PandoraPartyProject

シナリオ詳細

『  』世界カルタシス

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●そして全てが白くなる

 目が覚めると、そこは白亜の世界だった。

 汚れひとつ無い白い壁と白い大理石の大広間。
 中央には白いクロスのかけられた長いテーブルがあり、色のないお菓子達が所狭しと並んでいいる。

 ふわふわの大きなマシュマロ、ころんとしたスノーマカロン達。
 白いちごが飾られたショートケーキの上には【HAPPY WHITE DAY】と書かれたホワイトチョコレートの板が添えられていて、お祝いに灯されたロウソクの灯りさえも不思議と白い。
 
「ようこそ、特異運命座標! 僕の招待を受けてくれたんだね」

――招待状。
 ふと貴方が手元を見ると、そこには確かに封蝋を開けた手紙があった。

『特異運命座標へ

 やあ! 僕は神郷 蒼矢。境界図書館に務める案内人さ。
 無辜なる混沌には、ホワイトデーとかいうイベントがあるそうじゃないか。
 日頃お世話になっている特異運命座標にも、これからお世話になる特異運命座標にも、
 僕から君達へ感謝を込めて、素敵な思い出を贈ろうと思うんだ!

 名付けてホワイトパーティー!
……もちろん来てくれるよね?

『境界案内人』神郷 蒼矢(しんごう あおや)より』

 貴方が手紙を読み終えたところで、声をかけた人物――蒼矢は優雅に一礼した。

「ここは漂白世界ホワイティア。僕が渡り歩いた異世界の中でも特におすすめのグルメスポットさ。
 特にスイーツが絶品で、アイスだろうとケーキだろうと、とにかく何でも甘くて美味い。……ただ」

 テーブルに添えられた花瓶から、白薔薇をひとつ取って蒼矢は口元に寄せた。
 ふんわりと広がる香りを楽しみながら、彼は悪戯っぽい笑みを浮かべる。

「夢中になって食べていると、この世界の"理(ことわり)"が君に降りかかっちゃうかもね?」

NMコメント

 今日も貴方の旅路に乾杯! ノベルマスターの芳董(ほうとう)です。
『神郷 蒼矢のホワイトデー2021』です。驚くほどの白さで皆さんと楽しみたいと思います!

●目標
 まっしろなスイーツを堪能する

●概要
 招待状を受け取った貴方は、いつの間にか境界案内人の悪戯によって異世界に連れて来られてしまいました。
 彼いわく、ここは漂白世界ホワイティア。前情報の通り、おいしい絶品スイーツばかりのグルメスポットではあるのですが、
 この世界のスイーツを食べていると、不思議な事が起こるようです。

●書式
 一行目:同行タグ または空白
 二行目:何を食べるか
 三行目以降:プレイング

●本日のメニュー
 もくもくわたあめ
  ふわっふわで真っ白いわたあめ。口に入れると柔らかい感触と共にスーッと溶けて……貴方の記憶も少しの間、どこかへ消えてしまいます。
  刹那の記憶喪失。まっ白な時間をお楽しみください。

 粉雪シュクレ
  見た目はコロコロかわいいスノーシュクレ。サクッとした食感の美味しいクッキーです。一口サイズで食べやすくはあるのですが、
  サクサク食べすすめるうちに、髪や服など、貴方の姿が白く漂白されてしまいます。どこが白くなるか、どれだけ白くなるかは人によって差があるようです。

 まっしろショコラ
  一口サイズのホワイトチョコレート。食べると一時的に"心が漂白される"ようです。悪人が突然びっくりするほど善人になったり、
  普段は隠している本音を思わず口にしてしまったり。漂白のされ方は人によって様々なようです。


 その他
  悪戯のない美味しいスイーツもいっぱいあります。ただし、ここではどんなお菓子も真っ白。
  不思議なグルメを満喫していただければ幸いです。

●登場人物
 『境界案内人』神郷 蒼矢(しんごう あおや)
   マイペースな境界案内人。無精者だが、好奇心旺盛でいろんな異世界を歩き回っている。
   特異運命座標が好きで、いつでも興味津々。声をかけられれば気さくに応じてくれるでしょう。

 説明は以上となります。それでは、よい旅路を!

  • 『  』世界カルタシス完了
  • NM名芳董
  • 種別ラリー(LN)
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年03月20日 18時10分
  • 章数1章
  • 総採用数3人
  • 参加費50RC

第1章

第1章 第1節

寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900)
秋縛

「んまーいっ! このホワイトガナッシュ、絶品だねぇ!」
「お土産、気に入って貰えて何よりです」
 まさか渡したその場で食べ始めるとは。蒼矢のマイペースっぷりに史之は軽く頬を掻いた。
 彼の傍らにはふわふわと揺れる赤い触覚。婚約者の睦月も一緒である。
「それで、二人の仲はどれくらい進展したんだい?」
「どれくらいって、いつも通りですよ。カンちゃんは未成年ですし、相応の清いお付き合いという事で」
「相応かな? キスくらいしてもいいと思うんだけど……」
 どこか不満げにこぼす睦月へ、ちょいちょいと蒼矢が手招く。ヒソヒソ何やら耳打ちされて露骨に機嫌がよくなる彼女の様子に一抹の不安を覚えつつも、史之は睦月をリードしようと手を引いて歩くのだった。

