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シナリオ詳細

失われた武勲

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 サクラメントを越え、クエストを担当するらしいNPCがいるという邸宅の中に通された君達の前に、男が立っている。
「よく来てくれた」
 静かに、覇気に満ちた声で彼は君達に視線を向けた。
「諸君らは一種の冒険者なのだと聞いているが……間違いなかったか?」
 椅子の向こう側、やや身を乗り出して、手を組んで問いかけてきた。
 君達が頷けば、本のわずかに彼は笑みを零し。
「そうか。であれば問題ない。諸君らに、ある町の調査を行ってきてほしい。
 私の部下を送ってもいいのだが、我が家の手の者はその手の『探索』というものがあまり得意ではなくてな」
 そういうと、彼は机の端にまとめていた資料の束を君達の方へ差し出した。
「そこは我が家の最盛期を築いたある当主と、その嫡男が戦死した場所である。
 その悲運、その悲劇は我が家を疲弊させた。だが――その悲劇を悲劇のままに歴史の奥で潜ませるだけでは勿体ない。
 私は、この伝承における歴史に一頁として確かに記した方がいいと考えた。
 故に、その城塞都市――ブラッド・フォートレスサークルの調査を頼みたい」
 資料の一ページ目、円形状に構成された一種の陣形を思わせる城塞都市、その中心に×印が記されていた。
 2つ目以降はどうやらその×印のある部分における内部情報のようだった。
「あぁ、そうだ、1つ。忘れていた。実は近頃、その砦の内部に見慣れぬ者達の姿を複数確認している。
 諸君らは腕のいい冒険者と聞く。町に住まう人々のために、これらも撃退してほしい。生死に関しては問わない」
 そう言った男の表情は思いやりに満ちていた。
 話は以上だ、と言い終えて視線を机に落とした男は、何やら文書にサインを始めたようだった。
「御身のお名前を聞かせてもらえませんか」
 誰かの言葉に、男が視線を上げた。
「……名乗っていなかったか。すまぬ。私の名はイオニアス。イオニアス・フォン・オランジュベネ。
 このオランジュベネ領を管理するオランジュベネ子爵家の当主である」
 微かな謝意を見せつつも、静かにそう告げた。


 地下に広がるは広大な空間だった。
「んんーー!?」
 猿轡を嵌められた男女2人組が囲われていた。
 床へ座らされた2人は、互いの手を後ろで組み合わせるようにして縛り上げられ、足も同じように締め上げられている。
「おい、黙れ」
 ドスの効いた声で男が2人組――その片方、少女の猿轡を外して代わりに銃口を突っ込んだ。
「死にたいか? 死にたいなら殺してやるぜ?」
 引き金に指を置く男を片方が睨み返す。
「はっへひははい!」
「はん、いいじゃねえか。イキのいいやつだ。本当に殺してやってもいいが……やっぱやめだ。
 代わりに――そろそろ吐いてもらおうじゃねえか、俺達の何を探ってた?」
 銃口を口から引き抜かれた少女はその言葉に鼻で笑う。
「言うわけないでしょ、迷子で出れないお馬鹿さん達。
 その無い頭振り絞って考えてみなさいな!」
 キッと男を睨み返して啖呵を切ってみせる。
「減らず口を言うじゃねえか――どうやら立場ってもんが分かってねえらしい」
 青筋を浮かべ、男が引き金を弾いた。
 静かな銃声が、静かな反響を放つ。
 脳天を撃ち抜かれた少女は反動にがくりと頭部が後ろへ傾ぐ。
 しかし、撃ち抜かれた脳天が巻き戻るように再生していった。
「――何度やった所で同じ。私は死なないわ」
 挑発的に笑った少女に、男がさらに苛立ったように見えた。

GMコメント

 こんばんは、春野紅葉です。
 そんなわけで(?)ROO1本目をお送りいたします。
 なんか見覚えがある方もいそうなおじさん?ですね……。
 さておき、さっそく詳細をば。

※重要な備考
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。

●オーダー
【1】ブラッド・フォートレスサークルの調査を行なう。
【2】地下にいる盗賊たちを撃退する。
【1】と【2】の両方を達成して成功とします。

●フィールド
 かつて依頼人の先祖がその嫡男と共に散った城塞都市、その中央に座す古びた砦です。
 中々におどろおどろしく、中央の建物は地下1階から地上2階の3階建ての壮観さです。
 下記は現実(混沌世界)側で該当する都市の内装から推察される情報です。

