シナリオ詳細
<リーグルの唄>禁忌の森マナリス
オープニング
●消耗する少年達
ボロボロの衣を纏った鉄騎種の少年達十数人が、鬱蒼とした森の中で狼の魔物と戦っていた。どの少年達も、多かれ少なかれ身体のあちこちに傷を負っている。それでも、少年達は狼の魔物を退かせることに成功する。だが、ホッとしていられるのもつかの間だった。
「くそっ……この森は、どうしてこんなに魔物が多いんだ」
「言ってる場合か、来るぞ!」
ホウホウ、と吼えながら、少年達に猿の魔物数匹が迫る。相次ぐ戦いに悲鳴を上げる身体を酷使しながら、少年達は猿の魔物達を迎え撃った。
「……なあ、この森はおかしいよ。街道に戻った方がいいんじゃないか?」
猿の魔物達をどうにか撃退した少年達が一息ついている最中、一人がそんなことを口にした。だが。
「しかし、街道に戻ってどうする? またアイツらに捕まるだけじゃないか?」
別の一人が、その案に否定的な意見を述べる。
「俺も街道に戻るのには賛成だ。だが……問題は、どう進めば街道まで戻れるかだ。
誰か、ここまでどう進んできたかわかる奴、いるか?」
さらに別の一人が、重苦しい表情をしながら割って入った。これまで森に入ってから、何度も魔物に襲われて応戦したり逃げたりするのに手一杯であり、ここが森の端からどれ程の位置で、どちらに進めば街道に戻れるかは、既に誰もがわからなくなっていた。
その場には重苦しい空気が広がった。せっかく奴隷商人から逃れてきたのに、この森の中で朽ちる運命なのだろうかと――。
●禁忌の森に逃れた者達を救え
「集まってくれて感謝する……すまんが、緊急の案件だ」
『バシータ領主』ウィルヘルミナ=スマラクト=パラディース(p3n000144)が、目の前のイレギュラーズ達に声をかける。その表情は、陰鬱であった。
「私の治めるこのバシータの北端、鉄帝との国境付近に、マナリスと言う森がある。
奴隷商人から逃げ出した者達が、この森に逃げ込んだとの報を得た。すまないが、彼らを救出してきてもらいたい」
まず用件を告げると、ウィルヘルミナは経緯の説明に移った。
ファルベライズの動乱によって傭兵のブラックマーケットでは奴隷売買が難しくなり、商売の場を求めた奴隷商人達が幻想にその場を求めたことは、今では知る者は知る事実となっている。ウィルヘルミナ自身、隣領で行われている奴隷オークションを潰して囚われの奴隷達を救出するよう、イレギュラーズに依頼を出したばかりだ。
今回、問題の奴隷商人は傭兵から幻想に直接入国するのを危険と判断して、鉄帝を経由して――ついでにスラムから『商品』を『仕入れ』て――幻想に入国してきた。
だが、ウィルヘルミナは鉄帝国境と宿場町マリネブートの間の街道に鉄帝の侵攻を見張る砦を、検問を兼ねて置いていた。奴隷商人達は砦を通過するため、素性を偽装すべく『商品』の拘束を緩めたところ、隙を衝かれて逃げられたのだ。
「問題は、その逃げ出した者達の行き先でな……」
彼らは鉄帝方面の森へと逃げていったと言うのだが、その森は「マナリスの森には近付くな」と囁かれる禁忌の森なのだ。中は魔物の巣窟になっており、中には怪王種さえいると言う。
逃げ込んだのが普通の者であれば生存は諦めるところだが、今回逃げ込んだのは強制労働向けの鉄騎種の少年達であり、他の者よりは頑健であろうことから、速やかに救出に向かえば何人かは生存した状態で助けられるかも知れない。ウィルヘルミナは、その可能性に賭けることにした。
「救える命があるなら、出来る限り救いたいものだ。そのためにお前達を危険な目に遭わせてしまうのは心苦しいが、お前達ならこの依頼を受けてくれると信じている。どうか、よろしく頼む」
普段にも増して深く、ウィルヘルミナはイレギュラーズ達に頭を下げた。
- <リーグルの唄>禁忌の森マナリス完了
- GM名緑城雄山
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年03月17日 21時55分
- 参加人数8/8人
- 相談4日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●禁忌の森を前にして
鬱蒼とした森が、イレギュラーズ達の眼前に広がっている。それも、ただの森ではない。「マナリスの森には近付くな」と囁かれる、禁忌の森だ。しかし、イレギュラーズ達はこの森に挑まなければならない。奴隷商人から逃げ出した鉄騎種の少年達を救出するよう、この森を含むバシータを治める領主に依頼されたのだから。
(……未だに、奴隷売買が行われているってのが気に食わねえ。ましてや、子供を扱っているなんて反吐の出る話だ。
逃げ出した事には「よくやった」と子供達を褒めてやりたいが……糞ったれ!)
