PandoraPartyProject

シナリオ詳細

夢見なる島

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●いざ、バグの島へ
「突然ですまないが、これは非常に危険な任務だ」
 『理想の』クロエ(p3y000162)は、特異運命座標たちにそう告げた。
 曰く。『航海(セイラー)』のとあるエリアに、『夢見島』と言う島が存在するのであるが、この夢見島、先遣部隊による調査の結果、非常に『バグって』いるという事が発覚したのだという。
「なんでも、この島への滞在中、キャラクターネームがおかしくなるのだとか……先遣部隊にはその程度の影響しかなかったようだが、しかし放っておいて、バグが進行するというのもよろしくはない」
 そこで、有志による島の調査が行われることとなったのだ。
「なるほど! そこで拙者達の出番と言う事なのですね!」
 と、言うのは夢見・ヴァレ家(p3x001837)だ。先ほどそこの酒場からくすねた酒瓶を片手に、赤ら顔で手をあげる。
「ヴァリュ……ヴァレ家が行くなら拙者も参りますよ!」
 続いて手をあげるのは夢見・マリ家(p3x006685)である。
「しかも、夢見島、とは奇妙な一致でありますね! なんだか不思議な縁がありそうです!」
 マリ家が言うのへ、胡乱気な顔を向けるのは桃花(p3x000016)である。
「うん、なんかこう、怪しい気配を感じるんだよな……大丈夫なのか、この依頼?」
「まー、バグの島、って事らしいっすからね。危険そうなのは確かっすけど……でも、センパイ方が一緒なら何とかなるっすよ!」
 気楽そうに言うのは、VIVI・IX(p3x009772)。VIVI・IXの言葉に、クロエは苦笑する。
「自信があるのは良い事だが、それでも充分に気を付けてくれよ? 夢見島には『サクラメント(ログイン・ポイント)』が発見されていないから、死亡すると簡単には戻れないぞ。……さ、夢見島行きの船はこの先だ。気を付けて行ってらっしゃい」
 クロエの言葉に、一行は手を振り答える。かくして船に乗り込んだ一行は、一路夢見島へと向かうのであった。
 この時、一行は想像していなかった。
 夢見島に待ち受ける、恐ろしいバグの洗礼を……。