・1階
 巨大なエントランスホールを中心にキッチン、リビング、応接間などの跡が存在します。

・2階
 総司令官の執務室、2階のバルコニー、軍議室、図書室などの跡が存在します。

・B1階
 降りていく階段を除き、フロア全体を広大な1つの空間で構成しています。
 武器庫とシェルターを兼ねていたと思われます。
 最近になってここに何者かが住み着いた様子です。
 また、現在は息をしていないサクラメントが存在しています。

●エネミーデータ
・盗賊?×?
 何者かは判りませんが、盗賊でしょう。数も多そうです。

●NPCデータ
・イオニアス・フォン・オランジュベネ
 今回の依頼人であり、領内にブラッド・フォートレスサークルを有する伝承貴族です。
 民政に意欲的で領内に善政を敷いており、民衆にも慕われています。
 その一方、フィッツバルディ派に属してオランジュベネ家の家格の向上を狙う野心家でもあります。
 妹は隣のブラウベルク家に嫁いで一子をもうけています。
 ブラウベルク子爵の前妻の子として血のつながらない幼い甥と姪がいます。
 ROOに生きる、一般的なNPCです。

※以下はPL情報です。

・希望ヶ浜の学生×2
 B1階にて盗賊に捕縛されている学生です。
 男子生徒は魔術師風です。恐らくはアタッカーであろうと思われます。
 女子生徒の方は豊富なHPと再生能力、極めて高いEXF、防技を駆使するタンクです。
 クエストを達成後、救出することが可能です。

●サクラメント
 いわゆるログインポイントです。
 地下シェルターの奥の方に存在していますが、クエスト達成まで起動不可能です。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はB-です。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、一部情報が非常に不鮮明で不測の事態への警戒が必要です。

  • 失われた武勲完了
  • GM名春野紅葉
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年05月23日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

君塚ゲンム(p3x000021)
胡蝶の夢見人
神様(p3x000808)
R.O.Oの
シャルロット(p3x002897)
吸血鬼令嬢
蒲公英(p3x005307)
迷いを捨てて
ディリ(p3x006761)
ベネディクト・ファブニル(p3x008160)
災禍の竜血
きうりん(p3x008356)
雑草魂
黝(p3x008717)
玄緯・玄丁のアバター

リプレイ


「確かにこの依頼、引き受けました。吉報をお待ちください」
 今はまだ少々厳しい表情のわんこにしか見えない『白竜』ベネディクト・ファブニル(p3x008160)はその内側にある青年らしく静かに言葉を告げた。
「うむ、よろしく頼む。貴殿らの報告を楽しみにしている」
 短く頷いたイオニアスは、そう言ってイレギュラーズから再び視線を外して仕事に戻っていく。
(彼は確か……いや、そうか)
 ベネディクトは青色の瞳の向こうで思う。
(俺は実際に会った事は無かったが、此処はそういう世界なのだったな)
 ネクスト――混沌世界に似て非なる形式で構築されたゲームである。
 その世界の住人(NPC)達は、得てして現実のそれとは別物となりえるのだという。
 ベネディクト自身、彼と出会ったことはないが、話を聞いたことはあった。
(イオニアス。あれが、イオニアス・フォン・オランジュベネ。砂蠍事件で挙兵した反逆者)
 目的地へ向かうべく背を向けた『君の手を引いて』ディリ(p3x006761)もまた、同じような感傷――あるいは自覚を受けていた。
(まさかこの目でその姿を見る日が来るとは思わなかった。だけど───穏やかだ。話に聞いていたイオニアスとはまるで違う)
 聞いた話では、魔種に転じて反乱を起こしたイオニアスは、魔種らしい精神異常をきたしたという。
 それに比べれば、あまりにも穏やかな男であったように見えた。
(……実感した。ここは本当に混沌であって、そして違う世界なんだ))
 聞いていた話が、現実を帯びて実感に代わったのを感じながら、普段とは異なる姿の掌に視線を向けた。


