PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ワンダーホイップクリーム

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●うそじゃないわ、つみじゃないわ。あまあまのすいーとらいふ
 あるところに屈強な傭兵団がいた。
「俺たちはそんじょそこらの傭兵団とはワケがちがう。地獄の底で生まれ、吐き気のするような世界で生きてきた。紹介してやろう」
 顔を左右非対称に歪めた男が、後ろに並ぶメンバーたちを指さした。
「まずジェイ。彼は毛髪を犠牲に全ての苦しみを克服した戦士だ。いかなる絶望的な状況でも挑み、爆破する。
 次にドル。アル中でハッパもやるが高学歴で度胸もデカい。身体もデカくてどんな攻撃だって跳ね返すだろう。
 こっちはリー。小柄だがカンフーの使い手だ。どんな場所でも身体ひとつあれば敵をなぎ倒して進む」
 最後に、と男は自分の胸を親指で突いた。
「俺はシル。人は俺を不死身の男と言う」

 とかやってた五分後。

 傭兵団は全員ホイップクリームまみれになって現われた。
「いや、その……」
 渋さきわまる顔をして、シルは上向いた。
「こういう依頼だとは思わなかった」

●ハニーハニーシュガー
「あっまい……」
 『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)がスプーン片手にげっそりしていた。
 なんかカフェの一角らしいのだが、目の前には冗談みたいな高さのスイーツパフェが置いてあった。伝票にはキャッスルパフェとか書いてある。
「これ、絶対一人で食べる量じゃないのです……あっま……おえ……」

 あるひイレギュラーズに寄せられたのは、傭兵団からの下請け仕事だった。というか、彼らには相性が悪すぎたので別の団体にパスしたという案件である。報酬もちゃんと貰ってるから安心してくださいなのですと、ユリーカは言っていた。
「内容は、あるダンジョン廃墟に住み着いたモンスターの退治なのです。
 そこでは……とっても甘々なめにあう、そうなのです……」

 例のモンスターというのは『ワンダーホイップクリーム』という。
 焼いたマシュマロを人型にしたようなヤツで、このモンスターを中心に特殊な領域が形成されるのだそうだ。
「『ホイップクリーム領域』って呼ばれてるのです。
 半径100メートルをホイップクリームだらけにして、しまうのです。
 腰までホイップクリームってかんじで、吹き払ったり溶かしたりしようとしても全然ダメなのです。もうだぷだぷ泳いだり、飛んだりするしかないのです。
 それにモンスターはクリームパイをめっちゃぶつけてくるそうで、『クリームにまみれてないひと』を優先的に狙う傾向があるそうなのです。だから、飛んでても、その……」
 うっぷ、とユリーカはスプーンを置いた。
「とにかくクリームまみれになるのです」

GMコメント

【オーダー】
 成功条件:ワンダーホイップクリームの退治

 戦って倒す、というシンプルな内容ですが、2~3のギミックが存在していす。

・ギミックA:ホイップクリーム領域
 戦場全体がホイップクリームで満たされています。
 食べたら普通に甘いのですが、モンスターとダンジョンによる特異性によって生まれた謎物質らしくどうやってもなくせません。
 普通のホイップクリームなら溶かして終わりなのに残念です。かきわけて無理矢理進むしかねえ。
 尚、天井の高さは大体10メートルくらいあります。高いね。

 このクリームに浸ってる間は『機動力、回避、防御技術、特殊抵抗』にペナルティがつきます。軽減は可能ですが、やり方によっては逆効果になることもあります。

・ギミックB:ホイップクリームパイ
 『ワンダーホイップクリーム』はその基本的な攻撃方法としてクリームパイ投げがあります。
 巨大なクリームパイをずばーんと投げたり、一度に大量のクリームパイを投げまくったり、攻撃をクリームパイで防御したりします。
 神秘攻撃力依存のスキルで、外傷はなさそうなのになぜかHPがめりめり削られていきます。ど~やら命中とCT値が高く、どの攻撃にも【弱点】がついているようです。

・ギミックC:クリーム優先度
 ワンダーホイップクリームはクリームにまみれてない人を優先的に狙うという癖があるようです。
 どういうことなんだろう。わかんないですが、利用できる修正のような気もしますね!

