シナリオ詳細
<フィンブルの春>焔渦巻く森
オープニング
●
幻想レガド・イルシオン。勇者王アイオンが建国した場所であり、踏破を彼の悲願とした果ての迷宮があり、そして空中神殿に召喚されし特異運命座標たちのホーム。ギルド・ローレットが存在する地でもあった。
その幻想が今、策謀の中にある。春の初めに行われた大規模な奴隷市、王権象徴のアイテム――レガリアの盗難。そして魔物の発生と被害。
腐敗した幻想貴族たちがイレギュラーズとの関わりにより、徐々に歪みを正しているとしても。有事の際真っ先に被害を受けるのが一般人であることは変わらない。
しかし――これも変化のひとつなのだろう。放蕩王と呼ばれていた幻想王ファルデルマンは奴隷に心を痛め、魔物を討伐するためにと『勇者選挙(ブレイブメダリオン・ランキング)』を開始した。
それは突飛な思いつきであったが、現代の勇者を決めるために功績をあげた者へメダルを授けるというそれは、幻想国へにわかの勇者ブームを作り出したのである。
最初はローレットの面々のみであった。そこへ勇者に憧れる者、勇者を志す者、我こそは勇者であると名乗りを上げる者……様々な一般冒険者たちも参入し始めたのだ。
「……それで、有力貴族のバックアップがあるならば良しとしたのだったか」
「はい。実際、この選挙のためにそこかしこで問題解決の兆しが見えているみたいですよ」
『焔の因子』フレイムタン(p3n000068)に頷いた『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は情報誌を取り出す。どうやらつい最近のものらしい。そこにはイレギュラーズを含めた勇者候補生たちが、魔物の討伐や奴隷商の摘発と言った功績を挙げている旨が載せられていた。
「まだ根本的な……背後に誰がいるとか、そういうことはわかりません。でも、町の皆さんが襲われたりせずに済むのは良いことなのです!」
そう、ローレットはどことなく怪しいにおいを感じている。
突如出没した魔物たちであるが、幻想各所の領地へ侵入して暴れまわっていた。これまでの統計的に、その襲われた領地は圧倒的にイレギュラーズの管轄が多いのだそうだ。
目的は不明だが、イレギュラーズたちはまず目の前のことに専念しなくてはならない。そう、勇者選挙である。
「これは、他の勇者候補生が敗れた戦いなのです……」
すっ、とテーブルへ羊皮紙を広げるユリーカ。魔物討伐の類であるようだが、対象は――。
「怪王種か」
フレイムタンがそれを一瞥して零す。怪王種(アロンゲノム)とは、最近出没するようになったモンスターの総称だ。
イレギュラーズがパンドラを収集するのと対に、滅びのアークが収集されていることは知っての通りだろう。滅びのアークが集まり始めたことにより、混沌世界にいくつかの変化が生じ始めている。そのうちのひとつがアロンゲノムである。
動物の突然変異によって凶暴化、知能や武力などが高まる現象であるが、滅びのアークが関係していることにより『動物の反転現象』とも呼ばれるものだ。
「炎を操る巨人で、なんと、森林火災も発生してるのです!」
本来ならば火災発生地点を越えた『イレギュラーズが安全な場所』で戦うべきなのだが、森を越えたなら町や街道――つまり無力な民たちのいる場が火に包まれかねない。故に、すでに火の放たれた森の中で仕留めてしまいたいということであった。
「巨人が通ったところは木々が薙ぎ倒されてて、逆に安全なのです。そういうところをうまく使って戦って欲しいのです!」
●
焦げた臭いがあたりに充満している。煙もまた辺りを満たし、ちらちらと赤の光源がちらついていた。
ズズン、と腹に響く音が森を震わせる。
炎に、その存在に。動物たちが森から一斉に逃げ出している。もうこの森はおしまいだと、ここにいれば死んでしまうのだと本能が察知していて。命を重んじる彼らは住処を離れ、どことも知れぬ場所への移住を目指した。
ズズン。
ズズ……ン。
響く、響く。それは地震などではない。地を震わせるそれは、足跡だ。
鳥が一斉に空へ向かって羽ばたく。しかし横殴りに飛んできた何かが群れへ直撃し、勢い付いたまま地表へ叩きつけられ絶命した。亡骸が火でパチパチと音を立てながら燃え崩れる。
それにとっては前を何かが通り過ぎようとして、羽虫を除けるように腕を振っただけのこと。死んでしまうのは彼らが弱いから。
「……イ」
呟く。何を呟いたかなど理解していないのかもしれない。
「……ク、イ」
見上げるばかりのそれ――巨人は、ただ同じ言葉を繰り返していた。
にくい、と。
- <フィンブルの春>焔渦巻く森Lv:25以上完了
- GM名愁
- 種別通常