 クエストを受注し終えた8人はすぐに目的地へとたどり着いていた。
「さて……下界平定の第一歩である」
 そこにあるはナニカであった。
 それはある人が見れば眉目秀麗なる青年のようにも、ある人が見れば沈毅な老人のようにも、うら若き美女のようにも見える。
 静かに目的地を見上げる『R.O.Oの』神様(p3x000808)はどことなく憂いを帯びたように手で顔を覆っていた。
「今まで神が隠れていた為にこの世の秩序が乱れてしまった。
 悲しきことだ。虚しきことだ」
 仰々しくも荘厳なる、或いはそれはオペラの戯曲のように。
「しかしてもう安泰だ。そう! 神が来た!」
 堂々たる宣誓は誰かにとっての『神』という在り方なのだろう。
「それでは、囚われたまま抜け出せぬ悪夢から民草を、依頼主を――そして盗賊達を救おう」
 神の視点より見るは等しく救われるべき子らなのだから。
「向こうの世界の地理が果たしてどこまで通用するのかしらね?」
 進む神様の姿を眺めながら、『吸血鬼令嬢』シャルロット(p3x002897)はぽつりと呟いた。
 その脳裏には混沌世界における該当施設――あちらの世界では依頼人とイレギュラーズが決戦に及んだこの地の間取りを思い浮かべた。
「地球のテレビゲームというものでは、こういった施設は何故か迷宮になっているらしいのだけど……」
 そういうシャルロットは自らの立ち位置も風貌も現実のそれと大差なく――けれどどことなく普段より一層と『本質』をむき出しにしているかのようだ。
 薄っすらと周囲を包む鮮血の霧を従え、貴人は歩む。
(それにしても、本当に現実と見まごうばかりだな……)
 一つ呼吸を置いて『胡蝶の夢見人』君塚ゲンム(p3x000021)は声出しの調子を整える。
「声の調子は問題なし。身体も現実同様に動く」
 ゲンムは少しばかり身体を動かしてみる。
「いや、それどころか現実よりも調子がいい」
 普段の騒めくようなメンタルへの雑音もなく、感じたのはそれだった。
「ふ、なかなかどうして、悪くないものだ」
 ニヒルに、静かに笑ったゲンムの表情はいつもよりもやや清々しいようにも見える。
「おぉー……ここが初クエストの舞台ですね!
 これは俄然楽しみになってきました!
 冒険者としての第一歩、躓かずに行きたいものですね……!」
 ほんのりと好奇心を隠し切れぬ蒲公英(p3x005307)は、数歩ほど後ろに下がって目的地を見上げた。
 現実(こんとん)でここに来たことがある。
 その時、ここで待ち受けていた女と切り結んだことを何となく思い出した。
「ん……うーん、身長が大きいと動きづらいなぁ……」
 問題はない程度ではあるものの、若干の慣れなさを感じる『玄緯・玄丁のアバター』黝(p3x008717)は現実との差に思わずつぶやいていた。
「思った力も出せないし、これは一度や2度は死にそうだなぁ」
 剣に手を添えながら更に言葉にして、それでも黝はのんびりと。
「まぁいいか、さて、論理感抜きでいっぱい斬れるんだから頑張ろうねぇ?」
 この世界はゲームだ。向こうではおいそれと出すわけにいかぬ本質を、曝け出すことに忌避感もない。
(まぁ、なんにせよ……斬った斬られたも楽しみだね……)
 この世界の自分がどこまで通用するのかと、黝は緩やかにおもう。
「ROO初依頼だね! 張り切っていこう!!
 全員私が守るから大船に乗ったつもりでいてくれておっけーだよ!」
 『雑草魂』きうりん(p3x008356)がえいえいおーとばかりに手を突きあげる。
 そちら側と何も変わらぬ、彼女を知っていればすぐに分かるような――そんな彼女の在り方だ。
「まずは盗賊の撃退からだったね! 虱潰しに探していこう!」
 静かな音が鳴って、扉が開いていく。
 魔術的なモノに思えるシャンデリアやカンテラが室内を照らしているのが見えて、同時に人の気配を感じた。


