シナリオ詳細
<ヴァーリの裁決>カノン・キュビスム
オープニング
●
文化交流都市カノン――
名の通り各地の文化・芸術がこの街にはよく流れてくる。通行の拠点とも言える立地は、旅の者や多くの商人を自然と引きよせ発展が促されてきたのだ。
街を見据えれば特徴的な建築物なども幾らか見えるものの、乱雑さはない。
むしろ理路整然とした立ち並びをしている。その光景に多くの者が感じるのは無秩序なる迎合の結果ではなく、正しき融和と進化が故という感想だろう。石畳の敷かれる中央の道は今日もまた馬車が幾つも。
人々が行き交い、カノンには今日もまた活気が溢れている――
しかし。
「……成程。怪しき流れがありますか」
都市カノンの中に存在する『アルトマーレ』
その中央には美しき泉が存在し――また同時に、カノンの中でも屈指の規模を誇る劇場が建てられている場所だった。中枢区画としての役所機能も携える地にて、執政官より報告を受けるのはフォークロワ=バロン(p3p008405)である。
彼の下に届けられるは領内にて不審な商人が確認されているとの情報。
それはかの大奴隷市にも参加していた――奴隷商人か?
カノンには観光客や商人などが日々大勢訪れる……彼らがカノンの発展に寄与している事は疑いも無い、が。フォークロワから隠れる様に裏で動き回る影まで許容するかは話が別である。
彼らはカノンの事など考えていない。むしろ多くの文化が流れゆき、多くの者の行き来が存在するここは体のいい隠れ蓑程度にしか思っていないのかもしれない。
……文化交流都市と名乗るのならば、基本として他を排斥するものではない――が。
「このことはまだ民には伝わっていませんね?」
「はい。気付いているのはごく一部の者だけです」
「よろしい。今のうちに対策を講じるとしましょう」
そんな者達に配慮する必要性があるだろうか?
奴隷を目の届かぬ所で売りさばき、暗躍しようとしている者達などに。
彼らは『対処』する必要があるだろう。なるべく早く、誰も気づかぬ内に。
――もうじきこの劇場を使用するサーカスの一団が訪れる事にもなっているのだ。伴って、遊楽伯爵と称されるバルツァーレク伯も観客として参加予定がある。華々しい芸術が繰り広げられようとしている前に、不遜な輩が闊歩しているなどという状況は片付けておかねばならない。
「現在の情報では、東の地区にて拠点としている家屋があるようです。奴隷も中に居るものと思われますが……少なくとも商人達にしろそう規模は大きくないかと」
「ふむ――それなら至急兵を向かわせて――」
全てを終わらせようと、執政官と計画を詰める。
各地の領地には大なり小なり軍事力が存在しているのだ。そこから兵力を抽出すれば、少なくとも領内の問題は片が付く。だから今回もそうしようとして――
その時。
「り、領主さま、大変です! 東部より魔物が接近――まもなくアルトマーレに!