●そして、バグの島にて
「突然ですまないが、これは非常に危険な任務だ」
 と、クロエが船着き場で言うので、一行はあっけにとられてしまった。ちなみにヴァレ家は酒を飲み過ぎて船酔いし、桟橋で虹を吐いている。マリ家はヴァレ家の介抱をしていた。
 夢見島の船着き場である。ゲーム内時間で一時間ほど船に揺られ、到着したその先には、なぜかクロエが居た――。
「クロエちん? どーやって先回りしたの?」
「先回り?」
 VIVI・IXの言葉に、クロエは首をかしげた。
「ワタシはずっとこの島にいたが。それに、クロエ? ワタシはクロ家。夢見・クロ家だぞ」
「は?」
 桃花は露骨に変な顔をし、VIVI、vi、ヴ、ヴー、が、わわ、に、耳打ちをした。
「なぁ、こいつのこれって、ギャグかなんかか?」
「いやぁ、あの人はあんまりこういうがギャグ言うタイプじゃないと思うっすけどね……まぁ、確かにアバター見る限り一寸天然そうではあるっすけど」
 VI、ヴぃ、うーががが、る、家ー、は、桃花にそう言った。V、ヴー、が、じじ、ががー、クロエ? へと胡乱気な顔を向けるが、しかし表示されたキャラクター情報を確認すると、あっ、と声をあげた。
「本当っす! 本当にキャラクターネームが、夢見・クロ家っすよ!」
「本当か? VIVI家!?」
 そう声をあげて、うん? と桃花は首をかしげた。
「いま、桃花チャン、なんて言って?」
「確かVIVI家とか訳の分かんないことを……」
「訳の分からないのはキミ達だ」
 クロ家は真面目な顔で言った。
「この島には夢見・〇〇家しかいない。いいか? この島にいるとはすなわち、夢見・〇〇家になるという事なんだ。だから君は、夢見・VIVI家だ」
 はっ、としたVIVI家が、自身のインターフェースを開き、キャラクター情報を参照する。それから、あっ、と声をあげた。
「ほ、本当っす! アタイの名前、夢見・VIVI家になってる!? ま、まさか、これが、バグ……?」
 なるほど、とVIVI家は思う。確かに、クロエからもたらされた情報では、『島に滞在する間、キャラクターネームがおかしくなる』との事だった。つまりこれが、バグの発露、と言う事なのだろう!
「そんな!? じゃあ桃花チャンも!?」
「いや、キミは桃花だろう? 何を言っているんだ?」
 クロエが困惑したような視線を向ける。確かに確認してみたら、桃花の名前は桃花のままだった。
「何で桃花チャンだけ変わんねーんだよ!」
「さておき、このバグは危険だ。やがてこのバグはネクスト世界を侵蝕し、ネクスト世界のすべての名前が『夢見・〇〇家』になるだろう」
「そうか、何言ってんだ? こいつ」
「いいえ、多分マジな話でありますよ」
 と、桟橋から蒼い顔をしてやってきたのは、ゲロ家……じゃなくてヴァレ家だ。
「なんだかVIVI家殿、昔からVIVI家殿だった気がしているのであります……これは、他者の思考を直接書き換えるほどの強烈なバグ……放っておいたら危険……オエッ」
「大丈夫かい、ヴァリュ……ヴァレ家殿! 背中を擦るよ!?」
 マリ家が背中をさすさすするのを見ながら、クロ家が頷く。
「もちろんだ……おそらく、このバグがこの島の外に影響を及ぼすのに、そう余裕はない。ワタシの見立てでは、外に最初の被害が出るのは、およそ一万年後――」
「このゲーム間違いなくサ終してるだろ、それ」
 桃花のツッコミを、クロ家は無視した。
「しかし、それを回避することは可能だ。この島に潜む、100人の夢見・〇〇家部隊を全滅させればいい」
 訳の分からない言葉に眩暈を覚えながら、桃花は唸った。
「100人の夢見・〇〇家……なんだこれ、桃花チャン、嫌がらせ受けてるの?」
「もちろん、キミたちだけで、とは言わない。ワタシは戦えないが、充分に戦える援軍がいる。そう、夢見・ルル家だ」
 その言葉に、桃花が目を見開いた。
「はあ!? R.O.Oの拙者が!?」
「ああ、もちろんだ。紹介しよう。ルル家、来てくれ」
 のそり、と。
 ルル家が桟橋の影から顔をだした。
 引き締まったからだ。
 鍛えが得られた肉体。
 乳首。
「来たか――特異運命座標。実にイイ。俺は夢見・ルル家だ。お前達の力になろ」
「アンドリューじゃねーか!!!」
 桃花が吠えた。そう、ルル家の姿は、どう見てもアンドリュー・アームストロング(p3n000213)である。
「何を言う。俺は夢見・ルル家。宇宙警察忍者! 夢見・ルル家です! 正義のヒーローから、雑用、暗殺まで、幅広く承ります!」
「やめろやめろ!」
「なるほど! 何でアタイに優先参加ついてるかわかんなかったすけど! 大体これで呼ばれた理由が分かったっす!」
 VIVI家がぽん、と手を叩いた。
「さぁ、時間は残されていないぞ」
 クロ家が言った。
「速やかに島の内部に向い、ルル家と共に、100人の夢見・〇〇家部隊を撃破してくるんだ。危険な任務だ。気を付けていくんだぞ」
 そう言って特異運命座標たちを送り出そうとするクロ家。
「さぁ、この夢見・ルル家に見せてくれ……お前達、特異運命座標の、イイ戦いを……!」
 そう言ってポージングするルル家。
 桃花は頭を掻きむしりながら、
「なんだこのクエスト!!!!!!!!!!」
 吠えた。

