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シナリオ詳細

<ヴァーリの裁決>蝙蝠の道場破り

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●響き渡る鳴声
 耳を劈くような金切り音。それは道場内に響き渡る。
 『『幻狼』灰色狼』ジェイク・夜乃(p3p001103)の領地「ジェイク・夜乃領」では今まさに戦慄が渦巻いていた。
 道場の天井に逆さに止まる巨大な蝙蝠が、水晶の如く光る牙を剥き出しにしている。

 その頃、領内のあちこちでは小さな蝙蝠が大量発生し領民たちを襲っていた。
 大蝙蝠の眷属だろうか、小蝙蝠たちはキーキーと嫌な高音を立てながら領民たちを追い回す。
 領内の混乱を鎮めようと執政官の指示で召集された兵たちが小蝙蝠に対峙した。
 しかし、斬り払っても撃ち落としても次から次へと湧いてくる。大蝙蝠が新手を召喚し続けているのだろう。
 ならば道場に姿を現した大蝙蝠を先に始末すれば……と、事はそう甘くはなかった。
 兵たちが十数人で斬り掛かり銃撃を浴びせても、ろくに傷すら入らない。
 大蝙蝠は恐ろしいほどのスピードで道場内を飛び回りこれらの攻撃を躱すと、口から液体を射出する。
 直後、液体が付着した道場の壁はどろりと溶け、兵たちも大火傷を負った。

●強者、集まる
「……というわけで、いきなり襲撃仕掛けてきやがった。こっちの兵は小蝙蝠退治に手一杯で、道場破り気取りの大蝙蝠には歯も立たねえ」
 一刻も早く大蝙蝠を倒すべく、ジェイクは急ぎローレットに出向いていた。
 時を同じくして、古廟スラン・ロウではレガリアの盗難が発生し、神翼庭園では封印が暴かれたという。
 更に幻想各地の領土を魔物が襲撃、壊滅した街まであるとか。
 ジェイクの領地が襲撃を受けたのもその一端なのだろう。
 度重なる事件の裏に何があるのか、幻想王国で何が起ろうとしているのか、その真相は見えないが少なくとも動かなければ間違いなくジェイクの領地は死屍累々の果てに崩壊するだろう。
「とにかく、大蝙蝠を倒せる戦力を早々に掻き集めて戻らねえと。執政官と兵だけじゃ長くは持たねえ」
 集まったイレギュラーズたちに領地の状況を話していると、
「これはもう一大事なのです!」
 と『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)がテーブルにドンッと図鑑のような書籍を置きながら加わる。
「その蝙蝠はきっとものすごく強い酸みたいなのを吐き出しているのです! 蝙蝠について色々調べましたけどかなりヤバイのです……鳴き声も凶器になりかねないですし、爪とか牙とかもめちゃくちゃ鋭いのです……こんなの相手にただの兵隊さんじゃ厳し過ぎるのです。こうなったらもう、皆さんがガツンとやってやらないとなのですっ!」
「まあ、そういうこった。領地の兵には引き続き小蝙蝠共を潰してもらう。その間に俺たちで大蝙蝠とケリつけようぜ」

GMコメント

ご無沙汰しております、マスターの北織です。
この度はオープニングをご覧になって頂き、ありがとうございます。
以下、シナリオの補足情報ですので、プレイング作成の参考になさって下さい。

●成功条件
 巨大蝙蝠の撃破

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 現時点で判明している情報に嘘はありませんが、敵の攻撃パターンなどにやや不明点もあります。

●ジェイク・夜乃領
 オランジュベネにあるジェイク・夜乃(p3p001103)さんの領地です。

●大蝙蝠について
 怪王種(アロンゲノム)で、領地内の道場を襲撃しています。数は1羽です。
 巨大な上にとんでもなく素早く飛行します。
 飛行しながら口から体液を射出し、この体液を食らうと溶かされてしまうようです。
 また、ユリーカの分析が正しければ、鳴き声によって何らかのバッドステータスをもたらしたり、爪や牙による引っ掻き攻撃や噛みつき攻撃を繰り出してくる可能性があります。
 人語は解しませんが知能は高いので、道場を破壊してより戦いやすい外に出る可能性もあります。

