PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<フィンブルの春>ジャイアント・キリング目指して

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 見上げれば、汚水をたっぷりと含んで膨らんだ、不定形のぶよぶよした体がのっそりと頭を『もたげた』。
 なぜその部位が頭部だと思ったのか分からない。単純に胴らしき太く大きなパーツに手足らしい細く(それでも大人二人分くらいの太さ
は十分にある)伸びて生えている。
 ここまで『らしい』形をしているものだから、人間で言う頭の位置にドーム状のらしきものがにゅっと生えている。
 何か良いたとえはないかと頭の中を探し回ると、ジンジャーマンクッキーらしい形をしているな、と思った。
 もっとも、汚泥で汚水で出来たような体はとてもじゃないがお菓子に例えて良いような感じはしない。
 パーティーを組んだ仲間は物陰から様子を窺いながら、巨人の動向を見守る。
 とてもじゃないが、僕らで勝てるだろうか。
 不安になり腰に差した剣をたぐり寄せると、ぎゅっと握りしめた。
「見て、あれ!」
 杖を持ったヒーラーが指さす先、ぬれた泥が点々と続く足跡を見ると、草花が瞬く間に萎れ溶け始めていた。
「あいつが触れた場所からどんどん腐敗していってる……!」
 咄嗟に巨人の進行方向を見た。穏やかな湖畔に面した、穏やかな領地が見える。
 ――ここで食い止めなければ!
「よし、行こう!」
 仲間を激励するように声をかけ剣を抜くと、物陰から剣士が飛び出した。
 そのまま巨人の足下へ走ると、手にした剣で突き刺した。
「行くぞ――!」
「そうよ! ここでやらなきゃ、あの場所に住んでる人達が襲われるわ!」
 一人、また一人と得物を手にして果敢に立ち向かい始める。
 勝算はあるか――いや、勝たなければならない!
「あああぁああっ!」
 とにかく、やらなければ!
 その一心で彼らは巨人に立ち向かったのだった。


 幻想王都に不穏な策謀の影が蔓延っている。
 奴隷市に始まりレガリアの盗難、そして魔物の大量発生。
 さらに狙われた地域の殆どは、イレギュラーズの領地であったという事実。
 背後で糸を引く黒幕は何者か。
 そうした中で、勇者王アイオンの直系子孫にして幻想国王であるフォルデルマン三世は、イレギュラーズの協力を仰ぐため、現代の英雄を決める『勇者選挙』を開始する。
 それは大量発生した魔物討伐に功績をあげた者にブレイブメダリオンを与え、多く集めた者を勇者とする、唐突な『思いつき』であった。
 ――ブレイブメダリオン・ランキング。通称『勇者総選挙』
 この開催により幻想国内でにわかに勇者ブームが巻き起こった。
 憧れた者、志す者、我こそは次世代の勇者であると主張する者。そんな彼らが独自に勇者パーティーを組み、本来ローレットだけで行われる筈だったメダリオンランキングに参入し始めたのだ。
 王フォルデルマンはこれに喜び、有力な貴族が擁立したならばローレット・イレギュラーズ以外の勇者候補生にもメダリオン・ランキングへの参入を認めるおふれを出したのだった。
 ローレットの勇者達(イレギュラーズ)や、その背を追う勇者候補生たちは国内で発生するモンスターや奴隷といった問題を解決していき、その報酬としてメダルを受け取ることでランキング上位へ食い込もうとしている。
 こうして、彼らとの『メダリオン争奪戦』が幕を開けたのだった。

 一方で、古廟スラン・ロウと神翼庭園ウィツィロのそれぞれより出現した古代獣(モンスター)たちは依然として幻想各地を襲撃し続けている。
 スラン・ロウのモンスターは現代人たちへの憎しみで、ウィツィロのモンスターは地上人たちの文化根絶を狙っているようだが、どちらも等しく幻想王国にとって降りかかる火の粉である。
 これを払った者こそが新世代の勇者となるだろうと、貴族達は目しているようだ。