偵察隊の情報によるとそれなりの数が揃っているそうで……!!」
駆け足で届けられた情報は実にタイミングが悪いものであった。
昨今。幻想王国には奇妙な魔物の襲撃事件が相次いでいる。それは古廟スラン・ロウや神翼庭園ウィツィロの事件に関係があると目されているが……しかしこのタイミングで、更に東から訪れるとは。
まずい事になった。今すぐ兵を出せば魔物は抑えられるかもしれない。
されど兵を大々的に動かす騒ぎが起これば、折角位置を突き止めている奴隷商人達が逃げ出すかもしれぬ。彼らとてやましい事をしている自覚があれば、そういう事には敏感であろう。
百歩譲って領地から出て行けば良いが、或いはどこかにまた潜伏でもされれば……
「……両方一度に解決するしかなさそうですね」
だから『やる』しかないのだとフォークロワは思考する。
魔物は止める。同時に奴隷商人達も討伐する。
領地の兵と、そしてイレギュラーズ達の力もあれば――可能なはずだ。
「さて、急ぎましょうかね」
どちらの輩にもこの都市を穢させる訳にはいかないのだから。
- <ヴァーリの裁決>カノン・キュビスム完了
- GM名茶零四
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年03月30日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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奴隷商人の暗躍と魔物の襲撃――
それらはきっと偶然の重なりであったのだろう。
しかし偶然であろうと『成って』しまったのなら。
「双方を同時に処理するしかなくなりましたね。止むを得ませんか」
その上で行動を行うしかないと『春告げの』リースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)は言葉を紡ぐ。本来であれば戦力を分散させずどちらかに注力すべきだ。
されど奴隷商を逃がせばまたどこかで悪事が行われ。
魔物を逃せば街そのものが危険に陥る可能性もあるなら、ば。
「此処を抜かれれば魔物が街に到達する。故に此処で食い止め、撃滅します。アルトマーレの守護者達よ、敵は多勢なれど我らもまた無勢に非ず――勝って、護り抜いてみせましょう!」
困難を打ち破り、勝利を掴んでみせよう。
リースリットは剣を天へ。緋色の炎の如き色を宿すソレは皆の目に映り、彼女の言も相まって闘志を奮い立たせる――炎を思わせる象徴は人に力を齎すのだ。皆を鼓舞し鬨の声が響き渡れば、眼前より迫りくる魔物どもへの士気は十分。
故に。
――装甲、展開(スクリプト、オーバーライド)
――戦闘機動構築開始(システムセットアップ)
――動作正常(ステータスオールグリーン)
いくよSpiegel。
『Jawohl(了解)』
起動する。『シュピーゲル』DexM001型 7810番機 SpiegelⅡ(p3p001649)の至高が。
戦場を駆けるは彼女の機体。音速の壁を突き抜けるが如き速度と共に――魔物達を薙ぐ。巨大な一つ目共が彼女を打ち落とさんと視線の照準を合わせる、が。あらゆる撃を弾く特殊装甲技術が一切のダメージをこそぎ落すものだ。
負の要素が付与される事はあるものの、傷が彼女の芯に届かねば止まる事はない。そして。
「観衆の入りと始まりは上々……さ、舞台の幕を上げましょうか」
場の高まりと共に『剣靴のプリマ』ヴィリス(p3p009671)も往く。
ああ――どこを見ても『目』がある。こちらを見てくる多くの視線。
それらはむしろ己を奮い立たせてくれるものだ。
「――あらあらあら。舞台のマナーをご存知ない?」
紡がれる視線の熱。ステップを踏むように跳躍し、躱し、隙間を縫って。
「演者へのお触りは禁止なのよ?」
絶望の海を歌う様な声が――冷たい呪いを彼らに齎す。
「なるべく多く敵を引き付けるだけ引き付けるわ。通した分は皆にお願いするわね」
同時。更に『血華可憐』アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)が戦場の最前線へと。戦いの始まったばかりであればと――不吉を呼ぶ舞の如く。目玉の魔物共を惑わす様に渦中にて彼女の存在が謳歌するのだ。
やれやれ、やはり魔物と奴隷商が同時でなければもっと簡単に事を進める事が出来たのだろうが……まぁ考えても仕方がない。奴隷商側は被害がどうなるかはともかく、逃がす事はないだろう。
「――此方だけ一匹通しました、なんて報告を挙げるのは御免だわ」
イレギュラーズの名に恥じない完璧な仕事を、と。
魔物どもを引き寄せ奴らを足止めせん。
これ以上先には――進ませまいと。
「こちらにも兵士の人達はいるけれど……やっぱり敵の数の方が多い。減らしていかないとね」
