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シナリオ詳細

修羅女の棲む洞

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「ふむ、面妖な話だな」
 各務 征四郎 義紹(p3n000187)は聞かされた話を、顎辺りに手をおいて考える。
「へい、そうなのでございます」
 申し訳なさそうにそういうのは、この村の長である。
「そこには本当に何もなかっただろうか?」
「はい。まこと、まこと何もなかったのでございます」
「であるのに、ここ数日は森の奥から女性の声がすると。
 それも、人が既に山を降り始めた時間帯に」
「はい……村の衆の一人が危ないから帰ろうと声をかけた所、其れは止まったと」
「……そうなると、こちらの声に反応して手を止める知性はあるとみるべきか」
「へい。うちにいる武士の方が調査に入りましたところ、結局は何も見当たらなかったとのことでして」
(意識した探索に身を隠しているということか? だとすると、いよいよもって知性的ななにがしかであるという事になる)
 村長の言葉に黙考を続けていた義紹は頷いて見せた後、顔を上げた。
「恐らくだがその武士は数人で山に出たのではないか?」
「へぇ、そのとおりでございます」
「分かった。それで……どのぐらいの時間帯から聞こえるのだ?」
「へい、もうじきでございます」
 村長の言葉に頷くと、義紹は立ち上がる。
「それでは、一度見に行ってみるとしよう。少しばかり失礼」
 義紹は立ち上がると、その場を後にした。


 静けさの満ちた夜の森を進んでいく。
 森に入ってから数刻。不意に、声がした。
 なるほど、確かに人の声――のように思える。
 足音を殺し、少しずつ前へ。
 数メートルほど近づいた辺りで身を隠し、聞こえる方向へ顔を向けた。
(何だあれは……人、いや……)
「ンンンン!!!! ンンンン!!!!」
 猿轡のようなものを嵌められた女性が、じたばたと暴れまわっている。
 いつでも太刀を抜けるように構えていると、夜目に慣れてきた。
(おなごと、化生か!)
 それは、猿轡を嵌められた女性は、多数の腕を持つ女の化け物に締め上げられていた。
 太刀をおさめて、弓を構えて矢を番え、義紹は躍り出た。
「化生よ! こちらを向くがいい!」
 声に反応した化け物がこちらを向く。
 その瞬間、矢を放てば、化生の眼に突き立った。
 苦しみ声を上げて、化生が女性を手放してどこかへ逃げていく。
「大丈夫か?」
 抱き上げた女性の腹部に、じんわりと血が流れていた。
「今、手当てをしてやろう。ごめん」
 女性を抱き上げ、そのまま走り出した。


「……貴殿らに協力を頼みたい」
 翌日、ローレットに訪れた義紹は集まったイレギュラーズに視線を配った。
「私は各務 征四郎 義紹という。しがない刑部省の役人をしている。
 今は京の外で旅をしながらある男を追っているのだが、立ち寄った村で得体の知れぬ化生と相対したのだ。
 どうにもきな臭い。そこで、諸君らの腕を借りてこの化生を討ち取ろうと思う」
「女性を攫っている化け物がいると……」
「うむ、恐らくはその化生の棲み処が近くにあるのだろう。
 先日、奇襲気味に一矢を入れてやったが、直にその傷も癒える頃のはず。
 次の事件が出るのも近かろう。こちらで先手を打ちたい」
「棲み処の推測はできてるのか?」
「うむ。あれが夜に動くこと、これまで女子を攫われた村の位置などを踏まえてこの辺りと推測した。
 その結果……ここに洞穴があるらしいことを教えてもらった。恐らくはそこだろう」
 そう言って義紹は印をつけた。

GMコメント

 さて、そんなわけでこんばんは、春野紅葉です。
 化け物退治と行きましょうか。

●オーダー
【1】八手羅刹女の討伐

●フィールド
 オープニング末で印をつけた場所にある洞穴です。
 残念ながら日差しの類が入らないため視界は極端に悪くなっています。
 対策がないと命中、回避、防技にある程度のマイナス補正を受けます。

●エネミーデータ
・八手修羅女
 腕が左右4本ずつ、8本ある女性体の化け物です。
 果たして人だった頃の名残か否か、装束は尼僧のようにも見えます。
 また、右目を失っています。
 意思疎通は不可能です。両手すべてに刀を握っています。
 恐らくは圧倒的手数を用いて戦闘を行なう他、呪術を行使すると思われます。
 サイズ感は人間であること、単体行動であることを踏まえると、能力値も決して低くはないでしょう。