GMコメント

 お世話になっております。夢見・あら家です。
 PiPi家がやれって。

●成功条件
 100人の夢見・〇〇家部隊の撃破

●情報精度
 このシナリオの情報精度は『夢見』です。
 予期せぬ夢見・〇〇家が登場する可能性があります。

●ROOとは
 練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界をR.O.O(Rapid Origin Online)と呼びます。
 練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、原因不明のエラーにより暴走。情報の自己増殖が発生し、まるでゲームのような世界を構築しています。
 R.O.O内の作りは混沌の現実に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在する等、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されるようです。
 練達三塔主より依頼を受けたローレット・イレギュラーズはこの疑似世界で活動するためログイン装置を介してこの世界に介入。
 自分専用の『アバター』を作って活動し、閉じ込められた人々の救出や『ゲームクリア』を目指します。
特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline

※重要な備考
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。

※超重要な備考
 このシナリオを作成するにあたり、もみ家、お茶家、夏家、墨家の許可は全然とってません。許可? 美味しいの?

●状況
 バグのある島、夢見島。その調査のために訪れた一行は、『キャラクターネームが『夢見・〇〇家』に変わる』と言うバグに見舞われます。
 現地に居た謎のNPC、夢見・クロ家の言う事には、このままこのバグを放っておいては、ネクスト中のキャラクターネームが『夢見・〇〇家』になってしまいます。一万年後に。
 もはや一刻の猶予もありません。皆さんは、このバグを修正するため、100人の夢見・〇〇家部隊を探し、戦い、全滅させる必要があるのです!
 クエスト発生タイミングは昼。島には森林、平地、山岳地帯、川、湖などの様々なロケーションがあり、そこには様々な夢見・〇〇家が存在します。

●このシナリオの特別ルール
 このシナリオに参加したプレイヤーキャラクターは、バグの影響により、名前が『夢見・〇〇家』になります。〇〇には、そのプレイヤーの名前の一部が入ります。
 (例えば、『クロエ』は『夢見・クロ家』になり、『アンドリュー・アームストロング』は『夢見・ルル家』になります。)
 もしこのシナリオに桃花(p3x000016)さんが参加した場合、名前は『桃花』になります。つまり、変わりません。


●エネミーデータ
 夢見・〇〇家 ×100
 総勢百名に及ぶ、夢見・〇〇家たちです。沢山います。それぞれが個性を持っており、様々な戦法で皆さんを苦しめます。
 その詳細なデータはここには書ききれませんが、例えば以下のような夢見・〇〇家が居ます。

 夢見・ファリ家
  ファーリナ(p3n000013)っぽい夢見です。夢見島の情報屋。戦闘能力はないので、ぺちん、てすれば倒せます。

 夢見・ラシ家
  ラーシア・フェリル(p3n000012)っぽい夢見です。服には謎の穴が開いている。怒らせると怖いです。

 夢見・リリ家
  リリファ・ローレンツ(p3n000042)っぽい夢見です。体の一部のことに触れると死にます。

 夢見・月原家
  月原・亮(p3n000006)っぽい夢見です。リリ家を大人しくさせます。

 夢見・盗賊家
  一般的な盗賊っぽい夢見です。一般的な盗賊的な行動をしています。

 夢見・マーメイド家
  一般的なマーメイドっぽい夢見です。湖とかに居ます。

 夢見・サイボーグロボット家
  つよいぞー! かっこいいぞー!

 夢見・改造スポーツバイク家
  見せてやるよ……夢(スピード)の向こう側をさ……。

 夢見・チワワ家
  かわいい。

 夢見・ジャンガリアンハムスター家
  かわいい。

 夢見・ノルウェージャンフォレストキャット家
  かわいい。

●味方NPC
 夢見・ルル家
  どう見てもアンドリュー・アームストロング(p3n000213)ですが、もちろんアンドリュー本人ではありません。深刻なバグの生み出した何かです。
  戦闘スタイルは現実のアンドリューに似ており、極限まで鍛えた肉体による、拳の一撃を得手とします。
  非常に頼れる仲間です。頼ってくれ、特異運命座標……お前達のその視線、それもまたイイ……。


 以上となります。
 それでは、皆様のご参加と、プレイングをお待ちしております。

  • 夢見なる島完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年05月26日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

桃花(p3x000016)
雷陣を纏い
Fin(p3x000713)
Fin.
ナハトスター・ウィッシュ・ねこ(p3x000916)
叫ぶ流星
夢見・ヴァレ家(p3x001837)
航空海賊忍者
夢見・マリ家(p3x006685)
虎帝
コル(p3x007025)
双ツ星
きうりん(p3x008356)
雑草魂
VIVI・IX(p3x009772)
明時に流麗なる

