り出す二人。え、もう? という顔で胡桃と天も走り出す。
 そう目指すは黒き卵より発生した巨人たち。
 倒すは怪物。守るは平和。
 きわめてシンプルな戦いが、いま始まる!


 蛇の頭をもつ巨人、アーヴァンクΔ。体にまとった毒液や毒の霧をそのままに、ラグビー選手のごとく屈強かつ巨大なボディで突進をしかけてくる。
 それに対抗したのはみんなの花嫁澄恋。
「ないすはんま゛ァ゛ー゛ッ゛!」
「矮小なる勇者の子らよ、大地を明け渡し滅び去グフウ!?」
 激しいデスボイスと共にきりもみ回転しながらまっすぐミサイルみてーにとんでいった澄恋がアーヴァンクΔの腹に突き刺さった。
 くの字になって飛んでいくアーヴァンクΔ。
 当たりどころが悪かったのか脇腹おさえてじたばたしてるアーヴァンクΔを横目に、他のアーヴァンクΔ個体が拳をぽきぽきしながら前へ出た。
「フン、どうやら骨があるようだな。だがより完全体へと近づいた我ゴフウ!?」
「ないすはんま゛ァ゛ー゛ッ゛!」
「矮小なる勇者の子ごときが調子にゲフウ!?」
「ないすはんま゛ァ゛ー゛ッ゛!」
 なんだろうこのそらとぶルンバ。
「ハンマーランド復興委員会名誉会員の澄恋、再びデートスポットの危機を察知し推参ッ
此処をぶっ壊す野朗は我が恋愛計画を邪魔する恋敵とみなし成敗してくれるわァ゛!」
 両目からサーチライトみたいな光放ちながら両手をわきわきさせる澄恋。
 ミストとトリヤデさんはぷるぷるしながらその様子を見ていたが、はっと気を取り直して鞄に手をつっこんだ。
「この前はおなじような蛇にトリヤデさんをがっつり噛まれちゃったし、徹底的に燃やして八つ裂きにしてやるぅ!」
 鞄から取り出した卵型爆弾。白いボディにトリヤデさんの顔とかはねとか書いてあるトリヤデボムないしはボムヤデである。
「トリヤデさんの仇ぃ! 恨みをぉ――思い知れぇ!!」
「ヤデッ!?」
 死んでませんけどって顔で二度見するトリヤデさんをよそに、豪快なアンダースロー投法でぶんなげるボムヤデ。いいぐあいに回転のかかったボムヤデはアーヴァンクΔの口に突っ込まれそして爆発した。
「グハァ!?」
「わたし参戦」
 爆発したところに助走をつけた胡桃がジャンピングこやんぱんち。
 スローモーションでもふぅってなったアーヴァンクの顔面がめっちゃ歪み次の瞬間すげー勢いで吹っ飛んでいった。
「からの、らいとにんぐすた〜りんぐっ」
 空中でビッとポーズをとると、広域雷撃招来術『Lightning Stirring』が発動。遠隔発動した稲妻の渦がアーヴァンクΔとそれにぶつかった敵たちをまとめてかき回していく。
「くそっ! やりたい放題か! ケンロクエンは何をしている!」

