PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ショッケンVSサウザント・ザ・ゴブリンズ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●千のゴブリン
 景色を埋めるグリーンの群れ。手足はあれど人外の、脳はあれど畜生の、誰もが知り誰もが戦いしかし侮り命を落とす。
 その名も――『ゴブリン』。
 今まさに、スチール鋼鉄国郊外の兵たちはゴブリンの大襲撃によって壊滅しつつあった。
 兵の肉体は切り刻まれ、時には木の槍の先端に飾られた。
 威圧としてそれを振りかざしゴブリンの集団が、防衛作戦本部であるテントにまで押し寄せている。
「嘘だろ! こんな場所で……こんな場所で終わるのか、このオレが……!」
 机をひっくり返してゴブリンを足止めし、必死にテントから逃げ出す白衣の青年。
 落ちかけた黒縁眼鏡を押さえ、地面に転がったノートPCを拾いあげる。
「だからオレは反対したんだ! 三塔の奴ら、くそっ! オレをログインさせるならもっと他に適任が……!」
 悪態をつきながら走る彼の足に、鋼の矢が突き刺さった。
 痛みのあまり転倒する。地に手を突いて振り返ると、機械式のボウガンを抱えた大型のゴブリンがこちらを狙っていた。
 ゴブリンたちは鋼鉄国の兵が装備していたであろう武器を鹵獲したのだろう。
 二発目が迫る――その矢を。
 がしりと、ブラックハンドがつかみ取った。
「生きているか、我が同志(とも)よ!」
 手の中で鋼の矢をへし折り、怒りの表情で掲げる彼は――。
「ショッケン!!」
「鋼鉄陸軍ショッケン・ハイドリヒ――只今参上した。同志へ向けたその刃、この私がへし折ってくれる!」
 拳を突きつけるショッケン。浮かぶアルキメデスレーザー放射板。
 猛烈な勢いで殴りかかるショッケンだが、放たれるボウガンと殴りかかるゴブリンの群れによってたちまち殴り倒されてしまった。
「ぐほあ!?」
 白衣の青年……清水 湧汰はため息をついて再び走り出す。
「ショッケン(NPC)じゃだめだ。ローレットの連中はまだ来ないのかよ!」

●救出作戦
 ――Rapid Origin Online。通称ROO。
 それは練達セフィロト内に作られた電脳仮想の混沌世界。
 フルダイブMMORPGのようなこの世界は原因不明のバグによって無数の研究員たちが仮想世界『ネクスト』に囚われるという自体に陥っていた。
 彼ら研究員の救出。ならびに電脳世界の調査。これらはローレット・イレギュラーズへと委託され、彼らは電脳世界ネクストへ専用アバターを作りログインすることとなったのである。

「ログインしたまま帰って来れなくなったのか……」
 普段の明るい様子とは少し違った、清水 洸汰(p3p000845)。
 肉体だけはそこにある己の弟『清水 湧汰』を見下ろして、ぴくりと指を震わせる。
 一見して湧汰のほうがずっと年上に見える。そこに理由はあるのだろうが……。
「オレ、ユータのこと本当はちゃんと知らなかった気がするんだ。あの部屋から連れ出されてすぐに混沌に召喚されたから、あのときどうなってたかなんて知らなかったし……」
 混沌世界で何年か活動するなかで、湧汰と接触する機会は幾度かあった。
 彼のどこか攻撃的な態度や、周囲に対する劣等感や怒りが、洸汰の知る弟像にうまく結びつかなかったのである。
 最後に接触したのは、たしか練達での異世界研究に協力した時だったか。
「あのあと、ユータはROOの研究に携わったのか……それとも、もっと前からこの研究に携わってたのか。どっちかな。ともかく……」
 湧汰の頭にそっと手を置き。『よし!』と言って自分の頬を叩く。
「今からオレたちがそのネクストってところに介入(ログイン)して、ユータを連れ戻せばいいんだなー! よーし、いくぞー!」

