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シナリオ詳細

<フィンブルの春>森の守人~神鶏コーケリュウス討伐戦

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●神化する鶏

 ――許せるものか、我が物顔で地上を支配する人類共を。

 一匹の鶏がいた。
 農場で大切に育てられていた鶏。
 だが、農場主の感情は人の立場に立ったものであることを、その鶏は知っていた。
 家畜である自身は、決められた時間にエサを与えられ、卵を産み続け、そして最後には肉とされ喰われる。
 そのような運命を、その鶏はハッキリと理解していた。
 そしてそれを許容し諦観する心を、その鶏は持っていなかった。

 鶏は、自身の持てる力をすべて使い、農場を逃げ出した。
 農場の外の世界は危険に満ちていたが、知恵のある鶏はあらゆる危険を越えて見せた。
 そして世界を見て回り――家畜とされるべきは人類であると確信した。

 人は他種類のみならず、同族をも奴隷(かちく)としていた。
 恐るべき蛮行。忌むべき悪行。
 こんな人類に地上を任せていては、いずれ世界が滅びるのも時間の問題だと言えた。

 知恵のある鶏は、いつしか自身の内側から響く声に従い行動を開始した。
 気がつけば、身体は巨大化し、羽は光輝を湛え、鶏冠は煉獄の如き炎を纏った。
 神化――鶏は自身が神になったのだと思い込んだ。

 そうして知恵のある鶏は神鶏コーケリュウスを名乗り、世界を支配する人類への反撃を始めた。
 生まれ育った農場を破壊し、多くの鶏を眷属へと変え、そして全ての鶏たちを解放するために動き出したのだった。

●農場の危機
 『月光ミセリコルデ』ディアナ・リゼ・セレスティア(p3p007163)は自身の領地で、書類仕事に精をだしていた。
 執政官から領地に関わる陳情を受けながら、サインをしていく。
「元の世界でも王室の仕事は少々ありましたが、今と比べれば容易いものでしたね」
 目の前に積まれた書類に苦笑しつつ、一旦筆をおいて大きく伸びをする。
 いまこの領地のある幻想は、大きな出来事が流動的に起こっていた。
 奴隷市、レガリアの盗難から始まり、多数のモンスターがイレギュラーズの領地を多く襲っていると聞く。
 さらにそうした中で王であるフォルデルマンが始めた勇者総選挙が、イレギュラーズの中で話題になっていることを知っていた。
「私にはまだ縁のないことですけど……」
 功労者に配布されるというブレイブメダリオン。どうせだったら記念に一枚くらいもらってみたい気もする。
 だからと言って、自分の領地にモンスターが来るのはあまり好ましくないことだ。平和なのが一番良いと、そう思う。
「ディアナ様、そういえばそのブレイブメダリオン・ランキングですが――」
 執政官が耳にした話を伝えてくる。
 なんでも、イレギュラーズではない者達にも勇者ブームというのが来ているらしく、勇者に憧れた者や、勇者を志す者、新世代の勇者と主張する者達が現れだしたらしい。
 これをフォルデルマンが歓迎し、有力貴族が擁立したならば、ランキングへの参加を認めるというのだ。
「そうなると、メダルの価値がまた高まりそうですね。勇者を目指す人達は大変かもしれませんね」
 メダリオン争奪戦ともなると、イレギュラーズの中でもメダルの取引が活発になるかもしれなかった。
「やっぱり一枚くらいは欲しいような……うーんでも」
 と、悩んでいると執務室の扉がノックされた。
 案内係が客人を連れてきたようだ。客人はハーモニアの三人組だった。
「はじめまして! ディアナ……さんでいいかな? ボク達勇者を目指してるターコイズってパーティーです!」
 ボクと言うリーダーと思われるボブカットの少女が自己紹介をする。
 深緑の村を飛び出して冒険者になったリーダーのエリス。
 エリスの幼馴染みで精霊魔術を得意とする、ミュナ。
 幻想で二人と仕事をして意気投合した戦士のカーマイン。
 全員がハーモニアという珍しいパーティーだが、彼女達は勇者ブームの折り、運良く有力貴族に擁立してもらうことができた。
「といっても、ボク達はイレギュラーズのみなさんに憧れてて、勝てるとは思ってなくて、どっちかというと一緒に仕事できればなってつもりで」
 そう苦笑するエリス。
 ディアナはなるほどと、微笑む。イレギュラーズはいまやこの世界では英雄視されると言われていて――自分では実感なかったが――、こう言う目で見られているのだなと感じた。
「それで、よかったら一緒に依頼ができないかなって――」
「た、大変です!」
 話を遮るように、メイドが飛び込んできた。
「どうしました?」
「農場の方角から、巨大な魔物と……そ、その巨大な鶏の群れが迫ってきていて……!」
 魔物と聞いて、イレギュラーズの領地を襲っているという話が頭を過ぎった。
「わかりました、とにかく向かいます。
 エリスさん、あの出会ったばかりで不躾ですが、よかったら一緒に――」
「任せて下さい! ボク達もお手伝いします!」
「ありがとう。では、向かいましょう!」
 ディアナ達は準備を整え、農場へと向かう。
 その先に、炎の鶏冠を持つ神鶏コーケリュウスが迫っていることはまだわかっていなかった。

