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シナリオ詳細

混沌のスピード野郎集結! 再現性首都高を爆走せよ!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ローレットに持ち込まれた依頼
 きっかけは、練達のWeb上に残されたとあるログだった。
「混沌で一番速いのは、どいつなんだろうな?」
 当人としては軽い気持ちで書き込んだこの一言だったが、それが発された場所が悪かった。趣味人や好事家の集まるコミュニティで発されたものだから、議論に議論を呼んでしまったのだ。
「そもそも速いの定義は何だ?」
「やっぱ最高速度じゃね?」
「それだけ速くてもダメだろ。だったらレースコースは全部直線だっつの」
「いや、スピードだけ速くてもダメだろ。混沌を走るのなら、ゴールまでの障害を乗り越えられる強さがなくては」
「一理ある」
 そんな調子で喧々諤々の議論は止むことなく、実際に各国の走り屋達にレースをさせて決めることになった、のだが。
「何でそれをこっちに持ってくるんですかねえええ! ……まぁ、いいですけど。
 その代わり、皆さんにも手伝ってもらいますよ?」
 実際のレースの企画はローレットに丸投げされ、それを受け付けた『真昼のランタン』羽田羅 勘蔵(p3n000126)を叫ばせることになった。が、コミュニティの人々に準備を手伝ってもらうことを条件に、勘蔵はその依頼を引き受けた。

●依頼は終わりて
 深夜の再現性東京、羽田空港第一ターミナル。普段は最終便が到着すれば閑散としているターミナルだが、この夜は人混みで溢れていた。ここが各国の走り屋達によるレースのスタート地点であり、ゴール地点になっているからだ。
 ターミナル棟の向かいにある駐車場棟には、誰が用意したのか巨大なオーロラビジョンが四つばかりかかっている。レースの様子は、それぞれこのオーロラビジョンに映し出されるのだ。
「……何だかんだで、あの人乗り気だったっすね」
「そうだな……今もノリノリであんなところにいるしな」
 そんな中、勘蔵に捕まってレースの企画準備を手伝わされることになったレッド・ミハリル・アストルフォーン(p3p000395)とアルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)は、即席の放送席に座る勘蔵を見やった。
 ともあれ、レースがこうして開催された事を以て依頼は達成された。あとはこのレースにどう関わろうが、それぞれの自由である。
「レッドさんは、この後どうする?」
「ボクは、そうっすね……」
 周囲を見回せば、飛び入りでレースに参加しようとしている者、誰が勝つかの賭けに興じる者、賭けとは関係なくただレースが楽しみといった様子の観客など、様々だった。そんな中、二人はこれから何をするか思案した。

●選手、コース紹介
「さぁ、いよいよ開催と相成りました再現性首都高ミッドナイトバトル! 混沌各国から選ばれた走り屋達が、己のプライドを賭けて爆走します!」
 アルヴァの言ったとおり、ノリノリな様子で勘蔵は実況を始めた。
「さて、まずは出走選手の紹介です!
 幻想からは、某貴族が所有するエリートサラブレッドぉ! その鞍に跨がるのも、名うての名騎手だぁ!
 鉄帝からは、筋力と脚力が自慢の鉄騎種ランナー! そのタフネスは侮れないっ!
 深緑からは、文字どおり『風に乗る』幻想種のウィンドサーファーが参戦っ!
 海洋からは、ストレートでのトップスピードは随一、隼の飛行種が来てくれたあっ!
 傭兵からは、俊足にプライドをもつパカダクラ! 騎手は傭兵でも有数のパカダクラ騎手ぅっ!
 天義からは、重装軍馬とベテラン聖騎士だ! 豊富な戦歴と神秘力で、台風の目となるか!?
 そして練達からは、練達の持つ最新技術を駆使したっ、魔導動力レースカーっ!
 最後に豊穣からは、このためだけに静寂の青を越えてきた、鴉天狗うっ!
 ――予定されている選手は以上ですが、もしかしたら飛び入り参戦があるかも知れません。その時は、都度お知らせ致します」
 勘蔵のアナウンスと共に、各国から選ばれた走り屋達がターミナル前の路上に現れる。どの走り屋達も、国を代表する走り屋としてのプライドがかかっているためか、その表情は真剣そのもので、触れれば切れそうな雰囲気を醸し出している。
「コースは皆様ご存じのとおり、この再現性東京の首都高です。具体的なコースについては、配布のパンフレットかオーロラビジョンをご覧下さい」
 勘蔵のアナウンスに合わせて、オーロラビジョンにはコースの全体図や勝負がわかれそうなポイントが映し出されていく。
 そうしてコース紹介が終われば、いよいよスタートの時間だ。観客達は、その瞬間を固唾を飲んで見守った。

