PandoraPartyProject

シナリオ詳細

縛るか、縛られるか!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 天義……聖教国ネメシスは今、先の戦乱の傷痕がまだ癒えてはおらず、復興の最中にある。
 それ故に、国内各地で起こっている問題にはほとんど対処できず、ローレットを始めとしたギルド、集団などへと解決依頼を出していることも多々ある。

 鉄帝との国境付近。
 以前なら、あちらこちらに常駐、もしくは巡回していた騎士団によって討伐されていたであろうモンスターが勢力を拡大し、近隣の村落や行商人らに被害を及ぼしていることもある。
 うふふふ……。
 妖艶に笑うそれらは、上半身が成人女性の姿をしているが、下半身は蜘蛛となっているモンスター、アラクーネである。
 それらは獲物を求めてあちらこちらを徘徊しているが、現状、目立った被害は確認されていない。
 というのも、パサジール・ルメスの一隊からの報告があり、何処かの穴蔵から出たばかりらしいとのこと。発見も早く、まだ大きな被害は報告されていない。
「とはいえ、早く倒さないと、近隣村落民が食われかねないからね」
 幻想、ローレットで、『海賊淑女』オリヴィア・ミラン(p3n000011)が天義から受けた依頼をイレギュラーズへと説明する。
 なんでも、アラクーネという魔物は獲物を蜘蛛の糸できつく縛り付け、麻痺成分のある爪で引っかいて完全に動きを止め、文字通り食べてしまうという。
 それは野生動物や家畜とした動物だけでなく、人間種なども例外ではない。
「縛りプレイ……」
 司馬・再遊戯(p3p009263)はぼそりと一言。
 ゲーマーである彼女は、ギフトでも物理的な縛りプレイを迫られることがあり、アラクーネの糸の縛り付けに興味を抱いたのかもしれない。
「アンタ達なら、問題ない相手だろう。手早く討伐を頼むよ」
 オリヴィアは改めて、イレギュラーズ達へとそう願うのである。


 天義、鉄帝よりの国境付近。
 イレギュラーズ達はオリヴィアを通して聞いた目的証言を元に、街道脇の野原を索敵していると‥‥‥。
「ちょっと硬そうだけどぉ、食べがいのある獲物ねぇ……!」
「くすっ、じっくりと食べてあげるわぁ」
 すでに人と蜘蛛が合わさったモンスター、アラクーネ3体が何者かを襲っていた。
 相手にしていたのは、鉄帝人と思われる女性4人。
「ふふ、お仕置きが必要なようね」
「喰うことしか能のないモンスター風情が、たっぷり調教してあ・げ・る」
 首、腕や足など、身体の一部が機械となったボンデージ衣装姿の女王様らがモンスターを服従させんとロープや鞭をしならせる。
 艶めかしくも美しい鉄騎種女性らは勝気な様子でアラクーネの伸ばす糸を切り裂き、麻痺爪を振るう手をロープで縛り付けようとする。
「ちょっと硬そうだけどぉ、どんな味がするのかしらぁ?」
「小生意気なモンスターね。きつく縛り上げてあげるわ」
 アラクーネと鉄騎女性。両者一歩も引かず、戦線を移動させながら交戦を続ける。
 そのままであれば、イレギュラーズ達も傍観するか、鉄騎種女性らと共闘して討伐対象であるモンスターを殲滅したことだろう。
 しかしながら、その女性達の戦場が移動する先には、天義の村があって。
「な、なんですか、あのはしたない連中は……!」
「主よ、我らを護りたまえ……」
 村の男性はそのバトルに唖然として立ち尽くし、村の主婦は救いを求めて神へと必死に祈る。
 ただ、救ってくれる騎士達は駆けつけてはこない。
 その間も、モンスターと女王様は村へと接近し続ける。
 やむなく、イレギュラーズは村を守るべくその戦いへと介入しようとするのだが……。
「あらぁ、貴方達も美味しそうねぇ……?」
「みーんな纏めて食べてあげるわぁ」
 アラクーネ達はやる気満々。獲物が増える分には問題ないといった構えだ。
「ちょっと、邪魔しないで」
 あろうことか、鉄騎種女性達もまた、ロープや鞭をこちらへと向けてくる。
 少しでも戦いに加わろうとすれば、こちらまで縛り付けてきそうな勢いだ。
 依頼としては、アラクーネの討伐が目的だが、その結果として天義の村に被害を出せば、ローレットの信用問題に関わってしまうだろう。
 面倒だが、両方をどうにかするしかない。
 イレギュラーズ達は覚悟を決め、改めてその戦いに介入していくのである。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
 こちらは、司馬・再遊戯(p3p009263)さんのアフターアクションを元に発生したシナリオです。
 天義、鉄帝の国境付近に発生した恐るべき集団の討伐を願います。