 今回舞台となるのは鋼鉄国郊外。モンスターの大襲撃を受けている前線防衛基地である。
 この場所では勇敢かつ仲間思いな鋼鉄軍将校ショッケンの指揮のもとモンスターの撃退が行われていましたが、異常なほど発生した『ゴブリン』の大軍によって部隊は壊滅。基地もまたゴブリンの侵略をうけている。
 救出対象となる練達研究員『清水 湧汰』は、この基地の雑用係というNPCとして強制的に紐付けられ、ログインしたPCたちに『救出』されなくては解放されないしくみになっているようだ。
 当然、そのためには基地内に入り込んだ一千体にも及ぶゴブリンの群れの中を掻い潜り、時には倒し、時には命を犠牲にしながらも救出対象である『清水 湧汰』を救い出し基地を脱出しなければならない。
「ユータの命はオレたちにかかってるってことだなー! 一緒にがんばろーぜ! みんな!」
 洸汰は元気よくログイン装置へと入っていった。

GMコメント

※重要な備考
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。

詳しくはこちらの特設ページをご覧ください
https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline

●成功条件
・研究員『清水 湧汰』の救出
 ゲーム内にて基地の雑用係キャラとして強制的に紐付けられてしまった『清水 湧汰』を、モンスターの基地襲撃から救出することで完了します。
 湧汰は記憶や精神が保持されているタイプの紐付けを受けているらしく、ローレットのこともおおむね認識しています。
 ですが戦闘能力はないので、彼をまもってあげなくてはいけません。
 死ぬとどうなってしまうのかわかりませんが、少なくとも彼がこのシナリオ内で死亡した場合依頼は失敗扱いになります。

・オプション:ショッケンの生存
 鋼鉄にはショッケンという将校NPCがいます。
 この基地を指揮する軍人で、とても仲間思いで誠実なヤツです。ちょーまっすぐな軍人です。陰謀を企んだりなんて、ぜったいしない。
 強力な武器アルキメデスレーザーを持っていますが、本人がちょい弱いのでゴブリンの群れにいちいちボコされています。
 けどタフなのかボコされるたびに生き延びているようです。

●防衛基地と現状
 一千匹のゴブリンが押し寄せ壊滅した基地です。
 NPC兵はほとんど殺されており、残った兵士もどこかに隠れたりこもったりして身を守っています。
 救出対象である『湧汰』もこのなかのどこかに隠れている筈です。まずはゴブリンたちを倒しながら彼を見つけ出す必要があるでしょう。

●ゴブリン
 いかにもこいつゴブリンだなって見た目の、緑色した小柄な亜人系モンスターの群れです。たまーに大柄な個体がおり、兵士から鹵獲した装備を使ってくることがあります。
 戦力的にも規模的にも、全滅させるのは無理よりの無理ですし、なんならPCが2~3人ほど死ぬ可能性があります。
 命を有効に活用し、味方と救出対象を逃がしましょう。





遘√r隕九▽縺代※

  • ショッケンVSサウザント・ザ・ゴブリンズ完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年05月15日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

コータ(p3x000845)
屋上の約束
神谷マリア(p3x001254)
夢見リカ家
R(p3x002765)
駆逐巫女
リアナル(p3x002906)
音速の配膳係
アリシア(p3x004649)
デッドリーヘブン
レニー(p3x005709)
ブッ壊し屋
夢見・マリ家(p3x006685)
虎帝
パンナコッタ(p3x009550)
ALL IN MY HEART

