PandoraPartyProject

シナリオ詳細

Bad boy,Good girl.

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●悪い子といい子
──めまいがする。
 ミサが俺の名前を呼んでいるのに気付くまで時間がかかった。
「……トム、……トム!!」
 はっとしてミサを見る。ミサは泣いていた。
「私の……ために? だからっておじさんを……あなたが、殺さなくても……」
 俺の息が荒い。手元は生暖かい血で塗れている。握ったナイフは真っ赤だ。ナイフをその場に落とし、俺はミサの自宅から飛び出した。

 数日後。不思議な事に警察は俺を捕まえに来なかった。殺しが日常茶飯事のこの街じゃ、飲んだくれでろくでなしのジジイひとりが死んでも気にするやつはそういないと言う事だろう。俺は孤児だから心配するような家族もいない。いわゆるスラムで暮していたが、仕事はあった。最低限の清潔と服装はそろえていたのでピザ屋で働いていた。けどここ数日仕事に顔を出していない。流石にクビになってるかもな。ギラギラと光るビル群を眺めて悪態をついた。この街は貧富の差が激しい。
 ミサは実の父親にいつも酷い目にあっていた。やれ飯を作れだの、作った飯が不味いだの。酒を買って来いだの。ミサが働いたわずかな金もギャンブルに注ぎ込む日々だ。ミサはいい子だから親父の言うことも素直に聞いてしまうんだろう。ミサの母親は知らなかった。ミサの忙しい合間をぬって俺は彼女を笑顔にさせてやりたがったが……酷く疲れた顔で──休みたい。ただそう言った。限界だと思った。

 あれからミサには会ってない。と言うか合わせる顔がない。ミサはいい子だ。『悪党』になってしまった俺になんか会う資格はないだろう。ミサには綺麗で、幸せなままで暮して欲しいんだ。これから俺はどうやって過ごそう?
「……イレギュラーズ……」
 ふと思い出した。何でも屋の存在を。
「あいつらだったら……俺に悪党としての生き方を教えてくれるかもしれない」

●ヴィラン志望?
「やあ。君も大変だね。今回の依頼もがんばって欲しいね」
 境界案内人のカストルは爽やかに言い放つ。トムの育ったスラムは高層ビルディングを眺められる大きな街だ。死と隣り合わせの、治安はあまりよくないようだ。
「ミサを気の毒に思ったトムはミサの父親を殺してしまう。そしてトムは悪の道へ進みたいと思っている……」
 と、こんなところだ。とカストルは付け加えるように語る。
「つまりは夜食にカップラーメンを食べてしまうちょっと悪い子から、マフィアの親玉になる指南まで何でもありさ」
 カストルはさらに情報を足す。
「……と、依頼人は言っているけども。僕には本心ではないように思える。人殺しをして自暴自棄になっているね。……どうする?」

NMコメント

 こんにちは。はじめましてのかたははじめまして。7号と申します。こちらは悪役をテーマとしたシナリオになっています。
 成功が確約されていますので自由な発想でプレイングを書いていただけたらなと思います。

●世界説明
 銃が当たり前にありビル群やスラムの並ぶ大きな街。現代アメリカ風な世界観となっています。『風』なので完全に一致とはいかないようです。
 イレギュラーズの存在は「何でも依頼を聞いてくれる何でも屋がいる」と認知されています。イレギュラーズの皆さんは「変わったコスプレをしてる人がいるな」程度の認識で格好に触れられることはないです。
 魔法はほとんどないので神秘攻撃などはひと気のない場所で使うのがいいでしょう。街中で1度や2度使っても気のせいで済むとは思いますが。

●目標
 トム要望は「悪の道を知りたい」とのことですが……。つまりはトムが満足するような方向であれば目標は達成されると考えて大丈夫です。

●NPC
・トム
 依頼人。12歳の男の子。人ひとりを殺してすごく動揺する程度には子供です。

・ミサ
 15歳の女の子。トムの好きな子です。現在は養護施設に保護されているようですが、精神的にも落ち着いて会話が出来ます。彼女に協力してもらう事も出来るでしょう。

