PandoraPartyProject

シナリオ詳細

さいわい来たれり

完了

参加者 : 3 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「エルピス」
 わたしがローレットへと身を寄せたときに世話役だと肩を竦めて名乗り出た友人は慣れたようにわたしの名を呼びました。
 かみさまに見捨てられたこのからだに、素晴らしい技能があると笑ってくれた彼女は今日も仕事に行ったのでしょうか。
 さちあれ、と青い花の髪飾りを下さった彼女は今日はどこへ旅に出掛けたのでしょう。
 沢山の思い出を与えてくれる彼も忙しなく戦いに身を投じています。

 わたしは、雪風さまが「こわいことは見なくて良い」と仰る言葉に甘えて、今日もローレットに居ました。
 ひとの声音を正しく聞き取れているかも、恐ろしいわたしは彼の唇を盗み見て慣れない聴く、という事を繰り返す。
「あの、さ」
 言い淀んだ彼は「今日はアイスティーにしよう? それから、さ、これ」と綺麗な真白い封筒を下さいました。
 預かり物なのだというそれは、シンプルでありながら、とても美しくて。
 躍った文字には見覚えがありました。

 ――エーリカ。

 沢山の言葉を連ねる約束をしたたいせつなひと。
 ペーパーナイフを辿々しく使うわたしに、雪風さまは「手伝うね」と小さく笑ってくださいました。

 『エルピスへ

 お誕生日おめでとう

 エルピスの誕生日を皆でお祝いしたいので、誕生日会を開くことにしました。

 ぜひお越し下さい

 当日はローレットまでお迎えに参ります』

 そこまで、文字を追いかけてからわたしは雪風さまについ、言ったのです。

「どうしましょう」
「どうしましょう?」
「……お誕生日の、お祝いをしてくださるのだ、そうです。わたしは、その、ど、どうすれば……?」


 花々が歌う春麗らかなその日が、彼女の誕生日なのだという。
『雪さん』――鬼桜 雪之丞 (p3p002312)は張り切って用意をしましょうと籠を抱えて微笑んだ。
「エルピスはどのような物が好みなのでしょうか?」
「雪風さんなら知っているかも知れないな。……甘い物も好ましそうだったけど、うーん……」
 こっそりと聞きに行こうかと『ルーキスさん』――ルーキス・ファウン (p3p008870)は指先を顎に添えて悩ましげに呟いた。
 森で果実を採取し、エーリカの家で調理をしようと計画した。
 精霊たちに声を掛ければ「たのしそう!」「すてきね」「ねえ、もっと飾り付けしましょうよ?」と花を集めては楽しげに。
 ダカァと困ったように鳴いたパカダクラも精霊達に飾り付けられて何時もより愛らしく粧っていた。
「てがみは、エルピスにとどいたかな?」
 雪風にそっと手渡した招待状。『エーリカ』――エーリカ・メルカノワ (p3p000117)は緊張を滲ませてぎこちなく笑みを作った。
「大丈夫よ、エーリカ」「彼はちゃんと頑張ったわ」「うんと褒めてやらないと」
 渡すにもタイミングが大事だと意気込んでいた情報屋のことを褒め湛える精霊達にルーキスは小さく笑みを零した。

 幻想郊外に存在する二階建ての小さなおうち。近くの森での木の実や果物の採取を皆で行い、精霊達とケーキやお菓子を作る計画だ。
 庭に設置したガーデンテーブルには白いテーブルクロスを。精霊達は盛りだくさんの花をテーブルに飾ってくれる。
 やわらかな陽光の下で皆で料理を作って一緒に食べる。
 お祝いの言葉を述べたら――きっと、彼女は驚くだろう!

 どんなかおをするだろう、と問えば三人揃って悪戯するように顔を見合わせる。

 光差し込む真白の都。聖女と持て囃され、聞こえずとなったその身は役立たずとうち捨てられた。
 まことの常識さえ知らずに、異邦の者にかんちがいのように恋をして救われた。
 彼の間違いを正すことも出来ずに苦しみ呻いた、そのこころを光の許へと掬い上げてくれた大切なひとたち。
 希望(えるぴす)と、その名前が輝かんばかりの未来を得ることを願って。

 今日、君に伝えたいのは――

GMコメント

 リクエスト有難うございます。たくさんの、しあわせが訪れますように!