『『幻狼』灰色狼』ジェイク・夜乃(p3p001103)は、苦虫をまとめて噛み潰したような表情をした。少年達が逃げ出したのはいいが、よりにもよって逃げた先が禁忌の森だとは。
「……逃げた少年達は鉄騎種だけあってそれなりに戦えるようだが、長くは持たないだろう。
森の中は状況が分からねぇ。早く助けてあげねぇとな」
「そうだね。街近くの浅い森だって危ないのに、魔物も蔓延る森に入ってしまったなんて……一刻を争う事態だ。
二次遭難には十分に注意して――それでいて、直ぐに向かって助けてあげなきゃね」
『仁義桜紋』亘理 義弘(p3p000398)が懸念を口にすれば、『数多異世界の冒険者』カイン・レジスト(p3p008357)が応じる。実際、この森に逃げ込んだのが頑健さでは他種族より一日の長がある鉄騎種だから救出の依頼が出たのであり、そうでなければバシータ領主は生存を諦めたと言う。とは言え、それでも禁忌の森と呼ばれるような場所では、義弘の言うように長く持つとは思えず、カインが言うように一刻を争った。
「少しでも早く駆けつけんとならんのは、同感じゃ。まだ未来がある者を、失うわけにはいかん」
辺境の役人のような立場を既に年齢の問題で退いている『揺蕩う老魚』海音寺 潮(p3p001498)も、義弘やカインの言葉に賛同する。自分のような老人とは違って、鉄騎種の少年達には将来があるのだ。そんな命をあたら失うのは、潮にとっては避けたいところであった。
「逃げた先がこんな危ない森とはついてはいないですが、だからこそ逃げられたと考えると人生って難しいデス」
『不死呪』アオゾラ・フルーフ・エーヴィヒカイト(p3p009438)は、少年達の辿った運命の数奇さにううん、と考え込んでいる。だが、その先がどうであれ。
「折角逃げられたのだから、こんな森からもさっさと出してしまいまショウ」
奴隷商人から逃げられたという幸運を少年達が手にしたのなら、手を差し伸べてこの森から救い出すと言う意志は揺らぐことはない。
(……子供達が死ぬのは、僕には堪えるのさ。孫達の事を、思い出してしまうからね)
『柔らかく、そして硬い』ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)は、元の世界で密猟者に孫と子を狩られてしまった過去を持つ。子供達が死ぬという事実は、どうしてもムスティスラーフにその時のことを想起させてしまう。
(……必ず、皆助け出す)
普段の軽妙な様子がなりを潜めた、重苦しい表情の下で、ムスティスラーフはそう心に誓った。
(最近多いな、奴隷。東京じゃンな文化、もう過去の歴史の話レベルに廃れてるってのによ。
……チッ、ヒーローの真似事は好きじゃねェが、そうは言ってもられねェ状況ってか。
救える命、助けられる人数、ハッ、興味ねーよ。ねェ……けどよ。寝覚めが悪くなるからよ、助けてやる!)
