シナリオ詳細
迷宮職人ローレット
オープニング
●モグラ獣人のお悩み
グォーンという銅鑼の音。
長いテーブルには六つの影。
眼鏡出っ歯の影がブリッジを押した。
「それでは、定例会議を始まましょう。同志六番、報告があるそうですね?」
シルクハットの影がカイゼル髭をつまむ。
「然様。我らのアジトがこのたび『ダンジョン』に認定されたという報告が入った」
「なんだと!? まだ入り口とちょっとの部屋しか作ってないのに!?」
杖を床に打ち付け、コサック帽子の影が声を荒げた。
ターバンをした影も剣の柄でテーブルを叩く。
「認定と言ったな。一体どこの……ハッ、ダンジョン協会か!?」
「いかにも。説明を頼めるかな?」
話をふられて、ラーメンどんぶりを被った影が頷いた。
「ダンジョン協会は幻想王都でつい最近作られた団体アル」
星条マントを纏った影が笑う。
「金持ち貴族が趣味で作ったお遊びサークルにすぎまセーン! えー、実績は? フィートアンツダンジョンやチョコレイトダンジョン……どれもすぐに無くなったところばっかりデース!」
「皆の衆、だが認定されたからには……来るのであろう? 冒険者が」
「「ハッ――!」」
六つの影が、王冠を被った影に振り向いた。
そう、七つ目の影。テーブルのお誕生日席の、一段高い椅子に座った――モグラっぽい亜人種がステッキを撫でた。
パッと部屋の明かりがつき、他の六人……っていうか六モグラを照らした。子供のクレヨン画みたいな顔をした二等親の卵体系。格好の違いでようやく見分けが付くような子たちである。
「早速報告したまえ。ダンジョンはどこまでできている」
「ハッ……フロアが9つでございます」
「うむ、それで」
「以上でございます」
「モンスターとか、罠とかは……?」
「何一つございません」
「うむ……うむ……」
何度か頷いて、王様モグラは胃っぽい場所と額に手を当てた。
「あいたたたたた」
「胃潰瘍ですか? それとも頭痛?」
「両方だ」
王様モグラはペンと紙を取り出すと、ぴょこんと椅子から降りた。
「ちょっと、助っ人を雇いに行ってくる」
●きちゃった☆
「きちゃった☆」
ウィンクするモグラ型モンスターを見て、イレギュラーズたちはとりあえず武器を手に取った。
うわーうわーといって両手を振り回す『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)。
「この人は敵じゃないのです! 少なくとも依頼人なのです!」
そういうことなら、と武器を下ろすイレギュラーズの皆様。
「紹介するのです、モグラキング様。つい最近、六人の部下と一緒に自分のダンジョンを作った方なのです。ですけど……」
「まだできておらぬ。ぜーんぜんできておらぬ」
王冠を脱いでなでなでするモグラキング。
「けどなんか、冒険者が攻めてくるっていうし、ワシの部下だけじゃ絶対負けちゃうし、そうしたらダンジョン作りのためのお金全部持って行かれちゃうし?」
あんまりじゃない? とフレンドリーに話しかけてくるモグラキングである。
「だからね、わし、お金半分あげるから……挑んでくる冒険者たちを全員追い払って欲しいの。おねがいできる?」
「できますか?」
こちらに振り返ってくるユリーカ。
こうして。
イレギュラーズたちによる『ダンジョン作り』が始まったのだった。
- 迷宮職人ローレット完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2018年06月18日 20時50分
- 参加人数10/10人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 10 人
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参加者一覧(10人)
リプレイ
●ダンジョンベース
「ダンジョンにゴブリン。ピッタリじゃねえかよ。ピッタリすぎて心中複雑だわ」
土嚢袋の入った木箱に腰掛け、『盗賊ゴブリン』キドー(p3p000244)はストーンナイフ研いでいた。
「まー、仕事は仕事だ。気張ってくぜ。そこらの在来種と一緒にされる訳にはいかねーしよ!」
「キドー先生は外来種なんでやんすか」
瓶底眼鏡に出っ歯のモグラは穴を掘りながら振り返った。
「……見てわかんねーか?」
胸を叩いてみせるキドーに、モグラはただただ首を傾げた。
「まさか私がダンジョンで門番の真似事をする事になるとわね。今迄は踏み込む側だったから色んな意味で新鮮だわ」
『一刀繚乱』九重 竜胆(p3p002735)はダンジョンのために作られたという円形フロアの中心で背伸びをした。