GMコメント

 こんにちは、緑城雄山です。EXリクエストのご指名、ありがとうございます。首都高バトルと聞いては、手を上げずにはいられませんでした。コースについては、湾岸線から中央環状線を一周するというイージーなのも考えましたが、首都高でのレースなら都心環状線や大橋JCTなども通らせたいと言うことで、こうなりました。その他、いろいろアレンジを入れさせて頂いております。

●シナリオ成功条件
 再現性首都高ミッドナイトバトルを何らかの形で自由に楽しむ

●依頼達成条件(CLEAR!)
 再現性首都高ミッドナイトバトルを開催にこぎ着ける。
 OPにも明記したとおり、依頼自体は達成されてあとは各自の自由時間となっています。そのため、例えばレースに出走したあるイレギュラーズを別のイレギュラーズが妨害する、なんてこともハイルールには抵触しません。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●このシナリオで出来ること
・自分自身がレースに出走する
・誰かの勝利に賭ける(勝っても負けてもシステム的な報酬は増減しません)
・誰かを勝たせるために、レースに乱入するなり何処かで待ち伏せるなりして妨害する
・ただ楽しく観戦する
・その他

●レースのレギュレーション
・選手同士での攻撃可
・観客やファンが乱入しての攻撃・妨害も許容
・飛行可能。ただしコース上から外れたら失格
・壁などにクラッシュしても走れるならレース継続可能

●各国からの選手達

幻想:エリート血統競走馬&名騎手
 加速:A 最高速:A コーナリング:B 耐久性:D 攻撃力:―

鉄帝:マッスル鉄帝人ランナー
 加速:A 最高速:B コーナリング:A 耐久性:S 攻撃力:C

深緑:幻想種のウィンドサーファー
 加速:A 最高速:A コーナリング:C 耐久性:C 攻撃力:C

海洋:隼の飛行種
 加速:A 最高速:S コーナリング:E 耐久性:C 攻撃力:―

傭兵:俊足パカダクラ&パカダクラ騎手
 加速:A 最高速:A コーナリング:B 耐久性:D 攻撃力:―

天義:重装軍馬とベテラン聖騎士
 加速:B 最高速:B コーナリング:C 耐久性:A 攻撃力:C

練達:魔導動力レースカー
 加速:S 最高速:S コーナリング:B 耐久性:D 攻撃力:―

豊穣:鴉天狗
 加速:A 最高速:A コーナリング:D 耐久性:B 攻撃力:A

・各評価の内容(いずれも相対評価です)
 加速:スタートダッシュ後やコーナーを抜けた直後のスピードに影響します。
 最高速:トップスピードです。ただし、ここに至る時間は加速によって変わります。
 コーナリング:きついカーブを如何に安定して速く走れるかです。
 耐久性:妨害や攻撃に耐える力です。妨害や攻撃を回避する力も含まれます。
 攻撃力:他の選手に攻撃する際の攻撃の強度です。―は攻撃はせず、走行に専念することを示します。

●コース
 再現性東京の首都高です。時間は深夜、天候は晴れ、風はややあり、路面はドライ。
 コースには湾岸線(B)や中央環状線(C2)などカーブが緩やかな場所もあるのですが、きついカーブの多い都心環状線(C1)や各JCTもコースになっており、しかも実力行使での妨害が許容されているため、ただ速いだけではダメでコーナリング性能やマシン(?)コントロール、果ては妨害に耐えられる耐久性と言った総合力が重要となっています。
 なお、コースは工事という建前で全面通行止めとなっているため、他の車は走行していません。また、趣味人や好事家達の人脈、あるいは各国の選手のファンによる人海戦術で保護結界が全コースに展開されているため、攻撃が行われてもコースが傷つくことはありません。
 具体的なコースについては、以下のとおりです。

