PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ワダツミの呼び声

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●発端
「ワダツミが勢力を拡大している?」
 十夜 縁 (p3p000099)は、海洋のローレットの出張所にて、『小さな守銭奴』ファーリナ(p3n000013)へと尋ねた。
「んー、そうなんですよね。ワダツミって、元々構成員とかも勝手にそう名乗ってるのを許可しているくらいに、中央への実態をつかめないようにしている組織なんですが。ここ最近、『ワダツミの構成員が急増している』って言う噂というか、情報があちこちから出てるんですよねぇ」
 ワダツミとは、縁もかつて所属していた海洋のギャング団の一つである。実体は未だつかめぬが、その本質はかなりの勢力を誇るギャング団だと推定されている。
 積極的に表に出てくるような武闘派ではないが、しかしその内を探るようなものを決して逃がすことはない。かつて絶望の青を巡る戦いでもその姿をみせ、イレギュラーズと共闘を行った間柄でもある。
「だから不思議って言うか。十夜さん、なんか心当たりありません?」
「おっさんが? 冗談だろう?」
 なにもしりませんよ、と言わんばかりに脱力して肩をすくめてみせる。かつて所属していた、とは事実だが、しかし今はその内実を知る様な間柄ではない。
「海洋の警備部隊も、なんか浮足立ってましてね。その増えた構成員が出入りしてる拠点と思わしき場所の調査依頼も来てるんですよ。ただ言った通り、相手はワダツミ。私たちでも、その全容はよくわかりません。なので、相応に実力のあるメンバーに期待したい所なんですよ」
 縁は、海洋でも名声高いイレギュラーズの一人だ。縁のようなメンバーに参加してほしい、というのがファーリナが言外に伝えていることであるが、縁はそんな意思を理解しつつ、ふむん、と唸った。
「まぁ、俺も知らない相手じゃない……調査依頼があるって言うのなら、参加しても構わないが」
「おっと助かります! 参加1,確定っと」
 にこにこと笑いながら、手にしたメモに書き込むファーリナ。
「まー老婆心というか釈迦に説法ですが。気を付けてくださいね。ワダツミはご存じの通り底の知れない大きな組織です。此処で上手いこと釘を刺しておけば、今後もいい関係を築けるかもしれません」
 前述したとおり、ワダツミは表面上は穏健派のギャングである。が、ここで構成員を増員しているという噂がある以上、その仮面をはぎ取り突如暴れ出すという懸念は――如何に縁がそれを否定したとしても、ワダツミとの縁があるわけではない他人や、ファーリナなどの懸念は払しょくできまい。で、あるならば、ここで調査というか、ワダツミの幹部と接触を行い、その真意を確認するしかないのである。
「じゃ、他にもメンバーに声かけて、行ってくるよ」
 縁はそう言って、ゆっくりとキセルをふかした。