●怪王種(アロンゲノム)とは
 進行した滅びのアークによって世界に蔓延った現象のひとつです。
 生物が突然変異的に高い戦闘力や知能を有し、それを周辺固体へ浸食させていきます。
 いわゆる動物版の反転現象といわれ、ローレット・イレギュラーズの宿敵のひとつとなりました。

●小蝙蝠について ※一部PL情報です。
 大蝙蝠の眷属のようです。
 数は数十羽と思われ、「ちょっと攻撃的なただの蝙蝠」といった程度の敵ですので、領地の兵で十分対処出来ています。
 大蝙蝠は倒された眷属の数だけ新たな眷属を召喚しており、大蝙蝠が生きている限り眷属の数は倒しても倒しても減りません。
 そのため、現時点では十分対処出来ていても大蝙蝠との戦いが長時間に及べば兵たちの疲労が増しやがて戦えなくなる恐れがあります。
 ただし、眷属は減らないだけで元々の数より増えることはないようです。

●その他参考情報
 時間帯は昼間、微風です。
 気温・室温共に「高くも低くもない快適な温度」です。

●ブレイブメダリオン
 このシナリオ成功時参加者全員にブレイブメダリオンが配られます。
 ゴールド、ミスリル、アダマンタイトとメダルごとにランクがあり、それぞれゴールド=1p、ミスリル=2p、アダマンタイト=5pとして扱われブレイブメダリオンランキングにて総ポイント数が掲示されます。
 このメダルはPC様間で譲渡可能です。

それでは、皆様のご参加心よりお待ち申し上げております。

  • <ヴァーリの裁決>蝙蝠の道場破り完了
  • GM名北織 翼
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年03月24日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (8人)

エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)
波濤の盾
ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)
善性のタンドレス
ジェイク・夜乃(p3p001103)
『幻狼』灰色狼
ユーリエ・シュトラール(p3p001160)
優愛の吸血種
マルク・シリング(p3p001309)
アルム・カンフローレル(p3p007874)
両手にふわもこ
胡桃・ツァンフオ(p3p008299)
ファイアフォックス
ヲルト・アドバライト(p3p008506)
幻想の勇者

リプレイ

●序
「お前たち、大丈夫か!」
 飛び交う小蝙蝠に剣を振り回す傭兵に、ローレットから戻った『『幻狼』灰色狼』ジェイク・夜乃(p3p001103)が声を掛けた。
「はい! この辺りの奴らは叩っ斬れば済むんですが……道場のデケェのは手に負えねぇっす……」
「気にすんな、助っ人連れてきたからよ! 厳しい戦いになるかもしれねえが、俺たちが大蝙蝠を倒すまで何とか持ち堪えてくれ!」
「それにしても凄い数の蝙蝠だね……対処ができなくなる前に、大本を叩かないと」
 傭兵たちを励ますジェイクの横で、マルク・シリング(p3p001309)の視線は既に大蝙蝠が占拠する道場に向いている。
 『医術士』ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)も、領内を飛び交い手当たり次第に人々を襲う小蝙蝠を見て
「たくさんの蝙蝠……」
 と息を呑むが、傭兵たちに力強く呼び掛けた。
「数に押されないように一緒に守っていきましょう!」
「ウスッ! 任せて下さい!」
 領主直々の激励と助っ人たちの声援に奮起したか、傭兵は拳を作って返事する。
「ジェイク君の領地が襲われるなんて……最近こんな事件多いね。微力ながら俺も助けるよ!」
「ここにも出たのか。ほんと、どこの領地も襲われてんなぁ……ま、同じイレギュラーズだ、助太刀するさ」
 『両手にふわもこ』アルム・カンフローレル(p3p007874)と『被吸血鬼』ヲルト・アドバライト(p3p008506)がジェイクに声を掛けた。
(オレのとこもいつ襲われるか分かんねぇな、こりゃ)
 ジェイクのように領地経営をしているヲルトにとって、この一件は他人事ではない。
 ヲルトの中では、頭目たる大蝙蝠の土俵に上がる心構えが既に出来ている。
 ジェイクは
「恩に着るぜ!」
 と彼らの背中を叩いた。
(幻想内で魔物が派手に暴れてるとは聞いていたが、いよいよ俺のとこにまで来やがったか……)
 親が子を手塩に掛けて育てるように大切に管理してきた領地を蹂躙され、ジェイクの怒りは頂点に達していた。
「魔物共の背後に何がいるかは知らねえが、領民を守るのが領主の務めだ……覚悟しやがれ大蝙蝠!」
 ジェイクはローレットで募った助っ人たちと共に道場に駆ける。