●エルピスのお誕生日
 4月6日うまれ。エルピスにとってはお誕生日は記念日ではありませんでした。
 耳の聞こえぬ娘は、かみさまの声が聞けた聖女として持て囃され、己の生誕を祝う習慣はありませんでした。
 かみさまの声が聞こえなくなってから、更に己の生誕を祝う人はいなくなりました。
 そんな彼女にとっての「お誕生日」の大切さを教えてくれた『はじめて』はエーリカさん。
 そして、さらにお誕生日が大切で楽しくて、しあわせだと教えてくれるのはみなさんです。

 朝、雪風がエルピスにおでかけの用意とお着替えを準備してくれています。
「折角でしょ?」と普段とは違った春色のお洋服(皆さんでセレクトして頂いてもOKです!)を持たせる予定だそうです。
 水筒と、バスケット(中身はエルピスが用意しました。秘密です)、それからお着替えを持ってローレットで待っています。
 招待状ははじめてのこと。とても緊張してみなさんに「おはようございます」と云う事でしょう。

●行動
 朝のお迎えの後はエーリカさん宅の近くの森で精霊達と一緒に木の実や果物の採取を行いましょう。
 その後、エーリカさん宅にてケーキやお菓子を作りましょう。エルピスは「お料理」はまだまだ初心者です。
 宜しければ教えて上げて下さい。精一杯お手伝い致します。

 お料理後は庭にて楽しいバースディパーティーです。エルピスは『お着替え』をして、みなさんと過ごす予定です。
 花の咲き誇る庭で、精霊やパカダクラと一緒に、歓談し一緒に作った料理を食べましょう!

 その他の詳細の行動は皆さんにお任せ致します。
 このシナリオの成功条件はお誕生日会を楽しむことですから!

 其れでは、素敵な一日になりますように。

  • さいわい来たれり完了
  • GM名日下部あやめ
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年04月23日 22時15分
  • 参加人数3/3人
  • 相談6日
  • 参加費---RC

参加者 : 3 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(3人)

エーリカ・メルカノワ(p3p000117)
夜のいろ
鬼桜 雪之丞(p3p002312)
白秘夜叉
ルーキス・ファウン(p3p008870)
蒼光双閃

リプレイ


 ――お誕生日おめでとう

 エルピスの誕生日を皆でお祝いしたいので、誕生日会を開くことにしました――

 ああ、どうしましょうと『聖女の殻』エルピス (p3n000080)はそう言った。緊張に胸がとくとくと高鳴って、エルピスは色白の頬を赤く染める。
 朝はこの格好と雪風が選んだらしい動きやすいコーディネートに合わせたのは白いストラップのサンダル。恐る恐る履いてからトートバックに水筒と雪風が持たせてくれたエプロンや散策時の着替えがちゃんと入っていることを確認した。もう片手にはバスケット。中身は秘密とささやけば、小さな子供のように楽しくて。
「エルピス、ほら」と指さしてくれる友人にこくりと頷いて慣れない仕草で小さく手を振った。待ち合わせは、こうするのだと本で読んでから何時か自分元思ったから。
「エルピス、おはようございます。今日はきっと、とても楽しい一日になりますよ」
 春らしいシフォンのワンピースに身を包んだ『玲瓏の壁』鬼桜 雪之丞(p3p002312)はにこりと微笑んだ。射干玉の髪に添えたのは春の気配、花の髪飾り。
「おはようございます、雪さん」
 緊張に手を下ろすタイミングを見失ったのか宙を彷徨ったその指先をきゅっと握りしめて『夜のいろ』エーリカ・メルカノワ(p3p000117)は「おはよう」とそっとエルピスを伺った。
「おはようございます、エーリカ」
「エルピス、おはよう。今日は楽しい一日にしよう! 荷物が多そうだから、良ければ俺も持つよ」
 手を振り返していた『竜胆に揺れる』ルーキス・ファウン(p3p008870)の腕は何時の間にか下がっていて。何時降ろしたのかと首を傾いだエルピスは「有難うございます、ルーキスさん」と彼を呼んだ。
 距離感が、心地よい。エルピス、と名を呼んでくれる『ともだち』の声を聞けば胸の奥がふんわりと暖かい。言葉に出来ない、優しい気持ちが溢れ出して、心地よくて。
 雪風が「エルピス、トートバックはルーキスさんに預けなよ」と頬をつんつんと突いたその仕草に慌てて「お願いします」と頭を下げた。
「ふふ、緊張しておりますか?」
「はい。その……どうしましょう、わくわく、します」
 エーリカの手をぎゅうと握った儘、頬を赤らめたエルピスに雪之丞はくすりと微笑んだ。つん、と雪風にならって赤らんだ頬を突けばエルピスは擽ったそうに瞬く。
「エルピス! あのね、精霊たち(みんな)がね。森のすてきなばしょを教えたいんだって」
「わたしが、教わっても良いのですか?」
「もちろん! みんなみんな、エルピスとルーキスと雪之丞と遊ぶのを楽しみにしているんだって」
 行こうと手を引かれるのは幾度目か。その度にエルピスは泣き出しそうな程に嬉しくなるから。ゆっくりと振り返ってから「いってきます」と告げた声はいつになく弾んでいた。


