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シナリオ詳細

殺意は黎明に花開く

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●焼き討ちか、惨劇か
 『幻想』に咲く美しい花。それが多くの者が『その植物』について知る最初の知識である。
 花弁は複数色を散りばめたものが複雑に重なり合い、光の加減で濃淡が細かに変化する。見るものからすれば虹に喩えるのが適切であろうか。
 次にその花について知るのは、その生態。花開くのは基本的に夜明けとともに。昼を待たずに花は閉じ、それが何日か続くと枯れ落ちる。しかし、種をつけて再び花開くまでのサイクルは短く、群生地があれば常にいくつかは蕾をつけ、花開くときを待っている。
 そして最後に、その花の持つ『質の悪い性質』について、人々は畏怖と悲嘆とを以て知ることとなる。
 この花――『心裂草(こざきそう)』の咲く場所で起きた事件についての記述は多くはないが。
 少年少女の複数の死亡、くわえてその両親の他殺体、というか『互いに殺し合った痕跡』が残されていることが、この花の性質を雄弁に物語る。
 言ってしまえば『殺意を喚起する』特性。花粉、花の姿、複数の要素が囁かれるが、血を浴びた『心裂草』はそのまま閉じることなく、枯れるまで開くのだという。
「で……血を浴びたヤツは種をつけない」
 『博愛声義』垂水 公直(p3n000021)の声音に感情の色は載っていない。彼のギフトゆえか、『怒りも呆れも悲しみすらも平等に、無価値に聞こえる』その言葉の意味を理解するのに、イレギュラーズは次の言葉を待つことになった。
「花は種をつけなければ世代交代をしない。花を全滅させるには種をつけさせなければいい。心裂草を全滅させるには燃やし尽くすか、最悪花開いたやつに血を吸わせるかしちまえばいい」
 つまり、一度繁茂した『心裂草』を全滅させるには焼き討ちか、その場での流血沙汰かを選べばよい。彼はそう言っている。
「つっても、後者の手段は現実的じゃない。燃やしたほうが効率的だ。小癪なことに地下茎まで持つ変種がいるらしいから、掘り返して火にかけてほしいモンだが。なんていうかさ、問題はそれだけじゃ終わらないんだよな」
 敢えて傷つけ合ったり、自傷までして全滅させよ、というわけじゃないらしい。一般人を必ず殺せというわけでもない。その事実に一同は胸を撫で下ろしたが、話はまだ終わっていない、らしかった。
「問題は2つ。群生地からいくつか花が抜かれてることから、すでに近くの村のどこかに蕾があることは明らか……今晩を超えちまえば悲劇は間違いなしってこと。
 もうひとつは、燃やしたら燃やしたで周辺の生物が殺意を喚起されるらしくてね、森の獣やら、あるいは君達自身も自制心を強く持たないと危ないってこと。
 そんなわけだから、『群生地で火にかける』連中と『村のどこかにある蕾を盗む』連中、二手に分かれてもらいたい」
 空の陽は西に傾き、間もなく夜を迎えるところであった。
 これから森に分け入り『心裂草』の群生地を一晩かけて殲滅し。その際に襲い来る動物を蹴散らし。
 一方で、最寄りの村に忍び込んで花を盗む。どこにあるとも知れぬそれを。
「なに、騒がれても君達なら口封じもできるだろう。説得でもよし威圧でもよし。できれば避けてほしいが、多少暴力的でも構わない。血の海で一家団欒されるよりは、マシだね」
 よろしく頼むよ、と告げた彼の表情に、少なからず苛立ちを覚えた者がいたとして、非難はできまい。

GMコメント

 綺麗な花には棘があるので、心に刺さるのもやむなしです。

●注意事項
 この依頼は『悪属性依頼』です。
 成功した場合、『幻想』における名声がマイナスされます。
 又、失敗した場合の名声値の減少は0となります。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●成功条件
・『心裂草』群生地における完全消滅
・最寄りの村に回収された『蕾』の奪取

●心裂草
 おおむねOPのとおり。殲滅するには地下茎まで掘り返して全部燃やすのが効率的なので、群生地を掘り返して積み上げてキャンプファイアするのが一番いいです。
 なお、掘り返したりするのにアイテムを持ち込む必要はあまりありません。武器なりなんなりで掘り返せばよいのです。
 燃やす際、『心裂草』は燃える地点を起点として『超遠・無・混乱』特性の花粉を撒き散らします。これによって混乱したクマやら獣各種が襲ってくることもありますが、そう強力な敵ではないのでご安心ください。数はともかく。

