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シナリオ詳細

勇者進水GC:繋がれ、深層希望合体XZ!

完了

参加者 : 7 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●絶望合体、ブラッククルーザー!
 まだらな泥模様をした鯨型UD(アンデッド)秘宝種たちが海中を突き進み、そのたびに海にさび色が広がっていく。
 群衆の中央を進むのは黒いボート。そのデッキに立つ、黒いクルーザー型秘宝種。名をブラッククルーザー。
「人間なんかに染まりやがって……思い出させてやるよ。この世界は、強い奴だけが生き残るってことをな!」
 鯨型UD秘宝種たちが一斉に海面に飛び出し人型へ変形。ジェット噴射で飛行状態に入ると海面すれすれを滑るように突き進んでいく。
 黒い光を目元に宿し前方の小島へと両腕を突き出した。
 腕より露出したマイクロミサイル発射機から次々と弾が発射され、黒い軌跡を描いて島へと殺到していく。
 着弾、爆発。そして燃え上がる島。
 家々はたちまちのうちに炎に飲まれ、その様子をブラッククルーザーは静かに見つめていた。
「死して尚働け、メガロビア。俺たちが兵器に過ぎないってことを、この世界に――奴の心に刻み込め」

●心こそが強さの証
 青い小鳥が飛んでいる。
 さざなみよせる砂浜の、貝殻を踏んでは飛んでいく。
 いくつかの貝をはねるようにわたって、最後に固いもののうえに乗った。
 コツンという小さな金属音。顔を上げると、それは人型ロボットの膝部だった。両足をなげだして座った姿勢の。
 消灯していた目元にボウッと青白い光が灯り、水兵帽めいたパーツのつばを僅かにあげた。
「おはようございます」
 口を開き、電子音めいた声で小鳥へ語る。
 小鳥はチチチと鳴き、ロボットは……『勇者進水』グッドクルーザー(p3n000117)は頷いた。
「当機の識別名称はグッドクルーザー。現在作戦区域内にて待機中です」
「待機 大事」
 隣で同じような電子音による声がした。
 小鳥が飛びあがり、隣で同じように座った姿勢のフリークライ(p3p008595)の肩にのり、チチチと鳴いた。
 両目の黄色いランプを点滅させ、小鳥をちらりと見やる。
 そんな二人が改めて前をむくと、子供達が砂浜を走っていた。
 その先頭を走る新道 風牙(p3p005012)。子供達と追いかけっこをしているようだった。
「なあグッディ、フリック! 暇なら一緒に遊ぼうぜ。この子らもタイクツだってよ」
 グッドクルーザーとフリークライは一度顔を見合わせて、目元のランプをぱちぱちと点滅させる。
 そんな二人の前で立ち止まると、風牙は腰に手を当てた。
「今から守るものを知っておくってのは、けっこー重要なんじゃねえか?」

 昨今、虐殺兵器『メガロビア』による青海域への襲撃事件が相次いでいる。
 海洋駐屯海軍は組織として整えている真っ最中とはいえ、これを無視することはできない。ローレットの力を借り防衛力を増すとして、島の防衛依頼が複数舞い込んでいた。
 これはそのひとつ。ソルン島での依頼であった。

GMコメント

■シチュエーション
 海洋海軍からの依頼を受けたローレット一行はソルン島にて待機しています。
 このあとメガロビアからの襲撃をファミリアー偵察によって察知し島へ被害がいくまえにこちらから迎撃に出ることになりますが、そうとは知らない皆さんはまずは島の子供達と交流を深めることにしました。

■交流パート
 島の子供達と交流します。
 主な場面は昼間の砂浜。外のひとが珍しいのか10人前後の子供とその保護者数人が集まっています。
 彼らは元々海洋の島で暮らしていた人々でしたが、『静寂の青』が拓かれたことで漁師や商人といった人々が一部移住しました。それに伴ってついてきた家族たちが、今回の子供と保護者たちです。
 なのでこの島自体ニュービーなのですが、大陸から離れてるだけあって外の人がひときわ珍しく見えるようです。
 子供達と遊んだり一緒に何かしたりしましょう。ひとりぼんやりしたり本を読んでいてもそれはそれでOKとします。(どっちかといえば一緒に混ざるのがお勧めです)
 後のパートでグッドクルーザーと深層希望合体をするためにこのタイミングで仲良くなっておくのもいいでしょう。