●真意
 結論から言うと、情報は罠だった。
 ワダツミの構成員が急増していること。彼らが頻繁に出入りしていると思われる拠点。それらが巧妙に偽装されたフェイクであり、侵入したイレギュラーズ達を待ち構えていたのは、大勢の戦闘要員、そしてよりにもよってワダツミの首魁である『禍黒の将』アズマであった。
「ちっ……しけたことやるようになったじゃないか、アズマ」
「おうおう、ちぃと今回は急ぎだったんだよねぇ。意図的に警備部隊に情報を流したんだよ。警備部隊は悪くはないよ? 騙されただけだからねぇ。まぁ許してやってあげてよ」
 アズマが部下にちらり、と視線を向けると、部下たちはイレギュラーズ達から、縁の腕をつかんで引っ張り出す。
(……やるか?)
 イレギュラーズの一人が目くばせするのへ、縁は頭を振った。かくしてイレギュラーズ達は縁と引き離され、そして各々戦闘要員に囲まれる形となる。
「いや、話が合ってさぁ」
 アズマはにへら、とした笑みを浮かべ――すぐに冷たい目を向けた。本気の眼だ、と縁は理解した。
「そろそろ借りを返してもらおうと思ってな」
「何のことだ。この間もそう言ってたが、借りはちゃんと返して――」
「そうじゃねぇよ」
 アズマはぴしゃりと遮った。
「ずっと貸してたんだ。お前がワダツミから離れた時に。お前に、お前が自由に生きる時間を、俺は貸してたんだよ」
 ふ、とタバコを吐き出す。
「もう充分シャバは楽しんだだろう? ええ? 海洋でも指折りの英雄さんよ。お前みたいな有名な人間が、そこにいる有能な仲間達ともに俺たちに合流してくれれば、ワダツミも安泰だ」
「アズマ、そのために今回の事態を起こしたのか!?」
「おう。ワダツミの事件となれば、お前が来る。そして、必ず優秀な仲間も連れてくる。一番の目的はお前だが、お前も俺の右腕として、使える部下は欲しいだろう?」
 アズマがその口の端を、にぃ、とあげた。
 要するに――アズマはここにいるイレギュラーズ全員を、うちに取り込むつもりなのだろう。もちろん、拒否権を与える気はない。断れば、八人分の死体を海に浮かべればいいとでも思っているのだろう。
「悪いが」
 縁が口を開いた。
「ここにいる全員が、ワダツミに入ろうなんて思っちゃいないよ」
 それは交戦の合図だった。縁が静かに構えをとる。仲間達も、各々武器を構えた。
「ま、そうなるだろうな、と思ってはいてな」
 アズマは酷薄な笑みを浮かべた。
「少し遊んでやれ。スマートじゃないが、痛めつけてやれば考えも変わるだろう」
 イレギュラーズ達に、ワダツミの構成員たちがにじみよる。
 かくして戦いは始まる。この場を切り抜け、無事に生還せよ!

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 ギャング団、ワダツミの調査を依頼された皆さんは、敵の罠にかかってしまったようです……。

●成功条件
 すべての敵の撃破

●情報精度
 このシナリオの情報は偽りでした。
 皆さんはすでに敵に囲まれています。これ以上の増援はなさそうですが、しかし敵の総力は未知数です。

●状況
 近年動きが活発化していると伝えられたギャング団、ワダツミ。
 その調査を依頼された皆さんは、構成員たちが出入りするという拠点へと向かいますが、そこで敵の待ち伏せに会ってしまいます。
 この情報は、ローレットでも有力・或いは前途ある皆さんを呼び出し、自身の組織に吸収するための罠でした。
 しかし、皆さんもこのまま投降し、ワダツミの構成員として一生を終えるわけにはいきません。皆さんには、やるべき事が有るはずです。皆さんはこの窮地を突破しなければなりません。
 作戦決行タイミングは夜。海洋にある倉庫が戦場です。数十名の人間が動ける程度には広く、明かりも充分にあります。
 なお、戦闘開始時点で、皆さんと十夜 縁 (p3p000099)さんは分断されています。
 簡易な図で表すと、以下のような感じです。
   敵
 敵 縁 敵
   敵
 敵 敵 敵
イレギュラーズ

●エネミーデータ
 『禍黒の将』アズマ ×1
  今回の事件の仕掛け人です。皆さんの力(特に縁さん)を高く評価しており、自身の配下に加えようとしています。
  倒す必要はありません。6ターン目までに何も手出ししなければ、撤退するでしょう。
  戦うとなると強敵です。銃と刀で武装したアズマは、強力なファイターです。

 『ワダツミの剣閃』ヤマト ×1
  ワダツミでも幹部に近い立ち位置の構成員です。主に倒すべきボスはこいつになります。
  刀を装備したインファイター。EXAが高く、手にした刃の鋭さは恐るべきものです。
  初期配置では、縁の目前に配置されています。

 『ワダツミの弾丸』キサラギ ×1
  ワダツミでも幹部に近い立ち位置の構成員です。ボス格、その2。
  銃を装備した遠距離攻撃タイプで、命中の高さがウリ。狙撃能力が高く、皆さんに麻痺などのBSを与えてくるでしょう。
  初期配置では、イレギュラーズ達の目前に配置されています。

