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シナリオ詳細

サメ博士の大逆襲

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●これまでのあらすじ(捏造)
 練達を追われた危険な科学者がいた!
 その名も『サメ博士』!!
 その研究成果のすべてをサメに費やし、練達に多大なB級映画をもたらせた狂気のマッドサイエンティストである!!!
 彼はその危険性から練達を追われ、海洋王国へと逃げだした! 何故海洋かと言われれば、サメがいるからである!
 サメ博士はサメをこよなく愛していた! もうサメと結婚してもいいくらいだった。というか、実際婚姻届けと戸籍を捏造してサメと結婚していた。
 それはさておき、その危険性は海洋でも響き渡ったのは記憶に新しい(捏造)。イレギュラーズとも何度も激闘を繰り広げ(捏造)、そしてついにサメ博士は海洋からその姿を消した(捏造)――。
 だが! 彼は生きていた! 豊穣郷と海洋国を結ぶ航路、そう、今は『静寂の青』と呼ばれる海域に潜み! 今なお研究を続けていたのである――!

●恐怖! サメの降る島!
 静寂の青、フェデリア島――。
 冠位魔種は消え去り、今は穏やかな海が広がる、船乗りたちの新たな中継基地である。開発は未だ完全に進んではいないものの、海岸・港には、人の営みが、確かに紡がれようとしていた。
 さて、そんなある日の事。島を大規模な大嵐が襲った。『絶望の青』時代には、突如発生する荒らしなどは文字通りに日常茶飯事であったが、今となってはこれほどの大嵐は珍しい。
「……あ? なんだありゃぁ」
 フェデリア島の小屋で休憩をとっていた、船乗りが声をあげる。彼の視線の先には、渦を巻き上げて立ち昇る、巨大な竜巻のようなものが見えた――いや。問題はそんな所にはない。
「アレ……イルカ……いや、サメ……か?」
 男が呟く。そう、巻き起こる大竜巻――その中には、確かに『サメ』の姿があったのである! サメは竜巻を高く上り、昇り、空へと上昇! そして――!
「さめー!」
「さめー!!」
 サメは鳴き声を上げながら、上空から急降下! フェデリア島へと降り注いだのだ!
「うお、なんだ!? 何でサメが空から降って来るんだ?!」
 駐留していた船乗りたちが悲鳴をあげる! 空から次々と振ってくるサメたち! サメたちは地上を這いずり回り、船乗りたちを襲おうと攻撃を仕掛ける! 間一髪、船乗りたちは建物の中へと飛び込んだ。サメたちは寂しそうに、海へと帰っていく。
「ふはははは! 愚かな海洋の民どもよ!」
 途端、辺りに声が響いた! それは初老の男性の声であった! その声は、サメの竜巻のあたりから響いてくる――同時に! ばしゃり、と音を立てて、海面へと巨大な鮫がその背を現した! その背の上に仁王立ちする初老の男性こそが、そう、サメ博士であった!
「わしを追放し、平和を享受している用だが、その甘さが命取りよ! わしはこの海域に見られる巨大竜巻を利用し、サメを打ち上げ攻撃する『シャークレイン』というべき兵器を生み出したのだ!」
 そう、博士は時折静寂の青に発生する巨大竜巻に、手名付けたサメたちを突撃させ、サメによる降下攻撃を行うという作戦を編み出したのである! おお、なんと恐ろしい超兵器か!
「ふはははは! 愚かな海洋の民どもよ! いずれうっかり海洋王国本土の方に竜巻が発生したら、サメを送り込んでサメを降らせてやろう! 震えて眠れ! ふははははは!」
 竜巻が消えていく(これは自然現象なので、当然消える時は勝手に消える)。サメ博士は満足げに頷くと、巨大な鮫と共に水中へと消えて行ったのである――!