 施設内に入ってすぐ、エントランスにいた盗賊を叩き伏せた8人は上階へ進み、発見した盗賊も適当に叩き潰して地下へと足を踏み入れていた。
「小娘が――」
 怒号が聞こえた。その声の方向へ進めば、人影が20ほど見えた。
 多少多い。だが、ここまでの戦闘での敵のスペックは正直、大したことはなかった。
 バグによって『理不尽』になっていると聞く世界(ネクスト)であることや自分たちの上振れ感を加味して考えれば、危険とは言えない水準の数だろう。
「頭! 誰か来ましたぜ!」
 そのうちの1人が声を上げる。
 すると20人の中から1人がこちらに姿を見せた。
「なんだぁ、アンタら?」
 武器を構え剣呑な様子を見せた彼らへ、まず前に出たのはベネディクトだ。
「俺達はここの調査にきた。大人しく投降すれば命までは取らない。
 依頼主も生死は問わないと言っていた。さぁ、どうする?」
「へ! 言うじゃねえか! そっちがヒトのシマに踏み込んでんだろ!」
 声を上げた男が刃を構える。
 白刃を覗かせた敵に対して、ディリときうりんは前に出た。
 その横を蒲公英が駆け抜ける。
「見敵必殺、ざくざく斬り伏せて参りましょう!」
 圧倒的なまでの超加速により剣を握る男へと駆け抜け、勢いを殺さぬままに刃を閃かせた。
 敵が咄嗟の動きで剣を受け止めるのを見たときには既に二の太刀が走っている。
 幻影を乗せたような連舞が速度のままに踊る。
 自分の為すべきことはそれだけ。
(多少、キレの悪さが困りますが……そこはそれ。そのうち慣れるはず……こちらへ来た時のようなものです)
 強く踏み込み、蒲公英は次の連撃へ移るべく構えなおした。
(盗賊、それとも……落ちた騎士だったりするのかしら?)
 思考するシャルロットの周囲を揺蕩う鮮血の色をした霧が集束し、やがて形を形成していく。
 顕現せしめた真紅の槍が戦場を走り抜け、盗賊を纏めて貫いて霧散。
 霧散した真紅の槍が周囲に揺蕩う真紅の霧へと戻っていく。
 その双眸は絶えず盗賊の様子を見定めんと試みている。
(混沌ではイオニアスとブラウベルクが何代も敵対していたというけど……)
 混沌でも行われたというオランジュベネとブラウベルクの政略結婚が、この世界(ネクスト)でも行われているという事は事前情報で聞いていた。
 混沌ではそれは最終的に破綻したが、政略結婚はある意味での和解を意味している。
「となると、不要になった騎士(やつ)が解雇されててもおかしくないわ。
 そういう奴らなのかとも思ったけれど」
 魔力を帯びて真紅を彩る爪を自然に構えながら、シャルロットは言葉にしていく。
 こいつらには『騎士』らしいところはない。
「ま、どちらでもいいわね。何か不穏な事件を起こす前に、ここで滅びてもらうわ」
「街の中にお前たちのような者が纏めて入り込んでるのはよろしくない。
 まとめて始末させてもらう」
 銃剣を担ぎ、見せつけるように2度。露骨な挑発に敵の視線がディリを見る。
 敵が動き出すのと合わせるように、ディリは走り出した。
 駆け抜けたディリが銃剣で引っ張られてきた盗賊を斬りつける。
 静かに入った太刀筋の直後、ディリが引き金を弾けば、弾丸が男を貫いた。
 爆ぜるようにベネディクトは駆け抜けた。
 まるで生きた弾丸のように強かに体当たりを叩き込み、同時に盗賊へと食らいついていく。
 その挙動は愛らしいポメラニアンの姿からは到底想像もできない火力となって敵を削っていく。
(小娘が、という事は奥に誰かいるのだろう。助けに行くにもまずは道を作らねば)
 ちらりと敵の足の間の向こう側を見ながら、ベネディクトは考え続ける。
「データの海に還ることだ」
 ベネディクトを囲む4人の盗賊の1人へと射線を確保したゲンムは引き金を弾いた。
 静かに弾かれた引き金に呼応して打ち出された弾丸は強かにその盗賊へと風穴を開けていく。
(しかし、こうやってレベル1から再開するとなると、初心に返った気分になるな)
 視線をこちらでの愛銃に向ける。
 構えるこれに感じる重さに混沌肯定を受けたあの時の事を思いだしていた。
「さすがにちょっと多い気もするけど、まぁいいや!」
 きうりんは髪の毛から形成されたキュウリを敵の頭上へ向かって投げつけた。
 放物線を描いて宙を舞ったキュウリたちは盗賊に降り注ぐ。
 そのうちの数人がキュウリを口の中に入れると、内側に入り込んだ魔力が敵の注意を引きつけた。
「よし、あとは耐えるだけだね……やっぱりちょっと多いけど!」
 若干引きながら思わず声に出していた。
「……初めてタンクやったけど、怖いねこれ! 現実じゃ絶対できないや」
 迫りくる者達に改めてドン引いた、その後ろ。
「って、捕まってる人がいる!」
 その瞬間、きうりんはそちらに向かって走り出す。
「神の不手際が愚行を勧めてしまったな。安心し給え、神が全てゆるそう」
 神は厳かに救済を通告する。
 強かに、静かに。遍く全ては神の名の下に平等なのだから。
 故に、これは裁きには非ず。
 刹那の雷鳴と閃光が劈き戦場に降り注ぐ。
「ふふ、君達はどんな強さなのかな?」
 ぎこちない動きで歩き出した黝が敵陣へ歩き出す。
 ふらりと歩み寄り、納刀された愛刀へ手を触れた次の瞬間、目の前にいる盗賊の身体に2つの風穴がある。
「意外と、向こう側と似てるんだね」
 ぽつりとつぶやく。その呟きは盗賊どもには聞こえなかったらしい。
 思いのほか確かな手応えに黝は薄っすらと笑みを零す。
「よーし、この調子で行こう」
 再度の剣閃を閃かせるべく、盗賊に視線を向けた。
「僕は忘れ物は得意だけど、探し物は不得意だからね。
 『こちらの仕事』は頑張っていこう」
 一つ呼吸。二つ踏み込んで、刹那に振り抜く。
 渾身の力を籠めた斬撃が上段から盗賊を斬り下ろす。