■迎撃パート前半
 ファミリアー偵察によってメガロビア襲撃を察知。島に被害が及ばないくらいの距離まで船で直行し、迎撃に当たります。
 現れるのは鯨型のメガロビア兵たちです。
 彼らは人型鯨型それぞれに変形する能力を持ち、そこそこの強さがあります。

 もしグッドクルーザーとここまでの間に仲良くなれていたなら、【深層希望合体】をすることができます。
 1ターン限りの強化状態くらいにとらえてください。

【深層希望合体(ディープパンドラフュージョン)】
 希望の戦士イレギュラーズと使命の勇者グッドクルーザーが心を深く通わせることで発動する力です。
 このシナリオ中、ないしはシナリオ以前にグッドクルーザーと仲良くなっておくと、シナリオ最終局面において大型ロボットビッグクルーザーDの核として合体することができます。
 その際名称が『ビッグクルーザー・XZ(クロスゼット)・〇〇(PC名)』となり、戦闘スタイルも核としたPCを反映したものになります。

■迎撃パート後半
 敵の秘宝種ブラッククルーザーが現れ、新たに召喚した複数の鯨型メガロビアと【絶望合体】します。
 これによって巨大な破壊兵器となったビッグブラッククルーザーには簡単には歯が立ちませんが、こちらも【最終希望合体】することで対抗することができます。

【最終希望合体(ファイナルパンドラフュージョン)】
 希望の戦士イレギュラーズから勇気と正義を教わり真の勇者へと覚醒したグッドクルーザーにアンロックされた秘められし力です。
 イレギュラーズたちが己の勇気や正義を示すことで発動します。
 古代船ブルークルーザーの他、イレギュラーズたちが持ち寄った小型船たちを変形合体させることでごくわずかな時間だけ巨大ロボット『ファイナルビッグクルーザー』へと変身できます。
 このときの彼は内部に乗り込んだイレギュラーズたちの戦闘スタイルを反映させた合体攻撃が可能となります。
 冠位魔種すら退けた希望の戦士たちが力をひとつにしたならば、きっとどんな敵も必ずや討ち滅ぼすことができるでしょう。

■グッドクルーザー
 このシナリオにはNPCグッドクルーザーが同行します
 専用のクルーザーを相棒とする正義のスーパー秘宝種ロボットです
 https://rev1.reversion.jp/character/detail/p3n000117

・これまでの勇者進水グッドクルーザー
 https://rev1.reversion.jp/scenario/replaylist?title=%E5%8B%87%E8%80%85%E9%80%B2%E6%B0%B4

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • 勇者進水GC:繋がれ、深層希望合体XZ!完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年04月27日 22時05分
  • 参加人数7/7人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 7 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(7人)

新道 風牙(p3p005012)
よをつむぐもの
伊達 千尋(p3p007569)
Go To HeLL!
リサ・ディーラング(p3p008016)
蒸気迫撃
ルーチェ=B=アッロガーンス(p3p008156)
異世界転移魔王
エル・エ・ルーエ(p3p008216)
小さな願い
フリークライ(p3p008595)
水月花の墓守
耀 英司(p3p009524)
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サポートNPC一覧(1人)

