シナリオ詳細
戦え僕らのスチームファイター
オープニング
●スチームファイター、完成す?
1人の青年が、蒸気を噴き出す人型と向き合っている。
何らかの機械であることは確実だが……何を用途にした機械なのか。
全身に鎧をまとった青年は、恐る恐るといった様子で声を張り上げる。
「よし、来いスチームファイター! グレートナックルだ!」
ブオン、と機械の目が輝く。
ガシュン、ガシュンと音を立てて……高速の踏み込みと共に機械の繰り出すアッパーが青年を空へと吹き飛ばす。
「ぐ、ぐああああああああ!?」
壊れた鎧の欠片をまき散らしながら青年は地面にボテリと落ちて……機械へと向けて、グッと親指を突き出す。
「最高だ、僕のスチームファイター……これなら実地試験だっていけるだろうさ」
そう呟くと、勢いよく立ち上がり青年はその場にいた少女へと輝く瞳を向ける。
「なあ、君だってそう思うだろう情報屋さん!?」
言われた少女は理解できないものを見る目で青年を見ながら……一言呟く。
「まあ、好きに生きればいいと思うですよ?」
●そして依頼になる
「えーと、一応お仕事です。寄ってくるです」
ちょっとばかりやる気のなさそうな『旅するグルメ辞典』チーサ・ナコック(p3n000201) は、そう言いながら付近にいる者達を呼び集める。
「鉄帝にグレッグというよく分からん男がいるですが、そいつが『人造闘士スチームファイター』なるものを作ったです」
要はかのラド・バウの闘士にも負けないモノを機械で再現してやったぞというコンセプトのものであるらしいのだが……今のところ、そこまではいっていないらしい。事実、そこまでいけるのかどうかは果てしなく不明だ。
「まあ、その試作品が出来たらしく……実地試験をしたいらしいのです」
ルートは単純。街から街道を外れた平原へと進み、その先の森の中にある廃村へと向かう。
廃村まで2日ほどの行程になるが……その森に、廃村からやってきていると思われるスケルトンが最近出るらしい。
「その廃村ですが、死霊術士がかつて根城にしていたという情報があるです。その遺物か何かが再起動した可能性が非常に高いです」
破壊せねばならない。グレッグも同じ事を思っているらしく、自分のスチームファイターの実地試験ついでに依頼にしたのだという。
「要は経験豊富な人たちの戦いぶりを参考にしたいって話なのです。ガッツリやってくるのですよ」
何も難しい話じゃない。貴方たちなら出来るはずなのです、と。
チーサはそう言うと、話を締めくくるのだった。
- 戦え僕らのスチームファイター完了
- GM名天野ハザマ
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年04月11日 21時55分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●戦いの全ては準備で決まる
平原で、何事かをやっている者達が居る。
鉄の人形のようなものを囲んで何かをやっている姿は遊んでいるようにも見えるが……無論、そうではない。
これは立派な準備なのだ。
「まさか蒸気機関でヒューマノイド・マシナリー(人型機械兵)を作っちまうクレイジーな野郎がいるたぁな!」
言いながら1人の男の肩をバシバシと叩くのは『倫理コード違反』晋 飛(p3p008588)だ。
叩かれているのは今回の依頼人グレッグであり……叩かれるたびにぐらんぐらんと揺れているが、本人はむしろ誇らしげだ。
「確かによく出来ています」
「そうだろう、そうだろう!」
『シュピーゲル』DexM001型 7810番機 SpiegelⅡ(p3p001649)に言われ、グレッグは胸を張るが……その「良く出来ている」ものこそが、目の前で労働用四足竜型ゴーレム、ゴリアテの荷台に載せられているスチームファイターだ。
まだ稼働させていない為に滅茶滅茶重たいのだが、何人かで持ち上げ転がしていく。
「へぇ~人型機械? ……戦いぶりを参考にしたいと? ふむふむ、人型機械としての先達の作品(?)としては協力するのはボクとしてはやぶさかじゃないかな~? え~魔導科学の英知の結晶たるボクをみて感涙にむせんじゃうよ?」
ゴリアテの持ち主である『咎人狩り』ラムダ・アイリス(p3p008609)に言われ、グレッグはハハハと笑う。
「レガシーゼロに言われては立つ瀬がない。しかしまあ、僕のスチームファイターも蒸気科学の最先端の端っこくらいだと自負している。今回は大きく……とても大きく期待しているとも!」