●目的
 アラクーネの討伐、かつ天義の村へと被害を出さないこと。

●敵
○アラクーネ×3体
 上半身が人間女性、下半身が蜘蛛の姿をしたモンスターです。
 蜘蛛となった腹の先にある突起から糸を吐き出し、獲物を縛り付けます。
 縛った相手に爪で麻痺を、牙から毒を注入してから相手を弱らせ、美味しくいただこうとするようです。

○鉄騎種女性×4体
 勇ましく、セクシーな鉄帝の女性達。機械化した部位は腕、足など個々で異なります。
 血気盛んでモンスターも討伐している……のですが、どうやらハッスルしすぎて天義の方までやってきた上でモンスターだけでなく、行商人や天義の通行人まで縛り付けるほど見境ない連中です。
 ボンデージ衣装を纏う彼女達はロープで相手を縛り付けた上で、鞭を叩きつけてきます。

●概要
 2勢力が争っている中に介入し、両方の討伐を行う必要があります。
 判定はノーマルで行います。羽目を外したいのであれば、パンドラ使用、重傷上等の気概で願います。
 事後は、倒した両者を煮るやり焼くなり、お好きにどうぞ。ただ、天義の村の人々が見ていることをお忘れなく。

●注意
 PPPは全年齢向けのPBWです。
 予めご了承くださいませ。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • 縛るか、縛られるか!完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年03月18日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ベルナルド=ヴァレンティーノ(p3p002941)
アネモネの花束
ハロルド(p3p004465)
ウィツィロの守護者
コロナ(p3p006487)
ホワイトウィドウ
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
斑鳩・静音(p3p008290)
半妖の依り代
黒水・奈々美(p3p009198)
パープルハート
司馬・再遊戯(p3p009263)
母性 #とは
ネリウム・オレアンダー(p3p009336)
硝子の檻を砕いて

