シナリオ詳細
<ヴァーリの裁決>希望と絶望の馬車
オープニング
●
とある幻想貴族の領地内・某寒村に存在する孤児院を兼ねた教会――。
「あなた達良かったわねぇ。領主様やお屋敷方々には教えた通り、ちゃんとお仕えするのよ」
「はい、わかっていますシスター」
「お屋敷ってどんなところかなぁ。わくわくするよねぇ。楽しみー♪」
「こら! 今は良いけど……お屋敷に着いたら礼儀正しくしなきゃダメよ?」
「えへへ、ごめんなさーい」
これまで孤児院にて親代わりとして彼女達を育てた初老のシスター(修道女)は、嬉しそうにキャッキャとはしゃぎながら屋根付きの馬車の荷台へ乗り込む少女達へ心配そうに声をかける。
……この孤児院は幻想の一領地を収める貴族が資金を出し、運営されている。
その貴族が収める領地の中でもこの寒村は特に土地が痩せており、農作物の収穫量が少なく、貧しい領民……村人達は子を産んでも自分達で育てることが出来ずに止む無く孤児院へ預けることも多かった。
一般的な貴族ならばこのような寒村は見捨ててしまいそうなところだが領主の貴族はどうにか資金を捻出し、この孤児院の運営に当てている。
だがまあ、完全な慈善事業というわけでもなく、孤児院で育った子ども達はある程度の年齢になると領主の屋敷へ送られ、そこで教養を身に着け、そのまま屋敷の使用人として働いたり、領内の街の仕事を斡旋されたりする仕組みだ。
そして――今回送り出される少女達は特別で、容姿に優れた美少女や生まれながらに知性が高い頭の良い少女達。
その子ども達はまず領主の屋敷で行儀見習いとしてメイドの仕事をしつつ、礼儀作法を仕込まれ、及び更に上の教育を受ける。
……このようにして他の子ども達よりもワンランク上の教育を受けた少女達は領主のコネクションを利用し、他の幻想貴族の次男坊以下やそれに連なる富裕層と見合いをして、見染められれば妻として、あるいは妾として嫁ぐ……という寸法である。
例え貴族や富裕層のお眼鏡に叶わなくとも高等な教育を受けた者ならば幾らでも真っ当な働き口があった。
――とまあ、このような誰にも損が無い仕組みを作った領主は少なくとも悪人ではない。その領主の屋敷へ旅立つ少女達を……本当の我が子を見送る思いで見つめるシスター……。
「シスターさん、そろそろ馬車を出すよ」
「ええ、この子達をよろしくお願いします。……付き添いのメイドさん達も、騎士様も」
シスターは少し離れた場所から馬車の手綱を握る御者や、屋敷まで子ども達の面倒を見るために同行する若いメイド二人、そして護衛に付く騎士の男性一人に深々と頭を下げる。
「はい。この子達のことは私達にお任せください」
「道中の安全はこの私にお任せあれ!」
メイド二人は微笑み、騎士は胸を張る。
「それでは出発するよ。メイドさん達と騎士様も馬車に乗りな」
そうして御者は馬車を走らせる。子ども達は姿が見えなくなるまで元気に手を振っていた――……。
「あの子達の未来に、神のご加護がありますように……」
馬車が見えなくなると、シスターは子ども達を想い、祈りを捧げる……。
***
夕暮れ時――少女達を乗せた馬車の周囲に、怪しい影が近づく――。
それをいち早く察知したのはやはり、護衛の騎士。彼は御者やメイド達へ警戒を促す。
「馬車を止めて下さい。メイドさん達は子ども達を。……この不穏な空気……獣臭……魔獣か!?」
騎士は馬車の荷台から飛び降り、
「あれは……ヘルハウンド!」
こちらへ向かい、疾走して来る二匹のヘルハウンド……狼型の魔獣。騎士は即座に剣を抜いて迎撃。そのまま交戦状態へ。
――二匹のヘルハウンドは騎士へ飛び掛かり、鋭い爪や牙で攻撃して来た。騎士は剣を振るって爪や牙を弾き、体術を用いてヘルハウンドを蹴飛ばし、少しでも馬車から遠ざける。
(馬車を先に行かせるべきか……? いや、それではこの先にも敵が居た場合対応出来ない……!)
