PandoraPartyProject

シナリオ詳細

荒廃世界の小さな弔い

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 荒廃世界はとても静かだ。
 かつてはこの世界でも人々が栄え、従者となる人工生命体達と豪華な暮らしをしていたらしい。
 けれどヒトは滅んだ。
 この世界に残っているのは乾いた大地に無数の廃墟。
 そして便利だった機械達に、人工生命体。
 人工生命体はヒトがメンテナンスをし続けないと、生命活動を停止してしまうのだ。
 それを防ぐ手段はただ一つ。自分が生まれた拠点にて、遺された設備だけで命を繋ぐ事。
 だから、彼らは外に出る事が出来ない。
 そこで人工生命体達は機械を頼り、それなりに不自由のない生活を続けることにした。
 機械達は人工生命体の言うこともよく聞いてくれるし、他の拠点とも電話やメールで連絡を取る事が出来る。
 荷物だって機械に頼めば運んでもらえるはずだ。

 ――けれど、もしも。
 その道行きで機械が壊れてしまったとしたら。
 そして壊れた機械が暴れだしてしまったとしたら。
 外に出られない人工生命体達には為すすべがないだろう。
 だから彼らは助けを呼んだ。外の世界から来る、頼もしい客人達へ。


「よく来てくれたね。今日はとある世界で、暴れまわっている機械をどうにかしてきて欲しいんだ」
 境界案内人・カストルがにこやかに笑みを浮かべ、イレギュラーズ達へと声をかける。
「荒廃した世界で、住人達が使う道を陣取った暴走機械がいるみたいなんだよ。住民達ではどうしようもないから、イレギュラーズ達の力を借りたいという訳だね」
 この世界の住人である人工生命体達は外に出ることが出来ず、彼らの頼もしい仲間である機械達も暴走した仲間には敵わないようだ。
 そこでイレギュラーズ達が直接現場へ赴き、暴走した機械達と戦って欲しいのだという。

「暴走したのは犬のような機械が7体、馬のような機械が1体だ。彼らは暴走した地点から大きく動かず、通りがかる物を片っ端から襲っているようだね」
 機械達の動きはモチーフとなった動物を模したように、かなり野生的に動いているらしい。
 その上、危険な道を進むための武装も装備しているようだ。戦闘の際は注意が必要だろう。
「彼らがいるのは、開けた荒野の真っ只中だ。周囲の地形は少し荒れているくらいで、特に気をつけることはないかな」
 戦いはシンプルなものになるだろう。
 だからこそ油断はせず、気をつけて欲しいとカストルは付け加えた。

「倒した機械達は周囲の住民達が回収するだろう。彼ら特有の文化なのか……その場に一部のパーツを埋めて、簡単なお墓も作るみたいだね」
 人工生命体達は機械に頼らないと生きていけない。
 その感謝を示すためなのか、壊れた機械に対しては簡単な弔いも行うようだ。
「もし良ければそちらも手伝ってくれないかな。ネジや小さな部品をその場に埋めて、手を合わせるだけでも喜ばれるだろうから」
 住民達にとっても、頼もしかった機械を壊さなければならないのは不本意なことなのだろう。
 その行為にどんな意味を見出すかは自由だが――独自の文化に関わってみるのもまた一興だろうか。

 一通りの説明を終え、カストルは小さく息を吐き、皆の方へと向き直る。
「荒廃世界の人々のために、君達の力が必要だ。是非協力をお願いするよ」

NMコメント

 こんにちは、ささかまかまだと申します。
 今回は荒廃世界を舞台としたお話です。
 格好良く戦闘メインでも、ちょっと切ない雰囲気で心情メインでも。

 以前のお話と同じ世界ですが、話は繋がっていませんのでこちらから参加して頂くのも大歓迎です。
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/3305

