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シナリオ詳細

<ヴァーリの裁決>あなたに受理の光あれ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ときめき、祈り、発注、念じろ!
 走る馬車のその上で、杖をとるひとりの女があった。
 名を、江野 樹里(p3p000692)。
 大召喚のおりよりローレットに所属し、幾千ものイレギュラーズたちに『受理』の光が満ちる瞬間を祈りつづけた巫女である。巫女の筈である。あと受理ってなんだろう。
「――貴方に絶えぬ祈りの奇跡の訪れのあらんことを。
 ――飲み干してなお満たされぬ心に、幾何かの安寧を」
 祈りの言葉を囁いて、杖をぐるりとライフルのように構える。
 一部をスライドさせ、折り、トリガーを展開することでセーフティを解除。
 杖――否、銃身に満ちる祈りの力が光となって、天空に『樹里の魔法』が突き抜けた。
 光の柱は空を貫き、羽ばたき来る翼ある怪物たちを数匹まとめて撃墜していく。
「まずまず、ですか……」
 スライドしてとまる馬車のその上で、樹里は次なる祈りをライフルへと込めていく。
 眼前には、空。
 空には、怪物の群れ。
 巨大な眼球から黒い翼をはやした怪物が、まるで蝗害のごとく、樹里の領土へと迫っていた。


 経緯を語るべく、時を少しばかり遡る。
 幻想王国王都メフ・メフィート郊外、樹里領。
「ンアアアアアアアアアアァ」
 白目をむいて鼻血を流すキマってるひとがいた。樹里領の執政官。女性。なまえ募集中。
 円盤状の記録媒体が機械におさまり、機械から伸びたイヤホンケーブルが耳にはまっている。円盤が入っていたであろうケースには『甘やかCD(樹里ver)』とプリントされていた。
 誰だって推しの声をイヤホンからじかに摂取すればこうなる。推しのボイスの再生ボタンを押し続ける夜だってある。
 が、そんな彼女がふと、真顔にもどってイヤホンを外した。
 そばに置いてあった水のはいったグラスが小刻みに……正確にはグラスの水面が小刻みに揺れているのだ。
 イヤホンを外してみると、遠くで爆発音が聞こえる。それも幾度も。
 そして振動も、僅かに。
 席を立ち、絨毯の上をあるき、扉に手をかけ、開くと――。
 遠い空に黒い怪物たちが飛んでいるのが見えた。
 そして怪物たちが投下する球体が大地にふれるたび爆発していくさまが。

 幻想で突如として引き起こされた事件群を知っているか。
 王家レガリアがねむる古廟スラン・ロウ、伝説の神鳥がねむる神翼庭園ウィツィロ。この二つに施されていた封印がほぼ同時に解け、古代よりの怪物(モンスター)たちが一斉に幻想中へと放たれてしまった。
「記録が見つかりました。天空邪眼ボースハイト。空より飛び来て畑を焼き、家畜を焼き、家々を焼く悪意の顕現である……と記されています」
 挿絵に描かれた巨大な眼球とそこからはえた黒い翼。それを天にかざして比べてみれば、空から来る怪物たちが間違いなくそれだとわかる。
「ありがとうございます。それにしても、よりによって私の領地へ攻め入るとは……」
「許せませんね!」
「…………」
 鼻にティッシュをつめた執政官が『なにか!?』て言いながら振り返るので、樹里はなにもいわずに立てかけた魔法の杖……もとい魔法のライフルを手に取った。
「馬車を出してください。そしてイレギュラーズの皆さんに救援要請を。この土地は、私たちが守ります」

GMコメント

●ブレイブメダリオン
 このシナリオ成功時参加者全員にブレイブメダリオンが配られます。
 ゴールド、ミスリル、アダマンタイトとメダルごとにランクがあり、
 それぞれゴールド=1p、ミスリル=2p、アダマンタイト=5pとして扱われブレイブメダリオンランキングにて総ポイント数が掲示されます。
 このメダルはPC間で譲渡可能です。

■オーダー
 幻想樹里領へと攻め入るモンスターたち。これを撃退し、領民達とその生活を守りましょう。

■エネミー
・天空邪眼ボースハイト
 巨大な眼球から翼がはえたモンスターです。
 神翼庭園ウィツィロから現れたモンスターで、空中からの爆撃やスレスレ低空飛行からの魔法銃撃を主な攻撃方法とします。
 彼らは人々が生活する家を燃やしたり川をせきとめたり田畑を破壊したりと、領地の生活基盤を破壊しにかかる傾向があります。
 よって、彼らを領地にいれないようひろーく横に広がって迎撃しまくるなど、ラインを防衛するタイプの作戦が必要があるでしょう。
 もし領地に入れてしまった場合、PCたちを無視して領地の破壊を行うのでそうならないように戦わなければなりません。