リプレイ


 鉄帝に程近い天義の村付近。
 イレギュラーズ達は問題解決の為にこの地へとやってきたのだが……。
「て、天義…… あたし……あまり来たことないけど…… なんか厳しい所っていうイメージがあるわ……」
 魔法少女風の眼鏡っ子、『パープルハート』黒水・奈々美(p3p009198)が俯き加減に訥々と語っているのが天義のイメージで間違いはないだろう。
「……でも…… あんなカッコして、へ、変態が闊歩してるぐらいだから、そうでもないのかしら……」
「久々に天義の依頼と聞いて来てみれば、変なモンスターと変な集団ですか……」
 奈々美に続き、常に瞳を閉じた天義出身女性の『ホワイトウィドウ』コロナ(p3p006487)はそれらが交戦する気配を感じ取る。
 片方は蜘蛛の魔物。腹部から糸を伸ばし、麻痺爪と毒牙を使うアラクーネ達。そして、もう片方はボンデージ衣装を纏う鞭とロープを持った鉄騎の女性達だ。
「ちょっと硬そうねぇ……」
「調教しがいがあるわぁ」
 互いにそんな印象を抱きながらも、相手を縛り付けようとしている女性達の戦いにイレギュラーズ達も引いてしまう。
「なんだこいつら……この世界はこんな奴らばかりだな……」
「うん、まあなんというか……奇怪な奴等だなぁとしか言えない」
 黒髪つり目、クールな『聖断刃』ハロルド(p3p004465)の一言に、『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)も同意する。
 もっとも、混沌出身者ですらも、目の前の惨状に呆れてはいたが。
「なぁにあれ。痴女? いや、痴女でしょ」
 商人ギルド・サヨナキドリ天義支部長である『硝子の檻を砕いて』ネリウム・オレアンダー(p3p009336)は、あんな格好で見境なく相手を縛り付けるのはただのケダモノでしかなく、アラクーネの方が食べ物に関わるだけ健全だとすら断言する。
「俺は天義出身だが、どうしてこう……束縛したがる奴が多いんだろうな」
 『犬も食わない』ベルナルド=ヴァレンティーノ(p3p002941)は束縛の聖女アネモネの名を思い出しつつ、縛り付け合う2勢力を見据える。
「拘束プレイ……」
 元練達の腕利きゲーマー、『目指せ拘束バニーの第一人者』司馬・再遊戯(p3p009263)が仲間達の話で思わず想像してしまったのは、文字通りの縛りプレイ。
 バニー衣装で糸やロープで縛られてあらぬ辱めを受けて重傷や運命力を多いに持っていかれた挙句、天義の悪名が恐ろしいまでに高まる状況……、再遊戯は思わずそんな妄想をしてしまう。
 その間にも、魔物と鉄騎女性の抗争は天義の村の方へと向かっており、外に出た村民らが神に祈りを捧げている。
「魔物退治は兎も角として、他の人にまで迷惑かけるのはよろしくないかな」
 小柄な半妖の少女、『半妖の依り代』斑鳩・静音(p3p008290)はそんな人々に注視し、仲間達へと戦いへの介入を提案する。
「……か、怪物と変態がケンカしてるなかに飛び込むなんて……お、お化けと戦うのとはまた別のイヤさがあるわ……」
 奈々美がそれに抵抗感を示すが、概ねメンバー達は天義の民の救出を最優先として前向きな対応を魅せる。
「春には増えるとよく聞きますが……。これはお説教が必要ですね?」
「別に魔物退治に文句はないが、無関係な人々の平和を乱すなら話は別だ。まとめてブチのめす」
「兎に角、さっさと終わらせちまおう。村人達の言う騎士達が駆けつけたら最悪だ。異端審問官も全てが全うって訳じゃねぇ」
 戦闘準備を整えるコロナ、ハロルドに続き、ベルナルドもまた別の懸念を抱いて駆け出す。
 戦乱の傷痕残る天義において、地位ある聖職者の力は神の言葉ほどの効力があると、ベルナルドは語る。
 ベルナルドはすでに依頼説明を行った海種少女を通し、孤児院で世話になった篤志家の司祭へと書状を渡して助力を求めたそうだが……。
「被害が出ないうちに迎撃させてもらうとしよう」
 放置できるなら良いが、抗争が村に近づいて被害を出すようならやむなしと、世界も持ってきた精霊爆弾を地雷の様に見えるよう出来る範囲で設置に向かう。
 また、ネリウムは村に向けて保護結界を張りつつ、笑みを浮かべて。
「そうそう、アラクーネ。アラクーネの方が僕にとってはメインだ。いいね、僕の研究対象にぴったりじゃないか」
 ネリウムにとって、神経毒に組織毒を使う魔物は研究対象としてかなり魅力的な様子。
 一方で、ネリウムは抗争が村に及んでも、故意の破壊でなければ物的被害は出ないと考慮もしていて。
「……精神的にはないと言い切れニアから、なるべく村に入る前の決着を心がけよう」
 犠牲者が出れば、アラクーネのエサが増えるだけ。
 ネリウムの現実的なコメントに、メンバーの表情も引き締まる。
「とりあえず、村の人達が迷惑にならない状況に持ち込まないとだね」
「し、縛られてあられもない姿になる前に…… さっさと終わらせて帰りましょ……」
「重症もパンドラも覚悟はできていますがそういうわけにもいきませんね」
 静音、奈々美も仲間達を追いかける中、再遊戯は妄想を終えて、改めて現実で縛り合う2勢力を見つめて。
「けったいな敵ですね」
 呆れる再遊戯だが、戦いに臨む彼女はギフトによって薄く光る縄のようなものに拘束される。
 傍から見た自分もああ見えている……とは思わないようにしながらも、再遊戯もまたその戦いへと介入していくのだった。


