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シナリオ詳細

怪異譚別書:跪拝の蟹

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●録音音声
 ザ、ザ―――……こんにちは。澄原水夜子です。テストテスト。OK。
 これより私は阿僧祇霊園を離脱し、佐伯製作所へと出向致します。観察対象は『Project:IDEA』、Rapid Origin Online。
 仮想世界用アバターは澄原晴陽に制作を依頼しました。
 其れでは早速潜入する前に状況を報告致します。

 現状、希望ヶ浜学園からは佐伯製作所にRapid Origin Onlineテスターとして生徒が貸与されています。
 正式な数は現状把握できては居ませんが再現性東京内では其れ等は大規模な行方不明事件として扱われております。
 無論、情報統制は、しっかりと。佐伯製作所の名は出ておりませんから……本当に『大規模な行方不明事件』です。
 子供が出掛けたきり帰ってきていないという通報や、学園内での捜索も開始。
 勿論、『希望ヶ浜県』は『再現性東京』の中でも外部を許容しない都市です。
 彼等は混沌世界の中にありながら其れ等全てがなかった事として認識しています。
 不可解な神秘や魔法、そもそもイレギュラーな行い全てが『怪異の仕業』となってしまうのですから……。

 人が行方不明になるウェブゲーム! それって『都市伝説』としては実に巫山戯た存在です。
 ……願わくば、新たな怪異譚の発生となりません事をお祈りしております。

●Rapid Origin Online
「あ、来た来た! えーと…… イレギュラーズさんですね。
 私はMiss。お気軽にみーちゃんでも、すみちゃんでも、みすちゃんでも何とでもお呼び下さい」
 その口調から分かる者は判別が付くだろうがずんぐりむっくりとした『ビーバー』を名乗るアバターは希望ヶ浜で活動をしている澄原 水夜子(p3n000214)である。
 彼女曰く、再現性東京2010街 希望ヶ浜は『R.O.O』のテストユーザーとして参加した学生達が行方不明になっていることが連日報道されているらしい。勿論、ゲーム参加者が行方不明になった事は報じられるが『閉じ込められた』とは言われない――そんなファンタジーが有り得て良い場所ではないのだ。
 ワイドショーでは大規模なオフ会に参加した学生が何らかの事件に巻き込まれたのではないかなど面白おかしく語られる、そんな毎日だ。
「で、余りに大騒ぎなので幾人か救出して警察に駆け込んで大騒ぎしていらっしゃる親御さんの元へ戻してやりたいなと思いました。
 勿論、経過の観察は晴陽姉さん――澄原病院の晴陽院長に見て貰う事としております。
 希望ヶ浜学園の学生さん達なので皆さんの中に知り合いもいるかも知れませんねえ……!」
 Miss(p3y000214)は救出対象の名簿を差し出した。高等部に所属する学生の名前が並んでいる。
「学生達がどうやらクエストに躓いてしまったり、不慮の事故で囚われたままでして。それをクリアして救出します。
 それでぇ……今回がどういうクエストかと言いますとーじゃじゃん、此方です!」

 討伐対象『蟹』――

「実は、鋼鉄に『大きな蟹』がおりまして。これがまた、巨大なのです。
 近隣の住民や家畜を攫って行く蟹……ええ、どうして『海辺でもないのに!』って感じですよねえ。そこがミソです」
 Miss曰く、この蟹はある怪異に類似しているのだという。鈴鹿山麓に住み着いた化け蟹、と彼女は言う。
 それはそれは巨大なこの蟹を討伐してこなくてはならないのだという。
 其れを討伐し、教えを説き念仏でも上げて供養してやれば、蟹の流した血は飴のように変化するのだという。
「まあ、ここまで怪異の話をしておいてなんですが。怪異をモチーフにしているっぽいこの蟹をですね、倒さねばなりません。
 つきましては、この蟹が攫っていった対象なのですが、それが、まあ、希望ヶ浜学園の生徒数名なのですよ」
 彼等は蟹を倒せず其の儘『クエスト』を攻略できずにゲームに閉じ込められている状況なのだろう。
「まあー、まずは『状況確認』の為にこのクエストをこなしましょうよ! ねえ!
 ……そこから調査を進めれば良いでしょう。うんうん。希望ヶ浜での現況を照らし合わせながら少しずつ救えば宜しい」
 そこまで言ってからMiss――水夜子は困ったような『何時もの』声音で呟いた。

「……暴走したシステムですから、早めの内に救わねば何が有るかわかりませんし、ね」

GMコメント

夏あかねです。希望ヶ浜じゃあ、行方不明事件なんですね。

●成功条件
 クエストをクリアしましょう

※重要な備考
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。

●クエスト『鉄蟹に跪け』
 モンスター討伐クエストです!

