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シナリオ詳細

【日夜探偵事務所】夜を行く者

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●悲劇の連鎖を断つために

『また、痛ましい事件が起こってしまいました……』
『干からびた状態で死んでいる犬や猫の死体が……』

 キャスターが淡々とそう語るワイドショーが、絶えず垂れ流されているテレビを見つめる青年の顔は、どこか物憂げだ。彼の口から溜息が溢れるのも、それから間もなくのことだった。

「歩っち、どったの?」
「ローザ君、また来たのか。占いはいいのかい」
「いーのいーの、どーせ閑古鳥がカンカンしてっから。こっちもそうでしょ」
「確かにそうだけども」

そんな彼に声をかけたのは、月のように仄かに黄色に輝く髪色の、うら若い女性。『アユム』と呼ばれた生真面目そうな青年に反して、随分と軽薄な言葉遣いだが……。

「あーっ、また血ぃ抜かれた死体のニュース見てるの」
「そうなんだよ。僕の方でもずっと前から『対処しては』居るんだけど。どうにもあちらさんは『手数』が多いらしい」
「……とか言って、これ、歩っちがやってるんじゃないのぉ〜?」
「馬鹿いえ。昨日の晩は君だって、一緒にヤツを『祓いに』行っただろう」
「ジョーダンだってぇ。ウチも、バチコリお仕事してるとこ見たもぉん。でもさ」

『ローザ』と呼ばれた女性はこれまでずっとヘラヘラと笑っていたが、しかし、声のトーンを数段落として、身なりの良い青年に話を続ける。

「これ、歩っちだけじゃ限界があるっしょ。誰か呼んだ方が良くない? ホラ、『たいっちゃん』とか」
「そうかもな。……だが、星宮君はまだ見習い。魔除けの術は知っていても、奴等とやり合えるだけの力は持ち合わせていないだろう」
「じゃあさ、やっつけるトコ、たいっちゃんに見せて、覚えてもらえばいいじゃん。社会勉強でしょ、これも」
「……でも、あの子は普通の人間。僕の手法は色んな意味で、『参考にならない』ぞ。君みたいに魔術の才があるわけでもない」
「じゃあ、いっそ助っ人でも雇おうよ。たいっちゃんが『ソレ』の出るトコに連れてってさ、そいつらがアレをボコんの。あの子『いい匂い』するみたいだから、アレもすぐ来るっしょ。たいっちゃんの勉強になるし、ウチらは楽できるし、アレは倒せるし、皆ハピハピじゃん」
「確かに、僕で一つ、君が一つ、助っ人が一つ。それで行けば、アレを殲滅できるかもしれないが……」

 随分と簡単に言ってくれるが、そもそも、肝心要の『助っ人』をどこで見つければいいのだ。【日夜探偵事務所】の所長……日夜歩は、また大きく溜息をつくのだった。

●助っ人求ム

 日夜探偵事務所は、普通の探偵事務所とは異なり、その世界……仮名【ジアース】ではほぼ解き明かされてない……とされている、怪奇や、神秘による事件を扱う場所だ。手帳に記した情報を、イレギュラーズ達のしかと耳に届けようと、マチネはゆっくりと語る。

「でも、誰もがこの世界の怪異に立ち向かえる訳じゃないから、事務所は慢性的な人手不足なの。だから、事件解決のために、助っ人が欲しいんですって」

今回、怪異による事件が発生されると予測されたのは3地点。そのうちの1箇所を、助っ人……即ちイレギュラーズ達に退治して欲しいのだ。

「その場所までは、事務所の人……っていうか、事務所によく来る子が案内してくれるみたい。ショウガクセイ……の、子、みたいなんだけど」

 戦闘能力は皆無との事だが、世界の神秘を垣間見ている少年は、怪異の前に無闇に身体をさらけ出すような愚はしない。つまり、彼の退避に手を割かずとも、充分に戦闘に集中できるそうだ。

「皆なら、負けないって信じてるから。気をつけてね、イレギュラーズ」

NMコメント

どうも、なななななです。
夜闇に紛れ、生き血を啜る怪異を、皆で退治してください。
以下、詳細になります。

●ジアース

 今回皆様が赴く世界の名前です。要するに神秘、怪異、化物、魔術が存在する現代日本……と思っていただければ結構です。

しかし、それらの存在は公には知られておらず……何も知らない人間は、それらに貪られ、弄ばれ、真相も分からぬままに命を落とす事も珍しくありません。
それらを扱い、対処するのが、今回の依頼者たる【日夜探偵事務所】の裏の顔でもあります。