●迎撃せよ、サメ博士!
「まぁ、海洋王国近辺にあんな巨大竜巻が発生する確率は低いんですけどね……」
 と、海洋王国にあるローレット支部にて、船乗りの男は言った。
 なんでも彼の話によれば、フェデリア島近辺に、『サメ博士』を名乗る謎の男が現れ、フェデリア島への嫌がらせ行為を続けているのだという。
 彼の手段は、静寂の青で時折発生する巨大竜巻に、手懐けたサメを突撃させ、舞い上がったサメでフェデリア島に降下攻撃を仕掛けてくるという、何だか効果があるのかないのかよくわからない戦法であった。
 とはいえ。これを不定期的に行われるのは、非情に厄介である。開拓の進むフェデリア島、その作業を中断しなければならないし、今のところ人的被害は出ていないとはいえ、一応相手は肉食獣。怪我や、命の危険も、無いわけではないのだ。
「そこで……ローレットのイレギュラーズの皆さんには、このサメ男……じゃない、サメ博士を撃退してきてほしいんですよ」
 船乗りたちの予測によれば、次にフェデリア島へ大型竜巻が発生するタイミングは、大体読めるのだという。
 そのタイミングでイレギュラーズはフェデリア島に赴き、やって来るであろうサメ博士を撃退してほしい――。
 なんとも珍妙な空気の漂う仕事ではあるが、仕事は仕事である。
 イレギュラーズ達は頷くと、早速、フェデリア島へと向かうのであった――。

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 サメが降って来るぞ!!!!

●成功条件
 すべての敵の撃破。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●Danger!
 当シナリオには科学的・魔術的根拠に拠らないサメ落下判定が有り得ます。
 予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。

●状況
 先の戦いを制し、絶望から静寂へとその名を変えた、『静寂の青』海域――。
 そこに存在するフェデリア島は、今は新たな海路の中継基地として開拓が進んでいます。
 そんな中、その開拓作業の邪魔をする、『サメ博士』と名乗る男が現れました。
 サメ博士は、自然現象である竜巻を利用し、手懐けたサメを空から降らせ、攻撃を仕掛けてくるのだそうです。
 珍妙な手段ですが、脅威は脅威。このまま放っては置けません。
 皆さんは、このサメ博士を迎撃し、島の治安を守るのです。
 作戦決行タイミングは、嵐の中。作戦フィールドは、海の上になります。
 皆さんには船が貸与されます。もちろん、持ち込みの船なら移動の性能が上がりますし、水中行動が可能な方は、船を用いらなくても移動が可能でしょう。
 皆さんは、フェデリア島の海岸から、外海に向って進軍する形になります。戦闘フィールドの外海側には、サメ博士が待ち構えています。

●エネミーデータ
 サメ ×たくさん
  一般的な鮫です。一般的な鮫なので、耐久力は低く、イレギュラーズ達なら「ていやー」ってするだけで倒すことはできるでしょう。
  とはいえ、その攻撃力だけを見れば、イレギュラーズ達にダメージを与える程度の事は可能です。物理属性の攻撃になるでしょう。
  サメは、竜巻に乗って、毎ターンランダムの場所に、ランダム体降ってきます。

 ヨメ ×1
  サメ博士の妻(結婚二年目)のサメです。一応狂王種。主に対処すべき相手になるでしょう。
  その皮膚は固く、防御技能は高め。抜けてもすぐ生えてくる『歯』を、投げナイフのように跳ばす攻撃なども行います。
  巨体ですので、マーク・ブロックしたい場合は、最低3名(ハイ・ウォールは二名として計算)必要になります。

 サメ博士 ×1
  ヨメの夫(結婚二年目)の旅人(ウォーカー)です。今回の黒幕。
  イレギュラーズ達よりは一回り弱い、といった形の性能をした、遠距離・神秘・支援よりのビルドをしています。
  主にヨメの援護に回るタイプです。スキル『水中行動』獲得済み。

 以上となります。
 それでは、皆様のご参加と、プレイングをお待ちしております。

  • サメ博士の大逆襲完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年03月19日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ノリア・ソーリア(p3p000062)
半透明の人魚
スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
天義の聖女
マリナ(p3p003552)
マリンエクスプローラー
ドゥー・ウーヤー(p3p007913)
海を越えて
モカ・ビアンキーニ(p3p007999)
Pantera Nera
綾志 以蔵(p3p008975)
煙草のくゆるは
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
Я・E・D(p3p009532)
赤い頭巾の魔砲狼