 ~巨大な蟹が現われた。なんでもその蟹は倒して念仏を唱えれば流れた血が固まって赤い飴のようになるらしい。
 それを近くの塚に持って行けば奴が攫っていった家畜や村人を救い出せるだろう~

 ・『化け蟹』
 巨大な鉄の蟹。何故か蟹なのに前に歩いてきます。バグだ。
 バブル光線と鋏による攻撃を繰り出します。時々、反復横跳びをし始めます。
 反復横跳びをし始めたら次のターンに攻撃力がものすごく高い攻撃をしてきます。その姿はまるで跪いて祈るかのような……。
 水夜子曰く、この蟹はとても再現性東京の怪異に似ている気がするのだそうです。イヤですね、怪異。外に居たのと同じようなの、いるかな。

●希望ヶ浜の学生 *3
 『鉄蟹に跪け』と言うクエストを「蟹に跪けばいいんだろ」と軽い気持ちで受けた学生です。
 クエストがクリアできずに蟹に攫われていって塚に囚われています。倒した後に飴を捧げれば救出可能です。
 お知り合いかも知れません。高等部の学生です。

●同行NPC Miss(p3y000214)
 澄原水夜子。希望ヶ浜で活動している怪異の専門家です。
 希望ヶ浜を騒がせる行方不明事件の調査に携わり此処まで遣ってきました。賑やかしです。

それでは、頑張ってきて下さいね。

  • 怪異譚別書:跪拝の蟹完了
  • GM名夏あかね
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年05月28日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

Siki(p3x000229)
物語の続きを
花糸撫子(p3x000645)
霞草
スティア(p3x001034)
天真爛漫
縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧(p3x001107)
不明なエラーを検出しました
イルミナ(p3x001475)
冒険者
玲(p3x006862)
雪風
リック(p3x007033)
ホワイトナイト
ウィード(p3x009132)
どこへでも