そこで騎士はふと気付く、この二匹のヘルハウンド――これまで相手にしたことのある個体とは何かが違った。それは――
「首輪付きか!!」
騎士は力一杯の斬撃を放ってから声を上げた。……そう、二匹のヘルハウンドは首輪を付けていたのだ。それが意味するのは……。
「ようよう騎士様、なかなかやるじゃねーか。流石、一人で護衛を任されるだけあるねぇ」
粗暴な口調の、男の声が辺りに響く。
見れば――停止した馬車は……十名はくだらない、武装した男達によって完全に包囲されてしまっていた……。
「貴様ら……」
二匹のヘルハウンドは一旦離れ、グルルル……と唸り声を上げている……。
武装した男達――その装備の良さから察するに、傭兵と思われた。そこらの盗賊や山賊などより手強いだろう……。
「御者さん! 馬車を出して下さい! 最大速度でここから離れて!」
「無理だ騎士様! 車輪が壊されちまってる!!」
「……くっ」
騎士は考えを巡らせた。敵は手慣れている……。これから夜が来る……メイドや子ども達をバラバラに走らせるか……?
だがそれでは……闇夜に紛れて逃げられるかもしれないが、他の野生動物やモンスターに襲われる可能性も……。
「おっと、逃げられると思うなよ? 大人しくして貰おうか。こちとら仕事なんでね」
「仕事……やはり貴様ら、傭兵か?」
騎士は剣を構えつつ問う。
「おうよ。……見るところ騎士様はけっこうな腕前だねぇ。こりゃあ、わりと楽しめるかな? ……そらぁ!」
傭兵のリーダーらしき男は俊足で駆け、背負っていた大剣を軽々と振るい、騎士へ斬撃を見舞ってきた。――鋭い金属音。騎士はなんとか剣で受けたが――
(なんという正確な太刀筋……そして重い……!)
「オラオラぁ! どうした騎士様よぉ!」
次々に繰り出される重い斬撃に騎士は防戦一方。
「……親方ぁ、楽しむのはいいんですが、仕事はどうするんで?」
「ああ、すまねぇな。俺だけ楽しんじまって。“売り物”は全員縛っとけ。傷つけんじゃねぇぞ! メイド二人も情報通りなら上物だからあとで考える。御者は……逃がせ」
「――!?」
傭兵の部下とリーダーの会話。それを聞いて騎士は驚愕の表情を浮かべる。
「貴様……どういうつもりだ……!?」
御者を逃がせばこの事態が領主に知れ、例え自分がここで倒れても私兵か、あるいはローレットから冒険者……イレギュラーズが派遣されるだろう。
「仕事とは別にな、俺には楽しみがあんだよ。理解してくれ……なんて言わねぇさ」
「いやぁ! 助けてぇ! 騎士様ぁ!! 騎士様ぁ!!」
「きゃあああああ!!」
「うわーん! うわーん!!」
話している間に部下の傭兵達が馬車の荷台に侵入したのか、少女達の泣き叫ぶ声が上がる。
「くぅ……!!」
歯を噛み締める騎士。
「いいねぇその表情! せいぜい楽しませてくれやぁ!」
大剣と剣が何度もぶつかり合う。
――絶望的な状況の中で剣を交えながら騎士は悟った。この男は“戦いを楽しんでいる”のだと……。
●
ギルド『ローレット』――。
「緊急の依頼なのです!」
自称・ローレットの腕利き情報屋……実際のところは『新米情報屋』のユリーカ・ユリカ(p3n000003)が集まったイレギュラーズ達を前にして話を始めた。
「人攫いなのです! 救出してください! 以上です!」
……それだけ? イレギュラーズ達はジト目をユリーカに向ける。
「え? 情報が足りない? これは失礼。ええとですね、少女達を孤児院から幻想貴族の屋敷へ輸送中の馬車が傭兵と思われる集団に襲われまして、女の子達が攫われてしまったのですよー」
そこで「悪徳貴族??」「元々人身売買では無いのか?」といった質問が上がる。