・地形について。
 ある土地の地下にワンダーホイップクリームは住み着いています。
 地下といってもとっても広大なエリアなので、飛び回ったりR4攻撃を撃ったりするスペースは充分にあります。すごくでっかい部屋だと思ってください。あとめっちゃ甘ったるい。

【オマケ解説】
 依頼成功に関係ないおまけの解説。興味があったらどうぞ。

・依頼主の傭兵団
 なんだか不死身の傭兵団とかいってシリアスな業界でシリアスに戦っていたらしいのですが、今回は『ジャンルが違う』といってローレットにパスしてきました。
 彼らが受け取る筈だった報酬から情報料を抜いた形でローレットに支払われている、らしいです。そんなわけでワンダーホイップクリームの情報はほぼほぼ彼らから得た者です。

・ダンジョン跡地
 そこらじゅうチョコレートまみれになった『食べられないチョコレートの池』。
 その中央にはチョコレイトダンジョンというものがあったのですが、少し前に崩壊して無くなってしまいました。
 その僅かにのこった地下層にワンダーホイップクリームは住み着いているようです。
 原型はほとんどないので、地形情報もあまり考える必要はありません。

【アドリブ度】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • ワンダーホイップクリーム完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年06月15日 21時30分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

アルプス・ローダー(p3p000034)
特異運命座標
春津見・小梢(p3p000084)
グローバルカレーメイド
ロジャーズ=L=ナイア(p3p000569)
不遜の魔王
シュクル・シュガー(p3p000627)
活菓子
ジル・チタニイット(p3p000943)
薬の魔女の後継者
佐山・勇司(p3p001514)
赤の憧憬
クローネ・グラウヴォルケ(p3p002573)
幻灯グレイ
コリーヌ=P=カーペンター(p3p003445)
秋空 輪廻(p3p004212)
かっこ(´・ω・`)いい
リピィー・スー(p3p005001)
ティカップで眠る