リプレイ


 ――3
 ――2
 ――1
「ふぁいあ」
 『駆逐巫女』R(p3x002765)は右手側のレバーを握りとりがーをひくと、背負った荷電粒子砲を発射。
 炎の尾の放物線をひいて青い空を飛んだ弾頭が軍事基地の建物へ命中。と同時に凄まじい爆発と爆風を引き起こした。
 うおーといいながら髪をなびかせあおられるR。
「うぇへへへへ、遂に遊べますね。ROO。
 イレギュラーズの依頼とかproject:IDEAだとか
 そんな事はどうでもいいんだ。重要な事じゃない
 私にとっては新作ゲーム…それもフルダイブで遊べる事が重要です。
 この質感。現実感!マジ震えて来やがりますね…うぇへへ
 さあさあ、皆さん、早くクエストを始めましょう!
 一心不乱のクエストを!」
「ひゃっはー!
 言うなれば【ALL IN MY HEART】! コッタ様だ!
 ハチミツください!
 え? ハチミツなんてない? ゲームが違う? 細かいこと言うんじゃねーべや!」
 『ALL IN MY HEART』パンナコッタ(p3x009550)はライフルを構え突撃。
 こちらの存在に気づいたゴブリンの集団が棍棒を手に襲いかかるも、近づかれる前に右から左へフルオート射撃で薙ぎ払っていく。
「ふふふ! 私……じゃない! 拙者の腕の見せどころですね! 張り切って暴れますよー!」
 その横を駆け抜け、ビビッと謎のダブル横ピースでウィンクした『航空海賊虎』夢見・マリ家(p3x006685)がダッシュの勢いを残したままゴブリン集団へとスライディングタックル。
 トラきぐるみのなんか肩のあたりからがちゃこんとガトリングガンのアタッチメントを展開すると、そのままアームによってマリ家の腕へがちゃこんと装着された。
「くらえー! ちょうぎんがにんぽー! ござる!」
 ガトリングガンでおもっくそ薙ぎ払っていくマリ家。
(ショッケン……ヴァリューシャにも因縁のある人。いや、今は依頼に集中しよう。ここはROO……現実とはまるで違うんだ!)

 次々と倒れていくゴブリンの中を、野球のバットでぶん殴りながら突き進む『永遠の少年』コータ(p3x000845)。
「ユータ……まさか、大変なことに巻き込まれてたなんてな。
 ショッケンはNPCでも、ユータは生身の人間。
 オレ達みてーに無理が利くわけでもないし、持ち堪えるにも限界がある。
 早く助けてやんねーと!」
 ユータ。混沌世界で再会した彼の姿はどこか大人びていて、そして自分をみようとしていなかった。
 コータの記憶の中にある素直で優しくて、自分のうしろをついてきたユータとはあまりにも違う、眉間によった皺。
 彼のホログラム研究は対象者の精神を反映するものだったが、もしかしたらProject:IDEAにも関係していたのかもしれない。なにせ練達の最重要プロジェクトだ。あらゆる研究成果が反映されるだろう。
「その研究の中でROOに囚われたのか……」
「お友達が捕まったのにゃ? にゃーは構わないけど大変なことになったにゃあ。
 この世界じゃ死んでもいいみたいにゃけど、胸騒ぎがして…何もないとは思えないにゃ。
 しょうがないにゃ、せめてその人が死なないくらいのお手伝いはしてあげるにゃ」
 爪をしゃきんと露出させ、猫又アクションでゴブリンたちを倒していく神谷マリア(p3x001254)。
「まとめて突入しても非効率だ。ここは手分けをして救出対象者を探さないか」
 『マニエラ・マギサ・メーヴィンのアバター』リアナル(p3x002906)はマリアや自分をゆびさした。
「コータと私たちは清水 湧汰の捜索。マリアたちは目立つ場所で派手に暴れてゴブリンたちの注意をひけ」
「それってかなり危ない役目にゃ?」
「危ない役目にゃ」
 冗談みたいに招き猫っぽいジェスチャーをすると、マリアはOKサインを出した。
「アリシアとレニーはどうするにゃ?」
「オレも捜索に加わるよ。コータとは別の場所を探そう。そのほうが効率がいい」
 『グレン・ロジャースのアバター』レニー(p3x005709)は近くに落ちていたスレッジハンマーを手に取ると、西側の建物を指差した。
「壁とかドアとか怖しながら進んでいくから、誰かと一緒だとかえって速度落ちそうなんだ」
「なるほど」
 『クレイジーメイド』アリシア(p3x004649)はこくこく頷いて、じゃあアリシアは揺動にいきますねと提案した。
「いましきますショッケェェェェーーエエエン!!!
 あ、叫んでみたかっただけです。知らないおじさんですが正義の味方っぽいので」
 といいながらゴブリンの集団へと突っ込んでいく。


