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シナリオ詳細

<濃々淡々>春風駘蕩、花ノ宴

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●彼女たちは、とても気紛れなのだと。
 ――長い間愛されたモノには、魂が宿るのだと云う。
 濃々淡々の街、その中央に聳える大きな大きな桜の樹。あの樹にも魂は宿っているのだろうか。
 柔らかな桜は、ただはらはらと。ただひらひらと。春も、夏も、秋も、冬も。季節を問わず、其の命の限り絢爛に、爛漫に咲き誇り続ける。
「此処の桜は……いつ来ても、よぉ咲いとるね」
「はい。誰かが、いつも。お世話をしているように、元気です、ね」
『暁月夜』蜻蛉(p3p002599)の草履がからんころんと鳴った。『うさぎのながみみ』ネーヴェ(p3p007199)は、蜻蛉の声に頷いて、はらはらと溢れ落ちた花弁をそっと掌で掬った。
「おれも、不思議なんだ。此処の桜は、おれが小さな頃から、ずっと『ああ』だからさ」
 境界案内人であり、二人の友人でもある絢は、不思議そうに桜を眺めている背中に、そっと声をかけて。
「……でも、そうだね。ずっと、愛されているのも変わらないよ。だからこそ、」
『わたしたちがいるもの!』
『ええ、そうよ。わたしたちがいるわ!』
 ネーヴェの掌の上でぷかぷかと浮いていた花弁が、竜巻に巻き込まれたかのようにくるくると踊り――ぽん! と音を立てて、彼女たちは現れた。
「絢くん……其の子達は、」

「嗚呼、そうだね。おれたちの同類――あの桜の樹の、精霊達さ」

『絢ったら、最近楽しそうね?』
『絢ったら、最近嬉しそうよ!』
『わたしたちにも分けるべきよ』
『わたしたちにもくださいな?』
「……おれの飴じゃあ、」
『『だめよ!!』』
 あはは、と困ったように笑いながら、小さな娘の姿をした桜の精たちに囲まれる絢。
『とびきりたのしいなにかをしてよ!』
『とびきりゆかいななにかをしてよ!』
「嗚呼もう、こらこら……二人の前で、騒々しいじゃないか」
 優しい声色で嗜めて。絢は二人の頭をこん、と小突いてから、蜻蛉とネーヴェの方へと向き直った。
「……でも、そうだな。この子たちも遊んでほしいみたいだし。お花見でもしようか?」
『わたし、お花見はすきよ!』
『わたし、お花見がすきよ!』
 くすくすと。きゃらきゃらと笑い声をあげた桜の精は、ふわりと春風にさらわれて消えてしまった。

『待っているわ。愛しい子たち!』

 桜の香りを詰め込んだ残響は、三人の耳を擽って。
「……ってことで、申し訳ないんだけれど。お花見のお誘いを、してもいいかな……?」

●花ノ縁
「それで私も、お花見に誘ってくださったのですか?」
 『雪だるま』コユキア ボタン(p3p008105)は初めての街並みに瞬きふたつ。雪と桜。混じりあえば、桃色の雪だとネーヴェは笑みを浮かべた。
「そやよ。どうせなら、普段からよぉお出かけしてる人に、此処に来て貰おうおもて」
「春を満喫するのは初めてだって言ってたじゃない? 此処なら屹度、春にできることが沢山できると思うわ♪」
 『月香るウィスタリア』ジルーシャ・グレイ(p3p002246)は軽快にウインクひとつ。ボタンを安心させるように、桜の花弁に手を伸ばす。
『待っていたのよ、可愛い子たち!』
『待っていたのよ、愛しい子たち!』
 ジルーシャの紫のネイルが触れた花弁はくるりと弧を描き、そして小さな乙女の姿へと変わっていく。
「あら、可愛い子達。本当に聞いていた通りなのね!」
「本当ですね。桜の、精霊……」
 不思議そうに顔を見合わせたジルーシャとボタン。そんな二人を、春風駘蕩な男が出迎えた。
「蜻蛉にネーヴェ、ありがとう。それから、お待たせ。
 ……二人も、はじめまして。おれは絢。飴屋をしているよ。宜しくね」

 此れより紡がれるは花宴。
 美しき桜をどうか。心よりお楽しみくださいませ。

NMコメント

 此度は素敵なご縁を有難う御座いました。染と申します。
 蜻蛉さん、ネーヴェさんは幾度目かの訪れですね。おかえりなさい。今回も楽しんで頂ければ幸いです。
 ボタンさん、ジルーシャさんはようこそ、濃々淡々へ。素敵な物語の一頁を紡ぐお手伝いをさせていただければ、幸いです。
 さて、それでは今回の花宴のご相談に参りたいと思います。

●目的
 大きな桜の木の下でお花見を楽しもう!