羽田空港第1ターミナル前路上→空港中央IC→(B)→大井JCT→(1:横羽線)→浜崎橋JCT※→(C1内回り)→浜崎橋JCT→芝浦JCT→(11:台場線。いわゆるレインボーブリッジ)→有明JCT→(B)→葛西JCT→(C2内回り)→大橋JCT→(3:渋谷線)→谷町JCT→(C1内回り)→浜崎橋JCT→芝浦JCT※→(11)→有明JCT→(B)→空港中央IC→羽田空港第1ターミナル前路上

 基本的に、BとC2、※のついたJCTは最高速が活きます。逆に、C1、各JCTについては加速とコーナリングが活きます。
 1、11については、加速と最高速のどちらもそこそこに活きます。

 以下、難所や例外などの解説です。

・C1、汐留JCT~江戸橋JCT
 汐留JCTを過ぎたら地下区間に入りますが、宝町ICまで車線の間に柱が立っており、それを避けるように走らねばならないため、より堅実な走りが求められます。また、その先の江戸川JCTはJCTの中でもきつめのカーブになっています。

・C2、小菅JTC~板橋JCT
 まず小菅JCTのカーブでスピードダウンを余儀なくされます。そこから千住新橋の緩やかなカーブを抜けたところで江北橋JCT、飛鳥山、板橋JCTとC2にしてはきついカーブが続きます。

・大橋JCT~谷町JCT
 大橋JCTでは地下のC2から地上の3へと、螺旋をぐるぐる描くようにして上っていくことになります。延々ときつめのカーブが続く感じです。大橋JCTから3に抜ければ直線に近い感じで走れますが、ほどなくして差し掛かる谷町JCTはJCTの中でもきつめのカーブになっています。

●名声について
 このシナリオでは名声は基本的に練達に入りますが、プレイングの内容によっては別の国に入れることが可能です。希望する場合は、その旨をプレイングに明記して下さい。

例:
・その国を代表する別の選手として、レースに参加する(該当する国の名声に+)
・その国の選手を勝たせるために、他の国の選手を妨害する(該当する国の名声に+)
・特定の国の選手を負けさせるために、その選手を妨害する(該当する国の名声に-(悪名))

 ただし、プレイングの内容と希望の内容に乖離がある場合、認めずに通常どおりの処理をすることがあります。

 それでは、皆さんのご参加をお待ちしております。

  • 混沌のスピード野郎集結! 再現性首都高を爆走せよ!完了
  • GM名緑城雄山
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年04月10日 22時20分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

レッド(p3p000395)
赤々靴
※参加確定済み※
レイリー=シュタイン(p3p007270)
ヴァイス☆ドラッヘ
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
アルヴィ=ド=ラフス(p3p007360)
航空指揮
※参加確定済み※
メイ=ルゥ(p3p007582)
シティガール
モカ・ビアンキーニ(p3p007999)
Pantera Nera
ニーヴ・ニーヴ(p3p008903)
孤独のニーヴ
メルランヌ・ヴィーライ(p3p009063)
翼より殺意を込めて