 しじまの帳を抜けて、するりと躍り出れば精霊達の『すてきなばしょ』――色々な木の実を集めましょうと雪之丞がエルピスを覗き込めば「木の実」と彼女はぱちりと瞬いた。
 出掛け際に雪風から鞄の中身を聞いていたルーキスはエルピスの頭にぽすりと帽子を被せてやる。可愛らしい麦わら帽子は陽に焼けない彼女の肌を護る為なのだろう。
「わあ、ありがとうございます。ルーキスさん」
「ううん。さあ、森を探索しようか。森にはどんな果物があるかな? エーリカさんと精霊たちに聞いてみようか。
 あ、皆、気になる物が高いところにあったら言ってね。俺が取ってくるよ、任せて!」
 ほら、と指させば実った恵みを小鳥が嘴で啄んでいる。それを確認してからエーリカは「エルピス、見て。小鳥が食べてる」と囁いた。
「あれは、おいしいのでしょうか?」
「きっと――ルーキス、ルーキス。ね、あそこのあかい実がみえる? さくらんぼ!
 わたしたちじゃ届かないから……ふふ、とってくれると、うれしいな」
 任せて、と地を蹴って、器用に枝から枝へ。ルーキスが木の実に到達するまでをまじまじと見遣ったエルピスは「わたしも、勇気を出して飛べば良かったでしょうか?」と首を傾いだ。
「いいえ、エルピス、女性はスカートを履くと気をつけることが増えるのですよ」
 唇にそっと小さな木の実を押し当てた雪之丞にルーキスが上で小さく苦い笑いを漏らした声がする。首を傾いでから「気をつけます」と頷いたエルピスにエーリカは「わたしたち、分からないことばかりだから、雪之丞におしえて貰おう?」と悪戯っ子の様に笑う。
「ええ。けれど、この森ならエーリカ様の方が詳しいのです。それから、エルピスのことはエルピスの方がもっと詳しい。
 エルピスは、どの果物が好きでしょうか。甘いのも、甘酸っぱいのも、色々ありますね。どんな物がお好きですか?」
「あまいものが、たべてみたいです」
 好きか分からないけれど、と雪之丞と共に木の実を選べば精霊達が悪戯っ子の様に風で運んで掌にぽとりと落とす。エーリカが準備していたバスケットいっぱいの果物と木の実が詰った事を確認してルーキスは「大漁だ」と小さく笑みを零した。
 籠一杯の果実を抱えて、エーリカは「おうちへどうぞ」と手招いた。朝早くに焼いたパンのかおりがまだ残っていて、お庭で育てた野菜達も皆を歓迎するように。


 お料理しましょうとエプロンの紐をぎゅうと括れば雪之丞は少し緊張したように用意された調理器具をまじまじと見遣る。泡立て器を握りしめたエルピスが「これはなんでしょう」と首を傾げばルーキスが「材料を混ぜるんだ」と優しい声音でレクチャーを。
「料理は、拙もまだまだ、初心者ですから……エルピス。一緒に、がんばりましょう」
「はい。雪さんも初心者なら、なんだか安心します。一緒、ですね」
 二人でエーリカとルーキスに習おうとカウンターに立てばエーリカは籠一杯の果実を手に「がんばろう」と頷いた。
「雪之丞、まぜて、まぜて」
「こう、でしょうか」
 生地を少しずつ、少しずつ。混ざっていくその様子にエルピスが「これは何になるのですか」と身を乗り出した。
「なにになるかな?」
「おいしいもの、なのは確かです」
 くすくすと笑ったエーリカは雪之丞と共に砕いたビスケットにカスタード、真っ赤な果実を敷き詰めて、杏ジャムで頬紅添えて。
 その様子は魔法のようだと二人で顔を見合わせた初心者さんに「宝石みたいでしょう?」とエーリカは少し自慢げに。
「タルトの他にも採った実でジャムを作れば、クッキーやパンに乗せて食べられそうだね。
 種を取った実を鍋に入れて……火加減が中々難しいな。ゆ、雪之丞さん、助太刀お願い!」
「はい。拙が火を見ますから、鍋をお願いしますね。いい匂いがしてきたので、その調子です」
 二人一緒に協力して。ぐずぐずに形を変えてかくれんぼをする果実達。ジャムになると言われてもエルピスにとってはまだまだふしぎばかり。
「クッキーの生地を、ほら、エルピスも。花にするんだよ」
「エルピス、みて。こうやってね……ほら、小鳥さん。なにをつくる?」
「小鳥さんやお花になるのですね。すごいです。わたしは、ことりさんとお花、どちらもを」
 欲張りでしょうかと笑った彼女に「好きなだけ作っちゃおう?」と微笑んで。みんなで釜を覗き込めばクッキーが纏う気配がふわりと変わる。
 ルーキスはパンと野菜でサンドイッチを作ろうとエルピスに「怪我をしないようにね」と声を掛けた。スライスしたパンに挟んだ緑のかおりは心地よい。
「エルピス、あのバスケットはまだひみつですか?」
「まだ、ひみつです」
 雪之丞に恥ずかしそうに微笑んだエルピスの袖をつん、と引っ張ってエーリカはひみつだよ、とちょっぴりの『わるいこと』を囁いた。
「――つまみぐいは、とびきりおいしいんだよ」