 そんな中で、王からメダリオン・ランキングの最終集計日である『約束の日』が告知された。
 ランキングは最終段階へと突入し、国内には大きな動乱が巻き起ころうとしている。
「そんな中、一つのパーティーが巨人と交戦している」
 バシル・ハーフィズは手元の地図を広げると、とん、と軽く指先で示した。
 バルツァーレク領、と流麗な文字で記された場所の一角。湖畔に面した地だ。
「ここもイレギュラーズの領地だな。名は……ルナール・グリムゲルデ」
 そしてもう一カ所、いくらか離れた森と草原のあわいへと指をすべらせた。
「この辺りで件の勇者パーティーが交戦している」
 パーティーは剣士、盾を持った重装備の剣士、ヒーラー、魔法使い、格闘家、弓使いといったオーソドックスなバランスの良い組み合わせだ。
「対する巨人はおそらく『古廟スラン・ロウ』から現れたモンスターだと思われる。中に水を含んだゼリーのような体で、奴の体液に触れた植物や昆虫といった小さな生命はたちまち枯れ、腐敗しちまう」
 ずんぐりとした顔のないそれは、人のような手足らしき部位が有り例えるならば。
「ジンジャーマンクッキーみてぇな感じだな。大雑把に人らしい形をしているが、目鼻や耳は見当たらない」
 動きは遅く愚鈍ではあるものの攻撃力は高くない。だが耐久に優れている。
「丁度皆が合流する頃に増援が到着するはずだ。アンデッドが6体、欠けた剣を持った弓使いが4体と、杖を持った魔法使いが2体」
 こんなものかな、というと広げていた地図を丸めてイレギュラーズ達へと差し出した。
「ランキングで敵対するパーティーはなかなか正義感があって面白いと思う。
 彼らと協力し、競合して最後にメダリオンを勝ち取ってくれ」
 応援している、とイレギュラーズの背中を押すと、彼の地へと送り出した。

GMコメント

 水平彼方です。

●目的
 巨人、およびアンデッドの撃破。

●ロケーション
 見晴らしの良い草原地帯です。
 巨人の歩いたあとは草花が茶色く萎れ溶けています。

●敵
 巨人×1
 汚泥で汚水で出来たような体を持つ、形はジンジャーマンクッキーのような巨人です。
 攻撃力は高くありませんが、ぶよぶよとした体は耐久力に優れています。
 動きは遅く手足を振り回したり、手足をちぎって投げたりします。
 自分でちぎった手足はすぐに元通りになります。
 他者からの攻撃に関してはこの限りではありません。

 アンデッド×6
 弓使いが4、魔法使いが2です。
 弓使いは遠距離を保ちながら射撃で攻撃してきます。
 魔法使いはある程度距離を保ちながら、近~遠距離まで届く炎の魔法で攻撃します。
 巨人に比べると攻撃に優れ、耐久も通常の魔物程度です。

●勇者候補生パーティー
 剣士、盾を持った重装備の剣士、ヒーラー、魔法使い、格闘
家、弓使いで構成されたパーティーです。
 盾持ちが注意を引きつけ、ヒーラーが癒やし、他でダメージを与える。
 オーソドックスなバランスの良いパーティーです。
 現場到着時、ヒーラー、魔法使い、弓使いは適度に距離をとり、他は巨人に接近しています。

●ブレイブメダリオン
 このシナリオ成功時参加者全員にブレイブメダリオンが配られます。
 ゴールド、ミスリル、アダマンタイトとメダルごとにランクがあり、
 それぞれゴールド=1p、ミスリル=2p、アダマンタイト=5pとして扱われブレイブメダリオンランキングにて総ポイント数が掲示されます。
 このメダルはPC間で譲渡可能です。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。 