GMコメント

 こんにちは。澤見夜行(さわみ・やこう)です。
 ディアナさんの領地内に神鶏コーケリュウスが近づいています。
 領地を守る為、これを迎撃しましょう。

●ブレイブメダリオンについて
 このシナリオ成功時参加者全員にブレイブメダリオンが配られます。
 ゴールド、ミスリル、アダマンタイトとメダルごとにランクがあり、
 それぞれゴールド=1p、ミスリル=2p、アダマンタイト=5pとして扱われブレイブメダリオンランキングにて総ポイント数が掲示されます。
 このメダルはPC間で譲渡可能です。
 
●依頼達成条件
 神鶏コーケリュウスの撃破

●情報確度
 このシナリオの情報精度はBです。
 情報は正確ですが、情報外の出来事も発生します。

●神鶏コーケリュウスについて
 光輝の羽に燃えさかる鶏冠をもった元知恵のある鶏。
 その正体は、怪王種となった古代獣。
 飛ぶことはできないが、その巨体に似合わぬ行動速度であらゆる物を破壊しながら移動します。
 常に、光輝による反撃ダメージを持ち合わせ、嘴による突っつきは連続ダメージとなります。
 また物理的ダメージをも引き起こす鳴き声は、疫病・封殺・Mアタックの能力を持ち厄介でしょう。

●巨大化鶏たちについて
 コーケリュウスの眷属となって魔物かした鶏の群れ。
 数は二十羽。
 能力的にはそう強くないですが、コーケリュウスとの連携が厄介です。
 またEXAと回避が高く、ヒットアンドアウェイを得意とします。
 進んで倒す必要はありませんが、倒すと有利に進めるかもしれません。

●NPC
 パーティー『ターコイズ』の三名が戦闘に参加します。
 主に巨大化鶏たちを相手してくれるようです。
 フォローの必要はありませんが、連携するとより効率的に戦えるでしょう。
 イレギュラーズの指示には積極的に従います。

●戦闘地域
 バルツァーレク領の森に所在するディアナ領の農場近傍が戦場となります。
 敵は農場を狙って破壊しますが、同様に人間も優先破壊目標にしているようです。
 障害物はあるものの、自由な戦闘が可能でしょう。
 
