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シナリオ詳細

イートワンズ・オブ・オーシャン

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●『大海のおおいなるひと囓り』
 海の男たちは選択を強いられた。
 しばしの稼ぎと引き替えに怪物のエサとなるか、飢えて倒れるかを。
 イートワンズが出たという、その一言のために。

 まずはある漁師の話を紹介することにしよう。
「イートワンズが出たら、もう漁はおしまいだ。
 奴らがたらふく魚を喰うまで待つか、俺たちが代わりにエサになるか。
 どっちみちおしまいさ。あそこは微妙な領海なせいで手を出しづらいって噂で、兵もあんまり出ていかねえ。
 だから去年町の若い衆と槍だの鉄砲だのもって挑んだがな、船は揺らされるわ人間だけ器用に囓りとられるわで……俺たちは無力だと悟ったのさ。
 だって考えられるか。刺した槍が押し返されるんだぞ。撃った弾が弾かれるんだぞ。
 でもって海から伸びた何匹もの大蛇が俺たちを見るんだ。
 テーブルにならんだオードブルを見る目でだ!」
 だがそんな悲劇と恐怖に――。

●つどえ、海のイレギュラーズ!
「終止符をうつのです! びしっ!」
 ユリーカ・ユリカが丸めた新聞紙(?)で空想上の蛇を打ち据えた。
 ここはギルド・ローレット。テーブルに敷かれたフィッツバルディ領からやや東の海図。その上にのせるように並んだ酒の入ったカップたち。
「貴族さんたちや漁師さんたち合同のご依頼で、海に現われた『イートワンズ』という怪物をやっつけるのです!
 今こそ、海の男が求められているのです! ……あっ、女もです!」

 イートワンズ。
 それはある季節になると南東の海からエサをもとめてやってくる大蛇の集団である。
 集団といっても5体ほどで、大量に食いまくっては去って行くのだ。
 漁業に大きな打撃を受けるが、海洋(ネオ・フロンティア海洋王国)の主張する領海に近いことから幻想(レガド・イルシオン)の貴族ががっつりと武装した兵を出すわけにはいかないというデリケートな問題がかかっていた。
 ということで、ある程度自由に動けるギルド・ローレットが退治の依頼が回ってきたというわけである。

「イートワンズは海上を滑るように移動するのです。
 船で近づけば首をぐーっと高く伸ばして攻撃してくる筈です。
 もし船の操縦が得意なら、攻撃をかわしやすくなったりうまく相手の弱点をつけるかもしれないのです! だから海の男……はっ、男女を求めているのです! 陸と空もです!」
 ユーリカは丸めた新聞紙(?)を掲げて見せた。
 帆をはり碇をあげよ、とでもいうように。

GMコメント

 ごきげんよう、イレギュラーズの皆様。
 海の上での戦闘はお得意ですか? 船の操縦は?
 このたびは海上で船を用いての怪物退治。きっとご活躍の機会がございますよ。
 勿論、そればかりではままならぬものでございますから、地をかけるかた空を飛ぶかた、大歓迎でございます。

【シチュエーション】
 当シナリオでは船に乗って戦闘を行ないます。
 貴族から1~2隻のたいへん頑丈な船を借りまして、海の怪物と戦います。
 船自体は非武装。あくまで移動する足場という感じで天井はありません。
 (1隻だけ借りて8人乗る。2隻借りて4人ずつ乗る。いっそ借りずに泳ぐといった選択ができます。相談して借りる数や乗り込むメンバーを決めておくとよいでしょう)

●船上戦闘
 イートワンズと戦闘するにあたって、船の上はたいへん揺れるでしょう。
 そのため『命中、回避、反応にそれぞれ-10』の足場ペナルティがかかります。
 海中に落ちた場合は泳ぎながらの戦闘となりますので、『命中、回避、反応にそれぞれ-30』のペナルティとなります。
 ただし後述する手段をとることでこれらのペナルティを回避し、場合によってはボーナス判定に変えることが出来ます。

・操船ボーナス
 船を扱う際、一隻につき最低1PCずつ、船を操作するPCを決めてください(※1)。
 この操作するPCが『運転に集中する』『海上での船操作に役立つスキル・ギフトを使う』『プレイングで工夫する』といったことを行なうことでボーナス判定を得ることができます。
 ボーナス判定の対象者は運転している船に乗っているメンバー全員(※2)です。
 内容は『命中、回避、反応』にそれぞれ+5~+30の補正をつけることができます。
 上昇方法はケースバイケース(※3)ですが、特技を活かしたり頑張ったりすればするほど上がります。