  • <フィンブルの春>ジャイアント・キリング目指して完了
  • GM名水平彼方
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年04月26日 22時30分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ルアナ・テルフォード(p3p000291)
絶望を砕く者
ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)
月夜の蒼
ルナール・グリムゲルデ(p3p002562)
紅獣
茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)
音呂木の巫女見習い
アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)
航空猟兵
ヲルト・アドバライト(p3p008506)
幻想の勇者
アルヤン 不連続面(p3p009220)
逆式風水
ヴィリス(p3p009671)
黒靴のバレリーヌ

リプレイ


 ジャイアントキリング。
 大番狂わせを意味する言葉は、自分がこの場面において『期待されていない』事を意味していた。
 目の前に現れたのは、文字通りの巨人。ヒトを軽く凌駕する体躯を持つ、巨大なモンスターだ。
 勢いを乗せて剣を振る。だが弾力のある体になかなか刃が通らない。
 そして二重の意味での巨人殺しを成し遂げようと勇者候補生達が集まった。
 

 憧れていた勇者たちは、個性的だった。
「イレギュラーズだ」
 勇者総選挙に参加するものならば皆が知っている存在。誰とも無くぽつりと呟けば、一斉に現れた勇者へと視線を向ける。
「ちょっと! 損害計算やら資材管理やら誰がすると思ってるの!」
 開口一番吠えたのは『月夜の蒼』ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)だ。人差し指の先を今回の犯人達へと突きつけてた。瞳の中には小さな星――ではなく、資材の数を記したカウンターがめまぐるしく動いているようにも見えた。
「まさかこっちに来るとはな。俺の領地はただのアニマルランドだぞ? ……お前ら暇か? 暇人か?」
 こちらは『紅獣』ルナール・グリムゲルデ(p3p002562)、領地の持ち主でありルーキスの夫である。実質的な領主はルーキスであるため、ルナールはどこか鷹揚に構えている。
「これ以上被害が出てルーキスが胃を痛める前に倒してしまおう。環境破壊を見て見ぬふりするのも後味悪くなりそうだからな」
 青筋を立てるルーキスを見て『騎士の忠節』アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)が
「うっわー、何アレ何アレ。泥? 泥なの? アレがまだチョコレートだったらテンアゲだったのにっ
 ってグラコロはもう2か月前終わったか!」
 真っ赤なマフラーを棚引かせハイテンションにまくし立てる『奏でる記憶』茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)。対照的にダウナーな『被吸血鬼』ヲルト・アドバライト(p3p008506)が青白い顔を覗かせる。
「勇者候補生、か。勇者になるのはオレだ。誰にも渡すつもりは無い。今回は共同戦線といこう。協力してもらうぞ」
 赤い瞳から投げかけられたぴりりとした視線を向けられ、候補生達の身に緊張が走る。
「自分も勇者になるべく、頑張るっすよー。扇風機が勇者だなんて、きっとお父さんも喜んでくれるっすー」
 『騎士の忠節』アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)に運搬され到着した『扇風機』アルヤン 不連続面(p3p009220)。今日も声は懐かしい夏の日を思い出すような揺れを含んでいる。
「勇者ブーム、ねぇ。なりたいと思ってなれるなんて、不思議」
 『絶望を砕く者』ルアナ・テルフォード(p3p000291)にとって勇者とは祈りであり、願いであり、そして『そうあるべき姿』を押しつけられた存在だ。だからルアナには『目指す』という感覚が想像できない。
「巨人さんもよく出るのね。みんなどこから来ているのかしら? 私じゃわからないし迷惑をかけるのなら退治するだけよ!」
 『剣靴のプリマ』ヴィリス(p3p009671)がエペ・ポワントのつま先で地面を軽く叩きながら巨躯を見た。
