シナリオ詳細
凸凹三人組とネクスト探索記Ⅰ
オープニング
●凸凹三人組ネクストに降り立つ
その日、『Rapid Origin Online』の翡翠(エメラルド)に設置されたサクラメント前に、イレギュラーズと身長の不揃いな三人組が立っていた。
「う……うおおおおっ! ここが、ネクスト! これが、ゲームの中の世界なんて! 信じられないわーっ!!」
感動の声を上げるのはローレットの情報屋、《黒衣の少女》こと『黒耀の夢』リリィ=クロハネ(p3n000023)だ。
「なぁなぁ、リリィ。ゲームと聞いたから付いて来たけど、なんだか現実みたいで代わり映えせんぞー。そんな驚くようなことか?」
「何言ってるの、ゲームなのにこの現実感はすごいでしょ! なんだかわからないけど凄いものは凄いのよ!」
おにぎりをモグモグ食べる『はらぺこ王女さま』ルーニャ・エルテーシア(p3n000050)を見上げながら、リリィは興奮のままに言う。
「あ、あの~~、私はなんでここにいるのでしょう? 練達でのお仕事を終わらせて帰るところだったはずなのですけど~~」
自分の置かれた状況がいまいち理解できない『今日も元気にすぴすぴかっ☆』幻想アイドル すぴかちゃん(p3n000068)が苦笑しながら尋ねるが、二人はまったく聞いていない。
「……それで、イレギュラーズまで連れてきて何をするんだ?」
イレギュラーズが、リリィを見下ろしながら言う。
そう、長身であることがアイデンティティ的なリリィを見下ろしてだ。
「当然! もう一つの混沌的なこんな世界に来たんだから冒険よ!! こんな世界ならこの軟弱で有名な私も、華麗に戦えるってもんよ! だーかーらーぼーけんなのよぉぉー!」
はしゃぐリリィは完全に子供だ。
いや、文字通りそのアバターは小学生低学年くらいの身長なのである。そんなちんまいのが杖をもってはしゃいでいる。
「童のようにはしゃぐなリリィよ。お子ちゃまに見られるぞよ。もぐもぐ」
逆に達観したようなことを言い始めたのはルーニャだ。そのアバターは元からは想像できない背の高い見目麗しい姫騎士となっていた。
「冒険は良いんですけど、私は何をしたら……?」
唯一、姿があまり変わってないのはすぴかちゃんである。手にした杖や白い司祭服を見るにヒーラーなのかもしれない。
「とりあえず、すぴかちゃんには付いて来てもらうとして、冒険といっても目的がないとただ散歩するだけになっちゃうだろう? 何かないのか目的は」
「それなら心配しないで! ここから東の迷宮森林の、だいたい半日歩いたところにメサメサ遺跡って言うのがあるみたいなの。そこにサクラメントがあるみたいだけど、それが故障してるようなのよね。なので、そこに向かってついでにサクラメントを修理するのが目的よ!」
意外と用意周到に地図まで用意して目的を語るリリィは、さすが情報屋か。まぁ今は魔法使いのようだけれど。
「まあ敵がいっぱいいるとは聞いてるけど任せておけ。あらゆる敵を屠ってきた私と愛剣エルテブリンガーがあれば何も心配はないのよ」
「そんな剣ないわよ。ゲームだもの」
「えぇ!? あ、なんじゃこの初期装備です、みたいな感じの無骨な大剣は!?」
「だいたい、全員来たばっかりだからレベル低いんじゃ……」
そんなイレギュラーズの突っ込みは誰に聞かれることなく風に溶けていく。
そしてマニュアルは全ページ熟読する派のすぴかちゃんが、ぼそっとこう言った。
「なんだか死んじゃうことが多いって聞きましたけど……大丈夫なんでしょうか……?」
一抹の不安を抱えながら、イレギュラーズと凸凹三人組の冒険が始まろうとしていた。
- 凸凹三人組とネクスト探索記Ⅰ完了
- GM名澤見夜行