 (※1:候補が複数いた場合はメインとサブ2人体勢で交代しながら消耗を防いだり、操縦者が怪我をした時の交代役をたてたりといった作戦がたてられます)
 (※2:飛行や水泳の状態になったメンバーはその時点でボーナスが解けるものとします)
 (※3:命中+5回避+20反応+15といったようにバラバラに判定されます)

・水中ボーナス
 もしPCが『水中ないし水上での戦闘に有利なスキル・ギフト』を有効に使用した場合、『命中、回避、反応』にそれぞれ+20~+50の補正をうけることができます。
 この補正は水中・水上戦闘をやめた時点で解除されます。

 尚戦闘中に飛行する場合はそれが船の上でない限り(当シナリオ内では)飛行ペナルティを受けるものとします。

【エネミー】
●イートワンズ
 5体でまとまって移動している怪物です。
 首を持ち上げた際の高さは船上の人々が思わず見上げるほどで、海上を滑るように移動します。
 目の前のものにとらわれやすいので、近くに張り付けば噛みつきに集中するようになりやすいでしょう。
 ・EO噛みつき(近接/物理/範囲):巨大な口で噛みつきます。場合によっては一呑みにします。
 ・EOハウリング(遠距離/神秘/広域【ショック】【乱れ】):おぞましい声で吠えて威嚇します。ダメージは小さいが噛みつきへのコンボが凶悪。

【まとめ】
・敵は水上大蛇5体。こちらは船最大2隻。
・船での海上戦闘が上手だとボーナスがつく
・敵に張り付くとハウリングが抑えられる

【アドリブ度】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』と書かれたお客様にはアドリブを多めに、逆に『アドリブなし』とお書きくださればアドリブ控えめで対応できますので、ぜひご活用くださいませ。

  • イートワンズ・オブ・オーシャン完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年01月23日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

マグナ=レッドシザーズ(p3p000240)
緋色の鉄槌
アイリス・ジギタリス・アストランティア(p3p000892)
幻想乙女は因果交流幻燈を夢見る
ヴィクトワール・アルレット・モンタニエ(p3p001576)
聖剣に選ばれし者(自称)
陰陽 の 朱鷺(p3p001808)
ずれた感性
胤・嵐(p3p002031)
焦がれた太陽
エスラ・イリエ(p3p002722)
牙付きの魔女
時雨尊(p3p004101)
迷子の神様
アカネ(p3p004246)
散っていった数多の魂達よ

リプレイ

●大海原の守護者
 船が碇をあげ、港につないだロープをはなす。
 大海原へと滑り出す船。舵を握るのは『散っていった数多の魂達よ』アカネ(p3p004246)。
 髪をなでていく潮風に、愛おしそうに目を瞑る。
「あの人が愛した海。そいつを荒らすヤツは蜂の巣さね!」
「おーっ!」
 船の側面を泳ぎながら拳を突き上げてみせる『焦がれた太陽』胤・嵐(p3p002031)。
「おいたが過ぎた蛇野郎くんたちにお仕置きだー!」
 そこまでいうと、海に潜ってドルフィンキックで泳ぎ出す。
 一方、船の上で手すりに寄りかかっていた『装紅者』マグナ=レッドシザーズ(p3p000240)はギザついた歯をみせて獰猛に笑った。
「役目はキッチリ。んでもって、バトルもたっぷり楽しませて貰う!」
 がちん、と左手のロブスターバサミを鳴らした。
 どうやら戦いを前に気持ちが高ぶっているようだ。
 やる気を見せているのはなにも彼らだけではない。
 『聖剣に選ばれし者(自称)』ヴィクトワール・アルレット・モンタニエ(p3p001576)は船の先端でバッと両手を広げて風を全身にうけていた。
「ここはわたくしの操船技術の見せ所! アカネ様!」
 ぐるりと身体を反転させるヴィクトワール。
「どちらがお上手か競争しましょう」
「へえ、アタシに舵さばきで勝負しようたぁ、度胸があるじゃないか」
 穏やかな表情に隠れたナイフのような鋭さをのぞかせるアカネ。一方でヴィクトワールは肩にかかった髪を大胆にかきあげた。
「お遊びに興じられる心の余裕、失いたくないですもの」
 まったくだ。そんなふうに言って笑うアカネたち。
 一方で『迷子の神様』時雨尊(p3p004101)は腕組みをして海を眺めていた。
「いやはや、前線で戦闘なぞ、久しいな……」
 ふと昔を思い出すように顔を上げる。
 横から『これまではどうだったのですか?』といったような視線をよこしてくる陰陽 の 朱鷺(p3p001808)。
 時雨尊はそれを察して頷くと、昔は仲間に戦闘行為を控えるように言われていたという話をした。
 なるほどという顔で頷く朱鷺。
「船上での戦闘。私の初依頼にしては、少々奇天烈ですが、見事解決に導きたいですね」
「うむ」
 依頼に同行しているパーティーメンバーたちはどうやら打ち解けてきているようだ。
 『ディンテ・ドーブルの魔女』エスラ・イリエ(p3p002722)はそんな様子を横目に、船に置いてあったロープをしげしげと観察していた。
「水中戦闘も操舵もできないけど、味方に迷惑かけないよう頑張らないと」
 同じロープを手に取る『幻想乙女は因果交流幻燈を夢見る』アイリス・ジギタリス・アストランティア(p3p000892)。
「大丈夫です。私も水中を自在に泳げませんし船も扱えませんが、癒し手として戦線を支えることができます。皆が己の役割を果たすならば恐れる敵ではないでしょう」
「そうね! なら私は、これで役目を果たすわ」
 エスラは背負っていた長弓を手に取り、ぎゅっと握りしめた。