 そのまんま、お花見を楽しんで頂ければ幸いです。
 四人+絢ですから、お花見とは別に街に買い物をしに行ったりして頂いても構いません。
 ある程度のプレイングの無理や無茶ならできる範囲で叶えたいと思います。

●世界観
 和風世界『濃々淡々』。

 色彩やかで、四季折々の自然や街並みの美しい世界。
 また、ヒトと妖の住まう和の世界でもあります。
 軍隊がこの世界の統制を行っており、悪しきものは退治したり、困りごとを解決するのもその軍隊のようです。
 中心にそびえる大きな桜の木がシンボルであり神様的存在です。
(大まかには、明治時代の日本を想定した世界となっています)

●絢(けん)
 華奢な男。飴屋の主人であり、濃々淡々生まれの境界案内人です。
 手押しの屋台を引いて飴を売り、日銭を稼いでいます。
 屋台には飴細工やら瓶詰めの丸い飴やらがあります。
 彼の正体は化け猫。温厚で聞き上手です。

 此度はお呼び頂きましたので、皆様のプレイングに合わせる形で行動を共にしてくれます。
 力仕事はある程度率先して行ってくれるようですよ。

●ロケーション
 桜の木の幹。とても大きな幹のようで、レジャーシートを広げたりしてもまだまだスペースがあります。
 めちゃくちゃでっかい木だと思っていただければ大丈夫です。
 木の上で贅沢に、お花見と行きましょう。
 安全面の心配は必要ありません。

●その他
 時間帯を指定してください。
 特にしていなければ夜桜かお昼の想定で行うつもりです。
 やりたいこと、してみたいこと、好きなだけ詰め込んでくださいね。

 以上となります。
 素敵なお花見にしましょう!

  • <濃々淡々>春風駘蕩、花ノ宴完了
  • NM名
  • 種別リクエスト(LN)
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年04月04日 22時15分
  • 参加人数4/4人
  • 相談8日
  • 参加費---RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ジルーシャ・グレイ(p3p002246)
ベルディグリの傍ら
十夜 蜻蛉(p3p002599)
暁月夜
ネーヴェ(p3p007199)
星に想いを
コユキア ボタン(p3p008105)
雪だるま

リプレイ


「お誘いアリガト、蜻蛉ちゃん、ネーヴェちゃん。
 アタシもボタンちゃんに春に降る雪――桜を見せてあげたいって思ってたの」
『月香るウィスタリア』ジルーシャ・グレイ(p3p002246)は『暁月夜』蜻蛉(p3p002599)と『うさぎのながみみ』ネーヴェ(p3p007199)に目配せ一つ。紫苑の長髪の下でウインク――片目が隠れているのでそう見えないが――してみせる。
「今日は、楽しみにしとったお花見よ。皆でこの景色を一緒に見れるやなんて、どんなに幸せなことやろか」
 初めての春を。眩く、あたたかな。美しい春を。
 去り往く筈だった瑞花である彼女の識らない今を教えてあげたい。
 蜻蛉の声。ジルーシャも、ネーヴェも頷き示す。今日が、最高の一日になるように。
「精霊様も交えて、一風変わったお花見に、なるかも。ふふ、いいですね!」
「桜の精霊さんも季節は違えど仲良くできたら嬉しいです」
「屹度、大丈夫さ……と、遅れてしまったかな」
『雪だるま』コユキア ボタン(p3p008105)の後ろから手を振って現れた絢。ボタンは慌てて駆け寄って、小さく礼を。そんなボタンに寄り添う様に、ジルーシャも笑みを浮かべて絢に声をかける。
「改めましてボタン、冬の化身…精霊です。よろしくお願いしますね!」
「ジルーシャ・グレイよ、どうぞよろしくね♪」
「ボタンに、ジルーシャだね。おれは絢、宜しく。ボタンの靴に飾り、とても綺麗だね」
「せっかくのお出掛けなので、蜻蛉さんやジルーシャさんのくださったものを身に着けて着たんです」
 和装の装いも、と添えた牡丹の足元には、解けない魔法がかかった硝子の靴。華奢な腕には氷精の加護踊る腕輪を添えて。照れた様に笑うボタンの装いを、ネーヴェは長耳を揺らしながらぱっと笑みを咲かせて頷いた。
「とっても、お似合いです!」

 場の空気も温まってきた――さぁ、往こう。思い出に残る花見をする為に!