 そのほか、有用そうなスキルやアイテムには色々なボーナスがつきます。

 皆様の素晴らしいプレイングをお待ちしています。
 宜しくお願いいたします。

  • <フィンブルの春>森の守人~神鶏コーケリュウス討伐戦完了
  • GM名澤見夜行
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年04月28日 22時25分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
天才になれなかった女
鬼桜 雪之丞(p3p002312)
白秘夜叉
ルチア・アフラニア(p3p006865)
高貴な責務
ソア(p3p007025)
雷虎
ディアナ・リゼ・セレスティア(p3p007163)
月光ミセリコルデ
ネーヴェ(p3p007199)
星に想いを
フリークライ(p3p008595)
水月花の墓守
笹木 花丸(p3p008689)
なじみさんの友達

リプレイ

●森に響く鳴き声
 バルツァーレク領の森に所在するディアナ・リゼ・セレスティア領。
 その東の端に並ぶ農場、そしてその周囲を囲む森林がざわついていた。
 静謐で、穏やかな森が揺れていたのだ。
 農業従事者達が何か地響きのような音を耳にする。そして、よく聞き慣れた――しかし、どこか畏怖するような気持ちを覚える鳴き声を聞く。

 ――コケーッコッコッコッコケーッ!!

 誰もが耳にしたことのある鶏の鳴き声。
 しかし、地響きを伴ったそれは森を揺らし、ディアナ領に住む人々を威圧、恐怖させる。
「皆さん、心配しないでください。そして、慌てず落ち着いて避難を開始して下さい。
 領地に迫る危機は、領主である私、ディアナ・リゼ・セレスティアが払って見せます!」
 混乱に落ちようとする領民達に、高らかに宣言した『月光ミセリコルデ』ディアナ・リゼ・セレスティア(p3p007163)。
 仲間達と共に声を掛けながら報告のあった農場方面へと駆けていく。
 ディアナ内心、まさか自分の領地が襲撃を受けるとは思っていなかった。故に後手に回ってしまったことは否めないが、まだ被害がでたという報告は受けていない。
 で、あれば。自身が治めるこの領地を、守り抜くのだと覚悟を決める。
「ディアナさん、あれを見て下さい!」
 指さすのは勇者候補としてこの地を訪れていたターコイズというパーティーのエリスというハーモニアだ。
 エリスに促されて農場の先を見れば、森の木々の隙間を縫うように巨大な影達が近づいてくるのがわかる。
「うわ……にわとりだ! でっかい鶏が近づいてきてるよっ!」
 目の前の巨大な鶏の群れをみて、『人為遂行』笹木 花丸(p3p008689)が思わず声を上げた。
 巨大な鶏達が森の中を闊歩する光景は異様だ。そしてその異様な鶏たちの中心に、特異的な――神聖さえ感じられる鶏がいた。
 燃えさかる鶏冠に、光輝の羽をもつ個体。強い意思と憎悪を抱いた丸い瞳がイレギュラーズ達を射貫く。
 不意に、その場にいる全員の頭の中に声が響いた。