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年06月02日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●冒険のはじまり
「さあ、目指すはメサメサ遺跡! 冒険のはじまりよー!」
遠足でも行くかのようなテンションで歩き出すリリィ=クロハネ(小さい)の首根っこをイレギュラーズは捕まえる。
「待って、リリィさん。いくらゲームとはいえ、いえゲームだからこそここは慎重にならないといけないわ。
ネクストはバグだらけの世界。深緑と似て非なるこの翡翠の迷宮森林もかなりの危険が付きまとうはず」
『霞草』花糸撫子(p3x000645)が前のめりに進もうとするリリィに釘をさす。
リリィが前のめりになっていることについて、撫子も同じようにワクワクしていたのだからよくわかる。だって、現実に比べてこの電脳世界はこんなにも光と色彩が瞳に飛び込んでくるのだ。飛び出して駆け回りたくなる気持ちはよく分かる。
「な、なるほど……たしかにそうよね。ゲームの世界だけど遊びじゃないって奴よね、えぇ、わかっているわ、手当たり次第に攻撃魔法を使ったりなんてしないわ、本当よ」
注意を受けなければ、それはもう見かけたモンスターに手当たり次第に魔法を使いそうなことを言うリリィに、イレギュラーズはホッと息を吐いた。とりあえずは、無茶な行動は控えてくれるだろう。
「それじゃ改めて出発しよーかー。ルーニャとすぴかちゃんもよろしくね、もぐもぐ」
「うむ、任せるのじゃ、もぐもぐ」
「は、はい、お願いします、ぺこり」
ルーニャ・エルテーシア(大きい)の頭の上に乗っかって、ルーニャからもらったドーナツを頬張る『妖精勇者』セララ(p3x000273)が出発を促す。
セララといえば、混沌においても背丈は小さい方ではあったが、このネクストにおいてはもはやマスコットサイズとなっている。その身長30cm。でかくなりすぎてるルーニャの頭に乗るには丁度良いサイズだ。
「まずは今一度メサメサ遺跡の場所を確認しておきましょうか。地図はこれですよね」
『Cobalt』リナシタ(p3x007279)が用意された地図を広げ遺跡の位置を確認しようとするが……。
「うーん、わかっていたことですが、あまりにも雑すぎませんか、この地図。雑に『街』、『森』、『ココ!』と書いてそれっぽく線が数本書かれてるだけなのですけど。
リナシタは賢いですが、これではどうしようもありませんね」
リナシタの言うように、地図はあまりにも雑だが、この翡翠に住まう者達はなんとなくの感覚で森を歩けてしまうのでこれで十分だと言う。精細な地図を作ろうという、奉仕の心に富んだものは残念ながらいないようだ。
「とりあえずそのあたりはリリィ氏がなんとかしてくれるんでスよね?」
『開けてください』ミミサキ(p3x009818)がミミック的箱の中から顔をだしてリリィに確認する。リリィはどんと胸を叩いて応えた。
「まーかせなさーい! 深緑の迷宮森林とはやっぱり違う感じはするけれど、迷わない天啓みたいなものを感じるわっ! そこについてはもうドーンと任せてもらって大丈夫よ」
「リリィを失うと完全迷子で詰みでしょうし、なにがなんでもリリィを守りましょう」
リナシタの言葉に、イレギュラーズ達は頷く。
「撤退時のことを考えると、タンク役二名以上が戦闘不能になったらこの翡翠サクラメントまで撤退と考えるのがよいでしょうね」
妖刀たる太刀を持つ『妖刀付喪』壱狐(p3x008364)が言う。人の姿をなしてはいるが、その本体は太刀のほうである。
リリィ達を含め、現在十一人がこの場にいる。事前に言われていたようにサクラメントの修理には最低でも四人以上は必要だ。