●目標
 「荒廃した世界で暴走した機械を倒す」
※オプション:壊れた機械達を弔う

 この世界の住民である人工生命体や、彼らが扱う機械では暴走機械に対処出来ません。
 イレギュラーズが直接現場に赴き、機械達と戦って下さい。

 また、戦闘後は壊れた機械達を弔うことも出来ます。
 ネジや小さなパーツを荒野に埋め、祈りを捧げるのがこの世界の文化のようです。
 こちらはオプションとなっております。イレギュラーズが行わなくても、現地の住民達がいずれ行います。

●エネミーデータ
 壊れた機械達はいずれも動物的な動きを行います。
 また、武装による攻撃も行います。

・犬型機械×7
 大型犬サイズの機械です。
 威力があまり大きくない体当たりと、備え付けられたガトリングによる狙撃を行います。

・馬型機械×1
 かなり大きいサイズの機械です。
 重い威力の体当たりと、瓦礫等を崩すためのドリルによる突進を行います。

●世界観
 かつてヒトが栄えて滅んだ世界です。ヒトがいた頃は近未来的な世界だったようです。
 現在は拠点から出る事の出来ない人工生命体達がのんびりと暮らしています。
 彼らの拠点以外には廃墟と荒野ばかりが広がっています。

●サンプルプレイング
 機械が暴走するなんて大変だね。せめて最後はきちんと壊してあげよう。
 敵の数はそれなりに多いから囲まれないように注意しないといけないね。
 魔法から遠距離で攻撃するのが良さそうかな?
 相手の攻撃をかき消すようにどんどん放つよ!
 戦いが終わったら、しっかりお墓も作ってあげよう。

  • 荒廃世界の小さな弔い完了
  • NM名ささかまかまだ
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年03月30日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)
黒武護
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
カイン・レジスト(p3p008357)
数多異世界の冒険者
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切

リプレイ


 イレギュラーズ達の頬を、乾いた風が掠めていく。
 広がる荒野と人工物の跡を見遣り、『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)は無意識の内に目を細めていた。
「全てを機械に頼り切った世界、か」
 現状だけ見てみれば、緩やかだが着実に滅びに向かっているようにしか見えない。
 けれど今回の仕事に関して言えば、世界の行く末は別にどうでもいいことだ。今やるべきことは、暴走した機械の破壊なのだから。
「聞いた話じゃ、例の機械は本物みたく動くそうだな。どこまで模倣できているのか、少し楽しみだ」
「僕も興味はあるけど、少しだけ怖いかな。実質機械化強化された狼と馬のようなものだし、全く油断出来ないね!」
 『数多異世界の冒険者』カイン・レジスト(p3p008357)も世界の言葉に頷きつつ、広がる荒野を眺めていた。
 この世界における機械はそれほど発達しており、暴走が一大事件になるほどなのだろう。
 大事な友であり生命線である存在を、不意に喪失することになる。その事実に胸は痛むけれど、だからこそ全力で頑張らなくては。
 『もふりたい』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)も金の瞳で遠くを眺めているが、彼の興味はこの世界の情景よりも文化の方にあった。
 人工生命体と機械、ヒトにつくられしもの達。彼らには仲間意識のようなものがあり、だからこそ独自の弔いが生まれたのかもしれない。
 弔いといえば『生者が死者を見送り、日常へ戻る為の区切りの儀式』だったり『死者が死を自覚し、死出の旅へ向かう出発式』だったりするが、この世界でいえば前者の意味合いが強そうか。
「……弔いを行うためにも、まずは仕事を果たさなければいけないな」
「そうだね。暴走する機械達、きっともう直せないいんだろうし……何か魔種を相手にしたような感じを受けちゃうな」
 そう少し寂しげに呟くのは『黒武護』ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)だ。
 元に戻したくても戻せない。そのような相手と戦うのは、いつだって心苦しいものがある。
 だからこそ今回の戦いは手早く終わらせよう。密かにそんな思いを抱き、ムスティスラーフはそっと息を吐いた。
 四人がそれぞれ胸に抱く思いに差異はあれど、向かう方向は同じ。
 イレギュラーズ達は顔を見合わせ、目的の機械が潜む位置まで歩を進めていく。