「元が蝙蝠なら、爪や牙も鋭いと考えれば近接攻撃も出来ると見ていいね。あとは蝙蝠と言えば高周波音の鳴き声だけど……食らったら聴覚を封じられたり脱力したり、場合によっては衝撃波を発生させて僕たちを襲うかもしれない。鳴き声を封じられれば優位に立てるんじゃないかな。とにかく、眷属が領内を蹂躙している以上全力速攻で片付けないと、ね」
 道場に駆けながら、マルクは大蝙蝠の能力について冷静に分析して仲間に告げた。
 マルクの分析に仲間たちと耳を傾けながら道場に到着したジェイクは、
「俺んちに喧嘩を売ってくるとは、いい度胸じゃあねえか!」
 と、入口を全開するなり怒鳴り、すぐさま道場内に保護結界を展開する。
「よし、これで思うままに暴れてくれていいぜ!」

 道場の梁には大蝙蝠が一羽逆さに止まり、爛爛と光る目をイレギュラーズたちに向けている。
 「大蝙蝠」と言うだけあって、その体は異様なまでに大きく、両翼を広げれば道場内の半分近くを占めてしまいそうだった。
「コャー」
 道場を占拠する大蝙蝠を見上げた『ファイアフォックス』胡桃・ツァンフオ(p3p008299)は首を傾げる。
(この度大量発生してきた魔物には鳥型が多いって聞いたけど、蝙蝠も範疇なのかしら?)
 蝙蝠とは鳥なのか否か、恐らく生物学的には否だ。
(でも、まあ飛行種の方々も色々いるし、そういうこともあるのかも。細かいことはさておき、町の防衛はちゃんとやるのよ)
 胡桃は己を納得させて拳を構えながら大蝙蝠との間合いを測り、ヲルトは血液が沸騰するほどに熱くなるような心地で
「さぁ、始めようか」
 と大蝙蝠を見据えた。
(吸血鬼としては蝙蝠を痛めつけるのは少し思うところがありますが……やはり如何なる理由であれ人に危害を加えるのは良くないことです!)
「ジェイクさんの領地に大発生の蝙蝠たちには元の生息地に帰ってもらいましょう!」
 『優愛の吸血種』ユーリエ・シュトラール(p3p001160)は光の加護を宿し、ひとまずココロの元に向かう。
「……ったく、人の領地を荒らすなんざ盗賊だけで十分ってもんだ」
(……いや、盗賊も別に来なくていいんだがな)
 『波濤の盾』エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)は、ぽつりと零した後大蝙蝠を睨むと、
「アンタの喧嘩はこの俺エイヴァンが丸ごと買ってやろうじゃないか!」
 と堂々たる名乗りを披露した。
 獰猛な双眸がギョロリとエイヴァンに向き、その巨躯が彼目がけていきなり飛ぶ。
 大蝙蝠の牙が眼前に迫り、エイヴァンは大盾を突き出した。
 ガッと牙が大盾にぶつかる音がした直後、大蝙蝠の口から強酸性の液体が射出される。
 そのまま大盾で受け止めると、強酸性の液体は盾に当たった瞬間凍りついた。
 しかし、大蝙蝠は今度は高周波の鳴き声で衝撃を道場内に四散させる。
 体内を乱され切り刻まれるような激痛がイレギュラーズたちを襲うが、その時ココロの号令が道場内にこだまし、言霊は癒しの力を以て仲間たちを異変から救った。
(いつもわたしを娘のようにかわいがって下さるジェイクさんのピンチ……絶対に助けなくちゃ!)