「ああ、その辺りは大丈夫ですよ! 女の子達は元々お屋敷のメイドさんになる予定でした。逃げ延びた御者さんと、依頼主(領主)からの情報なので確かです!」
ユリーカはこほん、と咳払い。
「このところ幻想で頻発している奴隷関係でしょうねー。裏には奴隷商人も居そうです。で、件の少女達には騎士が一人護衛に付いていましたが……多勢に無勢だったみたいですね……」
しょんぼりするユリーカ。「騎士さんは……たぶんもう……」と悲し気な表情を浮かべてへんにょり。
「正確には、攫われたのは八名の少女と、お付きのメイドさんが二人です。敵は傭兵の他に首輪付きのヘルハウンドも確認されています! 気を付けてください!」
表情を戻し、眉をピンと釣り上げて警戒を促しつつ、ユリーカは続ける。
「現場……細い街道の途中に壊れた馬車があるはずなので、その周辺から捜索すればきっと敵の足取りが分かるはずです! 十名もの人数を連れて移動できる手段は限られますから!」
最後にユリーカは「それではよろしくお願いしますねー!」と言って、イレギュラーズ達を送り出すのだった。
- <ヴァーリの裁決>希望と絶望の馬車完了
- GM名とりる
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年04月02日 22時10分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●
『新米情報屋』のユリーカ・ユリカ(p3n000003)から依頼内容の詳しい説明を受けたイレギュラーズ達――。
「既に何人かの方が(OPで)質問されておりましたが、今回は奴隷を助け出すという案件では無かったのですね。憂慮すべき事態である事に変わりはありませんが……」
『正剣』セレーネ=フォン=シルヴァラント(p3p009331)は個人的に元の世界では王族であったため、貴族が何かを起こしたと耳にすれば……その端正な顔の眉間に皺が寄る。
「と、それは兎も角、少女達の救出は確かに承りました。無事に元の送り主の元へ無事に送り届けられる様に尽力します」
個人的な心情は一先ず置き、セレーネは心構えを口にする。
……そしてイレギュラーズ達は準備を整え、ギルド『ローレット』を出発。
***
イレギュラーズ達は現場へ赴く前に、今回の依頼主である幻想貴族の屋敷を訪れた。
「近頃の幻想は比較的平和になっていたのですが、中々この奴隷騒ぎは収まりませんね……」
『蒼剣の弟子』ドラマ・ゲツク(p3p000172)はふう、と息を吐いた。
自分が関わらないものを含め、奴隷関連の依頼をローレットで見かけたのはこれで何度目だろうか。
(個別案件と言うには頻発していますし、裏で手を引く何かが居るのでしょうか……)
「やられたらやり返す、そしてイレギュラーズは決して仲間を見捨てない!」
『宵闇の調べ』ヨハン=レーム(p3p001117)……少女のような可愛らしい容姿に似合わず、ヨハンの心は熱く燃えている様子。
「マルクさん! 騎士はよろしくお願いします!」
「もちろん。全員助けるよ。少女も、メイドも、そして騎士もだ」
ヨハンの言葉にマルク・シリング(p3p001309)は深く頷く。
「傭兵って言ったらラサの人達みたいなプロもいればこんなチンピラみたいのもいるって事か……」
『闘技戦姫』ミルヴィ=カーソン(p3p005047)、彼女は個人的に基本は誰一人殺す事なく解決を目指す。
事前の打ち合わせでマルクが生死不明の騎士を捜索する事になっており、少女やメイドの救出を目的とする他のイレギュラーズ達とは別行動を取る予定。
(マルクからの連絡を待って……騎士を救助、または発見したら傭兵のアジトへ不意打ちからの電撃作戦を仕掛けるよ!)