●目的
『吸血鬼』を倒す事。

 エネミーは一体、攻撃とともにHP吸収をしてきたり、出血系のBSを与えてくる可能性があります。

 時間帯は夜ですが、月のきれいな夜なので、明かりの心配は不要です。
また、今回の協力者たる星宮少年(後述)も、標的を人目のほとんど無いような所でおびき出すため、戦闘音なども気にしなくても大丈夫です。

つまり、思いっきりやってしまっていいです。


●NPC

星宮 太一(ホシミヤ タイチ)

・OPには登場しませんでしたが、今回、皆様を現場まで案内してくれる少年です。年齢は小学校高学年程。目上の人を必ず『さん』付で呼ぶ等、礼儀正しい子供でもあります。
怪異の好む香りを常に放ってしまう特殊体質持ちですが、ローザの『御守』のお陰で、日常生活に支障はないようです。
戦闘開始時には、彼は適当な場所に退避するので、思いっきりスキルをぶん回しても大丈夫です。
基本的に人好きかつお喋りも大好きなので、聞かれた事は(分かる範囲で)何でも答えてくれます。

日夜 歩(ヒヨリ アユム)

・OPに登場した、探偵事務所の所長です。生真面目で身なりの良い青年で、今回のシナリオ参加者の助太刀にもとても感謝しています。男女問わず、他人を『君』付で呼びます。
実は『人間』ではないらしいですが……?
今回は皆様と別働隊で怪異退治に動くため、リプレイ中には登場しません。

ロザリー・カンナヅキ(ローザ)

・OPに登場した、軽い雰囲気の若い占い師です。しかし、怪異に精通しており、それに対する防衛術も心得ています。特殊体質の星宮少年が普段平和に暮らせているのも、彼女謹製の『御守』の力があるからです。
誰彼構わず『ちゃん』付したり、あだ名をつけたりと、良く言えばフレンドリー、悪く言えば馴れ馴れしく人物です。
日夜と同じく、シナリオ中では皆様と別行動をとるため、リプレイ中には登場しません。

以上になります。
それでは皆様、良き夜をお過ごしください。

  • 【日夜探偵事務所】夜を行く者完了
  • NM名ななななな
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年03月13日 22時03分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

天之空・ミーナ(p3p005003)
貴女達の為に
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
ドゥー・ウーヤー(p3p007913)
海を越えて
楊枝 茄子子(p3p008356)
虚飾

リプレイ

●夜道を行く者

 日夜探偵事務所より依頼を受けて間もない頃。四人の男女……『黒花の希望』天之空・ミーナ(p3p005003)、『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)、『海を越えて』ドゥー・ウーヤー(p3p007913)、『羽衣教会会長』楊枝 茄子子(p3p008356)が夜の町を歩き、それを星宮太一が先導している。その足に迷いは無く、辺りの地理に明るい事が窺える。

「くぅ〜、夜、それに怪異! 怖いね〜! 星宮君は怖くもない? あと眠くない?」
「えへへ、オキヅカイ、ありがとうございます。でも、大丈夫ですよ」
「うわ〜本当に礼儀正しい子だね! まあでも、星宮くんのためにも頑張って吸血鬼倒しちゃうからっ、ねっ皆!」

 そう言って、茄子子が振り返り他のメンバーを見渡す。微笑む者、苦笑する者、特に表情を変えない者、反応は様々だ。

「しかし、夜の闇に紛れて狩りをする者、ね。……ああ、かつての私を思い出すなぁ。はるか昔の暗殺者時代を、な」
「まあ、でも、吸血鬼にしろ怪異にしろ、俺達は慣れた物だろう。ヴァンパイアハンターの仕事、さくっと終わらせよう」

 満月を見上げて、吐き捨てるように漏らしたミーナの呟きに世界が応じながら、ポケットに忍ばせた十字架、そしてニンニクを弄ぶ。探偵事務所から拝借してきたものだ。今回立ち向かうそれに通用するかは分からないが、形から入るのも悪くないだろう。