 ワダツミ構成員 ×20
  ワダツミの一般的な構成員です。剣と銃で装備しています。
  特筆すべき能力はなく、皆さんに比べれば一回り弱い存在です。
  が、数が多く、油断はできません。
  5名が縁さんを囲むように配置されており、15名が残るイレギュラーズ達を囲むように配置されています。

 以上となります。
 それでは、皆様のご参加とプレイングをお待ちしております。

  • ワダツミの呼び声完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年05月07日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

レイヴン・ミスト・ポルードイ(p3p000066)
騎兵隊一番翼
十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
※参加確定済み※
カイト・シャルラハ(p3p000684)
風読禽
イリス・アトラクトス(p3p000883)
光鱗の姫
寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
ジョージ・キングマン(p3p007332)
絶海
長月・イナリ(p3p008096)
狐です
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色

リプレイ

●ワダツミの声
 薄暗い明かりの灯る倉庫の天井は高い。その薄暗い天井から下を見てみれば、複数のギャングたちに囲まれた、イレギュラーズ達。そして『幻蒼海龍』十夜 縁(p3p000099)の姿がある。ギャング団、『ワダツミ』の調査を依頼されたイレギュラーズ達。しかしそれは、彼らをおびき出すための罠であった。ワダツミの目的は、近年名声を高めつつあった・或いは新進気鋭の優秀なイレギュラーズ達、そして縁を、自らの配下に加える事であったのだ。
「やれやれ、随分と強引な勧誘だことで。
 こんな死に損ないのおっさんを右腕に迎えるほど人手に困ってるようには見えねぇがね」
 と、緩い口調で縁は言う。しかし、その身体はこわばり、いつでも動けるように警戒を怠ってはいない。
「……なんて処世術(やり方)は、アズマ、お前さんに教わったもんだ。通じやしないだろうね」
「分かってるじゃないか」
 にぃ、とアズマは笑う。それは普段の処世術故の仮面をとった、凄絶な一人のギャングとしての顔がある。
「この通り、こちらも今回は本気でな。返事はイエス以外に求めてない」
「ギャング団の一員になれって? このメンバーの中じゃ俺はまだまだひよっこだけど、その誘いに乗ろうとは思わないな。ていうかお呼びじゃないのでは?」
 『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)が言うのへ、アズマはくっくっと笑いながら、イズマへと視線を移した。
「お前等はつくづく、自分達の価値に気づいていないよなぁ。なぁ? イズマ・トーティス?」
 くっ、とイズマは呻いた。名前を名乗った覚えはない。ならば、既にこちらの素性は調べられていると見た方がいい。
「本格的に活動を始めて半年って所か? うちの若い連中にも見習ってほしいもんだ。まぁ、若い連中と言っても、勝手に名乗ってるような奴らが大半だが」
