PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<ヴァーリの裁決>酒場の決闘

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 王都メフ・メフィート郊外の森に、『彷徨う駿馬』奥州 一悟(p3p000194)が所在する領地がある。
 樹齢を重ねた大木に囲まれた自然豊かな地で、リスやウサギなどの小動物が楽しく暮らしている。ちょっとしたレジャー施設もあり、領地に建つ宿屋は癒しを求めて幻想各地からやってきた旅行者でにぎわっていた。
 ところが……。
「酒場はまだ閉まったままなのか?」
 宿屋の主人が渋顔で従業員に問う。
「はい。ずっと閉まったままですね。夜逃げでもしたんじゃないでしょうか? 資金繰りが悪くなって首がまわんなくなったとか」
「馬鹿いってんじゃないよ。うちのお客さんで毎晩賑わっていたじゃないか」
「そのうちの客が減ってますからね」
 主人と従業員は、揃って深い溜息をついた。
 レジャー施設は他の領地にも立っている。とくに珍しいものではない。旅行者は、すぐ手の届くところで見られる、愛らしい野生動物が目当てで『一悟の森』にやってくるのだ。
 その野生生物たちが、パタリと人前に姿を見せなくなっていた。丁度、酒場が予告なく閉められた頃からである。
「動物たちが密漁されている痕跡も、死骸もない。彼らの餌だって森に豊富にある。それなのに……いったい、どこへ行ってしまったんだろうね」
「ですね……」
 またも溜息。このままでは完全に客足が途絶えて、宿も廃業に追い込まれてしまう。いま逗留している客がいなくなればお終いだ。
「せめて、酒場が開いてくれれば気晴らしを提供できるのに。おい、おまえ。ちょっと酒場の様子を見てきてくれないか?」
 数分後、泡を食った様子で従業員が宿に駆け戻ってきた。
「た、大変です。酒場に明かりが灯っていたから、中を覗いてみたら……獣人たちが森の動物たちを囲んで酒を飲んでいます!」
「獣人? ブルーラッドか?」
「違います、ブルーラッドじゃなくて、なんていうか……人獣? いや、違うな。獣の体に人の体ついている化け物だったんですよ」
「なんだって!?」
 宿屋の主人は至急、領主の一悟に伝書鳩を飛ばし、助けを要請した。

GMコメント

●ブレイブメダリオン
 このシナリオ成功時参加者全員にブレイブメダリオンが配られます。
 ゴールド、ミスリル、アダマンタイトとメダルごとにランクがあり、
 それぞれゴールド=1p、ミスリル=2p、アダマンタイト=5pとして扱われブレイブメダリオンランキングにて総ポイント数が掲示されます。
 このメダルはPC間で譲渡可能です。

●成功条件
・魔物の討伐

●日時と場所
王都メフ・メフィート郊外にある『一悟の森』の酒場。
夜です。
店の中は明かりがついています。

●敵
・人狼×3体
 2足歩行のオオカミの体に人間の頭がついている魔物です。 
 2丁拳銃武装、神秘攻撃で広範囲を攻撃することに長けているようです。
 素早さに優れ、回避能力が高いようです。
 怪王種(アロンゲノム)ではないようですが……。 

・森の動物
 熊×2と鹿×3が人狼に噛まれて凶暴化しています。
 噛む、突進などの物理攻撃しかありません。

●森の動物たち
 人狼たちにさらわれて酒場に監禁されている森の動物たち。
 兎やリス、イノシシなどの小動物が30体ほどいます。
 人狼たちのにらみですくみあがって動けません。噛まれて手下にされるのを待っている状態です。

●友軍
・宿屋の主人をはじめ、街の有志10名が手助けを申し出ています。
 戦闘能力はまったくありません。

●その他
宜しければご参加ください。お待ちしております。

  • <ヴァーリの裁決>酒場の決闘完了
  • GM名そうすけ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年04月10日 21時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