 屋根裏部屋にいらっしゃい。手を引いてエーリカのちいさなドレッサーへと誘えば雪風が用意してくれていた『鞄の中身』が顔を覗かせる。
 今日のために選んだ可愛らしいお洋服。お誕生日会のための桜色のワンピースは柔らかい布地で着心地が良い。体を包んだ優しい気配は短すぎずも長すぎずもない動きやすさ。髪にそっと飾ったのはエーリカがいつかのくれたさいわいの青い花。
 そわそわとバスケットを握りしめ、髪は崩れていないかと確認するエルピスは「お待たせ致しました」とひょこりと顔を出した。
 はないろのお庭の窓はいっぱいに開いて。精霊達が楽しげに笑い歌い合う。顔を出したエルピスを出迎えたのはみんなで作ったごちそうと、三人の笑顔。
「おたんじょうび、おめでとう」
 エーリカの笑みが咲く。あなたに、そう言うのは何度目だろうと幸福を噛み締めて。
「お誕生日。おめでとう、エルピス」
 雪之丞は一つ一つの言葉をゆっくりと、しっかりと。唇に乗せた。目を見て、彼女に届くようにと願うように。
 エルピスの耳は、本来は雪之丞も、エーリカも、ルーキスも、誰の声も聴くことは出来なかった。神様の声を聴いてきた声だった。
 自覚しなければ聴くことの出来なかった声は、大切で、愛おしいものばかりだから。彼女にとっての特別を雪之丞はおまじないのように、祝福のように紡ぎ続けた。
「誕生日おめでとう、エルピス。今ここに君が居て、言葉を贈れることを嬉しく思う。
 ……その生に祝福を。出逢えたことに感謝を込めて」
 ルーキスは完成したケーキに蝋燭を添えて、微笑んだ。
 彼女の明るい空の色の瞳が、揺らいで、涙を湛えるような。そんな気配にルーキスは「エルピス、おいで」と微笑んだ。
「このろうそくは?」
「蝋燭に火を灯して吹き消すんだ。それがお祝いになるって本で読んだから、だから、エルピスもしよう? 新しい衣裳も……うん、凄く似合ってる!」
 しあわせそうに「ありがとうございます」と細められた瞳に僅かな涙の気配を感じてから、雪之丞は「さあ、お祝いしましょう」と微笑んだ。
 精霊達の声を聴きながら、吹き消した焔に拍手が湧いた。精霊達のおいわいは木々のざわめきとなって、響く。
 美しい花を揺らがせ、花弁がふわりと包んだその気配に「わあ」とエルピスが手を伸ばす。
「さあ、料理を食べましょう? とびきりのごちそうですよ」
「はい、雪さんも、エーリカも、ルーキスさんも、ありがと――」
 唇にふに、と指先が当てられる。雪之丞は悪戯っ子の様に目を細めて「まだですよ」と囁いた。
 お祝いの言葉だけじゃない。贈物を用意したのだと雪之丞が準備したのはエルピスの髪の色によく似たレモンイエローのマニキュア。
「エルピスは、もっと。お洒落を覚えてもいいと、思ったので。指先を、ほんの少し彩るだけでも、可愛らしいですよ」
「わ、あの、これは……?」
「拙がまた、塗ってあげましょう」
「はい。雪さんがいつも共に居る気がして、うれしいです」
 指先に鮮やかさを。そのいろどりを纏えば、雪之丞がいつも一緒に居るようだとエルピスは微笑んだ。
 レモンイエロー、鮮やかな、明るい色。エルピスのいろ、と呼ばれたら其れだけでどれだけ嬉しいだろうか。
「エルピス、俺からはこれを」
 ルーキスが差し出したのは梔子色のストール。ふんわりとしたその梔子の色を見詰めてからエルピスは「きれいです」と微笑んだ。
「本当に? これは神威神楽の織物。俺の故郷の織物だよ。
 梔子の花言葉は『喜びを運ぶ』……エルピスがいつも笑顔でいられるように。その服にも合うかな?」
「合わせてみても、よいでしょうか?」
 そっと、桜色のワンピースに合わせるようにストールを肩に掛けてくるりと回ってみせる。どうでしょう、と緊張したエルピスの頬には朱が差していた。
「良いのでしょうか、素敵な贈物を……」
