PandoraPartyProject

シナリオ詳細

おまえが武器で武器がおまえで

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●盗賊団『チェンジリング』
 深夜、3時。
 森の中には、フクロウの鳴き声と虫の声が満ちているばかりで、あたりに人の気配はないように思われる。
 がさりと、茂みが揺れた。
 誰もが寝静まった夜に……。”奴ら”はやってくる。
 幻想の片田舎を震え上がらせている盗賊団、その名も"チェンジリング"という。
「いひひひひ、今日はどんなモノを取り替えてやろうかなあ!」
「金貨と石ころ、なあんてどうだ?」
「そりゃあいいや!」
 彼らは鮮やかな手つきで牛飼いからブラシをとりあげて、農家のじょうろを鍛冶屋へと。……ありとあらゆるモノを取り替えていく、卑劣で極悪な盗賊団だ。
 神出鬼没の彼らの犯行に、人々はなすすべも無く、悪名は幻想中に響き渡っていた。
……イレギュラーズたちに依頼が舞い込んだのは、そんなときだ。

●お荷物の確認はお済みでしょうか
「しかと、見てきた。奴らの根城は、この近くの洞窟で間違いは無い」
 偵察に行っていた影縫・纏 (p3p009426)が帰ってくる。
 村人たちの力では、彼らを見つけることは難しかったが……。イレギュラーズたちは、首尾良く彼らの居所を突き止めた。

「チェンジリングだっけ……。その人たち、……危ないのかな?」
 夜空の下。
 ランドウェラ=ロード=ロウス (p3p000788)は大切にこんぺいとうを食べながら、ゆらゆらと揺れるキャンプの火を目で追っていた。
「見たところ、強くは御座らんが……油断は禁物で御座るな」
 咲々宮 幻介 (p3p001387)はちびちびと酒を飲みながら、たき火を燃やすための枝を削っていた。ひょいと一本を放る。それはいいが……しかし枝を断つための命響志陲 ー神滅ーはなぜか重い。そう、まるで仙狸厄狩 汰磨羈 (p3p002831)の背負う太刀のように……。
「んむ、何でもかんでも入れ替えられるとなれば、危険は必須とみたぞ。油断せずにいくとしよう」
 汰磨羈は酒をあおる。ついでに、ひょいと幻介の酒に手を伸ばした。
「こういうことになりかねんからな」
「っと、拙者の飲み物が入れ替わって御座るな! これも良しっ」
「決まってますネっ、先輩方っ! ドウゾドウゾ」
 わんこ (p3p008288)が仲間のもとをを回りながら、飲み物を注いでいく。
「っと、火が弱まってきましたね?」
 わんこはトスト・クェント (p3p009132)のもとにあった枝を放り込みそうになり、首をひねる。ツタが伸びていて地面にくっついていたので投げられなかった。
「……ん、あれ?」
 トストは尻尾でぺしぺしといつもの武器を探ったのだが、なかった。代わりに……。
 何やらごつい重火器を見つけた。
「やや、花火デスよ!」
「おっ、こんなところに花火……? なんだろう」
「景気よくいっちゃいますか! どっかん!」
 コルネリア=フライフォーゲル (p3p009315)の福音砲機Call:N/Ariaによく似た形状の――いや、生命力を動力とするはずなのだが……トストは首を傾げながら、どっかんとぶっぱなす。花火というよりは放火に近かったが、飛び移って燃えるでもなし。
 鮮やかに燃える火はいつ見ても楽しい、といえるだろう。さながら、キャンプファイヤーのように。
 火気厳禁の新緑だったらたいへんなことになっていたかもしれない。
「おおー、たまやー」
「かぎやー、で御座るな」
「たまやー、とは何やら私が呼ばれているようだな、ふっふ」
「あれ。アタシの 福音砲機……どこやったかしら? まあいいか」
 コルネリアは代わりに、なにやらキラキラとしたノワール (p3p009373)の魔法少女グッズを見つけた。
「なにかしら、これ? へんしーん、なーんて?」
「ああっ、それって。あら、これは……?」
 そして、ノワールはいつのまにか、纏の暗器を持っている。
「……武器がない……?」
 そして纏の前には、……ランドウェラの屍月螺鈿飾弓迦陵があったのだった。

「ふははっは、ひっかかったな、イレギュラーズども!」
 そして、姿を現した盗賊たち。
「しまった! こんなときに夜襲とは!」
 手元にあるのは、他人の武器のみ!
 このまま行くしかないというのか。

GMコメント

たいへんお待たせいたしました!
ドタバタチェンジ回です。一応装備品はそっ……とみなさんを眺めて推測したのですが、
適宜ご調整ください!

