PandoraPartyProject

シナリオ詳細

愛情ひとつ、グラム売りで

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●温泉街えまーじぇんしー
 最寄り駅から徒歩3分。空色のアーチでつながる温泉街は、歴史を感じさせるような古めかしい店が沢山だ。
 境界案内人の神郷 蒼矢(しんごう あおや)は時折……いや、かなりこの街に入り浸っている。
 今日も今日とて温泉で疲れを癒やし、適当に時間を潰して帰ろうかと店をまわっている時だった。

 ふと見れば、まだ夕刻にもなっていない時間なのにシャッターを閉めた店がある。
「あれっ、お爺ちゃーん。今日はもう閉めちゃうの?」
 蒼矢に声をかけられると、腰の曲がった緑のセーターの老人はゆっくりと此方に振り向いた。
「おぉ。お前さん今日も遊びに来てたんか」
「さ、サボってる訳じゃないんだよ? 異世界の様子を視察するのも境界案内人のお仕事なんだから」
 それよりも、と逸れた話題を戻すように促すと、老人は深くため息をついた。
「相方のばあさんが腰を痛めてしまってのぅ。看板娘もおらんようじゃ、店を切り盛りできんわい」
「あ~……あの店の前を通る度に声をかけてくれるお婆ちゃんかぁ。家にいるご家族は看病してくれてるの?」
「ワシの家は、ばあさんと2人っきりじゃよ。一人で寝かせておくままというのも、忍びないじゃろう?」
 うーむと蒼矢は考えた。何か助けになれる事はないだろうか。

「……ねぇ、お爺ちゃん。僕のまわりには頼りになる仲間が沢山いるんだ!
 だから暫くの間、僕達に店を任せてくれない?」
「助かるが、本当に大丈夫かのぅ?」
「うん! 泥舟に乗ったつもりで楽しみにしといてよ!!」
「……。本当の本当に大丈夫かのぅ……?」

●愛情ひとつ、グラム売りで
「はい皆、ちゅうもーーく!!」
 蒼矢は図書室のカウンターの上に土足で上がって大きく叫び――司書に怒られしおらしく地面に降り立った。
「大変なんだ! 馴染みの商店街のお店がさ――」
 今までの経緯を話した上で、どこからともなくバサリとお店ののぼりを取り出し大きく掲げる。
 掲げたそこに書かれているのは『あいじょう屋』という店名だった。
「お手伝いに行く店は、あいじょう屋さんだよ!
……あれっ、皆のリアクションが薄い? もしかして幻想ではあまり見かけない店なのかな?」

 何度も横道に逸れつつ色々と情報を出す蒼矢だったが、
 要約すると、あいじょう屋とはお客さんのオーダーに合わせて愛情を注いであげる店らしい。
「お客さんからのオーダーは、お肉屋さんとかに似てるかな。
『愛情200gください』っていう感じで、グラム単位で頼まれるよ。愛の基準は人それぞれだから、対応は君に任せる」

 売ってください、素敵な愛。
 200gの愛情は、貴方にとってどんなもの?
 1,000gはどうだろう。1kgも頼まれてしまったら……!?

「君なりの愛情を、たっぷり分けてあげてよね!」

NMコメント

 今日も貴方の旅路に乾杯! ノベルマスターの芳董(ほうとう)です。
 貴方の愛情、買います。

●世界説明
 日本の昭和な雰囲気のある、古きよき温泉街です。客入りは大きな温泉地ほどではありませんが、
 いろんなお客さんが訪れています。
『あいじょう屋』はその中にあるこぢんまりとしたお店です。店内にはテーブルや椅子があり、『愛情のテイクアウトも承ります!』なんて告知も貼られています。

●目標
 一章ではお客さんに愛情を200g売ってください。

●書式
 一行目に同行者がいる場合は相手のIDもしくはグループタグを記載してください。
 二行目にどんなお客さんに売りたいか希望があれば記載してください。
(未記載の場合はお任せと判断します)
 三行目からはプレイングをお願い致します。

例)
 一行目:【やさしさ隊】
 二行目:疲れてそうな女の子
 三行目:今日もよく頑張ったねって褒めてあげて、頭をやさしく撫で撫でしてあげます。

●その他
 時間が立ったら適宜、次の章に進みます。
 主にオーダーされる愛情のグラム数に変動をもたせる予定なので、
 皆さんの思う「200gの愛情」や「1,000gの愛情」を想像しながら参加してみてください。

 それでは、よい旅路を!