リプレイ

●おいでよ、夢見の島
 ぴよぴよ、と上空を、夢見・スズメ家が飛ぶ。此処は不思議な島、夢見島。存在するすべてものが、『夢見・〇〇家』になるというバグを抱えた、ネクスト世界の愉快なスポット。と、突然地上から石が投げつけられた。当たった。ばしゅ、みたいな音を立てて、スズメ家が消滅する。残り、夢見エネミーは99体。
「なんなんだよ、マジで!」
 『殲滅給仕』桃花(p3x000016)が地団太を踏む。石を投げたのは桃花であり、獰猛そうな目であたりを見回している。
「そう逸るな、ベストフレンド。戦いに臨むお前たちもイイが、しかし急いては筋肉を仕損じるだろう……」
 と、ルル家がポージングを決めた。
「バグだから別人、ってのを免罪符に解像度が低いな! マジでもみ家に怒られるぞあら家!」
 そうかもしれない。
「まぁ、桃花ちん、落ち着くっすよ。アンド……ルル家さんもいい奴じゃないっすか! ウチ、ルル家さんの事気に入ったっすよ! 声とか。友、と呼んでもいいっすかね?」
「イイ……構わないとも、ベストフレンド」
 『明時に流麗なる』VIVI・IX(p3x009772)改めVIVI家の言葉に、ぐっ、とポージングを決めるルル家。
「あぁ返事はイイっす!
 きっとアンド……じゃなくてルル家なら……イイ! って言ってくれるって分かってるっすから!」
 のんのん、と人差し指を振るVIVI家。ルル家は、ふっ、と笑ってポージングを決めた。
「まぁ、何にしても、早速クエストはじめよっか! 星の魔法少年☆ナ、ハががが、こ、じじ、家、ねー……あれ何かバグった?」
 と、小首をかしげる『星の魔法少年☆ナハトスター』ナハトスター・ウィッシュ・ねこ(p3x000916)こと、
「えっと、改めて! 星の魔法少年☆夢見・ねこ家だよー☆ よろしくねー☆」
 ねこ家がポーズを決めて見せる。
「一万年後の未来のために戦う……って言うとなんかかっこいいかもしれない」
 と、言うのはコル(p3x007025)がバグって夢見・コル家。だが、すぐに肩を落として、
「――悪いわね、やっぱ辛いわ。
 自分で言っていて苦しいの。
 八つ当たりに夢見・ルル家ことアンドリューの乳首を爪で弾いてしまいそう……」
 と、ルル家に近寄るのへ、ルル家はポージングしながら、
「イイだろう、ベストフレンド。それがお前の望みなら――」
「なんでしょう、この全面受け入れルル家」
「やな文字列だな」
 コル家の言葉に、げんなりとした表情を見せる桃花。コル家はくすりと笑って、
「夢見なる島が ありまして♪
 与太与太なかまが いるんです♪
 VIVI家 ヴァレ家 マリ家♪
 わいわいルル家 ぷん☆」
「変な歌うたうなヨ!」
 地団太を踏む桃花。
「うーん、でも実際、人類皆夢見になるのは恐ろしいね。苗字がカブってわけわかんなくなるし」
 と、『雑草魂』きうりん(p3x008356)またの名を夢見・うり家が言った。
「所で、作戦とかあるの? まー、これ絶対コメディクエストだから要らないと思うんだけど」
「ふふ、そこで拙者に一つ策があります!」
 と、手をあげたのは『航空海賊忍者』夢見・ヴァレ家(p3x001837)。隣には『航空海賊虎』夢見・マリ家(p3x006685)がいて、
「ヴァリュ……ヴァレ家に任せておけば問題ありませんよ!」
 と、目をキラキラさせている。
「一応聞こうか」
 と、桃花が言うのへ、
「では、桃花殿、こちらへ」