●目標
盗賊団『チェンジリング』の討伐

オーダー
『他人の武器で』。

ID番号順になっています。
ランドウェラ=ロード=ロウス様

咲々宮 幻介様

仙狸厄狩 汰磨羈様

わんこ様

トスト・クェント様

コルネリア=フライフォーゲル様

ノワール様

影縫・纏様

(先頭の)ランドウェラ様

となっています。

●登場
盗賊団『チェンジリング』×8
 盗人集団です。とはいえ実力はそれほどでも無く、素手で勝てるくらいでしょう。

●状況
奇襲を受けていますが、すぐに応対することになりますので、とくにペナルティがあるわけでもありません。
明かりもバッチリ、視界もすっきり。
ぶちのめしてやってください!

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • おまえが武器で武器がおまえで完了
  • GM名布川
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年03月21日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費---RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)
黄昏夢廸
咲々宮 幻介(p3p001387)
刀身不屈
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
わんこ(p3p008288)
雷と焔の猛犬
トスト・クェント(p3p009132)
星灯る水面へ
コルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)
慈悪の天秤
ノワール(p3p009373)
黒き魔法少女
影縫・纏(p3p009426)
全国大会優勝

リプレイ

●これ誰の武器だよ!
「武器が! 違う!! 誰のだこれ!」
『黄昏夢廸』ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)は『裏咲々宮一刀流 皆伝』咲々宮 幻介(p3p001387)の刀を振り上げる。
 命響志陲 ー神滅ー。咲々宮家に伝えられてきた神刀。今は数奇な運命をたどり、ランドウェラの手にあった。
「敵襲か……此方の夜営を狙ってくるとは、盗賊風情とはいえ中々知恵が回るではないか」
 幻介はふらつきながら、手近にあった武器を握りしめる。
「……ん、今日の『命響志陲』は軽い気がするで御座るな?
おまけに、何かひらひらしてる様な……酔いが回ってきたので御座るかねぇ?」
 幻介が手に取ったのは、『流麗花月』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)の簡式仙宝『紅蠟華神鞭』。赤蠟で染めた幅広の布鞭である。数度ふってみれば結界を成し、ぴしりと固まった。首をひねるが武器として使えるのならば問題は無い。
「まぁ、拙者が握ってるのであればそれは間違いなく『刀』に相違無いで御座ろう、とっとと片付けてもう一杯呑むで御座るよぉ~」
 なんたって、咲々宮一刀流の極意とは、あらゆるものを『刀』と認識する事。このくらいは誤差で済む。
「ほう、中々に面白い事をやってくれる。
武器交換によって合わぬ武器を持たされたら、何時もの実力を発揮しにくくなるのは確かだ。
特殊な武器だったら尚更な」
「畜生、味な真似を……取り替えっこの名は伊達じゃねえってか!!」
 したり顔で頷く汰磨羈。ぐぬぬと悔しがる『シャウト&クラッシュ』わんこ(p3p008288)。
「だがしかし。全てがそう上手くいくとは限らぬぞ?」
 汰磨羈は、わんこの指ぬきグローブをきゅきゅっとはめ、しゅっしゅとシャドーボクシングをする汰磨羈。
「うむ、中々どうしていいグローブじゃないか」
「いつの間にか術中に嵌まってたってことか……チェンジリングの名前は伊達じゃないね。
ここで捕まえなきゃますます被害が広がるよ」
『よく食べる』トスト・クェント(p3p009132)は手近な福音砲機Call:N/Ariaを手に取った。手近? 持ち上げて二度見した。
 なんだか、すごくずっしりくる。
「……イルーシュカどこぉ!?」
 ここです、というように、イルーシュカの蔓がわんこの両腕に巻き付く。
「! コレはっ! トストサマの!」
「あ、そう!」
 聞いた話じゃ自我があるらしい。
(ならば例え通じずとも、仁義は切るべきデスネ)
「スミマセンネ、こんなアホと組む事になって。だが主の危機デス、今だけ力を貸してくれ!!」
「イルーシュカ、お姉さんの言うこと聞いて頑張るんだよ!」
 ぷいっとそっぽを向く。手を離したことを怒っているらしい。
 けれどもわんこを絞めることはない。内弁慶気味なのだ。
「ま、まさか武器がすりかわってる……? いつもの得物と違う中で戦闘なんて出来るはずが……」
『慈悪の天秤』コルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)の手に分厚い本があった。
「魔法少女だわ! これならアタシでも戦えるわ。心は何時までも少女だから!!」
 すっと覆面を深くかぶり、目をそらすチェンジリングたち。
「なんで? なんで目を逸らすの? ん? 今痛いって言った? 痛いつったかオラァッ!!」
 ぼそりとつぶやいた盗賊に、迷い無く黒魔術大全集第六版を振り下ろす。
「奇襲とは上等だな!
さっさと首に必殺に一撃を叩き込んで仕舞いにしてや……これ暗器じゃねえぞ!」
『全国大会優勝』影縫・纏(p3p009426)が手に取ったのは大弓だった。
「え、ちょ、ちょっと待っ、待って。
武器が入れ替わったのはいいわ。
緊急事態だもの、仕方ない。
仕方ないけどさ……」
『黒き魔法少女』ノワール(p3p009373)の手には、纏の幻魔が。
「魔法少女に物理で戦えってか!? いや俺普段から若干物理に訴えてる感はあるけど! ていうかこれどうやって使えってんだよぉぉぉぉ!!!」
 涙目で暗器をガチャガチャといじっている魔法少女の手の中で、暗記は姿形を変えていく。中途半端に変形が止まったりして、壊してしまったのではないかととても心臓に悪い。パニックのあまり素も出ようというものだ。
「幻魔はどこ行った?! あれ手に入れるのにラサで結構金使ったんだぞ。
いや待て武器が入れ替わったなら大丈夫か。
いやしかし手元にあるこの弓はもしかしてランドウェラのじゃねえか?」
「ご名答だ」
「ちょっと弦に触れただけで何か聞こえてくるんだが大丈夫だろうか。
というか弓は召喚される前の世界でも使ったことないんだけど……」
「壊す勢いで使って良いぞー。それの代わりはあるからな」
「ほんとか? 大丈夫か?」
「戻しあってる暇はないようだし借りるとしよう。前に刀は使ったことあるから何とかなるだろう」
 一振りで良い音がする。
「それにしても良い刀だな。持ち主が優秀なのか?」
「適当にブンってしてバッサリで御座るよ~」
「……優秀そうだな。僕なんかですまないが使わせてもらうぞ」