リプレイ

●夢見る牛乳と自害した鶏卵の絶望たる出会いと目覚め
 食べられないチョコレートの池を抜け、奥底に未だ開くチョコレイトアンダーグラウンド跡地へとたどり着く。
 腰までひたるほどのホイップクリームをかき分けて、『GEED』佐山・勇司(p3p001514)はうんざりしたように前髪をかき上げた。
「うへぇ、甘いのはソレなりに好きでは居たが、こうもクリームだらけだと胸焼けしちまいそうだな。ってかこのクリーム食えるのか?」
 仮に食えてもこんなにはごめんだ。そうホイップクリームだらけの顔に書いてあった。
「ぼくクリームいっぱいもすてきだけど……」
 『ティカップで眠る』リピィー・スー(p3p005001)がホイップクリームに浮かぶ樽によじのぼりながら、頭を振ってクリームを落とした。
「いまのきせつはフルーツのせたかきごおりがたべたいのよ」
「甘味は大好物だ。珈琲一割牛乳九割。角砂糖を十個で蜂蜜を頼む。何。此度は砂糖も蜂蜜も牛乳も珈琲も無いだと。莫迦な――取り敢えず。物語の始まりだ。我等『物語』の始まりだ。創始者も悦んで彼等を貪る筈よ。故に総ては万々歳。さあ。四方八方何処でも」
 『Eraboonehotep』オラボナ=ヒールド=テゴス(p3p000569)が半分ほどホイップクリームに沈みながらものらくらと進んでゆく。
 ホイップクリームの中から顔を出した秋空 輪廻(p3p004212)がどこか苦しげに息を吐いた。
「こんなに胸焼けしそうな戦場は初めてね。甘いもの自体は嫌いでは無いけど、限度と言うものを越えているわ」
「どう? 中は」
 ホイップクリームの上を飛行した『落ちぶれ吸血鬼』クローネ・グラウヴォルケ(p3p002573)が声をかけるが、輪廻は小さく首を振った。
「呼吸はおろか視界も通らないわ。泳ぐには粘度が高いし……」
 仮に泳げてもこの水位じゃ歩いた方がはやいでしょうけれど、と付け加えて、仮面についたクリームをぬぐい落とす。
「なるほどー」
 『バイク便』アルプス・ローダー(p3p000034)がハンドルだけを出してぼぼぼぼぼと音を立てた。エンジン音なのかタイヤの回転にクリームがかき混ぜられる音なのか、どちらにせよよく壊れないものである。世界のルールさまさまだ。
「この敵は僕にも相性悪いですよ!! こういった与太話のような敵は全4クール中3体程居たので慣れていると言えばそうなんですが……」
「いまカレーって言った?」
「言ってないですけど」
 泉の女神のごとくグレイビーボートを持って現われる『カレーメイド』春津見・小梢(p3p000084)。
「いっそチョコレートのほうがまだカレーに近い色していたのに……いやしかしでもでも、カレーと乳製品の相性はバツグンだ。カレーの舌休めにラッシーとか出すしね。辛すぎるカレーにはちょうどいいのでは?」
 とかいってクリームにカレーを注ぐ狂気の祭典が開かれつつあった。止めても無駄だ。
 もう好きにしてくれとばかりに手を振って、『活菓子』シュクル・シュガー(p3p000627)はざぶざぶと先へと進む。
(ホイップクリーム……姉さんの「花嫁衣裳」を思い出すな。あのときの姉さんはすごく綺麗で、幸せそうで。きっとまた会えると思ってた、のに)
「って、感傷に浸ってる場合じゃないな。さぁ、気合い入れて戦おうぜ!」
「今カリー入れるって言った?」
「言ってない。やめろ注ぐな注ぐな」
「みんなー、おまたせー」
 コリーヌ=P=カーペンター(p3p003445)が『他造宝石』ジル・チタニイット(p3p000943)と協力して作り上げた(?)という樽ボートが引っ張られてやってきた。
 上にはジルが立ちのりし、棒の先端に球系のものをつけたオール? みたいなものでざっぷざっぷと樽ボートを漕いでいる。
「これジダイゲキで見たことある漕ぎ方っす! 乗る人はどうぞっす!」
「川舟の要領だねー。竹の棒で川底をつくアレ」
 樽の端っこに腰掛けたコリーヌが、使ってもいないレンチを握ったまま額をぬぐった。
「機動力と特殊抵抗はこれでなんとかなりそう。けど……」
「けど?」
「水上と違って足場が異様に傾くから、回避と防御技術は期待しないでね」
 よく考えたら今回戦う『ワンダーホイップクリーム』のことはよくわかっていない。それは情報源の傭兵団が割となすすべ無くやられたっぽいせいだが……。
「そういえば、なんであの傭兵団はやられたんだろ。射撃しまくったり近づいて殴り続ければ勝てそうなものだけど」
 やってみればわかるか! とレンチをしまい、コリーヌは樽ボートの上に立ち上がった。
「見ただけで胸やけしそうな光景だよぅ。私、辛党なんだよなー」