同時。アンナらの動きを援護する様に『書の静寂』ルネ=エクス=アグニス(p3p008385)の魔力が戦場に瞬いた。それは全てを貫く魔砲の一撃。ルネがいるのは準備した馬車の上から、だ。
ここより放てば地上の味方を別けた上で敵を狙い打てる。
無論敵から見ても多少は目立つわけだ、が。
「やりようは幾らでもあるものだよ」
ルネの魔術は多岐に渡る。倒されるよりも敵を早く倒してしまえば問題ないと。
砲撃に続いて紡ぐは雷撃。地を這うような閃光が――目玉共を呑み込んでいた。
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同じ頃。街に潜む奴隷商人のアジトを包囲する一人は『嘘に誠に』フォークロワ=バロン(p3p008405)であった。
「ついに私の領地にも来てしまいましたか……しかしこうタイミングが重なると作為的な何かを感じざるを得ませんが、ともあれ今は解決の為に全力を尽くさねばなりませんね」
「確かに、タイミングが良すぎるよね。でも……どちらも放っておけばそれだけ悲しむ人が増えるんだ! 私達でキッチリ解決しないとね!」
整える準備。『希望の蒼穹』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)もまた、魔物側ではなくこちら、奴隷商人側の方に付いたイレギュラーズだった。
外の――魔物側には兵士を二十名。
内の――商人側には兵士を十名。
これが最適だと判断し、イレギュラーズを含めた者達で完全に包囲している。
後はどれだけ迅速に彼らを鎮圧する事が出来るか、だ。アレクシアは助けを求める声を探知し、中に確かに奴隷がいる事を確認する。同時にフォークロワが使い魔たる猫を放ちて偵察を。
五感の共有が彼に情報を与えるのだ。
兵士たちには奴隷の保護を優先する様に伝えている。奴隷らの位置が分かれば、後は往くのみだとは兵士たちに視線を送り――互いに頷いて意思の疎通を。
息を合わせる。三、二と声を出さず指を折って――
「――失礼するのだ! 僕はヴェルデ・W・ヴェールなのだ!
この建物は完全に包囲されてるのだ……大人しく諦めるといいのだ!」
扉を破る。先陣切ったは『若葉マーク』ヴェルデ・w・ヴェール(p3p009687)である。
驚きの色に顔を染める奴隷商人達を見て――彼女は思考する。
――どうして誰かの人生を踏みにじるような行いが増えているんだろう。
――どうしてそれが悪いことだと知っていながら続けるのだろう。
――どうして、逃げられるなんて思っているのだろう。
何もかもが許せない。お前達なんかに、誰かを束縛する自由はないのだと。
「誰一人……逃がすつもりはないから覚悟するのだ!」
往く。名乗り上げる声が傭兵らの注意を引いて。
事前に彼女は優れた耳で内部の音を聞いていたからある程度の人数は既に予測済みだ――この家の中で自由に動き回れる存在など傭兵か奴隷商人のみ。
「くっ、くそ! おい傭兵共、高い金を払ってるのだ、そいつらを足止めしろ! 私らは逃げ……」
「そういう暇は与えないよ! 好き勝手してきて、報いを受けないとでも思った!?」
同時。ヴェルデに続いてアレクシアもまた突入する。
危険を察知したらすぐに逃げようとする――やはり予測通りだがそうはいくか。高き壁の如く彼らの逃げ道を妨害するアレクシアは、威嚇の魔術を用いて彼らの戦闘能力を奪わんとせん。
当然護衛の傭兵らが妨害には来るわけだが、しかし彼らを上回る多数の兵士を動員していたのが功を奏した。彼らではアレクシアらを抑えるには手が足りず、その間をすり抜け――一気に懐へと。そして二階にいると思われる奴隷達は。
「さぁ、幕間で終わらせましょうか」
フォークロワが確保に向かうのだ。
箒を携え媒体の飛行の力を齎して窓から強引に突入を果たす。兵には下から挙がってきてもらい、彼らの保護を優先としよう――いきなり訪れた来訪者に奴隷らは怯えた様子を見せて。
「ああ大丈夫ですよ。私は皆さんを助けに来た者ですので……しばしお待ちを」
彼らを盾にされる様な事が一番困るのだ。
思考していれば案の定、傭兵の一人が二階へと挙がってきた――だから潰す。
奴隷を背にして行かさぬ様に。
階下からは激しい怒号と戦闘の音が――鳴り響いていた。
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文化交流都市カノンの内と外で繰り広げられる攻防は激しさを増していた。
奴隷商人を捕らえる側の戦いは、傭兵らの必死の抵抗と外と比べれば狭い範囲での戦いという事もあって苛烈に。されどやはり数の違いと、奴隷の位置を迅速に調べ上げた彼らの手法が徐々に優位を確立しつつあった。
「ぐぅぅ何をしている! 速く、早くこいつらをどけろ!」
「無駄だよ――戦況も見えないのかな? 貴方達はここで終わりなんだ……!