言いながらグレッグが見上げるのは上空を飛行している『異世界転移魔王』ルーチェ=B=アッロガーンス(p3p008156)だ。
ルーチェが飛行できる理屈はグレッグには分からないが、あの半分でも飛べればスチームファイターにとって大きな武器になるだろう。
そんな事を考えながらグレッグはルーチェに手を振り……ルーチェも手を振り返す。
「喜べ、余が来てやった以上は安心だ!」
「期待してるともー!」
上空から叫ぶルーチェにそう叫び返し、グレッグは荷台に載せられたスチームファイターに視線を戻す。
「シュピも全力を尽くしましょう。まあ、今回は晋 飛のフォローという形ではありますが」
「ああ、今回は君と飛さんが中心になって護衛をしてくれるんだったか。安心だよ」
SpiegelⅡに言われ、グレッグは頷く。そう、今回はスチームファイターの稼働テストだ。
故にスチームファイターに何かないようにそちらに人員が割かれており……それはグレッグの望み通りでもあった。
「戦闘用ロボットのテストの為に護衛しなけりゃならないとは本末転倒な気もするが、データを取るのは大事だからな」
「そういうことだともマフィア君」
「任侠だ。こっちじゃ通用しねえ認識かもだがな」
「そうか、ニンキョーだな。知ってるぞ。影に生きて影に死ぬんだろう?」
「そりゃ忍者だ。違ぇよ」
「そうなのか」
そうなんだよ、とため息交じりと言うのは『仁義桜紋』亘理 義弘(p3p000398)だ。
恐らく興味ない部分には徹底的に興味がないのだろうが、興味ないなりに理解しようとしている依頼人グレッグが誠実であるのは事実だった。
ちなみに、そんな義弘が用意しているのは実に立派な軍馬だ。
ブルルルル、と嘶く姿は、義弘をこれから乗せるという気合を示しているかのようだ。
「しかしまあ、実にしっかりとした準備だ。頼りになるなあ」
「中々ハードな依頼になりそうだからね。万全の準備をしないといけないのは当然かな」
言いながら出発前の確認をする『雷はただ前へ』マリア・レイシス(p3p006685)に、『業壊掌』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)も頷いてみせる。
「準備はダイジだからね! 特に今回の依頼……すごくイイと思う!」
何やらワクワクしながら荷台の補強をしているイグナートだが……その瞳は、荷台に乗るスチームファイターに向けられている。
「確かに準備は重要だな。どれどれ……起きろ、スチームファイター」
荷台に乗ったグレッグがスチームファイターに話しかけると、起動したのかスチームファイターの内部から駆動音が聞こえ始める。それを見て早速とばかりにイグナートは無機疎通でコミュニケーションを試し……「起」という情報が返ってきたのを感じ取る。
意味的には「おはよう」とか「起きた」とか、そんなところだろうか?
「人型機械、ロボットですか……スチームというからには、動力は蒸気機関……?」
そんな『ジョーンシトロンの一閃』橋場・ステラ(p3p008617)の疑問に答えるかのように、スチームファイターからブシュ―と音を立てて蒸気が吐き出される。
「しかも音声入力式とは、色々興味深いですね」
色々と暴れたり暴走したりしている印象が強い鉄帝ではあるが、グレッグの技術力がそれなり以上であることはステラとしても疑いようはない。
色々と得るモノのある旅になるかどうかはステラにも分からないが……退屈しなさそうなことだけは確かで。
「さて……それほど長い旅ではないけれど、よろしく頼むよ」
「よし、出発だ!」
マリアがルーチェ同様に飛行したのを合図に義弘が号令をかける。
同時に飛がアームドギアを呼び出して乗り込む。
更にはステラの召喚したファミリアーの小鳥が森の中へと飛んでいく。
「うーん、創作意欲が湧くなあ」
そんなグレッグの言葉と共に……万全の準備をした彼等は、森の奥の廃墟を目指し進んでいく。
●森の中へ
「よし、いけそうですね」
OVER ZENITH……ステラの連結式バスター砲が行く手をふさぐ大木を吹き飛ばし、道を作り出す。
これ以上ないほどに綺麗に作られた「道」は馬車を通すのに十分なほどで、飛も思わず口笛を吹く。
「やるねえ。んじゃ、俺も負けてられねえな……と言いたいとこだが」
「そうだね、今の音でどうやら気付かれた……来るよ!」
マリアの警告が響くと同時、一本の矢がルーチェめがけて飛来する。
「っと!?」
なんとか回避したルーチェに合わせるように、飛の万変火咆が放たれる。