「あなたが巨人さん? ……意思疎通はできるのかな……ぶよぶよしてるけどうーん」
 近づいたルアナがまじまじと観察するように液体のような体を見る。
 その様子を心持ち遠巻きに見ていたが、ばびゅーんと突進してきた秋奈によってそれも遮られた。
「ねぇ候補生達! アンデッド軍団を先に対応してもらえないかなっ」
「でも俺たちでなんとかした……」
「そおい!」
 反論諸共桔梗の刀でまとめて吹き飛ばした秋奈は安全確保する。
「こ、これはみんなを守る為なんだかんねっ! ヘンな勘違いしないでよねっ! ……ツンデレかっ! ぶははは!」
 笑う秋奈に、候補生達は無言でかくかくと首を縦に振った。
「よーくみといて!」
 と手を振って背中を向けた。
「戦神が一騎、茶屋ヶ坂アキナ! 有象無象が赦しても、私の緋剣は赦しはしない!」
 巨人を前に堂々と名乗りを上げた。
「ふふふ、邪魔者がいっぱいだぁ」
「邪魔者……確かに歓迎できる集団じゃないな?」
「不法侵入者はお断り、武力排除いっとくね」
「はっはっは、ルーキス目が笑ってないぞ目が」
 輝かんばかりの笑顔を向けたルーキスに、途端真顔になって会話に合いの手を入れるルナール。飛んできた矢を落としながら、嫁に降りかかる災いを代わりに受ける。
「今日の天気はにわか雨」
 手にしたサファイアを触媒にルナールは霧を呼ぶ。魔術の雨が降り注ぎ、矢を射かけたアンデッドの体を打つ。
「拙者、通りすがりの家電製品配達員。義によって助太刀いたす」
 現場へ迅速に荷物を届ける家電製品配達員・アルヴァの脚はとっても速い。配置を確認すると的確なポジションを見つけ、巨人を一旦そのまま通り過ぎるとそこにアルヤンを設置する。
「アルヴァ先輩ありがとうっすー。ひゅー、速いっすねー。流石っすー」
 アルヤンは礼を言うと、網の内側にある薄水色の羽を回転させた。
「いくっすよー。うぃーんうぃーん。どーん」
 緩い声に似合わない強力な破式魔砲を放つ。アンデッドを焼き巨人の片腕を吹き飛ばしたが、すぐに周囲の濁った肉体が盛り上がり片腕が再生する。
 巨体を揺らして巨人が一歩前に踏み出す。アンデッドの対処をしていた候補生達が慌てて巨人の方を振り向いた。
「アンデッドたちはお願いね! わたしは巨人さんをこの場所で押さえるから!」
 鮮やかに飛び出したルアナがキャッスルオーダーで守りを固めた。歩み出そうとする足を阻み、巨体をその場にとどまらせる。
 巨人が歩むごとに足下の植物は死に腐敗する。その被害を最小限にとどめるために、移動を封じる為だ。
 更にヲルトが接近する。血液の循環速度を上げ、身体能力を活性化させる。
 ――やや後方に身を捻り、両腕を鞭のように振り回す。
 垣間見えた近未来のヴィジョンを得て、ヲルトの思考は最適解を導き出した。
「未来は見えた。負けるのはどうやらお前の様だな」
 最小限の体の動きだけで回避すると、睨み付けたままルアナと共に押さえに入る。
「ふふ、ジャイアントキリングは私たちに任せて頂戴! あなた達の相手はあっちよ」
 ハラハラしながら二人を見ていた候補生達にヴィリスがアンデッドを指さした。
 そのまま軽い足取りで、鋼のつま先がタランテラのリズムを刻む。駆け足のように早い8分の6拍子が巨人を翻弄する。
「任された事をやろう」
 盾を持った剣士がそう言って揺れるアンデッドを見据えた。剣では無く盾で杖ごと殴ると蹈鞴を踏んだ先へ剣士が切り込み、詠唱を終え巻き起こる炎がアンデッドを焼く。格闘家の拳と蹴りが鮮やかに決まり、弓使いの放った矢が寸分違わず射貫く。
 負傷した傷は、杖先から迸る光によって癒えていった。
 拙さはのこるものの、堅実な連携で着実にダメージを重ねていく。
「おのれアンデット元が死体のせいで一銭の価値も出ないくせに無駄に湧いてくるとか害悪だな!」
 怒り心頭に発すルーキスが怒りのノンブレス早口でまくし立てる。頭の中ですぐさま損失の勘定がなされ……ああ、資材がまた一つ減っていく。
「溶けろ溶けろー」
 囃し立てるような声とは裏腹に、俄雨は容赦ないエネルギーで敵を溶かしていく。
 派手に立ち回るルーキスを狙った炎をルナールが庇う。ルナールがいるからこそ、ルーキスは心ゆくまで魔法を行使できる。
「ほら、あそこのアンデッドなんか良い感じに狙い目だよっ!」
 鮮やかにアンデッドを秋奈が指さす先には、よろめく射手のアンデッドの姿があった。彼らは素直にそちらを向くと、連携をとりつつ攻撃を始める。
 そして候補生達の奮闘もあり、すべてのアンデッドを討伐した。