「つまり、分かってて勧誘してる、って事か」
 『風読禽』カイト・シャルラハ(p3p000684)が、鼻を鳴らしつつ、言った。
「だけど、勘違いしてるな。『海神(わだつみ)』が空を飛ぶ鳥の自由を縛れるとは思うなよ?」
「いいや、俺達の手に下ってもらう。お前が貴族に懇意にしてるならなおさらだ」
「もしかして、あの時から目をつけていた、と言う訳?」
 『光鱗の姫』イリス・アトラクトス(p3p000883)目を細めるもへ、アズマは笑った。
「あの時の動きは大したものだったよ。御父上にもよろしくな」
「……やっぱり、私が誰だか知ってのことだね? あなたにつかまったら、それは面白くない未来予想図が見えそう」
 イリスが『釵』を構える。
「縁さんには悪いけれど。私はここでつかまって、ギャングの一員になるつもりはないの」
「生憎、俺も自分の組織をアンタたちの下請けにしてやるつもりはない」
 『絶海武闘』ジョージ・キングマン(p3p007332)も、ゆっくりと妖刀を構えた。周囲の構成員たちが殺気立ち、各々武器を構えだす。
「あまり、なめてもらっては困る。
 俺にも、我慢の限界というものがある」
「そうね、次はもっと勧誘方法を考えてから来たら? まぁ、また勧誘されても入る気はないんだけれど。あなた達みたいな、面白みのなさそうな集団」
 『狐です』長月・イナリ(p3p008096)は、木製の大剣を構えて、ふん、と鼻を鳴らした。
「迷惑な押し売りセールスマン的な連中は帰ってもらうわよ!」
「なくしちゃいけない縁と、切るべき縁があるんだよ!」
 『若木』秋宮・史之(p3p002233)が声をあげる。
「過去に縁さんに何があろうとも……今は、お前達とのそれは断つべき縁だ! 今日、ここで!」
「女王の忠犬にそう言われたら、少しは考えちまうな?」
 アズマは笑うと、片手をあげた。構成員たちにみなぎる戦意。それは攻撃準備の合図。
「一応聞いておく」
 『竜の力を求めて』レイヴン・ミスト・ポルードイ(p3p000066)が言った。
「ここにきて、組織の急進を狙う理由は、何だ」
「教えたら、部下になってくれるかい」
「まさか」
「ならここまでだ」
 アズマは、そう言って、手を振り下ろした。途端、膨れ上がる後世んたちの殺気! アズマは手近な木箱に腰を下ろすと、こちらへと視線をやった。
「最後にもう一度だけ聞いてやるが。素直に部下になる気は」
「ないな」
 縁が、言った。
 アズマの事は、子供の頃からよく知っている。
 ケンカをして、勝てたことなど一度もなかった。
 アズマが、自分の欲しいものは、なんとしてでも手に入れることなど、知っていた。
 きっと、頭を垂れて言う事を聞いた方が――楽なのだろう。
 昔のように。
 アズマについていければ。それはどれだけ楽な道だろうか。
 昔の自分なら、きっとそうしていた。
 彼の右腕として、その生涯を全うしていた。
 でも。
 ああ、でも。
 変えてくれた、人がいる。
 並んでくれる、人がいる。
 ならば。
 ゆえに。
「……悪いな兄貴(アズマ)、俺はもうそっちに戻る気はねぇのさ」
「だから欲しいのさ、縁」
 にぃ、と、アズマは笑った。
 その顔は、殺到する構成員たちの身体に隠れて、縁からは見えなくなった。