 大蝙蝠はココロの能力に苛立ちを覚えつつ、前線で大盾を構えるエイヴァンを翼で横殴りしようとする。
 すると、ヲルトが大蝙蝠の前に立ちはだかり動きを妨害、そこに拳銃を手に大蝙蝠との間合いを測ったジェイクの高威力の魔弾が一発撃ち込まれた。
 魔弾は大蝙蝠の翼を掠め、動きを僅かに鈍らせる。
(傭兵さんたちの体力を考えたらのんびりしてはいられない。大技連発で畳み掛けないと)
 マルクは大蝙蝠を射程に捉えると、回復術を施してくれるココロやアルムの位置を確認しながら破壊力抜群の一撃を見舞った。
 羽を掠めた魔弾の威力と、マルクによって焦がされた体毛に憤慨したのか、大蝙蝠はギーギーと嫌な鳴き声を上げる。
 途端に道場内の床や窓ガラスがビリビリと震え、イレギュラーズたちは足元から崩されるような感覚に陥るが、
「ココロさん、頼りにしてます!」
 とユーリエが温かな光をもたらす。
「任せて!」
 ココロは強く頷き術式を展開、仲間たちを襲う異常を取り除いた。

 ココロの術式により体勢を立て直したイレギュラーズたちだったが、大蝙蝠はまたも鳴き声を響かせる。
 今度は激しい耳鳴りと共に目眩を引き起こし強烈な鬱状態に陥らせるもののようで、道場付近で小蝙蝠を相手取る傭兵が数人呻いたが、ジェイクは懐に忍ばせた装飾品のお陰で辛うじてやり過ごし、大蝙蝠に目を凝らした。
(俺の推測が正しければ、あの怪王種の能力は蝙蝠の持つ反響定位が変化したものじゃねえか? だとすれば、マルクが言ってたみてえに鳴き声を出せない状態にしちまえば厄介な能力も封じられるかもしれねえ)
「なあ、あの大蝙蝠の口ん中に一発ぶち込んでみてえんだ。上手くいけば鳴き声が出せなくなるかもしれねえ」
「なら、サポートは任せろ」
 ジェイクの提案にそう言って前に出たエイヴァンだが、急接近してきた大蝙蝠の鋭い爪に薙ぎ払われる。
「くっ!」
 大盾を駆使して抵抗したエイヴァンだったが、巨大な大蝙蝠が繰り出す怪力にはさすがに敵わず吹き飛ばされた。
 大蝙蝠は止まる事なく今度はヲルトに急接近し鋭い牙を剥く。
 ヲルトは大蝙蝠の動きを予知し、優れた回避力で紙一重に牙を躱したが、大蝙蝠はすり抜けざまに爪で切り付け、その勢いで彼を弾き飛ばした。
(どうってことない。オレはちょっとダメージ受けた辺りから調子良くなってくるからな……)
 床に血を滴らせながら、ヲルトの口角は不敵に上がった。

