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シナリオ詳細

世界一嬉しくない朝チュン、もしくは、プリズンブレイカー

完了

参加者 : 6 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●世界一嬉しくない朝チュン
 小鳥のさえずりとまぶしい朝日に目を覚ます。
 ここはどこだろう。知らない天井だ。
 硬い枕とわずかな頭痛。
 異音に振り返ると。
「ンガゴー」
 いびきかいてるゴブリン……もといキドー (p3p000244)がいた。
 ンガッと言いながら目を覚まし、こちらを見る。
 目が合った。

「オラ死ねオラぁあああ!」
 寝そべる姿勢から身体をひねった顔面パンチがキドーに炸裂する。
 神の目を盗んだ男ことザイードは、続く膝蹴りでキドーをベッドから落とすと、慌てて立ち上がった。
 褐色の胸板はむき出しに。褐色の手足もむき出しに。
 金の腕輪とホルスアイはあるものの、いつもの服は身につけていなかった。平たく言うとパンイチである。
「テメェなにしやがんだ殺っすぞオラァ!」
 同じく緑肌パンイチのキドーが立ち上がり、両手で中指をたてまくった。
「あぁオラァ!?」
「んだコラァ!?」
「ああああん?」
「はあああ!?」
「んんんん!?」
 ぶち切れマックスでにらみ合うこと数秒。
 ハッとした二人は、改めて周囲を見回した。
 ベッドが一台あるばかりの、窓もなにもない部屋。白い壁紙と木目の天井。そしてフローリングの床が無機質に囲んでいるだけの場所である。
 キドーの家でも、ザイードの家でもない。
 ましてや、部屋に唯一ついていた鋼鉄の扉にはどうも見覚えがあった。
 番号の刻印と、スライド式の小さな小窓。
 罪人収容施設……つまりは、刑務所の扉である。

 小窓がスッと開いて、その先にいた小太りな男が部屋の中をのぞき込んできた。
「囚人番号5267、5268。目が覚めたようだな」
 ザイードとキドーはゆっくりと互いの顔を見合わせ、そして痛む頭のなかから記憶をさぐった。

●さくばんはおたのしみでしたね
 傭兵稼業は楽しいもので、キドーとザイードはたまたま一緒になった仕事で依頼をこなして金もらってオネーチャンのいる店で飲んで触って踊って騒いでチョーシこいて黒服出てきて殴って壊して笑って飲んで衛兵なだれ込みーの――今に至る。
「思ったより分かりやすい流れだ……」
「どーすんだよ! 俺次の仕事入ってんだぞ! てかこんな場所にブチこまれたままで生きていけるかってんだ! アァ!?」
 キレまくってるキドーに、二日酔いの残った頭を抑えてザイードが手をかざした。
「まあ待て落ち着け。状況からしてここはラサの収容所だ。金持ちのボンボンが金儲けのためにやってる施設だからな。ってこたぁ警備もゆるいし刑務官の懐もゆるい。やりようによっちゃ無傷で今日中に――」
 パッと手をかざしたザイード。
 ハッと振り返るキドー。
 二人は鉄の扉を再び見ると、ニヤリと笑った。
「――レッツ、脱獄(プリズンブレイク)!」

 運命のいたずらか、この日獄中にあったのはキドーとザイードだけではなかった。
 偶然にもあと六人のローレット・イレギュラーズが収監され、そして全く同時に脱獄を狙っていた。
 ここはラサの砂漠地帯にあるという収容施設アンパンク。
 今日の脱獄犯は、七名。

GMコメント

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●注意事項
 この依頼は『悪属性依頼』です。
 成功した場合、『ラサ』における名声がマイナスされます。
 又、失敗した場合の名声値の減少は0となります。

■これまでのあらすじ
 ラサでなんやかんやあって収容所にぶち込まれたあなたは、今日脱獄を決行することにしました。
 一緒にぶち込まれたぶち込まれ仲間と共に、自由を目指してプリズンをブレイクしましょう!