リプレイ

●飛び入り参加、妨害、観戦
 好事家達の議論からローレットに依頼が出されて、再現性首都高を舞台とした各国を代表するスピード自慢達のレースが開催されることになった。その準備に従事していたイレギュラーズの何人かは、レースに興味を持ったのか飛び入り参加を決める。
「ふとした興味と噂話からと聞いたっすけど、お祭り騒ぎがすごいっす」
 『赤々靴』レッド・ミハリル・アストルフォーン(p3p000395)は、レースを知って再現性東京の羽田空港第一ターミナルに集まった観客達の熱気に圧倒されていた。
 レッドとしても、スピード自慢達の中で誰が速いかは気になる。さらに言えば、間近で見たいし何なら追いつき追い越したい。それに、窓から漏れる電気の灯りがきらびやかな再現性東京の夜を走るのは、気持ちよさそうだと思えた。
「だから、ボクもハイパーメカニカル子ロリババアと共にレースに参加っす!」
 各国からの選手に交じって、レッドはハイパーメカニカル子ロリババアと共に空港の周回道路に姿を現した。
「再現性東京の夜はきらきらと輝いているのね。こんな中で風になったら楽しいに決まっているわ」
 『翼より殺意を込めて』メルランヌ・ヴィーライ(p3p009063)も、飛び入り参加を決めた一人だ。雪の様に白い羽のダチョウ、スノーの背に跨がっている。メルランヌによればスノーは、「乗り心地はお世辞にもいいとは言えないけれど、速度も持久力も中々の物。何しろかわいいのよ?」とのことだ。
「わたくし、この子と一緒にレースに出走するわ! 応援よろしくね」
 メルランヌは観客達に手を振って、アピールしてみせた。
(へぇ、練達というか再現されたトーキョーはこんなコースがあるのね。
 普段とコースと違う堅い地面、立体的で直線とコーナーがいくつも重なったコース
 それが、かなり長く迷路のように出来ているなんて、異世界のレース場ってすごいのね!)
 愛馬ムーンリットナイトの背で特設オーロラビジョンに映るコース紹介を眺めながら、『ヴァイスドラッヘ』レイリー=シュタイン(p3p007270)はそんなことを思う。首都高は別にレース場ではないのだが、レイリーがそう誤解するのも無理からぬことではあるのだろう。
 もちろん、レイリーもレースに飛び入りする気満々だ。
「私は鉄帝のレイリー=シュタイン! 愛馬のムーンリットナイトと共に参戦よ!」
 観客達を前にして、レイリーは高らかに名乗りを上げた。
(再現性首都高速道路……まぁ私の世界では江戸都市高速道路と呼ばれていたし首都でもなかったから、こんなに広大な路線網ではなかったが。
 コースを研究するとじつにテクニカルなコースだな。面白い!)
 オーロラビジョンのコース紹介に頷いているのは、『Meteora Barista』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)。海洋第二の選手として飛び入りである。
 インラインスケートを履き、スピードスケートの選手の様な身体にピチッとした服で身を包む。ヘルメットやゴーグルも無論忘れない。その服には、『Stella Bianca希望ヶ浜店四月オープン』と自身の店のスポンサーロゴが胸や背中などに貼られていた。
 さらにいい宣伝の機会だと、モカは同様の内容をテレパシーで観客達の心の中に送っていく。
「速いの定義は最高速でもスピードでも強さでもねぇ、気合いだ!」
 『怪盗ぱんちゅ』アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)は、「いや、その理屈はおかしい」とツッコみたくなるようなことを車載スピーカーで叫びながら、漆黒の街宣用ワゴン車で空港の周回道路に現れた。服装も、いわゆる任侠な方々が着るような黒く厳ついスーツである。
 ――全ては、レッドさんを優勝させるために。そのためなら、可能な限りの妨害を仕掛けるつもりでいた。
 飛び入り参加もこれで全員かと思われたところで、駐車場棟の屋上から名乗りを上げる影が現れる。
「フッフッフッ、謎のヒーローシティガール仮面参上なのですよ! そのレース、メイも参加するのですよ!」
 こう言うレースには正体不明の仮面の人物がいることを漫画で読んだメイは、自分がその役をすることにしたのだ。足にはローラースケート、背中には羊のおんぶぬいぐるみバックと言う姿だが、このぬいぐるみパック『ロケッ都会羊』には中にスラスターが搭載されている。
「あー、メ……もとい、シティガール仮面さん? 飛び入り参加希望でしたら、周回道路まで降りてきて下さい」
 実況解説役の『真昼のランタン』羽田羅 勘蔵(p3n000126)は、半分メイの正体をばらしかけながら、シティーガール仮面に呼びかけた。もっとも、最初にメイが自身で正体をばらしているのであるが。
「はいなのです!」
 メイはそのことに気付かず、ジェットパックで飛びながら周回道路まで降りていった。

(レースか。ゲームなら地球にいた頃にゲーセンで他の誰かがやってる所をよく眺めたものだが、こういう風に実物を見るのは初めてだな)
 イレギュラーズ含む各国のスピード自慢達の姿を見ながら、『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)は参加も面白そうだが妨害する方が性にあってそうだと感じていた。
(レース参加者に恨みは無いが、日頃のストレスをここで晴らさせてもらうとするか)
 そんなことを考えながら、世界は妨害の準備をするためにターミナルから姿を消した。
(レースについては知っているけれど、実際に見てみるのは熱気も迫力も段違いだね。今日は楽しませてもらおう)
 『孤独のニーヴ』ニーヴ・ニーヴ(p3p008903)はのんびりと、そんなことを考えていた。周りを見れば、自国代表の勝利に期待する者、賭けに興じる者など様々だ。
(誰が勝つか賭けてみるのも、面白いかな?)
 その様を見て、ニーヴは賭けに乗ってみることにした。まず、各国代表の中でもスマートなフォルムの、練達のレースカー。そして、それぞれ個性的な手段で参加しているイレギュラーズの仲間達に、ニーヴは均等に賭けた。