暴力性を内に宿している糸色 月夜(p3p009451)にとって、物事の判断基準は退屈でつまらないか、そうでないかだ。そこに善悪は介在せず、故に子供の救助に興味はない、はずであった。だが、この依頼に参加したこと、死なれては寝覚めが悪くなることが、月夜が無意識に少年達の生死に関心を持っていた証左とは言えまいか。
(……禁忌の森か、素敵な名前だね。これは愉しめそうだ。
さて、此度はどのような肉を味わえるのかな。知らないレストランに行く時のようにわくわくしてしまうね)
『饗宴の悪魔』マルベート・トゥールーズ(p3p000736)の関心は、他のイレギュラーズ達とは違っていた。マルベートは、マナリスの森の魔物達を食らおうというのだ。もっとも、受けた依頼は依頼として、敵の注意を引き付けることで得意とする盾役をこなす意志はしっかりと持ち合わせているのだが。
いよいよ森の中に入ろうとするところで、ジェイクが後ろを振り返り、他のイレギュラーズ達の顔を見る。
「……子供達は、全員助ける! 分かったな、全員だ!」
そのジェイクの呼びかけに、全員がこくりと深く頷いて、改めて少年達救出への意を固くした。
●度重なる襲撃を退けて
禁忌の森と呼ばれるマナリスの森で彷徨っているであろう少年達を捜索するに辺り、イレギュラーズ達はあらん限りの手段を講じていた。
ジェイクは鳥の使い魔と自身の常人を越える感覚を共有し、空から捜索を行う。アオゾラは使い魔である黒猫のミーちゃんを走らせ、地上から捜索を試みた。潮は森の樹々に少年達を知らないか尋ねて回り、マルベートや義弘はそれぞれ尋常ではない嗅覚、聴覚を働かせている。
ムスティスラーフは助けを求める少年達の心の声を感知しようとしながら、草が踏みしめられていたり高さの低い枝が折れていたりと言った少年達の移動の痕跡を探し、カインは冒険者としての感覚に違和感がないか注意しつつ、ムスティスラーフから借りた方位磁石を頼りに簡単なマッピングを行っていく。
月夜は直接には捜索に携わっていないものの、皆が捜索に意識を割いている間魔物の襲撃がないか警戒しつつ、指先を切って血をその場に垂らしていく。流れ落ちた血は、咲く花となってその場に落ちていった。これを、帰り道の目印にするためだ。
(これやンの二度目だ、ヘンゼルとグレーテルかよ)
だが、この一手が後々になって活きることになる。
「十人ばかりの少年を、見なかったかのう?」
潮の問いかけに、樹々は曖昧な答えしか返してこなかったが、それでも数を重ねて問うていくうちに少年達の向かった方向が見え始めてきた。捜索するベき方向が見えたのは、一行にとって非常に大きい。
「……これは、明らかに大人数が移動した後だね」
樹々によって示された方へと進んでいくうちに、ムスティスラーフが草が踏みしめられていたり、低い位置の木の枝が折れているのを発見する。少年達の移動の痕跡だ。そうなると、後はその痕跡を辿るだけ……とは、行かなかった。
「禁忌の森とは、よく言ったものだぜ。次から次へと、キリがねぇ!」
「味わってる余裕が無い時に出てこられても、食傷するしかないね」
「そうだなァ、先を急ぎてェのによォ!」
迫ってくる魔物に掌打を叩き込む義弘が毒づいたように、次から次へと魔物が襲い掛かってきたからだ。魔物の襲撃に対しては皆が十分に警戒しており、不意を打たれるようなことはなかったが、魔物を食らいたいマルベート、殺戮衝動を満たしたい月夜でさえも、その頻度には辟易するほどだった。
「僕達だから苦戦せずに済んでるけど……」
イレギュラーズ達の力量は高く、一方で出てきた魔物は敵とは言えるレベルではない。だが、これだけ立て続けに襲われては、如何に鉄騎種とは言え少年達は持ち堪えられないのではと、邪悪を灼く聖光を魔物に浴びせつつカインは危惧した。
――捜索の合間に戦闘になったと言うよりは、戦闘の合間に捜索をしているような状態になったが、それでもイレギュラーズは着実に歩みを進め、少年達に近付いていた。だが、朗報ばかりともいかない。
「……血、デス。まずいかも知れまセン」
アオゾラが先行させていたミーちゃんが、地面に点々と赤黒い血痕が続いているのを発見した。誰かが、血を流すほどの怪我をしたのだ。アオゾラの蒼い肌が、さらに蒼白くなったように見えた。
血痕は、ミーちゃんが進むにつれて点ではなく線となっていった。さらに、所々で血溜りの跡を作りながら、その本数を増やしていく。ミーちゃんの見たものをアオゾラから聞かされたイレギュラーズ達に、焦りと不安の色が広まった。それだけに――。
「いた! だが、ヤバい! 急ぐぞ!」
空からファミリアを使って捜索を行っていたジェイクのもたらした報せに、イレギュラーズ達はひとまずは安堵した。もっとも油断は禁物であり、犠牲を出さないようにするためにも救出を急がねばならないのだが。
●少年達を襲う怪王種
ジェイクが少年達を発見した時、彼らは熊の魔物に遭遇していた。その体長は五メートルと大きく、少年達を相手に狂ったように暴れ回る様は、その魔物が怪王種なのだろうと判断するのに十分だった。
その場にいる少年達の人数は、十二人。しかし、八人はもう血まみれになって倒れ伏しており、残る四人も傷は深く気力だけで辛うじて立っているに過ぎない。
(俺も、ここまでか……ちくしょう!)