軽く団体球技ができるくらいの広さがあるものの何も置かれていないひどくのっぺりとしたスペースだった。天井に点々と明かりがあるのが唯一の救いと言っていい。
(そういえば以前迷宮で腹パンを狙える機会があったな。他の依頼に比べれば迷宮でなら腹パンもビレゾンやもしれん)
『祈りの拳』原田・戟(p3p001994)が腕組みをしたまま黙って謎の空気を出していた。話しかけようか迷ったが、竜胆を見る目が軽く犯罪者のそれだったのでやめておいた。
「細々としたことに比べれば、門番なら俺向けの仕事だ」
「え、あ、うん」
「ダンジョンの防衛ですか。かなりレアな経験になりますね」
代わりに話に乗る陰陽 の 朱鷺(p3p001808)。
「ダンジョンマスター直々の依頼ですよ。言うなれば、ダンジョンマスターマスターと呼んでも良いのですよ。心踊ると言うものです。でもダンジョンの規模にやや不満ですけどね。まぁでも、面白くはなりそうです」
今更だが、イレギュラーズたちは五つの部屋に分かれて人員を配置することにした。
最も過酷な入り口付近は朱鷺たち三人。次に大変になる三方向のうちひとつに陣取ったのが、『尾花栗毛』ラダ・ジグリ(p3p000271)たちのチームである。
「地図を埋めたくなるタイプだな、私。隠し通路もいい」
いっそ全部の部屋に配置すれば……と思っていたのかは分からないが、ラダはダンジョンの簡単なマップを手にどこかぼんやりしていた。
横から覗き込む『純粋なクロ』札切 九郎(p3p004384)。
「僕はダンジョンに行ったことが無いのでどんな場所か分からないですけど、まぁ他の場所なんてどうでも良いですよね。やり方が違っても守りきれれば同じです」
「そも、このケースがイレギュラーなもの。気負わずマイペースにやってくれれば良いのデス」
星条旗マントを羽織ったモグラがこくこくと頷いた。
「みんなでがんばろー!」
「オーッ」
『駆け出し冒険者』シャルレィス・スクァリオ(p3p000332)とターバンモグラが一緒に剣を突き上げた。
「そうだ、冒険者には顔が判らない方がいいだろうし、ダンジョンの敵っぽい威厳も欲しいよね。ちょっと早いけど被っちゃおうか」
そう言って取り出したのはシンプルな仮面だった。
ダンジョンに人がいる時点でちょっとおかしいが、顔を隠せば匿名性も生まれるだろうという考えらしい。
腕組みをして部屋の様子を確認していた『特異運命座標』シェリル・クリスフォード(p3p004598)が振り返る。
「モグラさん方が財産全部持ってかれるのは余りに不憫だ」
そう言って仮面を被ると、どこか雰囲気を暗くした。
「どんな冒険者が現れるか楽しみで胸が躍るな」
さて、入り口エリアとは別の意味で重要なのが魔王ルーム手前のフロアである。
「いつもは侵入する側なんだがな。まさか待ち構える側になるとは思いもよらなかったわ。ま、他の奴らが手抜かねぇ限り、早々に冒険者共が来るなんて事はねぇだろう」
『黒キ幻影』シュバルツ=リッケンハルト(p3p000837)は木箱に腰掛け、大きなあくびをした。
「どうでしょうな」
コサック帽子を被ったモグラが低い声で唸る。
「他のフロアで確実に足止めができる保証がないゆえ、このフロアの責任は重大ですぞ」
「分かってるって」
「はい、張り切っていきましょう!」
『ラケダイモン』Enias Deimos(p3p005485)はコサックモグラと若干キャラが近いようで、気合い充分にシュバルツへ詰め寄った。
「罠のたぐいは不慣れですが、どうぞご指導ください!」
「お、おう」
温度のたけー部屋にきちまった。シュバルツはそんな顔で両手を挙げた。
各部屋の人員配置は入り口を上にしたT字型。モグラ一体ずつを両脇の遊撃に加え、主に入り口付近での殲滅を目的とした配置になっていた。
「ここは人が少ねえからな。落とし穴は多めにほっとけ」
「アイアイー!」
キドーは落とし穴の位置を目測で記憶しつつ、モグラに穴を掘らせていく。
一方で土嚢を積んで穴を見えづらくし、飛び越えようとした所で落下するように仕向けていった。キドー自身も正面から突撃するより敵の隙や油断をつくのが得意なタイプだ。入り口から死角になる位置に身を潜め、準備は完了。
一方でラダたちは入り口から充分きょりをとった場所に土嚢を積み上げ塹壕化した。
入ってきた冒険者たちを射撃で迎え撃つのが目的だ。
対戦車ライフルをどかんと土嚢に乗せるラダ。
「またずいぶんな……」
そう言って拳銃を抜く九郎。ふと見ると星条旗モグラがガトリングガンを土嚢の台にセットしていた。
「これ、ちゃんと殺さないようにできます?」
「大丈夫」
「大丈夫かな」
「ダンジョンに来たら宝箱を楽しみにするよね!」
シャルレィスはそう言って、見せかけだけの宝箱におっさんの靴下と山田さんを仕込んだ。
山田さんってなんだろう。概念?