「さて、あとはあのデカブツだけだが……」
 残すは巨人のみ。再び一番良いポジションを求めて移動する家電製品配達員アルヴァとアルヤン。配達物が壊れるなんてことは絶対にあってはならない、そんな事があれば配達員失格だ、と飛んでくる矢や魔法、巨人のちぎれた腕から庇いつつの素早く移動する。
「アルヴァ先輩ー、あーそこっすーいいかんじっすー。んー……巻き込んでしまわないようにー、次はこれっすねー」
 うぃーんうぃーん。ぶるるるる。
 軽快な羽の回転音とを裏切って、容赦ない雷撃が巨人を襲う。
 煩わしそうに唸り声を上げ身を捩る巨体を見上げて、ヲルトの白皙に侮蔑の色が浮かぶ。
「聞こえるか?ㅤお前が殺してきたやつらの足音だよ。お前もそれに加わるんだ」
 ひとつ、ふたつ。増え続ける足音はいつしか亡者の更新となり、頭の中に響き渡る。
 不吉な音に暴れ弾き飛ばされるヲルトをルアナが見る。言葉にはせず仕草で構うな、とだけ伝えると立ち上がって巨人へと視線を戻す。
 ダメージを負ったが最大のパフォーマンスを発揮するならこれくらいが丁度良い。
 巨人の攻撃をしのぎ続けたルアナだが、アンデッドを素早く片付けたことによってまだ体力には余力がある。
 いくつか負った傷を癒やしたヒーラーへと「ありがとう」と声をかけると、ぱっと笑顔を向けた。
「わたしと一緒に巨人さんと戦ってほしいの! でも、絶対に無理はしないでね?」
「いくら相手が大きくても身動きができなければ怖くないわ――さぁ、巨人狩りを踊りましょう。アンコールはなくてよ?」
 小柄な少女の一体どこに力があるのだろう、と思うほどにルアナは堅牢だった。
 剣靴を操り剃刀や針のように鋭い一撃を刻むヴィリスも、無彩色を纏う姿ながらプリマの名に恥じること無く一撃一撃に華があった。
「まだまだ終わらないわよ」
ヴィリスの舞踏は止まらない。熱狂を齎す轟きのファランドールから視線を奪うような閃きのアントレへ。
「無駄に広い体積で領地汚染したツケは身体で払って貰うからな!」
 怒号を飛ばしながらルーキスは有翼の悪霊軍を顕現させる。26騎の一角ながら、彼らは主人の怒りを程を示すように忠実に敵を破壊する。
「はああっ!」
 ルアナが身の丈ほどもある霊樹の大剣を振るいレジストクラッシュで攻めかかる。
 黄金色の軌跡と戦う姿を見て、彼らに何か残せれば。
 この先色々な事を体験する彼らの冒険が実り多いものになりますように、とささやかな願いを込めて眼前の敵へと立ち向かう。
「はいそこっ! あんまり見とれてないで手を動かして攻撃っ!」
 戦神異界式装備第零壱号奏の赤い刀身をちらつかせた秋奈の叱咤激励を受けて発憤させる。
「くっ……浅いわね」
 矢を放った射手は悔しげに吐き捨てると、次の矢を弓に番えた。剣で切り、殴り、炎に焼かれ矢が刺さるも手応えは鈍い。巨人はまだ余力がありそうだ。
「それにしても次世代勇者ねぇ、こんな辺鄙な場所までご苦労様なことだよなぁ」