●村
 世帯数30前後の山村。
 幾つかの花が引き抜かれた跡から、この村の子供が家に持ち帰った可能性があります。
 朝になる前に盗み出してちょっと離れた位置で燃やすのが適切でしょう。
 盗みに入った先で見つかった場合、適切に対処しないとあらぬ誤解とかを受けます。
 家の近くで燃やしたり、見つからないまま朝を迎えると最悪の事態も考えられるので、そこは是非注意してください。

 森を火にかけたり村に盗みに押し入って悪いわけがなかろう、なのです。
 ご参加お待ちしております。

  • 殺意は黎明に花開くLv:4以下完了
  • GM名三白累
  • 種別通常(悪)
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年06月17日 21時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

空摘・骸(p3p000065)
ガラクタあつめ
サエルミア・フォレレ(p3p000970)
りけじょ
アグライア=O=フォーティス(p3p002314)
砂漠の光
レ・ルンブラ(p3p004923)
影狼
銀(p3p005055)
ツェペシュ
ヴィマラ(p3p005079)
ラスト・スカベンジャー
音所 輪華(p3p005154)
死神使い
刀崎・あやめ(p3p005460)

リプレイ

●『凶刃』
 人の心とは流されやすいもの。
 人の理性とは薄れやすいもの。
 結果的に周囲に悪意を及ぼしてしまう人ならざる存在に、本質的な罪はない。
 なれば、何故そのようなものが生まれてしまったのか、人と触れ合ってしまったのかを追求するだけ無駄なのである。
 『死神使い』音所 輪華(p3p005154)は、不幸が生まれたこの機会を尊び、この機会にふれることの出来る己を幸福であると感じていた。木々を抜け、村へと降り立った彼女の頬は強い喜悦に歪んでいる。……尤も、彼女のそれを感知できる者は一般人のなかにはおるまいが。
「火急の事態です、誰か居ませんか!」
 『砂漠の光』アグライア=O=フォーティス(p3p002314)は声を張り上げ、沈黙に沈みかけた村を叩き起こす。彼女らの目的は秘して行われるものだが、彼女自身は目立つことで目的達成を企図している。一見すれば相反する行為ではあるが、仲間との連携、そして彼女の持つ技能を知っていれば適切な振る舞いであることは明らかだ。
 寒村で突然、夜半に知らぬ声が呼びかけてくる。そんな行為が平然と行われることの異常さを、村人たちはよく理解している。声に気付いて次々と現れた村人は、剣を携え白盾を手にした騎士然とした少女が声の主であることに驚きを隠さなかった。
 傍らに控える輪華の気配が極めて薄いことも、アグライアの存在感をいや増す結果となっているのだが……。
 次々と現れる人々を前に、2人の少女は緊張と期待とで息を呑む。
 同時に、村の外で機を待つ刀崎・あやめ(p3p005460)もまた、緊張の面持ちを仮面で押し隠し、ゆっくりと歩を進める。彼女らの連携は、表向きでは極めて大胆不敵ながら、僅かなミスで瓦解するおそれすらある。その危険性をおしてなお、実行に移したのは……犠牲を最小限に抑えるという決意とそれを成し遂げる自信があればこそ。
 『想定外』が想像し得ぬところに潜んでいる、その恐怖は。経験の浅い彼女たちが知るところではないのだが……。