●イレギュラーズ出航
 海面からのびあがる五本の柱。
 否、海大蛇『イートワンズ』。
 しっかりと目視したヴィクトワールは、アカネと交代して舵を握りしめた。
「総員戦闘態勢! まずは突っ込みますわよ!」
 船は追い風を帆にうけて、勢いよくイートワンズの集団へと突進していく。
 対するイートワンズもそれに気づいて咆哮をはじめ、こちらを囲むように展開を始めた。
 船は横に大きく広がるイートワンズのうち一体とすれ違うように接触。
 食らいつこうと首を突っ込んでくるイートワンズを、ヴィクトワールは剣と船の勢いによって弾いた。
 ぐわんとはねる巨大な首が船の上を払うように通り過ぎていく。
「さて、久方ぶりの戦であるな。今の己の実力を試す絶好の機会よ」
「船から落ちても安心してください。式神で助け出します!」
 時雨尊は刀を抜き、一方の朱鷺は保護結界を展開。
 頭上を通り過ぎる大蛇の首を、時雨尊はばっさりと切りつけていった。
 その直後、別のイートワンズがハウリングを開始。身体がぞわぞわとするような声が響き渡る。
「こんなもん……!」
 手すりのひとつにつかまり、通り過ぎたイートワンズへライフル射撃を浴びせるアカネ。
 時雨尊がちらりと朱鷺のほうを見やると、朱鷺はここぞとばかりに祈祷を開始。ハウリングによる被害をかき消しにかかった。
「しばらくはハウリングをしのぎながら戦うよ! 回復は頼んだからね」
「暫くはオレらが2体ほど引きつけておく。早いとこ数を減らしちまえ!」
 マグナはそう言うと、船の手すりを乗り越えて海へと飛び込んだ。
「遠術展開、『ヘルファイア』!」
 猛烈に海を泳ぎながら、ハウリングをかけようとしていた別のイートワンズへ突撃。真っ赤な魔力を発射して引きつけ始めた。
「来いよデカブツ。テメェの相手はこのオレだ!」
 目の前を通り過ぎるマグナに食らいつこうと首をひねるイートワンズ。
 そこへ、嵐がドルフィンジャンプで飛びかかった。
「アンタの相手は俺!」
 嵐が杖で殴りつけると、どういうわけかイートワンズが大きく流された。
 船との距離を離し、挑発するように水面をはねる嵐。
「こっこまーでおいでーっだ!」
 イートワンズはムキになって嵐やマグナを追いかけ、船から離れていった。
 こうなればイートワンズ3体を船1隻で相手にできる。
 ヴィクトワールの操縦によって三体の間をぐねぐねとすり抜けるように移動していく船。
「さて、大きな蛇さん、悪さはここまでよ」
 丁度真横を通るタイミングを狙って、エスラがミスティックロアを発動。長弓による射撃を開始した。
 神秘性をもった矢がイートワンズの首にざくざくと刺さり、うめき声をあげさせる。
 そこへ、ここぞとばかりにアイリスが毒のポーションを投げつけた。
 ばりんと割れ、毒液に晒されるイートワンズ。
 今度はうめき声を断末魔に変え、ずぶずぶと海に沈んでいく。
 アイリスはエスラと顔を見合わせ、これでよしとばかりに頷きあった。
「この調子で行きましょう。回復が必要な方は声をかけてください」
 アイリスは治癒薬を手に、仲間たちへ呼びかけた。