●優勝候補、脱落
「えー、ここで飛び入り参加の選手をお知らせします。何と、いずれもイレギュラーズです!
 飛べなくなった代わりに、俊足を手に入れた鳥っ! それを乗り手は如何駆るかっ!? ダチョウのスーと、鳥遣いメルランヌっ!
 何人たりともその走りは止められないっ! 鉄壁の防御力にして耐久力っ! 鉄帝第二の代表、ムーンリットナイトと『ヴァイスドラッヘ』レイリーっ!
 スペックは不明だが、そのポテンシャルは如何にっ!? ハイパーメカニカル子ロリババア&レッドが参戦だあっ!
 先手を取っての連続攻撃はまさに疾風怒濤! レースではそれが如何活きるのか! こちらは海洋第二の代表、モカ・ビアンキーニっ!
 ヤクザスタイルはレースにどんな波乱をもたらすのかっ!? 漆黒の街宣車&アルヴァっ!
 実力も正体も謎のヴェールに包まれた仮面のヒーローっ! シティガール仮面んっ!」
 スタートの前に、急遽飛び入り参加の選手を知らせるアナウンスが流れる。イレギュラーズも飛び入り参加と聞いて、ターミナルの観客達はわっと盛り上がる。
 特設のシグナルが赤から青へと変わると、いよいよレースのスタートだ。
 一歩前に抜きん出たレースカーを先頭に、選手達は空港中央ICから首都高湾岸線、空港北トンネルへと入っていった。

 湾岸線から大井JCTを経て横羽線へと至り、浜崎橋JCTを真っ直ぐ突き抜ければ汐留JCTから地下、半地下の道路に入る。この先には、世界が仕掛けた罠が待ち構えていた。
 新富町IC付近を左に曲がったカーブの先に、精霊爆弾を使った地雷が敷かれていたのだ。この区間は二車線しかない上に間に柱が立っているため、速度ロスを抑えようと思えば基本的にレーンを維持して走るしかなく、罠にかけやすい。その上、カーブの先が見えないので、選手達にとっては突然罠と遭遇するも同然になる。
 先頭を走るレースカーは、カーブの先の精霊爆弾を察知出来ずに、触雷した。「火力は抑えてある」「ちょっと明後日の方角へ飛んでいくだけ」とは世界の言だったが、時速百キロを超える速度で走るレースカーにとっては致命的だった。明後日の方向に飛んでいった結果、車線間の柱に衝突した後スピン。そのまま壁に激突して、派手な轟音と共に盛大にクラッシュする。衝撃でタイヤがあらぬ方向を向いており、自走は不可能。リタイアせざるを得なくなったドライバーは、ヘルメットをアスファルトに叩き付けた。
 優勝候補と見られていたレースカーの脱落は、観客を大いにどよめかせた。妨害への耐性に不安があったのは事実だが、まさにその不安が的中した形だ。
(うーん……残念だな)
 ニーヴも、レースカーの脱落に肩を落とした一人だ。妨害ありのレースとは言え、せめてもう少し格好良く走るのを見ていたかったのは否めない。
(ふむ、こうも上手く妨害が決まると気分がいいな)
 一方、大本命をリタイアさせると言う思いも寄らぬ結果を得た世界は、ストレスが吹き飛ぶほどの愉悦を感じていた。
 続いて現れた隼の飛行種、鴉天狗、幻想種のウィンドサーファーはリタイアしたレースカーの上を飛び越えていく。その先にはやはり世界によって撒き菱も撒かれていたが、彼らは問題なく飛び越えた。
 他の選手も、そもそも足が機械であったり、蹄鉄を着けていたりで撒き菱は気にせず進んでいったが、そんな備えは無理であったメルランヌは撒き菱を踏まないようにスピードを落とさざるを得ず、撒き菱をタイヤで踏んでしまったアルヴァの街宣車はタイヤがバーストして後に自走不能に陥ることになる。

