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シナリオ詳細

<ヴァーリの裁決>隠れ鬼、捕まえた

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●姿なく、殺意なく
 王都メフ・メフィート郊外。『箱柳通り』と呼ばれるそのスラムの一角が、ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)の治める領地のひとつだ。
 ひと気が多いわけでもなし、整備が行き届いているわけでも無し。されどヤツェクの無頼の存在感とそこそこの面倒見のよさを思えば、この領地には十分な伸びしろと、成長する余地がある――と、いえなくもない。
 だが、それは飽く迄『何事もなければ』の話である。

 その日、ひとりの男が姿を消した。
 彼に消える理由も、消される理由もなかったというのに、だ。ただの善人が、しかしその日『消えた』のだ。
 理由は分かりきっている。人ならざる超常の仕業である、ということだけが。
 何故なら、たまたまそこに居合わせた飲み仲間が男の消える瞬間をみたからである。
 ……『男はなにもない虚空に捕まり、音を立てて虚空に咀嚼されていった』という。そうとしか言いようがない惨劇だったと。残されたのは僅かな衣類の切れ端、血痕、そしてそれらを張り付かせ、一瞬浮き上がった人に似た、しかしどうしようもなく人とは違うシルエットだったという。
 飲み仲間は、その後どうやって逃げおおせたかを覚えていない。だが、その気配が一つではなかったこと、そして大小入り混じった群体であった……そう報告している。
 なお、彼は治安維持担当者にそれを報告した数十分後に出血多量で死亡している。
 彼は腹部から胸部にかけて直径5ミリ大の噛み跡が多数と、右下腿部から下の欠損が報告された。確保時間は日の出から15分後であったと報告されている。

●鬼は隠れて人を食む
「俺の領地で人が減ってるのは事実だが、まさかこんな話が裏で進んでたとはな……」
 ヤツェクは領地の執政官より手渡された情報を捲りながら、渋い顔をして仲間たちを見た。
 くだんの事件後、同様の事例の報告はないまでも、行方不明者は散発的に発生しており、ことの信憑性と異常性は現在進行系であることは疑う余地もない。
 問題なのが、その「鬼」を始めとした敵が姿を見せずに襲いかかってくるという点。
 血などを浴びると姿を見せるということだが、それ以外の手段はあるのか……そう考える仲間たちに、ヤツェクは「ある」と断言した。
「ウチの執政官、学者先生なんだが思ったより頭がキレるみたいでな。最近の事件……『古廟スラン・ロウ』から現れた類と聞いてピンときたらしい。これは『隠れ鬼』だってな」
 隠れ鬼? と反芻した仲間たちに、「知らないか?」と返すヤツェク。恐らく、一同の疑問はそこではない。隠れ鬼とは、隠れている者を鬼が探す遊びではなかったか。
「遊びならな。執政官が文献を漁ったら、そいつに自分から触れて『鬼さんつかまえた』って言うとそいつとその配下の雑魚どもを炙り出せるらしいぜ」
 それはなんとも単純な、と思うものもいるだろう。だが、その手の怪物というのは得てして儀式というものから逃れられない。未知とは儀式によって既知に変換されるものなのである。
「そうでなくても、見えないものが見えたり、感覚が優れてる奴が居てくれれば大分違う筈だぜ。逃げ足が早ぇし、夜の間しか活動しないから面倒だが……夜が明ける前に見つけて叩き潰しておきてえってもんだ」

GMコメント

 というわけで、今回はやや特殊なシチュエーションとなります。
 情報を確認のうえ、作戦を検討して下さい。

●達成条件
 『隠れ鬼』および『鬼の牙』全討伐

●本シナリオの流れ
 『隠れ鬼索敵パート』と『隠れ鬼討伐パート』の2部構成となっております。
 いずれかに参加するという選択肢はなく、基本全員参加での行動となります。
 なお、シナリオ中の時間帯は「夜」です。