●ステアリン酸の海に沈んだグラニュー糖の願いをどうかどうか叶えたまえ
「鼻がおかしくなる前に帰らせて貰いますよ」
 クローネはその辺にあった桶的ななにかを頭上に掲げると、せーのでひっくり返した。
 頭からホイップクリームを被るクローネ。
 こんなことをするのは、よほど頭がどうかしちゃった人か、もしくはワンダーホイップクリームの攻撃対象から外れたい人だけだ。
「そっか、一からクリームまみれになっておけば攻撃されないって寸ぽ――!?」
 コリーヌの横顔にホイップクリームパイが直撃した。
 『みゃん!』みたいな声をあげて吹き飛んでいくコリーヌ。
 『ひえっ……』と声を出して振り返るジル。
「聞いてないっす! 衝撃で吹き飛ぶとか聞いてな――」
 振り向くジルの顔に直撃するホイップクリームパイ。
 輪廻は早速無人となった樽ボートによじのぼると、アルプスローダーの車体を引っ張り上げた。
「攻撃のタイミングを遅らせるだけでいいわ。やれる?」
「さて?」
 やってみないことには、といいながらアルプスローダーは自らのスロットルを動かした。マフラーに詰まったホイップクリームが吹き飛び、樽ボートの床を蹴って飛び出す。ホイップクリームの水面を裂くようにして真っ白い人影へ急接近すると、車体の重量とスピードをまとめて叩き付けた。
「援護する、とにかく近づけばいいんだな!?」
 勇司は剣を握り込むと、どこからともなく鎧を呼び出して瞬間装着。ホイップクリームの中を走り抜けるようにしながら、剣を振ってオーラの斬撃を飛ばしていく。
「ったく、鎧にクリームが入り込んで最悪だな。しかも動き難いな、コレ!」
「肚に溜まるな。色を失うのも良く解る」
 オラボナは樽ボートの上に飛び乗ると、娯楽的恐怖を展開し始めた。
「物語に終幕を。我等『人間』の舌を満たせ」
 両手を広げたような姿勢をとった途端、大量のホイップクリームパイが直撃。オラボナのボディ(?)がへんな回転をしながら吹き飛んでいく。
「く、強ぇ!」
「いまカレーって言った?」
「幻聴でも聞こえてんのか!?」
 小梢が泉の女神方式で身を乗り出すと、樽にしがみついたオラボナを庇うように立ちはだかった。
「さあこい!」
 右手にグレイビーボート(あのカレーのルーはいってるやつ)。
 左手にカレー鍋(寸胴鍋)。
 顔にホイップクリームパイ。
「もう直撃してんじゃねえか!」
 樽ボートからジャンプでもして近づこうとしていたシュクルが叫んだ。
「よく見て。私のスキルに深呼吸ってあるよね」
「あるな」
「私の場合はこうする」
 小梢は寸胴鍋を頭に被った。
「あーっ、カレーのにおいがからだぢゅうにしみわたるーっ! あーっ、カレーがっ、カレーと一体にな――」
 直撃したホップクリームパイの衝撃で吹っ飛んでいく小梢。
「なんだったんだ今のパフォーマンスは」
「変人アピールかしらね?」
 なんだかんだでワンダーホイップクリームのそばまで近づいた輪廻とシュクル。
 輪廻は樽ボートを蹴ると相手めがけて飛びついた。
 首に組み付き、体勢を崩そうと試みる。
 一方でシュクルは一度ホイップクリームの中に飛び込み、背後から飛び出すとストロベリーキャンディーのようなナイフで背中を切りつけた。
「がんばるの……!」
 リピィーは一拍遅れて飛びつくと、手斧でもってワンダーホイップクリームの身体を攻撃し始める。
 振り払おうと暴れる腕になんとかしがみつき、再び斧を打ち付けた。
 腕が切り離され、リピィーはホイップクリームの中に背中から落ちた。
「やったっすか!?」
 ジルがバケツで薄めた回復液をオラボナにざっぱーしながら振り返った。
 体中に塗りたくったホイップクリーム。目元を隠すほどのそれを指でぬぐって見えたのは……。
 正面からめり込むアルプスローダー。頭に組み付く輪廻。背中に腕を突っ込むシュクル。
 その中央にある、真っ白い人型の物体。おそらくワンダーホイップクリーム。
『ぼぼぼぼぼ、ぼぼぼぼぼ、ぼぼぼ、ぼぼぼぼぼぼ』
 なにか言ったかと思うと、口らしきものを大きく開いた。
 顎が外れるかと思うほど大きく口を開いた。
 そうしてやっと、ジル自身が大きく口を開いていたことを自覚した。
 喉からあふれるものが自分の金切り声だと自覚した。
 それらが眼前に存在する真っ白く人型の物体を認識しがゆえのものだと、自覚した。
 ホイップクリームの中から起き上がり、敵味方の姿をまとめて見ることの出来たコリーヌにも、それは起こっていた。
 ワンダーホイップクリームの姿が長く長く、縦に伸びていく。
 顔についたクリームをぬぐい落とす。
「こういう依頼だとは思わなかった」