グッドクルーザー(p3n000117)
勇者進水

リプレイ


 ヘッドホンから流れるゴキゲンなサウンド。さざ波の音に紛れたそれを外し、『ザ・ハンマーの弟子』リサ・ディーラング(p3p008016)はすぐそばに置いたドリンクを手に取った。
 いつもの作業着を肩にかけ、だいぶ露出の多い水着にレッグバッグ。更には安全ゴーグルとかなりリサらしいサマービーチスタイルである。
「メガロビアの兵器が襲ってくるとはいえ、今は何も無さそうっす。……しっかし、あっちーですね。伊達さん耀さんの言う通り水着になって正解だったっすね」
「ヒュー! 言ってみるもんだぜ! ヒューウ!」
 海パン一丁の『Go To HeLL!』伊達 千尋(p3p007569)が両手サムズアップでずんちゃか踊っていた。
 がに股で両腕開いてうんたんのリズムでサムズアップを交互に上下させながら腰をゆっくり下ろしていくダンスである。実際やるとすげーテンションあがるからお勧めである。
「始終意気込んでばかりじゃ息が続かねえ。
 休むときは休む! 気を抜くときは抜く! それが長期戦の秘訣だ!
 つまりこれは立派に任務のため!」
 『よをつむぐもの』新道 風牙(p3p005012)が『なっ!』て言いながらかぶっていたサンバイザーを、隣のグッドクルーザーへとのっけた。
 両目をちかちか点滅させるグッドクルーザー。
「本当に良いのでしょうか。当機の使命は魔を払うこと……そして現在の任務はメガロビアを倒すことです。そんな当機が、遊ぶなど……」
「固く考えるなって! ほら見ろよ千尋のアレ」
 一緒に振り返ると、千尋がブリッジ姿勢でへそにビールジョッキのせてちょこちょこ左右に蟹歩きしていた。
「ヒュー! キッズたちー! 俺からジョッキを奪ってみな!」
 絶好調だった。
「よーし! 誰が一番最初にグッディの頭まで登れるか、競争だ! はいヨーイドーン!!」
 集まってきた子供達に手を振ると、風牙がグッドクルーザーをゆびさす。
「はいディーフェンスディーフェンス!」
 ブリッジ姿勢のままディフェンスかけようとする千尋。
 グッドクルーザーの横にスッと立った『水月花の墓守』フリークライ(p3p008595)。肩にとまった小鳥がぴちちと鳴いた。
「はいこちらはお友達のフリックくん! 彼のてっぺんに一番早く登った人が優勝!」
「フリック。ミンナ ヨロシクネ」
 わーっといって子供達がよじ登り始めるなか、フリックはのんびりと指に小鳥をとまらせたり滑りおちそうになった子供をささえたりしていた。
 一方のグッドクルーザーは子供によじ登られるのが慣れていないのか、終始どこかわたわたとしている。
「最近は戦ってばっかであったからな……。たまには、休息も必要であるか」
 『異世界転移魔王』ルーチェ=B=アッロガーンス(p3p008156)もそこへ混ざって子供達を掴んだり抱き上げたりと一緒に遊び始める。
「ほぉ、この余に勝負を挑むというわけであるな。いいだろう、すこしのハンデとして翼は使わないでやろう」
「この海は、とっても綺麗で、とっても素敵だって、エルは思いました。
 なのでエルは、この海が、穏やかになるように、戦います」
 そこへ加わる『ふゆのこころ』エル・エ・ルーエ(p3p008216)。
 フリークライの背中からよじよじ登ると、頭のところに手をかけた。
 肩からさいた青い花をぷつんと一輪ずつつみ、エルや子供達に差し出すフリークライ。
 特に多くは語らず、ゆっくりとした動きと目の点滅だけで気持ちを伝えようとするフリークライに、子供たちは『ありがとう!』といって花を受け取った。
 フリークライは頷き、子供を両肩にのっけると砂浜をゆっくりと歩き始める。
 同じようにするんだ、とジェスチャーと点滅で教える彼に、グッドクルーザーは迷いながらも子供達を抱えて歩き始める。
「なぁ、グッドクルーザー」
 それまで一緒に遊んでいた『怪人暗黒騎士』耀 英司(p3p009524)が、『散る美学』と書かれたTシャツと海パンというラフな格好に鉄仮面といういかつい組み合わせで彼らの横を歩く。
「正義とか、勇気って何だと思う」
「……」
 小さく振り向くグッドクルーザー。彼の両肩には少年少女が腰掛け、いつもより広い海を見てはしゃいでる。
「わからないよな。俺もだ。ホットケーキを裏返すタイミングみたいに、これかと思ったら大体真っ黒だったりしてな。
 けど……希望だけはさ、分かる気がするよ。きっと、この笑顔なんだ」
 そう言われて、グッドクルーザーは子供達の顔を見た。
 頭にぺちんと手を置かれ、点滅する目。英司はそれを指さして笑った。