「……君は気付いていないかもしれないけれど。
 俺は、いつも沢山の『嬉しい』や『幸せ』を君から貰ってるんだ。色づく世界を教えてくれた君へ。本当に、ありがとう」
 だから、いいよと微笑めば、エルピスは小さく頷いてストールを抱き締める。
「わたしからは、これを――」
 銀糸の花刺繍を施したそろいのケープはエーリカとエルピスの、かさねたいろ。そらとうみの『さかいめ』のいろ。
 たくさんを知る為に。せかいを、わかちあって綴るたいせつなひとに。
「エーリカと、わたしのいろですね」
「そう。そうだよ。せかいをわかちあう、あなたへ。
 このあおいろがどうか……どうか、エルピスをまもってくれますようにって、月のまあるい夜に、御鏡の泉でおいのりしたの」
 それならば、ずっとずっと守って貰えると抱き締めたたくさんのおいわいが、エルピスにとってはしあわせそのもので。
 はじめてのお誕生日会は、あたたかくて。
 エルピスは緊張したように持ち込んだバスケットをそっと差し出した。
「雪さん」
「はい」
 雪之丞の笑顔が、エルピスは好きだ。優しく目を細めて、大切だと伝えてくれる気がするから。
「ルーキスさん」
「どうした?」
 ルーキスの声音が、エルピスは好きだ。何時だって感情が弾んで、優しくて、笑顔をくれるから。
「エーリカ」
「なあに」
 エーリカの掌が、エルピスは好きだ。どこへだって連れて行ってくれるような。はじめてをくれるひとだから。
「わたしも、みなさんにお礼がしたくて。
 とっても、とっても迷ったのです。物を、のこすのは、緊張してしまって。わたしが、皆さんに渡しても良いのかな、って悩んだので」
 一つ一つの言葉を、紡いで、緊張を滲ませて。エルピスという娘は、臆病なのだ。手を離さないで、と望むように確かめた言葉は僅かに震えて。
「だから、ひとつは、わたしがすきなお菓子をお持ちしました。
 それから……雪風さまと、押し花のしおりを作りました。青いお花はネモフィラ、と、言うらしいのです」
 もしも、おそばにおいて頂ければ、とエルピスはバスケットの中の押し花のしおりと、可愛らしく個包装されたワッフルを取り出した。
「貰って、もらえますか?」
「勿論」とルーキスが応えた言葉にエルピスはほっと胸を撫で下ろした。彼等の好意に甘えていないだろうか。喜んで――貰えただろうか。
「エルピス」
 エーリカの声に、エルピスはそっと彼女を伺った。
「たのしいね」
「はい、たのしいです」
 咲き誇る花が、しあわせだと胸をあたたかくしてくれるから。
「来年も、その次も。エルピスがおばあちゃんになるまで、ずっとお祝いしますから、覚悟しておいてくださいね」
「わたしも、お祝いします。みんなを、いっぱいいっぱい。大切だって、伝えます」
 頬に付いたクリームを取って微笑んだ雪之丞にエルピスは少し恥ずかしそうに微笑んだ。
 優しい二つのいろの交わったケープも、梔子の色をしたストールもレモンイエローのマニキュアも。全てが幸せだから。
「……えへへ。わたし。エルピスのことが、だいすき!」
「わたしも、エーリカが、だいすきです」
 手を握って、はっとしたようにエルピスはもう一度と頬をタルトのように赤く染めた。
「わたしも、エーリカが、雪さんが、ルーキスさんが、だいすきです」

 ――きみにさちあれ。希うように。希望の名を抱いたわたしにとってのさいわいは。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 この度はリクエスト有難うございました。
 とっても素敵なお誕生日会を開いて頂いて、エルピスもとても喜んでいます!
 お誕生日のプレゼントも有難うございます。皆さんにとっても素敵な思い出になる一日になりますように。

PAGETOPPAGEBOTTOM