■脱獄方法
 鍵開けスキルはキドーが、透視や暗視や怪我の治療といったスキルはザイードがもっているので、そういった専門スキルが無くても脱獄にチャレンジできます。
 第一関門ともいうべき収容室の扉から外に出るのはキドーとザイードの存在によってクリアできるので、ここからどうやって監獄の外へと脱出するかがキモになります。

 とはいっても、今回は『何をやってもOK』とします。
 看守を買収してもいいし、他の囚人を扇動してもいいし、なんなら誰か殺してもいいですし、電子機器をいじくったりこっそり誰かになりすましたり、あなたらしい脱獄にチャレンジしてみてください。
 今居る仲間たちのスキルや個性を組み合わせてコンボをキメるのも楽しいのでお勧めです。

■分かっているセキュリティ要素
・監獄内では武器がとりあげられ、魔法攻撃などもディスペルされています。要は初期状態が無装備状態です。
・武器がまとめて保管されている部屋があります。これがどこにあるかは今のところわかっていません。
・監獄の壁や基本的に物質透過や透視を受け付けません。
 かろうじて扉だけは(そこそこ時間をかければ)透過や透視が可能です。
・監獄内の収容室と簡単な扉は鍵開けスキルで開くことができますが、収容所の中と外を繋ぐゲートだけは専用のカードキーを二枚同時に通さなければ開かない仕組みになっています。カードキーは看守達がそれぞれもっており、どうにかして二枚手に入れる必要が出るでしょう。それも素早く。

  • 世界一嬉しくない朝チュン、もしくは、プリズンブレイカー完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年04月09日 21時55分
  • 参加人数6/6人
  • 相談8日
  • 参加費150RC

参加者 : 6 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(6人)

キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)
社長!
※参加確定済み※
ライ・リューゲ・マンソンジュ(p3p008702)
あいの為に
ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)
人間賛歌
レべリオ(p3p009385)
特異運命座標
ホロウ・ゴースト(p3p009523)
幽霊少女
暁 無黒(p3p009711)
No.696

リプレイ

●ふざっけんなよ!
 布団のシーツを蹴飛ばして、『最期に映した男』キドー(p3p000244)は烈火の如く憤慨していた。
 より正しい言葉を使うならバチグソブチギレていた。
「一晩経ったらモーニングラサ!
 『もしかして昨夜は褐色のオネーチャンとよろしくしちゃったのかなてへぺろ☆』って一瞬見間違えたじゃん! 返せよォ! 俺のトキメキと期待感返せよォ!」
 掴む襟首もねえってんで髪の毛つかんでぼこぼこ殴りつけるキドーと、その髪の毛も少ないってんでとがった鼻をつまんで上につり上げてくるザイード。
「うるせえ一言一句そのまま返してやらぁ! おらもげろ鼻! 鼻もげろ!」
「やめろぁ! 『キドーさんの緑色の鼻ってセクシー☆』ってリトルリリスのアマンダちゃんに言われてんだぞ!」
「んなもん社交辞令だろボケェ!」
 みっともなく殴り合うこと数十分。流石に飽きたのか二人は肩でぜーぜー息しながら離れ、キドーは扉の前へ立った。
「しかしとんでもねえ収容所だな。ちょっとイレギュラーズ捕まり過ぎじゃない?
 なんか無罪を主張してるやつもいるし、なんなの集めるといいことあるの? カワイイお皿と交換してくれるとか?」
「春のBAN祭りってか」
 ザイードはザイードで部屋を壁沿いにゆっくりと歩きながら壁に手を当てゆっくりとなぞっていく。
 ザイードがおよそ一週した頃、キドーのかざした手の先で扉の錠前がガチャンと音をたてて外れ、ドアノブを握るとまるで当たり前のように開いた。
「ここのセキュリティはどうなってんだよ」
「見ての通りだろがい」