リプレイ

●サメ! 降らずにはいられない!
 サメたちが竜巻を登る! サメたちが空から降ってくる! 静寂の青、フェデリア島! そこは今、サメの嵐に見舞われていた!
「うわー、ほんとにサメが降ってますねー……」
 『マリンエクスプローラー』マリナ(p3p003552)が、手をかざしつつ空と海を見た。
「この間は俺の領地にも降ってきたよ」
 『新たな可能性』イズマ・トーティス(p3p009471)がしみじみと言った。本当に領地にサメは降るのである。
「でも、このサメ博士って奴の仕業ではないんだよな、領地のサメ……なんなんだ……何でサメが降るんだ……?」
 イズマが頭を抱える。それは今のところ誰にもわからない。
「竜巻とサメ……どっちも脅威だけど、その二つが合わさるなんて。
 シャークレイン、なんて恐ろしい兵器だ」
 『海を越えて』ドゥー・ウーヤー(p3p007913)が、わなわなと肩を震わせながら言う。
「まさかサメトルネードの実物を見る事ができるなんて思わなかったよ。
 アレも童話の産物かと思ってたけど、世界が変わればサメも変わるんだね」
 『赤い頭巾の悪食狼』Я・E・D(p3p009532)がそう言うのへ、
「知ってんのかЯ・E・D」
 『煙草のくゆるは』綾志 以蔵(p3p008975)が胡乱気な視線を向けた。
「他にもたくさんあるよ、サメ。知りたい?」
「いや、いい。深そうな沼だ」
 本能的に危機を察知した以蔵が頭を振る。Я・E・Dは「そう?」と無表情に小首をかしげた。多分、見た目狭いけれど底なし沼のような世界が広がっているのだろう。
「まぁ、事態は珍妙だけれど。無料で食材が降ってくると考えれば、こんなにありがたいことは無いね」
 『出張店舗船ステラビアンカII号』の甲板で腕を組むのは『Meteora Barista』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)だ。
「食材……サメ、喰うんですか」
 並ぶ『白夜壱号』の甲板に立っているマリナがそう言うのへ、モカは頷いた。
「すり身はかまぼこ、ヒレはフカヒレ。刺身もいいし、唐揚げに煮つけ、干物もいける。意外と何でもいけるものだよ?」
 種類にもよるのだが、意外とサメと言うものは、人類の食卓に並んでいるらしい。
「食べるか、食べられるか。まさに、自然の摂理、ですのね……」
 うんうん、と頷く『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)。何方かといえば、ノリアは食べられる方だがさておいて。
「皆さん、見えますの? 竜巻の根元、大きなサメと……人が、いますの」
 ノリアが指さす方を見れば、確かに巨大なサメ、厳密に言えば『サメのような狂王種』がいる。その背に乗っているのは、一人の老人であった。相応に年を取っているのだろうが、年の割に元気そうである。
「サメ博士……だね」
 サメ召か……いや、『リインカーネーション』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)が、きり、とサメ博士を見据えた。サメ博士は、イレギュラーズ達に気づいたのだろう、練達製の拡声器を使って、叫び始めた。
「来たな憎きイレギュラーズよ! 貴様らに何度煮え湯を飲まされたか! わしは忘れん!」
「そーなんですか?」
 マリナが尋ねた。
「いや、全く心当たりがない。報告書の類もない。人違いじゃないのか」
 以蔵が肩をすくめる。
「ううん、こう言うこと言いたくないけど、もういいお年だしな……」
 イズマが言うのへ、
「わしゃ健康じゃ!」
 博士が吠える。
「いいか、貴様らに復讐するために、わしはシャークレインを開発した。その過程で、この巨大ザメのヨメとも結婚した! どうだ、なれそめを聞きたいだろう!」
「興味はあるけど、今は忙しいから。いいよ」
 Я・E・Dの言葉に、博士は「ふははははは!」笑った。
「じゃあ今度ディスクに焼いてローレットに送っておくね!」
「うーん、というか、あのヨメ、やっぱり狂王種だよ」
 ブルーノートディスペアーをぱらぱらとめくりながら、ドゥー。
「つまり、サメじゃないのか?」
 モカの言葉に、
「いや、サメだけど、狂王種で、厳密にはサメじゃないけど、サメの狂王種で」
「つまりそれはサメじゃないのか?」
「いや、狂王種のサメで、サメではなく、サメの……だめだ、こんがらがってきた」
 ノートを懐にしまい込み、額に手をやり頭を振るドゥー。
「倒せば解決するよ」
「ならよし!」
 モカはぐっ、と拳を合わせる。
「あの、一応聞きたいんだけど」
 スティアがおずおずと手をあげる。
「なんで、サメを愛してるのに武器に利用するの? 本当に、サメを愛してるならそう言う事しないと思うんだけど……本当に、サメ、愛してるの?」
 サメに一家言あるハーモニアは違うのである。サメ博士はちょっとうろたえた。
「そりゃその……かっこいいし」
「かっこいいからって、傷つけていいの? サメがかわいそうじゃない?」
「それにその、男のロマンというか」
「男の人って、すぐロマンとかいう言葉でごまかす。そのロマンの犠牲になるサメがかわいそうだよ。サメだって、あなたのロマンのために生きてるんじゃないんだよ」
「さめー」
「さめー」
 スティアの意見に同調するように、サメが白夜壱号の近くへと集まってきた。さめー。さめー。サメが称えるように鳴き声を上げる。
「っていうか、サメって鳴いたっけ……?」
 ドゥーが至極当然の疑問の声をあげる。
「今は、静かにしておきましょう……なんだか、このまま言葉で、やっつけられそうなのです……」
 ノリアが言った。
「う、うるさぁい!」
 博士は追い詰められてキレた。
「お、女にはわかんないもん! 男のロマンとか! そういうの! わかんないからしょうがないもん!! お前みたいな嫁が、わしが大切にしてた模型とか勝手に断捨離するんだ!!!」
 ヨメの背中の上で地団駄を踏む博士。普通に言い負けたので、相手を誹謗中傷して精神を落ち着けている。ダメなおじいちゃんだった。さておき、交渉(?)は決裂である。もはや戦いは避けられない!
「さぁこいイレギュラーズ! サメの恐ろしさを思い知れ!!」
 博士がばーって両手を広げる。これは伝統的な戦いの合図である。
「しょうがないね。少しお仕置きしてあげようか」
 スティアが言った。
「よーし、じゃあ出航しますよー!」
 マリナが言った。
「よし、こっちも出航する。遅れるなよ、皆!」
 モカも声をあげ、出航を告げる。かくしてイレギュラーズ達は、サメの嵐の中へと進撃するのであった――。