奥州 一悟(p3p000194)
彷徨う駿馬
郷田 貴道(p3p000401)
竜拳
ヨハン=レーム(p3p001117)
おチビの理解者
フルール プリュニエ(p3p002501)
夢語る李花
ネーヴェ(p3p007199)
星に想いを
イルリカ・アルマ・ローゼニア(p3p008338)
ローゼニアの騎士
紅迅 斬華(p3p008460)
首神(首刈りお姉さん)
黎 冰星(p3p008546)
誰が何と言おうと赤ちゃん

リプレイ


 『彷徨う駿馬』奥州 一悟(p3p000194)は、思いっきり酒場の扉を蹴った。
「ここの領主の奥州一悟だ! おい、そこのブキミ―ズ! 顔だけ人って気持ち悪いんだよ。オレの留守に森の動物たちをよくもイジメてくれたな。ぶっ飛ばしてるから覚悟しやがれ!!」
 長台詞を一気呵成に喋り切ったあと、一悟は固まった。
 『うさぎのながみみ』ネーヴェ(p3p007199)はその光景に震えあがった。綿のように柔らかく、ほんのりと温かいウサギの耳を震わせて、その場にうずくまる。
 無理もない。
 ウサギは自然界では弱者、臆病なのが本来の姿なのだから。
「――って、そうじゃないでしょ。ウサギはウサギでもあなたはブルーブラッド。イレギュラーズだよ!」
「そ、そうでした。わたくしとしたことが」
 『ローゼニアの騎士』イルリカ・アルマ・ローゼニア(p3p008338)に活を入れられて一旦は立ち直ったものの、目の前のあまりにおぞましい姿に震えがとまらない。
「でも、しょうがないよね。アレは、ちょっと……ないよね」
 イルリカは長耳さんと一緒に後ろへ下がった。
 それから『夢語る李花』フルール プリュニエ(p3p002501)とともに、こっそり酒場の裏へ回った。
 『パンドラの色は虹色』黎 冰星(p3p008546)と『宵闇の調べ』ヨハン=レーム(p3p001117)も、敵の姿に怖気を振るう。
「オオカミの体に人間の頭? 僕たちの仲間……」
「月並みにウェアウルフとかそういう?」
「……ではないですね。明らかに。ええ、違います。絶対に違うと断言します!」
 扉を蹴り開けたものの、入口で固まるイレギュラーズたち。
「キ、キモい……予想していた以上にキモい……なに、あの、二日酔いの神さまがゲーゲー吐きながら作ったとしか思えない生き物は」
 ようやくフリーズが解けた一悟のこの一言が、イレギュラーズ全員の気持ちを言い表している。
 いつまでも店の中に入ってこようとしないイレギュラーズに、何を勘違いしたのか、酒場のカウンター前に陣取った三体の人狼がいきりだした。扉が開かれた時は、驚愕に仰け反り、目をむいて固まっていたくせに、だ。
「へっ、オレたちを見てビビっちまったようだな」
 三体の真ん中。
 高慢で疑り深く、人を小ばかにしたような小さな目の下は、皮膚がたるんでだらりと垂れ下がり、バーコード髪の下の小ぶりながらでっぷり太った顔には、長い皺がいくつも伸びている。以後、部長と称する。
「みんなで仲良く酒を飲みに来たのかい? いいよ、飲ませてやる」
 三体の右端。
 全体として冴えない顔の色に脂ぎった長髪、それを右手の小指でかきあげる癖のあるようだ。荒れた肌に、唇だけが生々しく赤いのが印象的である。以後、課長と称する。
「その前に、ウチらとおんなじ姿になってもらうで」
 三体の左端。
 なんてこった。髪にキツイパンチパーマをかけたオハバンじゃないか。アイシャドウはラメ入りの紫と、パンパンにむくれた顔にどぎつめメイクをしている。以後、オバハンと称する。まんまではあるが。
 三体とも狼の体の下腹が、ぽっこりとみっともなく突き出ていた。
 『首神(首刈りお姉さん)』紅迅 斬華(p3p008460)が、渾身の作り笑顔で答える。
「申し訳ありませんが、謹んでお断り申し上げます♪」
 あれと同じ姿に……冗談はよし子さんである。
「あん? ほな、何しに来たんや」
 『ドラゴンスマッシャー』郷田 貴道(p3p000401)は、両手を腰に当てがい、ぐるりと首をまわした。
 ポキポキと骨が鳴る。
「HeyHeyHey、ファッキンモンスターども? ミーたちはユーたちを退治しに来たハンターだ。覚悟はいいか?」
「なにぃ、オレたちを退治するだと?」
「笑わせてくれるねぇ」
 人狼たち鼻から勢いよく息を吹きだすと、ダン、と音をたててジョッキをカウンターに置いた。
 脇に控えていた鹿が前脚で床をかき、熊が牙をむいてイレギュラーズを威嚇する。
 ――その時。
 天窓のガラスが叩き割られ、粉々に砕かれたガラス片の雨とともに、紅蓮の炎花を纏ったフルールが落ちてきた。