●隠れ鬼索敵パート
 領地内に潜む隠れ鬼を探す段階です。
 基本的に「ハイセンス」に類する感覚強化系、「温度視覚」やそれと類似する感覚拡張系などが有効と見られています。 後述いたしますが「ブロッキング」「ステルス」を保有するため、範囲捜索系、直接対象とする非戦スキルは通じません。かなり重要ですので気をつけて下さい。
 出現位置は特定されておりませんが、恐らく路地裏や影の濃い場所を好むだろうと分析されています。
 逆に、不意打ちを食らう可能性が高いことも意味します。
 『隠れ鬼』に触れ「隠れ鬼捕まえた」と口にすることでエネミーすべてが視覚可能となります。
 なお、「捕まえる」のを飛ばして戦闘に入っても問題ありませんが、そうなると見えない人の不利が非常に高くなるので推奨しません。

●後半・戦闘パート(エネミーデータ)
 基本的に戦闘に関しては敵の能力を考慮して戦えば、倒せない敵ではありません。
 NORMAL相当として埒外に強いとかも、基本ありません。

○隠れ鬼
 シナリオボス的な存在です。HP・EXA・命中が高め、スキルが厄介なものが多いですが、隠密特化のため火力自体は控えめです。
・隠密歩法(P):最初に攻撃を与える敵に対し、不意打ち効果が発生する
・爪の撫で斬り(A):物近単・流血・致命
・爪の突き刺し(A):物至単・乱れ
・牙で引きちぎる(A):物至単・懊悩・麻痺
・爪牙連撃(A):物近扇・必殺

○鬼の牙×15~20程度
 隠れ鬼の牙を模し、個別に動くモノ。
 「物至単・出血」の通常攻撃を使用する。
 集中攻撃を行いがち。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <ヴァーリの裁決>隠れ鬼、捕まえた完了
  • GM名ふみの
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年03月29日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)
祝呪反魂
鞍馬天狗(p3p006226)
第二十四代目天狗棟梁
フィーア・プレイアディ(p3p006980)
CS-AZ0410
一条 夢心地(p3p008344)
殿
マッチョ ☆ プリン(p3p008503)
彼女(ほし)を掴めば
ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)
人間賛歌
微睡 雷華(p3p009303)
雷刃白狐
新妻 始希(p3p009609)
記憶が沈殿した獣

リプレイ

●隠れ迷い潜むモノ
「手入れの行き届いてない領地だったのは反省だ。すまん。ひとまず、俺も把握してない地理を改めて確かめるところからだな……」
「ふむふむ……路地裏や影の濃い場所を好み、夜にしか動かない敵ですか。確かにこの地は、彼等にうってつけの場所なのかもしれませんね」
 『陽気な歌が世界を回す』ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)は、些か荒れ具合の激しい己の領地を見て嘆息する。自分すら把握していない場所や物陰があるならば、『記憶が沈殿した獣』新妻 始希(p3p009609)の言葉通り、鬼達が目をつけるに十分すぎる条件が揃っている、といえよう。
「ここ最近で幻想王国に現れた怪異……うむ、怪異以外の表現のしようがない」
「……闇に紛れ込むのが得意と聞きました」
 『第二十四代目天狗棟梁』鞍馬天狗(p3p006226)は、『古廟スラン・ロウ』に発した敵と見えるのは――殆どの者がそうだが――初めてだ。それらの特性を見聞きし知るにつけ、彼の知識の範疇では『怪異』以外の呼び方を定められなかった。
 『CS-AZ0410』フィーア・プレイアディ(p3p006980)とて、少なからず実戦から遠ざかっていた影響もあり、聞き及んだ敵の情報、示唆された対応策を除いて然程有効な策を持っている訳ではない。経験の浅さは、トライアンドエラーでカバーするしかない状況であった。
「ヨリ二ヨッテ人ヲ食ウトハ、ナンテヤツダ……!」
 『期間限定マチョマチョ☆プリリ』マッチョ ☆ プリン(p3p008503)の憤りの声に、知らぬ者であれば『人が犠牲になること』に対する憤りだと感じるだろう。実際はそうではない。『どうせ食べるならプリンだろう』という憤りだ。夜な夜な食べてしまうプリンの魅力ならいざしらず、人をオヤツにするなど言語道断――と。
「鬼だか何だか知らねぇが、俺の目からは逃げられねぇぞ。ツケは払わせなきゃな」
「不可視の敵……暗殺者としてはかなり厄介な相手……」
『蒼の楔』レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)は暗視用の目薬を差し、使い魔を侍らせつつ周囲を見渡す。闇に沈むスラム街に、発熱を示す暖色の瞬きは乏しい。路地裏などはなおのこと。現状は、周囲に敵らしい敵は居ないと見られた。『雷刃白狐』微睡 雷華(p3p009303)も五感をフル回転させて周囲の情報を集めるが、しかし今この場ではどうにも捉え難いようだ。
「なーーはっはっは! かくれんぼの夢ちゃんと呼ばれたこの麿に勝負を挑むとは天晴じゃ。良いじゃろ、好きなだけ隠れておるが良いわ。必ず見つけ出してやるぞえ」
 そんななか、『殿』一条 夢心地(p3p008344)は自信に満ちた笑い声をスラム街に轟かせた。
 どうやらかくれんぼに一家言ある、というか相当な逸話があるらしく、領地内の地理をヤツェクと共に確認しつつああでもないこうでもないと言葉を交わす。隠れやすい場所、追い詰める経路、不意打ちを狙える立地。
 バジリスク・サイトを装着した姿はいつにも増して奇異に映るが、さりとてその存在感には言いしれぬ風格のようなものが窺えた。
「それにしても、かくれんぼというのは土地勘が第一だというのに……ここまで情報が少ないと逆に絞りづらいのじゃが」
「すまねぇ、俺のミスだ」
「仕方ねぇだろ、手を付ける前に鬼サンが来ちまったんだ。ここは一つ蹴散らして、安全だって証明しようぜ」
 思わず口にしてしまった夢心地に、ヤツェクは流石に頭を下げるしかなかった。とはいえ、お互い責めたり口論したりの余裕などない。レイチェルがヤツェクの肩を叩きつつ使い魔を飛ばすと、一同は互いに離れ離れにならぬよう動き出し。
「オレハ逃ゲモ隠レモシナイ! 来ルナラコイゲテモノ食イッ!」
 ……マッチョは、そういうの(策略)とは無縁なので、堂々たる目立ちっぷりだったが。
 まあ、敵を寄せ付けるならこれはこれで上策である、か?