●血と肉を捧げよ。骨を捨てアミノ酸の惑星に埋もれよ。
 波打つ赤黒いホイップクリームの波。
 おお、吠える獣の姿を見よ。
 手榴弾を地面に叩き付けたコリーヌは、吹き飛んでいった赤黒いホイップクリームを横目に、底にたまったチョコレートバーを踏み砕いて進む。
 甘い鉄の臭いにむせかえりながら、口元にたまったホイップクリームをぬぐい払った。
「走って」
「――!」
 勇司は開けた床を駆け抜ける。キャンディドロップを踏みつぶして跳躍。押し返すホイップクリームの波。宙を舞う勇司の鎧にたっぷりと塗られたホイップクリームの生臭さを振り払うかのごとく、勇司はオーラソードに込められた魔力を至近距離で叩き付けた。
 ホイップクリームのドクロがつるぎの刃を噛むように受け止め、ホイップクリームの臓物が勇司の首へと巻き付いた。
 ホイップクリームの落とし子たちが足へまとわりつき、すがるように這い上がる。
 胸焼けするようなホイップクリームを吐き捨て、もう一本の剣をワンダーホイップクリームのむき出しの眼球へと突き立てた。
 キャンディドロップの眼球が引き裂かれ真っ黒なホイップクリームが吹き出していく。
 斧を手に飛び込むコリーヌ。
 ひっくりかえった樽ボートを振り払って飛び出し、輪廻はワンダーホイップクリームの腕を掴んだ。
 腕の隙間からわき出たホイップクリームが羽音を立てて群がっていく。耳につく小さな羽音の群れに歯噛みしながら、輪廻はワンダーホイップクリームの足を無理矢理に払い、投げ飛ばす。
 チョコレイトの柱に激突するワンダーホイップクリーム。
 アルプスローダーはフルスロットルで突撃し、柱もろともへし折った。
 柱を形成するホイップクリームが悲鳴を上げ、いたいいたいと叫びだした。
 ブレーキをかけながらターン。
 はね飛んでいくワンダーホイップクリームが恐ろしく長い両手両足を地につければ、衝撃で吹き上がったホイップクリームがばしゃばしゃと小梢の頭にかかっていく。
「あ・た・れー!」
 ワンダーホイップクリームの顔面めがけて寸胴鍋を叩き付ける小梢。
 ホイップクリームのへし折れる音。キャンディの砕ける音。
 飛び出したホイップクリームの臓物が小梢の腕や首に巻き付き浸食していくが、小梢はそれを噛み千切った。
「――――――――――――」
 形容不明な言葉を述べてたちあがったオラボナがワンダーホイップクリームに組み付いていく。
 ワンダーホイップクリームの巨大な顎がオラボナを喰いちぎり、食いちぎったそばからオラボナがはえていく。
 無数に枝分かれしたワンダーホイップクリームの首が一斉に牙をむき次々とオラボナを食いちぎっていくのを、小梢は必死にくいとめようとしがみついた。
 その様子を見上げるリピィー。
 10mはあろうかという高い天井をえぐるように振り回されていく小梢たちの姿。
 そうはさせるかと飛びついて、ワンダーホイップクリームの足を斧で切りつけた。
 切断されたワンダーホイップクリームから大量のホイップクリームが吹き出し、羽音を立ててリピィーに群がっていく。
 斧を振って払いのけ、深く息を整えた。
 吐き気を催すようなホイップクリームの臭いにむせながらも、リピィーは再びの斬撃を叩き込む。
 木こりが木を切るがごとく、切り倒されたワンダーホイップクリームはオラボナたちをくわえたまま転倒。衝撃で激しく波打ったホイップクリームに押し流される仲間たちをよそに、クローネはコウモリのはねを大きく広げた。
 宙を滑空し、ホイップクリームの触手をひらひらとかわしていく。
 バレルロールをかけてワンダーホイップクリームへ接近。すれ違い、前後反転。マギリボルバーを両手でしっかり構えると、ワンダーホイップクリームの大きく裂けた背めがけて魔弾の乱射をしかけた。
 リボルバー弾倉が空になるまで打ち続け、弾倉を開放。空薬莢をホイップクリームの海へと捨てると、スピードローダーで次弾を装填してさらなる乱射をしかけていく。
 足下から伸びたホイップクリームの臓物が足に巻き付き、引きずり下ろされる。
 そのままホイップクリームに呑まれたかに見えたクローネだが、ジルが彼女を抱えてホイップクリームの中から飛び出していく。
 ぷはあと息を吐く二人。ジルは取り出した薬液の瓶をワンダーホイップクリームへと投げつけた。
 破砕音と悲鳴。肉と骨が酸で焼け焦げるような甘いにおいが鼻をついた。
「甘ったるくてやってられないっす! もう終わりに――」
「するさ」
 シュクルはワンダーホイップクリームの背後に回り込むと、首筋にキャンディーナイフを突き立てた。
 悲鳴を上げて暴れ回るワンダーホイップクリーム。
 首筋から吹き出していくホイップクリームのしぶきに片目を閉じつつも、シュクルは更に深くナイフをえぐり込んでいく。
 暫く暴れたワンダーホイップクリームは力尽き、ホイップクリームへと沈んでいく。
 ぷはあといって顔をだしたシュクルは、手の中に残ったクリームを振り払った。