 魔物たちの目がフルールに集中し、動物たちが怯えて一斉に鳴き声をあげる。
「逆なら絵になったでしょうに、こうなると歪よね。あなたたち、狼なの? それとも人なの? 怪王種ではないみたいだけど……もし、人だったら人殺しになるのかしら?」
 フルールは立ちあがると同時に、細腕からは想像できないほどの力で魔法の炎を宿す爪を振るい、課長のぽっこり腹に三本傷をつけた。
「いたぁぁぁいぃぃぃぃ」
 課長の泣きが入った叫び声が棚の酒瓶を震わせる。
「なにをボーっとしているんだお前たち。早くやらないか!」
 部長に怒鳴られた熊が、床にうずくまる小動物を蹴散らしながら入口に向かい、鹿が角でフルールの太ももを突く。
「――っ」
 とっさに鹿の角を両手で掴んだ。
 課長が真っ赤な唇を歪め、小指で髪をかき上げながら銃口を額につきつける。
「もういい。キミなんか仲間になんてしてあげないよ。死ね」 
 バンッ、バンッという凄まじい音が周辺に響き渡った。
 首を寝かして銃弾をかわしたが、頬に銃創をうけたらしく、顔の半分が血だらけになった。
 一悟が床の動物たちを跳び越えて、一足飛びに課長と距離を詰める。
「女の子の顔に傷つけやがって。何考えてんだ、このクソオヤジ!」
 ごぅ、と空気を燃やしながら振るわれたトンファーが、課長の顔面にヒット。
 殴り倒した。
 倒れながら苦し紛れに発射した弾が、一悟の太ももを撃ち抜く。
「傷は僕が治す! 命だけは落とすなっ!」
 ヨハンを中心に金華の光が酒場いっぱいに広がり、二人の傷を癒した。
「あんたら、全員しばいたる!」
 オバハンが構えた二丁短銃の左を、裏口から潜入して忍び足で近づいていたイルリカが、太い手首に手刀を叩き入れて落とす。
「えい!」
「いったぁ、何すんねん!」
 イルリカはオバハンが短銃ごと大振りしてきた右フックをしゃがんでかわすと、怯えて動けない動物たちを保護するために、幻の壁を作りだして魔物たちの視界を大幅に狭めた。
「気は使うけど、有効な手は持ってないから……皆がんばって?」
 勢い余ってカウンターに突っ伏したオバハンが、今度は左フックを放ってきた。
 腕が回り切る前に、胸をドンと勢いよくついてよろめかせる。
「うわっ?!」
 オバハンにぶつかられて驚いた部長が、バーコード髪を乱れさせながら銃を乱射した。
 一発は天井をぶち抜き、一発は栗鼠のすぐ前の床に穴をあけた。
 冰星はショックで硬直し、横倒れになった栗鼠を両手で包み込んだ。
「こんな狭い場所で発砲なんて危ないじゃないですか!」
「うるせぇ! オレに口ごたえするな!」
 こんどは明らかに冰星とその周りにいる動物たちに狙いをつけて、部長が二丁の引き金を絞る。
 がふっ、と声を漏らして部長の体が空に浮いた。直後、尻から床に落ち、背をカウンターに打ちつける。
 貴道が凶暴化した熊のベアナックルをウィービングでかわし、そのまま巨体の脇をすり抜けて、がんと一発、部長のあごをかちあげたのだ。
 熊はヨハンが放ったネメシスの光に痺れて立ち止まった。
 一悟が背中に回り、「おとなしく外で待ってろ」、といって蹴りだす。
 それを見た部長は唸った。
「Hey! か弱いアニマルと遊んでばかりじゃつまらねえだろ? それとも何かい、ユー達は弱い者イジメしか出来ないチキン野郎だったか?」
 早く立てよ、と貴道がまげた指をくい、くい、と動かす。
 その隙に冰星が、周りの動物たちを抱きかかえられるだけ抱きかかえて店の外に出た。
 一悟に蹴り出されて短い階段を転げ落ち、道にうつぶせになって伸びる熊の背を乗り越え、目の前の空地へ走った。
「この子たちのことをお願いします!」
 一悟の命令で空地にかがり火を焚いて待っていた有志の領民たちに、腕の中で縮こまる動物たちを託した。
 まだ店の中に捕らわれている動物たちがたくさんいる。踏みつぶされたり、流れ弾が当たって怪我をする前に連れ出さなくては。
「僕、中に戻りますね」
「う、後ろ!」
 えっ、と振り返る。
 冰星の頭の上から、立ち上がった熊が覆いかぶさってきた。
 びっ、と左腕をまっすぐ熊に向けてつきだし、その動きを止める。
「落ち着いて。僕の話を聞いて」
 動物疎通のスキルを使い熊に話しかける。
 野生の肉食獣特有の生臭い息が顔にかかり、白虎のヒゲを震わせた。
「かわいそうに……あいつらに噛まれたのかい?」
 首の熊毛が逆立ち、肌が露出していた。よく見ると、血が乾いてできたと思われる、小さくて赤黒い玉が二つある。
「それで怒っているんだね。クマさんの仇は僕たちが打つよ、だからここで大人しくしててくれないかな。でも、もし、暴れないと気が済まないって言うなら……」
 冰星は全身から凄まじい闘気を放った。
 自分には目の前の熊を殺さずに倒すことはできない。だから本気の意思を示すことで、熊に実力の差を悟って引いてもらうしか方法がなかった。
 熊はよたよたと後退ると、四足に戻った。頭を低くして冰星に恭順の意を示す。
 ヨハンと一悟からダメージを受けていたこともあるが、たとえ万全の体長であったとしても、冰星には勝てないと本能で分かったからだ。
「ありがとう。終ったら傷の手当てをするからね。森に帰らずに広場でまってて」
 冰星は熊の頭をひと撫ですると、酒場に戻っていった。