●初見
「ういいっく」
「大丈夫か?(敵が)」
 汰磨羈の心配に、幻介はひらひらと手を振ってこたえる。目の焦点はあっていない。
「酔っていようが、拙者の剣の腕に変わりは御座らん……はっ、これが世に聞く『すいけん』という奴で御座るか!?」
「なんデスとっ!?」
「知っているのか、わんこ君!」
 トストの声に、「今知りマシタ!」と元気よく返ってくる。
「酔えば酔う程強くなるという噂の……いやぁ、まさかこんな所で境地に至るとは流石拙者!
何か連中が、こう……ブレたり数が増えたりしてるで御座るが、全部斬れば何も問題は御座らぬな!」
 幻介の手の中で、紅蠟華神鞭が姿を変える。へなへなと鞭はリボンのようにしなる。それを盗賊は扱い切れていないもの、ととったが。
「隙ありぃ!」
「成程。分かってきたで御座る」
 すなわち、蛇腹剣の要領だ。
 神速を超えた、目にも移らない速さの抜刀術。手刀に巻き付けた紅蠟華神鞭は、鋭い破壊力で敵を一刀両断した。
「ふ、今宵も拙者の剣技(?)は冴えているで御座るぞぉ~」
 見た目は完全に酔っ払いであるのに、ものすごく強い。
 霹靂による落雷の如き轟音が、盗賊をぶちのめした。
 ならば、と思い次なるターゲットを探し、目に留まったのは軽装の汰磨羈だ。無手にも思える。
「おっと気を付けろ?
わんこの武器を身に着けた今の私は、わんこ×ねこ=未知のアニマルパワーで満たされている」
 殺伐とした襲撃にわんこが!
>ねこ<
『魚人変異種タイガ』
「ついでに言うと、グローブは魚らしいので三つの要素が三位一体で神秘オブアニマルだ」
 汰磨羈の後ろに、謎の数式とオーラが浮かび上がる。わんこが育てました、とのどや顔と一緒に、だ。
「何を言っているか分からない? なら其の身で味わえ! ウルトラ真空飛び膝ねこキック!!」
 己が安全装置を外し、汰磨羈は神速の星となった。
「ぐええ! グローブ関係ねぇじゃねぇか!」
「おっと。ついうっかり、アニマルパワーを全開放してしまった。良かったな。グローブで殴っていたら死んでいたぞ?」
 ランドウェラの斬撃が、盗賊の横をかすめていった。
「おおっと空振り」
「ひぃい、あれ、当たったら死ぬぞ!?」
 距離感がいつもと違うとなかなかうまくいかない。
「前前、前で御座るぞ~」
「イヤッ、右ですよ!」
 トストのイルーシュカが、くいくいと右を指し示す。
 別に目隠しをしているわけではないが、スイカ割りならぬ盗賊退治大会が始まりそうになっている。
 近距離は慣れていないが、たまにはいいだろう。
 選んだ手段は魔術。
 ランドウェラのアブソリュートゼロが敵を凍てつかせる。足は動かない。
「そのまま動くな、よっ!」
「見事」
「いやぁこんなに綺麗な武器だと敵で汚してしまうのが実に惜しい」
 刀を振るうのはやはりとても楽しい。それにこたえる様でもあった。
「そっち、頼めるかな」
 ランドウェラのショウ・ザ・インパクトが敵を吹き飛ばす。――トストの方へ。
「うわあ、どうしよう!」
 トストの手元にあったのはコルネリアの福音砲機Call:N/Ariaだ。
(さっきは気軽にぶっ放しちゃったけど)
 武器だと思って持つと重みが凄い。
「いや普通に重いよこれ、コルネリアくん凄いな!? ていうか待って、ねぇ銃って銃口向けて引き金引けばいいんだよね!?」