●さび色の悪意
 海へゆっくりとさび色が広がっていく。
 海面に浮きあがる鯨型のアンデッド秘宝種たち。
 まるで古代に刻まれた命令をいつまでも繰り返すかのように、鈍く光る目元のライトが島をしっかりと見据えた。
「死して尚働け、メガロビア。俺たちが兵器に過ぎないってことを、この世界に――奴の心に刻み込め」
 ボートのデッキにたち、腕を組むブラッククルーザー。
 彼のモーニングハンマーめいたトゲと曲線でできたボディが太陽に照らされ、装甲をうっすらと包む黒い錆が艶をもつ。
 が、そんな彼の目に暗い光が灯った。
 迫る無数の船影を、とらえがたため。

「ブルークルーザー、発進ッ!」
 島の港からモーターを唸らせ走り出す青い古代船クルーザー。
「龍樹大鱗甲、発進」
 並ぶ形で突き進む大樹のごとき船。そのデッキには両手をデッキの洞へ突っ込んでリンクするフリークライの姿。
 更には――。
「マイティークルーザー号発進!」
「ステルスクルー、発進」
 千尋の大型アンプとDJテーブルを備えたクルーザーと、キラリとしたエフェクトを纏った英司の武装ボート。
 そこへ風牙とエルとルーチェの船も並び、陣形を固めるようにリサの魔導蒸気機関船『タービン』が後ろについた。
「メガロビアを返り討ちにしてやるっす! 戦闘開始っす!」
 ハンドルつきのひもを引っ張ると、タービンが激しい汽笛をふきならした。
「少しとはいえ、あの者たちと交流したのだからな。ここから先へは行かせせんぞ」
 先行するルーチェが迫る鯨型秘宝種兵へバスター・レイ・カノンを発射した。
 口から放射する爆発的な魔力が咆哮のごとくはしり、変形して攻撃態勢に入ろうとしていた鯨型秘宝種兵を包み込んでいく。
 大爆発を起こす鯨型秘宝種兵の左右を抜け、水面から飛び上がったさらなる鯨型秘宝種兵たちが変形。水面をジェット推進で滑るように突き進みながらマイクロミサイルポットを展開した。
「来るぞ!」
「兵器ニ過ギナ――刻マレテルノハ ブラック 心。
 ブラック 諦メタ。
 グッディ 心 諦メル?
 聞クマデ モナイヨネ」
 フリークライは『龍樹大鱗甲』を前に出し、船体から樹木を大きく広く展開。ミサイルの群れを我が身に浴びると、すさまじい回復力によって損傷箇所を自己修復していく。
 それでも大量のミサイルが撃ち込まれ爆発と黒煙に包まれたフリークライ。
 鯨型秘宝種兵たちがまずは一体撃破完了、と安堵したように目を点滅させるその中へ、ほぼ無傷のフリークライ――否。
「グッディ」
「希望の戦士フリークライ……いや、フリック。行きましょう。共に『希望』を乗せ走ったあの時のように!」
「「深層希望合体(ディープパンドラフュージョン)!」」
 海底より現れた鯨型海底探査機ディープクルーザーとグッドクルーザーが己を分解させ、巨大な人型ロボットとなってフリークライを包むように合体。
 ――『ディープクルーザー・XZ(クロスゼット)・フリークライ』!
 更に全身を覆った樹木によって巨大なフリークライの姿をとると、ミサイルによる爆破の衝撃を輝く風と小鳥の幻影によって吹き払った。
「次は俺だグッディ! 俺達の熱い友情パワー見せてやろうぜ! 闘心艤装! 勇者進水!」
 胸に響く爆音を鳴らしながら敵船団へ突っ込む千尋のマイティクルーザー号。
「「深層希望合体!」」
 フリークライと分離したグッドクルーザーたちが今度は千尋を中心にして再合体。
 ――『ディープクルーザー・XZ・千尋』!
 マテリアライズされたスピーカーとギター。かき鳴らすギターがハートを高め、空中をジェット噴射によって突き進む。
「息抜きは終わりだ。行くぞグッディ!」
 飛びかかる鯨型秘宝種兵を跳び蹴りによって粉砕すると、今度は船を寄せて併走した風牙と再合体した。