「太一さん。吸血鬼について分かってる事を教えてくれるかな」

 ドゥーからの問に、太一は頷き、語り始めた。これから戦う相手の情報は、少しでも多くイレギュラーズに伝えた方が良い。

一、『最近』の事件は、決まって夜に起きている事。
ニ、被害に合うのは主に動物だが、命に別状こそないものの、人間が負傷した例も既に数件ある事。
三、日夜の調査に依ると、今町にいる吸血鬼は元々この町の住人などではなく、近隣から流れ着いてきた者らしい事。
四、日夜自身も少しずつ町に潜む吸血鬼を討伐しているのだが、いたちごっこに近い状況になってしまっている事。
五、しかし、一晩に複数もの吸血鬼が討伐されたとなれば、彼等も容易には動けなくなるであろう事。

「そうなんだ……ところで『最近の事件は』、という事は、以前にも似たような事があったの?」

彼の答に僅かな引っ掛かりを感じたドゥーが更に問を重ねる。

「はい、ローザさんが言うには、『デイウォーカー』って吸血鬼が、ずーっと前にこの町で、事件を起こしていたらしい、です。でも、それはもうシンパイゴムヨウです。だって、歩さんは……」
「何何? 所長さんがなーにー?」
「っと、到着です」
「ええ〜良い所だったのに〜!」

 太一が足を止めたのは、吸血鬼事件により人気のなくなった夜の公園だ。公園とは言うものの遊具は殆どなく、電灯もある。戦いの場には適当だろう。

「では皆さん、お願いします」

 彼はそう言って、パーカーの袖を捲り……手首に付けられていた、何色もの糸で編まれたミサンガのような物をそっと外した。場に一迅の風が吹くと当時に、その匂いに釣られたように、黒い影が飛び出して来た。

●月夜に踊る者

『旨そうな血の匂いがする、どこだ……?』

 現れた男は顔面蒼白、細身で、ギョロギョロと赤い瞳を動かし、鋭い牙を光らせながら獲物を探している。人間の形から大きく逸れては居ないが、明らかに異様な雰囲気。これこそが今回の標的に間違い無い。
 太一は既にイレギュラーズの後方に避難し、『ローザから貰った』という『魔除けの術』を用いた上で、植え込みに隠れている。仮に彼を見つけたとて、強力な癒やし手二人に支えられる、遠近揃った攻め手二人は、まさに難攻不落。これを抜ける事等、単体の相手には不可能に近いだろう。
ミーナとドゥーの視線がはたと合い、互いに静かに頷く。彼等のエネミースキャンも告げている。『このメンバーでなら、これを打ち倒す事など容易』だと。

『何だお前達は』
「出たな吸血鬼! 犯人はお前だ〜!!」

ビシィ!
決まった。一度はやってみたかった。快感。
茄子子は満足げに鼻を鳴らしながら、そそくさと後ろに下がった。

『……何だ?』
「あー、気にするな。それよりも」

今度はミーナが少し前に出て、こう告げる。そう、茄子子と吸血鬼がやり取りをしている間に、既に戦いの準備は整ったのだ。

「この通り、お前は多勢に無勢な訳だが、ま、運が悪かったと思って諦めな。私は吸血鬼よりも格上の化物、死神なんだからよ!」
『何をいうか、夜は俺の時間だ!』

 ミーナの言葉を挑発ととったか、牙を剥いた男が、懐へと飛び込んできた。しかし、先手を取ったのは彼女の方だ。その歯を柔肌に突き立てるよりも先に、魔光閃熱波が彼を襲い、その身を地べたへ叩き落とす。
『クソ、人間風情が舐めやがって……』

 忌々しそうにイレギュラーズを睨みつける男の服の裾から、小さく黒い塵が抜け、それと同時に、吸血鬼の存在感が徐々に希薄になっていく。

「皆さん、あいつ、蝙蝠に変化して逃げる気かも……!」
「させない」

 太一の警告に動いたのは世界。素早く空中に陣を描けば、世界の魔術で生命を与えられた白蛇が、男の身体を確かに捉え、逃さない。その機を逃すまいと、更にドゥーが魔術を唱えれば、大地を這うソレを押し潰さんとばかりに、土の壁が万力の如く、彼を押し潰した。

「やいやい吸血鬼〜! ヒルみたいにみっともなくゴロゴロしてる〜!!」

 無様を晒す吸血鬼を更に茄子子が煽る。と同時に、動けない所に更にちゃっかり一撃を加えていく。

『ガキ共がぁ……!』

 勿論、吸血鬼も黙って嬲られるばかりではない。夜空がそのまま降ってきたかのような、大量の吸血蝙蝠が、イレギュラーズを襲う。皆一様に、それから逃れようとするが。

「くっ……!」
「いッ……!」

 数の暴力。メンバーの中で攻撃力のあるミーナや、同じくアタッカーたるドゥーへと特に執拗に蝙蝠が迫り、噛みつき、血肉を奪っていく。彼等の血肉を持ち帰った蝙蝠は、主人の元に戻れば、溶けるように消え、彼の体に空いた穴を埋めていく。事前にかけられた世界からの支援もあって、十全に守りを固めていたミーナの傷はそう深いものでは無いが、蝙蝠が彼等から離れて尚も、傷口から血が流れ続けている。