無駄のない引き締まった肉体・抜群のスタイルが魅力的なミルヴィはグッと拳を握り締めた。
「胸糞悪い連中だ。然るべき裁きを与えねばならない」
『雷はただ前へ』マリア・レイシス(p3p006685)――長く美しい赤髪をポニーテールに結んだ彼女は、決意を秘めた凛々しい表情を浮かべる。
「まぁそれよりも一刻も早く捕まっている人達を助けてあげたいね……。騎士も無事だといいが……」
仲間と共に、攫われた人達の救出、及び傭兵と思われるリーダー含め人攫いグループの捕縛を目指す――。
しかしながら敵は手慣れた傭兵……全員不殺とはいかないだろう……。
「……『人という資源は、いつの世も需要がある』……どこの世界も、なかなか無くならないものですね。お父様も頭を悩ませていたのを思い出します」
優しげな雰囲気を纏う『いつかの歌声』ソニア・ウェスタ(p3p008193)は愁いを秘めた表情を浮かべる……。
(お姉様なら『クズを消しても誰も悲しまない』といって嬉々として奴隷商の首を刎ねていきそうですが……)
敬愛する姉ならばどうするか~をしばし思案した後、今は自分に出来ることを……と、ソニアは胸に手を当てた。
「ここにも奴隷商人の影が! いや多すぎだろ、どんだけ奴隷商人いるんだよこの国!」
幻想で多発する奴隷関連の事件に、『宵の明星』夕星(p3p009712)は思わず声を上げた。
(確かにこれをどうにかできりゃあ勇者だの英雄だの呼ばれてもおかしくねえよなあ)
「オレはよそ者だけど、だからってこの現状は放置できねえしな!」
英雄(ヒーロー)を志す彼は「人助けは英雄への一歩」と考え、依頼に臨む。
(騎士さんのコトは気になりますが、マルク君が対応してくれるようですので)
「周辺地図や救出と捜索に役立ちそうな物を用意できるようならここで入手して、早めに現場に向かいましょう」
言ったのはドラマ。
……現地での情報や、依頼に必要な物品を得たイレギュラーズ達はさっそく荷馬車が襲われた現場へと急ぐ。
●
襲撃された現場に到着。……情報通り、車輪を破壊されて立ち往生した荷馬車がそのまま放置されている……周囲に人の気配は無い……。
なお、馬は御者が逃げる際に使用したので無事だ。
ドラマは襲撃のあった馬車の現場から、自然会話にて周辺の木々達へ『多数の人間が纏まって移動しなかったか』を聴くなどして、傭兵達のアジトの場所・方角を探る。
「血痕だね……。追えば行先が分かるかもしれない」
マリアが血痕を発見。戦闘で負傷した者が残したのだろうか。
「……血痕は二つ……。一つは完全に乾いている……微かに獣臭がするね、恐らくヘルハウンドのものだろう。もう一つも乾いてはいるけど……比較的新しい……かな?」
言いながら思案するマルク。片方の血痕がヘルハウンドだとすると、もう片方は……?
もしかすると事前に予想した通り、騎士は馬車襲撃地点……その付近に居るのかもしれない。例えば負傷した騎士が後から傭兵を追った可能性……など。
マルクはすぐに鳥のファミリアを先行させ、騎士の捜索と生死を確認を開始。
……イレギュラーズ達はヘルハウンドのものと思われる血痕を辿り、傭兵のアジトを探す。
そして騎士の捜索に当たるマルクは当初別行動の予定だったが――二つの血痕は同じ方角へ向かっていたので、同方向へ移動。ただし、自身はHMKLB-PMに騎乗して高速移動。
騎士の血痕と仮定した場合、結構な出血量だったので、もしまだ生きているのなら出来る限り早く治療しなければならない。
――暫くして、マルクが感覚を共有している鳥のファミリアの視界が道端で倒れている鎧姿の男性を発見!
マルクはファミリアを仲間へと向かわせ、「騎士を発見・すぐに治療を始める」事を伝える。
……騎士の元へ急行。傍に寄って確かめれば、息は……まだある! 即座に大天使の祝福を使い、回復。
そこへ、全速力で走って来たらしきミルヴィが合流。
「ちゃんと勤めを果たそうと身体を張った人はなんとしても助けたいの……!」
その言葉にマルクは強く頷き、二人掛かりで懸命に治療。ミルヴィは救急箱と医療知識を用いて、マルクの治療がより効果を発揮するように手伝う。
「お願い、しっかりして……!」
「……う、うぅ……」
すると意識はまだ戻らないが、騎士が苦しそうな声を上げた。二人の必死の治療により、止血が完了。とりあえず最も致命傷に近い傷は塞げた模様。
一応、峠は越えたと思われるので、騎士を二人で木陰に身を移し、毛布で保温する。
……途中で他のイレギュラーズ達が追い付いたが「ここは任せて先に行って欲しい」という旨を伝えた。
可能な限り手を尽くしたミルヴィも、戦力的に大きいので傭兵のアジトへ急いでもらう。後はマルクのみで対応。
また暫くして……騎士が意識を取り戻した。ゆっくりとその瞼が開く。マルクは騎士へ事情を説明。