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2021年04月29日 22時45分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●
ぱちぱちと、音が鳴る。
はらはらと、火の粉が舞う。
昨日まで緑に包まれ、穏やかに澄んだ青空を見上げることができた、その森は。今や一面の赤とくすんだ煙に包まれていた。
至る場所が火に包まれていたが、明らかに何者かの意志が働いた大きな通り道――木々のなぎ倒された箇所は比較的開けている。イレギュラーズたちはそこを踏みしめ、この事態の元凶たる怪王種のもとへ向かっていた。
(やっぱり、そこまで広くねぇな)
その横幅を見ながらやはり、と『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)は思う。これがだいたい巨人の横幅と同じくらいか。自分たちからすれば決して狭くはないが、それも『ただ通るなら』の話。戦うとなればまた話は別である。
うっかり火の森へ入らぬようにしなければ。そう視線を向けた『森ガール』クルル・クラッセン(p3p009235)は、まだ辛うじて生きている植物を視界に認めると手をかざした。
「皆、一緒にあいつと戦おう。燃やされるだけじゃ終われないでしょ!」
生き残りの欠片。さわさわと揺れながら伝わる意志。
ただそこに在り、伸び、次代を残し、朽ちていく。その在り様から戦いは好まねど、植物たちとしても好まないからという理由だけで片付けられない事態だ。
(守りたい……うん。そうだね、守ろう!)
森を、それよりも外の世界を――世界を。穏やかであれと願う植物たちの心にクルルは頷き、その姿を矢へ変じさせる。
「刻一刻を争う、な」
自らの髪を操り、道へ倒れてきていた大木を乗り越えた『金色のいとし子』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)は仲間たちが越えるのを手伝いながらそう呟く。何処を見ても赤、赤、赤。多量の熱気に炙られるようだ。敵の情報も不足している以上、この場に長居して不測の事態を起こしたくはない。
「全くもって……些か、火力が強すぎるのう」
エクスマリアの言葉を拾い『殿』一条 夢心地(p3p008344)が口元をへの字に歪める。そして上空へ飛ぶと、そこから周囲へ視線をやった。
イレギュラーズが進む道の両脇から広がったらしい火は、既に随分な範囲まで燃え広がっている。例えイレギュラーズたちが戦闘を放棄し、森林火災を止めるために全力を尽くそうとも――限度があるだろうと思う程に。
しかし怪王種が作り上げた道はと言えば、時折木が倒れてくる程度で火に囲まれるようなことはなさそうだ。これまた随分豪快な力で進んでいるらしい。
風向きを確認した夢心地は仲間たちの元へ降り、情報を共有する。これより進めばほどなくしてかの敵と遭遇するだろう。
「それじゃあ――行くっスよ!」
葵の声と共に一同は巨人へ向かって道を駆けだす。そうして最初に見えたのは燃える木々の隙間からでも覗く、巨大な後頭部。
(何だアレ……でけぇ上に燃えてるとか)
その表皮を揺らめくのはオーラなどではなく、本物の炎。あれらが森の木々を舐め伝って広がっているのだと葵は眉根を寄せる。
動く災厄、しかしあれを止めぬわけにはいかない。
「ここはまず小手調べ、っと!」
葵の放ったシルバーのサッカーボールが軌跡を描きながら、木々で跳ね返りつつ巨人フランメリーゼへ向かっていく。この図体と不意打ちが相まって命中したそこへ、クルルはすかさず必中の魔光を放つ。数度の鋭い瞬きにフランメリーゼは目――炎に包まれていて若干見えづらいが――のような部分を瞬かせた。
「Guooooooo!!」
叫び声。その音に辺り一帯がびりびりと震える。どこかで何か、恐らく木々の倒れる音が響き渡った。
「もしかして怒ってる? 良い事ないよぉ?」
へらりと笑いながら落ち着こうぜと声をかける『八百屋の息子』コラバポス 夏子(p3p000808)と『英雄的振る舞い』オウェード=ランドマスター(p3p009184)が前へ回り込みながらフランメリーゼを2人がかりで通せんぼする。炎に包まれた巨人と、その炎によって燃えていく森。2人とも火炎に強いとはいえ、その熱気に汗が垂れる。
「まだ春だっていうのにね~」
「ぬう、しかし負けるわけにはいかん! よく聞けッ! ワシがお前さんの憎む最後の相手じゃ!」
「……ロ、ス。コロ、ジテヤル……!!」
まるでここだけラサの地のような。そんな錯覚を覚えながら挑発し続ける2人に、とうとう巨人の視線が向く。とはいえその顔はかなり上空に在るのだから、2人にとっては見下ろされる形だ。
(もう、存在が不幸だよね。森は焼け、道は荒れ……幸せって何さ?)