その四人の一人に怪王種が殴りかかろうとし、避ける力さえ残っていない少年が迫り来る腕に絶望した瞬間。
「おまえさん達、よくここまで頑張ったな」
「……えっ?」
義弘は少年達と怪王種の間に割って入ると、少年達の戦いを労いながら、全身の力を雷として纏い渾身の力を込めて豪腕を叩き付けた。少年達にしか意識が行っておらず、不意を衝かれた怪王種は、その衝撃にたまらず大きくよろめいた。少年達の方も、突然の出来事に何が起きたかの理解が追いついていない。
「僕達は、ローレットのイレギュラーズだ! 君達を、助けに来た!」
「ロー……レットが? 俺達を、助けに……?」
続いて、カインが少年達を救助に来た旨を告げながら、怪王種の横から破邪の聖光を浴びせて、その身体をジュウ、と音を立てながら灼いていく。それまでの人生で誰かが助けてくれると言う経験が皆無であった少年達は、未だ目の前の光景とカインの言葉が信じられないと言った様子で呆然としている。
「もう大丈夫だ! 後は俺達に任せろ!」
「ほ、本当に、助けが……?」
「……うっ、く、ううっ……!」
だが、離れた位置から怪王種の後頭部に魔弾を叩き込んだジェイクが大声で告げたところで、ようやく少年達はイレギュラーズ達が自分達を救出に来たのだと認識した。喜びのあまり、嗚咽さえ漏らす者もいる。
「さあ、怪王種なら、多少は私を愉しませてくれるんだろう?」
「ガオオオオオオッ!!」
マルベートは、真紅の瞳をギラリと光らせて怪王種を後ろから見据えた。その眼光に射貫かれた怪王種は、先程まで攻撃していた少年達の存在を忘れたかのように、後ろを振り返ると半狂乱となってマルベートに迫る。まんまと誘いに乗った怪王種の姿に、マルベートはニヤリと唇の端を吊り上げて笑みを浮かべた。
(ああ……この光景は、やっぱり僕には辛い。倒れている子達が、せめて生きていてくれれば――)
八人の少年達が倒れている様は、ムスティスラーフの脳裏に孫が狩られた時の記憶をフラッシュバックさせた。過ぎる哀しみに苛まれながらも、あの時とはまだ違う、彼らはきっと救えると己の心を奮い立たせつつ、大きく口を開いて緑色の光を収束させる。カッ! と放たれた光の奔流は、マルベートに迫らんとする怪王種に直撃し、その巨体を大きく仰け反らせた。
「君達の将来を、こんなところで閉ざさせはせんのじゃ!」
一方、潮は癒やしがまだ間に合うと信じて倒れている少年達に駆け寄り、そのうちの四人を柔らかい癒やしの光で包み込んだ。癒やしの光に包まれた少年達の傷は多少ではあるものの塞がっていき、安定した呼吸を見せる。少なくともこの四人には治癒が間に合ったことに、潮はホッと胸を撫で下ろした。
「オイ餓鬼、死にたく無ければ突飛な行動するな、大人しく指示に従ってろ。
そォしたらこの世の地獄が大分遠のくだろーし、テメェの人生や運命ってやつがァ、変わるンじゃねーの」
口調こそ荒いが、月夜は義弘と並ぶようにして、少年達と怪王種との間に割って入る。万一怪王種の敵意がマルベートから少年達に向いた場合は、義弘と同様に身を挺して少年達の盾となるつもりだ。
そして月夜は、己の血を真紅の刃と化して、怪王種へと投げつける。紅い刃は怪王種の背に深々と突き刺さり、その血と生命力を吸い上げた。
「ここにも、あなた様にも用はありまセン。早く、帰らせてもらいマス」
「ガアアアッ!」
少年達を発見した以上は一刻も早く連れ帰るだけだとばかりに、アオゾラは虚無を剣の形としてその手に顕現させ、怪王種に斬りつける。ざっくりと、虚無の剣の刀身が怪王種の腹部を横一文字に深く斬り裂いた。
●救出、完了!