「皆を救出し、必ず戻ります。もう少しだけ頑張ってください」
力強い言葉で言い、彼の手をギュッと握ると、「頼む」とだけ騎士は返し、そのまま眠りに落ちた……。
それを確認し、治療を終えたマルクは他のイレギュラーズ達と合流を図るべく、道を急ぐ――。
***
……一方で時間的には少し前、先行したイレギュラーズ達は傭兵のアジトと思われる洞窟を発見していた。血痕は入り口付近で途絶えている……。
「……こんな洞窟を根城にしているようでは、本当に傭兵なのか賊なのかわかりませんね」
ソニアは隠さずに不快感を表情に表す。
傭兵のアジトへはすぐ突入せず、マルクの合流を待つ間に他の入り口もないか周辺を捜索。
「他に逃亡用の出入り口が無いか調査をしてから、突入致しましょう!」
ドラマが言った。入念に調べるのも良いが、あまり時間を掛け過ぎると中の傭兵に感付かれるだろう。
セレーネもマルクが騎士の治療を行っている間、敵アジト周辺の調査。
(私は地形の調査には役に立ちませんから、感情探知で敵が近くに居ないかなどを警戒しましょう)
ヨハンは正面入り口周辺の見張りに当たる。
「粗方洞窟の周囲は調べましたか……マルクさんとの合流はまだですが、そろそろ――」
ソニアはそのように判断。待ち過ぎると逆にこちらが不利になる可能性もある。
「相手がどこに居るか分かったなら話ははええや!」
夕星は戦闘準備ばっちり。
「悪い、待たせたね」
そこでミルヴィが合流。やはりマルクはもう少し遅れるとのこと。
「それじゃあ、マルクさんに伝えます!」
ヨハンはギフト【セントエルモの火】の雷光を空へ撃ち放ち、マルクへ『敵アジト突入』の合図。
●
「まず、この『困った時の道具袋』に入ってた閃光玉を突入前にアジトの中に投げ込んで炸裂させるよ!」
突入前に打ち合わせをして、小声で皆を制止、統率にてタイミングを計りつつ――先制攻撃を狙う!
「皆は巻き込まれないように気を付けて……いくよっ!」
ミルヴィが入口の扉を少し開いて閃光玉を放り投げ、炸裂を確認すると――イレギュラーズ達は傭兵のアジトへ突入を開始!
「一番槍、行かせてもらうぜ! ……てめえらの悪事はお見通しだ! 神妙にお縄につきやがれ!」
真っ先に突入した夕星が声を張る。
――しかし、敵は既に迎撃態勢を整え得ていた。内部の入り口付近に傭兵と思われる集団が陣形を組んでいる。
両サイドにはヘルハウンドを確認。
夕星は構わず、一番手前に居る傭兵に頌義颰渦爪による【ソニックエッジ】にて先制攻撃を仕掛ける!
(兎に角奇襲が大事だからな、相手が雑魚でもそうでなくてもどうだっていい!)
「ごきげんよう傭兵諸君、君たちは金のため生きるためにこんな汚い仕事もしているわけだ!」
ヨハンは怒りのままに大声で言う。その声は洞窟内によく響く。
「それは大いに結構! やるからには噛みつかれる事も覚悟の上だろう! 鉄帝国の人間を敵に回した事を後悔させてやる!」
まずは敵の数を減らすため、全力の【神気閃光】を放ち、雑魚傭兵やヘルハウンドへ攻撃。
――激しく瞬く神聖の光は邪悪を裁くネメシス――!
マリアも動いた。敵陣へ突入し、【蒼雷式・天槌裁華】を発動!
天候に干渉し、指定位置広範囲に大規模な落雷を発生。強力な電気により命中した対象に感電による麻痺を引き起こす!
――天災に近しい破壊の閃光。
仲間を巻き込まぬよう注意しつつ、【蒼雷式・天槌裁華】の範囲内に可能な限り多くの敵を巻き込む。
「洞窟内で落雷というのも珍しいだろう?」
セレーネも勇者王の剣(レプリカ)を抜き、攻撃を開始。
(攻撃をする相手は可能なら既に手傷を負っている相手を狙って相手の数を減らしたいですね)
「さて、貴方達が連れ去った人達を連れ戻させて頂きます。多少手荒になりますが、貴方達も覚悟の上でしょう?」
言ってからすぐさま眼前の傭兵へ。
(周りに捕まっている方々が居ない――であれば混乱を与えても攻撃の危険性はないでしょうから)
【アクセルビート】――ビートを刻むかのように加速しながら斬撃を放つ。
ソニアはヒーラーとして行動。
(広い空間なので心配ないとは思いますが、念のため洞窟内では保護結界を)
結界を展開後、いつでも回復できる準備。
ドラマはリーダー格の傭兵を抑える立ち回り。
(御者さんのお話では、この傭兵はただの人攫いだけでなく、何かを楽しもうとしているようですから……)
「『蒼剣の弟子』が、お相手致します!」
蒼い刀身を持つ魔術礼装を構え、同時に【蒼影剣】にて斬り掛かる。
――それを大剣使いの傭兵リーダーは真っ向から受け止め、反撃。
「来やがったな、正義の味方気取りのイレギュラーズがぁ!」
ミルヴィはドラマと共に傭兵リーダーを相手取る。
(挑発でこっちに興味を引かせてからドラマさんと連携して戦うよ!)