 と、悪いハムスターみたいな顔をして、ヴァレ家が手招きをする。桃花が近づくと、ぐっ、っと悪いハムスターみたいな顔を近づけて、そっと耳打ちする。
「ねえ桃花殿、取引をしましょう。
 拙者、ちゃんとこの島の夢見を倒してあげます。その代わり、私の野望に協力して下さい」
「そうかそうか、何言ってるんだアンタ」
 何やら欲望に濁った瞳を悪いハムスターみたいな顔にのせて、ヴァレ家が言うのを、桃花が怪訝な表情を見せる。
「一応聞いておくが、野望って何だヨ」
「酒池肉林の宴会三昧です」
「アンタ……」
 桃花がドン引きした。
「別に100人……いま99人でしたっけ? とにかくすべての夢見を引き連れて、海を渡って悪行の限りを尽くしても良いんですよ?
 でも、その噂を聞いた皆や遮那くんがどう思うでしょうかねぇ?
 この世界はおろか、現実でも居心地が悪くなってしまうのでは?」
「遮那くんは関係ないでしょう遮那くんは!」
 吠える桃花に、
「ふふ! 桃花殿……! ヴァレ家との取引に応じるなら今の内ですよ?
 ヴァレ家と拙者が本気を出せば、ヴァレ家の100人夢見計画も容易……。
 ではもうどう答えればいいか分かりますね?」
 めっちゃいい笑顔でそう言うマリ家。
「アンタら……これがコメディクエストじゃなかった監視がつくぞ……!?」
「大丈夫です、コメディクエストですから!」
 ヴァレ家が悪いハムスターみたいな顔で言う。
「当然拙者もそこのアンドリュ……じゃない……筋肉ルル家殿もお肉は食べたいです!」
 伝家の宝刀・決めつけの刃を抜き放つマリ家に、
「肉……そうだな。筋肉はイイ……」
 ルル家が頷いた。
「うるせえアンドリュー! 酒池肉林の肉は筋肉じゃネー!」
 ぐわっ、と頭を掻きむしる桃花。
「チッ! やってやるヨ、クソが! 覚えとけよテメー! 夢見ヴァレ家……くそ! 夢見島のせいでちゃんと名前わからネエ!」
 まぁ、ヴァレ家の名前ヴァレ家なのだが、そんなことを桃花が知るはずもなく。
「ええと、つまり……どういう事になるのでしょうか?」
 『Fin.』Fin(p3x000713)、またの名を夢見・FIn家が尋ねるのへ、
「つまり、ヴァレ家とマリ家が敵を引き付けるから、各自攻撃ってこったナ! まー、敵の数は多い。ある程度自由に動いて各自討伐、ってのもありだゼ!」
「なるほど、各自自由行動ですね」
 Fin家が頷く。
「でしたら……そうですね、私はクマ家さんを探しに行きたいです……」
「いるノか、クマ家……?」
「いると思います……! と言うより、いると言ったらいることになるでしょう」
「そうだよナ、なんせあと99人もいるんだから、クマ家位いるよナ! くそ、なんか腹立ってきた!」
「じゃあ、ボクと一緒に動物家を探そうか!」
 と、ねこ家が手をあげた。動物家って何?
「ボクは猫家シリーズを探したいな! ノルウェージャンフォレストキャット家はいるみたいだし! きっとマンチカン家とかアビシニアン家とかトラ家とか白猫家とか三毛家とかもいるはずだよ!」
 もう言ったもん勝ちである。
「楽しみですね……クマ家も、きっとぬいぐるみみたいにフワフワのクマ家が居るんです(断言)。でも、倒さなきゃいけないんですよね……悲しいです……」
「Fin家君……!」
 がし、とねこ家が手を握った。見つめ合う。何かわかり合った。
「なんだこれ」
 桃花が呆然と呟いた。そろそろツッコミに疲れてくるころだった。