 ――『ディープクルーザー・XZ・風牙』!
 全身に炎を纏い、巨大な槍を構えたディープクルーザーが群がる鯨型秘宝種兵を豪快なスピンによって蹴散らしていく。
 そこへ更に、腕組みをしながら船を加速させる英司が並び、ビッと親指を立てる。
「俺たちは一つだ――『エークイーップ』!」
 勢いをつけて跳躍した英司の衣装が暗黒騎士のそれへと代わり、同時にグッドクルーザーが再合体。
 ――『ディープクルーザー・XZ・英司』!
 騎士甲冑めいたボディとなったディープクルーザーは巨大な剣でぐるりと円月を描き、鯨型秘宝種兵を真っ二つに切り裂きながら水面をジェットスキーのように滑っていく。
 そんな彼に残る鯨型秘宝種兵たちが大砲を展開。集中砲火を浴びせようと構える……が。
「そうはさせないっす!」
 リサが汽笛を鳴らし、拳を天にかざした。
 光に包まれたリサはグッドクルーザーと再合体。
 『ディープクルーザー・XZ・リサ』となると、組み上がった蒸気機関砲による豪快な横薙ぎ連射で鯨型秘宝種兵たちを粉砕していく。
「グッドクルーザーさんも、フリックさんみたいに、大きくて、どーんとしているって、エルは思いました。
 なので、とっても頼りになる方だって、エルは思いました。
 一緒に、皆様の笑顔を、護りましょう」
 その光景を横目に、船を加速させていくエル。
 ビッと銃口を突きつけるかのようにつきだした二本指。空中に大きくLの文字を描くと、飛来したグッドクルーザーたちと再合体し『ディープクルーザー・XZ・エル』となった。
 両腕を大きく広げたディープクルーザー。その周囲に生まれた大量の氷塊が熊の形をとり、まるで生きているかのように鯨型秘宝種兵たちへと殺到していく。
 巻き起こる連続爆発。
 大量に投入したはずの鯨型秘宝種兵たちが瞬く間に殲滅されたことで、ブラッククルーザーははぎしりでもするように唸った。
「やはりノワールの言うとおりか……グッド、オマエは人間にかぶれすぎた!」
 新たに召喚する複数の鯨型秘宝種兵。
 ブラッククルーザーは胸のコアを黒く光らせると、ジェット噴射をかけて空へと舞い上がった。
「絶望合体(アークフュージョン)!」
「あれは……!」
 見上げた風牙やリサたちは、かつて戦ったノワールクルーザーの逢魔合体(デモニアフュージョン)を思い出した。
「見た目も名前も似てるから同じ奴かとおもったけど……」
「新手っす! 前のようにはいかないっすよ!」
 千尋と風牙は船を走らせビッグブラッククルーザーへと突進。
 それを援護するようにリサは備え付けのスチームガンによって鉄球をたたき込み、
 ルーチェと英司もまた側面から回り込んで漆黒の斬撃を同時に浴びせかけていく。
 『ディープクルーザー・XZ・エル』は継続して氷の熊を殺到させる……が、ビッグブラッククルーザーは展開した正十二面体型のフィールドによってすべて無効化してしまった。
「希望などというものに囚われ、力を失ったかグッドクルーザー。憐れ、矮小、見るに耐えん!」
 肩から展開したミサイルポットより、大量の鯨型秘宝種兵が射出されジェット推進によって皆の船へと着弾していく。ボディいっぱいに爆薬を詰め込んだ彼らは甲板を吹き飛ばし船体をゆがめていく。
 ディープクルーザーも合体状態を解かれ、グッドクルーザーは海へと転落した。
 たちまち沈み始める船を護るようにフリークライが船によって体当たりをしかけ、治癒のフィールドを展開していく。
 そこへ大量の鯨ミサイルが殺到。破壊されゆっくりと傾き沈む龍樹大鱗甲。
「『希望』……!」
 フリークライの言葉が、沈み征くグッドクルーザーに響く。
 耳にではない。
 心にでもない。
 彼の『運命』に、その言葉は響いた。
「希望、未ダ、在ル!」
 胸のコアに、青き光と紋章が浮かび上がる。