●探索行
「うぬぅ……隠れ鬼というだけあって、隠れるのが得意そうだ。だが、見つけなくてはな」
「流石に闇の中だと光がないとなかなか……持ってきていてよかったですね」
 鞍馬天狗は目を眇めて路地裏へと視線を向け、気むずかしげな声を上げた。傍らから星灯りで路地裏を照らした始希は、そのあまりの暗さに驚きを隠せない。 
 視力に優れる者ならそんな闇でも動く影ぐらいは見切れるだろうか? だが闇に隠れるだけならいざしらず、姿見すら消してしまうとなれば相応の集中力がなければ難しいかもしれない。
「相手も生き物だから……見えなくても音や匂いからは隠れられない筈だよ。相手が集団なら……尚更……」
「あァ、生きてるなら温度だってあるはずだ。本体が冷たくても、誰か、何かを襲ったならその温度の残り香とかな。手がかりひとつ残さねぇなんてこたああり得ねェ」
 雷華は鞍馬天狗達とは別の路地に目を向け、全身の感覚を総動員する。空気の流れ、音、匂い。こと、人を襲い続けた鬼ならば血の匂いからは逃れられぬ。
 レイチェルはより明確に、温度視覚を駆使して僅かな変化をも見逃さぬように立ち回る。
 使い魔による上空俯瞰と自身の目による直接確認、二重に張り巡らせた調査網は、ヤツェクによる避難誘導と並行してすすめることで絶大な効果を発揮する。
「こんな時ばかり調子がいいかもしれねえが、勘弁してくれ。おまえ達が無事に暮らせるように、今はちょっと隠れててくれ」
 ヤツェクは住民達から、己も知り得ぬ地理情報を得るとともに避難誘導を進めていた。即席で作った隠れ家と役所とで人々を匿えば、そうそう鬼とて手を出せまい。……おおっぴらに暴れるリスクは、低いはずがないのだから。
「プリンハ良イゾ! 絶対二人ヨリモ美味イ!」
 他方、プリンも人々に避難を促し(?)つつプリンの魅力をアピールすべく全身にプリンを塗りたくって練り歩いていた。多分、衛生状態的な意味で鬼より先に集るものがいそうではあるがそれはさておき。
「それにつけても、複雑な住宅状態じゃな……ヤツェク殿が住民を懐柔してくれたのには感謝じゃ」
「ここまで……先が見えない場所だと……」
 夢心地はヤツェクが住民から聞き出した情報を矯めつ眇めつしつつ慎重に歩を進める。フィーアが傍らにいるからまだいいものの、本当に深い暗がりなどはバジリスク・サイトで察知することは容易ではない。
 容易ではない、が。イレギュラーズの実力と手数の多さ、そしてその多彩さは同時に幾つかの出来事を引き当てる。
 先ず、レイチェルの放った蝙蝠が避難誘導を終えつつあるヤツェク達に向かう小さな熱を察知する。
 続いて、始希の光にぼやけた輪郭が浮かび上がると、それは鋭い動きで光から逃れ、すれ違い様に鞍馬天狗の首筋を切り裂いて去っていく。
 プリンの身を幾度か傷つけた無形の影はそのまま2人から遠ざかるが、直後、唐突にその姿を現した。
「……隠れ鬼、捕まえた。もう逃がさねぇぞ?」
 一瞬のうちにカバーに回ったレイチェルが、始希達に向けた視覚がちょうど、逃げ出そうとする隠れ鬼を捉えたのだ。
 仮にそれらが逃げおおせていたとしても、マッチョを狙ったのは愚策だった。
 逃げられたとて、マッチョのプリン☆センサーばかりは――対象が鬼ではなくプリンなのだから――逃れ得まい。