・天空邪眼ボースハイトEX
 突然変異タイプのボースハイトです。
 見た目からして倍以上にデカく、翼も八つくらいついています。
 ボースハイトたちを倒しきった段階で突如空間を切り裂いて出現します。(という文献があったので、こちらもちゃんと対応ができます)
 攻撃方法はボースハイトの強化版、ということだけわかっています。
 一体きりですが、とても強いので力を合わせて戦いましょう。

■フィールド
 一般的な幻想町です。
 戦場は領地の外側になるので、草地が主になってきます。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

■■■アドリブ度■■■
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用ください。

  • <ヴァーリの裁決>あなたに受理の光あれ完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年03月22日 22時03分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ワルツ・アストリア(p3p000042)
†死を穿つ†
セララ(p3p000273)
魔法騎士
鶫 四音(p3p000375)
カーマインの抱擁
志屍 瑠璃(p3p000416)
遺言代行業
江野 樹里(p3p000692)
ジュリエット
武器商人(p3p001107)
闇之雲
エッダ・フロールリジ(p3p006270)
フロイライン・ファウスト
ヲルト・アドバライト(p3p008506)
パーフェクト・オーダー

リプレイ


 赤い眼鏡のフレーム越しに、巨大な眼球が群れを成しているのが見える。
 超人的な望遠視力によってそれを眺めていた『魔法騎士』セララ(p3p000273)は、眼鏡のフレームをとんとんと指で叩いた。
「距離はー……どのくらいかな。けどもうすぐで接敵するよ。戦闘準備戦闘準備」
 倒れた丸太に腰掛けていた『被吸血鬼』ヲルト・アドバライト(p3p008506)が、セララにこたえてゆっくりと立ち上がる。
「はー、目から翼ねぇ。きっもちわるいなぁおい まぁいい。こっちとしては受けた依頼をこなすだけだ。……で、その眼鏡はなんだ? マジックアイテムかなんかか?」
「んっ?」
 セララは振り返り、眼鏡のフレームにひとさしゆびを通してくいくいっと動かした。
「伊達だよこれ」
「ならなんでかけた」
 オシャレだと思って。と言いながら、セララはウィングブーツから魔法の翼を広げて飛び上がる。

 飛び立つ仲間を見上げ、手を額にかざす『ジュリエット』江野 樹里(p3p000692)。
「私、この戦いが終わったら執政官のリク文を書いて受理されたらデリヴァ・リーとかカミゴエ・ノーヒェンとかそんな感じの立派な名前を付けてあげるんです……」
「なんて?」
 このタイミングで急に次元を越えたことを言い出す樹里へサッと振り返る『カーマインの抱擁』鶫 四音(p3p000375)。
 ほっこりした笑顔だが、楽しくて笑ってるのか顔面にそう言う形状をなんとなく維持させてるだけなのかいまいちわからない。本質が菌類なので思考が分かりづらいともいう。
 そんな分かりづらい顔のまま。
「受理は良いですね。アトリエに絵がたくさん並ぶのはきっと素敵な光景でしょう。そんな光景を見るためにも、受理の祈りを絶やさせはしません!」
「なんて??」
 仲間が二人ほど次元の向こう側へいこうとしたのでついつい振り返っちゃう『フロイライン・ファウスト』エッダ・フロールリジ(p3p006270)である。
「分かったのでありますよ自分。この依頼がシリアスなのになぜかキマッて見えるのこの人達のせいでありますな?」
 そういうことなら、と拳を口元に持っていって咳払い。
「受理は心の栄養であります!
 しかし発注なくして受理あらず。それはさながら騎士とメイドの関係のように。
 ――実弾寄越すんだよオラァ!!」
 いまここに、エイプリルフールピンの受理を願った女達の心がひとつになった。なったのか?