 時と場合と世情によるが、収容所なんてぇもんは捕まえるだけ捕まえて長くとじこめておけば儲かるもんである。仮に一人二人逃げたところでその情報自体を握りつぶしたり別人扱いしてとっつかまえればむしろ儲かるってんで、『捕まえる時は熱心なのに閉じ込めるのは雑』という現象がおきていた。少なくともこの収容所では。
「で、このまま出て行くのか? 二人だけならギリいけそうだが……」
「いんや、ナイフがねえ。防具一式もな。あのナイフはなぁ。時に『燻されし祈』は特に絶対に取り戻さにゃならねェんだ。…ゴブリンってのは一度盗んだモンはそう簡単には手放さねェんだよ。
 テメエの槍も簡単に諦められるようなつまらねえ品じゃねえだろ?」
 そう言われて、ザイードはほほをかいてから『まあな』とだけ言った。
 ンなこと言いながらもテキパキと顔なじみやローレットを名乗る囚人たちの扉を解錠していく。
 何番目かの扉をひらくと、『あいの為に』ライ・リューゲ・マンソンジュ(p3p008702)が不機嫌極まりないといった様子でベッドの上に正座していた。
「…………何やってんだオメェ」
「静かに。この監獄不自然ですよ。囚人になったと言うのに看守が殴ったり蹴ったり他の乱暴をしに来ない。死体の匂いもしなければ悲鳴も聞こえてこない。ましてや他の囚人から奪わなくても全員分の食事が出てきた……」
 ライは(多分かなり疲れてるんだとおもう)目をカッと見開いて言った。
「こんなの鉄格子のついたホテルですよ!」
「おまえも大概にしてアレだな」
 そう言われて、ハッと我に返ったライはいつもの清楚シスターモードになった。
「あら、いやです私ったら。汚い言葉を使ってしまいました」
「いやぁ助かった助かった」
 身支度をおえて部屋から出てきた『陽気な歌が世界を回す』ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)が、コートの隠しポケットをいじりながら『サンキューな』と声をかけてくる。
「酒場で両手に花を抱いたと思ったらとんだ毒花でな。E-A生きてるか? おーい」
 ポケットから取り出した1セント硬化めいた物体をぺちぺち叩きながら声をかけるヤツェク。
 その横で、『幽霊少女』ホロウ・ゴースト(p3p009523)がふあーあとあくびをしながら部屋を出てきた。
 一度脱いでいたコートに袖を通し、襟のファーをふぁさふぁさとやる。
「っかしいなー、ちょっと手持ちのお金が足りなかっただけなのに……。
 いたいけな少女をこんなとこに閉じ込めるなんて酷いんじゃなーい?」
「俺ぁともかく、だいぶザルな理由でしょぴいてそうだなあこの辺のケーサツは」
「甘いね」
 『特異運命座標』レべリオ(p3p009385)が開いた扉の淵に脚をつっぱり、寄りかかるよにして現れた。
「この辺の街は信仰でも民主主義でもなく、金で動いているのさ。この収容所で儲けてる人間もその一人、だな」
 独裁、と表現するにはいささか語弊があるかもしれない。しかし金によって栄えた土地はしばしば『金の出所』に支配されがちである。
 この土地はエネルギー事業をおこした一族が実質的に支配しており、収容所の運営もその一人が行っているという。
 警察ならぬ雇われ憲兵たちの管理もずさんになり、えん罪だろうがなんだろうが数しょっぴけば金になるという形に、どうやらハマっているようだ。
「俺に罪を着せた奴がいるとすれば……『この街そのもの』と言ったところか」
「なんのハナシしてるかわからないっすけど」
 最後に開けて貰った扉から出てきた『No.696』暁 無黒(p3p009711)がコキリと首をならして、枯れそうな喉を低く唸って整えた。
 回想シーンにするまでもない、単純な出来事である。この町の一角で食事をとっていた無黒。たまたま同じ店にいたレべリオ。そこでたまたま起きた暴動事件に憲兵達が大勢押し寄せ、全員同罪だとして収容所にまとめて放り込んだ次第である。
 オラァといってまるめたシーツを壁に投げつける無黒。
「濡れ衣どころの騒ぎじゃねー! この国は裁判もしねーんっすか!」
「法律ってやつは、時として金に負けるよな」
 やれやれと言ってずれかけた仮面の位置をなおすと、レべリオは無黒とキドーに『ついてこい』のジェスチャーをした。
「まずは押収された物品を取り返そう。ここのことだ、順当に出所したところで財布の紐すら戻るかあやしい」