●包囲網からの突破
「俺達は縁と引き離されている……まず合流を目指すぞ!」
 ジョージがカイト、そしてイナリへと声をかける。イレギュラーズ達は、縁、そして残りのメンバーと言うふうに分断させられていた。それぞれが構成員たちに囲まれるような配置になっており、縁との早期の合流を目指さなければ、縁が真っ先に集中砲火を受け、沈む可能性が高かった。
「わかった、私がまとめて叩くわ! そのあと風穴を開けなさい!」
「頼んだぜ、イナリ!」
 カイトの声に、イナリは頷く。イナリがその手を突き出すと、その掌の先、空間が、水のように歪んだ。
「酔い酔い酔い、お酒は楽しまないとね、壺中之天のこれから素敵な理想郷(あの世)に貴方達をご招待するわ!」
 ぱっ、と、歪み、水球のようなそれが飛んだ。それは、構成員たちのただなかに飛び込んで、一気に破裂する! 水球は霧状に溶けて、構成員たちの鼻や口から体内へと入り込む。その霧は毒酒。内部から身の内を腐らせる毒が、構成員たちを蝕む。
「ちっ! 奴は豊穣でも名のある奴だぞ! 油断はするな、畳みかけろ!」
 敵のサブリーダー格、キサラギが声をあげる。構成員たちはせき込みながら、刃を手に、イレギュラーズ達へと駆けだした――が、その背後から、斬撃が飛び、構成員たちを吹き飛ばす!
「俺を痛めつけるのにお前さん方だけでいいのかい? 元とはいえ“幻蒼海龍”も随分と甘く見られたモンだ」
 背後からの攻撃! 縁の、自ら敵を増やすかの行動は、敵の不意を打っていた。前後からの攻撃に、構成員たちが右往左往する――その隙をついて、イリス、史之、カイトらが、包囲網の突破を目指し、疾走!
「さあ、行くぜテメェら! 特異運命座標がなんたるか、見せつけてやろうじゃねーか!」
 行き掛けの駄賃とばかりに、キサラギに接触したカイトが、すれ違いざまの一撃を加えていく。
「ちっ、やるじゃないか!」
 キサラギが吠え、手に銃を構え、カイトを狙う――が、響き渡る声が、それを制した。
「俺はキングマン。ジョージ・キングマンだ! キサラギと言ったか。お相手願おう!」
 キサラギの注意が、ジョージへと向く。キサラギは、逡巡し――ジョージへとその銃口を向けた。だん、と音を立てて、銃弾が迫る! ジョージはイサリビの妖刀を構えて、寸分たがわず自身の頭を狙った銃弾をはじき落した。手が痺れる。威力、精度、共に申し分ない一撃。なるほど、一筋縄ではいくまい。
「だが……こちらにも矜持がある。斬らせてもらうぞ、スナイパー」
「やってみなぁ!」
 発射される銃弾! 一発、二発、それをはじき返す一斬、二斬! 衝撃が、ジョージの握力と体力を徐々に削っていく。
「まだまだ倒れるわけにはいかんな。俺の磨いてきた技術は、こういう修羅場があるからこそだ」
「ちっ、粘るじゃないか……!」
 ――刹那。
「数が多いときは手から潰せ」
 響いた声が、横合いからの一撃と共に響き渡った! 振るわれるは、幻影の大鎌。処刑者の鎌は相手の懐へと潜りこみ、その腕に深々と突き刺さった!
「な――っ!」
 キサラギが悲鳴をあげる! レイヴンはその手を振るうと、幻影の大鎌が再度の一撃を繰り出した! 斬撃が、今度は残るもう片方の腕を切り裂く!
「お前たちとて、此処で死ぬほどのリスクを負うか? ボスの前ではやむなしか?」
「お前等がそうであるように、俺たちにも退けぬ理由があるものさ!」
 血の吹き出す手を無理矢理に握り、キサラギは銃をレイヴンへと撃ち返した。銃弾は、しかしレイヴンを捉えることはできない。
「そうまでするって言うなら、容赦はしない!」
 イズマが駆けた。振るう刃で構成員たちを切り倒しつつ、キサラギへと接敵。その刃を突き出す。キサラギは、ライフルの銃身で、刃を反らした。が、よけきれず、細剣の先端が肩口を貫く。
「強いな……! 流石アズマが見込んだ連中だよ! だが……!」
 キサラギが、片手のハンドガンでイズマを狙うのを、イズマは身を反らして回避した。銃弾がほほをかすめる。身体を戻す勢いを乗せて、イズマが細剣で、ライフルを叩き落す!
「あなた達のやり方は、間違ってるだろう! 強引すぎるんだ!」
 さらなる斬撃を、イズマが見舞おうとするのを、キサラギはでたらめにハンドガンを打ち鳴らしてけん制した。イズマが後方に跳躍して距離をとるのへ、キサラギが舌打ちを一つ。
「頭を下げたらノってくれるかい!?」
「冗談ッ」
 イナリが飛びつく。その手にした、炎の大剣。
「死ななかったら褒めてあげるわ! くたばれぇ!」
「うお……っ!?」
 振るわれるそれが、キサラギを打ち据えた。とっさに掲げたハンドガンが、熱に変形して鉄塊に変わる。吹き飛ばされたキサラギが、なおも立ち上がろうとするのへ、振るわれたのは妖刀の斬撃。
「残念だが、お前等の下手な勧誘もここまでだよ」
 ジョージの一撃が、キサラギの意識を刈り取った。斬撃にくずおれたキサラギ。イレギュラーズ達は、ひとまずの呼気を吐く。
「まだ敵は多い。油断するな」
 レイヴンの言葉に、イズマが頷いた。
「ああ。縁さん達の加勢に向おう」
 その言葉に、仲間達は頷く。