●溢れる牙、襲う爪、抗う心
「居たか。ではそこに向かっ――」
 鞍馬天狗は短弓に矢を番え、隠れ鬼へと一射放つ。……が、それに先んじて湧き出た鬼の牙の数、その視覚的圧力が狙いを狂わせ、あらぬ方向へと導いた。そればかりか、彼目掛けて一直線に襲いかかってくるではないか。
「おいおい、後ろを狙いに来るとは随分悪辣じゃないか。だが、狙いがわかってるなら話は早い」
 割り込むようにR.S.Cを構えたヤツェクは、上方へと光線を打ち込む。呆然とする鞍馬天狗、カチカチと歯を鳴らして笑い合う鬼の牙はしかし、降り注いだ光線に気付く前に射抜かれていた。2射、3射目が降り注いだ時点で、無傷である敵も、まして動きが万全な敵も多くはない。
「プリン式ノオモテナシ、特ト見ヨ!」
「……倒します」
 プリンは隠れ鬼と対峙するレイチェル、雷華に視線を合わせつつ、味方全体へ向けて詩を紡ぐ。プリンを賛美する詩を。こんなときに何を、という感じだが、不思議と力が湧いてくるのが凄いところだ。
 他方、フィーアはスクリーマーを構え、手近な鬼の牙に接近戦を仕掛けに行く。数の暴力とはいったものだ。1体を足止めしても2、3、そして4と襲いかかってくる。ヤツェクの先制攻撃がなければ、より多くの打撃を受けたに違いない。
「少し離れよ! 巻き添えにしてしまうのじゃ!!」
「燃えた程度なら俺も対処できますが、多分それだけじゃ済まないですよね……!?」
 夢心地の愛刀『東村山』から放たれた炎は、鬼の牙飲みを狙わんと燃え盛る。絶妙なコントロールと射程調整があってこその妙技だが、さりとて近場にいた数名は軽く身を炙られたのも事実だ。……同士討ちにまで至らぬのでセーフっちゃセーフなんだが。少人数での戦闘は初めての始希にとって、ここまでの目まぐるしい攻防は目で追うだけで精一杯だろう。そんな中でも、負傷している者、調子を落としている者の区別はつく。
「レイチェル君、大丈夫ですか?」
「ああ、この程度傷のうちに入らねえなァ。だが、治療は有り難え」
 始希の問いかけにひらひらと手をふるレイチェルの肩口には、隠れ鬼の小さい噛み跡が残っていた。不意打ち気味に放たれたそれはしかし、レイチェルの咆哮と相打ちになる形で放たれた為か、はたまた本体の特性ゆえか威力に乏しかったようだ。その分、強いてくる不調は並ならぬものである。
「できるだけ動きを止めておきたいね……」
 雷華は全身に纏った雷を『黒金』と『コントラクター』、2本の得物を中心に隠れ鬼へと叩き込み、たちまちのうちに動きを鈍らせる。隠れ鬼のレイチェルへの初撃は見事なものだったが、然しタネが分かっているなら対策は簡単な話で、『動けなくすればいい』。
「言うのは簡単だけど実戦するやつが本当にあるかよ……」
「プリンヘノ愛ヲ受ケ止メタ仲間ナラ当然ノコト。コレダケデハ終ワラヌ」
 ヤツェクの呆れたような声に、しかしマッチョは肯定的だ。自分の詩が仲間の力になるのは当然なこと。だってプリンなのだから。そんな理屈で雷華の猛攻を見守っていた。
 そんな軽口を交わし合う間も、マッチョとヤツェクは味方を鼓舞し、英霊の鎧を形成し、仲間達に不測の事態が起きぬよう全力を尽くしていた。無論、この時点で戦闘を続け得ぬ仲間ばかりは致し方無いが。
「いやはやよくぞ隠れたものじゃが、それもここまでよ! これ以上は逃さぬのじゃ!」