隙間なく炎に包まれたかの敵に夏子は瞳を眇める。果たして誰が、どんな目的で作り出した存在なのかはわからないが。きっと幸せなんてひとかけらも考えなかったのだろう。
「深緑ならば生きる違反じゃな」
汗をぬぐうオウェードが武器を構える。幻想で良かったなどとは言わないが、かの地であればどれほど甚大な被害が出た事か。
2人を見下ろした巨人の後頭部付近で、稲妻が突如召喚され空間をかき乱す。操る『ファイアフォックス』胡桃・ツァンフオ(p3p008299)はすぐさま「次なのよ」と同じ術を行使する。蒼い炎を纏う精霊種にとって、そしてちょっとやそっとでどうにかなることのない元気をつけてきた彼女にとってこのフィールドの様相は軽く思えるだろう。
「でも、わたしだけじゃ意味ないの」
1人で勝とうなど無謀だ。どれだけ炎に耐えられようともこの巨人相手が1人で勤まる訳がない。故に――。
「マリアたちが、いる」
エクスマリアが光の翼を大きく広げ、味方を癒し、巨人を刻む。その後方から『天地凍星』小金井・正純(p3p008000)は弓に矢を番えた。
「フレイムタンさん、前を頼みます」
「承知した」
『焔の因子』フレイムタン(p3n000068)の駆けていく背から、視線を巨人へ。フランメリーゼの作った道にいてもそれなりの熱風だ、盾として前に立った者たちの為にも早急に仕留めなければ。
「まずは――足を」
尾を引く星が巨人の足へ真っ直ぐに飛んでいく。命中直前に巨人が動いたことで少しばかり狙った箇所とは異なるが、まだ誤差のうちだ。
微かに傷のついた場所へ、夢心地の放つ黒顎魔王が追い討ちをかける。膝をつかせるには――まだ、早いか。燃える炎が夢心地の肌を炙るように揺らめく。
(多少の被弾は覚悟の上じゃ)
ここから引くつもりなどあるものかと夢心地は刀を構える。民を守るため、身体を張ることこそ殿たる者の責務なれば!
イレギュラーズによる足への集中攻撃に、さしもの巨人も気に障ったらしい。フランメリーゼの死角より、森の力を矢として撃ち放ったクルルははっと視線を上げる。
「皆、来るよ!」
直後。表皮の炎が膨れ上がり、イレギュラーズたちは後方へと押し出された。多少散会していた故に全員が被弾とまではいかないが――。
「正面から堂々戦ってる俺達を無視すんじゃねえよ!」
再びを阻止すべく、夏子が注意を自身へ逸らしながら動きを阻害する。同じように敵の前へ立ちはだかったオウェードは、視界の隅に倒れそうな樹木を認めた。
「ふんッ!」
片手斧を一閃させ、倒れてきたタイミングで斬りはらったオウェード。味方の方へ向かいそうだったそれは届くことなく地面へ落ちた。
(まだまだ、と言ったところか)
エクスマリアは聖体頌歌で仲間たちの傷を癒している。膝をつくことのない巨人は未だ余裕があるということだろう。
「だが……負けるわけにはいくまい!!」
フランメリーゼの攻撃を受け止めたオウェード、その瞳の奥で可能性が燃え上がる。炎の巨人に負けることのない、苛烈なそれが敵の攻撃を跳ね返した。
「こちらとてまだやれるぞ! かかってくるがいい!」
イモータリティで自身を回復するオウェードに、ようやくエクスマリアの回復も届く。
「マリアは、決して燃え尽きぬ癒し手。他の誰も、倒れさせない」
彼女に回復された仲間たちもまた、足への集中攻撃を再開している。葵の放つデッドエンドワンが巨人のアキレス腱付近を掠め、追い詰めるように正純が矢をつがえる。
「貴方も……『彼女』のように全てを憎み、燃やしつくそうというのですね」