 一方で、剣士ヤマト率いる構成員たちとの闘いは続いている。ヤマトの振るう斬撃が縁を切り裂き、しかし縁は一歩も引かずに立ちはだかる。
「縁、そいつはなかなかの剣の使い手だぞ? 俺も負けちまうかもな?」
 笑うように響く、アズマの言葉。
「心にもない事を言うねぇ!」
 縁がワダツミの刀を振るう。ヤマトはその斬撃を、手にした細身の刀で受け流した。
「期待には応えませんと――」
「させないっ!」
 ヤマトの呟きに答えるみたいに、飛び込んできたのはイリスだ。イリスはサイをくるり、と翻し、目にも止まらぬ乱撃を繰り出す。
「縁さん、私がヤマトを押さえるっ!」
 イリスが叫び、攻撃を続ける。手数多く繰り出される攻撃に、ヤマトは防戦に必死だ。
「縁さん、こっちだ!」
 史之が叫び、縁を招く。縁が駆け、背中合わせに構成員たちに立ち向かう。囲む構成員たちを蹴散らしながら、カイトもまた、二人に背を預けるように、立ちはだかった。
「やれやれ、スマートじゃねぇな? 何もかもが強引だな? ――ワダツミがこの程度なわけないよなぁ?」
 カイトは不敵に笑って、続ける。
「なんつーか、回りくどいしな?
 ホントはただ単に、縁や俺らと遊びたいだけじゃねーの?」
 その言葉に、アズマはくっくっと笑った。
「この期に及んでも、目が曇らないってのはな。やっぱりお前らは良いよ。それに、そう並んでると、実に絵になるじゃないか」
「お褒めにあずかりどうも、でも、立ち去れアズマ、おまえと縁さんの縁はもう切れてるんだ」
 史之が、アズマをにらみつけながら言う。アズマは両手をあげた。
「おお、怖い。史之くんに睨みつけられちゃあぇね、おっちゃんは弱いから、形無しだ。じゃあ、今日の所はこれで退散することにしようかな」
 と、毒気の抜けたような――いつもの偽装の態度で、アズマは言った。
「逃げるのか」
「やだねぇ、見逃してあげるんだよぉ」
 アズマはにぃ、と笑うと、
「それでもま、少しは腹立たしい。少しくらい傷ついてもらうか。ヤマト。相応に痛めつけておけ」
「かしこまりました――」
 ヤマトが頷き、斬撃を振るう。イリスはサイを振るってそれを受け止め、後方に跳躍。メンバーに合流する。
「逃げた……いや、逃げてくれた、が正解か」
 史之の言葉に、縁が頷いた。
「正直、万全の状態ならともかく、この乱戦状態でアズマとやり合うのは勘弁願いたいからな」
「――何を安心なさっておいでですか」
 ヤマトが声をあげる。
「以前、窮地であることには変わりはありませんよ。それに、私とてワダツミの精鋭。無傷で帰れるとは思わないでいただきたい」
「ハッ。それこそ思い上がりだぜ! 俺達がお前なんかに負けるかよ」
 カイトが飛び出す。壁のように立ちはだかる構成員たち――カイトの槍による打撃が、構成員たちをなぎ倒した。
「変わらず、私がヤマトを押さえる。皆は、隙をついて攻撃して!」
 イリスがそう言って、駆けだした。横なぎに振るわれるヤマトの刀を、イリスはのけぞって寸前で回避。手にしたサイを空中で回転させて逆手に持ち帰ると、殴り掛かる様な斬撃を見舞う。一閃。振るわれた刃を、しかしヤマトは刀で受け止める。
「見事――ですが」
「いいの、私は、あなたの足を止められればね!」
 ぎり、とイリスが力を込めて、ヤマトを釘付けにする。そこへ飛び込んできたのは、史之だ。
「やれると思うな! 俺達を!」
 史之の刃が、ヤマトへと迫る。ヤマトは無理矢理身体をそらして、その斬撃の致命傷打を避けた。が、裂かれた身体から、血飛沫が迸る。
「ちぃっ……!」
「まだまだ!」
 間髪入れず、せまる史之の斬撃! ヤマトは刀を大きく振り払って回避。跳躍。そこへ、飛び込んできたのは、縁だった。
「俺もまぁ、かつてはそうだった身だ。お前さんが、アズマにあこがれる気持ちも、分かる」
 振るわれる、ワダツミの刀。閃いた、斬撃。それが、ヤマトの身体を切り伏せた。
「だが……俺はもう、そこには戻るつもりはないのさ」
 縁が、刀を振るった。どさり、と、ヤマトが地に倒れ伏した。ふぅ、と縁が息を吐く。
「お、無事か、縁!」
 カイトが声をあげるのへ、縁は頷いた。
「さぁ、て。大物はやったけど、まだまだ小物がいるみたいだ」
 縁の言葉に、仲間達は頷いた。
「掃討戦と行こう。なに、それほど時間はかからないはずだよ」
 史之の言葉に、仲間達は頷く。かくして、残る構成員たちを討伐するため、イレギュラーズ達は駆けだした。
 そして、史之の言葉通り、全滅にはさほどの時間はかからなかったのである。