人を商品として扱った報いは受けてもらうからね!」
焦る奴隷商人の声。されどアレクシアやヴェルデの壁を突破する事は叶わない。
彼女らの力を退ける程の力を商人や傭兵達は持っていないのだ。なんとか逃げようと足掻いても、アレクシアより放たれる紅き花の魔力が彼らの意志を束縛する。上手く足止めできなかった場合も考慮して慎重に動くアレクシアの体勢は盤石だ。
人の尊厳を奪う奴隷商は許されない。冷たい首輪の感覚など誰にもいらないのだ。
「そうなのだ。人の気持ちが分からないなら――そっちが鎖に繋がれるべきなのだ!」
更にヴェルデが跳躍する。室内という狭い空間でもアクロバットに動く彼女の動きを止められる者など何処にいようか。味方の兵の上を超え、傭兵らの視線に捉えきれぬ動きで翻弄し。
「みんなが笑顔でいられる未来の為に! なのだ!」
傭兵を潰す。商人達の戦う力はさほどでもない――
彼らを倒しさえすれば後はなし崩し的に倒していけるだろう、それに。
「勝ち戦の舞台で無為なる犠牲は避ける様に。ええ、命を第一に奮戦を」
二階より降りてきたフォークロワも参戦すれば更に押し込めた。
治癒を果たさんとする後衛を中心に。奴を倒しさえすればもはや継戦の力も望めまい。
場を舞う、数多の紙片から紡がれる終わることなき絶望の序章が傭兵らの感覚を乱す――狂乱こそが汝らには相応しい。穢れた舞台で道化として。
崩壊する傭兵らの戦線。さすればフォークロワの兵士たちが一斉に突撃を。
取り押さえられる奴隷商人達。みっともなく足掻こうとしているが、その後ろでに付けられる枷を外す事などもう出来ず。
「よし! これでこっちは大丈夫かな、後は……!」
「ええ――外の戦況の加勢に行きましょう。間に合えばいいのですが……」
故にアレクシアは治癒の術を施しながら場を確認し、フォークロワは後は任せますと兵士たちに指示を出して外を見据える。駆け抜ければまだギリギリ間に合うだろうか――?
「あ、あの……お姉ちゃんたち、ありが……」
「気にしなくていいのだ! みんなは元々、こんな場所に閉じ込められるべきじゃなかったのだ……! あ、これから行く当てはあるのだ? もしなかったら……いつか僕の領地が出来た時、来るといいのだ!」
同時。礼を述べる奴隷を前にヴェルデが笑みと共に言葉を紡ぐ。
いつか自分の領地も持てた時、引き取れる奴隷がいるならと――約束を交わす。
小指を握って約束と。己が名を伝えてまたいつか、と。
そして――アルトマーレ東の近郊で繰り広げられている戦いでは。
「何をそんなに憎んでいるかは知らないけれど、私を無視することは許さないわよ。
貴方達は一体どこを、何を見ているのかしら?」
アンナの奮闘が駆け巡っていた。後続の魔物も捉える撃を一つ。
再びなる不吉を呼ぶ舞が敵を引き付け――そして集まった所へ己が剣を。
それは黒き雷を纏う雷閃。轟く音は正に雷撃が落とされる寸前の如く。
――穿つ。集まった目玉共を焼き払う様に。
「確認。敵残存数を……左舷より敵戦力三体追加。一旦移動するであります」
同時。SpiegelⅡは常に速度による攻撃を繰り返しながら仲間と火力を合わせる。
孤立してもある程度運用可能なように設計されている――が。しかし長期化すればそれも分からない。多少エネルギーに関しては息が長く出来るように装備を変更しているものの……激しく立ち回り続ければガス欠も近かろう。
「Spiegel、オーバーブレイドの封印措置を」
『その判断を支援、推奨……CODE:VOBの本体への負荷は、長期的恒久的維持機能に著しい損傷を生じさせるリスクが存在します』
「――別に壊れる事自体は恐れるべきではありませんが、それが『今』であるのは困りますな」
己が手段の一つを封じ、誤作動も含めて潰して彼女は舞う。
敵の攻撃を弾くバリアが展開している内は良いが、ガス欠を速めてバリアの展開が維持困難になっては元も子もないからと。今日この場で重要なのは戦線の維持であり。
「魔力攻撃に備え! 守りを固め受け流し、タイミングを合わせ討ち減らします!」
どこかが崩れれば指揮を執るリースリットの負担も増えてしまうのだから。
彼女は常に目を動かす。兵を指揮し、横に展開させ防衛ラインを構築。
防御を固めた兵と此方の前衛で敵の前進を受け止める――そしてその動きは実際に効力を発揮していた。目玉たちは一匹たりともその戦線を突破する事叶わず、街に近付く事すら出来ていない。
「負傷者は一旦後方へ! 敵の数が減り次第、右翼・左翼は中央へ陣形を縮ませッ!