●作戦名――希望
 沈みゆく船に、ゆがむ船体に、よせる波としぶきに、彼らが見たのは絶望ではなかった。
 胸に灯る光。船があわく、青い光を放っているのを見た。
 その光の名前を、なぜだか知っている気がした。
「「――最終希望合体(ファイナルパンドラフュージョン)!!」」

 海面を破り飛び出した古代船ブルークルーザーが真っ二つに割れ、十字の姿勢をとって飛び上がるグッドクルーザーを包み込むように人型ロボットビッグクルーザーへと変形合体。更にそのボディを折りたたみ、エルの船が左腕に、ルーチェの船が右腕に装着され、リサの魔導蒸気機関船『タービン』と風牙の船が重なるように合体し両足へと変化。更にフリークライの龍樹大鱗甲が甲冑のように胴体を包み込み、背部に変形した千尋のマイティクルーザー号が装着され激しいロックミュージックと共にジェット噴射を開始。
 空を飛ぶそのボディに英司のステルスクルーが分裂し、かぶと、剣、そして盾へと変化し装着された。
 見よ。
 グッドクルーザーを核とした九隻の船が勇気と正義を心に灯したその時、海を割って現れる――。
「「ファイナルビッグクルーザー!」」
「此処で芋引いたらさっきの子達に被害どころか最悪の結末を迎えちまうっす。だったらやったろうじゃねぇか!」
 腕パーツをバカンと縦に割り大砲化。放たれた巨大な弾丸が、間を流れる魔道蒸気エネルギーの間を抜けるたび加速する『スチームガン』となってビッグブラッククルーザーへと打ち込まれる。
 更にルーチェの船も大砲化し、疑似バスターレイカノンを発射した。
 フリークライのエネルギー供給によって莫大な破壊力を得た光線が、ブラッククルーザーの腕を吹き飛ばした。
「くうっ!」
 苦し紛れに放つブラッククルーザーの鯨ミサイル。しかし!
「兵器として生まれようが、どんな生まれであろうが関係ねえ!
 その腕を殺戮に使うのか、誰かを抱きとめるのに使うのか、最後に決めるのはここだ!
 行くぜグッディ! あいつに教えてやれ!
 今のお前の、偽りない気持ちを!!」
「でもって、速攻でブッ倒してやろうぜ!」
 風牙と千尋の船がそれぞれジェット噴射によって機体を加速。
 ミサイルの中を駆け抜けると、爆発を背に巨大な氷のレールを駆け上がる。
「悪いことは、めっ! です」
「子供達の笑顔のため、心を一つに」
 振りかざした剣に青い光が走り、大上段からブラッククルーザーへと袈裟斬りに打ち込まれる。
 返す刀がV字に走り、さらなる剣が一文字に走る。
 描かれた鋭いGのライン。
 剣を振り抜いた勢いのまま背を向け、水面を滑るようにブレーキをかけたファイナルビッグクルーザー。その背後で、ビッグブラッククルーザーは爆発四散した。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 破壊した破片からブラッククルーザーは見つからなかった。
 完全破壊される直前、機体を捨てて脱出していたのかもしれない……。

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