 ルナールは彼らを見てぽつりと呟いた。もふもふ達が暮らしてルーキスが資材管理をしている以外はなんて事無い土地だ。こんなにに人が居ることが珍しい。
「よーし私ちゃんも参戦だっ!」
 秋奈自身も攻撃の手を緩めない。出し惜しみはせず、赤いマフラーの裾を翻しリーガルブレイドで体力をそぎ落とす。
「さて、あとはあのデカブツだけだが……」
 アルヤンを移動を終えたアルヴァは魔導狙撃銃BH壱式の射程内に巨人を収めるべく移動する。ポイントに着くと濁った水を湛えたようなボディへと照準を定めた、引き金を引いた。
 弾丸は空気の壁を幾度も蹴り、曲がり、軌道を歪めながら跳弾の如く巨人に迫る。
 命中した弾丸は丁度人間で言う腹の辺りに大きな風穴を開けた。
 勇者候補生とイレギュラーズ、双方の猛攻に痺れを切らした巨人が癇癪を起こしたようになりふり構わず両手を振り回した。
「ぐっ!」
 近くに居た剣士を庇ったヲルトが負傷したのを見て、すぐさまヒーラーが癒やすために詠唱を始めた。
「オレのことはいい!ㅤさっさとこのでかいのを倒してくれ!」
 気迫に押され詠唱を止めたが、心配そうな表情を見て顔をしかめたヲルト。体力を半分以上失った今、彼はようやく『本調子』が出てきたところだ。
「次世代の勇者はオレだ。こんなとこで負けてたまるか」
 だが息つく間もなく巨人が自身の腕に手をかける。ぶちり、と腕を引きちぎると、近くに居た敵目掛けて叩き付けた。
「うわああああ無駄な環境破壊禁止!!」
 ほぼ悲鳴に近い声を上げたルーキスが、悪霊達をけしかける。
 もはやどちらが悪霊なのかも分からないほど、悪鬼の形相といっても差し支えないほどだった、と後に候補生達は述懐する。
「それにしても歩いたら土地が荒れるとか……本当にどんな成分で構成されてんだこれ」
 特に多くの体液をかぶった場所はしゅうしゅうと煙を上げているのをみて、ルナールはふと疑問に思った。興味はある、が触れようとは思わない。
「仰角、良い感じー」
 アルヤンは仰角になるように予め調整された角度でご満悦だ。アーリーデイズで強化した分に加え、全エネルギーをファンに集中させる。
「全力で放つっすよー」
 うぃーんうぃーん。どーん。
 このような気の抜けるような音がするが、侮るなかれ。破壊貫通力に特化した魔砲の火力はすさまじかった。
「半分吹き飛んだ……今がチャンスかも」
 ルアナの言葉に一斉に攻撃を仕掛ける勇者候補生とイレギュラーズ。
 炎が飛び、悪霊が引き裂く。剣閃と射撃が交錯し、殺戮のステップが刻まれる。
 氷の魔弾がこぼれ落ちる体を氷結させ腐敗の被害を少しでも減らすために、こちらも気を配る。
「これで決めるよ!」
 ルアナが霊樹の大剣を気合いと共に横に薙ぐ。
 胴が真っ二つに両断され、再生するかと思いきや切断面からはぼとぼとと体液が滴るだけ。
 巨人に再生能力は残っていない。アルヴァの魔弾である程度凍結させる。
「や……やったあああ!」
 音を立てて地面に倒れた体を見て、候補生の誰かが声を上げた。
 そして互いの無事と勇者との共闘で得た勝利を喜ぶのだった。