 立て続けに負傷者が出て戦局は途端に劣勢に傾いたかに見えた……が。
 耳に心地良いアルムの音色がエイヴァンやヲルトの傷を癒し、しつこく響く大蝙蝠の鳴き声には
「大丈夫! みんなまだまだ行けるよ!」
 とアルムの号令が対抗し、イレギュラーズたちは心身を支配される事なく立ち続ける。
「蝙蝠なら昼間は黙ってやがれ!」
 ジェイクの拳銃が銃声を轟かせ、銃撃に猛った大蝙蝠が前に出れば
(仲間が攻撃しやすい下地を作るのがオレの役割だからな――)
「――激しく抗うぜ、滾りに滾るオレの血が」
 と、ヲルトが身を挺して押し戻し、足止めを食らったところにマルクが強烈な一撃を加える。
 イレギュラーズたちの攻撃が続々と入ったところで、
「コャー!」
 と胡桃が大蝙蝠との距離を詰め、もふもふの拳打を叩き込んだ。
 胡桃の一撃に耐えることに意識を持っていかれた大蝙蝠は、僅かな間ではあるものの完全に隙を見せる。
(よし、今だ)
 エイヴァンは眼前の大蝙蝠に斧砲を掲げた。
 巻き起こる砲火の吹雪――灼熱の砲弾が胡桃の一撃で防御が疎かになった大蝙蝠の翼に炎波を走らせ、焼けただれた翼の一部からは血が滴る。
「キイィィー!」
 未体験の痛みに大蝙蝠は咄嗟にエイヴァンから離れ、まだ退避していない胡桃を襲おうと高度を下げたが、今度はそこにマルクの破壊的魔術が入った。
 体勢を崩した大蝙蝠は絶叫に近い強烈な鳴き声を発し、そこから発生させた衝撃波をイレギュラーズたちに叩き付ける。


 衝撃波を放った大蝙蝠だったが、その体勢はまだ完全には立て直されてはいない。
(せかいが待っている、あなたの一撃を――)
 今が好機とばかりに、胸打つ強き願いを込めたココロの術式がジェイクの背を押した。
「――ジェイクさんの銃口からは何者も逃れられないのです!」
「ああそうさ、俺の銃口からは何者も逃れる事は出来ないぜ――食らいやがれ!」
 黒き獣牙がジェイクの銃口から大蝙蝠に襲い掛かる。
「ギエェェェーッ!」
 「牙」が大蝙蝠の喉に食らい付き、深く深く抉った。
 これまでの鳴き声とは全く異質の「悲鳴」が轟き、道場の床には大量の血がボタボタと降る。
 大蝙蝠は砂利を踏んだような鳴き声を上げるが、もはやそれは空気に反響もせず単に耳障りな騒音に過ぎなかった。
 己の異変を悟った大蝙蝠はギロリとジェイクに目を剥き、首を振り回しながら口から四方八方に液体を射出する。
 道場自体は結界のおかげで破壊されないが、中で戦うイレギュラーズたちには容赦なく強酸性の液体が襲い掛かった。
 加えて大蝙蝠は傷付いた翼をバサバサと言わせながら道場内で暴れ回り、これには仲間の回復のために大蝙蝠から距離を取り続けていたアルムやココロまで吹き飛ばされる。
 それでもエイヴァンは前線で大盾を掲げて液体による猛攻を凌ぎ、ココロは立ち上がり仲間たちの火傷を癒した。
 味方の傷を癒すココロにも当然液体は降りかかり、火傷は皮膚を剥がされるような激痛を伴い彼女を襲う。
 しかしココロは踏ん張り気力の限り仲間たちを癒した。
(わたしの体力、そうそう削り切れるものではないから……!)
 そして、距離を取ろうとするユーリエと大蝙蝠の間にエイヴァンが割り込むようにして入り、ユーリエを庇って距離を稼がせる。
(コウモリって言うくらいだし、眩しい光はちょっとは効くんじゃないかな……効くといいな、いや、効いて!)
 アルムがよろめきながらも強烈な光をぶつけた。
 大蝙蝠は翼で顔を隠しガードしたが、閃光を嫌った大蝙蝠が顔を隠し動きを止めた大きな隙に胡桃がギャンブルな一発勝負に出る。
「コャーーー!!」
 爪を立て、振りかぶって渾身の力で打ち出されたもふもふの拳打がありえない程の力で叩き込まれると、
「ギィィィ!」
 と大蝙蝠の巨躯が一瞬ぐらりと揺れた。
 大蝙蝠に生じた大きな隙を逃すまいと、ヲルトが一気に大蝙蝠との距離を詰める。
 大蝙蝠はヲルトを掻き裂こうと傾いだ体で無理やり爪を斜めに振り下ろした……が。
「全てを正す黄金の血だ。存分に味わえよ」
 ヲルトが繰り出したとっておきの一撃で、大蝙蝠はヲルトの血液に塗れる。
 直後、大蝙蝠に異変が起きた。
 大蝙蝠は蹈鞴を踏み、まるで幻覚でも見ているかのように翼を振り回し、爪で空を切る。
(ここまで痛めつけても正気に戻らないなら、可哀そうですがその命ごと撃ち落とすしかないですね……しっかり弔ってあげますからね)
 エイヴァンの援護を受け間合いを支配したユーリエの鏃がぴたりと大蝙蝠に向けられた。
「光と闇を織り交ぜて、全てを断ち切る――ガーンデーヴァ!」
 慈愛に満ちた、しかし絶望的破壊力で射られる矢。
 矢を受けた大蝙蝠の巨躯は道場の壁に激しく叩き付けられた。