「ああ! 最悪それで殴ってくれればいいから!」
「ええ!?」
 魔法少女(物理)の助言に困惑しながらも敵に砲身を向ける。
(よし、これが生命力を糧にするんなら、代わりに魔力を込めてみよう)
 息を吸って、波打つような魔力に任せる。
(魔力を込めて、溜めて溜めて……よーく狙って)
「ここだー!」
 すさまじい爆音が鳴り響き、破式魔砲が辺りを貫いた。
「ひぇっ なんか凄いの出た!?」
「やるな! じゃないわね。やるわねトストっ!」
 コルネリアに変身バンクというものはない。ならば地でいくしかない。腹に力を込め、勇ましく魔法少女は名乗りを上げる。
「魔法少女コルネ★アリア!悪い盗賊達はアタシ達がお仕置よ!!」
「っ……」
 思わず目をそらした盗賊の横っ面を、魔導書がガツンと殴りつける。
「痛いか? そうか、アタシもお前らの心無い言葉に傷ついたよ。
酷いと思わんか、こんだけ身体張って魔法少女やろうとしてるのに、やれ婚期が遅れそうだ、歳は大丈夫かだ、そんな心無い言葉を重ねてくるお前らに人の心は無いのか?」
「ぐへえ!」
「やっぱり魔術っぽいほうが魔法少女……ああー! 読めねぇ!」
 もはや魔術を省略し、逆の肘でぶん殴る。
「わかってきたわかってきた」
 やはり攻撃は物理に限るということが。分厚い角が、えぐるようにめりこんでいる。
「くそっ、いくつなんだ!?」
「あ?」
 がしっと腕をつかむ。
「ひいっ!」
「31ナメてんじゃねぇぞっっ!! 魔法の力で成敗してやらぁ!」
 フルボッコにする。必死の攻撃を、魔導書で受けた。
「結構使いやすいわね!」
 隙を見せたところで鋭いアッパーを打ち込む。
「それにしても汰磨羈サマやっるぅ、わんこのだぜあのグローブ!
三位一体神秘パワーに負けてられねぇ、こちらは機械と植物の神秘的融合だ!」
 しゅるしゅると巻き付いてきたイルーシュカは、困惑したようにへにゃりと先を曲げる。
「……あっ、メカじゃあ養分渡せないデスネすまん!!」
 ……わんこにはわかる。このイルーシュカ、防戦にも長けている様子。ならば強気に受けるのも吉!
「即席コンビが相手になるぜ、かかって来な盗賊共!」
「や、やっちまえ!」
 名乗りを上げた二人に向かって、盗賊たちが襲い掛かってくる。
「どう、どう、どうすれば……」
 ガチャガチャと武器をいじり続けるノワール。
「その暗器は殺意こめればいい具合になるぞ! 安心して全力で殴れ! 壊しても構わん!」
「壊す……!? ええい、こうしてても仕方ない!
とりあえず魔力込めて振り回してればなんとかなるだろ!」
 ノワールは必死になんとか暗器を棒状の、ステッキに近い形状にすることができた。
「こっの……くたばれぇ!」
 魔力撃がびゅんと飛んでいく。
「よし、いくぞ!」
 すう、と纏は弓を構える。背筋を伸ばし、その瞳は敵を射貫かんばかりに鋭い。
「……! おい、逃げろ!」
「初めて触った弓で戦えるわけないだろ!!!」
 弦は空をはじいた。
 魔弾は左手から、マジックミサイルも左手の先から出る。
「ひええええ! 武器はどうした武器は!」
 逃げ出す盗賊に向かって、左手の人差し指を伸ばした。びいん、と弦の横を魔弾が飛んで行く。
「二重の意味で使い辛い!!!」