●いろいろな夢見
 ピョー、と。
 空をトンビ家が飛んでいる。
「あっ! あんなところに黄金と宝石で着飾った見るからにお金持ちの石油王が!!」
 トンビ家がぎくり、と身体を硬直させた。ぴょー、と鳴き声をあげて、地面へと降り立っていく。
「死ねーッ!!!」
 と、そこに現れたのは桃花である! 桃花は降り立ってきて無防備になったトンビ家をゴリラみたいなパワーでゴリラ的にぶん殴った!
「ね? こうすればみんなつられてくるのですよ! 夢見の性と言いますか?」
「そうですね、ヴァリュ……ヴァレ家!」
 と、得意げなヴァレ家の隣で、感心したようにマリ家がうんうんと頷く。
「え、なに? 拙者って世間的にそう言うふうに思われてるの?」
 桃花の言葉に、
「ああ……流石の俺も、夢見・ルル家としての性には逆らえないからな……婚活のために鍛えた筋肉を、思わず披露するところだった……」
「アンド……ルル家くんはいつも筋肉を披露しているイメージあるけど」
 うり家が言う。それもかなり誇張されたイメージのような気がする。
「でも、敵をおびき寄せるのは良い手だよね。この島そこそこ大きいし、いちいち回ってたら日が暮れちゃうから。と言うわけで、私も早速敵を帯び良きよせようと思うんだ!」
 と、うり家が取り出したのは、キュウリである。
「それで何家をおびき寄せるつもりなんですか?」
 コル家が尋ねるのへ、
「んー、そうだね! 夢見・ホタル家とか夢見・カブトムシ家とか夢見・セイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシ家とかが、わって集まってくるはず!」
「まぁ」
 コル家が困ったように小首をかしげた。虫家シリーズも、きっといると言えばいるのだろう。
「そらそらー、こっちのきゅうりはうまーいぞー!」
 ぶんぶんときゅうりをふりまわすうり家。と、あちこちからぶぶぶ、と羽音が聞こえて、カブトムシ家やクワガタムシ家やカミキリムシ家やホタル家やファリ家が飛んでくる。
「キモい! とりゃーっ!」
 それを次々と撃ち落としていくうり家。残り78家。と、そんな中、がさり、と草をかき分けて、現れたのはリリ家である。
「ムキャァ……?」
「落ち着け、リリ家! まだ何も言っていない!」
 その後ろからやってくる月原家。新鮮な月リリである。が、コル家は小首をかしげつつ、こう言った。
「まぁ? お胸は夢見れなかったのね?」
「ムキャァーッ!!」
 即座にキレたリリ家が、月原家をついででひっぱたいて(残り77家)ファルゴン家へと変貌! 飛び掛かって来るのを、コル家は苦も無く身体を引いて避けて見せる。ムキャア、と地面に這いつくばったファルゴン家の、その後ろからVIVI家がそろり、と近寄って、
「えいやー、っす!」
 と、手にした武器で思いっきりひっぱたいた。ムキャアと悲鳴を上げて消えていくファルゴン家。残り76家。VIVI家がふう、と額の汗をぬぐった。
「強敵だったっす……けど、冥途の土産にウチの自慢の身体と絢爛豪華な舞踏を魅せ付けてやったっすよ!」
「そうですね、お見事」
 ぽんぽん、とコル家が手を叩く。
「でも、実際面白いくらいに釣れるね、家シリーズ! 単純なのかな?」
「なんか貶されてるみたいナ気がしてくるじゃん」
 桃花がガウガウと唸った。
「そう言うつもりはないんだけどごめんね! でも、ほら、こう言えばなんか色々出てきそうじゃない? あっ、あんなところに美人でお金持ちの女性型レガシーゼロ――」
「当機はグッドクルーザー家! 婚活のためにこの地にやって」
「死ね―ッ!」
「うわーーっ!!」
 残り75家。
「あら家さん、マジで怒られるんじゃないっすかね?」
 VIVI家が肩をすくめて言った。
「くそーっ、こんだけ家がいて、なんで遮那くんが居ねーんだ!?
 いやまあ、出てきたら危ねーんだけど!
 夢見遮那……いや、ここは天香ルル家の方が……?
 いやですねー遮那くん! いきなりそんな! 恥ずかしいですよ! 結婚しましょう!」
 なんかくねくねと身体を躍らせる桃花。たっぷりどっぷり妄想に使ってから、はっ、と息をのむと、
「はっ! 危ネー……あっち側にいくとこだったゼ……。
 と言うわけで、遮那家が出てきたらあぶねーゼ! 遮那家が! 出てきたら!」
 なんか虚空に向って叫ぶ桃花。しかし、
「すまない、ベストフレンド」
 申し訳なさそうな顔をしたルル家が、その前に立ちはだかる。
「今電波を受信した所だが……あら家がもみ家に打診した結果、
 『アンドリューはもうやってしまったので許可します。
 ですが、他のキャラを出したら、お前をデスゲームの参加者とします』
 ……と警告を受けたそうだ。あら家も、デスゲームの参加者にはなりたくない……だから、無理なのだ……」
「何でそこは律義に相談してんだよ!!!!」
 地団太を踏む桃花。
「だが……お前が望むなら、俺が遮那家となろう……俺が、遮」
「それ以上言うな! やめろやめろ! 本当に殴るぞ!!!!!」
 桃花の悲鳴が、辺りにこだました――。