●とどろけ魔術の稲光
 海中に潜ったイートワンズ。人間をひとのみにできそうな口をぐわりと開き、海水をかきわけて襲いかかる。
 対する嵐は先手を打つ形で衝術を発動。
 顔面に直撃をうけたイートワンズは狙いをはずし、噛みつき攻撃を大きく空振りさせた。
 その真横を撫でるようにすり抜け、背面ドルフィンキックで海面に飛び出す嵐。
「ぜんぜん当たらないよ! 悔しかったらおっかけておいで!」
 んべっと舌を出すと、ムキになったイートワンズのさらなる噛みつき攻撃を杖で受け止めた。
 そんな彼を横から食いつこうと襲いかかる別のイートワンズ。
 大きく口を広げたその途端、真下からの衝撃に顎を打ち上げられた。
 この場でこんなことをするのはマグナを置いてほかには無い。
「どこ見てんだ蛇野郎! オレはこっちだ!」
 イートワンズと分かれて海面を泳ぐマグナ。背中からはえたしっぽを激しく動かしてターンをかけると、左手のロブスタークラブを鋭く構えた。
「こいつでどうだ。近術解放『スティンガー』!」
 真っ赤に燃えるような魔力をクラブに宿し、パンチを叩き込むマグナ。
 イートワンズは彼をはねのけるべく大きく身体をうねらせた。

「あっちはうまくやってるみたいだね」
 交代して操舵担当になったアカネが、遠くでイートワンズたちを引きつけてくれている嵐やマグナを見て言った。
 そんな彼女を――もとい彼女の船を後ろから追いかけるイートワンズ。
 まるでハンマーでも叩き付けるように首を大きく振り上げると、船体めがけて振り下ろしてきた。
「つかまりなっ!」
 急速に舵を切るアカネ。
 無理矢理カーブした船のギリギリを、イートワンズの牙が掠めていく。
 急カーブによって振り落とされそうになったエスラだが、船に縛ったロープにつかまることで体勢を維持。一緒に朱鷺やアイリスの姿勢も維持させると、イートワンズのしっぽめがけて弓矢の射撃を打ち込み続けた。
「既に二体は倒したわ。この個体を倒せば、あとは仲間が引きつけてくれている分だけになる!」
 ぐっと足を踏ん張るエスラ。
 朱鷺はどこか余裕そうにしながらも、瞑想をして自己のAP回復をはかっていた。
「海蛇ですか。いつかは式神としてみたいですね。きっと海上の移動手段として役にたつでしょう」
「この凶暴さはこまるけどねっ」
 治療薬をこっちに、と叫ぶエスラ。アイリスはそれに応えてストックしていた治療薬を放り投げた。キャッチして傷口にふりかける。
「……」
 アイリスは一度海に沈んだイートワンズの行き先を予想するように海面を見やった。
 ぐわんとゆがむ海面。
 黒い何かが迫る感覚。
 透き通った海面に、はっきりとイートワンズの巨体が映った。
「頭を出したときがチャンスだよ。たたっ切りな!」
 アカネはそう呼びかけると、あえてイートワンズに近い位置で船をカーブさせた。
 側面が晒され、頭を出したイートワンズが手すりを突き破ろうかという勢いで飛び込んできた。
「好機!」
 待ってましたとばかりに時雨尊が抜刀。
 横一文字に払われた刀が、イートワンズの顎を切り落とす。
 と同時に、アカネのたくみな操縦によって船体をイートワンズにぶつけ、反動でおおきく距離をとった。
 距離にして20メートル。それまでじっと力をためていたヴィクトワールが、剣を大上段から振り下ろした。
「聖剣の力、見せてあげますわ!」
 刀身から放たれた魔力がイートワンズに直撃。イートワンズは身体を左右にさかれ、そのまま海中へと沈んでいった。
 乱れた金髪を手ぐしで整え、振り返るヴィクトワール。
「アカネ様、交代ですわ。締めに入りますわよ!」