きっと冒険者たちはとてつもないがっかり感を味わう筈だ。闇市でおっさんの靴下引いた人みたく。
「この部屋はどの通路から敵が来るかわからない。中央に陣取っておく必要があるな」
シェリルは四角形に土嚢を積むと、その中央で全方向に対応できるように構えた。
「えーっと…こういう役回りはやっぱり威厳を持った敵役に徹した方がいいのか?」
「だろうな」
「――!?」
眼帯をつけて急に声のトーンを落としたシャルレィスを、シェリルは二度見した。
「ダンジョン入ってすぐのフロアです。最初に出会う敵役です。序盤の序盤。噛ませ役です。ほどほどに疲労させて後陣に回しましょう。でもですね噛ませ役イコール雑魚ではありません。このフロアで撃退する必要は必ずしもありませんが効率の良いダンジョン運営のために入り口たるこのフロアで適度に疲労してもらいます」
最も過酷なダンジョン入り口直後のフロア。
朱鷺は魔性惨華を取り出し、治癒符の準備を整えた。
すると、地上の階段を下って数人の男女が現われた。
「おー、ここが新しいダンジョンか」
「おい見ろ、誰か居るぞ」
早速のお客さんである。竜胆は仮面を整え、刀を引き抜いた。
「立ち去りなさい、冒険者。此処に貴方達の望むような物は何一つとしてないわ。それでも先に進もうと言うのならば、覚悟を決めなさい
「そう言われて帰るわけがあるか!」
剣を抜いて斬りかかってくる冒険者。
竜胆は相手の切り込みよりも早く接近し、腹めがけて刀を走らせる。
「望むような物はないのよ。ええ、本当に。色んな意味でね」
「――」
戟が強引に迫り、相手剣士の腹めがけてパンチを繰り出す。
吹き飛んでいった戦士を横目に、弓や銃を構える冒険者たち。
戟は突きだした拳をそのままにして、深く細く息を吐いた。
「……こんなものか」
貴族たちの道楽で生まれたサークルみたいな組織、『ダンジョン協会』。
手頃なダンジョンに冒険者を送り込み、物資の提供や仲介の手数料としてダンジョンから獲得した戦利品の一部を受け取るというヘンなシステムでできている。それゆえ自力で物資を整えられない駆け出し冒険者や、ちょっとした行楽でやってきた貴族のひとなんかが主な利用者となっていた。
「数多の艱難辛苦を乗り越えよくぞ来た、勇者たちよ」
それゆえ、戦闘力も知力もずっと低い者がおおかった。
「さて、君たちはここに来るまでの間に私の友らと戦ってきたわけだが……どうだったかな?みな精強極まる戦士だっただろう?」
「えっと……」
殆ど人間だったんですがとは言えない冒険者たちに、Eniasは堂々と身構えて見せた。
「さて、勘のいい諸君らは気付いているかもしれないが、ここが最後だ。ここを越えればこの迷宮のボスの部屋だ。我らはボスを守る最後の槍、今までと同じく一筋縄で済むとは思わないことだ!」
眼をギラリと光らせるEniasに、冒険者たちは思わず汗をかき、そして人員と整え始めた。
「きっとただものじゃない。メンバーを揃えて、万全の姿勢で挑むんだ」
「…………」
シュバルツは素直すぎる反応をする冒険者たちに軽く同情しつつも、乗っておくことにした。なにせここをスルーされてはおしまいだ。
「よく此処まで来たな。冒険者。俺らが最後の門番だ。覚悟がねぇ奴は今直ぐ立ち去れ。死にたい奴だけ前に出ろ。少しばかりは楽しませてくれよ? さぁ……」
腰から抜いたナイフをくるくると回し、二本同時に構えてみせる。
「かかってきやがれ!」
●モグラの防衛戦
「アァン!?」
足首のくじけた音をたてて穴に落ちていく冒険者。ゆーても這い上がれる程度の深さだが、のこのこ這い出ている隙にキドーは相手の首筋まで迫っていた。
「ヒイッ、ゴブリンだ!」
「何も間違っちゃいねえが」
ナイフを振り込む。火花が散って、冒険者はうーんといって気絶した。
「他にやることあるだろうに」
「ヤンス!」
ひょっと穴から顔を出す出っ歯モグラ。
キドーはモグラを囮にして冒険者を落とし穴に誘導しつつ、隙を突いて魔術で倒していくという地道な活動を続けていた。
「こっちは少ない人数でちまちまやってるが、あっちは大丈夫かね」
あっち、もとい朱鷺たちの入り口正面フロア。
雨のように降ってくる炎の魔術に対抗して、朱鷺は治癒符を連発していた。