(先陣切ったからには囲まれる可能性があるな。まぁ、あんまり洞窟の奥まではいかないようにするぜ)
夕星、【アクセルビート】【戦鬼暴風陣】を用いて積極的に攻撃、雑魚傭兵を蹴散らす!
「少々速さには自信があってね! 私の手数を捌き切れるかな?」
マリアは続いて【紅雷瞬間広域放電】を発動。
――彼女の異能である紅雷を瞬間的に広域に放電することで防御磁場と敵の生体電流を読み先読み可能なフィールドを形成、 自身を強化。
【蒼雷式・天槌裁華】による紅い雷撃を奔らせ、雷光を纏うマリアは敵を圧倒する――!
(※これでも一応手加減して殺さないように)
それから……マルクが洞窟に突入。仲間と合流し、敵との距離を保ち、【神気閃光】による範囲攻撃を放つ。
●
ドラマとミルヴィは連携して傭兵リーダーと交戦。
二人は果敢に攻めるが、傭兵リーダーの反撃も苛烈であった。BSを付与しても構わず大剣による鋭く激しい斬撃を見舞って来る。
……こちらのほうが有利、のはずなのだが……敵の戦闘時における気迫・圧力は大きかった。
ドラマは回復を交えつつ、ミルヴィと共に応戦。
ミルヴィは敵の隙をチクチク狙って苛立たせるように戦い、自身へ意識を向けさせる。
「勝てる戦いしかしない癖に、女に粋がってんじゃないよ! 本気で来な! 性根を叩き直してやる!」
「何とでも言えやぁ! それが戦いだろうがぁ!」
激しい戦いが繰り広げられる中、ヨハンが加勢。
「さてリーダー、騎士相手は多勢に無勢で楽しかったですか? 自分がやられる側はお気に召さない? 結構! 僕も気に入らないんですよ、お前のお粗末な用兵術、そしてその腐った性根が! 逃がしはしない!」
ヨハンは声を上げ、手に持つ魔導書を開いて攻撃準備。
「闘争、闘争だ! もっと戦え!! 鉄帝国の戦いというものを教えてやる!! 栄光を我らの手に! 行くぞ――【イオニアスデイブレイク】!!」
――暁と黄昏の境界線よ。おお、刹那の栄光よ。
彼の背に巨大な盾と広げた翼の幻影が現れ、彼に加護(バフ)を与える。
***
仲間が傭兵リーダーと交戦中、ソニアと夕星は残敵掃討。
ソニアは隙を見て【フリージングエッジ】――複数の小さな氷の刃を生み出して敵を切り裂く。
その後に氷を思わせる青白い刀身を持った剣を抜き、不慣れながらも敵弓兵に対し斬り付け、近接戦。
(剣術にはあまり自信はありませんが)
(傭兵のリーダーは他の味方が相手をしてくれるらしいから、オレは雑魚とヘルハウンドの相手をするぜ)
夕星は剣を持つ敵やヘルハウンドがソニアへ向かわないように抑え、交戦。
「雑魚には囲まれてもまぁなんとかなりそうだけど、ヘルハウンドに挟まれるのだけは避けてえな」
(囲まれるにしても背後だけは取られねえようにするぜ! 最悪は『超反射神経』があるから不意打ちは受けずに済むはずだ!)
【ソニックエッジ】――音速の殺術を放ち、ヘルハウンドの無力化に成功。
マリアも奮戦し、雑魚傭兵を全て無力化。対・傭兵リーダーの加勢へ。
仲間に注意し、傭兵リーダーごと自身のみ巻き込んで【蒼雷式・天槌裁華】を放ち、敵の意表を突く!