リプレイ


 蟹。蟹塚。
 それは何処ぞに伝わる都市伝説や怪異譚であるとMiss(p3y000214)は静かな声音で告げた。己の『現実での姿』を隠すことはない。彼女はあくまでもクエストクリアのフラグにとって獲得できる褒賞(トロフィー)の為に活動しているのだという。
 そのトロフィーとは――「学園の生徒! 成程! となればイルミナのやる気もいつもの倍はあるッスよ!」
 褐色の肌に勝ち気な眸。『冒険者』イルミナ(p3x001475)はやる気を漲らせ、ログアウトが困難になって仕舞った学生達を直ぐに救うと宣言するが――「はっ、ロールプレイのこと忘れてました!」
 此処はR.O.O。練達の生み出した仮想世界、フルダイブ没入型ゲームなのである。イレギュラーズ達はプレイヤー同士である事は解るが、プレイヤーが誰であるかを公言しなくても良いらしい。……最も、本名プレイをして居る面々にとってはそれも関係ないのだが。
「こほん……うっし!ちゃちゃっと倒して、カニ鍋にしようぜ、カニ鍋!
 ……じ、冗談だよ。飴にしなきゃいけないのを忘れてたわけじゃないぜ!」
「カニ鍋……食べれるのかな? けど、カニって水がなくても大丈夫なのかな。放っといても、死んじゃわない?
 ――って思わなくないけど、此処は仮想世界だしなんでもありなのかな。うーん、不思議だね?」
 何時もと変わらぬ様子で『天真爛漫』スティア(p3x001034)は首を傾いだ。彼女の興味はもっぱらクエストターゲットになる『蟹』である。
「それはそれとして捕まっている人がいるからには放ってはおけないよね! 頑張って助けるよー!」
「そうだな。死んでも復活できるとしても、R.O.Oから出られないのは大変だ」
 うんうんと頷いた『マスカレイド・ナイト』リック(p3x007033)。アバターは人間サイズに、外見と装備は騎士をモチーフにした。
 仮想世界R.O.Oでの英雄譚を始めるべく三叉戟『ナーメルギア』をえいえいおーと掲げてみせる。彼にとっても普段と違う姿はまた新鮮だ。
「それで――クエストですが……」
 ポップアップしたクエスト名は――『鉄蟹に跪け』
「変なクエスト名ですねぇ、跪いちゃったら隙だらけじゃないですか。そりゃあ間違えもするでしょうに」
『どこへでも』ウィード(p3x009132)はうんうんと頷いた。クエスト詳細にはしっかりと蟹の討伐に付いて書かれているが、クエスト名を見るだけならば間違えてしまうのは確かだ。どうしてモンスター討伐クエストは、モンスター視点なのだろうとウィードは首を捻った。
 その思考を遮るように勢いよくその身を躍らせ飛び出したのは『緋衝の幻影』玲(p3x006862)。ポニーテールがふわふわと揺れ唇は弧を描く。
「にゃーっはっはっはっは! エネミーの討伐クエと聞いて妾、華麗に参上じゃあ!
 カニじゃろ? カニ! バッといってしゃきーんとやっつけてかっこよく救出してくるのじゃ!
 ちなみに妾は塩ゆででマヨネーズ派じゃあ!」
「ええ。ともかく、蟹退治ですね! 頑張りましょう! 大きい蟹なら食べるとこも多そうですね。……あ、飴になっちゃうのか」
 ウィードに玲とスティアは「食べれないの!?」とショックを受けた。余りの衝撃に二人は「ががーん」と声に出す。
「ええっ、私、R.O.Oの中でも蟹を捌いていくぅッ! ってするつもりだったよ!」
「妾は其れを食べるつもりじゃった!」
 二人の声を聞きながら『霞草』花糸撫子(p3x000645)はくすくすと笑う。食べられるかは気になるがモンスターの蟹というのはどうなのだろうか。そもそも普通の蟹ではない事が気になるのである。
「いや~食べれるかも知れませんし、食べれないかも知れない。もしかすると飴にならずに蟹で居てくれるかも知れませんよ! クエストクリアの報酬が蟹かもしれませんし?」
 けらけらと笑ったMissを見てスティアは「それなら楽しみだね!」と微笑み、玲はからから笑う彼女に唇をつんと尖らせた。
「ぬ、なんじゃい、みや……Miss殿。おぬしは危ないから、そこでもちもちして待っておれ。終わったら迎えにくるでのう」
「ええ、待っていますよ! もちもちもち……」