 ゆらりと立ち上がった大蝙蝠は、蛇行飛行しながら道場の外に出ようとする。
「どこに行く気だ、逃がさないぜ」
 ヲルトが大蝙蝠に足音を響かせながら迫った。その足音は、亡者の行進、死への誘い。
「わかるか、お前の生命もあとわずかってことだよ」
 大蝙蝠は本能的にその場からとにかく逃げようとする。
 その視線は明らかに道場の天井に向いていたが、イレギュラーズたちに背中を見せたのが大蝙蝠の運の尽きだった。
(天井を突き破る気ですね!?)
 ユーリエは咄嗟に剣を構えると、迸る魔力を桜色の魔矢に変え全力で放つ。
 矢は背を向けた大蝙蝠にヒット、可憐な桜がはらはらと散ると大蝙蝠の動きが更に鈍くなった。
「兵士さんっ、集中攻撃をお願いします!」
 この機を逃すまいとココロが叫び、すぐ近くで小蝙蝠対処に当たっていた傭兵が数人これに応じて駆けつける。
 小蝙蝠が傭兵らに執拗に追い縋るが、
「この先に行きたきゃ俺の屍を越えて行け、ってな」
 とエイヴァンが大盾を手に名乗りを上げ、小蝙蝠を引き付けた。
 すると、エイヴァンに引き付けられた小蝙蝠を前にして
「邪魔しちゃ駄目だよ!」
 とアルムが眩い翼で舞い踊り切り刻む。
「ここは俺たちに任せて、大きな蝙蝠に一斉攻撃して!」
 アルムの援護を受けた傭兵らは小蝙蝠を振り切り加勢に入り、銃による一声斉射を入れた。
 そして、傭兵たちの斉射が切れたところで胡桃が電撃招来術を発動、稲妻で大蝙蝠を散々に掻き乱すと、
「もう終わりにしよう」
 とマルクがまたも激烈な一発を繰り出す。
 ここまで幾度となく大蝙蝠を苦しめてきた灼熱の閃光は、極めて破壊的、極めて圧倒的。
 怪王種となった大蝙蝠に引導を渡すには十分な「光の導き」だった。
「ギィィ……」
 イレギュラーズたちの攻撃を次々と食らった大蝙蝠には、もはや悲鳴を上げる力さえ残されてはいない。
 やがて空中でその巨体を傾かせ、どぉん……と落下して床を揺らすと、大蝙蝠はそのまま息絶えた。