●友軍データ
・『カガミの君』各務 征四郎 義紹(p3n000187)
 カムイグラの動乱後、ある魔種の調査と中央(高天京)の求心力低下を見越し、
 各地を放浪しながら事件に首を突っ込む刑部省の役人です。皆さんの友軍として活動します。
 リプレイ中では基本はふわっと回避減衰要員として動きます。
 指示や話したいことがあればプレイングでの記載を頂ければと思います。

 弓による遠距離攻撃、刀による近接攻撃を用いる物理アタッカーです。
 皆さんと同等程度の力を持ちます。

<スキル>
三矢一殺:一度に三本の矢を対象に叩き込みます。
物遠単 威力中 【万能】【ショック】【乱れ】【スプラッシュ3】

雷迅刀:摩擦による電流を闘気で増幅させて対象を上段から斬り下ろします。
物至単 威力特大 【感電】【体勢不利】

絶無一心:心を無とし、殺気を削ぎ落し、無我へ至ります。
自付与 威力無 【副】【瞬付】【命中大アップ】【反応大アップ】【EXA大アップ】

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

  • 修羅女の棲む洞完了
  • GM名春野紅葉
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年05月06日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ユーリエ・シュトラール(p3p001160)
優愛の吸血種
久住・舞花(p3p005056)
氷月玲瓏
彼岸会 空観(p3p007169)
鹿ノ子(p3p007279)
琥珀のとなり
ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)
私の航海誌
シガー・アッシュグレイ(p3p008560)
紫煙揺らし
希紗良(p3p008628)
鬼菱ノ姫
白妙姫(p3p009627)
慈鬼

リプレイ


 イレギュラーズ達は薄気味悪い洞穴の前にいた。
 冷たい空気が誘うように洞穴の中から感じ取れている。
(またこの手合いの事件ですか……)
 愛刀を静かに持ち『帰心人心』彼岸会 無量(p3p007169)はかつて会った事のある敵の事を思いだした。
 女を襲う異形の女形の怪物。ちらりと視線を巡らせれば、その事件に同じように立ち会った2人の姿も見える。
(女性を攫う異形は、別の依頼でも見たッスね。
 あれは倒したッスけど……関連性が気になるところッス!)
 無量の視線の先にいる『琥珀の約束』鹿ノ子(p3p007279)も、同じく先に遭遇した異形の事を思いだした。
 あの時の異形は無数の手足が伸びた化け物だった。
 今回のは、無数に比べれば遥かに少ないようだが……。
(化物が人を襲うと言えば、捕食の為と言うのが定番だが……どうやら今回は違うようだ。
 さて、一体何のために攫っているのやら)
 煙管より煙を燻らせる『スモーキングエルフ』シガー・アッシュグレイ(p3p008560)は視線を近くにいる少女の方へ少しばかり向ける。
「希紗良ちゃんは、八刀流の敵と戦った経験はあるかな?」
 聞けば、此度の化け物は8つの腕を生やしているらしい。
 それほどまでに文字通りの意味でも『手の多い』敵はさすがに初めてだった。
「刀をそれほどの8本も握った相手とまみえたことはありませぬ。が、以前百足の妖とまみえたことは」
 視線を向けられた『鬼菱ノ姫』希紗良(p3p008628)は、向けて小さく呟いた。
 鹿ノ子と無量もいたあの時の敵は、まさしく百足と呼ぶにふさわしい異形であった。
「その時は行方不明の女性については分からずじまいでした」
「百足の妖……それなら心構えは出来てそうだね」
「遠方から多数の矢を射掛けられるよりは、正面の八つ腕を相手取るほうがやりやすいかと。
 梃子摺りはするでありましょうが」
 シガーの言葉に希紗良が小さく頷いて答えれば、シガーは少しばかり頷いて。
「それは重畳、多腕の敵は厄介だからねぇ。
 敵が一人と思わず、複数人を相手にしている心構えで行くとしようか」
 そういうシガーの手には、いつの間にか日本刀のような武器が握られている。
(……義紹さんが止めなければ、あのとき修羅女は女性を殺していた?
 でも殺すだけなら簡単にできそうなものを、何故猿轡なんかして……?)
 少しばかり考察を進める『私の航海誌』ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)は思う。
「化物が女性を攫うったら、食物、生贄、或いは……」
 或いは、産めよ増やせよ。
 だが、そうだとすれば修羅女とて『女』と呼ぶなら女の姿のはず。
 最後の線は薄い気もするのだ。
(女性を狙う妖異……ですか。それもわざわざ人目につくところで。
 どういう意図があるかはわかりませんが、不気味さを感じますね)
 これ以上、被害が広がる前に止めなくては、と『優愛の吸血種』ユーリエ・シュトラール(p3p001160)は光焔剣を握る。
 既にその容姿を美しき銀髪のヴァンパイアへと変じている。
 パタパタと舞う蝙蝠を森の中へと放ってから視線を洞穴の奥へと戻した。
 人質がいるかもしれない。そう考え、眼を閉じて耳をすませるユーリエは意識を特に人の声に向けている。
 幸か不幸か、人の声のような物は聞こえない。
「よく見つけましたね、各務さん」
「うむ……被害が出る前であったら最良だったが……」
 『月花銀閃』久住・舞花(p3p005056)は弓を構える各務 征四郎 義紹に声をかけた。
(……知性がある可能性が高いとはいえ、少なくともまともな人でないのは確かか。
 正体も目的も今一わからない以上、そこも含めて調べてみる必要がありそうね)
 その言葉を聞きながら、舞花は息を潜めながら静かに考える。
(洞穴に潜む物の怪退治か。
 破戒僧……どころの話ではなさそうじゃのう)
 義紹が言うには、此度の敵は尼僧のような装束であるという。
 ぴくぴくと耳を立てて動かす『特異運命座標』白妙姫(p3p009627)は洞穴の奥から微かに聞こえる布擦れの音を聞いた。
「さて、義紹と申したか。お主! 少なくともわしよりよほど腕に覚えがありそうじゃの
 弓取としての腕前、期待しておるぞう。なんせわしを含めほとんど白兵戦しかできぬでの」
「うむ、期待に沿えるよう努力しよう」
 そう言って頷けば、義紹が弓に矢を番えた。