●サメ博士、浮気を疑われる
 海域に、サメが降り注ぐ! サメは定期的に空から降ってきては、予想外の所に落着していく。そのままイレギュラーズの下へ一目散に突撃し、その鋭い歯による一撃を加えて行った!
 サメ自身の耐久力はないが、その攻撃力だけを見れば、充分イレギュラーズ達にとっても脅威となる。刃物が意思を持って、自律的に攻撃を仕掛けてくるようなものだ。迎撃は出来ても、ふとした隙に生じる傷は多い――。
「さめー!」
 サメが空から降ってくる――Я・E・Dは其方を見るまでもなく、身体から黒いオーラを噴出させた。オーラは大狼のあごの形をとり、飛んできたサメをがじり、と噛みつき、そのまま黒いオーラの中に飲み込む。
 げふ、と、オーラの大狼は、げっぷをするようなしぐさを見せた。
『サメも新鮮ならアンモニア臭がせずに美味しく食べられるからね。
 フカヒレを処理している時間は無いけど、まぁ、問題無いよね』
 味の感想などを述べる。Я・E・Dはじろり、と海面下のサメを見やる。何やら怯えるサメを見て、Я・E・Dは、む、と首をかしげた。
「何故怯えられるのかな。弱肉強食は物語の摂理。こういうのって、普通じゃないの?」
「なんかこのサメ、変だよね、全体的に!」
 イズマが血刀を振るい、サメを切り伏せる。サメはさめー、と悲鳴をあげなら海へとぼちゃん。泣きながらどこかへと帰っていく。
「ああ、逃がしちゃだめだよ! 捕まえて捕まえて! 貴重な食材なんだから!」
 降ってくるサメを次々と蹴り飛ばし、片っ端から船の船倉に放り込んでいくモカ。もう、モカにとっては今日は戦闘ではなく漁の日である。
「さめー!(こ、こいつら! サメを何だと思ってるんだ!)」
「さめさめさめー!(ひとでなし! 訴えてやる!)」
「はっはっは、何を言ってるのか全然わからないなぁ」
 にこやかに笑いながら、モカは片っ端からサメを撃墜していった。
「分からない……なんなんだこの仕事。戦いなのか? 漁なのか?」
 イズマが流石に困惑する。とはいえ、入れ食い状態なのは間違いないので、船には大量のサメが次々と重なっていった。
「見え、ましたの!」
 ノリアが叫ぶ。快進撃を続ける一行は、サメを片っ端から回収しつつついにヨメと博士に対峙していた。
「およめさんは、わたしが、引き付けますの……!」
 ばしゃり、と海へと潜り、ノリアはヨメの眼前へと泳ぎ行く。体格差は目に見えて大きい。まさに、巨大魚肉われる小魚のごとし。だが、その小魚は、ただで食われることなどない……おそらくは、目の前のサメ等よりももっと強い存在であるのだ!
「さぁ、およめさん! こっちですの……!」
 ゆらり、と揺れるノリアに、ヨメは狙いを定め泳いでいく――一方、ヨメに追従しようとする博士の前に、イレギュラーズ達が立ちはだかる!
「さぁ、博士さん! あなたの悪事もここまでだよ!」
 スティアが叫ぶのへ、博士が応じる。
「くっ……おぬし、ひとかどのサメ使いと見受けた! なぜわしの邪魔をする!」
「いや、さっき言ったよね? そもそも、サメを武器に使う方がおかしいんだよ?」
「サメ使いには反論しねーんですね……」