 揺動とは派手であればあるほどよい。
 ということで。
「大丈夫、防衛基地は五体満足な筈ですよ、多分きっと、メイビー」
 Rは背負った荷電粒子砲をどかどかとうちまくっていた。
 爆発の光も音もすさまじいが、混沌法則研究のために作られたというだけあってROO内でも混沌肯定と似たようなシステムが働いているらしかった。要するに、爆発の割にあんまり壊れていない。
 当のRはといえば、これ幸いとばかりに集まってくるゴブリンたちに次々とぶっ放していくのであった。
 そうしておきた爆発の中を突き進むアリシア。巨大な盾ヘヴィメタルタワーと四聖刀『陣』をそれぞれ構え、ゴブリンを蹴散らしていく。
「ゴブリンはここで死ぬんですよ。
 私の包丁に刺されて経験値になって死ぬんですよ。
 ここでは全ての命に経験値という価値がある、軽率に殺し殺されるべきなんです!!!!
 それまでのデモンストレーションも大事ですので、まずは歌と踊りですよ。
 今回のテーマは「殺し愛」です! キル&デスカウントLOVE☆
 毒殺~焼殺~溺殺~惨殺~♪ ハイッ!! キル・デス! キル・デス!」

 軍事基地の一角。からっぽのガレージの中で、清水 湧汰はぺたんと地面に座り込んでいた。
「クソッ、こんなところで死ぬのかよ。いや、そもそも死ねるのか? 死ぬよりひどいことになる可能性だって……」
 頭を抱え、うつむく。
「いやだ……オレはまだ証明してないんだ。オレはまだ無能のまま……」
 従順なふりをして生き延びた。『学校』で過ごした時間は決して幸福とは言えなかったけれど、生きていくために『両親』とされた人物のいうことを聞き続けた。
 立派なオトナになるために、ドロップアウトした同級生たちを尻目にひとり生き延びた……その末に偶然たどり着いた社会は、それまでの知識も技術もまるで役に立たない絶望の地獄だった。
 その世界でみつけた『兄』らしき人物は、奇妙なほど伸びやかで……。
「こんなことなら、最初から、オレなんて……」
 戦いの音が近づいてくる。
 いや、基地の兵隊がひとり殺された音だ。
 まだ生き残りがいたことのほうが不思議ですらあったが、どうやら基地建物内に侵入したゴブリンたちが人間を見つけ出し片っ端から殺しているのだろう。
 その音が徐々に近づき……。
 ぎい、とガレージのシャッターが開かれる。
 震えながらも手元の拳銃を手にとった、その途端。
「ユータ!」
 駆け込んできたコータのバットがゴブリンを吹き飛ばした。
 同じく駆けつけたリアナルが群がろうとシャッター前にせまったゴブリンの首を連続で切り落としていく。
「ショッケンは一緒じゃないのか?」
「と、途中ではぐれた」
 振り返って問いかけるリアナルに、湧汰は戸惑いながらも回答した。
「それより……どうしてここが。お前達までログインしたのか? ROOに」
「そういうことだ。マッドハッターらの依頼でな」
「…………」
 湧汰はちらりとコータの顔を見た。
 幼い、そして無邪気なコータの顔を。
 そしてフッと目をそらす。
「オレひとりでも脱出できた」
「それでも助けに来るぜ、兄弟だもんなー!」
 笑うコータの顔を見れないまま、出口へ案内しようといってあるき出す湧汰。
「オレは助けに行かなかった。知っていたのに」
「ん?」
「なんでもない」