●途絶えた呼び声
「さぁて、こいつら、どうしようかしら?」
 ぱんぱん、と両手を叩いて、イナリが言う。足元にはワダツミ構成員たちが、縄で縛られて転がっていた。
 敵を全滅させ、包囲網を突破したイレギュラーズ達は、死亡していなかったワダツミ構成員たちを拘束していた。もちろん、これからこいつらの処遇をどうするか、と言う話になるのだ。
「今回の件について、聞いてみるか?」
 レイヴンは言う。
「まぁ、そう簡単に口は割らないだろうが。この作戦に参加したとなれば、ワダツミでも、相応に口の堅い連中だろう」
「何だったら、尋問とかするけど? 準備してあるわよ!」
 と、イナリが言うのへ、イズマは苦笑した。
「うーん、そこまでしなくてもいいんじゃないか……?」
「そうだね。この人達も、そこまで知っているとは思えないし」
 イリスがいう。
「ワダツミについて調べた限りだけど、なんというか組織としてもかなり緩い、みたいだね。だから、こいつらが、アズマの真意を知っているかと言うと、それも怪しい」
 イズマの言葉に、イリスが頷く。
「だから……結局、こういう事が有った、って依頼主に報告して引き渡すのが一番じゃないかな? そもそも、私達の依頼って、それが目的だしね」
「そうだな。ひとまず、そうしておく方がいいだろう」
 ジョージが言う。
「せっかく拾った命だ。ま、無駄に消耗させることもあるまい」
「そうだなぁ、曇りそうだからな?」
 カイトは笑って言った。それから、まだ意識のあった構成員のほっぺたを、軽くぺちぺちと叩いてから、
「ま、遊びたいならいつでもいいぞ? あと依頼も歓迎だぜ?」
 そう言ってみせた。
「遊びたいなら……か。縁さん、アズマは、また来ると思うかい?」
 史之が尋ねる。縁は、頭を振ってみせた。
「分からない……ただ、アズマはたぶん、お前さんも……その標的に入れたような気がする」
「自分で言うのはなんだけど、俺もそこそこ、名が売れてるみたいだからね。仮にそうじゃなくても、またトラブルがあったら呼んでほしいな。助けるよ、縁さん」
「……すまない」
 縁は静かに、瞳を閉じた。
 もう、あの場所に戻れない理由がある。
 もう、あの場所に戻らない意味がある。
 故に、再びワダツミの呼び声が聞こえようとも。
 その声に耳を貸すことはないだろうと――。
 縁は静かに、煙管に火をつけた。

成否

成功

MVP

ジョージ・キングマン(p3p007332)
絶海

状態異常

なし

あとがき

 ご参加ありがとうございました。
 皆さんは、見事に包囲網を突破することに成功しました。
 ひとまず今は、その身体を休めてください。
 ワダツミがどう動くのか……それはまだ、不明のままです。

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