ショットガンとガトリングガンによる圧倒的弾幕はそこに居たスケルトンを吹き飛ばし……別方向からやってきたスケルトンを飛妖突が打ち抜く。
対人特化技である飛妖突ではあるが、スケルトンとて人体構造そのものであることに違いなく、その差は肉があるかどうかだ。
見事打ち抜かれたスケルトンは崩れ落ち……森の中に静寂が戻る。
「どうやら、今ので最後のようですね」
「だな」
SpiegelⅡと義弘が頷きあい、周囲を警戒していたルーチェもそれを肯定する合図を送ってくる。
「今までの状況からみて、森の中には然程居ないようだね」
そう、マリアの言う通り。これほど派手に木々を吹き飛ばしても……やってくるのは散発的な攻撃のみだ。
これはもはや、森の中にはあまりスケルトンはいないと考えてもいいレベルではある。
マリアとルーチェによる索敵も、敵がほとんど居ないのでは本当に「念のための警戒」にしかなりはしない。
だが、それでもこれ以上ないくらいに重要だ。
「となると……この辺りが最後のキュウケイになりそうだね!」
「そうだね。ここまでセオリー通りだと敵が密集している地点に遺物とやらがあるんじゃないかなとボクは推測するかな~?」
イグナートにアイリスも同意し、野営の準備が始まっていく。
短い旅ではあるが、この辺りの行動は慣れたものだ。
流れるような動きで全ての準備は整い、夜間の警戒態勢に至るまでが事前の打ち合わせ通りに進んでいく。
そうして、夜も更け……スケルトンのせいか鳥も鳴かぬ森の中で、スチームファイターを弄っていたグレッグに不寝番をしていた飛が声をかける。
「ロボットなー、俺も相棒にしてっからかなり好きだぜ、昔兵士やってた頃は敵は大体こういう奴らだったから構造もある程度はわかんだよ、にしても蒸気機関でこれほどの戦闘力ってな驚きだぜ!」
「ハハハ、君は結構喋るな! しかしまあ、君が乗っていたヤツは確かに凄いものだった。流石にイレギュラーズなだけはある……それとね、僕は蒸気科学こそが至高だと思っている。この技術は極めれば、いずれ天にだって届くだろうさ」
なるほど、そういう未来もあり得るのかもしれない。
飛は頷きながらも、更に話しかけていく。
「武器とかどうすんだ、人型ってな浪漫だがそっから一段階発展させて手を複数や、人馬型ってのはどーだい?」
「……ありがとう」
「ん?」
「そうして僕の緊張をほぐしてくれているんだろう。実に助かる。あと武器に関しては今は考えていないね、こいつはあくまで拳で世界を獲るのさ」
そう言ってスチームファイターの整備に戻るグレッグを見ながら飛は頬を掻き……「俺はそんな小難しい事考えちゃいねえよ」と本心かどうかも分からないことを呟く。
その様子を同じように不寝番をしていたアイリスが見ていたが……あえて何も言わず、警戒へと戻っていった。
●戦え僕らのスチームファイター
「 早速か! たいした歓迎だ!」
義弘の戦鬼暴風陣が、村に入るなり襲ってきた複数のスケルトンを叩き潰す。
どうやら廃村にかなりの数のスケルトンが集まっていたようで、次から次へと襲ってくるスケルトンたちに、SpiegelⅡも己の「本体」を呼び出す。
「装甲、展開(スクリプト、オーバーライド)」
そう、それは本体。全長3mの人型機動兵器を呼び出す手段だ。
「戦闘機動構築開始(システムセットアップ)……動作正常(ステータスグリーン)。いくよSpiegel」
「行くぜ!搭乗型の浪漫と戦い方ってのを見せてやるぜ!」
続けて飛もアームドギアから「怒りの暴力」と名付けた……拳で殴り掛かる技をもってしてスケルトンを屠っていく。
しかし、戦闘を開始する2つの搭乗型ロボットもまた、1つの準備に過ぎない。
そう、此処に来た目的……スチームファイターの起動準備だ。
「ハハハ、僕達も負けてられないな……スチームファイター、お前の力を見せてやれ!」
グレッグの命令に従い、スチームファイターがその鉄の拳でスケルトンの頭部を砕き割る。
襲ってくる別のスケルトンの攻撃を見事なステップで回避し反撃にうつるその姿は、まさにラド・バウの闘士であるかのようだ。
「さぁ行こうスチームファイター! ハデにアバレられるイイ案件だよ! キミが将来のライバルになると思うとワクワクするな!」
そんなイグナートの叫びに対し、スチームファイターからは「諾」という情報が返ってくる。
それはどうとでも解釈できるものに過ぎないかもしれないが……イグナートにとっては充分で、スケルトンを倒す力も高まるというものだった。
「まったく、こんな気味の悪い場所で大歓迎だね!」
戦闘が起こらなければ探索を……と考えていたマリアの作戦は吹き飛んだ。