「残さず食べてあげるわぁ」
「その前に縛り上げてよ」
 クモの魔物アラクーネ達とボンデージ衣装の鉄騎女性達の戦いはヒートアップし、直に村に及ぶ。
「村の近辺で暴れるとは何事ですか、あなた方の趣味にとやかく言うつもりはありませんが、せめて遠ざかりながら暴れなさい」
 それを注視するイレギュラーズ達の中で、コロナなどはそう主張したい状況だが、聞く耳を持つ相手ではなさそうだ。
 モンスターと鉄騎女性の戦いは激化し、程なく村に到達しそうだ。
 その前にと、ハロルドが己の高機動力を活かして奇襲を仕掛ける。
「ははははっ! おら、平和を乱す輩は皆殺しだ! 死ねぇッ!」
「ああっ!」
 アラクーネへと一撃を見舞ったハロルドは鉄騎女性らにも言い放つ。
「テメェらの道楽に付き合ってる暇はねぇんだ、とっとと失せな! それとも、その鞭で俺と戦る気か?」
「折角の戦いを邪魔するなんて、許さないよ!」
 すぐさま離脱しようとするハロルドを、鉄騎女性達が追おうとする。余計な茶々を入れられたのが気に食わぬ様子だ。
「きいいいぃぃぃ!」
 アラクーネ達も黙ってはおらず、ハロルドを追いかけようとするが、ベルナルドの鼓舞によって赤き彩りを添えて鼓動の高鳴るメンバー達が一気に攻め入る。
「まずは纏めて焼き払いますか」
 同じく後ろから、剣に聖気を集めたコロナが敵集団を纏めて薙ぎ払う。
「白昼堂々弱者をし、縛って悦ぶ変態さんたちには…… ま、魔法少女パープルハートがおしおきします……!」
 距離を取る奈々美も数の少ないアラクーネを狙い、歪みの力を持つ呪言でアラクーネを弱らせる。
 石化が起こることで足止めも行うものの、個別では2勢力全体が村へと近づくのは避けられないと奈々美も気づいていたようだ。
 ともあれ、今は一気に攻め入るのみ。
 アラクーネを中心に、ネリウムが有毒ガスの霧を展開した直後、その霧が晴れるのと入れ替わりで静音が鉄騎女性らに近づく。
「そんなに縛って鞭で叩きたいなら、私がその相手になってあげるよ」
「ふふ、本気で縛られたいようね」
 名乗りを上げる静音に鉄騎女性らが憤り、鞭をしならせてロープを投擲してくる。
「誰かを縛って鞭で叩かずにはいられないっていうのなら、私を縛って鞭で叩けば良いんじゃないかな?」
「その減らず口も黙らせてあげるよ!」
 静音が村と逆側に逃げることで、鉄騎女性らを村から引き剥がすと、再遊戯が彼女を含めて天使の歌を響かせ、癒しをもたらす。
「ああっ!!」
 そこで、アラクーネが叫ぶ。どうやら、世界の仕掛けた精霊爆弾にかかったようだ。
 さほど数は設置できなかったが、その効果を実感していた世界は仲間達に向けて詠唱を始める。
「暁と黄昏の境界線よ。おお、刹那の栄光よ」
 現れた光は仲間を巻き込むように展開し、異常抵抗を高める。毒やマヒもそうだが、敵の糸やロープなどから抜けやすくなったはず。
 さすがにこの状況を進んで楽しもうとするメンバーもおらず、世界も回復に注力していたようである。
 アラクーネや鉄騎女性が手近なイレギュラーズを狙い始める中、ベルナルドは毒の魔石をアラクーネへと射出する。
 相手はイレギュラーズに注意を向けていたこともあり、村はしばらく無事だとベルナルドが感じていたところに、村に現れたのは彼が呼び寄せた『桎梏司祭』パオロだ。
「彼らが……ローレットがあの戦いを抑えてくれる」
 束縛という言葉にパオロも思うことがあったらしく、この事件を無視できず、村人の救いに参じたようだ。
「おお……」
「司祭様、ありがたや……」
 村人が少しでも気が休まる状況になったのを確認しつつ、ベルナルドはこの構想の鎮圧の手を強めるのである。