壁を厚くし――敵の突破を必ず食い止めます!」
彼女自身は前線より少し後ろに。
固まった敵があらば風の精霊の力と刻印の炎から編み出した雷の魔術を敵に振るおう――紫電の牙を持つ光鎖の蒼蛇を敵に。少しずつ敵の数を減らして、負傷者が多くなれば彼女の天使が如き歌声が兵に活力を齎す。
「おお、力が湧いて来るぞ……押し返せ! 俺達の街を守れ!」
「いいね――もう少しと言った所かな」
更にルネの治癒魔術をまた彼らの体力を後押しする。
イレギュラーズ達や兵士も余裕という訳ではない。目玉共の攻撃が集中して来れば流石にダメージが大きくなるし、実際にルネも少なくない傷を負った一人である。が、戦いが続けば当然魔物達の限界も近付いてくる。
無限ではないのだ。あと一歩踏み止まれ、あと一歩――奴らを押し込め。
「ふふ、こんなにいればどこを攻撃してもよさそうね! ああ――より取り見取り!」
そしてヴィリスのステップも至高を極める。位置を調整し魔砲で魔物を薙ぎ払って。
ああ――いい音。
戦いながらこの戦場に響く音に合わせて踊ろう。誰かを、街を、守るために戦う時って。
「――こんないい音がするものなのね」
心のどこかに湧き出る高揚感。
彼女が戦場で披露する舞は可憐にして麗しい。戦場の女神の微笑みを嫌う者がどこにいようか――共に戦う兵士達の士気が上がる。彼らの口から洩れる鬨の声がより苛烈さを増して。
同時。後方から至る気配を察知する。それは――
「間に合いましたか。よし、彼らの援護を行います――さぁこれで舞台も終わりですよ!」
フォークロワ達だ。奴隷商人を片付けた彼らが増援として。
さすれば既に疲弊の極みを見せている魔物達は次々と倒れ始めるものだ。
「今です! 逃さず敵の撃滅を! これが――アルトマーレの平穏に繋がる!」
「一匹たりとも通すつもりはないわ。怒りを抱えて逝きなさい。
貴方達の感情はどこにも届かない」
故にリースリットが最後の号令を投じて、アンナもまた最後の全力を奴らにぶつけるものだ。
テトラ・アイ達が滅びていく。力を失った者達は飛翔する力もなく、地に崩れ。
やがて最後の一体に刃が突き刺さった同時――勝利の雄叫びが戦場に響き渡る。
「ありゃ! 結局、ちょろっとお手伝い出来ただけだったのだ?」
「優勢に終われば何よりだよ。負傷した人はいるかな――? いるなら治癒しておかないと!」
ヴェルデが周囲を眺め、もう残存がいないことを確認し。
アレクシアが傷付いた兵士達の下へと調和にして治癒の花を顕現。
――これにて終わりだ。文化交流都市カノンを襲った、複数の悪意は。
「やれやれ、いささか幕間としてはボリュームが多すぎましたね……」
訪れた平穏にフォークロワは吐息を一つ。
複数の戦場に別たれてしまった時はどうなるかとも思ったが、イレギュラーズ達の力は迫りくる脅威を凌駕した。これで終わりではないかもしれないが――ひとまず一息付けそうで。
「お疲れ様。今回は助かったわ――ねぇ、お礼にもう一曲踊りはいかがかしら?」
そして――舞台の終焉にと、ヴィリスが兵らに歓待を。
お礼も兼ねたアンコール。それは戦勝の武舞にして、戦士を癒す一端となれば。
音楽に合わせて拍手の手も鳴り響く。
ああ――数多の文化が至るカノンに穏やかなる日々がこれからも続く事を祈って……
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
依頼、お疲れさまでしたイレギュラーズ!