 なにをしているかって。
「ハンマァァァァァァトマホゥクッ!」
 どこからともなく取り出したハンマーをぶん投げるハロルド。
 回転しながら飛んでいったハンマーがケンロクエンたちにぽこぽこあたってはカーブを描いて最終的にハロルドの手に収まった。
「ブーメラン!」
「なんだそれは」
 すごく真面目にケンロクエンをばきばき戦っていた天が二度見する。
「赤い稲妻を纏う巨人とはかなりの大物だな! 相手にとって不足はない、皆が他の奴を倒すまでお前は俺と遊んでいてもらうぜ」
 全身をトゲだらけの鎧に変えて殴りかかるケンロクエンを、剣でがっつり防御する天。
「そういえば黒い卵は壊すと爆発してとんでもない被害を出すらしいな。絶対に手を出さないようにするが……このケンロクエンもこちらから攻撃しないほうが得なのか?」
「然様で御座る」
 幻介がブゥンと残像を作って現れ、天の横へと立つ。
「針をつかった遠距離攻撃と反射特性。長期戦になれば厄介な個体。特に『自由にさせない』ことが重要で御座る……が、コマンダーより伝達、『トベ ハロルド』! 繰り返す『トベ ハロルド』!」
「――『アレ』をやるのか!」
 手を止め、ハッと振り返るハロルドのもとへ幻介が素早く駆けつけ、彼の肩を掴んだ。
「ハンマーランドでは『誕生日のお祝い』サービスも行っております! 卵から生まれてきたお客様! ウェルカム、ハンマーランドォォォォォ!!!」
「ウェルカム、ハンマーランドォォォォォ!!!」
 幻介はハロルドを頭上に担ぎ上げ、そのまま猛烈な速度でダッシュ。
 気合を込め、まるで紙飛行機を思い切り飛ばすかのようなフォームでハロルドを投擲した。
「飛べ、ハロルド!」
「ハンマァァァスパァァァーーークッ!!!」
 一瞬だけポチドリくんのキグルミを纏った姿になると、ハロルドは聖なる光を放ちながら豪速水平飛行によってケンロクエンへ激突。そのまま土手っ腹を貫いていく。

 次々と爆発四散していく巨人古代獣たち。
 グラントォルがその様子に焦りの表情を見せ始めた。
「俺がこうやってイケイケで前に出れんのも、遠距離攻撃勢のバックアップあってこそなんだよな。
 ジェックジェックジェックジェックよォ~~~~~~。
 俺はオメーを信じてるんだ。
 お前の『ラフィング・ピリオド』はその気になりゃあ何者にも負けねースキルじゃねえか? そうだろ?」
 適当な子ペリオンを抱えると額をくっつけてぺちぺちなでなでする千尋。
 なんか急に顔が縦長になる子ペリオン。
「しゃあ、行くぜぇ!」
 千尋は子ペリオンをそっと置くと、グラントォルめがけて豪快なジャンピングキックを――。
「フゥン!」
 一瞬でグラントォルに○肉バスターをかけられた。
「ぐああああ助けてジェーーーーック!」
 ピシューンと音をたて、腹を撃ち抜いていく銃弾。
 グラントォルはばちばちと赤い雷を放電させながら転倒した。
 ふとみると、障害物の後ろから狙いをつけていたジェックがピッとサムズアップしていた。
「ジェーーック!」
「チヒロの発言はちょっと大げさだけど、まぁ、ね。信頼には応えないとじゃん? ──最初っから全力で、いくよ」
 グラントォルたちはジェックに狙いを定め、槍状に固めた赤雷を投擲しはじめる。
 ジェックは障害物から飛び出して走りながらもライフルを一発ずつショット。
 そのさなかに千尋もげしっと膝の後ろを蹴りつけてグラントォルのバランスを崩すとジェックの弾を直撃させた。
 崩れ落ち爆発し、白い羽根がちっていく。
 それをヒュンって吸い込んでゴックンと飲み込んだ子ペリオンが、急に白く光り始めた。
「えっ、なに?」