「ミーナさん、ドゥーさん……!」
「大丈夫だ太一、俺達がいる」
「すぐ治すよ〜!」

 何も、傷を癒やす手段を持つのは吸血鬼だけではない。茄子子は、特にダメージの大きいドゥーへ、賦活の力を与え、世界は二人へ、力強い言霊を送る。

「……ふう、ありがとう。さあ、反撃だ」

 調子を取り戻したドゥーは、吸血鬼を見据える。傷こそは今の技で多少なりとも癒やしたようだが、先刻こちらが与えた不調は、まだ彼の身を蝕んでいる。ならば。

「逃さない!」

 棺桶の如く、キューブが吸血鬼を閉じ込めたならば、更にその身体を呪いに侵していく。男の声は、苦悶の叫びを月夜に轟かせた。

『ぐぬぬぅぅぅ!おのれ、おのれ……!』

 黒い箱から開放されるも、やぶれかぶれになった吸血鬼は、最後の力を振り絞り、イレギュラーズへと飛び込むが。

「させるか!」

咄嗟に投げつけた十字架が、吸血鬼の赤い瞳に突き刺さった。

『グアアアア……!』
「これで、終わりだ」

 淡々とそう告げるミーナの一振りが、吸血鬼の首を落としたなら。
夜の住人だった筈のそれは、倒れ。動きを止め……少しずつ、灰へと変じ。風に攫われ、跡形もなく消えていった。

「皆さん、お疲れ様です! 歩さん、ローザさんの方も、ちょうど終わったみたいです」

 戦いが終わって間もなく、太一がそう告げる。しかし、公園の至る所に踏み荒らされた跡などが残っている。

「ふう、これにて一件落着、か。これでこの街の人々や犬猫も安心して眠れることでしょう」
「……そうだね、これで、殺された動物達の弔いにもなった筈だ」

 安堵の息をつく世界に答えるように、ドゥーが静かに祈る。しかし、公園のこの状況を一体どうしたものか。ドゥーが不安げに周囲を見渡すが。

「大丈夫ですよ、こういう事、所長も慣れっこです。あっ、そう言えば歩さんが……『今回僕が依頼したのは、あくまで討伐の案件のみ。こちらが呼んだ助っ人といえど、それ以上手を煩わせるのは申し訳無い。事後処理は我々に任せてくれ』……って、伝えてくれって」
「な〜んだ、じゃあこれで会長達の仕事は終わりだね、ラッキー!」
「そうなんだ……こういうのを隠さなきゃいけないのも大変だね」

 探偵事務所の所長直々の言伝ならば、イレギュラーズの仕事はこれで終わりにして構わないのだろう。

「それにしても太一、だったか。お前も難儀な体質だね。ただの人間がそんな妖怪や化物の類に好まれるって事はないんだけどな、あんまり。よっぽどお前がうまい血をしているのか……或いは遠い祖先が妖怪だったとか」
「……うーん、ボクの家族は、皆そんな事は無いんですけどね……でも、今はローザさんや、歩さんも居ますから。でも、ローザさんのお守りばっかりに頼るんじゃなくって、いつかはボクもちゃんと、戦えるようにトックン、するつもりです」
「そうか、問題ないならそれでいい。また今度何かあったとき、気が向いたら助けにきてやるよ」
「えへへ、ありがとうございます」

照れたように太一が笑う。と、緊張の糸が切れた世界が、小さく欠伸を噛み殺した。

「……しかし、随分と長い夜だったように感じるな。帰って寝るとしよう」
「面倒くさ〜い後処理は、所長がやってくれるっていうしね〜!」
「そうですね……ボクも安心したら、眠くなっちゃった」
「大丈夫? 家まで送っていくよ。この時間に子供一人じゃ危ないし」
「どうせ私達も、これから帰る所だからな」

 家路につこうと並び歩く5人を照らす月光は、来た時よりもどこか優しいものに見えた。

成否

成功

状態異常

なし

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