「テンション上がりすぎると殴り合いになるときもあるよねー、分かる分かる」
「分カるゼ、『部品』ヲ前にシちまうト俺もツいソウなル」
 『スカベンジャー』ヴィマラ(p3p005079)と『ガラクタあつめ』空摘・骸(p3p000065)は、自身の経験を思い出しながら『心裂草』が及ぼす現象を理解しようとしていた。……割と的外れであるのは間を置かずして気付くだろうから、と仲間達が敢えてツッコミを入れることはしなかったが。
 それなり以上に厳重に花粉対策を施してきた姿は、今回の依頼の危険性を十分に理解していることが窺える。仲間が村に持ち去られた蕾を回収する間に、彼らは森の群生地を焼き払わねばならないのだ。
(珍しい植物も、それを燃やすのも……楽しみなのです)
 『りけじょ』サエルミア・フォレレ(p3p000970)は花粉対策に覆面と頭巾とを併用し、顔をすっぽり覆っている。あからさまに不審者なのだが、仲間以外が彼女を見ることはないだろうから大丈夫だろう。恐らくは。
「このような美しい花がね……危険には見えぬが、そう思うのも今だけなのだろう」
 『永久の罪人』銀(p3p005055)も口元を布で覆い、内側に濡れガーゼを準備するなどで花粉対策を十分に施している。眼前に現れた蕾ばかりの花畑は、確かにそれだけでも見惚れるに値するといえよう。……その実体を知らなければ、確かに手元に置いておく者の気持ちもわかろうというものだ。
 迫る夕闇を仰ぎ見た銀は、仲間達と再度、身の回りの準備を確認し合う。ヴィマラが「歌おうか?」と問うてきたが、銀が丁重に断った。
(君たちを摘んでいった相手は、君達何本分の高さだったのかな? 詳しいこと、覚えてる?)
 サエルミアは心裂草の蕾に対してささやくように問いかける。自然と対話する能力は、この局面において――それらに不利にならない限りは――有効に働く。そのうえで、断片的な情報を効率よく得る為に、彼女は極力言葉を選んで話しかけてもいた。人間の特徴を草花に喩え、意思疎通を考慮したやり方……急を要する場面でも落ち着いて対処していることがよく分かる。
「まトめて燃やスンダロ? 急がナきゃナァ」
 骸は仲間の行動をよそに、地下茎を次々と掘り返していく。彼にとって花の探索とその排除は早急に済ませるべき『おまけ』であり、本来の目的は……多くの仲間とは別のところにある。花の排除と被害者の最小化は依頼を達成するための方便でしかなく、彼には彼の目的が存在するのだ。
「枯れ木を予め探しておいて良かったな。土を払っても普通に燃やせば、間違いなく燃えきらずに片手落ちになっていたところだ」
「風向きも風の強さも問題ないみたいだねー、変に強い風が吹いて燃え広がったらちょっと洒落にならなかったところだけど」
 銀とヴィマラもまた、サエルミアの邪魔をしない程度に周囲の心裂草を掘り返していく。神秘の力を借りれば話は別だろうが、生木生草というのは往々にして燃やしにくい。湿った空気に覆われた森の中で乾いた枝葉を探すのは骨が折れたが、それに見合った成果は期待できる……はずだ。
 サエルミアは心裂草との対話を終えると、仲間達が掘った穴へと放り込む。
 少し残酷な仕打ちかもしれないが、大多数を活かすためには仕方のない行為である、と彼女は割り切っていた。……何より、これらの草花が早く燃え上がるのが見たいのだ。だから、というわけでも無かろうが。彼女はすべて掘り返したのを確認するが早いか、焔式で穴に詰め込まれた草花を燃やしにかかった。
「しかし夜に大人数で炎を囲むって楽しい感じになるよねー、今そういう場合じゃないけど」
「そうカ? こレからモッと楽シクなるゼ?」
 ヴィマラはどこか高揚した気分を抑えようとしているが、骸はお構いなしとばかりに笑みを深めていた。他者は……特にサエルミアはさておき、彼は好き好んで燃やす側に回ったわけではない。しかし、最低限の義務は果たしたことになる。これから現れるであろう獣の群れを排除することも、重要な任務となるが。
 彼にとって最も重要な事柄が、任務の遂行ではなかった、というだけの話である。