 洞穴の向こうへ足を踏み入れたイレギュラーズは、直ぐにその音を聞いた。
 踏み込んだ暗闇、反響する音を確かに耳で感じ取り、ユーリエも自らに光の加護を齎した。
 麒麟より齎された光の加護は、温かな輝きを以ってユーリエの身体をいつくしむ。
 反響する音が敵の居場所を導き出し、仲間たちの呼吸の音を聞かせてくれる。
 翳した掌に嵌められた指輪が輝き、仲間へと透き通った障壁を齎した。
 それは生命力と精神性を高め、攻撃を反射する防御術式である。
 ウィズィは鮮やかに見える黒き闇の向こう側、八つの手に刀を構えて猛る異形を確かに見た。
 その身にルーン文字が浮かび上がり、温かな光と共に精神力を高める加護を降ろす。
「さあ、Step on it!! さっさと終わらせましょう!」
 どくん、心臓の鼓動が一つ大きく高鳴った。
 この場にいない、大切な彼女の魔力を火種とする可能性の片鱗。
 堂々と告げた宣誓の言葉に、修羅女が八つの剣を合わせて金属音を奏でだす。
 烈しく響く刃の音を耳に入れながら、白妙姫は打ち刀・朧月夜を自らの掌に触れさせると、静かに横に引いた。
 打ち刀の表面へと滴る流血がお香を思わせる甘い香りを放つ。
「ほれ!」
 横薙ぎに払うように音のする方へ朧月夜を振るえば、はるか先で何かが硬いものを弾くような音がした。
 つづけるようにして、うめき声が一つ。
「わしの血蛭はどうじゃ? 良い香りじゃろ? くはは!」
 哄笑に答えるように、金切り声が聞こえた。
 昼間とまで行かぬとも見える洞穴の奥で、八つ手の化生がその剣を激しく打ち付けながらイレギュラーズへと近づいていくのが見えた。
「絶無一心とやら、是非この目で見てみたい。見せてみよ!」
 白妙姫はその様子を見ながら隣で弓を構える男へそう言った。
「見せて何かが起こるほどの事でもないのだが……期待には沿わねばな」
 そう言った義紹が静かに矢を構えて、放つ。
 殺気を消し去り、静かに弾かれた矢が異形へと走り抜けた。
 殺意なき一撃に動きの遅れたらしい異形が幾つもの矢を受けて動きを鈍らせる。
(この敵も、腕が多い……)
 敵へと至近する無量は静かに昼間のように見えるその空間でその姿形を確かに捉えた。
 事前の情報で分かってはいたが、確かに八手修羅女の腕は8本あった。
「……歯がゆいですね」
 ぽつり、呟きを一つ残して妖刀を振るう。
 美しき軌跡が動きの鈍った八つ手の化生へと走る。
 4つの腕で防いだ化生が、そのまま反撃とばかりに残った2本で無量の身体へ反撃の太刀を振るう。
 反撃の痛みとほぼ同時、無量の刃は4本の腕を上から落とすように化生の身体に傷を付ける。
 その勢いをそのままに、無量は次の太刀へと身を躍らせた。
 続けるように動いた舞花は至近する。
 白目をむき、苦悶のような表情を浮かべる化生の姿は、なるほどたしかに『人だったようにも』見えた。
(会話以前に意思疎通自体が成立せず、しかし……知性も刀を使う技術もある)
 実際、無量の攻撃へ反撃を打ったのは知性が無くては不可能な対処のはず。
(ということは妖の類かそれとも……)
 それは最悪ではあるものの、ありうる過程の一つ。
(……魔種?)
 こいつ自体が魔種ではないだろう。
 奴らに比べれば遥かに弱いことは直ぐに分かる。
 推測を立てながらも、踏み込みと同時に放つ静かなる銀閃は、映え映えと異形の顔を刀に反射する。
 鮮やかに駆ける剣閃は修羅女の身動きを封じるように駆け抜ける。
 縛り付けられたように刻まれた異形の瞳には明確な殺意が籠められていた。
「いくッスよ僕の真骨頂!」
 跳びこむように敵の眼前に。
 直後の連撃は猪の突撃力を思わせるような強かなる斬撃を、鹿を思わせるように軽やかに。蝶のように美しく穿つ鮮烈の乱舞。
 愛刀は洞穴の中に溶けるように美しき軌跡をその闇の中に失つせしめ、敵の一挙手一投足全てを読み取るが如く食らいついていく。
 舞い踊るがような斬撃の乱舞は、恐ろしいほど的確に、八つ手の傷を増やし続けていく。
 勢いがやがて殺されて、収束に向かう頃、八つ手の1つが血飛沫をあげて宙へすっ飛び――化生が悲鳴らしき何かを上げた。
「さて、ひとまずは背後を余り気にしなくて良いのは助かるが……」
 シガーは昼間とまでは行かぬものの、確保された視界の中を走る。
 悍ましく蠢く7つの腕を持つ異形へ、真っすぐに剣を向ける。
 紡ぐ切っ先は7つの腕を翻弄し、その懐へもぐりこんでいく。
 鮮やかな斬撃が致命的な角度から異形の腹部を切り裂いて、ぐらりと化け物の身体が揺らぐ。
 勢いに乗ったシガーは刀を静かに構えなおして異形と相対する。
 希紗良はその姿をみとめるや愛刀を真っすぐに構えて走り出す。
 向かう先はただ修羅の前に非ず。
 くるりと身を翻して、修羅目の背後へ回り込む。
 静かに構えた愛刀の太刀を真っすぐに走らせ、隙だらけの修羅女に斬撃を叩き込む。
 美しき軌跡を描く斬撃に再び修羅女がその身をぐわりと軋ませる。
「其方らの目的は何でありますか?」
 問うた――返答はない。
 身体を正面に、ぐるり、修羅女が顔を真後ろに向けた。
『ァァァ!!!』
 憎しみに満ちた声が希紗良の耳を打つ。
 分かってはいたが、意思疎通など不可能だった。