 色溢れる世界とは此の事か、色鮮やかな暖簾が桜風に攫われて、揺れる。
 わぁ、と小さく歓声を挙げるボタンに対し、ジルーシャはキャー♪と声を華やがせて店頭へと駆け寄っていく。
「うちはこれにしよかしら。色々買うて、皆で分け合いっこしよね。お日様の下で食べるご飯は、何よりのご馳走やもの」
「どれもきっと美味しいと思いますが! あれも、これも、と…」
 蜻蛉とボタンが其れを、此れを、と選んでいる間に、ネーヴェはお菓子を選ぶことにした。
「絢様、一押しはあります、か?」
「おれは……飴、って言いたいんだけれど。あの桃味の金平糖は、美味しかったよ」
「なら、其れを!」
 皆で摘まめるような物を。其れからお酒も。ボタンが持ち込んだお酒もあれば、もう一本あれば困らないだろう。
 欲しい物は沢山だけれど、目移りしていては仕方がない。踏ん切りを付けた筈なのだけれど、絢の腕の中には荷物が山積みだ。
「お、大荷物にしてごめんなさい」
「大丈夫だよ……っと」
「あ、重い荷物はアタシも半分持つわよ、絢。これでも男だもの、力仕事は任せ――あっダメそう、ごめんなさい、やっぱりもうちょっと持ってくれる…?」
「ふふ、そっか。応、お任せあれ……はは!」
「…もう、そんなに笑わなくてもいいじゃない! アタシだってこういう時は格好つけたいって思ったりするの!」
 かぁぁっと顔を赤くしてぷりぷり怒るジルーシャ。絢よりは少なくとも彼の腕の中にもちゃんと荷物があって。
「…ジルーシャさんはいつもステキですよ?」
 きょとんと首を傾げたボタンに蜻蛉はくすくすと笑った。其の理由が解らずに、ボタンはまた瞬いて。
 一方で、己の腕の中に在る、陽光を受けて輝く酒瓶にネーヴェは苦い顔をして見せる。軽いものだから、と預けて貰えたは良かったけれど、彼女は未だ酒を口につけることは出来ない。
「お酒…はっ。もしかして皆様、嗜めるのでしょうか……わ、わたくしも…来年には!」
「……なら、また来年も、やね」
 蜻蛉が告げる。ジルーシャは笑みを浮かべ、ボタンは頷いて、絢は伺う様に首を傾けた。
「……はいっ!」
 約束。
 また来年が来る迄、こんな穏やかな春を、皆で待とう。


「お天気も風も、とってもええ花見日和。今日は、よろしゅうお願いします」
「精霊様、帰ってきました。今日は、よろしくお願いします、ね!」
「此れが、桜の……!」
「ハァイ、待たせちゃってごめんなさいね。フフ、実はアンタたちにもお土産があるのよ♪」
 ネーヴェが精霊に手を振る。ジルーシャとボタンを連れて来た事を告げれば、精霊達は嬉しそうに飛び喜んだ。
 蜻蛉と絢が手際良く敷物を広げている間に、ネーヴェとボタンは桜の精達に今日のお弁当を紹介して見せた。
『そう云えば、土産って何かしら』
『そう云えば、貰っていいかしら』
「勿論! 小さくて可愛いでしょ? 少し苺を入れてみたのだけれど、どうかしら?」
 桜色の布に包んではい、と手渡したのは、此れ叉桜を象ったクッキーだ。洋菓子は初めてなのだろう、解りやすく目を輝かせた精霊達。其の答えは、『さいこう!』の嵐。ジルーシャは思わず吹き出した。

 夕が凪ぐ頃。ボタンがひっそりと用意しておいたのだと云う灯篭に火を灯し。そして、間もなく宴は始まった。
 確りとした幹の上。ボタンがふと上を見上げれば、桃色の世界は祝福する様にぱっと広がって。
(なんて、綺麗でしょう)
 こんなにも高いところからでも良く見える街並み。不思議なものだ、目下には生活している人々が暮らしているのを確かに此の双眸で見たと云うのに、其れでも未だ信じられない。其れ程に現実離れしている様に、思えた。