豊穣の地で反転した仲間。止められなかった無力感は未だに正純の中にある。
故に――2度目は、ない。
「お前だけは、確実に止めます!!」
流した血の分だけ、与えられた痛みの分だけ増した星の輝きを乗せて矢が命中する。次の瞬間、大きな地響きが一同を襲った。攻撃、否、これは。
「畳み込むのじゃ!!」
夢心地が先陣をきって、膝をついた巨人へ攻撃を仕掛ける。巨人が唸り声を上げるが、作戦立てて仕掛けたイレギュラーズに対抗しうるような『策』など持ち合わせておるまい。そこまでの知能があるならばイレギュラーズとの会話も叶っただろう。
しかし。フランメリーゼが成すことと言えば、ただ森を前進しながら焼き尽くすばかり。たとえ勇者に興味がない胡桃でさえも、こればかりは看過できない。
(勇者候補生とどうこうみたいなのはないけれど、もう全滅してるというのも……)
気分が良い、とは言えないだろう。胡桃は小さく首を振り、夏子たちが巨人に向かせている方向を考慮しながら立ち位置を変えていく。繰り出すは千変万化の蒼い炎。一瞬にして無数に生み出されるそれが巨人を的確に焼いていく。フレイムタンが追い打ちをかけるように攻撃を仕掛けた。
胡桃の炎よりはるか上へと飛んだ複数の矢は、巨人の頭頂へ。風の唸りがまるでマンドレイクの絶叫の如く不協和音を響かせる中、それらは真っすぐに巨人へと突き刺さる。一瞬にしてそれらは燃えてしまうけれど、クルルはすぐさま次の矢を番えた。
(皆……力を、貸して!)
放つ矢はかつて森の一部だったモノ。いずれ灰になり消えゆく定めを持つモノ。この森自体がもう燃え尽きてそうなる定めであるかもしれない。
「けれど……だからこそ。あいつを止めなきゃ!」
「おう! 何としてでも! 絶対ぇ止めるっスよ!」
クルルに続いて葵が無回転シュートを打ち出す。貫かんとする勢いでボールが命中すると同時、葵は「今っス!」と声を上げた。
「ええ……!」
後方より矢を番えていた正純がフランメリーゼへ力強く放つ。より正確にとは考えない。確実に命中させること。確実にダメージを与える事。相手の体力を着実に削っていかなければ。
「ぬううッ」
「何をどうすりゃこんな事になるかなぁ?」
ひたすらにイモータリティでしのぐオウェード。それより程よく距離の空いた場所で夏子はグロリア巣を横へと薙ぐ。デカい発砲音と強い光が放たれると同時、夏子の腕元を火が軽く舐めた。
「おおっと、危ない危ない」
夏子に火炎は効かないのだが、それでもこれは近づいた者へその手を伸ばすらしい。余計なダメージを受ける暇なんてないのだ。
「まだ、いける。皆、己の為すべきことを、しよう」
エクスマリアの回復が2人を癒し、あともう一押しと鼓舞する。消耗は激しいが、それは巨人とて同じだ。どぉん、と今しがた響いたのは夢心地の黒顎魔王か。
巨人も憤怒の表情を浮かべて腕を薙ぎ、炎を操るがイレギュラーズたちが必死に食らいついていく。かの纏う赤い炎へ胡桃は蒼い炎をぶつけ、その身を覆うように次々と炎を生み出していく。
「わたしもまた、炎から生まれたもの。そなたの炎、憎しみ全て――燃やし尽くすの」
燃やされたくないというように巨人が身じろぐ。蒼い炎を払うようにして立ち上がろうとした巨人は、しかし足の負傷によって再び膝をついた。
「悪いね。何があったとしても、アンタを通す理由にはならないんでなぁ!」
「そうじゃ! お前さんのやる大規模な火遊びは飽きたワイッ!」
夏子とオウェードが懸命にフランメリーゼを推しとどめる。その時、オウェードの持っていたハイペリオンの羽根が淡く光ったような気がした。
(そこか……!?)