 一方その頃。
 壁を粉砕して部屋へと現れたレニーに、片腕を怪我したショッケンが素早く手のひらをかざした。アルキメデスレーザー照射装置がキラリとひかりレニーをねらう……が。
「む、人間? 一般人か。ここは危ないぞ! なぜ入ってきた!」
「まさかアンタにそんなセリフをかけられるとはな。怪我してんのか?」
 かなりイカれてしまったスレッジハンマーを放り投げ、ショッケンへと近づく。
「心配いらん。それより君は大丈夫なのか。外を見たろう、ここは地獄だぞ」
 調子狂うな、とつぶやきつつ、レニーは入ってきた壁を指さした。
「オレはその地獄への救援部隊だ。仲間が外で敵をひきつけてるから、一緒に脱出しよう」
 レニーの言葉に、ショッケンは少しだけ考えるそぶりをみせてから渋々といった様子で頷いた。
「……わかった。ただし私も戦おう。まだやれる」

 野外では絶賛戦闘中であった。
 ジープが並んでとめられていたであろう駐車場にはゴブリンがあふれ、わからないなりにジープをばらばらに破壊しようとしていた。
「にゃっ!」
 そこへ飛びかかるマリア。
 『ブラッドカーニバル』という凄まじい乱舞によってゴブリンたちを蹴散らし、無事なジープに目星をつけてボンネットへとよじのぼる。
 ゴブリンたちが集まり、鹵獲したであろうライフルを構え始めた。
「おっと……」
 雑魚(ごぶりん)の群れとあなどれば、基地内にいた兵たちと同じ道をたどることになる。
 防御姿勢をとって銃撃を防ぐマリア――のもとへ、パンナコッタが駆けつけた。
「一千匹はさすがに多過ぎてワロタ! どうせ倒しきれないやーつ!」
 いいながら、マリアへ集中していたゴブリンたちを後ろから銃撃。
 打ち尽くしてカラになったマガジンをすて、腰から予備弾倉を装填する。
「ていうかどうせこれ撃ち続けるしかできない! AP尽きるまで撃ち続ける!」
 あとよろしく! と叫ぶパンナコッタに答えるかたちでマリ家が突進。
 腕に装着していたガトリングガンをパージすると、肩からはえた串状の武器を手にとって突撃姿勢をとった。
「さぁ! 行くよ! じゃない……行きますよー!」
 バチンッと音を立ててはじける電撃がマリ家を包み、凄まじい速度をもって武装ゴブリンを突き刺していく。
 そこへ群がろうとせまるゴブリンたちにライフルによるバースト射撃を小刻みに打ち込んで牽制しつつ、パンナコッタが手招きをした。
「さっさとそのジープ回収して! 仲間と合流してここ逃げっぺや!」