「こっちの卵焼きも食べて見て? 美味しかったんよ。ネーヴェちゃんのも美味しそうやわ」
「はい。花畑のような色で、とても、春らしくって。ふわふわ、甘い卵焼きも、美味しい!」
「んーっ、このちらし寿司おいしいわー♪ ね、もう少し貰ってもいいかしら?」
「わ、これは、ぷちって……」
「ん、何れだい……わ?!」
「フフ、其れはいくらって云うのよ。海の……魚の卵なのよ!」
「此れが、卵?」
「嘘だろう……」
 驚いた様子でいくらを眺めるボタンと絢に、三人はくすくすと笑って。話が楽しければ、時間だって進むのは早い。彼れも、其れも、此れもと手を伸ばしていたら、お弁当はすっかり空だ。
「それから…ハイ、皆にもスコーンがあるの。桜のジャムも作ってきたから、たっぷりつけて食べて頂戴な♪
 もちろん絢も精霊たちも遠慮なんてしちゃダメよ!」
「わ、解ったよ」
『絢ったら食い意地が張ってるわ!』
『絢ったらまた食べ過ぎちゃうのね!』
「し、静かに!」
「甘いものは別腹、言うやない? ふふ」
 蜻蛉の助け舟に絢は安堵して、スコーンに手を伸ばした。ネーヴェの用意した金平糖に、蜻蛉が用意した和菓子を、仲良く皆で食べる。其れだけで、こころがぽかぽかと。春の陽気に中てられたかの様に、温まる。
「こちらの世界にきてからちょっと食いしん坊になったかも」
「わたくしも、少し食べ過ぎてしまったかも」
「別腹だから。今日は、例外だよ」
 ね、そうでしょ。と子供の様に口を尖らせる絢が歳不相応に幼く見えたから、四人は叉声を挙げて笑った。


 今日のお礼をしよう、と云い出したのは誰からだっただろうか。気付けば、歌い、奏で、踊っていた。
 精霊の竪琴を爪弾くジルーシャ。桜の精と踊るネーヴェ。精霊の言葉で口遊むボタンは、空に手を翳して雪を齎し、文字通りの『桜吹雪』を作り上げる。其れに合わせて灯篭が空へと昇っていく。なんて、美しいのだろうか。
 桜の匂いを胸いっぱいに吸いこんでから、蜻蛉は隣で手拍子を打っていた絢に声をかける。
「絢くん、この四人をイメージした飴細工を作って貰えんやろか?」
「え? 嗚呼、解った。少し、待っていてね」

 そうして。楽しい時間も過ぎ──気づけば夜桜が、空を埋める。その姿はまるでお化粧で顔を変える女子(おなご)のようだ。
 夜が、満ちて往く。
 風邪をひいては勿体ないからと、ネーヴェが用意しておいたブランケットに包まって、雪月花を酒の肴に口に含んでいく。
「お待たせ。解らなかったから、一人一人にも、全員を示すものも作ってきた」
 蜻蛉にはボタンが履いていた硝子の靴に秋桜が咲いたものを、ネーヴェには椿を抱いた兎を、ジルーシャには雪だるまに寄り添う朝顔を、ボタンには瑞雪が溶けていく桜を。
 そして、それら一つが寄り添った四季の花束を。

『春を往く貴女へ。
 灼くる青に咲く朝顔を。
 朝寒に負けず揺れる秋桜を。
 凍雲見上げる椿を思い出してください。
 祝福の雪は、屹度寄り添うことでしょう』

 ボタンが用意した蜜酒のお陰だろうか、絢は込めた思いをするすると口に溢していく。
「花言葉は夏から其々固い絆、乙女の真心、控えめな素晴らしさ。で、」

「桜は、あなたに微笑む。桜の中でも、山桜を」

「悲しいときは、おれ達を思い出して……なんて。酔ったかなあ」
 絢は照れ臭そうに、夜桜を見る。釣られて四人も、同様に。夜桜を見ると寂しかった。蜻蛉も酔った振りをして、小さく口にする。
「やけどね。こないして、ボタンちゃんに見せてあげたかった約束の景色やもの、忘れんへんよ」
 待ち望んでいた季節が、悪戯に過ぎて往くことはもう無い。
 雪月花の夜、空の灯篭、いつかに望んだ桜の下で――夢も約束もみんな叶ったのだと、ボタンは告げた。
「…貴方のおかげです」
 ありがとう。雪月花舞う春の夜に、其の言葉は確かに花開いた。
「…ね、アタシ思うの。アタシたち皆、生まれた場所も育った環境も違うのに、こうして同じものをみて綺麗だって感じる。それって凄い事じゃない?」
 ジルーシャは呟く。嗚呼。確かにその通りだ、と、誰もが思ったことだろう。

 春は此処に。夜桜は、共に。
 夢の淡いに消えることも、恐れることも、無い。

 今、確かに此処で、笑い合えているから。

成否

成功

状態異常

なし

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