数字だけで見れば七人の戦闘不能=死というのは、混沌であればそうそうあり得ない事態故に、以外となんとかなりそうな気もするが、ここはネクストであり何が起こるかわからないバグだらけの仮想世界だ。
「サクラメントの近くなら敵が弱い……なんて遊戯みたいなこともないようだし用心用心」
壱狐の言葉はまさにネクストの状況を正しく理解しているだろう。
村の外に一歩でたら、レベル百とかそんなモンスターが現れて、一発即死を狙ってくるみたいなことも起こりうる。
念には念をいれて出発するべきだろう。
「それじゃ出発しよー! 慎重にね!」
『ダンサー』花楓院萌火(p3x006098)が拳を上げて「おー」と元気よく号令をだす。その手にはルーニャ持ち込みのドーナツ。食いしん坊仲間がすでに出来上がっていた。さすがネクスト、おやつの味もリアルに再現だ。
●迷宮森林は怖い
鬱蒼とした草木が、飽きるほどに広がる。
翡翠のサクラメントをでて、森に入ってから数分。すでに周囲は同じような景色に包まれて、森林行動に適正を持たないイレギュラーズは方角を見失いつつあった。
「さすがに迷宮森林というだけはあるか。ダンディである私でなかったら迷った不安で泣き叫ぶというものだろう」
実年齢的にはまだまだ若者である『めっちゃだんでぃ』じょーじ(p3x005181)はアバターによって実に奥深い大人の雰囲気を見せる。演技とも言えるが、そうしたなりきりはこの手のゲーム(R.O.O.)では大変大事なことだ。
じょーじ的にはこのゲーム内に囚われている練達の民が気になるところではあるが、ダンディな大人の余裕を持つに至ったことで、こうした息抜きも必要だと思えた。それにサクラメントを復旧できれば、それだけ活動範囲が広がり、まだ発見できていない練達の民を見つけることができるというものだ。
「ワクワクもできますが、いつ何がでてきてもおかしくない雰囲気がありますね。若干緊張で疲れもたまりやすくなりそうです」
「たしかにそうですね……私なんてこういうの慣れてないので、虫さんが草を揺らす音でびくついちゃって……」
『Fin.』Fin(p3x000713)の言葉にすぴかちゃんが頷く。
森の中は静かだが、同時に多数の生命が音を響かせている。リアルすぎる感覚は仮想と現実の境界を消してしまっているようだ。
「できるだけ魔物には出会いたくないですね。話を聞けば一匹相手にしてるとどんどんリンクしてくるといいますし」
Finが地図を確認しながら街で聞いた話を思い出す。地図を一緒に覗き込んでいたリリィは胸を張って、
「ま、まあ出てきたら私のさいきょー黒魔法で一撃よ一撃!」
と言うが、まるで信用ならないのは全員理解している。
「リリィには無理でしょ。ここはさいきょーの私とエルテブリンガー(仮)に任せなさいって」
「そんな初期装備に愛用武器の名前つけても強くならないわよ!」
「それじゃボクの聖剣ポッキーソードでやっつけてあげよう」
「そ、それは頼りなさそうに見えて一番頼りになるやつでわ……」
そんな話をしながら一行はリリィ先導の元、迷宮森林を進む。
「…………危険そうな音はしなさそうだね」
「そうね、周囲は大丈夫そうかな」
森を進む中、セララと撫子は耳を澄まして危険な”物音”をよく聞いていた。獣や昆虫、木々に擬態するモンスターが多い森だ。そのほとんどが何か行動すれば音を発する。
超聴力を持つセララもさることながら、聞くことで気配を察することに”慣れている”撫子ならば僅かな音も聞き逃すまい。
「直線方向に敵意をもつ集団がいますね。すこし迂回して避けましょう」
もちろん音を出さない幽霊的な魔物も徘徊する。