 ――愚かなる人、それと共に往く者達よ、我の邪魔をしようというのか。

 声の主は神鶏コーケリュウスと名乗る。
 それが巨大化した鶏たちの中心にいる、特異な鶏の名前だというのは察しが付いた。
 コーケリュウスは問答無用とばかりに会話に乗らず、一方的な宣告を告げる。
 即ち、家畜の解放と人(及び与する物)の殲滅だ。
「革命だーってノリなのかもだけど、花丸ちゃん達もタダでやられてあげる訳にはいかないもんねっ!」
「ええ、そうですね。……たくさんの鶏、どれも、強そうですね」
 頭を揺らし歩きながらイレギュラーズとの間合いを図る鶏達を、思わずぽかんと小さく口を開けて見る『うさぎのながみみ』ネーヴェ(p3p007199)が、ふるふるとふわふわな兎耳を揺らして気を取り直す。
 小さな普通の鶏一匹ですらその鳴き声は五月蠅いものだ。巨大化し地鳴りさえ起こす鶏達の鳴き声はネーヴェにとっては騒音以外のなにものでも無いだろう。
 耳を塞ぎたくなる気持ちを抑えながら、どう戦っていくか考えを巡らせた。
「はわー、おっきいねえ! 強そうなのもそうだけど、食べ応えもありそうな鶏!」
 天真爛漫な『虎風迅雷』ソア(p3p007025)の言葉に鶏達がコケーっと声を上げる。
 所詮この世は弱肉強食。強いものが弱いものを喰らい生存していく世界なのだ。此度の戦いはその縮図であると、鶏達は理解していた。
 そして虎の精霊たるソアもまた本能で理解しているのだ。
 この戦いに負ければ自分達に待っているのは家畜化され喰われる未来だと言うこと。
 だからこそ、ソアは絶対に負けられないのだと、金色の瞳を輝かせて”獲物”である鶏達に向けて構えた。
 ソアと同様に食物連鎖について理解するものもいる。『水月花の墓守』フリークライ(p3p008595)だ。
「食ベラレタクナイ 当然。卵 取ラレタクナイ 理解可能」
 一歩、鶏達に迫りながらフリークライは言う。
 その考えから人間を家畜にするのならば、それは立場が入れ替わっただけなのだと。
 そして鶏達もまた、昆虫や植物を食べ生きているのだということを。
「ココニ 善悪無シ――故ニ 敢エテ コウ言オウ」
 カカッテコイ、と。
 フリークライはレガシーゼロであり意思を持つが、肉の身体をもたない。故に食物連鎖外の完全生命だ。
 コアより生み出される意識は、鶏達の怒りを理解することはできる。が、食物連鎖の輪に寄らない生体はそれを実感することはできない。
 それは少し寂しいことなのかもしれない――そう思ったとき、頭の上から声が聞こえた。
「ふん! 別にアンタが実感する必要なんてないわよ! ネガティヴな感情なんて気持ちの良いものじゃないんだから! ゴミよ、ゴミ!」
 レンゲ・ナハルピュリアと名乗る美しい花の口悪い言葉を、フリークライが理解するまでには少し時間を要したが、励まされた気がすると素直に礼を返した。
「ン。アリガトウ」
「べ、別にアンタが悪感情に染まって反転でもされたら、この特等席がなくなって困るだけよ! それだけなんだから!」
 二人(?)の共生関係は、生存を争う現況に対して、理想とも言えるかもしれない。
「まあ、でもわかるわよ。私だって、同じ状況なら生きようとするでしょうから」
 手にした魔書に『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)が魔力を注ぐ。
 生み出されるは紅い依り代の剣・果薙。
 生態ピラミッドの頂点に座するヒトをモチーフにした紋章をあしらった戦旗が、魔力の風に煽られはためいた。
「けどね――そういうのは、もっと大局観を持つべきよ」
 ただ怒りに任せて反旗を掲げ挑んでも、そう簡単に現状を変えることは難しいだろう。
 知性を持ったのならば、もっと思慮深く、感情をコントロールするべきなのだ。
「ええ、まさに。
 その様な知恵を身につけたのならば、浅慮なき行動をするべきでした。もし、それによって益をもたらすならば、神獣と呼ばれていたかもしれませんね」
 知恵など、無い方が幸せだったのかもしれないと、『玲瓏の壁』鬼桜 雪之丞(p3p002312)は思う。
 あるいは、掴んだ自由のまま、好きに生きていれば、と。
 ヒトへの怒りは正しき怒りだったのかもしれない。だが、力による反抗は同じように力によって制圧されるのが運命だ。
「――詮無きことですが、自由の結果が、此れならば、拙もまた。己の自由のために」
 鶏達がそう望まないように、ヒトも、誰もが支配を望まないのだ。
 『「Concordia」船長』ルチア・アフラニア(p3p006865)もまた、鶏達の思いに理解を示す。
 卵を奪われることとは少し違うが――喪失の悲しみについては知ってるつもりだ。それに対する怒りも納得できる。
「……とはいえ、看過はできないけれどね。結局は立場の違い。手を取り和解できるような関係ではないのだもの。だから、先に謝っておくわ。……ごめんなさい、って」
 それは頂点捕食者でありながら、捕食対象の気持ちを想像し察することのできる優しき者の謝罪。同時に、譲歩の余地のない明確な決裂を意味する。
 立ちはだかる特異運命座標達の言葉を、コーケリュウスが正しく理解したとは言い難い。
 すでに怒りと義憤によって感情の赴くままに突き進んできた。冷静さを欠いている。
 だからこれは避けられぬ争いであり、生存を賭けた本能のぶつかりあいである。
 長閑な朝を告げる鳴き声が、今や血で血を洗う壮絶な争いの始まりを告げていた。