●甘い甘い甘い
「髪も身体もべとべとで甘い匂いが染み付いてるわね。早く帰ってお風呂にでも入りたいものね」
 輪廻がうんざりとした顔でクリームをぬぐう。
「早く帰ってお風呂にでも入りたいものね。帰り道に公衆浴場かなにか、あるかしら?」
「う~、鼻が、鼻がおかしくなりそうっす! てかなってるっす!」
 同感っすーと言って手を振るジル。
 コリーヌは頭に手を当て、胸元を開いて顔をしかめた。
「うへぇ……下着の中まで入ってるよぅ、クリーム。ドラム缶風呂でもいいから入りたい」
「なあ」
 シュクルに話しかけられ、コリーヌや輪廻は振り返った。
「それ、クリームか?」
「でしょう? 違う?」
「いや……」
 シュクルは首を振って。深く息を吐きだした。
「………………」
 オラボナが珍しく何も言っていない。
 小梢が心配そうに顔(?)を覗き込んだ。
「どうしたの、大丈夫? カレーたべる?」
「うあー……」
 アルプスローダーがクリームまみれになったボディを癒やそうに振っている。
 勇司がバケツにくんできた水をかけて、それを洗い流していた。
「酷い戦いだったな。暫くクリーム関係は勘弁してほしいわ。所で、どうする? 海みたいになってるけど」
「おそうじしたらいいとおもうのよ」
 リピィーが手を高く上げて言った。
「だってこのじきはいろんなものがくさりやすいもの!」
「そうだな。腐って……あ痛っ」
 勇司は不思議な鈍痛に頭を押さえた。
「だいじょうぶ?」
「あー、悪い。鼻どころか目までおかしくなってきやがった。ホイップクリームが赤くみえたぜ、一瞬」
「そうッスか……」
 クローネが、羽根をはらって呟いた。
「早くシャワー浴びたいですね。いますぐにでも流したいので、こっちにもバケツいいッスか」

 ワンダーホイップクリームは無事討伐され、イレギュラーズたちは報酬を受け取った。
 これ以上ダンジョンが暴かれることは、きっと当分ないだろう。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete!
 true end 1――『お菓子の記憶』

PAGETOPPAGEBOTTOM