「うっ……頑張って育てて増やして貯めてきた資源がっ……! あんな巨人の所為でっ」
 今回の蹴撃によって負った損害額をチェックしたルーキスはがっくりと肩を落とし、ルナールに抱きついてめそめそと涙した。
「無駄に仕事が増えた」
 ルナールは落ち込む嫁の頭を撫でて「よしよし、たまにはさぼるのも悪くないさ」と優しく声をかける。
「後で俺が珈琲でも淹れるから元気出せ、な?」
「サボっていいかな? いいよね、よし家から出ない」
 苦笑するルナールの言葉に、ルーキスはほろ苦くて甘い怠惰な時間をむさぼることにした。
「アルヴァ先輩、今回は助かったっすー。またご縁があったら、是非お願いしたいっすー」
 くるくるとファンを回して、楽しげに語るアルヤン。なんとなく澱んだ(ような気がする)空気を飛ばすように体を向けた。
「拙者は家電製品配達員としての責務を果たしただけ。良きサービスが提供できたのなら何より」
 アルヴァは巨人が通った足跡に触れる。腐敗した植物を取り除き、死体も袋に詰めて撤去する。
「私も手伝うよ。腐っちゃったものとか、そのままにはできないからね……。元通りにはならなくても、せめて」
 ルアナもこれに加わり、後始末を進める。それを見た候補生のヒーラーが何も言わずに手伝い始め、他の候補生達もこれに続いた。
「ねえ、どうして勇者になりたいの?」
 ヴィリスの問いに、戦場の原状回復を手伝い始めたタンクを引き受ける青年は恥ずかしそうに口をもごもごさせた。
「――魔物に襲われそうになった時に、目の前で助けてくれた人が居たんだ」
「そうそう。食べ物を荒らされた時に対峙してくれたりとか」
「戦えれば出来ることが増えるし、出来るようになりたいって憧れたわね」
「実際に戦ってみてどうだった」
「やっぱり強い。でも、戦えることが分かって良かった」
「努力した甲斐があったねー!」
 からっと笑う格闘家の少女の笑顔がまぶしい。
「私、勇者って誰かのために動ける人だと思うのよね」
「私たちもそう思います」
 彼らの言葉はきっと真実だ。先ほどの会話を思い出して、ヴィリスは柔らかに笑った。
「今回の選挙に関しては偉い人が考えたんでしょうし興味もないわ
でも私の知ってる戯曲の勇者はみんなそうだった。誰かのために動き続けて結果的に勇者って呼ばれてるだけなのよね」
 思い出される物語と、憧れた勇者の背中。各々が思うまぶしい存在を思い浮かべて知らず目を眇める。
「でも憧れるっていうのはいいことだと思うわ。あなた達のなりたい勇者になれるよう頑張りなさい」
「はい!」
 元気の良い返事とともに候補生達は作業に戻る。
 彼らが勇者と呼ばれるようになるかは彼らの行い次第、だがきっと大丈夫だろう。
 その思いを失わなずに、前に進んでいけるだろう。 

成否

成功

MVP

ヴィリス(p3p009671)
黒靴のバレリーヌ

状態異常

なし

あとがき

お疲れ様でした!
勇者と共闘できて候補生達は嬉しかったようです。今回の共闘で得た経験を元に、彼らは成長していくことでしょう。
MVPはヴィリスさんへ。貴女との対話から候補生達は未来をより明確に見ることが出来ました。
初心を思い出した彼らは、この先忘れることは無いでしょう。

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