 一方そのころ。
「ねこーーーーーー!!」
 と、ねこ家が叫んだ。あたりには、無数のノルウェージャンフォレストキャット家や、スコティッシュフォールド家……まぁ、とにかくいろいろなねこ家が、あちこちで毛づくろいしたり草にじゃれたりしていた。
 猫好きの、猫好きによる、猫好きのための、天国! それがここ、『よくねこ家が集まる猫家集会所』である!
「うわ、やば、うん、やばい。ヤバいよこれ、なにこれ、すごい、意味わかんないくらい凄い」
 プレイヤー(中の人)の素を出しつつ混乱するねこ家。まさにねこ天国と言ったあたりの様子は、ねこ家にとってはまさに極楽。
「うわー、いいのかな、触ってもいいのかな? え、いいよね? うわー、うわー!」
 と、ゆっくりと、ゆっくりと、ねこ家がねこ家の群れへと近づいていく。
 ねこ家たちは、ねこ家に警戒する様子を見せず、むしろ、誘うように、にゃあ、とないた。
「なごなご」
「にゃー」
「ッ~~~~~~~~~~~~!」
 ねこ家が口元を押さえた。かわいい。めっちゃ可愛い。ごしごしと顔を洗う仕草。こてん、と腹を見せて、誘うように、手を振る仕草。他のねこ家のしっぽにじゃれつき、二匹でころころと転がりまわる仕草。
「これは……これは……!」
 ねこ家は、口元が緩むのを抑えきれなかった。やがてねこ家は、誘われるがままにねこ家たちの輪の中へと入っていく。
 ……いずれはつらい別れが待っていようとも。
 しかし今は、優しい楽園へとその身をゆだねるのであった……。