複数の悪意。偶然であったのかもしれませんが、皆さんのご活躍により都市の平和は守られました。
MVPは外の戦場を指揮し、豁然と支えた貴方へと。
それではありがとうございました!
GMコメント
●依頼達成条件
1:奴隷商人の討伐、もしくは捕縛
2:襲来する魔物の撃退
両方を達成してください。
●戦場
このシナリオでは二つの舞台があります。
いずれもフォークロワ=バロン(p3p008405)さんの領地、文化交流都市カノンの『アルトマーレ』です。以下の特徴があります。また、時刻は昼です。
1:『アルトマーレ東地区』(奴隷商人)
住宅街――の一角に存在する家屋です。二階建ての、一軒家。
普通の家屋ですので特別な罠が仕掛けられていたりなどはしないでしょう。ただし内部のどこに敵がいて、どこに奴隷がいるかなどという情報は開始段階ではありません。
2:『アルトマーレ東・近郊』(魔物)
襲来する魔物を撃退する場所です。周囲は少しの林と、後は草原が広がっています。アルトマーレからは少し離れており、ここで食い止める事が出来れば都市に被害はないでしょう。
●敵戦力
『アルトマーレ東地区』側
・奴隷商人×2
家屋の中に潜んでいる奴隷商人です。
位置が気付かれているとは思ってもいない様子。戦闘の際には銃を用いる様ですが、あくまで護身用程度なのか戦闘能力はさほど高くありません。彼らは捕縛、もしくは討伐してください。
・傭兵×6
奴隷商人に雇われている傭兵達です。
奴隷商人と比べれば明らかに戦闘に優れています。恐らくそれなりの手練れかと思われますので、油断は禁物でしょう。基本的には剣を用いた前衛タイプですが、中には治癒を行う後衛も一人混じっています。
・奴隷×5
囚われている奴隷達です。家屋の一階にいるのか二階にいるのか不明ですが、一か所に纏められている事に間違いないでしょう。中に踏み込むと盾にされたりする可能性がある……かもしれません。
可能であれば保護してあげてください。
『アルトマーレ東・近郊』側
・魔物×50『テトラ・アイ』
『古廟スラン・ロウ』――もしくは『神翼庭園ウィツィロ』から訪れたと思われる魔物です。その姿は巨大な一つ目に、翼の様なモノが生えています。常に低空飛行している様ですが、自在に飛行能力がある訳ではなくそれ以上の高度には飛べないようです。
人間……というよりも幻想王国に対し、何か恨みか怒りの様な感情があるようで都市に真っすぐと向かってきています。あまり高度な知性は感じられませんが、だからこそこの数が都市に殺到すれば非常に危険な事でしょう。
テトラ・アイは眼の中心部より魔力を放出してきます。
クリーンヒット以上の攻撃を受けると『痺れ』『ショック』『乱れ』のいずれか一つがランダムに付与される事があります。更にごくごく稀に『呪縛』が付与される事もあるようです。
しかし耐久面はさほど大した事が無いようです。
●味方戦力×30
アルトマーレを守護する者達で、今回即座に動員できたのは30名です。
皆さんはこの戦力を1か2の戦場に自由に振り分ける事が出来ます。
剣や弓を持つ者がバランスよく含まれており、戦闘能力はそこそこあります。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
●ブレイブメダリオン
このシナリオ成功時参加者全員にブレイブメダリオンが配られます。
ゴールド、ミスリル、アダマンタイトとメダルごとにランクがあり、
それぞれゴールド=1p、ミスリル=2p、アダマンタイト=5pとして扱われブレイブメダリオンランキングにて総ポイント数が掲示されます。
このメダルはPC間で譲渡可能です。
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