「本当にお菓子だらけだな。タッパー持ってくればよかった」
「しーちゃん主夫だねー」
 他愛のない話をしながら睦月は並べられたご馳走の中から、あるお菓子を探していた。
 テーブルの上、目立つように台座の上に並べられた『まっしろショコラ』を一粒を手に取り、史之へ向ける。
「しーちゃん、あーん」
 キュピーン!
(いかにも自然な流れで勧めてるように見えるけど……怪しい)
 史之の中にある幼馴染センサーが微かな違和感を感知して、脳内で速やかに対処法の調査がはじまる。
(これは『幼馴染マニュアル』264P、何か企んでるときの顔……!)
「あーん」
「いやです」
「あーんって言ってるでしょ」
「いやだ」
「あーんしなさい。どうして言う事聞いてくれないの?」
「ぜったい何か入ってるでしょう、その一口チョコ」

 このままでは埒が明かない。宜しい――ならば勝負するまで!
「しーちゃん、僕が勝ったら命令を聞いてね」
「抵抗3桁を舐めるな、だてに物理前衛はやってな――」
「ピューピルシール! ベノムジュエル×3!」
 ドコドコドコドコッ!!
「待っ……話してる途中で攻めるのは……」
「勝負の世界は非情なんだよ、しーちゃん」
 一方的な勝負になったが、それでも健常なままなのが、史之の強さの証明だ。
(……俺が頑張ってるのも全部カンちゃんの為なんだけど気づいてるのかな、はあ)
 早く早くと口元に押し付けられるまっしろショコラを、分かったからと史之はやむなく口にした。
 口内でチョコがとろける。それと同時、心のどこかで何かが溶けた様な気がした。

「あのね、しーちゃん。好きって言ってよう。睦月って呼んで。できれば毎日そうしてほしい」
 口に出してほしいの。不安になるじゃない。

 切なる願いを口にした瞬間――バン! と顔の真横に手をつかれ、睦月は目を丸くした。
 気づけば吐息が唇にかかるほど、史之の顔が近くにあって。
「し、しーちゃん?」
「……!」
 弾かれた様に身を離し、口元を手で覆う史之。
(え? 今のなに?もしかして……壁ドン!?)
(やっべやっべ、ちゅうしてえとか言いそうになったやべえええええ。ばか耐えろ俺。あと1年の我慢だろ!)

成否

成功


第1章 第2節

青燕(p3p009554)
蒼穹の翼

 風が前髪をそよそよと揺らし、青燕は穏やかな眠りからようやく目を覚ました。
「すぅすぅ……はっ!? ここ何処!!」
 一度ある事は二度あるものだ。また拉致られたかとベッドに手をつき上半身を起こし、キョロキョロと周囲を見回してみる。
 宮殿の一室と思われる、清潔感のある白い部屋。
「こういうのなんかやべぇんだろ? 本で見たぞ!一体誰に――」
「んん……」
「!」
 唐突に真横から声がしてベッドから跳ね起きると、そこには見知った境界案内人が王子のような服を着たまま勝手に添い寝をかましていた。
「おはよぉ青燕」
「蒼矢君一体俺に何する気……いや、もう何かされた後か?!」
「えぇ、おじさんそんな獣みたいに思われてるの? 一緒にベッドを共にした既成事実は出来たけど」
 何か言い返そうとした青燕の唇へ、ふにっと丸い塊が押し付けられる。流されるがまま口にすれば、舌の上に広がる甘みと、サックリとした軽い食感。
「こないだ助けてくれたお礼だよ。スノーシュクレのお味はいかが?」
「……美味っ! サクサクでいいなこれ。甘さも程よくて何個でも食べられそう」
 サクサクもぐもぐ。沢山あるよと勧められ、手を止めずに食べること数分。ふと部屋にあった化粧台の鏡を見れば――真っ白!
「爪の色も脚も……真っ白になっちまってる! このままじゃ、俺――燕じゃなくてシマエナガだ!!」
「どっちも可愛いからヨシだね!」
「いや、全然よくはねぇと思うけど!?」

成否

成功


第1章 第3節

「次はどんな特異運命座標が遊びに来てくれるかなぁ……あっ、いらっしゃ――」
「蒼矢」
 出迎えた来客は特異運命座標ではなく、同僚の境界案内人だった。
 神郷 赤斗(しんごう あかと)の眉間のヒビは深い。――これは間違いなく、お怒りだ。
「何だあの招待状トラップは! お前さんは、あまり自覚が無いかもしれねぇがなぁ!
 同じ顔の俺まで悪戯の共犯者と勘違いされて大変だったんだからな!?」
「まあまあ、間違いは誰にでもあるって。それより、毎回そんなに眉間にシワを寄せてたら癖になっちゃうよ?
 甘いものでも食べてリラックス、リラックス♪」
――ブチッ。
「上等だ、そこまで言うなら俺からお前さんに、ホワイトデーのプレゼントをくれてやろうじゃねぇか!」
 赤斗が側にあったホワイトチョコをひっ掴む。すると手元へ赤熱した魔法陣が現れ、蒼矢の口に押し込まれる刹那、チョコの色は白から赤へと染まりきった。
「なにこれ! 辛っっっ!!!」
「普段から甘いモンばっかり食ってるから、そんな甘っちょろいモヤシ野郎のままなんだ!
 今日こそその根性たたき直してやる。この激辛スイーツの山でな!!」
「まずいっ! 助けて特異運命座標!辛いのはいやーーーーっ!!!」

……その後数日間、境界図書館でたらこ唇の蒼矢を目撃したという証言が多数赤斗に寄せられる事になるのだが、それはまた、別のお話。 


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