 イレギュラーズが介入したことで、抗争は三つ巴の戦いとなる。
 ただ、イレギュラーズを優先的に攻撃していたことで、アラクーネと鉄騎女性が交戦する状況はほとんどなくなっていた。
 とはいえ、共闘などすることもなく、イレギュラーズは個別に叩く形となる。
 足止めも考慮しながら、戦う奈々美は再度歪みの力を持つ呪言を紡ぐと、それによってアラクーネが苦しみ悶えて。
「ああ、ああああっ!!」
 絶叫の後、そいつは体をねじ切られて果ててしまう。
「いいぜ、掛かってこいよ! テメェらごときに俺の翼十字を砕けるってんならな!」
 1体が倒されたアラクーネを、ハロルドがさらに煽る。
 ギリギリ……。
 集中してイレギュラーズに狙われる現状もあり、苛立ちげに歯ぎしりするアラクーネ達も爪や牙を煌めかせて応戦し、ハロルドへと飛び掛かってくる。
「おおおおおおっ!!」
 対するハロルドは雄叫びを上げ、翼十字を掲げながら闘気を放って敵のヘイトを買う。
「もしかして、ただきつく縛って鞭で叩けば良いと思ってる? それじゃあ、駄目だよ」
 静音もまた鉄騎女性らを挑発していて。
「特に鞭に関しては、如何に痛みを刻むかが大事なんだよ。ただ振るって叩くだけだと、いたずらに傷ばかりを増やすだけだからね」
「きいいいいっ」
「お仕置き確定ね!」
 プライドを刺激され、いきり立つ鉄騎女性らは静音をロープで縛り付けようとする。
 出来る限り時間稼ぎをと、それらから逃れようとする静音は、攻撃のチャンスを見て生み出した火焔の大扇で敵陣を薙ぎ払っていた。
 彼らを支えるのは世界だ。
 体力回復もさることながら、アラクーネの麻痺、毒。そして鉄騎女性のロープに苛まれる仲間を優先して号令を発する。
「後ろに避けろ。……そちらは俺が癒す。そのまま待ってろ」
 また、再遊戯も回復を振りまくが、一時、世界の仕掛けた精霊爆弾が爆発した穴へとアラクーネ1体が近づいたことで、飛び出して。
「縛るのでしたら、思いっきり……!」
 ほぼ盾としての能力を持たぬ彼女だが、緊急事態の為やむなしと判断したようだ。
「うるさいわねぇ。一気に食べてあげるわぁ!」
 なお、アラクーネが糸での縛り付けよりも実力行使で敵を仕留めようとしていたことが功を奏し、再遊戯は毒を貰う程度で済んでいたようだ。
 その間にも、イレギュラーズの攻めにアラクーネの態勢が崩れて。
「ちっ、こうなったら……」
 ハロルドから注意を反らした1体が村に視線を向けたのをベルナルドは逃さない。
 彼の銃から、虹色の軌跡を残す小さなリリカルスターが放たれ、アラクーネを後頭部から撃ち抜く。
「かはっ……」
 大きく目を見開いた1体が力なく崩れ落ちた直後、コロナが残る1体へと接敵して。
「冬に戻りなさい、願わくば、永遠に目覚めませんように……」
 術式を展開したコロナはアラクーネの身体を絶対的冷気で凍り付かせる。
「…………!」
 やがて、そいつは氷像となり、完全に動かなくなってしまった。
「鉄騎種の方々は話はわかりそうなのですが……」
 残る鉄騎女性達の性質を考え、コロナはとりあえずそちらも撃破して言うことを聞かせることに。
「あたし達の獲物を横取りするんじゃないよ!」
 とはいえ、交戦相手を倒された女性達は眉を吊り上げてイレギュラーズ達へと鞭を振るってくる。
 ハロルドはそちらへと闘気を叩き込み、注意を引こうとする。
 相手のロープが伸びてくれば、彼は仲間を護るべくそれを斬り裂いて拘束を解いていく。
 守られる再遊戯は天使の歌を響かせていたが、それだけではなく。
「この程度でしたら、抜けられそうですね」
 自身はともかく、仲間の拘束は分析によって解いてしまう再遊戯だ。
 絶対に縛られたくないと鉄騎女性から距離を取っていた奈々美は仲間が縛られていたことであたふたしていたのだが。
「え、えっちなのは…… いけないと思います……」
 村人達が向けてくる視線もあり、安堵しながらも攻撃を再開していたようだ。
「ロープは邪魔だよね」
 また、不意を突いて狙われていたネリウムも、しばし解体用のナイフでロープを千切ることに専念していた。
 アラクーネが全滅していたこともあり、最も鉄騎女性を引き付けていた静音も心置きなく鉄騎女性を引き付けつつも炎の扇を舞わせていたようだ。
 仲間達が優位な状況となる中、世界は気を抜くことなく調和の力を賦活に転じて癒しに当たる。
「きいいっ、絶対屈服させてやるわ!」
 顔を真っ赤にした鉄騎女性らは、直接鞭を叩きつけてイレギュラーズを言い聞かせようとする。
 しかしながら、ハロルドや静音が立ちはだかり、思うように鞭を振るわせない。
「こんな物より鋭い痛みを知っている――。束縛の聖女に比べりゃこの程度の拘束、大した事ァねぇ!」
 盾となる仲間の合間から、ベルナルドが取り出したのは拘束具ミニセット。
「若い頃は嫌々ながら師匠に求められて色々な縛り方を試したからな。見せてやるよ、芸術的な緊縛の技ってやつを!」
 取り出した縄は宙を跳び、我を忘れて鞭を振るう女性1体を縛り付ける。
「なっ……!?」
 そこに、ベルナルドは続けて毒の魔石を撃ち出すと、抵抗していた鉄騎女性はがっくりとうなだれ、抵抗する力を失ってしまった。
「はあああっ!」
 大きく鞭を振るってくる鉄騎女性達はもはやなりふり構わぬ様子。
 自分の方へと向かってきたことで、コロナはタイマン勝負を挑まれたと感じ、儀礼剣を手に相手の鞭を切り払う。
「――死にませんように」
「うっ……」
 小さく祈り、コロナは当て身を叩き込むと、その女性は気を失う。
 倒れた女性に息があることを確認し、コロナは安堵していた。
 ほぼ同じタイミング、回復の手を止めた世界が虚空に描いた白蛇の陣に刹那の精を宿らせる。
 白蛇が建っていた2体の鉄騎女性に噛みつくと、静音が立て続けに彼女達へと炎の扇を浴びせかけて、片方が卒倒してしまう。
 残る1体は、遠方から攻撃を続ける奈々美が狙って。
「お、お仕置きされるのは……、変態さんたちです……!」
 魔力を集中した紫色をしたハート形の弾丸を奈々美が発すると、それをもろに浴びた鉄騎女性が大きく目を見開く。
「な、なんてこと……」
 信じられないと言わんばかりの表情で、最後の鉄騎女性はその場に倒れ込む。
 野原に倒れる鉄騎女性達はいずれも息があるようだったが、何やら夢見が悪いのか、すごく苦しそうな表情を見せていたのだった。