そんな相手にはリナシタの装備したトワイライトシーカーが役に立つ。エネミーサーチの機能を有したイヤリングは、仲間達が発見しづらい敵を察知することができた。
「それは何をしてるんだ? 食べるのか? もぐもぐ」
木の実を拾い食いしてるルーニャが、同じく木の実や植物を取って集めていた壱狐に尋ねる。
「これは、こうして匂い袋にするんですよ。どうです、結構すごい匂いでしょう?」
「うーん匂いが強すぎて少なくとも食欲はなくなるな……もぐもぐ」
言いつつ食べるのはやめないのか、と心の中で突っ込みつつ、壱狐はいくつか匂い袋を作った。
「ボク達は後ろを警戒しながら進もうね。通った道でも魔物はくる可能性あるしね」
「は、はい~! がんばりますぅ~~」
萌火と並びながらすぴかちゃんがコクコクと頷く。同じヒーラーとして立ち位置を揃えて歩く二人だが、冒険初心者なすぴかちゃんはキョロキョロそわそわとなんとも落ち着かない感じだ。
「うんうん、これぞ冒険って感じよね! 程よい緊張感で、思わず吐きそう!」
楽しそうに言う言葉ではないが、リリィはニコニコと森を歩いて行く。
さて、ここまで割と平和に進んできたが、それはもちろんイレギュラーズの旅慣れた危機回避能力が優れていたことや、”幸運の妖精”がいたからに他ならないが、このネクストそんな程度ではどうにもならないバグゲームである。
「……嘘……さっきまで反応なかったのに……!?」
エネミーサーチを行い逐次確認を行っていたリナシタが、驚きに声をあげる。たった数分の差で、索敵範囲の周囲が真っ赤に染まっていた。
「大変だー、空も森の中もヤバそうなのでいっぱいになってるよー」
上空から偵察していたセララも戻ってきて状況の悪さを報告する。
「進むも、戻るも戦闘は避けられないか。遺跡まではあとどれくらいだったかな?」
じょーじの確認に、リリィが地図を開いて印を付けていく。
「少し迂回したりしてきたけど、全行程の2/3は越えてるわね。今からだと戻る方が大変かもしれないわね」
「ここまで少し戦闘はあっても楽勝だったしなー。みんなもまだ余力は残ってるし、ここは突破を目指すのが最善じゃないか?」
おやつの食べ過ぎで吹くからおへそがはみ出してるルーニャの言葉に、イレギュラーズは考える。
当初の予定ではタンク二名の脱落で翡翠のサクラメントまで撤退する計画だったが、慎重な行動の結果余力を残して目的地近くまできた。
ルーニャの言うように、ここからは敵包囲を突破してメサメサ遺跡のサクラメントを目指すのが最善のようにも思える。
「たしかに戻ってる最中にまた敵が出てきたら戻りきれないかもしれないでスしねぇ」
「リポップというより、特定座標に侵入で敵が湧き出す仕掛けなんですかね……バグと言う名目で自由すぎる無茶苦茶な設定ではありますが」
ミミサキと壱狐が苦笑する。
戻るにしても戻れる保証がないのなら、ここは進むべきだろうという考えが各々浮かぶ。そして誰が決めるわけでもなく武器を手に取り前進を選択した。
「敵が多いしリンクが確定する以上、移動しながら戦う方が良さそうですかね……?」
「トレインって奴だ。割りとありなんじゃないかな。最終的に敵を引き連れて離れる生け贄が必要だけど、ボクなら生き残れる自信あるしね」
Finの提案にセララがうんうんと頷く。実際セララのステータスはこのバグゲームに立ち向かえる可能性を感じさせる。
「それじゃ行きましょう! 大丈夫、特異運命座標ちゃん達の道は私が開いてみせるわーっ!」
「いや、リリィは死ぬ気で走れ。足遅いんだから」
ルーニャの厳しい突っ込みと共に、戦いが始まった。
まず、セララが聖剣ポッキーソードを掲げ、『嵐の聖騎士』を呼び出し、前方の大型バッタのような魔物の敵視を奪った。瞬間、森がざわめき同じような魔物が飛び出してくる。バッタの大群が耳障りな羽音を響かせて嵐の聖騎士をたこ殴りにしはじめる。