  • 愛情ひとつ、グラム売りで完了
  • NM名芳董
  • 種別ラリー(LN)
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年04月20日 21時30分
  • 章数2章
  • 総採用数9人
  • 参加費50RC

第1章

第1章 第1節

エルス・ティーネ(p3p007325)
祝福(グリュック)

「おねーちゃんがお店の店員さん?」
 小さな子供達の純粋な眼差しを浴び、エルスは照れ気味に微笑んだ。
「そうよ。今日はお店の手伝いでここに居るの」
「じゃあください! 『あいじょう』ひとつ、200gくらい!」
(愛情を売るってなんだかとっても不思議だけど……このぐらいかしら?)
「はい、どうぞ」
 優しく頭を撫でられ、えへへと幸せそうに笑う少女。
 その隣で大人しくしていた少年が、少女に促されて前に歩み出た。
 握りしめていた拳を開き、大きなコインを差し出す。
「あの……せ、1000gくださいっ」
「1000gの愛情?? えーと、えーと……ぎゅーってするのは、1000でもいいかしらっ?!」
「おねーちゃん、もしかして照れてる?」
「な、わ、私はこれでも大人なのよ!」
(ただ……愛情表現ってまだまだわからないのよね…。
 義理の家族からそれほど愛されなかったり、初恋が遅かったりしただけであって…っ!!)
「なんだか照れくさいけれど……子供達なら許してあげる」
「じゃあ大人の人が買いに来たらどーするの?」
「それは秘密! 好きな人にしか……な、内緒なんだから…。ほらほらギューッてしないの?」
 話を逸らされ顔を見合わせた少年少女は、いっせーのせでエルスにわっと抱き着いた。
 優しく抱き返してもらい、クスクスきゃははと嬉しそうな笑顔が店に溢れる。
「ふふ、愛情を買い求めるなんて甘えん坊さんね……今日だけ特別、甘えてもいいわよ」

成否

成功


第1章 第2節

黒影 鬼灯(p3p007949)
やさしき愛妻家

「章殿こそ俺の愛! 天が与えたもうた奇跡そのものだ!」
「だから鬼灯の愛は売れないの?」
「ああ。しかしそれでは、勤めを果たせないのは知っている」

――さあ、舞台の幕を上げようか。

 首を傾げる蒼矢をよそに、鬼灯は膝を追って目の前の客へ声をかけた。
「ごきげんようお嬢さん。何をお求めかな?」
 声をかけられた少女は母親の影に隠れ、顔を僅かに覗かせる。人見知りな少女の心を解きほぐしたのはーー愛らしい鬼灯の奇跡。
「とっても可愛らしい女の子なのだわ!頭を撫でても宜しくて?」
「……ん」
 章姫に撫でてもらった少女は、硬っていた口元をようやく緩めた。鬼灯の愛を贈れないなら、天使のような章姫の愛を。
「ええ!ええ!それから美味しいお菓子と紅茶も用意しましょ!お母様も一緒にお茶会をするのだわ!」
「うふふっ。私も誘ってくれるの? ありがとう愛らしいお嬢さん」
 ストロベリーパイの香りが薫る。カモミールティーを味わいながらひと息つけば、心も気分もすっかり解れて、少女の笑顔を自然と誘う。

「ありがとうございます、愛情屋さん。この子、人見知りで……。親以外の愛を知ってみたら、人と打ち解けやすくなるかと思って来たんです」
「あらあら! それなら今日で解決なのだわ!はじめましてで、お友達をちゃんと作れたんですから」
「……! うんっ!」
 愛を金で売る行為に驚きこそすれ、そこに意味はあったのだなと、鬼灯は目元を密かに緩めるのだった。

成否

成功


第1章 第3節

耀 澄恋(p3p009412)
六道の底からあなたを想う

「ようこそいらっしゃいま…あら?」
 接客スマイルの澄恋の前に現れたのは見知った顔だった。境界案内人の神郷 赤斗である。
「蒼矢が店に迷惑かけてないか、様子見がてらサービスを受けに来たんだが」
(この子は確か、グラクロで暴走したり、死神を物理で矯正教育した…)
(ほほう、お一人様でのご来店で左手薬指に指輪なし……。これは好機、愛情を多く与えれば口説き落とせるのでは…!)
 互いの思惑が交錯し、一瞬の間の後接客が再開される。
「お客様! 本日は何ぐらむお求めで!」
「あっ、そういやグラム売りなんだったな」
「愛情はね! 沢山あった方が幸せですよね!さあさあぜひ!お安くしときますんで!ね!」
(圧が凄ぇ!)
 勢いで壁際に置いやられ、冷や汗混じりの赤斗のオーダーはーー
「…え、二百ぐらむ?
 本当に?活きの良い新鮮な愛情仕入れてますよ!」
(愛情(物理)とかだったら大変だからなぁ)
「…二百ぐらむだけ?」
 そうですか、と呟く澄恋は捨てられた子犬の様で、申し訳なさから赤斗が口を開きかけた瞬間、気を取り直した澄恋が顔を上げる。
「でしたら、とびきりの二百ぐらむを」

ーーキュン♡

「ッツ!?」
「本日はご来店ありがとうございました
 またのお越しをお待ちしております!」
「えっ、あ……!」
 タタタと小走りに去っていく澄恋。取り残された赤斗はその場で膝をついた。
「目が合った瞬間、息が止まりそうになった。もしかして、これが……恋?!」