●自然の摂理
 ヒトの二倍はあろうかという巨大な鶏たちが一斉に羽を広げ駆け出した。戦いが始まったのだ。
 鶏達の主要な攻撃手段は、主に嘴による刺突と、飛びかかり足のかぎ爪で抉る攻撃だ。
 普通の鶏ですら、額につつかれれば小さな穴が空く攻撃だが、巨大化したことによって質量を増し、強靱な肉体をもつイレギュラーズを相手にするのに十分な攻撃力を持つ。
 これに怪王種たるコーケリュウスの攻撃も加わるのだから、迂闊な隙を見せる余裕はないだろう。
「あなどれないね。連係攻撃も厄介そうだ。
 だから、まずはその反応を削ぎ落とすよ! さあ、唸れ氷の精霊よ!」
 特段の反応速度を持つソアが、誰よりも先に動く。
 敵の中心はコーケリュウスだ。コーケリュウスに自由に動き回られると厄介極まりない。ソアはそう考え得意の絶対冷気を放ちコーケリュウスの反応を鈍らせていく。
「他の鶏さんは花丸ちゃんとネーヴェさんに任せて! ターコイズの皆も花丸ちゃんに続けーっ!」
「は、はい!!」
 エリス達に声を掛け花丸が飛び出し、巨大化鶏の敵視を稼ぐ。全ての鶏の視線を集めたわけではないが、コーケリュウスの連携を妨害するには十分だろう。
「翼があるのに、飛べないなんて……兎は、高く、とび跳ねられますのに、ね!」
 花丸が引きつけられなかった鶏は、ネーヴェが引きつける。二段構えの作戦だ。
 兎らしい軽やかなステップで飛び跳ねながら、執拗に注意を引きつけていく。巨体に似合わない行動回避力に優れた鶏達だが、二人の挑発に良いように乗ることとなった。
 邪魔な取り巻きを引きつければ、本命たるコーケリュウスへの道が開かれる。
「二人の支援は私がするわ。支えるのは任せて」
 ルチアがイーリンと雪之丞に告げて、二人に侵さざるべき神聖を降ろす。そして率先してコーケリュウスの前に立ちふさがりその進行を塞いでいく。
 ルチアは小柄な身体でありながら、耐久面に優れている。このような前衛位置での支援は得意領域だ。
 ルチアの支援を受けて、まずイーリンがコーケリュウスに接近する。ルチア同様進路を塞ぎ妨害する動きだ。
「上手くいくといいのだけれど」
 進路妨害によってコーケリュウスの前進が止まる。イーリンは動きを止めることなく魔眼を開いた。呟きは、たとえ意味が理解できずともコーケリュウスの注意を引くこととなる。
「弱肉強食です。心配せずとも、亡骸はきっちりと、美味しく頂きましょう」
 間髪入れず、雪之丞も火鈴を響かせ、そちらが被捕食者であることを告げる。
 知恵を持ちながら、力に頼ることを選択したコーケリュウス。愚策であることをなぜ理解しなかったのか。雪之丞は憐憫にも似た視線を向けた。
 しかし、そんな視線にはコーケリュウスは気づかない。
 恐るべき速度で森を駆け抜け、羽を広げて飛びかかる。意図せずとも木々は薙ぎ倒され、その質量によるのし掛かりが大地を抉った。
 鶏達もコーケリュウスに続く。
 抑えに回ったイレギュラーズ達を嘴で突き、被害を与えていた。
「待ってて下さい、いま傷を癒やします……!」
 ディアナは後衛として仲間達の傷を癒やしていく。
 天使の如き音色を響かせる歌声が、戦場で血を流す仲間達を救う。
 自身の領地が襲撃にあったことで、此度の戦いは仲間のみならず、この地に暮らす領民達の安全もディアナの手に掛かっていると言っても良いだろう。
 今自分に出来ることはこれなのだと、確固たる意思を持って仲間達を援護していた。
「フリック ノッシリ。封殺サレル、怖イ」
「だったらもう少し距離をとりなさいよ! もう、あの鳴き声ほんと厄介ねー」
 抵抗力は高いものの、フリークライはやや鈍重だ。コーケリュウスの鳴き声に巻き込まれれば、その能力を十分に発揮しづらい。
 レンゲの言葉に従い距離を取りながら、しかし仲間の回復を優先するフリークライ。