「生かさず殺さず、じわじわと削っていきましょう。意外とこれは、楽しいかもしれません」
飛来する矢を切り落とし、竜胆が敵に詰め寄っていく。
冒険者たちは結託していないとはいえ味方同士。次々に増える仲間の数を利用してこちら竜胆たちの戦力を押しつぶそうとしてくる。体力が減れば別の仲間と交代してしまえるので、終わらないマラソン状態になっていた。
「それでも――」
竜胆は相手のナイフを跳ね上げ、二刀流の回転斬りで冒険者たちを次々に切り伏せていった。
「戦力は圧倒的ね」
「…………」
戟は趣味に合った冒険者を見つけて壁ドンからのハラパンというそれこそモンスターみたいないじめかたをしている。
戟がくぅるりと振り向いて目をあやしく光らせるたび、冒険者たちは恐怖に支配されるという仕組みである。
元々結託していない彼らは攻めるか守るか自己保身かの三択でバラバラに混乱していくのだ。
それはラダのように一貫した防衛を敷いた部屋でこそ効果を見せた。
朱鷺たちの部屋から逃げてきた冒険者を、フロア入り口の時点で撃退するのだ。
「高い攻撃力や回復力をもった敵を優先して狙う。いい?」
ラダがいかついライフルを連続でぶっ放すと、フロアに入ってきた鎧の騎士がひっくり返った。
そこへ弾幕をはって接近を牽制する星条旗モグラ。
九郎も負けじと銃を乱射し、打ち尽くした所でリロード。
盾を翳した冒険者がその隙をつくようにして塹壕へと突っ込んできた。
「九郎――!」
「大丈夫です。近づかれるなら」
九郎は手首を返すように回すと、どこからともなくトランプカードを取り出した
鋭利な側面で相手の腕を切りつける。
「戦い方をかえるだけ」
宝箱を開く。
靴下をつまみ上げ、ため息をつく冒険者たち。
「宝は気に入ったか? 未熟な貴様らに似合いの宝だろう」
土嚢の上へと飛び出したシャルレィスは剣を抜き、漆黒の刀身を冒険者たちへと突きつけた。
「立ち去れ。冒険とやらも、命あってのものだろう? 私も弱者に興味はない」
「なにをっ!? 我こそは栄えある貴族アマ――ぎゃん!?」
インドモグラの放ったナイフが直撃してのけぞるなんかの貴族。
「まってくれ話し合いで解決しよう! ここから立ち去れば命は取らずに」
「断わる」
シェリルは空中に魔術のラインを描くと、魔術が形を成して相手へ殺到していく。
「遠慮しないで持って帰るといい、良かったじゃないか山口さんに会えて」
ぬあーといって倒れる貴族のなんか。
シャルレィスとシェリルは土嚢から飛び出して広い陣形をとると、左右それぞれの部屋から流れ込んできた冒険者に身構える。
「懲りないな」
飛来した攻撃ポーションを剣で切り払い、シャルレィスは起き上がりかけた貴族の誰かをパンチで眠らせた。
魔王ルーム手前のフロアはある種の激戦区。
しかし万全の体制を整えようとかいって棒立ちしてた冒険者たちを待っててあげるシュバルツではない。
「こいつら敵をナメてるな……」
『金なら払う』とか言い出した騎士の鼻っ面に拳を入れて眠らせると、シュバルツはため息をついた。
一方でEniasはコサックモグラの援護を受けながら体格のいい全身甲冑男とぶつかり合っていた。
「この迷宮はさる好事家が冒険者の阿鼻叫喚を見たいがために作ったものだ。この先もろくなものはない。帰るのだな!」
真正面からの体当たり。
しかしはねとんだのは相手の方だった。
Eniasはさらなる威嚇のために声を張り上げ、武器を振り上げる。
相手は命だけはといって(仲間を抱えて)フロアから逃げ去っていった。
「ったく、どうしてかけだし冒険者ってやつは、敵を馬鹿だと思い込むのかね」
シュバルツは首をこきりと鳴らし、肩を回した。
まったく歯ごたえの無い、そして考えの浅い冒険者たちばかりだった。
だがそんな中で。
「っと!?」
咄嗟に構えたナイフがはねとんでいく。
一本は回転して天井に突き刺さり、もう一本は地面を滑って後方へ。
「ジジイどものオススメっつーからどんなこけおどしダンジョンかと思ったら……」
ぼろけたジーンズにアーミーブーツ。素肌に直接アーミージャケットを羽織り、髪をオールバックにした男が拳銃を手に現われた。
「マジおもしれえ奴がわんさかいるじゃねえかよ馬鹿野郎」
素手になったシュバルツを見て、銃を腰のホルスターにしまう男。