●サンプルプレイング
例:
こうなったらとことん悪の道を極めてやろうじゃないか。
銃の使い方、ナイフの使い方。
俺が手取り足取り教えてやるぜ。

  • Bad boy,Good girl.完了
  • NM名7号
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年03月21日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

回言 世界(p3p007315)
狂言回し
ピリム・リオト・エーディ(p3p007348)
復讐者
メリー・フローラ・アベル(p3p007440)
虚無堕ち魔法少女
ノア=サス=ネクリム(p3p009625)
春色の砲撃

リプレイ

「悪の道ねぇ。」
 回言 世界(p3p007315)は独り言のように言う。
「特異運命座標一善良なこの俺に無茶なオーダーを出しやがる」
 当社比だがな。と付け加える世界。
「悪党になる方法? ヒーローである私にそれを聞くかしら?」
 場違いなのでは? と少しだけ戸惑いを見せるノア=サス=ネクリム(p3p009625)。それでもトムを手助けしようと来てくれたのは彼女のヒーロー気質がそうさせるのであろう。
「人を殺めることに心を痛めるとは私には理解できませんがー、一般人からすると普通の反応みてーですねー」
 ピリム・リオト・エーディ(p3p007348)が間延びした口調で話す。その台詞に感情を感じられることはない。
「こちら、イーゼラー教という宗教の経典になりますー」
「宗教の勧誘か……?」
ピリムにイーゼラー教の経典を渡されて戸惑うトム。
「違いますー。死んだらどっか良い場所にいけるイーゼラー教の教えが書いてありますー。よかったらお読みくださいましー。かくいう私もこのイーゼラー教に所属しているのですが、自分が始末した者が良き所に送られる……と考えると良いことした気持ちになれますよー」
 脚も頂けますしねー。とピリムは言う。一時的に死ぬのは苦しいばかりで、そのあとは極楽へ。誰かが見たわけではないが幸せな場所に行けることもあるらしい。
「この事を念頭に置いて試しにもう一人始末してしまいましょー?」
 ピリムは大胆な誘いをかける。ピリムそのものはいたって平坦な気持ちのままだ。このままちょっとお茶でも。そう気軽に誘うような。面食らうトムを連れて初心者なのだから暗い路地裏に一人の人を狙うほうがいいとアドバイスする。
「上手く行くかしら?」
 とメリー・フローラ・アベル(p3p007440)は様子見だ。
「……しかしなあ、正直少年が悪党に向いてるとは思えんね」
 世界はそうぼやいた。

 ノアは周囲に人が来ないか警戒していた。ノアをこえた先。ひと気のない路地裏広場では血が点々と地面に散らばっていた。
「何しやがんだテメエェェ……!!」
 腹から血を流しながらトムへ怒号を浴びせる肥えた中年男性。脂肪が邪魔になってトム程度の力のひと刺しでは致命傷にならなかたのだろう。抵抗……どころかトムに殴りかからんばかりの勢いだ。気圧されるトムだったが、メリーが光弾を撃つと中年は身動きが取れなくなり──否、これは痙攣だ。
「たまにはこういう豚みたいな脚も悪くないかもですねー」
 ぬらりと刀の刃をむき出しにするピリム。あの刀に斬られればただでは済まない。そういう悪寒がする。中年は逃げ出す。しかしポケットに手を突っ込んだままの世界が中年に脚を引っ掛ける。地面へ転がる中年男性。
「ほら、チャンスだぞ」
 そう世界がうながすがトムは震えるばかりで攻勢に出ない。ややあって中年は体勢を立て直し、遠くへと走り去って行った。
「殺人鬼にでもなれば立派な悪党になるんじゃないかと思ったが……」
 世界は畳みかけるように続ける。
「盗む、拉致監禁する、人を騙すと悪い事なら腐るほどある。さあ、次はどうする?」
「だんだんと気持ち良くなってくるハズですよー。殺しを一人、また一人と増える度に心はどんどん軽くなっていくでしょー」
 ピリムも勧誘するがトムはぶんぶんと顔を横に振るばかりだ。トムは一歩も動けなくなっていた。見かねたノアは
「ちょっと休憩しましょう」
 そう言った。