これが羽根の力による導きなのかは、わからないが。オウェードは渾身の力でバックハンドブロウを巨人に叩き込み、叫ぶ。
「うなじを狙うんじゃあッ!」
遥か上空、通常であれば手の届かない場所――それは今や、フランメリーゼがのけぞった事で地上にほど近い。そこへ視線をくれて葵は二ッと笑みを浮かべる。
「了解、任せてくれ」
そう告げた彼の姿が唐突にぶれた。次の瞬間巨人の近くまで迫った葵は、勢いに乗ったまま全力で深紅のガントレットを叩きつける。
オウェードの攻撃でのけぞらされ、葵の攻撃で軽く吹っ飛んだ巨人の身体はこれまでで最も大きな地響きと共に、森の中へと転がったのだった。
「何か言えるかい?」
燃える森の中を抜け、動かなくなった巨人へ声をかける夏子。しかし巨人の身体は最早――自身の炎で燃えていた。
(こりゃダメだ)
小さく肩を竦めた夏子は巨人の遺体を見上げる。別に憎くて止めたわけではないから、厳密には敵じゃなかったのだが。それでも巨人から見たら夏子たちは邪魔者、敵対者だったのかもしれない。
そんな者から思われるのは、遺憾かもしれないが。
「せめて、心安らかに眠ってくれよ」
一言だけ声をかけ、踵を返す。一方のイレギュラーズたちは森林火災をどうすべきかと視線を巡らせていた。
「完全にはどうしようもねぇんだよな……」
「それでも、多少の消火活動はできるはずです」
悔し気な表情を浮かべる葵に正純はそう告げ、フレイムタンへ手伝ってもらえないかと声をかける。フレイムタンも焔の因子を持つと言うだけであり、ここまで広がった火を操るようなことはできない。それでも人並みに消火活動は手伝えるだろうと首肯した。
「ワシも手伝おう。しかし……」
オウェードは視線を森へ巡らせる。燃え尽きてしまったならば、再生には暫しの時間が必要となるだろう。すぐにどうこうという話ではない。何年、何十年――幻想種たちの寿命と同じくらいかかるかもしれない。
(しかし、だ)
夢心地はオウェードと同じように心の中で切り出して、それでもと思う。
炎の本質は喪失ではなく、創造。奪われ、喪うことで完結するものではない。
(そこから新たに芽吹くものもある。それゆえの――炎よ)
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
お疲れさまでした、イレギュラーズ。
この森ひとつで被害が済んだことは幸か、不幸か。何はともあれ、ここもいつかは元のように緑が溢れるようになるでしょう。
それでは、またのご縁をお待ちしております。
GMコメント
●ブレイブメダリオン
このシナリオ成功時参加者全員にブレイブメダリオンが配られます。
ゴールド、ミスリル、アダマンタイトとメダルごとにランクがあり、
それぞれゴールド=1p、ミスリル=2p、アダマンタイト=5pとして扱われブレイブメダリオンランキングにて総ポイント数が掲示されます。
このメダルはPC間で譲渡可能です。
●成功条件
怪王種の撃破
●情報精度
このシナリオの情報精度はCです。不測の事態に気をつけてください。
●『焔の巨人』フランメリーぜ
全長3m以上ある巨人モンスター。怪王種です。ウォーカーで大体3mくらいある者が確認されているため、それよりは大きいと推測できるのですが、実際どれくらいあるかよくわかりません。ぱっと見、10mはないと思うのですが……。
その体の表面は燃えており、接触すると火炎系BSが付与されることがあります。能力面は定かでありませんが、少なくとも図体に見合った耐久力はあるでしょう。
また、攻撃は常に範囲攻撃となりますのでお気をつけください。
2人でブロックしないと止められませんが、図体のデカさから範囲攻撃の多段ヒットが狙えます。
●フィールド
幻想のとある森林地帯。巨人が通って行った(薙ぎ倒して行った)痕が色濃く残っています。森林火災が発生しており、これは燃え尽きるまでどうしようもありません。
巨人の通り道は土が露出し、燃えるものがないため多少安全です。他の場所から戦う場合はそれ相当のリスクを背負うことになります。
●友軍
『焔の因子』フレイムタン(p3n000068)
精霊種の青年。至近〜近接ファイター。そこそこ戦えます。
炎という事象と結びつき生まれた彼でありますが、この状況には何とも言い難い思いであるようです。
●ご挨拶
愁と申します。
火事はあっという間に広がります。気をつけて戦いましょう!
それではよろしくお願いいたします。
Tweet