 再現性東京のイメージさえも取り入れたのか。それとも、システム構築の際に研究者達がある程度故郷の知識を入力してあったのは分からない。
 ネクストは日々、バグで変化する部分もある。全容を知るにはまだまだ容易ではないのだろうと『青の罪火』Siki(p3x000229)はぼんやりと考えた。
「ま、いいさ。ええと、蟹を討伐すればいいんだろう? 現実とは色々勝手も違うし苦労しそうだけれど。
 ま、一度受けたクエストだし、頑張るとするかね。攫われたって生徒たちもほっとけないし」
 彼女も最近、シトリンクォーツの旅行で蟹を食べたばかりだ。終わったら食べたいのには激しく同意なのだろう。
 蟹。確かに其れは食をそそる者ではあるが――『不明なエラーを検出しました』縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧(p3x001107)はまた違うことを考えていた。
(蟹塚とは随分と珍しい噺だねぇ。再現性東京のどこかにも伝わっているのかな?
 8つに割ってしまうのはほんのちょっぴり気の毒だけど、クエストである以上頑張らないとね)
 普段は饒舌である縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧は『言葉を発する』事が少し難しかったかのように身悶えた。
『が ばる』
 縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧の言葉に頷いたウィードは「大きい」と小さく呟く。見上げるほどの大きさ、確かに此れは『跪きたくなる』存在感を有するかにが其処には立っている。
「これがクエストのターゲット……。
 そういえば、死ぬのを気にしなくていいのかなって思ってたんですけど、その場ですぐ復活できるわけじゃないんですね。危ない危ない。
 デスカウント歓迎のプレイスタイルですけど、死ぬのはここぞって時にしないと!」
 死した場合、直ぐにリスポーンできるわけではないのならば、この大きな蟹との戦闘にも留意しなくてはならないか。
「ひと狩り行こうぜ!」
 指さして玲は無邪気に笑った。相手は蟹だ。つまり、横歩きをする生き物である。ならば、と側面へと回る玲に気付いたように蟹が『進行方向:前』でするすると進んだ。
「……前に歩くとか卑怯じゃろ。というか此奴、現実にもおるのか――妾パス」
 パスはどうやら出来ないようである。近付いて『ボコボコ』にするしかないかと玲は腹をくくって唇をぎゅっと噛んだ。
「――というかこのゲーム始めたばかりじゃから戦法もへったくれもなくてのう! カニには悪いが肩慣らしになってもらうしかないのう!」
 と、言うわけで『ひと狩り』開始なのである。ショートボウを手にしたSikiはふわりと宙を踊る。見上げるほどの蟹ともそれで視線が合う気がするのだ。
「倒して、赤い血の飴を近くの村に……おっけー、いこうか」
 頷き、花糸撫子が躍り出る。墓守姫の旋律は優しく彼女の周囲を包み込んだ。流れる調べのヴェールは彼女の体を包み込む。花精霊を包んだその加護は邪なる刃を弾くもの。
「痛くないに越したことはないものね?」
「うんうん! 確かにとっても痛そう。大きい鋏でばちーんって叩かれちゃいそうだしね……!」
 宝剣アクストラクロスを握りしめ、スティアは真っ直ぐに踏み込んだ。名付けて『スティア・スペシャル・アタック』。その場の思いつきで何とかするスティアのスペシャルな攻撃方法だ。
 花糸撫子の旋律に合わせて飛び込んだのは愚直なまでの一撃。がちりと音を立てて蟹の鋏にぶつかった刹那、直ぐに、飛び込んだのは縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧の放ったスキルであった。
(――それにしても、巨大だ。ああ、伝承を顕わしているが故に、と言った風情だろうかな?)
 蟹の甲羅は固い。だが、間接部は狙う価値はあるだろうか。前に歩く蟹であれど、前後に押し倒して転倒させれば簡単には起き上がれないだろうと『譛?菴朱剞縺ョ諢乗?晉鮪騾』を以て辿々しくも伝え往く。
「成程? 蟹の出方を確認したら転がしてみるか!」
 よし、と大きく頷いて三叉戟『ナーメルギア』を真っ直ぐに突き立てる。リックは波頭の騎士として揺るぎない信念をその一撃へと乗せていた。
「そう! こういう相手はまずはバランスを崩すところから……ってな!」
 位置取りには気をつけて。同田貫の切れ味は抜群だ。イルミナは鋭い一撃を放ち――蟹の体を打ち倒すべく狙いを定めた。
 その戦法こそ、自らを優れた存在と信じる者。蟹から見れば野蛮人であれど、確固たる誇りを抱いたバーバリアンの決意のように。
「脚の一本くらい折っちまいたい所だけどな……まぁ、固そうだな。流石に、『鉄鍋』か」
「鉄鍋というより、妾は蟹鍋がいい」
 呟いた玲にウィードは「確かにそうですね」と笑った。元々の口調を誤魔化すようなふわふわとした敬語に少し混じった幼さ。ウィードのロールプレイはそう簡単には揺るがない。喩え、目の前の蟹が激しく反復横跳びしていても――だ。