「我慢比べと行こうか!」
マルクも加わり、【神気閃光】にて攻撃。
「あの騎士と約束したんだ、全員救出して、連れて帰るってね」
「チッ!」
今度は自分が“多勢に無勢”に追い込まれた傭兵リーダーは逃走を図る。が――
「女相手に逃げるのですか!?」
「これで終いだよ!」
ドラマが煽り、ミルヴィが【幻影のカデンツァ】により追撃――!
最後にマリアが幻影で妨害し、背後から隙を突いて攻撃。
「がぁ!? クソがぁ……!」
傭兵リーダーは倒れ、悔しそうな声を上げて動きを止めた。その後、がっちりと捕縛。
「ふぅ……。何とかなったかな? 皆無事かい?」
***
敵戦力の無力化に成功したイレギュラーズ達は態勢を整え、最奥の部屋へ。
……そこには縄で縛られたメイド二人と、八人の少女の姿……。
そして……奴隷商人らしき小太りの男が丁度逃げ出そうとしていた所だった。ので、イレギュラーズ達にボコボコにされて無事、捕縛された。
なお、威嚇術も用いて奴隷商人をぎっちり捕縛したのはソニア。
「正義の光は悪のみを討つ!!」
ヨハンは勝利宣言。
セレーネは捕縛された奴隷商人に目を細め、嫌悪感の宿った目を向けて言い放つ。
「貴方はわざわざ殺す価値も見出せません。法の下に断罪されるが良いでしょう」
それから救出された少女とメイド達に優しく声をかける。
「怖かったでしょう、もう大丈夫ですからね」
***
マルクは他のイレギュラーズ達と共に、救出した少女とメイド達を保護した騎士の元へ。
「こうして救出できたのも、貴方の奮戦のおかげです。ありがとう」
少女達は騎士へ駆け寄り、抱き付く。メイド達も深く頭を下げた――。
***
「傭兵は無力化、奴隷商人は捕縛、少女とメイドさん達は無事救出。そして……騎士さんも無事。依頼完了ですね。貴族様に送り届けたら、撤収致しましょう」
ドラマが言って微笑を浮かべ、依頼は達成されたのだった。
成否
大成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
イレギュラーズの活躍により少女とメイドさん達は救出され、騎士も手厚い治療のおかげで命を取り留めました。
依頼は無事達成です。お疲れ様でした。
GMコメント
皆さま初めまして。新人GMのとりると申します。どうぞよろしくお願いします!
■依頼達成条件
攫われた少女八名とメイド二名の救出。
■フィールド
敵の傭兵が使役しているヘルハウンドは騎士との戦闘で少なからず傷を負っており、血痕が残っていますので、それを辿れば自ずと傭兵のアジトに辿り着きます。
傭兵のアジトは広い洞窟の内部。ドーム状の空間になっていて、大剣をぶんぶん振り回しても大丈夫です。
(松明やランタンなどの)灯りもあるので夜でも明るいです。少女やメイドさんは最奥に囚われています。
■敵
・傭兵(雑魚)×12
剣や弓で武装。単体の戦力としてはイレギュラーズに遠く及ばないがリーダーの統率により、多少苦戦する可能性もある。
・ヘルハウンド×2
使役された狼型の魔獣。攻撃手段は爪による斬撃や、牙による噛み付き。雑魚傭兵より強い。
・傭兵(リーダー)×1
武器は大剣と拳銃。イレギュラーズ2人程度を同時に相手に出来るくらいの実力を持ちますが状況が不利と判断すれば逃亡を図ります。
・奴隷商人×1
肥えた中年男性。戦闘能力なし。捕縛するのが望ましい。少女やメイドさん達と同じ部屋(洞窟最奥)に居る。
■味方(?)
・騎士
生死不明。可能なら遺体を回収してください。もしも生存している場合は出来るだけ手当を。こちらは後回しでOKです。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
●ブレイブメダリオン
このシナリオ成功時参加者全員にブレイブメダリオンが配られます。
ゴールド、ミスリル、アダマンタイトとメダルごとにランクがあり、
それぞれゴールド=1p、ミスリル=2p、アダマンタイト=5pとして扱われブレイブメダリオンランキングにて総ポイント数が掲示されます。
このメダルはPC間で譲渡可能です。
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