 イレギュラーズの猛攻は、確実に異形の動きは鈍くしていく。
 自慢の腕はその数を2本にまで落としている。
 ユーリエの光焔剣を握る手に嵌められた指輪が魔力に感応して淡い輝きを増していく。
 光の加護を齎す術式が起動され、光焔剣が炎が揺らめくような輝きを放つ。
 充実した魔力がポーションに注ぎ込まれていく。
 ユーリエはそれを前衛に立つ者の中で最も傷を多く受けた仲間へと差し出した。
 こちらにもほんのりと香るフルーティな香りが成功したことを物語っていた。
 2本ほど追加で作り出し、それぞれ別の者へ飲むよう薦めていく。
 与えられたポーションが仲間たちの疲労を解消し、気持ちを穏やかに落ち着かせていく。
 圧倒的手数の相手に対して、こちらの癒し手の数は少ない。
 必然的に、ユーリエの存在は重要になっていた。
 体力を取り戻したウィズィはハーロヴィットを握りなおす。
 くるりと持ち手を改め、魔力をギュッと握りしめた掌に。
 充実した魔力は切っ先を覆いつくし、真っすぐに刺突すれば、異形の動きをねじ伏せ突き立った。
(口惜しいが、わしの存在が「穴」というのは致し方のない事じゃ……じゃが)
 奮い立つ白妙姫は、パンドラの輝きを収束させて、己の生命力を取り戻す。
「あまりに多勢に無勢、さらに強者ぞろいじゃろ? さしものお主も怯えておるか?」
 挑発的に笑んで見せれば、その視線の先で異形が金切り声を上げた。
 振り抜かれた2本の刀。その一瞬、無量は前へ一歩踏み込んだ。
 浅い傷など気にするまでもない。
 まっすぐに、静かに振り下ろした一太刀が一つ、腕を切り落とし。
 縫い付けるように撃ち抜いたままに、刀を引いて、構えなおし――振り下ろす。
 ただの一太刀――刹那に放たれた二の太刀が偉業に風穴を開けた。
 それに続くように、鹿ノ子は剣を向けた。
「腕が8本あったとて、8本すべて見切ればいいだけのこと!
 ましてや、1本だけで僕に攻撃を当てられるわけがないッス!」
 振り抜かれんとした刀はさらりとかわして、合わせるように前へ出て。
 取り戻した気力のままに再度叩き込む三連撃が、異形の身体を岩肌の地面へ叩き落とす。