●騙し通すこと
 アグライアの前に現れた村人達は、一様に困惑の色が濃いままに相手の出方を窺っていた。寒村に現れた身なりのいい騎士。それだけでイメージできるのは貴族による専横の兆候、といったところ。だが、彼女の口から放たれた言葉は一同の不吉な予感を払拭する。
「私はローレットから依頼を受けてここに訪れた冒険者です、あなた方に危害を加えるつもりはありません! 村の近くに自生していた危険な花がこの村に持ち込まれた可能性があるということで調査に参りました!」
 アグライアの宣言に合わせ、輪華が書簡を広げて村人達の目にしっかりと見せつける。無論、これは偽造文書であるのだが……一般人にその真偽などわかろうはずもない。
「持ち出したのは子供のようです、咎めるつもりも有りません。ただ心当たりが有ればどうか協力して下さい。この通りです!」
「万が一、持ち込まれた蕾から自生しているようなら余計に危ないわね。私達も確認に回るから、心当たりがないか教えてほしいの」
 2人がそれぞれ言葉を紡ぐタイミングは、両者の判断によるところが大きい。だが、衆目を集めるように声を張り上げるアグライアは人々の感情を不安でかき乱し、輪華は薄められた存在感と事実のみを話す端的な姿勢により信頼を引き出す。
 期せずして、彼女達は……大なり小なり『他者を騙す』という一点において、非常に効果的な連携を取れていたことになる。
「……いささか信じがたい話ではございますが、私どもの村には襲われるほどの旨味が無いのも事実でございましてな。その話、信じましょうぞ」
 村長とおぼしき男は大仰に頷くと、村人達へ向けて思いあたりはないか、と問いかけた。子供達は寝入っているのか、その場には姿を見せていない。大人達が見たか、子供からなにか聞いているか。その程度の情報を得るのが精一杯だろう。
 村長の同意をうけて輪華は即座に行動を開始し、家々の間を歩き回りながらそれぞれの家を透視によって覗き込む。彼女の動きに呼応するように現れたあやめは、輪華の軽い身振りから心裂草らしき蕾がある家へと忍び込むべく歩を進めた。……鍵がかかっていない家、個別の部屋に鍵を設けていない家が少なからずあったのは、あやめにとって幸運であった。
 技量が十分にあったとて、時間のロスは無い方がいいに決まっている。村人と鉢合わせになった時の想定もしているが……そこはアグライアが口八丁を駆使して足止めに回っている。
 村の探索は想定よりも順調に終わる。そんな希望が一同の脳裏をかすめたのと、村の入口にボロボロになった骸が現れたのとは、ほぼ同時だった。
「篝火代わりに花を使ったら……目が血走った動物達に襲わ……助けて……助け」
 視線が一定せず、言葉も拙く、そして何より血まみれの見た目のインパクトが大きい。彼の言動は、異常に敏感になっていた村人達にはとりわけ強く映ったのは確かである。
 膝をつき、倒れた彼のもとへ向かう輪華の足取りは素早い。仲間を気遣う冒険者の鑑のような動きは、村人達の関心を否応無しに高めたが……その表情に厳しい色が浮かんでいることを気付く者はいなかった。

 わずかに時間を巻き戻し、燃え盛る心裂草の傍ら。
 イレギュラーズは、四方から近付きつつある獣達の唸り声に緊張感を顕にする。
「上空から猛禽2羽、6時方向と10時方向から野犬……と、この足音は熊か? かなりの数が近付いてきている」
「草がたくさん燃えているから、夜目が利かなくてもそれなりに見えますねえ。とても楽しい気分なのですよ」
 銀は動物達の接近をつぶさに伝え、仲間の耳目たらんとする。明かり一つ無い森であれば、彼の存在は死活問題たり得ただろうが……かたわらで燃え盛る炎が、奇しくもイレギュラーズの視界を拓く活路となったのである。その炎が危機を運んできているというのは皮肉きわまりないが、サエルミアにとってはそんなことは割とどうでもよく。燃え盛る草木を観察できることに至上の喜びを感じているのだった。
「まさかだけど、死体に咲く花だとかそういうことは無いよねえ?」
 ヴィマラは杖を振り回しながらアンデッドのなりそこないを盾に回し、近付く動物へ向けて束ねた怨念を叩き込む。
 空から襲いかかってきた猛禽は彼女の矢に撃ち落とされ、野犬は銀の操る魔力の弾丸と、すかさず叩き込まれる骸による爪の一閃により命を閉じる。
 木々をなぎ倒して現れた大型の熊は、さしものイレギュラーズとて手を焼く相手ではあるが。数名がかりの集中攻撃を叩き込めば、タダでは済まない。
 轟音をあげて崩れ落ちた熊を乗り越えるように、さらに野犬が現れて骸の肩を蹴り、引き裂いて距離を取る。
「こそコソ隠レて鬱陶しイナ」
 返す刀で野犬を仕留め、骸は不機嫌そうに毒づく。今の数は初動でしかなく、さらに多くの獣が近付いている。銀がそう告げたのだ。
「狂った状態のサンプルが増えるのは……大変ですけどやり甲斐があるのです。ここは踏ん張りどころです」
 サエルミアは笑みを深め、己を鼓舞して魔導書を構える。
 仲間達も各々の得物を構え、十分な対処に動くべく緊張を高めた。……そしてその裏で、骸はその場から姿を消したのだ。