●お前の都合なんか知るかよ!
「あ、オツカレシャーッス。見回りシャシャシャーッス」
 言語能力を半分放棄したような若い看守が、背を丸め首の動きだけで会釈して通り過ぎていく。
「オイ」
 すれ違ってすぐ、スキンヘッドの看守が振り返り呼び止めると、若い看守は『ウェイ』とまたも言語能力の死んだ返事をした。
 腰に左手がのびるスキンヘッド。
 若い看守――に変装していた無黒は、帽子の下で目を細めた。
 一秒がひどく長く、しかし重く流れた、後。
 スキンヘッドは腰のポケットから煙草を取り出し、右手で胸を叩くジェスチャーをした。
「バッジつけとけ。今日はいいけど明日所長来るから。あと応接室掃除しとけ」
「ウェウェッスー」
 フウと息をついた若看守もとい無黒。スキンヘッドが煙草をくわえて再び歩き出そうとした所で、胸ポケットを数度たたき直してから足を止めた。
「なあおい、ライター持ってない――か……」
 スキンヘッドの首に手がそえられ、素早く肩越しに差し出されたジッポライターに灯が灯る。
 思わずそれを注目してしまった看守は炎の揺れに誘われるように視線を動かし、回り込みのぞき込んだレべリオと目をあわせてしまった。
 かくんと膝から崩れ落ちるスキンヘッド。
「えっなんスかこいつ落ちるの早っ」
「うむ……俺も流石に一秒足らずとは思わなかった」
 ゆっくり目をあわせ語りかけるなどして催眠状態に落とすつもりが、よほど寝てなかったのだろうか、一瞬でカクーンといったことにレべリオは若干引いてすらいた。
「まあいい。二着目だ」
 もっと手の込んだ方法で手に入れた一着目は無黒が、今し方スキンヘッドから剥いた二着目はレべリオがそれぞれ着込んで看守になりすます。
 そんな二人が帽子のつばをキリッとつまんで並んで見せた――その間から。
「俺はァ?」
 パンイチのキドーがぬうっと顔を出した。二人の間っていうか、無黒の股の間から。
「いやセンパイはほらあとからコッソリって言ったじゃないっすか」
「俺の煙草の臭いをおっかけるんだから俺先頭にしたほうがいいだろがよ」
 スンスンと床に鼻を近づけ『こっちだ!』とはいつくばって進むキドー。
「な?」
「いやその格好で看守服着てたら逆に目立ちますって」

 一方。キドーたちに保管室の捜索を任せていたライは、通路からよたよたと歩み出ると力なくその場にぺたんと倒れた。
 ちょうど看守のひとりが見回りに通りかかる最中であったようで、このいかにもなライを無視すること亡く近寄ってくる。
 高圧的に怒鳴りつけよう……としたが、囚人用の衣服を破られシーツで両手首を拘束されひどく汗ばんだライに、思わずゴクリと息を呑んだ。
「よかった、通りかかる頃だと思ったんです」
 精一杯の笑顔を向けてくるライ。
 日夜頻繁にえん罪をうけた人々が収監されるこの収容所で、善人がうっかり放り込まれることなどザラである。
 そこに付け込んで甘い汁をすすろうとする看守だって、もちろんいる。
 ライはそんな『匂い』を察知すると、どこか熱っぽい目で看守を見た。
「ふふ……少し、取引を受け入れては頂けませんか? あなたもこんなむさ苦しい場所で働き詰めでは……ね?」
 拘束された両手でそっと足首を触り、ゆっくりとうちももへと手を伸ばすライ。
 看守が適当な部屋を見繕ってライを連れ込もう――とした所で。
「ほっ」
 ホロウのゴーストチョップが炸裂した。
 説明しよう。ゴーストチョップとは相手の背後からこう固いものを後頭部めがけて勢いよくガッてやることで待ってこれチョップじゃない。あとゴースト要素もない。
 一度で気絶しなかったからって六回くらいガスガスやってから、ホロウは額の汗をぬぐった。
「これで一安心」
 なんか赤くなったコンクリートブロックを床に置き、看守の服をごそごそあさった。
「何か良い物は見つかりました?」
 両手の拘束をフツーに自分で説いたライは、看守からパクった上着を羽織って振り返る。
「良い物って言うか……」
 ホロウがポケットから取り出したのは、番号の書かれた磁気カード。そして『備品室』と書かれた鍵だった。