 メリーはため息を吐く。
「トムの心構えは……全然ダメ」
 まるでお話にならないわね。とメリーは追撃する。トムが一人で暮らす家に4人も入れば少し狭い。水しか出せなくて申し訳なさそうにするトムだったが、世界が菓子を分けてくれた。小さな容器に入ったゼリーだ。散らからないので図書館で食べるのにも向いているらしい。世界がポリポリと頭をかく。女物のようなカチューシャを何故頭につけているのかトムは気になった。
 私が見てきた悪党の話をすることぐらいは出来ると語るノア。ローズクォーツのような髪をかき上げ、間を置いてから彼女は話す。
 とある悪党は愛した人の為に良かれと想って、その人を傷つける存在を抹殺しした。愛した人は最初のうちは自分を傷つける存在が消えたことに安堵するけど悪党はそれで止まらない。また別の愛する人を傷つけた存在を痛めつけては、二度と近寄るなと警告した。それでも近寄った存在を抹殺した。……それを繰り返すうちに悪党はその愛した人を守ることだけに固執するようになるの。……その果てに何が待っているか、それは語らないでおくわ?
 ノアが何を言いたいかはトムにはわかった。この先、ミサを害する者を再び手ずから殺すのか?『きみにその覚悟はあるの?』ノアの問いかけるような赤い目が自分を射抜いている。
「……いつか、貴方が私の前に悪党としてに現れたら……貴方はヒーローの心をへし折った巨悪になるかもね?」
 話し終わるとオレンジ色のゼリーを口へ入れるノア。
「悪の道へ進みたいっていうよりかは進まなければならないって考え方だ。そういう義務感みたいなのって大体長くは続かないんだよな。今はよくてもいつかきっと辛くなるぜ」
 世界もアドバイスを出す。メリーもトムの心構えがどこが駄目かを指摘する。
 その1。人を殺したその日の内に、何食わぬ顔で職場に出て平然と働けるぐらいじゃないとダメ。
 その2。「ミサには綺麗で、幸せなままで暮して欲しい」と思っている。
悪党は、親友や恋人でも平気で悪の道に引きずり込むし、自分の欲望のために犠牲にするものよ。
 その3。悪党は、悪党として生きることになんか拘らないわよ。
「…………」
 トムは黙って話を聞いていた。世界が決めるのはトム自身だと言わんばかりだ。
「何にしても道を選ぶのはいつでも自分自身だ、他人の意見なんて俺のも含めて全部無責任の産物だし自分の信じた通りに生きていけばいいと思うぜ。」
 じゃあ俺はどうすれば。そう口を開きかけたトムへ、メリーはこう言った。
「あなたに出来そうなことがあるわ」

 ピザ屋の仕事はクビになっていなかった。トムが無断欠勤することは珍しく、店長はとても心配していた。なのでピザ屋の仕事に戻るのは容易いことだった。店長はまさかトムが人ひとりを殺してきたなどと夢にも思わないだろう。
──とりあえず、人殺しの癖に何食わぬ顔でカタギの仕事してみたら?

 トムはミサと再開した。久しぶりに見るミサは元気そうで、むしろ痩せたのはトムのほうだった。トムは始め気まずそうにしていたが、二人が元通りに親しく接するのは時間がかからなかった。
 これはノアからの助言もあった。「せめて、ミサの前に顔を出してやればいいんじゃないかしら。悪党になるかどうかを考えるのは、それからでも良いと思うのよね」
 ミサの顔を見ると、2度目の殺人をする気持ちも起きなくなった。
──あと、人殺しの癖に何事もなかったようにミサと仲良くしてみたら?

 思えば世は悪党にあふれている。税金で豪遊した議員。いじめをしたのに他人事のような顔でキャンパスライフを謳歌するいじめっ子。ゴミ箱の生ごみをあさる子を横目に見ながら今夜はローストビーフを食べようなんて考えている太った人。そういうのであふれている。
──それで、人を殺したことなんか綺麗に忘れて今まで通り生活してみたら?

 悪い子にならなければいけない。そう思ったがミサの父親を殺した時点で俺はとっくに悪党だった。街行く人々と同じように、トムはミサの隣にいて笑っている。
「真の悪党ってのはそういうものよ」
 傍若無人の限りを尽くした少女の魔法使い。彼女の最期は射殺されて、そして今混沌にいる。

成否

成功

状態異常

なし

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