 蟹が反復横跳びをして居る。右に、左に。それは凄まじいスピードで。縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧は脚を狙ってみられないだろうかと『脚 狙お』とそう言った。発生する声はホニャホニャ、不明瞭ではあるがその意思は確かに伝わっただろうか。
 リックは「脚だな!」と頷き、『雷を纏うであろう』一撃を放った。まだまだ準備期間。名前もテクスチャーも出来ていないけれど、それは騎士にとっての立派な一撃だ。
 行動キャンセルを狙った縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧にイルミナは「背中の甲羅よか腹の方が柔らかそうだぜ。口からブッ刺すか!?」と問う。切れ味抜群の同田貫を振り上げて勢いよく叩き付ける。
「世界殿! 蟹は妾に任せると良いぞ! 蟹は固い。じゃが! 前に進めても『後ろには進めない』筈! 妾、天才では!?
 ええいっ! 死なないゲームに怯える妾ではないわ! ――押し通る!」
 勢いよく地を蹴った玲は『世界殿』――縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧の元へと蟹を生かせぬように気を遣い、斧を振り上げた。
 吸血種の始祖。その身に強力な力と伝承を持つ少女は、緋衝の幻影の二つ名を持っていた。夜の民が陽の下を歩けぬ等と、いつから錯覚していたか。
 ぐりん、と体を動かした。蟹が鋭く振り上げた鋏を寸での所で避けたウィードが「わ」と唇を噛んだ。
「で、でかいのばーんってぶちかまして反動で死ぬ、ってのも格好良くて楽しいかなと思ったんですが!
 うーん! スキル考えるのって難しいです! 使いづらい! ――けど、ここだ!」
『大きな衝撃』であるからこそ、その体に跳ね返るのも、また酷く重たいものである。『使い辛い』とは言ったが使えぬ訳ではない。
 恋心は毒のように密やかに。プリモ・アモーレより放たれた衝撃に、蟹の甲羅に僅かな罅が入る。
 死亡しても繰り返せるゲーム。だからこそ、ウィードは前のめりに死を厭わず、それでいて『出来うる限り気をつけた』
「何ィ!? こやつ、後ろにも進んでくるのか!」
 叫んだ玲に「危ない」と飛び込んだウィードは確かに感じた。圧倒的な死という気配。玲が「か、蟹め……」と畏れ慄く。
「ががーん! 蟹なのに後ろに進むなんて!」
 ぎょっとしたスティアはそれでも其れこそが『隙』で在るとこに気付いた。ここが好機だと放ったSSA。スティアの渾身の一撃。次いで、流れに身を任せ、自身の元へと引き寄せる。
 天真爛漫な少女は「こっちこっち」とふんわりと微笑んだ。
「私は、蟹を倒したらくーるな決めポーズをするって決めてるんだから! こうい7うのをするんだよね? だから、此処で倒れて貰わないと!」
 納刀ポーズを見せ付けるために。蟹の視線をがっちりホールド状態のスティアの前へSikiが滑り込む。
 命を奪う為の必ずや、という気概。華麗な装束に身を包み、ふわりと踊る。バトルドレスの裾がふんわりと揺れた。
「誰かを殺し続けてきた私だ。死に近いわが身が死を恐れるなんて冗談じゃない。でも……タダで死んでなんてあげないけどねぇ?」
 唇を吊り上げた。反撃するように蟹の『罅割れた』甲羅へと叩き付ける鋭い一撃に、蟹の鋏が激しく揺れた。
 もう一度、ステップ踏むように空を舞い、そして叩き付ける。龍は重力になど左右されない。ただ、美しく剣戟を披露するだけだ。
「ふふ、素敵」
 微笑んで、髪を揺らした花糸撫子はその光景を双眸へと移し込んだ。世界の色彩溢れるその中で、衝撃的なまでに繰り広げられる戦闘は、どれ程までに素晴らしいか。
 ぶくぶくと泡が滲む。攻撃の効果が出ていると、花糸撫子は『眸』で見て、気付いた。スティアの元から蟹の視線を奪うように。
「あなたも歌がお好き? ぜひ聴いていって頂戴な!」
 響かせたのは紡ぐ詩。ヴェールの様に揺らめいたその加護を纏いながら、魔性の歌声を伸びやかに響かせる。
 蟹の鋏をその双眸へと移し込んでから、ぺろりと舌を見せた。歌姫は揶揄い笑う――最後の最後まで粘り粘って『クエストクリア』へと道筋を辿ってやるのだと。
「お歌が好きならば、もっと聞いてくださるかしら?
 それだけ動くのならば身は引き締まっているんでしょうね。とっても、楽しいわ!」
 ふわふわと、謳う様な声音が跳ねる。花糸撫子へと飛び込んでゆく蟹爪をまじまじと見詰めていた縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧――『解析に失敗しました』『指定されたクラスが存在しません』『プロパティが無効です』――は大鎌アドロニスを振り上げた。
「今だ!」
 叫んだイルミナに、続き玲は斧を勢いよく振り下ろした。
 スティアも「任せて」と頷き、地を踏み締める。リックと共に、飛び込めば交差し合う一撃。騎士と剣士の一撃が描いた軌跡が僅かに尾を引いて。
 縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧は『おわ た』と言った。だが――
「ぎゃっ」
 最後の蟹の『反撃』に玲が「ばたんきゅう」と倒れた様子をリックはその目にまじまじと映した。いやはや、蟹。中々強いものなのである。
 蟹の体が傾いでゆく。急げ急げというようにリックは『雷撃を纏うはず』の一撃を振り下ろし、イルミナとSikiは蟹が二度と立ち上がらぬように脚を狙った。
 縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧は今度こそ蟹が倒れた事を確信し、念仏を唱えなければと準備を整える。
 近付けば、蟹の体は傾ぎ、その肢体から力が抜けてゆく。
 テクスチャが崩れるように蟹の体がゆっくりと壊れていくが、ただのそれだけだ。ずしん、と音を立てて倒れ伏せたその体には確かに重さや倒せたという実感を感じることが出来た。