「く、くそぅ」
 部長は貴道を睨みつけながら、ふらふらと立ち上がった。
 顎をさする視界の右隅で、落花が乱れ飛ぶ。
「ごきげんよう♪ 首、くださいな♪」
 肉がだぶつく首に斬華の大太刀が振るわれた。
「ちょっ――」
 部長はとっさに持ち上げた銃で大太刀を受けた。鼓膜をつき刺す金属音とともに、火花が散る。
「あち、あち……いててっ!」
 身獣人由来なのか、それともただラッキーだったのか。
 銃身で受けて首は守ったが、人差し指は切りこんだ刃に切られてしまった。しぶいた血がもたれかかったカウンターを汚す。
 これではもう銃を持てない。
 部長はやけくそになって、右の銃を斬華に投げつける。が、これはあっさりかわされてしまった。
「あぶないですよ、もう♪ ……って、あれれ。仲間を置いて逃げるんですか?」
「それは無理な相談だがな」
「へっ?」
 ブチッと貴道の鋭いパンチが部長の顔を直撃する。
「おっと、ソーリー。大して高くない鼻が潰れてますます低くなっちまったな。で、トサカは何処に置いてきたんだい、チキン野郎?」
「ふが、ふふがァ!」
 大量に流れる鼻血が口に流れ込むためか、部長が不明瞭な声で叫ぶ。
 銃を両手で握ってまっすぐ貴道の胸に向けた。
「人に銃を向けちまったら……通りすがりのボクサーに、頭すっ飛ばされても文句はいえねぇな」
 貴道は腕を引いて反動をつけ、握り込んだ拳にありったけの力を込めた。引き金を絞られる直前に、大きくて固い拳で部長のこめかみに正確な一撃をくれる。
 ぐしゃっと嫌な音がした。部長の目玉がぐるりと裏返ったかと思った途端、床に倒れる。
 貴道はプロのボクサーだ。こめかみが急所だということをよく知っていた。人間の、いや人型の頭の骨は硬くて丈夫なものだが、付け根の部分だけはやわにできている。
「「ブチョー!」」
 左右から課長とオバハンの叫び声があがった。
「え、本当にそんな名前だったの?」
「そうや! ちなみにうちの名前はオバ・チャーンや! その体に血でサインしたる」
「いや!」
 イルリカは夜色の短刀を翻し、掴みかかってきたオバハンを牽制した。
「私も、そこそこ回避は得意なんだ。どっちのほうが長く踊れるか、ためそっか?」
 オバハンは軽く後退し、銃を構える。
 部長を倒した貴道が、獣毛が舞う二人の間に割って入った。
「いや~ん、逞しい胸(はーと)。うちの中の乙女が疼くわぁ。あんた、裏でうちと子づくりせえへん?」
「乙女? HAHAHA、ブサイクなんで気づかなかったぜ、オールドレディーよぉ」
「はぁ、なんやて! ちょっと男前や思うて声かけたら、何調子乗ってんねん!」
 オバハンが牙を剥き、分厚い胸板を食いちぎる勢いで顔を寄せて来た。
「おっと」
 慌てず騒がず、貴道はオバハンに足払いをかけて床に転がす。