●訪れた体力の限界
 江戸橋JCT地点では、空を飛べる隼の飛行種、幻想種のウィンドサーファー、鴉天狗が第一集団。モカ、レッド、街宣車ら降りて自走するアルヴァ、メイ、レイリー、競走馬、パカダクラが第二集団。そしてメルランヌ、鉄騎種ランナーと重装軍馬が第二集団に遅れて続いていた。だが浜崎橋JCTに差し掛かる頃には、第二集団がほぼ第一集団に追いついていた。
 ここで、鴉天狗が動いた。ヤツデのような団扇を下から上へと振り上げると、コース状に竜巻が巻き起こる。地上にいる選手達は辛うじて飛ばされずに耐えたが、隼の飛行種、幻想種のウィンドサーファーは竜巻に巻き込まれて弾き飛ばされ、コース外に落下。コースアウトにより、失格となる。
「ああっ!」
 落下して怪我した二人を見ていられなくなったニーヴは、ターミナルを離れるとタクシーを呼んで二人の落下地点に向かう。勝負である以上、敗者が悔しい思いをしながら帰るのは仕方ないとしても、怪我の痛みに哀しみ苦しみながら帰る選手がいるのはニーヴには耐えがたかった。
「大丈夫かい?」
 落下現場に駆けつけたニーヴは、二人に治癒魔術を施していく。二人の傷は軽くはなかったが、ニーヴの懸命の治療によってほぼ掠り傷と言うところまでは癒えた。二人は丁重にニーヴに感謝を述べると、交代でニーヴを乗せて空からターミナルへと戻っていった。

 レインボーブリッジを超えて湾岸線に入ると、勝負はまたわからなくなった。湾岸線から葛西JCTで中央環状線に入り北上する間、鴉天狗はイレギュラーズを含めた他の選手に鎌鼬を放って妨害を仕掛ける。ほとんどの選手は、空中の鴉天狗に攻撃する手段がないため耐えるしかなかった。
「レッドさんに、何してくれとんじゃボケェ!!」
 だが、レッドを攻撃されたアルヴァは怒り心頭で砲撃を放った。レッドも、青い衝撃波を鴉天狗に放っていく。
 そんな流れが荒川沿いに北上しながら続いていたが、江北橋JCTでとうとうレッドがリタイアした。
「ボクの体力が保つかどうか正直心配だったっすけど……やっぱり体力の限界っす」
「レッドさん!?」
 流石に、騎乗慣れしていない身でのレースはレッドには堪えたようだ。おまけに、鴉天狗との攻防で気力も消耗させられているとなれば、無理もなかった。
 レッドがリタイアするのならば、これ以上走っても仕方ないとアルヴァもリタイアし、二人は寄り添うようにしてタクシーでターミナルに戻った。

●大橋JCTの死闘
 熊野町JCTを過ぎれば、長い山手トンネルに入る。鴉天狗による攻撃は、なおも続いていた。鎌鼬に晒される競走馬とパカダクラを守ろうとしたメイだったが、一人で両方は守りきれずにパカダクラは中野長者橋IC付近でリタイアを余儀なくされた。
「いくら妨害ありとは言え、ちょっと酷いですよ」
「そうね……確かにやり過ぎだわ」
 深く傷ついたにもかかわらずパカダクラを守れなかった無念を込めて、メイはつぶやいた。それを聞いたメルランヌが、同意しながら頷く。メルランヌがつぶやきに同意してくれたのを確認したメイは、モカとレイリーにも話しかけた。
「あの鴉天狗、この先の大橋JCTでどうにかしないですか?」
 モカとレイリーも、メイの提案に乗った。大橋JCTを出ればまた空中から高度を取って攻撃されながら走ることになるが、それはモカやレイリーとしても面白くない。
 結果、螺旋のように地上へとループする大橋JCT内で鴉天狗を仕留めるべく、四人は手を組んだ。
「殴ったのなら、殴られる覚悟はあるわよね?」
 ループに入って大きく減速した鴉天狗に向けて、メルランヌが闘気を放つ。その衝撃に傷つけられ頭に血を上らせた鴉天狗は、メルランヌに接近して団扇を叩き付けようとした。
「させないわよ!」
 だが、身体ごと盾となったレイリーによって阻まれる。重い一撃に、レイリーは顔をしかめた。
「さあ、早く行って下さいなのです」
 競走馬の騎手は、メイの言葉に申し訳なさそうに頭を下げながら、先へと進んだ。そしてメイは、『ロケッ都会羊』のスラスターを噴かすと鴉天狗に体当たりを仕掛ける。
「――今までの分、倍返しだ!」
 体当たりを受けて鴉天狗がよろけたところで、モカが残像を発生させながら鴉天狗の頭を、腕を、胴を、脚を何度も蹴っていく。
 イレギュラーズの攻撃も鴉天狗の攻撃も熾烈ではあったが、軍配はイレギュラーズに上がった。元々レッドとアルヴァの攻撃によってダメージを少なからず負っていた所に、イレギュラーズに四対一で仕掛けられては勝てるはずもなかった。だがイレギュラーズの側も鴉天狗の激しい範囲攻撃によって、モカとレイリーが浅からぬ傷を負ってしまった。
 競走馬の騎手はその間JCTの出口でイレギュラーズ達を待っており、イレギュラーズ達の姿を見つけると頭を下げてから、仕切り直しだと言わんばかりに改めて競走馬を駆り始めた。