「近頃は領地に怪物の群れまでが襲って来る様になったのね……。
 気まぐれな竜くらいなら、むしろ国家褒章が美味しいものだけれど」
 両手を組んで、頭の上にうーんと背伸ばしする『紅の弾丸』ワルツ・アストリア(p3p000042)。
 そして、海外旅行にでもいくかのようなでっかいトロリーケースから取り出したライフルのパーツを秒で組み立てていく。
 最後にストラップを肩に通して担ぐと、予定していた小高い射撃位置へと駆け上っていく。
「この状況は確かに人手がいるわ。ボーナスや噂の受理の加護が期待出来るかなー、っと!」
 射撃位置にはあらかじめ『遺言代筆業』志屍 瑠璃(p3p000416)が立っていた。黒く美しい着物姿で、袖の間から白くて細い指をするりと出す。
「得体の知れない怪物に領地を台無しにされては、たまったものではありませんものね。
 私には統治すべき領地などはありませんが、あのスラムが台無しにされたらと思うと、同様の感情を抱きそうですし……」
 すとんと滑り落ちた扇子をキャッチし、僅かに開いてからパチンと鳴らす。
 その音に呼応したかのように、もしくははじめからそこにいたのか、『闇之雲』武器商人(p3p001107)がいつのまか後ろに立っていた。
☆武器商人:
(悪意の名を冠する邪眼ねぇ。さながら終末のようじゃないか。ヒヒヒヒ……!
 はてさて、スラン・ロウといいウッツィロといい、一体何が眠っていて、誰が起こしたのやら……)
 総員戦闘態勢。
 押し寄せるは怪物の群れ。
 背には豊かな暮らしと平和な日々。
 ライフルの射撃姿勢に入ってセーフティーを解除するワルツ。
 血を媒介にした力を解放し始めるヲルト。
 盾の裏にストックされた魔法の剣を抜くセララ。
 扇子を開き舞うようなしぐさで身をひねる瑠璃。
 拳に鋼のグローブをはめてファイティングポーズをとるエッダ。
 杖を天高くかざす樹里。
 名状しがたい影をざわつかせる武器商人。
 四音骨の副腕を誘うように大きく開く四音。
「――接敵!」
 戦いが、始まった。


 小高い丘に伏せ、スナイパーライフルのスコープをのぞき込むワルツ。
 スコープ内の目盛りと直感で狙いをつけると、まるで肉体と一体化したかのように正確にトリガーをひいた。
 ハンマーが雷管を叩くその音も、薬莢内の小さな爆発も、ライフリングをこすって回転する弾頭も、その弾頭が銃口より飛び出されるその一瞬までもがまるで自らの心音のように正確に、そしてきわめて自然に鳴った。
 それこそ心臓が血を送るさまのように、当たり前のようにボースハイトのど真ん中を銃弾が貫いていった。
 高度ゆえにかもろにダメージをうけ、早くも墜落していくボースハイト。
 ――ここまで、スコープをのぞき込んでから一瞬の出来事である。
「有効そうね。『七面鳥』にするわ。防御お願い」
「了解……」
 ワルツが次々とボースハイトへ狙いをつけて打ち続けるその一方、無防備となる彼女の防御をヲルトが担当する形となった。
 墜落したボースハイトがぎりぎり低空飛行状態を維持し、ワルツめがけて魔術弾を乱射。
 間に割り込んだヲルトは赤い光を巨獣の爪痕のごとく放つと銃弾のことごとくを打ち払っていった。
「こいよ。お前が何をしてこようが全部避けきってやる」
 集中するボースハイトたちの射撃。
 ヲルトは手のひらをかざし、噴射された血を螺旋状に広げ盾のように拡大していく。