「うへぇ……あんなボコボコにされたらギャグ漫画みたいな”ε”だらけの腫れた顔になっちゃうよ」
嵐の聖騎士を自分達の進行方向とは真逆に動かしつつ、開けた空間を走り抜ける。
「次! 左右から来ますよ!」
リナシタがそう呼びかけながら自身の周囲に『orbit』と呼ばれる青白く光る球体を生み出す。
誘引効果のある光の玉が、草むらより飛び出してきたハエ型の魔物を引きつける。
「うぅ……耳障りな音ですぅ~~!」
「回復は任せて! すぴかちゃん、ほらやるよ!」
「なら私は前方の回復に力を入れようか、ダンディにね!」
ヒーラー達が走りながら回復効果のあるスキルを駆使し、攻撃を引きつける者達を回復する。
じょーじと萌火の役割分担もよかった。大きく傷付いたものがいればじょーじが指を人鳴らしし、大量の回復を行う。大勢が傷付けば、萌火がステップを踏んで体力の回復と充足を行った。
仲間達を支える二人の安心感に、すぴかちゃんも「がんばらなきゃ」と足りない分を回復する行動を見せた。
木々の隙間から猛スピードで猪型の魔物が突っ込んでくる。
「次から次へにお出ましですね……! 猪突猛進は厄介なので邪魔させてもらいますよ」
壱狐が用意していた匂い袋を投げて、猪型魔物の注意を反らす。その隙にどんどんと先へと進んでいく。
ある程度の数を捌きながら逃げ続けてはいるが、やはりおかしなレベルのモンスターが混ざっている。
「また新しいモンスターっぽいでスね! キノコでスかね?」
「やばそうな匂いがするから初手全力全開!! ギガセララブレェェェイク……ってわぁー!?」
「あぁ!? セララさんのHPが一瞬でゼロになった!?」
「あのキノコみたいなのヤバイ! 明らかにレベル間違えてる!!」
可愛い顔のついたキノコが胞子をバラ撒きながら体当たりを仕掛けてくる。なんともファンシーな光景だが、その体当たりを喰らう度にセララのHPバーがゼロになっては回復しモグラ叩きのようになっていた。
「というか、この胞子も範囲攻撃で危険――っ!!?」
BS付与によって遅滞戦闘を行っていたFinが胞子毒に巻き込まれ僅かに足を止めた。瞬間トレインしてたモンスター達が殺到し飲み込まれてしまった。
「あぁ!? Finさんがモンスターに!!」
すぴかちゃんが足をとめ声をあげる。
「あっ! 足を止めてはだめ――!」
「きゃー……!」
可愛い悲鳴を残してすぴかちゃんも魔物の群れに飲み込まれていく。
「すぴかちゃん……厳しいアイドル業界を生き抜いてきたのに、こんなところで死んでしまうなんて……」
「完全に巻き込まれただけに可哀相に……合掌」
「い、以外に二人ともひどいでスね……」
連れてきた張本人のリリィとルーニャがすぴかちゃんに別れを告げる。ゲームだからと割とドライな二人にイレギュラーズは若干引いた。
「と、とにかく、もうすぐメサメサ遺跡よ! このまま走り抜けましょう!!」
「リリィ氏は私が守りまスよ! お姉さんの中にしまっちゃおうねー…」
「ぎゃーミミックに食べられる!! って、以外に居心地いいかも……」
言うが易し、行うは難し。
バグキノコの参入で、トレインは地獄の様相を呈していた。
そして――。
●到達
「犠牲は、無駄じゃなかったわね……」
「ええ、そうね……」
「でスね……」
到達したメサメサ遺跡。その入口近くにあるサクラメントへ辿り着き、リリィ、撫子、ミミサキが静かに吐息を漏らした。
――ここまで来たんですから、必ずサクラメントを――!!
――死んでもいいということは気軽に命に優先度を付けることが出来るということです。後は任せました!