●慣れない武器
「おっかしいな~敵が減らないで御座るな~」
 幻介の振るった武器は、今度はびしりとまっすぐになって衝撃を放った。斬神空波が敵を薙ぎ払っていく。
「いやいや、流石だな。
人ですら武器にするだけはある。いい感じに扱えているじゃないか」
「いち、にい……あれ、今何時だったで御座るか」
「ふむ。深夜を回っているな。二十五時くらいか?」
「じゅうに、じゅうさん……減らんで御座るな~」
 詐術みたいなことを言っているが、あまりに強かった。
「くそっ、せめて一矢報いたい! あのひらひらさえとれば!」
「うぃいいっく~」
 ひらりひらりと攻撃をかわす。
「ちなみに、あくまで飾り紐なので、それを取られたからといって袴は脱げない。
残念だったな!」
「汰磨羈サマ、使い心地はどうデスか?」
「いいな。気に入った。鱗で出来ているというのが特にいい。鱗の硬さを活かした攻防一体の武器。これなら、攻撃を手の甲でいなしながら痛い攻撃をお見舞いする事も容易い――」
 流れるようなねこパンチは、勢いのままに敵をぶち抜いた。
「はあっ!」
 纏は木を足場に、くるりと一回転して弓を構える。フリだけだ。けれども、十分はったりになる。空の弦をはじいて、魔弾を撃ちつける。
「イルーシュカ、行けマスか!?」
 ふいふいとツタが動いて、OKしてくれたような気がした。気がしただけだが――ほかならぬトスカの頼みを、イルーシュカは無下にはしない。
「『わんこショウタイム』withイルーシュカ!」
 だっ、とわんこの軌道が急に入れ替わる。纏を見習うように、指鉄砲の形を作る。エネルギー弾に、イルーシュカが力を貸してくれる。
「すまんが乱暴に行きマスヨ、イルーシュカ!」
(拳と蹴りと指鉄砲の三重奏、一発目で見切るのは困難!)
 BANG、と盗賊の額をぶちぬいた。
(イルーシュカは頑張ってるみたいだなあ)
 トストは、咄嗟に衝撃の青で敵を吹き飛ばす。けれどもやはり魔力はいつも通りのようにはいかない。
「はぁ、自分がどれだけイルーシュカに頼ってたかわかるな……」
 あとでちゃんとお礼を言わないと、と思うのだった。
「ひいっ、どうして武器を入れ替えちゃったんだ!? 俺たちは!?」
「やめときゃよかった! まっとうな魔法少女が見たかった!」
「もう一遍言ってみろ! 言えるものならなァ!」
 コルネリアは本を開き、両の頁で盗賊を挟み込む。
「オラッ! 言ってみろ! どっからどうみても360度365日魔法少女だろうが!」
「すみませんっ、すみませんっ、魔法少女ですっ!」
 刀身が鳴った。
 ランドウェラの鬼哭啾々が、冷たい金属と共鳴して辺りを揺るがす。
「いいかげん、しつこいっ!」
 ノワールの暗器が、鎌の形を作り出した。振り上げて、ぐいとスイングする。
 魔力撃が、盗賊をぶちのめした。
 目つぶしの砂が、目に入る。DANGER DANGER。ささやかな警告を無視する。
「ショータイムはおわらないデスよ!」
 ガンガンと指鉄砲の放たれるなか。煙の中を疾走していく。そして、一撃蹴りを食らわせる。
 ランドウェラが術を唱えて、刃を目の前につきだした。
 ライトニングのうねりが、目の前を駆け抜けていく。
「見切った」
 その稲妻と競うように、幻介が敵に迫っている。
「神断」