「で、オメェは何の用だってんだよ」
 時を同じくして。自分の倍はあろうかという巨漢の囚人からスライド小窓ごしに睨みつけられつつ、ヤツェクは左右非対称に笑っていた。
「なぁに、アンタと仲良くなりてえだけさ」
 そう言って袖の間から取り出したのは手のひらに収まるほどちいさなスキットル。キャップを外すとうっとりとしたウィスキーの香りがした。
 目を細め、『こっちによこせ』と言う囚人。食事を受け渡すためのボックスをつかって渡してやると、囚人はそれを一気に飲み干してしまった。
「どうせ、脱獄の手伝いでもしろってんだろ」
「ハナシがはええな」
「ここにゃそう言うやつだらけだ。俺ももう七回は出入りしてるぜ」
 ザルもいいとこだな、と思いつつ看守から盗んだ鍵を使ってドアを開いてやるヤツェク。
 しかし囚人はベッドに腰掛けたままうごかない。
「けど、取引が甘いぜ。俺がやりたくなる理由がねえ」
 なるほど、とヤツェクは頷いた。
「あるとき砂漠に、全裸でサボテンに抱きついてる男がいた」
 急な語り出しに囚人が首をかしげると、ヤツェクはドアの淵に手を突いて続ける。
「なぜそんなことをするんだと尋ねると、こう答えた」
「「面白そうだったからさ」」
 思わずハモったことで、囚人が笑い出す。
 膝を叩き、そして勢いよく立ち上がった。
「よっしゅあ、今回は派手にやってみるかあ!」

●朝刊案件
「ほいっ、っと」
 ホロウは鍵束を器用にくるくるとやりながら、並ぶ扉の鍵を素早く解錠していく。
「場所さえわかっちゃえば鍵も備品も思いのままってねー。へいパス!」
 訳も分からずいきなり大量に解放された囚人たちは、ホロウから投げ渡されたものをキャッチした。
 何をキャッチしたって、看守が携帯するはずの拳銃や警棒である。
 そこへやってくるレべリオ。
 彼の手にはカードキーがあった。
 片眉をあげて自分のゲットしたカードキーをかざしてみせるホロウ。
「そちらも上手くいったようだな。ほら、お前の荷物だ」
 レべリオの突き出してくるケースを受け取り、お返しにと地図を突き出すホロウ。
「他の皆は? あのイイ声してるコンビニ店員みたいな人とゴブリン」
「ゴブリン野郎は別件だよ。もうちっと面白くなりそうなんでな」
 ザイードが咥え煙草を吸いながらちゃらちゃらと歩いてくる。彼の手には黄金の槍があった。
「無黒は……」
 といって天井。もとい天井脇のスピーカーを指さす。
『総員正門へ集合! 所長がお越しだ。全員バッジを忘れるなよ!』
 スキンヘッド看守の声だった。
 完璧に模倣しているが、監視室から話しているのはまさかの無黒である。
 『所長』とやらの来訪がよほど重大なのか、所内のスタッフたちが大慌てで正門へと走って行く。
 そんな中でたまたま囚人達がまとめて部屋を出ていた(しかも武器まで奪われていた)ことに気付いたスタッフが報告を飛ばすも、スキンヘッド看守の声で立て続けに行われる嘘の報告に惑わされ続けるという状態である。
「お待たせっすー!」
 一人でもなんとかしようと襲いかかってきた看守を殴り倒し、ぱしぱしと手をはらう無黒。
「そんじゃ、裏口から堂々といきましょっか!」

 正面玄関は大暴れする囚人達と、それを『所長』に見られたらマズいとばかりに死ぬ気で対抗するスタッフたちで大混乱だった。
 その間にキドーとヤツェック、そしてライがゆうゆうと裏口から出てくる。
「お、お前等――」
 裏口の門番を軽くサボっていたスタッフが慌てて立ち上がる――も、ライとヤツェックが同時に銃口を突きつけたことで手を上げた。
「で、何をやっていたんです?」
「ン? お土産買ってた」
 尋ねるライに、キドーが懐から紙束を取り出して見せた。
 その意味するところにピーンときたライとヤツェックがニヤニヤと笑い、キドーはそれをぱたつかせて歩いて行く。
「こいつをお隣の領収にプレゼントしとこうぜ。よーろこーぶぞー」





 その翌日、予定通り収容所を訪れた土地のボンボン息子は、かつてない惨状に悲鳴をあげた。
 彼の横領や癒着の資料が隣の領主に渡り、そのことを武器に懐をつつかれまくるのはまた別のハナシである。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――プリズンブレイク、コンプリート!

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