 その蟹は怪異譚に語られるものであるとMissは静かに告げた。
 故に、『念仏を唱えて飴』にすればよいと。だが、念仏と言われてもリックにはぴんと来なかった。
「呪文、か?」
 説法を聞き暴れ回ることを止めたという蟹。リックは「お経が効くって事はなんか救われたい部分でもあったのか?」と首を傾ぐ。
 確かに、この蟹も『何かに祈るような』姿勢だったのだ。
「そう、なのかもな……教えを説いて念仏……だっけか。誰かできるか……? うーん、こういうのは気持ちが大事ってな。南無南無……」
 イルミナの問い掛けに応えたのは縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧であった。念話を通じて意思の疎通は可能ではあるが――
(やれ、伝承としては称名念仏でいいのかな)
 の言葉は、「蜊礼┌髦ソ蠑・髯?莉…蜊礼┌髦ソ蠑・髯?莉……」という奇妙な『声』として聞こえてくる。
「見てみて! 納刀ポーズ!」
「わあ、素敵。私も何かポーズを考えた方が良いかしら?」
 どやっとしていたスティアに花糸撫子はうっとりと微笑んだ。その傍らで首を傾いだのはSikiである。成程、決めポーズ。そういうのもあるのである。
「蟹、飴にならずに残ったね。何だか、とても美味しそうだよね……食べれるだろうか」
「うんうん! このまま放置するのは勿体ないし、私のスティアスペシャルを試せと誰が言っているような気がする!
 え、気の所為? そんなことはないはず! ――ってことでROOでもスティアスペシャルだー!」
 念仏を唱えて飴になって――それでも残った部分は調理しよう。任せて欲しいと微笑んだスティアの『料理』が進んでいる様子を眺める花糸撫子とウィード。
 解放された希望ヶ浜学園の生徒達は驚いた様にその様子を眺めて居た。
「高等部……ということは先輩ではないか!」
 サクラメントの程近い位置で無事に解放された『救出対象』達は見慣れるアバター達をその双眸に映して不思議そうな表情を浮かべている。そりゃあ、そうだろう。突然ログアウトが不能になったと思えば、そのクエストが終わり蟹料理大会が開始されているのだから。
「君たちは、ええと……希望ヶ浜の後輩なのか?」
「後輩だったり、そうじゃなかったりですね!」
「うむ。ぬぬーう、会うたことはあまりないかもしれぬが、飴を捧げて助けてあげれば後でスイーツくらいおごってくれるじゃろ! にゃっはっはっ!」
 にまっと笑った玲に「良いですねえ」とMissが続く。恐ろしいものをみるような顔をした生徒を見遣ってからSikiはくすくすと小さく笑った。
「――もう大丈夫さ。ほら一緒に帰ろう? ……あ、蟹、食べるかい?」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

玲(p3x006862)[死亡]
雪風
ウィード(p3x009132)[死亡]
どこへでも

あとがき

 お疲れ様でした!
 蟹ぱ~てぃ~ですねぇ!

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