●ゴォール!
 大橋JCTを抜けてからは、妨害無しの純粋なレースとなった。先頭をレイリーと競走馬が争い、その後ろをモカとメイがぴったりと付いていく。
 やや遅れて、メルランヌが続いた。メルランヌが遅れてしまったのは、長い地下区間を走らされた挙句に戦闘後はぐるぐると螺旋を上がっていくような大橋JCTを走らされ、スノーがげんなりしてるのを元気づけるのに時間を要してしまったからだ。
 そして鉄騎種ランナーと重装軍馬は、メルランヌからも大きく遅れてしまっていた。

 だが谷町JCT、そして二度目の一ノ橋JCT、芝公園横、浜崎橋JCTとカーブが続くにつれて、競走馬がやや遅れ出し、レイリーとメイのトップ争いとなる。モカも、競走馬を追い抜いた。
 二度目のレインボーブリッジを抜ける頃には、メルランヌが競走馬を追い抜き、レイリー、メイ、モカに迫っていた。だが、湾岸線に入ると世界の召喚した風の精霊による追い風で、競走馬も追い上げてくる。
 誰が勝つかわからない状況で、選手達は空港北トンネルに入った。このトンネルを抜ければ、ゴールはもうすぐそこだ。一体、誰が勝つのか。観客達の熱狂と興奮は否応なしに高まっていく。
(なるほど、これに熱狂する人がたくさんいるのも当然だね)
 最初はのんびりと観戦していたニーヴも、心が昂ぶっているのを感じていた。勝利のために全力で走り続ける選手達の姿を、とても素敵だと感じる。もし次の機会があれば、ぜひ自分も参加してみようと思った。
 レースがここまで来れば、世界ももう妨害を仕掛けることはせずに黙って見守っていた。

 空港北トンネルを抜け空港中央ICを出て、選手達は空港の周回道路に入る。この時点では、先頭がトンネル内で加速してレイリーを追い抜いたモカ、やや遅れてレイリーとメイ、さらに少しだけ後ろにメルランヌ、続いて競走馬となっていた。なお、鉄騎種ランナー空港北トンネル入口付近、重装軍馬は東海JCT付近にいる。
 周回道路に入った選手達は最後の力を振り絞った。皆、第二ターミナルの前を、疾風のように駆け抜けていく。そこから第一ターミナル前に抜けるコーナーで、コーナリングの妙を活かしながらのスパートでレイリーがモカに追いついた。レイリーとモカはほぼ同時にゴールし、次いでメイ、メルランヌ、競走馬がゴールする。わあああっ、パチパチパチ、とゴールの都度歓声と拍手が響く。
 レイリーとモカの順位の決定は、写真判定に持ち込まれた。結果――モカの頭が、ムーンリットナイトの鼻よりもほんのわずかに先だった。発表の瞬間、再度、歓声と拍手がターミナル中に響きわたった――。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

メイ=ルゥ(p3p007582)[重傷]
シティガール

あとがき

 EXリクエストのご指名とシナリオへのご参加、ありがとうございました。レースの結果は、優勝モカさん、準優勝レイリーさん、三位メイさん、四位メルランヌさんとなりました。最終的に誰を優勝させるか、どんな順位にするかは非常に迷いました。
 いざリプレイにしてみたら、大本命のレースカーは早々にクラッシュするわ、鴉天狗は思ったより暴れ回るわで思わぬ展開になってしまいましたが、楽しんで頂けましたら幸いです。

 それでは、お疲れ様でした!

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