 静寂を取り戻した道場だったが、外からはまだ喧騒が聞こえてくる。
「これでもう小蝙蝠が増える事はねえだろう。加勢に行くか」
 肩で息をしながら小蝙蝠を叩き落とす傭兵たちに領主自らの加勢が入った。
「頑張って! 蝙蝠の数は確実に減ってます!」
 温かく神々しい癒しの音色が響いたかと思いきや、その後に発せられたココロの一声。
 疲弊していた傭兵たちの双眸には生気が漲り武器を振るう腕にも力がこもる。
「あと少しだ、攻め立てよう」
 急降下してくる小蝙蝠たちをマルクは場所を変えながら聖なる光で効率良く迎え撃ち、胡桃も残った力を魔力に変えて
「数で攻められるのって厄介なのよね、コャー」
 と上空の小蝙蝠にぶっ放した。

●終
 やがて街のどこからもあの甲高い鳴き声が聞こえなくなると、代わりに傭兵たちの歓声がイレギュラーズたちの耳に届く。
「ははっ、ありがとな。お前たちのお陰で最悪の事態は免れたよ」
 ジェイクは傭兵たちと握手し肩を抱き領地防衛を喜んだ。
「みんな無事で良かった!」
 アルムも心底嬉しそうに癒しの歌声を響かせる。
「さぁ、温かい飲み物でも飲んでひと息つこう。建物の修繕とか、やらなきゃいけないことも多いけど、まずはお疲れ様!」
 その様子を横目で見て微笑ましく思いながら、エイヴァンは
(まぁ、乗りかかった船だ。一応最後まで手伝うとするか)
 と、ヲルトと共に小蝙蝠の死体を掃除し始めた……随時傭兵たちとの歓談に興じながら。
 ヲルトやエイヴァンたちが掻き集めた死骸は、マルクが焼却する。
「腐敗して伝染病なんかが蔓延したら領地復興の妨げになるからね。これで、街に平穏な日々が戻るといいんだけど……」
 もうひと波乱ありそうだ……という懸念はどうしても拭えないが、今はいかにジェイクの領地が平穏を取り戻すかだけを考えて、マルクは黙々と小蝙蝠の死骸を焼いた。

 一方、ユーリエは道場の近くで大蝙蝠を弔っていたが、その最中に傷を負いながらもいまだ牙を剥く小蝙蝠を拾い上げた。
「大蝙蝠は正気に戻ってくれませんでしたが、せめてこの子だけでも説得して帰ってもらいたいですね……」
 吸血鬼姿になり、相棒たる蝙蝠を一羽呼ぶ。
 ユーリエの蝙蝠が殺気立つ小蝙蝠に何かを訴えるようにキーキーと鳴くと、やがて小蝙蝠はふらふらと空に消えていった。
「良かった、大人しく帰ってくれましたね」

 荒れた街並みはこれから整えていけばいい……領主も領民も無事なのだ、何だって出来る。
 雲ひとつない青空を背景に、仲間の領地を守り抜いたイレギュラーズたちの微笑みが咲いていた。

成否

成功

MVP

ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)
善性のタンドレス

状態異常

なし

あとがき

マスターの北織です。
この度はシナリオ「<ヴァーリの裁決>蝙蝠の道場破り」にご参加頂き、ありがとうございました。
怪王種との激闘、少しでもお楽しみ頂けていれば幸いです。
今回は、回復役として特に頑張りを見せてくれたあなたをMVPに選ばせて頂きました。そして、大蝙蝠の猛攻を阻み続けたあなたに称号をプレゼントさせて頂きます。
改めまして皆様に感謝しますとともに、皆様とまたのご縁に恵まれますこと、ココロよりお祈りしております。

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