 天義の村近辺もようやく静かになり、イレギュラーズ達は事後処理に動く。
「神経毒に組織毒……ふふ、研究すれば使い道がたくさんあるだろうなぁ!」
 仕留めたアラクーネにはネリウムが執心しており、鑑定眼で調べて毒の含まれる手や牙などを解体して持ち運ぶ。
「──ああ、僕の邪魔をするんだったら、しばいてふん縛るからね」
 心なしか、戦闘以上に目を輝かせていたようにも見えるネリウム。しばらく彼には近づけそうにない。
 一方、ふん縛った鉄騎女性達は目を覚ましていたようで。
「憲兵にでも押し付けるか」
「ええ、鉄騎種の方々には労役でしょうか」
 ハロルドの提案に応じたのはコロナだ。
「さて、あなた方はどうします? 労役か、追放か……再犯しないと約束していただけるなら……」
 縛られた鉄騎女性らに近づくコロナは彼女達へと取引に出る。
「その過激な服装を改めて頂く前提にはなりますが、我が国で有り余る体力を有効に活かしませんか?」
 天義もまだまだ人員不足が深刻だ。だからこそ、彼女達に貴重な人手になってほしいと告げる。
「熱くなりすぎたわね……」
「致し方ないわ」
 思った以上に素直に応じる鉄騎女性達。
 天義の村民の視線も感じていた世界は仲間達の動向を見守っていたが、動く必要はないと感じたらしい。
 また、村民らもパオロを仲介してベルナルド達の素性を証明する。
「あの御方もまた、あなた方に被害が出る事へ、心を痛めておいでだったのだ……」
 まだ混乱の続く天義で、民が平穏に暮らせるのであれば。
 そんなベルナルドのフォローもあって、人々も安堵して日常に戻っていく。

 こうして、今回の事件は幕を下ろしたのだが。
「私はもっと強い拘束を求めて旅立ちます……っ!」
 どこぞの格闘ゲームの台詞をパクる再遊戯は、まだ見ぬ敵を求めて何処かへと去っていく。
 また、程なくして、神官風のローブを纏った女性達が魔物へと鞭やロープを振るう姿が見られるようになったそうだが、それはまた今回とは別の話である。

成否

成功

MVP

ベルナルド=ヴァレンティーノ(p3p002941)
アネモネの花束

状態異常

なし

あとがき

 リプレイ、公開です。
 MVPは敵2体を倒し、村人へのフォローにまで気を回していた貴方へ。
 今回はご参加、ありがとうございました。

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