 一方、空高く陣取っていたセララはボースハイトたちとのドッグファイトに持ち込んでいた。
 後方をとり、魔術弾を連射するボースハイト。
 飛行していたセララは素早く反転。盾をかざして銃弾を受けると、見えない壁をけるような動作でターン。ポケットから飛び出たドーナツをはむっかじると口にくわえたまま――。
「むむむむむむっむ!」
 聖剣ラグナロクによる横一文字の魔法斬撃がボースハイトを切断。その後続の固体をもまとめて切り裂き、セララはその真下を抜けて飛行。
 かろうじてまきぞえをくらわぬように回避していた別固体へ迫ると、その翼を切り落とした。
 墜落しドムッと地面を跳ねるボースハイト。すぐに復帰しようとばたつくが、明後日の方向から飛んできた血を纏う刃が打ち抜きボースハイトをシャボン玉のように弾けさせる。
「個体数はそこそこ……といった所ですか」
 瑠璃は扇子で顔半分を隠すと、目を細めた。
 低空飛行状態となる無数のボースハイトたち。
 見開いた眼球から魔術弾を乱射してくる――が、瑠璃は細めた目で笑った。
「ですが、数だけ揃えても……」
 突如として現れた土壁にボースハイトが衝突。後続の固体もまた別の土壁に激突し、次々に爆発していく。
 エッダはそうして飛び出した土壁の一つに脚をかけると、飛び出す勢いをカタパルト代わりにして跳躍。
 真上を通り抜けようとしていたボースハイトにアイアンアッパーカットをたたき込む。
 爆発するボースハイトのその真下。空中で身をひねったエッダは引き絞ったもう一方の拳を前方へと振り込む。と、かなりの距離をあけて飛んでいたボースハイトへ夢想の拳がめり込んだ。
 連続しておきた爆発を背景に、拳をズンと地面に叩きつけるようにして着地するエッダ。
「そう、数だけ揃えてもこの防衛ラインを越えることはできないのであります。てめぇ、どこに目ぇつけてるでありますか?」
 目を細め、エッダはくいくいっとアメリカンな手招き挑発をしてみせた。

 杖を地に立て、ロザリオを手に取る。
 暴風に長い髪をなびかせて、樹里は遠き空に祈りを込めた。
「執政官、領民達に伝達をお願いしますね。
 各自、甘やかCDを手に持ち祈りを捧げるように、と。
 全領民に配った甘やかCDがまさかこんな形で役に立つとは…人生まさに塞翁が馬ですね……」
 甘い囁きをロザリオへ唱えると、ふわふわと湧き上がった受理の魔力がホーミングRC(リライジングチャンス)弾となりボースハイトたちへと飛んでいく。
「かしこみかしこみ申し上げます。此れより捧げますは果て無きを求める者の一閃。光無き道を切り拓く轟音。天まで届く祈り。此れを以て受理の魔砲と成らんことを」
 更に杖を抜いて天にかざすと、激しい魔法の光が束となってボースハイトを貫いていく。
「――立ちはだかる全てを貫き喰い破れ、我が祝砲」
 次々に撃墜されるボースハイトの群れ。そんな様子を意に介さぬかのように迫る新たなボースハイト固体が魔術爆弾を投下していった。
 樹里は無数の爆発に包まれた――かに見えたが。
「ヒヒヒ……」
 樹里はいつのまにかざわつく影に、卵のように覆われていた。
 影がはらわれ、武器商人が躍り出る。
 それを脅威とみたのか、ボースハイトたちが低空飛行状態に移行して武器商人へと集中攻撃。
 しかしすべての弾は湧き上がる影によって悉く無力化され、反対に武器商人が永い前髪の間から見せた怪しい瞳によって狂い、歪み、そして爆ぜていった。
「あともう一息だねぇ。折角集まってくれたのだから――」
 後は頼んでいいかい? と首をかしげてみせる武器商人。
 四音はニッコリと笑って頷いた。
 ピクニックにでもいくような、スキップ混じりの足取りでボースハイトたちの前へと飛び出していく四音。そこへ無数の爆撃が降り注ぐが、広げた骨の副腕がカラフルな菌を沸き立たせ、四音の肉体が脆く焼かれ潰され引きちぎられるたびに補填され元の肉体と全く変わらない組織に変化していった。
「こんなに必死に群がって。それに、なんでしょう。この怪物たち……」
 今度こそ逃さぬとばかりに急降下し、四方八方から取り囲むボースハイト。
 至近距離で見開かれた眼球――の中央に、四音は貫手を思い切りたたき込んだ。
「潰したくなりますね。目を」
 次の瞬間、湧き上がったカラフルな菌たちが巨大な骨の腕を無数に作り上げ、そのすべてがボースハイトたちの眼球を次々に貫いて潰してく。
 すぐに組織構成が崩れて塵のようにちっていくが、最後に残ったのは手を黒くべとつかせた四音ひとりだけだった。
「さて。そろそろですか……」
 空を見上げる。
 と、これまでのものとは比べものにならないほど巨大なボースハイト……つまりはボースハイトEXの姿があった。