あのあと、暴れ回るバグキノコを前に、再生で耐えていたリナシタが死亡し、注意をそらす為に壱狐が言葉を残して迷宮森林で果てた。
「こんなにあっけなく一瞬で死んじゃうなんて……ゲームでよかった……」
「まったくだ……いちいち命の価値が軽すぎる感があるな」
ヒーラーとして働いた萌火とじょーじのAPはゼロに程近い。リソースを使い切る程にギリギリの行軍だった。
「ま、まぁでもそのおかげでサクラメントの復旧もできそうだしよかったわ。初めての冒険としては上出来よね!」
いつもならこんなリリィの言葉にルーニャが相槌を打つところだが、彼女もまた「夕飯はヤサイマシマシニンニクアブラカラメで」という呪文を唱えながら足止めをかってでた。HPバーが0になるのは一瞬のことだった。
残るセララは、メサメサ遺跡到着と同時に、残る魔物の注意を全て引き受けて、一人森の中へと戻っていった。トレインをした上で敵を倒さないならば最後の生け贄が必要なのだ。
「みんなのこと、忘れないわ……!」
流れてない涙を拭って、イレギュラーズ達は壊れたサクラメントを修理した。
そうして修理が終わってようやくログアウトできる、という所になって遠くから声が聞こえた。
「……おーい……!」
「この声、セララさんだわ!」
撫子が空を見上げると、そこにはボロボロになったセララがフラフラと飛んでくるのが見えた。
「おぉ……! よく無事だった! すぐに回復してあげよう」
「酷い傷……顔なんて腫れ上がっちゃってまるで……」
じょーじと萌火がセララの傷を癒やしていく。言葉を濁す萌火の後を引き継ぐようにリリィが言った。
「まるでギャグ漫画でボコボコにされたみたいな顔になってるわね……死なないからってめちゃくちゃな処理されたのかしら……」
「この世界そんな処理もするんでスか……恐ろしすぎるでス」
無駄な処理すらしているネクスト。
イレギュラーズと凸凹三人組の初冒険はこうして一応の成功を見た。
しかし、これはまだ広大な世界へと踏み出す一歩目に過ぎない。
ここから、ネクストの冒険は始まっていくのだ。
イレギュラーズ達は、確かな実感を覚えながら、復旧したサクラメントを使ってログアウトするのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
大変遅れて申し訳ありませんでした。
死人は出つつも重要なサクラメントを修理することができました。
十分な戦果と言えるでしょう。おめでとうございます。
このたびは参加ありがとうございました! 次も何卒宜しくお願い致します。
GMコメント
こんにちは。澤見夜行(さわみ・やこう)です。
ROOにNPC達が遊びに来ました。
まずはサクラメントの復旧を目指して、探索と行きましょう。
※重要な備考
R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。
●依頼達成条件
NPCを含め四人以上生存してメサメサ遺跡に辿り着く。
もしくは、一人でも生存して翡翠サクラメントまで撤退する。
●情報確度
このシナリオの情報精度はBです。
情報は正確ですが、情報外の出来事も発生します。
●迷宮森林について
ネクストは翡翠(エメラルド)の周囲を囲む、大規模な森林です。
そこに踏み入れれば、ファルカウで育った長耳な種族以外は迷い込んで出てこれないでしょう。
今回はメサメサ遺跡までの道が書かれた”雑な地図”がありますが、油断をするとたどり着けないのは言うまでもありません。
また、獣や、鳥、木に擬態した魔物など、恐ろしいモンスターが沢山います。またモンスターはリンクしているので、一匹釣ると山ほど寄って来ます。死ぬ気で戦いましょう。
●モンスターについて
様々なモンスターが、大量にいます。
どいつもこいつもレベリングルートを考えられてない非常識なレベル設定のモンスターが街の近郊の森や、散歩道のそばに犇めいており大変危険です。
2~3体を相手にするならなんとかなるでしょうが、戦ってる最中にどんどんリンクするので、死を覚悟して戦って行きましょう。
●NPC
リリィ・クロハネ、ルーニャ・エルテーシア、幻想アイドルすぴかちゃんの三名が戦闘に参加します。
全員弱いです。モンスターのヘイトをとるとすぐ死にます。
リリィは遠隔からなんだか黒い魔法弾を打ちます。リソースを考えずに打ちまくるのですぐガス欠します。
ルーニャは突撃して大剣を振るいます。戦いは得意なので若干死ににくいです。
すぴかちゃんは皆を回復してくれます。一番役に立ちます。
この中においてリリィだけが、一人でも迷宮森林を迷わず進める技能を持っています。
●戦闘地域
ROO内ネクストは翡翠の迷宮森林が舞台になります。
大木や木々など障害物はあるものの、自由な戦闘が可能でしょう。
そのほか、有用そうなスキルやアイテムには色々なボーナスがつきます。
皆様の素晴らしいプレイングをお待ちしています。
宜しくお願いいたします。
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