 オバハンはそのまま床を転がって、店の外に出ていこうとした。
 入口に立つヨハンに転がりながら狙いをつけ、次の回転で銃を撃つ。
「わっ、なんて器用な……」
 ヨハンが飛びのいた入口へゴロゴロと――。
「はい、残念でした。戻って、戻って」
 冰星がオバハンを店の中に蹴り戻した。
 イルリカが大の字になって床に寝転がるオバハンの胸に冷たい夜を切りだした短刀をつき立てる。
「では、その首頂きますね♪」
 斬華がゴルフスイングの要領で大太刀を振るい、オバハンの首を切り飛ばした。
 外に飛び出していこうとした生首を、冰星がキャッチした。
「思わず取っちゃいましたけど、これ、どうしましょう?」
 終わるまでその辺に転がしとけばいいよ、とヨハン。
「それよりもみんなで動物たちを早く外に連れ出してください。僕はフルールさんと一悟さんのフォローに入ります!」
 一悟が動物に解る言葉で必死に説得し続けているが、人狼に噛まれて凶暴化した鹿は一向に攻撃を止める気配がない。
 それでも鹿を傷つけるわけにはいかず、二人は鹿を巧みに使って自分を攻撃させないように立ち回る課長と戦っていた。
 ヨハンは寓喩偽典ヤルダバオトを開いた。
「罪を憎んで人を憎まず。慈悲深き女神ネメシスよ、その口よりいずる光る息吹で彼の者の罪を裁きたまえ!!」
 溢れ出た光が激しく瞬き、一悟を角で投げ飛ばした鹿を打ち据えた。
 ピィー、と切ない声でひと鳴きしたあと、鹿が足を折ってその場にうずくまる。
 フルールは精霊天花を解くと、鹿を抱きかかえて入口まで下がった。そのまま、店の外へ。
「あ、ちくしょう!」
 鹿という盾を失った課長が、狙いをつけずに銃を乱射する。
「F・ck!」
 貴道やイルリカ、斬華が体を張って床にうずくまる動物たちを庇う。
 冰星もあわてて動物たちを抱きかかえた。
 容赦なく降り注ぐ弾丸が、イレギュラーズたちの体に穴を穿つ。
 ヨハンが温かなサフラン色の光を広げて癒すが、すべてを直し切れない。
「ひ、ひひひっ……それではみなさん、御機嫌よう」
 課長はやたら滅多に銃を撃つことで弾幕もどきをはり、イレギュラーズを牽制しつつ裏口へ向かった。
「逃がすか。オレの領地でよくも好き放題やってくれやがったな。森の動物たちの仇だ、くらえっ!」
 一悟は、裏口の前に回り込むと、ダン、と床を強く踏み込んで課長の懐深く押し入った。怒りに震え、燃え上がる拳を薄い胸に叩きつける。
「おらっ!」
 ぶわっという音とともに炎の種子が花開く。短い獣毛を焼きながら燃えあがる熱炎が、飛び散る赤い、赤い血と肉を炭に変えて散らした。
「よっしゃあぁ! 倒した」
 だが、一悟の喜びもつかの間、酒場の惨状にがっくりと肩を落とす。
 ぽん、と貴道が一悟の肩を叩いた。
「綺麗に片付いたら一杯奢ってくれ、領主さま」