「よしよし、無事終わったね!」
 こくこくと頷くきうりんはくるりと身を翻し、捉えられていた2人に視線を向けた。
「はい、これでよし」
 縄を解かれた少女の肩に手を置いた。
「ありがとう」
「っはぁ~怖かったぁ」
 各々の反応を見せた2人に、きうりんは視線を向け続けていた。
「ねえキミたちも手伝ってくれない? なんか詳しそうだし!」
「構いませんけど……手伝うって何を?」
「私達はこの砦の調査に来ました」
 蒲公英は二人の方を見て、目的を告げる。
「あぁ! そういう事ですか! でしたら、僕達も協力できると思います!」
 それに応じたのは少女ではなく少年の方だった。
「えぇ、そうですね」
 こくりと少女も頷いた。
「……ふむ。再起動を実現したい所だが」
 静かに鎮座するサクラメントを眺めた神様が呟いた。
 うんともすんとも言わぬそれは、今、まだ起動はできないようだ。
「多分まだ無理だと思います。皆さんのクエストは調査、なのですよね?
 だから多分、まだ完了されてないんだと」
「そうか……であれば、神の下にいるのが最善だ」
 少女に言われて、神はそう告げた。
「ところで、なんで捕まってたの? 攫われたってわけじゃなさそうだし。捜し物でもあった?
 それとも、用があったのは盗賊の方にだった?」
「はい、僕達は別件のクエストに参加中だったんですけど」
「こいつがヘマをしてバグに巻き込まれちゃって、抜け出せなくなってたんです」
 そういうって少女が少年を睨む。
「で、僕の方は死んだら死んじゃうので……」
 実際にそうなのか、少年は気まずそうに視線をそらしてそう言って。
「アタシの方で、ひと先ずは注意を引いてたの」
 2人はそれぞれの境遇を話してくれた。