●子ペリオンオーバーライド
 突如として八体の子ペリオンが発光し、そしてその姿を変えた。
「怪我はないかい小鳥チャ……おや?」
 うっかり巻き込まれそうになった子ペリオンをかばった澄恋。振り返ると角の生えた子ペリ……否すみぺりおんが『キェエエアァ゛!』て鳴いた。
 とりま一旦吸ってから、新たに出現した巨人たちへと身構える。
「太陽の翼とプロ花嫁が合わされば敵なしです!」
「お、おお……」
 剣を構えてしゅっしゅって素振りする天ペリオンに若干困惑する天。
 一方でミストのそばではおそろの翼を広げたミスペリオンが燃える拳をシュッシュしていた。
「子ペリオンさんもここを守りたいんだよね。わかった、一緒に敵を殲滅しよう!」
「トリヤデ!」
「とりやで!?」
「コャー、すっごい。
 何だか知らんが、とにかくよし!
 今こそその焼き鳥、もとい火の鳥の力を見せる時なのよ〜」
 同じく身構えた胡桃の前には狐耳としっぽをはやしたファイヤー子ペリオンが『コャー』て言いながら炎の拳をシュッシュしている。
 千尋はといえば、サングラスした伊達ペリオンが黒いジャケット羽織って『ドッドパ』てBGMを流していた。
「いいぜ、あのでっけぇ連中をブッ倒してやろうじゃねえか!
 ヒューゥ! まるで音を置き去りにしてるみたいだぜェ!!」
 二人でバイクに飛び乗って爆走――したら二人揃ってグラントォルにバスターされた。伊達ペリはあたまからがぶってかじられた。
「助けてジェーーーーック!」
「えぇ……」
 ジェックがふと見ると、枝を構えていたじぇっくぺりおん……ジェッペリオン(?)がガスマスクを装着していた。
「にゃ?」
「それはやめて」
 と言いつつライフルでピンポイントスナイプ。全く同じ箇所を撃ち抜くと、自由になった伊達&伊達ペリオンが近くの巨人を蹴り飛ばす。
 そこへ澄恋&すみぺりおんが錐揉ミサイルとなって突っ込み天&天ペリオンがクロススラッシュ。
 ミスト&ミスペリオンと胡桃&ファイヤー子ペリオンが跳躍し――。
「てとら・ふぇにっくすふぁいなりてぃ!」
 炎のパンチで吹き飛んでいく巨人たち。
 幻介が超高速で走り、赤い前髪を垂らした幻ペリオンと共に連続高速斬りを繰り出していく。
 細切れになった巨人の中を、しろいふわふわ抱いたハロルドが光をまとって突っ切っていく。
「分かる……分かるぞ! ハンマーとは……! ハイペリオンとは……!」
 胸のふわふわがカッと怖い顔になると同じ光をまとった。そう、ハロペリオンである!
「今ならいける! さぁ、今こそウィツィロの心を一つに!」
「ペリヤデェ!」
「「ハンマァァァサァァァンシャイィィィーーーンッ!!!」」
 光となったハロルド&ハロペリオンはジグザグの軌道を描くと巨人をぶち抜いて爆発四散。
 焦ったのか、巨人たちは一箇所に集まり突如として融合。
 これまでの個体とくらべ何倍にもおおきな巨人へと変化する。
「無意味だ。ハイペリオンは人類を選んだ。
 わかるぞ、わかってきたぞ……宇宙とハイペリオンとおれとの関係はすごく簡単なことなんだ。ははは、どうして……」
 オーバーライドした子ペリオンたちは仲間たちと一緒に空へと飛び立ち、そして全員固まって巨大なハイペリオン型の光となった。
「これは――これが――」
 合体巨人の大きさにも負けないほど巨大なハイペリオン(なぜかひな鳥フォーム)となった彼らは、光の剣を作り出し巨人を豪快に袈裟斬りにした。
「ハイペリオンの、力!」

 気づけば巨人たちは跡形もなく消え去り、ひび割れていた卵も白い板上のもので塞がれていた。
 子ペリオンたちは目をバッテンにして気絶しており、よくみるとすやすや寝息をたてていた。
「一体……さっきのは……」
 確かに巨大なハイペリオンと融合したような感覚があった。自分の手のひらを見てその時の感覚を思い出すミスト。
 幻介が刀をおさめ、その横に並ぶ。
「ノワールクロウたち古代獣がハイペリオン殿の神性を奪い地上人を滅ぼそうとするなら、それに対抗する力もまたハイペリオン殿にあるはず。しかしその力は一度使えばこうして失われてしまうもののようでござるな……」
 澄恋やジェック、千尋や胡桃や天たちも同じように自分の手を見る。
 そして、ハロルドもぎゅっと自分のそれを握った。
「ノワールクロウはいずれ復活する。だがそれを倒すための力も、ここにある。
 ハイペリオンと……俺たち(ローレット・イレギュラーズ)だ!」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ミッションコンプリート
 ノワールクロウが完全復活した際に対抗できる手段を見つけました
 戦いに向け、準備が進められています……

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