 目的の地点には、確かに数体の機械の姿があった。
 時には本物の動物のように有機的に、時には驚くほどに単調に動く機械達。
 その動作からは、明らかに彼らが正常でないことが伝わってきている。
「今回の面子は手練ればかりだから、心配はいらないと思うが……俺は支援役として皆を支えよう」
 最初の動いたのは世界だ。短い詠唱と共に夜明けのような輝きを生み出せば、その光がイレギュラーズ達を優しく照らす。
 守りの術式が施されたのを感じ、残りの三人も一気に機械達の元へと駆け出した。
「注意した方がいいのは……馬型の突進と犬型の連携攻撃かな?」
「そうだね。それぞれ射程距離も違うから、気をつけていこう」
 カインとムスティスラーフはそれぞれ勢いよく荒野を蹴り、まずは馬型機械の位置を確認する。
 そのまま直線状に並ばないように気をつけつつ、狙いを定めるのは犬型機械だ。
 二人の隙間を縫うように、アーマデルもひらりと戦場に躍り出て――奏でるのは英霊の未練が奏でる音色。
 怨嗟の音色は機械達の足を止め、逡巡の音色は彼らの頭を垂れ下がらせる。
「相手は機械だ。腹を打ったり喉を傷めるだけだと、動きも止めづらいだろうからな」
「助かるよ、アーマデル君!」
 仲間の援護に笑みと明るい返事を返しつつ、カインが敵との距離を詰める。
 動物を模した機械だろうと、動きを止めてしまえば対処は簡単。立派な武装がこちらに狙いを定めるより早く決着をつけなければ。
「……喰らえッ!」
 カインの掌から瞬く光が溢れれば、その裁きの輝きは機械達へと降り注ぎ、撃ち抜いていく。
 しかし相手も黙ってやられるつもりはないようだ。呪詛による拘束をどうにか抜け出した犬達が、ガトリングの銃口をぐるりと動かす。
 放たれた攻撃にイレギュラーズ達もすぐさま反応を返したが、無傷とはいかなかったようだ。幾つかの弾丸は彼らの身体を掠め、荒野に血の痕を残していく。
「おっと、そっちも思うままにはさせないぜ」
 すぐさま世界が調和の光を生み出し、仲間達を包んでいく。その賦活の力は傷を塞ぎ、戦い続ける力を与えてくれた。
 その活力と攻撃の隙を活かすべく、ムスティスラーフは思い切り息を吸い込む。
「(これは僕のエゴかもしれないけれど、それでも彼らが苦しむことがないようにしてあげたい)」
 思いを籠めて吐き出すのは必殺の大むっち砲だ。
 緑の閃光は流星のように機械達を貫き、その機能を停止させていく。
 倒れ伏す機械に思うものはあれど、まだ全ての敵が倒せた訳ではない。イレギュラーズ達は息を整え、次の敵を見遣った。


 連携しつつ戦うイレギュラーズ達からすれば、暴走した機械達はそれほど強力な敵ではなかった。
 順調に犬型の機械を倒していけば、残るのは馬型の機械だけ。
「突進もドリルも怖いよね。散らばって戦おう!」
「そうだな……決める時は一気に決めるか」
 駆け回るカインの言葉に、再び夜明けの光を放つ世界が応える。
 ムスティスラーフとアーマデルもそれぞれ別方向に駆けながら、馬型機械にじっと狙いを定めていた。
「引きつけは俺に任せてくれ。タイミングもそれに合わせてくれれば助かるな」
「アーマデル君、気をつけてね!」
 仲間からの声を背中に受けつつ、アーマデルが前へと一歩踏み込む。
 その動きに反応し、馬型機械が姿勢を低くし構えるが――次の瞬間、目の前の青年は消え失せていた。
 一体何処に? まるで機械がそう思案したかのように首を動かせば、そこにいたのは蛇銃剣を構えるアーマデルの姿だった。
「……俺達はお前を弔いに来た。死出の旅へと迎えるように」
 別れを告げる言葉と共に放たれるのは、超新星の如き斬撃。
 合わせるようにカインと世界が左右から敵を挟み、一気に攻撃の構えを取った。
「後のことは僕達に任せて。君はゆっくり、おやすみなさい」
「これが俺達のオーダーなんでな。悪く思うなよ」
 二人の放つ裁きの光と白蛇の一噛みが機械の身体を完全に止めれば、最後に降り注ぐのは眩い緑の閃光だ。
「きっと君も仲間を傷つけたくはないと思うから。そうなる前に……終わらせるよ」
 苛烈だけど優しい一撃が馬型機械へと降り注げば、彼の身体は完全に物言わぬ鉄塊へと変わっていく。
 これにて全ての機械は動きを止め――戦いは終わっていった。