成否

成功


第1章 第4節

寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900)
秋縛

「はい、今日もおつかれさまです」
 一瞬、入口を玄関の扉と彼女は見まごうた。
 それ程に史之の接客は自然で、家庭の様な温かさを作り出していたからだ。
「しーちゃん、浮気は許さないからね!」
「分かってるよ」
 睦月の鋭い一言を軽くかわし、女性客を店内へと迎え入れる。
 彼女は温泉街近くのオフィスに勤めるOLだそうで、紅茶とお菓子でもてなすと、ぽつりぽつりと本音が溢れた。
「後輩と上手くいかなくて……あっ。すいません、私…」
「気にしないで。疲れた時はけっこうたまってるもんだしね」
「史之さん…」
「今だけはあなただけの俺ですよ。好きにふるまっていいから」
 殺し文句が突き刺さり、思わず頬を赤らめるOL。急な愛情800gの追加も史之は笑顔で引き受け、袖を捲くった。
「合計1000gだね。それじゃ早速、作ろうか」
「作るって、何をです?」
「当ててごらん」
 じゅわっ、とフライパンの上で油が爆ぜる。史之がキッチンへ立てば美味しそうな香りが店内を満たし、あっという間にご馳走が並んだ。
「はい、召し上がれ」
「……っ!」
 口にした瞬間に悟る。ただ美味しいだけじゃない。
 お野菜多めでカロリーほどほど、栄養バランスもちゃんと考えたオカン味!
「衣食住は生活の基本だけども、毎日献立考えるのも大変だよね。働きながらだと余計面倒かなって」
 愛情いっぱいに甘やかされて心もお腹も幸せになった彼女は、満たされた笑顔で帰っていった。

(さて、カンちゃんはどうかなーー)
「睦月の愛情は僕が買う!」
「蒼矢は店員だろう?ここは俺が」
「母さんの愛情は渡さないよ!」
 史之が騒ぎの方を見ると、そこには睦月を取り合って騒ぐ蒼矢、赤斗、黄沙羅の姿があった。
「これってやっぱり、あれを言うべきなのかな。『皆、僕のために争わないで!』っていう」
「カンちゃん、実はこの状況を結構楽しんでるでしょ?」
 三人の頭を叩いて説教し、店の角へ正座で並べるまでがワンセット。史之のお叱りコンボで疲弊しながら蒼矢は睦月へと問うた。
「それで、睦月は誰に愛情を売るつもりなの?」
「んーと、普段からお世話になってる人。お酒が好きでいつも明るく元気に振る舞ってるけどちょっと繊細でお遊びでパリピとかしちゃう誰かのための小説書いてるような、僕の事をしーちゃんくらいわかってくれてる人かな」
 ピンポイントな人選にざわつく神郷トリオ。そんな中、カランと店のベルが鳴りーー。

「今日も貴方の旅路に乾杯!」
「「「お、お前かーーー!!!」」」
「いらっしゃい。愛情は200gからみたいだから、まずはお話を聞こうかな」

「執筆で大変なことってどんなこと?」
「責任、ですかね。大切な人の人生の一部を描く覚悟が重くて」
「うん、わかるわかる。でもやっぱり書くのが好きなんでしょ?」

 そうだ。こういうサプライズがあるから筆を執るのは止められない!

「いつもすてきな物語をありがとう」
「いつも描かせてくれてありがとう」

成否

成功


第1章 第5節

饗世 日澄(p3p009571)
紡ぐ者

 平凡な日常に僕は辟易していた。
 そんな時だ。息抜きがてら立ち寄った温泉街で不思議な店を見つけたのは。

「いらっしゃいませ、お客様。
 本日はご来店ありがとうございます。

 愛情200gをお求めでお間違いはございませんか?」

 店員の名は日澄といった。
 食事を望めば好きなものを好きなだけ、味付けまで望むがままに。
 休みたいと我儘を言えば、寄り添い寝物語を聞かせてくれた。

 尽くされて、尽くされて、どろどろに愛情を受けた僕は、やがてそれが怖くなってきた。
「こんな尽くしてもらってしまっていいのかな。他にはどんな事をしてくれるの?」
「この身体で出来ることならば、例え倫理道徳の埒外だろうと、心ゆくまで何なりとお申し付け下さいませ」
「大げさだな。たかが商売じゃないか、いくらなんでもやりすぎーー」

ーー嗚呼。目が合った瞬間、僕は悟った。
 日澄なら、やれる。
 その愛情が真実か偽りかなんて些末な事だ。彼か彼女かも分からないミステリアスなこの人は、
 首筋に両手を添えても眉ひとつさえ微動だにせず微笑むのだから。

「さて、はて、人の魂は21gだと何かの本に書いてあったっけ。
 じゃあ、10人分の僕を殺して捧げるまでが愛情の限度なんだろ?」
「はは、なんだよその発想……」
「10回自分を裏切るってのはどうかなぁ」

 200gが重くて溢れて、僕はただ沈んでいく。

「さあ、どうぞ! どう足掻いても密度の低い200gを召し上がれ!」

成否

成功

PAGETOPPAGEBOTTOM