如何に怪王種とても、熟練のイレギュラーズを相手に一対七では勝てるはずがなかった。
義弘の雷を纏った拳が、カインの破邪の聖光が、ジェイクの魔弾が、ムスティスラーフの極太の光線が、月夜の放つ紅の刃が、アオゾラの虚無の剣が、次々と怪王種の巨体に傷を刻み、その生命力を奪い取っていった。
怪王種は咆哮しながらマルベートに迫り、噛み付き、突進し、爪を振るったが、マルベートはそのことごとくを弄ぶようにひらりと躱してみせた。逆に、双槍の刀身から漆黒の魔力の奔流を放って怪王種を斬り裂き、魂と命を喰らっていく。
潮は、他の仲間達が怪王種との戦闘を行っている間、少年達の治癒に回っていた。残る四人にも治癒が間に合い、倒れている八人全員の生存が確認された。
「ああ……美味しかった」
マルベートの放つ漆黒の魔力が、虫の息となった怪王種の魂と命を完全に食らい尽くした。その味が余程美味だったのか、マルベートは陶然とした笑みを浮かべる。
その後、潮とムスティスラーフが少年達全員の傷を、完治させていった。さらにムスティスラーフは、傷の癒えた少年達に持参した寿司を差し出す。少年達は見慣れない食べ物に最初はおっかなびっくりだったが、すぐに空腹に負け、寿司をガツガツと貪っていった。
「食べながらでいいんだけど、聞いてくれるかい?」
「奴隷商人から逃げたのは、これで全員か?」
カインとジェイクは、奴隷商人から逃げた少年達のうち森の中ではぐれた者がいないか確認する。少年達の答えは、これで全員と言うことだった。
「ミーちゃんを触ってみませんカ? 肉球やお腹がオススメデス」
「ニャー!?」
少年達の人数確認も終わり、腹具合も落ち着いたところで、アオゾラはミーちゃんで少年達を和ませようとする。突然の無茶ぶりにミーちゃんが驚いたように鳴くと、少年達は可笑しそうに心から笑った。
その様子をムスティスラーフは好々爺然とした笑顔で、義弘と月夜は魔物の襲撃がないか警戒しつつ、見守っていた。
マナリスの森からの脱出は、月夜が目印の花を置いていたこともあってスムーズに果たせた。魔物の襲撃はやはりあったものの、イレギュラーズ達の敵と言えるほどの個体に遭遇することはなかった。
(それにしても、魔物達の悪意と飢えに満ちた素晴らしい森だ。
仕事がなければもう少しゆっくりと過ごせたものを……些か惜しいものだよ)
マナリスの森を出た一行の最後尾で、マルベートは名残惜しそうに後ろを振り返った。今度は仕事に関係なく来たいとさえ、マルベートは思う。
なお、少年達のその後についてだが、その大半はジェイクの提案を受けた依頼人バシータ領主によって、領内の孤児院に入ることとなった。残りの何人かは、ローレットに入り冒険者を志したり、潮の元に引き取られたりした。だが、いずれにしてもスラムで暮らしたり、奴隷として売り払われるよりは幸せな生活を送ることが出来るだろう。イレギュラーズ達はそう信じ、少年達の未来に幸あることを願わずにはいられないのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
シナリオへのご参加、ありがとうございました。皆さんの活躍の結果、鉄騎種の少年達は全員生きてマナリスの森を出ることが出来ました。
MVPは、目印の花を置くことで森からの脱出の時間を大きく短縮した月夜さんにお送りします。
それでは、お疲れ様でした!
GMコメント
こんにちは、緑城雄山です。今回は、<リーグルの唄>の1本をお送りします。
魔物が跋扈する禁忌の森の中に逃れた少年達を、1人でも多く救出して下さい。
●成功条件
鉄騎種の少年6名以上の救出
●Danger!
当シナリオにはパンドラ残量に拠らない死亡判定が有り得ます。
予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。
●情報精度
このシナリオの情報精度はC-です。
ウィルヘルミナの言葉には嘘はありませんが、マナリスの森についてはOPで語られたこと以上は不明です。
不測の事態を警戒して下さい。
●ロケーション
マナリスの森の中です。鬱蒼として木々が生い茂っており、怪王種含めて魔物が跳梁跋扈しています。
広大な森であり、鉄騎種の子供達はこの中の何処かにいます。
●敵 ✕?
魔物がいろいろといます。OPの鉄騎種の少年達のように連戦を強いられる可能性も十分にあります。
戦闘においては、継戦能力が鍵となるでしょう。
●鉄騎種の少年 ✕十数名
奴隷商人の手から逃れ、マナリスの森が禁忌の森であることを知らずに逃げ込みました。
救出までの時間がかかればかかるほど、救出出来る人数が減っていきます。
広大な森の中で、如何に素早く彼らを見つけ出せる手法を講じるかが、より多くの人数を助ける鍵となるでしょう。
それでは、皆様のご参加をお待ちしています。
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