●イートワンズ殺し
 ドルフィンキックで海をすいすいと泳いでいく嵐。
 エコーロケーションで船の接近を敏感に悟った彼は、自分を追いかけてくるイートワンズへと振り返った。
「遊んでくれてありがとね。けど、お別れみたいだ」
 尾びれで急制動。
 食らいつかんとするイートワンズ。今度こそその牙が届き、嵐の肩へと食い込んでいく。
 それはどこか、嵐なりのお別れの挨拶のようでもあった。
 至近距離からの衝術を浴びせた。
「ごめんね」
 ドン、という音と共に水しぶきがあがり、イートワンズの巨体が水上へ跳ね上げられる。
 それはまさに、ヴィクトワールのあやつる船が接近するさなかのことであった。
「絶好の位置だ。ゆくぞ、アイリス!」
「はい、あわせます」
 深く息を吸った時雨尊が跳躍。
 と同時にアイリスがマジックフラワーの火花を放った。
 二人の攻撃がイートワンズを中心に交差し、イートワンズはそのまま失速。海にザブンと沈み、沈み、戻っては来なかった。
「やりましたわ! ついでにもう一発。皆様、右舷へ集中。準備はよろしくて!?」
 ヴィクトワールは巧みな操縦でもう一体のイートワンズの側面をするように滑り込んでいく。
 その動きを察したマグナは、自分へと食らいつくイートワンズを鎌とクラブハンドでもって受け止めた。上あごと下あごそれぞれに食い込ませ、無理矢理あごをこじ開けたのだ。
「付き合ってくれた礼だ。最後は派手に行くか!」
 腕を伝った魔力が、赤い稲妻のようにイートワンズを襲う。
 びくんと身体をけいれんさせたイートワンズに、ヴィクトワールの操る船が側面をよせた。
 朱鷺とエスラはそれぞれ船の右舷につき、意識を集中。
「構え――撃ぇ!」
 朱鷺の放った呪術とエスラの放った矢が、イートワンズの身体へ綺麗に叩き込まれていった。
 激しく暴れるイートワンズ。
 マグナを振り払い、大きく吠える。
「これは……」
「しぶといわねっ」
 再び構える朱鷺とエスラ――をかき分けて、アカネがイートワンズへと走り出した。
 接近するイートワンズにライフル射撃を加え、更にダッシュ。
「言ったろう? あの人が愛した海を荒らす奴は――!」
 手すりを踏み台にして跳躍すると、大きく口を開いたイートワンズの口内めがけて飛び込んだ。
「――!?」
 エスラや朱鷺たちが身を乗り出す、その直後。すばんと音を立ててイートワンズの喉をアカネの攻撃が突き破った。
 沈むイートワンズの巨体を背に、海へと落ちるアカネ。
 嵐に抱えられて、静かになった海を振り返った。

●そして海は再びの……
 ざざん、ざざん。
 海は静かだ。太陽の光をただただ波に乱反射させていく。
 立ち泳ぎする形で、アカネはその光景をぼうっと眺めていた。
「船に戻らなくていいの?」
「まだ、やることが残ってんだろ」
 嵐とマグナが泳いで寄ってくる。
 一緒に見上げると、船の手すりからヴィクトワールが身を乗り出していた。
「わたくしとの勝負はまだ終わってませんわよ! 船の操縦!」
「ああ、今行くよ。まだまだ若い衆には負けてらんないからね!」

 船の甲板では、エスラとアイリスがロープを片付けながらふかく息をついていた。
「なんとかなったわね。まだ身体がぐらぐらするわ」
「船酔いにならないように、少し看ましょうか」
 一方で、並んで地平線の先を見る時雨尊と朱鷺。
「初陣は大勝利、か」
「ひどい怪我をすることもなく、済みましたね」
 おろしたロープをつたってアカネが戻ってきていた。帰りの船で操縦技術を競うのだそうだ。
 今はもう、海を荒らすものはない。
 漁師たちも戻ってきて、いつも通りに漁を続けるだろう。港も町も賑わい、社会と人々は回っていくだろう。
 朱鷺たちは空を見上げ、海の平和を想った。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

船の上での戦いには、やっぱり派手なアクションがつきものですね。
海賊映画の音楽を聴きながら、派手なシーンを想像しながら……なんていうのもいいですね。
水中で戦う皆さんも、とってもかっこよかったです!
また、海の上でお会いしましょう! ごきげんよう!

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