 ガレージから脱出したコータたちを待っていたのは、百を超えるゴブリンの群れだった。
「陽動はしていたん……だよな?」
 刀を構え、じりじりと退路をさがして視線をはしらせるリアナル。
「してた、けどカンペキに全部引き寄せられたわけじゃないみたいだなー」
 コータもまたバットを構え、背後に湧汰をかばった。
「大丈夫。ここから逃してやるからな」
「いや、いくらなんでも無理だ。こんな場所から全員無事に突破するなんて……」
 弱音をはいた湧汰を制するように、リアナルがガチンと刀で壁を叩く。
「『全員』は無理だろうな」
「リアナル……?」
 空にあがる合図のような砲撃音。
 そして近づくジープの音。
「コータたちは行け。なに……VRでならすでに死んだことがあるゆえな、何も怖くないさ」
 小さく笑い、リアナルは走り出す。ゴブリンを一匹、二匹、三匹と次々に切り捨て、その驚異的なまでの勢いにゴブリンたちは必死になって飛びかかった。
「り、リアナル! オレも――」
「行け!」
 叫ぶリアナルに踏みとどまり、そしてコータは湧汰の手を引いて走り出した。
 すぐそばへ迫るジープに駆け寄り、飛び乗っていく。
「交代にゃ!」
 飛び乗るコータたちと入れ替わりに、マリアがジープの後ろへと飛び降りた。
「さあ、私を倒せるなら倒してみるといいにゃ!どうせまだ死んでも大丈夫にゃ、命は惜しまないのにゃ!」
 いくらジープといえど大量のゴブリンの中を無理やり走り抜けることはできない。
 誰かが道を開かねばならないのだ。
 マリアは『ネイルスラッシュ』をアクティブにすると、武装したゴブリンへと飛びかかる。
 軍隊の武装を鹵獲しているだけあってひたすらに頑丈だったが、マリアの爪が強引に装甲を貫通して通りゴブリンの胸を切り裂いていく。
 至近距離でサブマシンガンが腹めがけて乱射されるも、マリアはその腕を抑えて叫んだ。
「さっさと行くにゃ!」
「――!」
 マリ家はアクセルを踏み込み、ジープを発進させる。飛びついてきたゴブリンを、コータはバットで叩き落とした。
「つかまってて、ちょっと乱暴にするよ! ……じゃなかった、します!」
 マリ家はハンドルをしっかりと握り込むと、ばちばちとジープのリアに電流を走らせゴブリンを数体はねて突き進む。
 パンナコッタはそれでも前方をふさごうとするゴブリン集団へとライフルを構えた。
「コッタの深紅の視線(レッドサイト)を塞げると思うなよ!
 さぁ、AIMしてやるぜおまえらのHEARTをよ!
 射貫かれて凍り付け! 無防備に恍惚しろ!
 コッタ様に心ごと撃ち抜かれて身動き取れなくなっちまえ!」
 撃ちまくる特殊弾頭に次々と倒れるゴブリンたち。

「ゴブリンくせぇ場所に要はねえ、さっさと撤退だ」
 一方、基地の外まで近づいていたレニーとショッケン。
 彼と共に走りながら、レニーは飛びかかる武装ゴブリンを殴り倒していた。
 後ろから追いつこうと走ってくるゴブリンにはアルキメデスレーザーの薙ぎ払いが襲う。
(真っ当に生きる目的を見つけられた、もしもの世界か。
 夢みたいな話だが。夢ならハッピーエンドで終わらなきゃ寝覚めが悪ぃってな!)
 笑いかけると、ショッケンもまた頷きながら笑った。
 ふと指をさすほうを見ると、コータたちをのせたジープが基地の外へと走っていくのが見える。
「はぐれた仲間は無事脱出したようだ。あとは我々だけだが……」
「メイドの嗜みっ」
 突如、建物の影から飛び出すアリシア。
 『粗茶でございますっ!』を発動しお茶をゴブリンにぶっかけると、続いて『燃え燃えキューン!』を発動。大量の薬物と火薬の詰め込まれた提灯の導火線へとチャッ○マンで着火し、脅威の腕力で投げつけた。
 ゴブリンたちが炎につつまれ転がるなかをぬけ、アリシアがショッケンとレニーたちへとかけよってくる。
「Rは?」
「呼びましたか」
 謎の拡散ビームを乱射しながら、後ろ向きに走って合流してくるR。
「あっショッケンさん! そのアルキメデスレーザーくれません?」
「だ、だめだ! これは尊敬する先輩より授かった大切な道具なのだ!」
「えー。よーこーせーよー」
 ぐいぐい絡みながらも核ぶっぱは忘れないR。
 追いすがろうとする少数のゴブリンたちを置き去りにするべく砲撃をぶちかますと、四人は基地の外へと脱出を果たしたのだった。

成否

成功

MVP

リアナル(p3x002906)
音速の配膳係

状態異常

神谷マリア(p3x001254)[死亡]
夢見リカ家
リアナル(p3x002906)[死亡]
音速の配膳係

あとがき

 クエスト完了
 マリアとリアナルは無事復活し、サクラメント前で合流しました。

 ――研究員ユータの救出に成功。この先ROO攻略の補助に尽力します。
 ――NPCショッケンの生存フラグが解放。何に影響するのか今の所わかっていません。

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