 全ての機械が破壊され、荒野に残るはイレギュラーズ達だけ。
 少しの休憩を挟んだあと、カインは忙しなく戦場だった場所を駆け回っていた。
「よっと……ある程度は詰め込めたかな?」
 連れ込んだ妖精の木馬と自分の冒険鞄を確認し、安堵の笑みを浮かべるカイン。
 彼が集めていたのは機械達のパーツだった。小さなネジや部品は弔いに使うけれど、それ以外は出来るだけ持って帰ってあげたいのだ。
 馬の立派な足や犬の瞳。嘗ては人々を助けるために使われていたパーツ達を、今この世界に生きる人々へ届けるために。
 戦後の処理回収も冒険者の務めだ。やるべき仕事を果たせたのを確認し、カインは仲間達の元へと駆け寄っていく。
「こっちは終わったよ。そっちはどうかな?」
「ああ、準備は終わったぜ。あとは埋めてやるだけだな」
 返事を返したのは世界だ。彼の前方には幾つかの穴が掘られ、その周囲では幾つかの部品が用意されていた。
「……人工生命体も機械も同じ、作られたもの。動くことを生きていると言うのならきっと機械も生きていたんだろう」
 掌に乗せた小さなネジを見つめつつ、ムスティスラーフがぽつりと呟く。
「僕らは機械を壊したんじゃない、殺したんだ。だからこそ、その死を受け止めて前に進まなきゃならない」
「ああ、そうだな。俺達はあの機械達と戦って倒した。そういう相手に祈りを捧げるっていうのは、普段はあまりやらないんだが……」
 郷に入っては郷に従えという言葉もあるしな。そんな風に軽く笑みを浮かべつつ、世界はパーツを穴の中へと埋めていく。
 小さな部品はあっという間に荒野の中に沈んでいき、残りの部品で作った小さな墓標だけが目印になった。
「せめて彼らの生前に思いを馳せて、祈ろうか」
 カインは墓標の前で手を合わせ、静かに黙祷を捧げる。多少我流が混ざっているけれど、誠意はきっと伝わるだろう。
「部品の一部を埋めて残す。彼らの残りは別の何かとして再生し、別の形で生き続ける。そういう風習なんだな」
 アーマデルも仲間達の側に立ち、墓標を見つめつつ思案する。
 元の世界だと、魂の抜けた肉体はヒトを襲う屍人と化してしまっていた。だから遺体は燃やすのが当然で、何度もその現場に立ち会った記憶がある。
 けれどこの世界における弔いの文化は、ヒトの肉体を土へと還すのと同様に、自然のサイクルにも添っているように感じられた。
「ヒトならぬ身にも魂が宿ることはある。だからこそ彼らが……往くべき処へ逝けるように」
「そうだね。この行為は意味のあることだと僕は思うよ。今度は彼らが最後まで幸せになれるよう、生まれ変われるといいね」
 ムスティスラーフが柔らかく笑みを浮かべれば、仲間達も同意を示すように頷いて。
 世界も同じように手を合わせ、目を伏せる。普段はやらない行為でも、仲間と共に異世界の文化に触れることは悪くない。

 静かに祈りを捧げるイレギュラーズ達を、また風が撫でていく。
 けれどそれは――どこか優しく寂しい、別れの挨拶のような感触だった。

成否

成功

状態異常

なし

PAGETOPPAGEBOTTOM