●いろいろと打ち勝った
 あたりはしんとしている。倒した。
 盗賊団はすっかり伸びていて、とりあえず酒の味が悪くなることはなさそうだ。トストが全員の無事を確認すると、コルネリアが手早く縛り上げていった。
「……ふーっ」
 コルネリアは戦闘後、失われた尊厳のままに勝利のポーズをとる。ぶいっ!
「はぁ……はぁ……。
なんとかやったわ……」
 ノワールの持つ『幻魔』は、もはや原型をとどめないほどに変形していろいろな仕掛けが飛び出してしまっている。
(……この武器、けっこう無茶な使い方しちゃった気がするわね)
「……纏さん、ごめんなさいね。あとできちんとメンテナンスしてあげて」
「ああ。大丈夫そうだ。戻せるよ」
 恐る恐る暗器を返すと、頷いて受け取った。よかった、とほっとする。
「そしておかえりなさい、私の魔導書……!」
 ぱらぱらと頁を確認して、大事そうに抱きしめる。
「あぁ、やっぱりこの子が一番だわ……これからもよろしくね……」
 そっと目を逸らすコルネリア。
「なんか変なの出た気がするんだけど……ごめんね」
「大丈夫よぉ~、ヤワじゃないわ」
「大丈夫かな……壊れてない? 整備するなら手伝おうか?」
「ありがとう」
「トストサマ、イルーシュカをお返しシマス」
 わんこがすっとイルーシュカを差し出す。元の持ち主に戻ったイルーシュカはぷいとそっぽを向くかのようである。
(……手元から離したおれに拗ねてるなあ)
 それでもうれしいようで、ツタは控えめに巻き付いてくる。
 手元に戻ってきたイルーシュカの葉っぱを一撫でする。
「乱暴に扱ってごめんね、付き合ってくれてありがとうデス! と、お伝えください!」
「大丈夫、結構楽しかったみたい。わんこくん、イルーシュカにも気を使ってくれてありがとうね」
「久々に使うと楽しいねぇ。帰ったら僕の刀を引っ張り出すか」
「それはそうと疲れた。こんぺいとう食べるかい?
あ、あの刀結構すごい刀、幻介のか」
 ランドウェラは刀の返却とともに、こんぺいとうを渡す。
「さぁて、仕事も終えた事で御座るし……呑み直すと致そうかね」
 幻介はお猪口を差し出す。
「ぽち太郎ー、一杯注いでくれー……っとぉ!?」
「……おい誰だぽち太郎って言った兄貴!!! 噛むぞ!!! 噛んだ!!!」
「噛み付くんじゃあない、じゃれつくにも限度が……あーっ!?」
 愉快な悲鳴が吸い込まれていった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

他人の武器って楽しいですね!
お疲れ様でした。気が向いたらまたご一緒に、わちゃわちゃしてください!

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