 戦いを終えたイレギュラーズは洞穴の中の調査を進めていた。
「……ひとまず、人質はいないみたいだけど……」
 ほっと息を吐いたのはユーリエだった。
 ヴァンパイアモードを解いて、いつもの姿に戻っている。
 だとすれば、これまでに襲われた人々はどこに行ったというのだろうか。
「この様子だと、被害者は何人かいる気がするよ」
 昼間同様とまでは行かぬものの見える視界には、布の切れ端のようなものが見て取れた。
 舞花の方は倒れた異形の遺体の調査を始めていた。
 後から無理矢理に腕を生やしたような不自然な体ではある。
 その装束は尼僧のように見えるが、それ以上の『何か』があるわけではなかった。
 獲物の方は、切れ味が良かった。
 だが、それだけだった。ある程度の名のある人が打てば作れるだろう程度の代物でしかなかった。
 シガーの方も洞穴の奥の調査を進めている。
 残念ながら、女性をさらった直接の理由に該当しそうなことは存在していない。
(後は……以前に似たような連れ去り事件があったようだし、他の妖と交流のようなものがあったのかも確認した方がいいか)
 少しばかり考えて、決断と共に修羅女以外の痕跡を探していく。
 そうやって虱潰しに徹底した調査の後、イレギュラーズは幾つかの布の切れ端や血のような痕を探し当てた。
「事件の解明に役立てばよいでありますが……」
 集めた衣装の切れ端の数は多い。
「多いッスね」
「そうでありますな……恐らくは10着はありそうであります」
 希紗良は鹿ノ子の言葉にこくりと頷いた。
 希紗良のいう通り、その衣装に切れ端らしき物は柄の違いや風化具合を見るに10はありそうだった。
「以前の事件と関連性は……難しそうッス」
 共通点がないかと問われれば、あると答えることはできる。
 だが、『あると答えることができる』だけでしかないとも言えた。
「もっと色々と探す必要がありそうッス」
 遮那さんが守りたいという豊穣の為に。
「私が近隣で聞いて回った行方不明者の数よりも多い。恐らくは以前からこのような事をしていたのだろう」
 そう言ったのは依頼人である義紹だった。
(そもそも彼女は何故修羅に堕ちたのか……知っても詮無きことですが)
 ウィズィは少し考えていた。
 そもそも、真の意味で『修羅』であったのかは分からないが、それでも。
 どうしても気ならざるを得ないのだ。
 紫苑の髪を靡く彼女の事を静かに脳裏に浮かべながら。
 静かに無量の方へ見た。
「各務さん」
 無量は義紹に声をかけた。
「ふむ、どうかされたか?」
「行方不明者の中に彼女に似た人物がいないかの確認をお願いできませんか?」
「承知した。尼僧のようだし、ひと先ずは付近の寺社から当たってみよう」
「お願いします。何事も無ければそれに越したことはないのですがね……」
 ぽつりと、無量は静かに一言こぼした。
 共通点がある以上、あの時の事件のように加害者と似た風貌の被害者がいる可能性は捨てきれない。
 それが気のせいであればそれに越したことはない。そう思いながら、不自然な共通点に無量は想いを馳せた。

成否

成功

MVP

ユーリエ・シュトラール(p3p001160)
優愛の吸血種

状態異常

なし

あとがき

お疲れさまでした、イレギュラーズ。
MVPは戦線を支えたあなたへ。

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