 その身体より発せられる福音が、ルリルリィ・ルリルラと流れる聖体頌歌が、傷つく仲間達を支え、戦う力を与えていく。
 コーケリュウスとその眷属達を分断し連携を妨害するイレギュラーズの作戦は概ね上手くいったと言っていいだろう。
 攻撃に全力で寄せてる敵に対し、上手く防御陣形を組み上げ、相手の攻勢を削いだ。
 戦闘に参加していたターコイズのメンバーの働きもそれに貢献していた。
 勇者候補として有力貴族に擁されるだけのことはある。イレギュラーズには及ばないもののその実力は本物のようだ。
「びりびりどーん!」
 ソアの全力全開な光撃がコーケリュウスに放たれる。その時間さえ置き去りする刹那の一撃は甚大なダメージをコーケリュウスに与えた。
 当然、コーケリュウスの光輝の羽による反撃ダメージをもらうが、そこは我慢のしどころだ。
「数が減ってきた! なら巻き込んで一気に捲っていくよっ!」
 硬く、傷だらけになった少女の拳。願いを込めた拳が蒼天の空へと伸ばされる。花丸の得意技は多くの鶏を巻き込み放たれた。
 これがイレギュラーズの攻勢への転換点となる。全員が一斉に攻撃の手を強め始めた。
「あちらには、行かせません、よ。わたくしたちと、その命が尽きるまで……戯れていただきます」
 コーケリュウスを援護しようと移動しようとする鶏を妨害するネーヴェ。鶏達が足を止めたその瞬間、自らの身体を回転させ一陣の暴風域を作り出す。
 浮かび上がった鶏達を三次元的な空間機動で一体ずつ蹴り倒していった。
 眷属がやられコーケリュウスが怒りのままに突撃する。イレギュラーズもコーケリュウスの攻撃を受けて、可能性の輝きに手を伸ばす者もいた。
「まだよ……! まだ倒れたりはしないわ……!」
 前衛でコーケリュウスを押さえながら支援するルチアが、力を振り絞って傷を癒やしていく。被害の大きくなりがちな前衛で支援を続けるのは難度の高い役割だったが、ルチアは十分にその役割を果たして見せた。
 前衛のイーリンと雪之丞が継戦し続けることが出来たのも、ルチアの支援の賜物だろう。
「あと少し……! 一気に決めるわ!」
 イーリンはコーケリュウスの行動をよく見ていた。そして溜め込んだモンスター知識とギフトを駆使して弱点を導き出す。
「胸の一点! あそこが弱点だわ!」
「承知――ッ!」
 イーリンの言葉に反応し雪之丞が飛翔する不可視の斬撃を放つ。コーケリュウスの光輝の羽がそれを反射するが構わず雪之丞は疾駆し、無双の防御姿勢のままに一撃を見舞う。
 大きくコーケリュウスが仰け反るが、まだ決め手にはならない。
 目を光らせたコーケリュウスの嘴が、高速でイレギュラーズ達を突く。
「大丈夫です。最後まで支えて見せます!」
 ディアナも限界まで力を振り絞り、仲間達の傷を癒やす。
 この戦いは領主として決して引くことはできない。多くの領民を、そして仲間達を助ける為に、最後まで諦めること無く癒やしの力を掛け続けた。
「フリック! アンタも気張りなさいよ!」
「ン。フリック 奮起。仲間 守ル」
 ディアナと共にフリークライも支援に徹する。
 特にフリークライのクェーサーアナライズは気力を充足させ、数の多い鶏達を相手する仲間達を支え続けた。
 二人の後衛の支援があったからこそ、この戦いはイレギュラーズ達の有利に運んだに違いなかった。
「やぁ!」
 エリスが鶏を切りつけ倒す。
「みなさんは……!?」
 顔を上げると、ソアがコーケリュウスに向け大きく跳躍していた。
「とうっ!」
 そこから身を捻り放つ渾身の一撃が、弱点である胸の一点へと叩き込まれる。
『コケーーーッ……』
 怨嗟と嘆きを孕んだ断末魔を響かせコーケリュウスが倒れる。
 鶏達も、次々に倒されていき――こうして、ディアナ領を襲った神鶏コーケリュウス一団はその望みを叶えること無く沈黙のまま息絶えるのだった。