しかし、そんなものは想定内だ。蒼雷式電磁投射砲・雷吠絶華がスケルトンを吹き飛ばし、蒼雷の残滓を散らす。
「まさに大歓迎ですね……待っていたというわけですか」
ステラのプラチナムインベルタがスケルトンたちを砕き、アイリスの魔哭剣がグレッグを狙おうとしていた一体を切り裂く。
「おい、アレを!」
ルーチェの示した方向を見て、イグナートは思わず武者奮いと共に拳を握りしめる。
「どうやら、きたみたいだね!」
メキメキメキ、と。音を立てて廃屋の1つが崩れていく。そこから現れたのは巨大なヒュージスケルトン。
胸元に輝くコアのようなものがあるが……恐らくはアレが死霊術士の遺物なのだろうとその場の誰もが理解した。
「この場は任せたよ!」
見事なアックスボンバーでスケルトンの首をすっ飛ばすスチームファイター、そしてグレッグやその護衛のメンバーをその場に残し、ヒュージスケルトンの討伐メンバーは進路のスケルトンを砕きながら走る。
「オ、オオオオオオ……」
「これで……どうだ!」
ルーチェのバスター・レイ・カノンがヒュージスケルトンのコアに向けて放たれ……大きく揺らいだヒュージスケルトンは、しかし倒れない。
「中々に頑丈ですね……!」
「なら倒れるまでやるだけだ!」
「そういうことだね!」
ステラを追い越して、義弘のギガクラッシュ、マリアの雷吠絶華が放たれる。
雷撃を纏う2つの攻撃はヒュージスケルトンに見事に叩きこまれ、そこにイグナートが更なる一撃をくわえていく。
「絶招・雷吼拳!」
「オオオオオアアアアアアア!?」
「今だ……くらえ、ボクの最終手段!」
倒れようとするヒュージスケルトンのコアを狙い、アイリスの魔砲が放たれ……見事外殻ごと、そのコアを撃ち貫いて。
「オオオオ……オオオオオオ……」
ほぼ反撃らしい反撃も出来ないままにヒュージスケルトンは崩れ……それを合図にするかのように通常のスケルトンたちも崩れていく。
「終わりましたね」
「そうみてえだな」
それぞれの乗機を戻したSpiegelⅡと飛も視線で互いの健闘を称えあい……ファイティングポーズを解いたスチームファイターへと視線を向ける。
「よっし、実地試験は大成功だ! この調子でいけばラド・バウに大旋風を巻き起こす日も近いぞ!」
そいつはどうかな、などとは誰も言わない。
しかし……この日がグレッグにとって、大きな経験になったことだけは事実だろう。
いつかお目見えするかもしれないスチームファイターには、今日この日に集ったイレギュラーズたちの戦闘データが……多分に反映されているだろうことは、間違いないのだから。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
コングラチュレーション!
見事な役割分担でした。
それでは、また次の冒険にてお会いしましょう!
GMコメント
グレッグとスチームファイターを連れて死霊術士の遺物を破壊しましょう。
行程は最短で片道2日。死霊術士の遺物を破壊すれば成功です。
野営が発生するので、グレッグの護衛が必要となります。
以下、今回のデータです。
【人物・敵】
・グレッグ
強くないですが、結構タフで逃げるのも得意です。
・スチームファイター
グレッグの造った人型機械。打撃力に優れますが、あんまりタフではないです。
長時間稼働すると負荷がかかって停止します。
重さは120キロくらい。重てぇ。
・スケルトン
骨のアンデッド。剣、弓、斧などで武装しています。
数は不明。
・死霊術士の遺物
アンデッドを作り霊魂や精霊を操る能力を持った杖です。
いざ戦闘となると無数のスケルトンを合体させたヒュージスケルトンのコアになります。
ヒュージスケルトンは近接攻撃や骨を飛ばしての中距離攻撃を行います。
【場所データ】
平原(危険度:ほぼゼロ)
見通しの良い平原です。何か事前準備をするならここが最適でしょう。
森(危険度:中)
視界の悪い常緑樹の森です。足元が悪いので、スチームファイターが転んだりするかもしれません。
廃村(危険度:高)
何処かに死霊術士の遺物が潜んでいます。しかし、此処は完全に遺物の領域です。
村長の家(2階建て)、完全に形の残った廃屋が4、崩れ落ちた廃屋が7、集会場らしき建物が1あります。
●情報精度
このシナリオの情報精度はC-です。
信用していい情報とそうでない情報を切り分けて下さい。
不測の事態を警戒して下さい。
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