「俺のことは……そうだな、テッドとでも呼んでくれや。ジョンでもいいぜ。さ、やろうか」
同じく素手になり、ファイティングポーズをとるテッド。
来るか、と思ったときには至近距離まで詰め寄ってきた。
シュバルツは反射的に全力のパンチを繰り出す。
顔面にヒット。それもお互いに。
吹き飛びそうになるところをこらえ、相手の襟首を掴んで投げ飛ばした。
――かにみえたが、テッドは空中で身をひねって強制着地。逆にシュバルツを一本背負いで投げ飛ばした。
「そこまでだ!」
Eniasがモグラと共に突撃。
左右からの挟み撃ちだが、テッドはそれを片手で掴んで受け止めた。
「なるほどなるほど。まだまだ人生楽しめそうだ。もう100年は生きてみるかね」
テッドはEniasを振り払うと、懐から出したコインを投げてよこした。シュバルツがキャッチしてみると、非常に見覚えのある銅製硬化。だが幻想で流通しているコインではなかった。
「見たことあるか? ご縁がありますようにってお守りさ。こんな場所じゃお互い楽しめねえ、また会おうぜ」
テッドは手を振り、ダンジョンを去って行った。
「まっ……」
シュバルツは立ち上がり、ズボンの砂をはらった。
「楽しませてはくれた、かな」
こうして、モグラのダンジョンは攻略者なしのまま一日目を終えた。
ダンジョン協会には『話が違う』と冒険者が殺到し、依頼リストからも消えたそうだ。
モグラキングはイレギュラーズたちに深く感謝を表して報酬を配った。そして……。
「そのうち良いダンジョンを作るから、楽しみにまっているがよいぞ! はっはっはー!」
本気なのかわからないことを言って、お別れしたのだった。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
――mission complete!
――congratulation!
GMコメント
【オーダー】
成功条件:冒険者を追い返す
まだまっさらな部屋しかできてない小規模ダンジョンに冒険者たちが沢山やってくるそうなので、それを戦ったり罠を仕掛けたりして追い返しましょう。
一応生死不問としておきますが、殺すとムキになってリピーターと化してしまうので殺さない程度に追い返すのがベストでしょう。相手もヤバくなったら撤退する筈です。
【ダンジョンフロア】
このダンジョン『なまえはまだない』には9つのフロアがあります。
神の視点から俯瞰するとこうです。
【入】
①②③
④⑤⑥
⑦⑧⑨
【王】
【入】から入り、【王】を目指して進行します。
部屋は上下左右は行き来が可能(ナナメはダメ)。
実際には高低差がついたり扉があったりしているので、隣のフロアの様子は普通じゃわからないようになっています。
【王】にはモグラキングが控えていますが、戦力的にはすごく心許ないので、『到達されないこと』を目標としてください。
【ダンジョン配置】
ダンジョンにはPCとモグラーズを1部屋につき『3人まで』配置することができます。
配置したら別のフロアに移ることは出来ません。(一応無理じゃないけどとても重いペナルティがかかります)
PC10人(仮)とモグラーズ6人で計16人を部屋に配分してください。
※補足1:モグラーズの戦力はイレギュラーズより同じくらい想定してください。ただし戦闘専門で非戦等の応用がきかないので結果PCたちのほうがデキる感じになります。
※補足2:配置したキャラより冒険者の数が多いと、そのぶんすり抜けて別のフロアに移動してしまうことがあります。2PCの部屋に5冒険者来たら3冒険者が次の部屋に行ける感じです。
【冒険者】
このダンジョンは金持ち貴族がノリで認定したばかりのところなのであまり知られていません。
駆け出し冒険者やそれほど実力のない傭兵くずれなんかがチャレンジしにきます。
数はちょっと不明ですが、20人くらいは来ると想定して置いてください。
パターンもバラバラ。防御の硬い戦士タイプや回避のうまいやつ、攻撃全振りなやつ、回復が得意なやつ、などなど。
【アドリブ度】
ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。
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