「ええ、このまま包囲を続ければ……俺達は逃さない。行けるはずです」
 敵味方共に、『安全圏』のない乱戦状態。
 夢心地のはなった何度目かの秘剣は、遂に牙のすべてを燃やし尽くした。始希はSPDによる治療と前衛の負傷の治療とを交互に行うことで己の行動に無駄や死に体になる要素をひたすらに削っていった。『臨機応変』では成し得ぬ境地が、そこにはある。
 フィーアは牙達の全滅に合わせ前進し、そして隠れ鬼の猛攻と、それに応じ接戦を繰り広げるレイチェルとの双方に目を瞠る。自らを巻き込むように放たれた連撃は威力こそ低いが攻撃の密度が濃く、不意を打って突き出された爪の鋭さは想定していた『弱さ』とは天地の差。
 久しく離れていた実戦の空気は、一歩間違えればすべてふいになるほど重く、激しい。
「焦ってるなァ、俺には分かるぜ。大方、思ったより俺の仲間に手出しできなくて苛ついてんだろ? 当たり前だろ」
 レイチェルはその猛攻を緩やかにで凌ぎながら、冷徹な笑みを深くその貌に刻む。味方の窮地は承知の上、だが今は仲間に声をかけ気遣ってやる――血の一滴も癒やしてやれぬ――1秒よりも、己の右半身の術式とともに血を炎に変え、復讐の一撃を打ち込むことこそその使命と心得ている。
 誰かが倒れる前に、相手を倒せば問題ない。もとより、癒し手の不足した戦場で勝つには『先手必勝』が世の常なのだから。
「おれのシマで暴れたツケ、命で払ってもらおうじゃないか」
「プリンヲ無視シテ人ヲ食スナンテ事……モウサセヌ!」
 ヤツェクのR.S.Cが唸りを上げて光線を吐き出し、曲芸じみた射線から次々と隠れ鬼へと突き刺さる。怒りに燃える目で前進する隠れ鬼はしかし、マッチョの頑健な胸板にその爪牙を弾き返され、その体力をじわりじわりと削られる。
 思えば彼は、最初から――隠れている時を除いて、一切自分の戦いができていない。
 ここぞというタイミングで爪を構えた隠れ鬼は、痙攣を起こし動きを止めた己が身に毒づく間も与えられず、レイチェルのはなった炎に焼き焦がされた。

「シッセイカン、ト言ウノカ! プリン食べルカ!?」
「え? なんですかいきなり……どうも……」
「そう怖がってやるなよ。そいつは俺の仲間なんだから」
 戦闘終了後、一同は今回の影の功労者たる執政官の慰問に訪れていた。出会い頭に山盛りのプリンをプリン頭のマッチョから渡された執政官の気持ちは如何ばかりか。多分すごく、気が動転しているものと思う。
「なんとか……終わったね、帰って寝てもいいよね……?」
「なっはっは、これにて一件落着じゃな! 歯は磨くんじゃぞ!」

成否

成功

MVP

ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)
祝呪反魂

状態異常

鞍馬天狗(p3p006226)[重傷]
第二十四代目天狗棟梁
フィーア・プレイアディ(p3p006980)[重傷]
CS-AZ0410

あとがき

 お疲れ様でした。
 シナリオに於いては創意工夫と具体性がモノをいいます。多分、そういう系の結果だったかとおもいます。
 MVPは熱意と創意工夫の双方に有用性があったあなたに。

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