「なるほど……ハイペリオンの情報は確かだったようですね……」
 瑠璃は小さなスクロールを手早く畳むと、こちらを悠然と見下ろすボースハイトEXを見た。
「神翼獣ハイペリオンの力は永き時の中で散逸し、封印された古代獣たちに少しずつ奪われていった。あの力もまた、ハイペリオンの力だったということでしょう」
 ボースハイトEXは大量の小型ボースハイトを自分の身体から分裂させると、魔術爆弾の発光をおこしながら次々に特攻させていく。
「おっと、これは……マズい相手だねぇ」
 武器商人はひとまず前に出ると結界を展開。特攻してきた小型ボースハイトの爆発によって結界が破壊され、更に殺到するボースハイトたちに肉体を削られていく。
「おいっ……」
 心配したヲルトが駆けつけるも、武器商人は持ち前の強力な半不死性によって肉体をボロボロの状態のまま維持。
 それを見たボースハイトEXは眼球の中心から殺意の波動を光線に変えて発射してきた。
 武器商人に完璧なトドメを刺すつもりだろう。
 が、そうはさせない。
 一人きりでは無敵になれずとも、力を合わせれば無敵の盾となりうる。それがローレット・イレギュラーズである。
「見えた――!」
 ヲルトは助走をつけ跳躍。赤い血のオーラを纏ったサマーソルトキックによって光線を真っ二つに切り裂いていく。
 が、完全にいなしきれなかったのか右半身を激しく焼かれることになった。
「ちょっと、それ大丈夫なの!? ヲルト君も下がったほうがいいんじゃ……」
「いいや」
 ヲルトはだくだくと流れる血に、あえてにやりと笑って見せた。
「オレはここからが本番なんだよ。構わず撃て」
 途端。ヲルトから流れる大量の血が無数の盾となり、ボースハイトEXの光線を次々に払いのけていく。
「イマドキ、回避が100あるからって確避けできないのは分かってる。ならもう50増やしたらどうだ? それでも追いつくかもしないが、相当ツラいよなあ?」
 ワルツはギリギリまで粘ろうとするヲルトに防御を任せ、大口径ライフルのCauterizeを抱えて射撃位置へ移動。
 立ち姿勢のまま撃ちまくった。
「二人がかりでも対して時間はないはずよ。余裕で潰せるような敵じゃないわ!」
 ボースハイトEXの狙いがワルツたちへとシフト。小型ボースハイト爆弾が殺到――するが、巨大な骨の腕によっていつの間にか覆われ、護られていた。
「受理の話は別にしても、突然降ってわいた魔物に襲われるとか災難もいいところです。まあ、それはそれで面白い物語にはなったでしょうけど? ふふふ」
 すぐにぼろぼろと崩れていく骨の裏から、四音がおっとりとした笑顔で現れる。
「――『檻術空棺(かんじゅつからひつぎ)』」
 スッと扇子をかざした瑠璃。突如現れた巨大な黒い棺がボースハイトEXを包み込む。
 その明確すぎる隙は、セララとエッダに繋ぐためのモノだ。
「やっぱガン付けてるだろお前。偉そうにでかい目玉しやがって、であります」
「幻想の平和はボクが守る! 全力全壊! ギガセララブレイク!」
 棺をボースハイトEXが内側から食い破った、その直後。
 まっすぐ空中を走ってきたセララの剣が、セララのアシストをうけてボースハイトEXの真上からフリーフォールパンチを繰り出すエッダが。それぞれの攻撃が交差し、直撃する。
 武器商人やヲルト、そして四音たちが稼いだのは攻撃するための時間だけではない。
 ボースハイトEXのAP消費量もまた、無視するには大きすぎるほどかさんでいたのである。
 明らかに省エネモードに入ったのがわかったからこそ、瑠璃は棺による追い打ちをかけたのだ。
 そんな状態のボースハイトEXにはエッダの榴弾拳はよく染みたに違いない。
「この次のボイスに頼もうと思っていたネタを中題に持ってかれた先を越された感……思い知るのです――!」
 そんなボースハイトEXを前に、樹里は大きく空に手をかざした。
 どこからともなく射出されてきた大型マジカルステッキ――否、アンチマテリアルマジカルライフルをがしりとキャッチすると、祈りを込めてその銃口に光を溢れさせた。
「ときめき、祈り、発注、念じろ! ――樹里大魔法!」

 猛烈な光の柱が、ボースハイトEXのボディを貫いて空の雲に穴を開けた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――古代獣、天空邪眼ボースハイトを撃退しました。
 ――古代神翼獣ハイペリオンが僅かに力を取り戻したようです。

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