 一方そのころ(2)。
「くま家さん……!」
 Fin家が声をあげる。森の中で遭遇したのは、大きなぬいぐるみのような外見の、くま家であった。
「やっぱり……! いるって言い張ればいるんですね……!」
 このクエストの本質を言い当てつつ(一部例外アリ)、Fin家がゆっくりと、くま家へと近寄る。
 くま家は小首をかしげながら、しかし此方への攻撃的な意思は見せない。
 やがてゆっくりと、Fin家が、くま家の手を取った。
 触れ合う、手と、手。
 そしてお互いが優しく、お互いをその腕に包み込む。
 Fin家と、くま家が、優しく抱き合った。
 ふかふかの感覚が、Fin家を包み込む。
 この時、Fin家は、間違いなく幸せだった――。
 めでたしめでたし。

●さようなら、夢見島
 ぱたぱたと、美しい羽根を持つ夢見・モルフォ蝶家が、夢見島の草木を飛んだ。穏やかな風が、モルフォ蝶家を優しく流す。
「ほらほら、これに署名すれば石油王の財産が手に入りますよ! 早いもの勝ち! 一名様まで!」
 と、その声を聴いたモルフォ蝶家が、ぱたぱたと声の方へと飛んでいく。いや、モルフォ蝶家だけではない。山賊家、へび家、太古に祀られた邪神家が、次々と声の方へと駆けていく。目的は一つ、石油王の財産だ――。
「ヒャッハー! どけどけ! 桃花チャンさまのお通りだ!」
 と、ぶっ放された攻撃が、それらの〇〇家をまとめて吹き飛ばした。残り17家。
「うーん、確かに入れ食い状態だけど、それはそれとして疲れるね!」
 と、うり家。
「実際、100人の敵との闘いですからね。R.O.Oでなければまともに取り組めるものではないですよ」
 コル家が、ふぅ、と額の汗をぬぐいながら言った。
「ヴァリュ……ヴァレ家! みてください! この山賊家、こんなにため込んでましたよ!」
「でかしました、マリ家! これで今夜の酒代はいただきですね!」
 と、倒れた山賊家の荷物や、太古に祀られた邪神家に奉納された財産なんかを懐にしまい込む家二人。
「って言うか、マリ家よォ~?
 悪評を夢見シリーズに擦り付けるって言うけど、お前らも夢見シリーズじゃネ?
 その悪事全部自分に返ってコネーか? 大丈夫カ?
 拙者……じゃなくて桃花チャンはここじゃ桃花チャンだから平気だけどよ!」
「?」
 と、マリ家が小首をかしげる。
「大丈夫ですよ! 正直、現実の方にネットの悪行を押し付けられるのがメリットですし!」
「大変ですね、桃花殿! 最近のネットの炎上は怖いですよ!」
 と、二人の家が言うのへ、桃花は顔を覆った。
「どうして……どうしてこんなことに……?」
「大変っすね、相談に乗るっすよ? お肉食べながら!」
 VIVI家がぽんぽん、と肩を叩いた。お肉食べながら、と言う事は、家二人の野望が成就すること前提の話なのだろうが。
「くそー、VIVI家も覚えとけよ! お前も綺麗なキャラじゃいられないようにしてやるからなっ!?」
「ただいま、皆」
 と、ねこ家とFin家が戻ってくる。二人とも、喜び半分、悲しみ半分、と言った顔をしている。そうだろう、自らの手で、愛らしい家たちを処分しなければならなかったのだ……。
「おかえりっす! で、あと何家っすかね?」
「もう家が数の単位みたいになってるジャン!」
「そうですね。クエストの達成条件から察するに、あと17家と言った所でしょうか? ……と、噂をすれば」
 コル家が言う。その間、現れたのは、これまでの家とは明らかに違う雰囲気を纏った家である。
「くくく……我は夢見・ラスボス家……」
「あ、絶対もう名前とか属性考えるネタがなくなった奴だね!」
 うり家が指さした。
「間違いないですね……でも、そのラスボス家も、こちらが言ったもの勝ちになるのはこれまでの傾向から明らか。故に私はこう言いましょう。
 こほん。
 あなたは燃えるのが得意な夢見なんだね! たーのしー!」
 と、コル家が宣言(きめつけ)る。途端、なんかラスボス家が燃え盛り、ぎゃあ、と悲鳴を上げながら、取り巻き家たちに己の炎を映して回った。
「ふふ。こうやって、火だるまになって次の犠牲者を引き寄せる……それが、ローレットの与太仲間よね」
「嫌な仲間だね!」
 うり家が言う。かくして、ラスボス家たちが燃え盛っているのをしり目に、クエスト達成値はぐんぐん上がっていった。やがてラスボス家が消滅すると同時に、派手なファンファーレと共に、クエストクリアの文字が、インターフェース上に踊ったのである。
「見事だ、ベストフレンド……」
 ルル家が言う。
「この島のバグは浄化された……俺も消えなければならない」
「ルル家ちん……!」
 VIVI・IXが叫んだ。その声に、ルル家が頭を振る。
「泣かないでくれ、ベストフレンド。いつかまた会える。この夢見島で――」
「ルル家ちーーんっ!」
 VIVI・IXの悲痛な声が響いた。やがて、ルル家は粒子のきらめきに乗って、その身体を虚空へと消滅させていく。
 誰もが、それを見送っていた。わずかな時であったが、ルル家は確かに戦友だった。戦友との、永遠の別れだった。誰もが、その胸に悲しみを抱きつつ、ただただ、静かに空を見上げていた――。
「だから何なんだよ、このクエスト」
 桃花がそう言った。
 誰にもわからなかった。

成否

成功

MVP

夢見・ヴァレ家(p3x001837)
航空海賊忍者

状態異常

なし

あとがき

 お疲れさまでした!
 皆さんの活躍によりバグは消滅し、夢見島には、ただ静けさだけが残っているのです――。

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