 イルリカと冰星は外で領民たちの手を借りて動物たちの傷の手当てと、心のケアを行った。
「……だよね。本当なら寝ている時間だもんね」
 イルリカが煌々と輝く銀の月をみながら、膝の上で丸くなって眠る猫を優しく撫でる。
「こら、ダメだよ」
 すっかり熊に懐かれてしまった冰星は、じゃれつく熊の頭をやんわりと押しやりながら、鹿の髪傷に薬草を張った。
 広場の端ではフルールと斬華が、人狼たち遺骸の上に薪を積み上げていた。
 焚き火から種火をとってきて、薪を燃やす。
「怪王種じゃないとしたら、本当に何者だったのかしら。モンスター……というわけでもなさそうだけど。ハイペリオンの羽の影響だったりする? それとも誰か黒幕が何かしたのかしらね?」
「んー? でも、噛むと配下に出来るというのは、どちらかと言えばヴァンパイアなのでは?  ……感染に近いのかしら。動物は凶暴になるだけだけど、人の場合は 本当に彼らと同じ姿になってしまうとしたら?」
 イレギュラーズが噛まれたところであんな姿にはならないだろうが、もし人が噛まれたらと思うとぞっとした。
「これはしっかり事後調査をしておかないと大変なことになりそうですね……」
 そうね、とフルールが相槌をうつ。
 その頃、店の中では領主であり酒場のオーナーである一悟と貴道、ヨハンが、掃除もせずに店の隅々をチェックして回っていた。
 閉店時間中に人狼に襲われたとしても、酒場には少なくとも雇われマスターがいたはずなのだ。
「まさか、人狼に噛まれて……あの中の一人になってしまっていたのではないでしょうね?」
 ヨハンが衣装箱を開きながらいう。
「いや、それはない。オレ、マスターの顔を知っているし。銀髪の渋いおじさんだよ、ちっこいけど。逃げてて――」
「Bingoだ!」
 一悟たちが食糧倉庫に駆けつけると、貴道がすっかりやつれた様子のマスターと奥からでてきた。
 麦酒が入っていた大樽のなかに隠れ、時々、出ては倉庫に保管されている食料をつまんで生きながらえていたらしい。
「無事でよかった。よし、掃除にとりかかろう。終わったらオレの驕りで宴会だ!」

成否

成功

MVP

フルール プリュニエ(p3p002501)
夢語る李花

状態異常

なし

あとがき

お疲れさまでした。
酒場を不法占拠して森の動物たちを虐待していた人狼(?)たちをすべて倒すことができました。
怪我をした森の動物もいますが、ちゃんと手当てして森に返しています。

ご参加ありがとうございました。

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