「出会った環境さえ違えば、互いに協力できる未来もあったのかしらね。今となっては意味のない話でしょうけれど……」
 そう口にするルチアの視線の先に、美味しそうに焼かれたチキンソテーがある。
 この世は弱肉強食。
 命を奪いあい、勝者は敗者の血肉を啜って生きていく。
 家畜として生まれた鶏達に対する最大の礼儀は、やはり食してこそと言えるだろうか。
「ボク達だけじゃ食べきれない量があるし、領民の人達にも分けてあげたいね」
 ソアの言葉にディアナが礼を返す。
「そういって頂けるとありがたいです。お手伝いも助かりましたし、本当に有り難うございました」
 今日は一日ディアナ領で休息を取ってから帰ることに決めていた。そうなれば鶏肉パーティーとなるのも頷ける。
「保存するなら魔法で冷凍したほうがいいかしらね?」
「鶏の肉は鮮度が保ちにくいと聞きます。それがよろしいでしょう」
 イーリンと雪之丞が話す横で、花丸が美味しそうに唐揚げを頬張った。
「生きる事は、食べること! ……だからねっ!」
 そんな面々をネーヴェとフリークライは見つめていた。
「……聞いたことが、あるのです。
 鶏には、卵を産む種と、産まない種があるのだと」
 倒さなくてはならない敵だったが、殺戮の対象ではなかったと思う。
 もし生存する個体が残っているのなら――。
「ドコカ 卵 アルカモ。ヒヨコ フ化 スルカモ」
「ありそうな話ねー。また凶暴になって襲ってきたりしないわよね?」
 レンゲの言葉に一つ頷いて、ネーヴェは呟くように言った。
「そうならないように、引き取り手を探さないといけませんね」
「ン。同意」
 家畜である鶏の起こした反乱は、幕を閉じた。
 イレギュラーズ達は、今日の敵の想いを噛み締めながら、しばしの休息へと落ちていった。

成否

成功

MVP

フリークライ(p3p008595)
水月花の墓守

状態異常

なし

あとがき

澤見です。

無事に成功できたのは皆様の尽力あってのことでしょう。
お疲れ様でした。

依頼参加ありがとうございました。次の戦いに備えてゆっくりと休息を取って下さい!

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