 輪華の心中を埋める感情は、ひたすらに困惑だった。……早すぎるのだ、骸の登場が。群生地の対処に回った仲間は確かに、行動は早かった。だが、アグライアが村人を集め、輪華とあやめが捜索を本格化させたのと間をおかずして彼は現れた。現れてから倒れ込むまでの所作や言動は事前に聞き及んでいた範囲を超えてはいない。いない、のだが。
「アンタ、本当に大丈夫なの? 皆は問題な――」
「……ひヒッ」
 たまりかねて詰問じみた言葉を向けた輪華は、骸が倒れ伏した状態から四つん這いの姿勢をとり、足に力をこめたのを視認する。何をするつもりなのか、など最早問うまい。輪華と骸の間で火花が爆ぜ、炎を巻いて骸の、白魔から奪った手が伸び上がる。
「心裂草のせいで、こんなことをしてるんじゃないでしょうね!?」
「確かニ狂うヨウな演技は頼まレタな。ケど欲しイノヲ手に入レる感情ハ、ガチだけド何カ?」
 輪華のどこか大袈裟な口調を嘲笑うように、骸は攻め手を緩めない。
 彼は今、任務達成のためでも村人を欺くためでも、『処理する必要がある村人を排除する』ために動いているわけでもない。彼を突き動かすのは欲望……村人の中にいた『めぼしいパーツ』を持つ相手をどさくさに紛れて襲い、奪おうという本能からくる動きだったのだ。
「……心裂草は人の心を狂わせます! あのように! ですから皆さん、情報があれば教えてください! 無ければ、仲間にこの場を預けてください……!」
 アグライアは心苦しそうに宣言し、村人達がより混乱の様相を強めたのを確認してから、輪華と入れ替わるように骸の正面に立ち、抑えに入った。
 喀血混じりに小さく口を動かした輪華と視線を交わし、アグライアは裂帛の気合いをこめて白盾を叩きつける。演技としても、実情としても、骸を自由にさせてはおけない。
 そして、あやめ1人に探索を任せきりにするわけにはいかない……輪華の助力が必要なのだ。
 骸とて物を知らぬわけではなかろう。不利と知れば演技に徹することを優先するかもしれない。そうであれば、と心中で祈りながら、村人の眼前で剣戟は続く。

●望まれるべき結論
「……これで混乱していた動物は全部か。なるほど、数はなかなかだった」
 銀は細剣を腰に収めると、深々とため息をつく。魔力の消費が激しい能力を連発したのだ、肉体の消耗以上に、彼の体力は並ならぬ疲労感を訴えていることだろう。
 だがそれは、他の仲間達にも言えること。
「少し動物の死骸も残っちゃったねえ。また咲くと面倒だから、穴に放り込んで燃やそうか?」
「賛成です、危なさそうなものは徹底して燃やしちゃいましょう」
 ヴィマラの提案に、サエルミアは食い気味に賛意を向けた。
 また、何かが燃える様子が見られるのか。『深緑』の出身にしては相当、変わっているが……彼女はこのテのものが相当好きなようだった。
「骸の姿がないが……村の方で役割を果たしているのだろう。結構なことだな」
 銀は首を振り、村の方角へと視線を向ける。白み始めた空に目を凝らしても、彼は気づかなかっただろうが。村から少し離れた位置で、一筋の煙が薄くたなびいた。心裂草の燃える煙は、村人にもイレギュラーズにも、森の住民にも影響することなく燃えて消えていった。

 ……余談であるが。
 傷だらけで意識を失って戻ってきた骸の姿に、情報屋は訝しげな目を向けたが。報告書を『つつがなく遂行された』体でまとめたのも、また彼である。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

空摘・骸(p3p000065)[重傷]
ガラクタあつめ

あとがき

 お疲れ様でした。
 敵を騙すにはなんとやら、とは言うもので。村人は見事に騙されてくれたようです。何よりでした。
 ……といういい話で終わらせたいのですが。
 「任務遂行のために已むを得ず命を奪ってもよい、人道に反するから悪名を背負う依頼である」というのと。
 「任務の中でなら無差別無尽蔵に一般人を巻き込んでもよい、これは悪に徹する依頼だから」というのとでは、当然ながら天と地ほどの認識の差異があると言わざるを得ません。
 今回は結果としてよい方にころんだという判断となりますが、当然ながら『今回限り』です。次はないものと思ってください。マジで。

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