 8人改め10人は探索を開始していた。
 ゲンムは執務室らしき部屋に入っていた。
 殆どは埃を被った本棚と、静かに置かれた机。
 それらは全て古びていて、埃を払ってよく見れば効率的に整理されているように見える。
「む……この机、鍵が壊れているようだな」
 ちらりと視線を降ろしてみれば、殆ど取れかかった鍵穴が一つ。
 誰かの手によるものではない。恐らくは風化が原因だろう。
 中には本が1冊。年季の入った装丁をみれば、当時のものであることは判る。
 めくってみれば、たわいのない事から重要そうなことまで事細かに記されていた。
(日記のようだが……)
 破けてしまわないように注意しながら恐る恐るページをめくっていく。
「最後は……ふむ、滅びを受け入れたか」
 そう呟くゲンムは、心の内側で複雑な心境を得た。
 外では抱きそうな感情がこちら側では感じ取れないのだから。
 ベネディクトと神様は図書室らしい部屋に踏み込んだ。
「む、ちょっと届かないな。神様、神様。ちょっとあの辺りが怪しいと思うんだが、調べて見てくれないか?」
 ポメ姿のベネディクトはぴょんぴょんと跳ねる。
 そのたびに蒼い燐光がふわりと瞬いていた。
 声をかけた相手である神様は外での友人であるという事もあり、気安い間柄である。
「ふむ……これか?」
 神様はベネディクトがぴょんぴょん跳ねる辺りにある数冊の本を取り出してみる。
 それは何やら兵法書のように見え――めくるうちにそうじゃないことに気づいた。
 そんな時、本に触れた蒼い燐光がくるくると回り、ベネディクトを包み込む。
「……都市計画書みたいだ」
 得た情報をベネディクトは思わず口に漏らす。
 円形を描くように記されたそれには陣地図のように見えつつ、註釈のように記された文面には『商店街』やら『兵糧庫』やら『集住区』やら記されていた。
「これは一旦、借り受けておくとしよう。
 依頼主に見せた方がいい」
 神様はパタンと本を閉じて机の上に置いた。
 蒲公英は万が一にでも盗賊が他にいないかの警戒を怠らぬまま、施設の中を巡っていた。
(……しかしまぁ、説明は受けていましたが……本当に『違う』のですね)
 歩む足を止めず、何となく階段を上がっていく。
 イオニアスの様子を脳裏で思い出しながら、階段を登り切って、バルコニーへ。
「あのような“もしも”があった――そういう事なのでしょうね」
 町の中を見渡せるそこで、広がる光景を見つめて呟いた。
 優しく吹き付けたように感じる風を受けて、黒い髪が流れた。
 城塞都市ならではの痕跡がないかと探し求めたディリは施設の外に出ていた。
 戦いの痕は残っていない。戦闘があったのは何世代も前だというのだから、それ自体はおかしくない。
(これは、バリスタの部品か?)
 古びて朽ち果てた巨大な弩を思わせる何かが解体されておいてある。
(持ち運びのために分解しておいて、実際に使う時に組み立てる形式だな)
 ちょっと触れてみれば軋む木材、錆びた鉄、再利用は難しそうだった。
 二重の意味で慣れないながらも探索を続けていた黝は、地下室にある扉を開いて中に入っていた。
「うーん、どれもこれもなまくらばかりだね……」
 そこにはいくつもの剣や弓、杖のようなが取り揃えられていた。
 残念ながら、その殆どは錆び、或いは弦が切れていたり、腐っていたりしていて、とてもじゃないが再利用できるようなものではない。
 ぽつりと呟いて、扉を閉めようとしたところで、白刃が閃いた。
 咄嗟に剣を構えて防ぎ、返す刀で斬り下ろせば、生き残りだったであろう盗賊がぱたりと倒れていった。
「……もうちょっと遊びたかったけど、もういなさそうだね」
 一つ溜息を吐いてから、そっと扉を閉ざした。


 8人は依頼人のもとへと帰還していた。
「たしかに、確認した。その当時の記録、過去の兵法書、日記……ふむ、素晴らしいな」
 幾つか持ってきていたそれらを見て、依頼人が感慨深げに頷いている。
「これは良ければだが」
 ディリはそんな子爵へと声をかけた。
「慰霊碑のようなものを建てるのはどうだろうか。
 戦没地でもあるのなら、そういうものが合ってもいいだろう」
 それを聞いて、イオニアスが視線を上げた。
「なるほど、それは確かに名案だ」
 本来はあるかどうかを見る予定だったが、あそこは『これまで忘れ去られていた場所』であった。
 そもそも慰霊碑さえなかった。
「感謝する。直ぐに話を付けていくとしよう」
 そう言って、彼はこくりと小さく頷いた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

神様(p3x000808)[死亡]
R.O.Oの
ディリ(p3x006761)[死亡]
きうりん(p3x008356)[死亡]
雑草魂

あとがき

お疲れさまでしたイレギュラーズ。
R.O.Oが今後どうなっていくか。楽しみですね。

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