 小声でぼそりと呟くマリナ。スティアは、こほんと咳払い。何にしても、博士とスティアの間で、激しい攻防が始まる。博士は直接戦闘能力にたけている方ではなかったが、それでも相応の攻撃力は持ち合わせていた。
「さぁて、そろそろはじめましょーかね?」
 一方、なんか悪い笑みを浮かべるマリナが、白夜壱号をヨメの近くへと移動させる。
「ノリアさん、はじめますよー」
 マリナが手を振るのへ、ノリアはこくり、と頷いた。
「おーい、ヨメさん。こんな所で悠長に戦っていていいんですか?
 あそこにいる耳の尖った女はサメ召喚士と呼ばれるほどサメに詳しい女です……。
 きっと意気投合したら貴女はポイされちゃうかもですね……」
 こそこそと囁くように、マリナは声をかけた! ヨメは驚きのあまり、「よめ!」と鳴き声を上げる。
「さぁ、貴女がやるべき事は……可愛く嫉妬をぶつけるもよし。
 もっとサメらしくワイルドに……まぁやり方はお任せしますよ。ふふ」
 めっちゃ悪い顔でそう囁くマリナ! ヨメは混乱した! 確かに視線を向け見れば、なんか博士は別の女といちゃついている!
「よめー!」
 ヨメは怒った! ヨメは泳いだ! ヨメは博士の方へと向けて、バシャバシャと泳いでいく!
「……わたしにも、恋人が、いますから、誤解だとはいえ、恋人の浮気を見せられてしまう、おヨメさんを思うと、可哀想には、思えますけれど……」
 ノリアは一瞬、寂し気な表情を見せて……途端、真顔に戻った。
「よくかんがえたら、食べられそうになってる、わたしのほうが、可哀想ですの!」
 ごもっともである。
 一方、博士とスティアのデート(語弊)の会場に乱入したヨメ! 歯をカチカチとならし、博士へと詰め寄る!
「よめ、よめよめ、よめー!(あなた、なによそのおんな!!)」
「なんじゃ、ヨメ! サメ愛好家同士の会話に入ってくるでない!」
 博士が叫ぶ。
「あの、私べつにサメ愛好家ってわけじゃ」
 スティアの意見は黙殺された。
「よめ、よめよめよめよめ、よめよめー!(ひどい! わたしを放っておいて! その女と遊んでるなんて! 一生愛してくれるって言ったのは嘘だったの!?)」
「嘘じゃない! 嘘じゃないよ!? でも趣味の時間とか一人の時間とかほしいって言ったじゃん!」
「よめよめ、よめー!(そんなのいいわけよ! 私を大切にしてくれないんだわ! うわあああん!)」
 ヨメは泣きながら、博士を追いかけ始める! 博士は困惑した様子で、海を泳ぎまわった!
「……どうする?」
 ドゥーはぼんやりと、そう言った。胸元にしまったブルーノートディスペアー。その重さが思い出させるのは、かつて『絶望の青』で戦った記憶。激闘だった。失ったものもあった。その果てに、得たものは、この景色か。それでよかったのか。よくわからない。まぁ、平和な光景といえなくもないので、良かったのだ。ドゥーは自分にそう言い聞かせた。
「んー……」
 以蔵は面倒くさそうに唸ると、ふと、『この嵐の中でも消えぬタバコ』の先を向けた。ゆらりと立ち昇る紫煙が、突如勢いを増して、弾丸のごとく宙を飛んだ。それは、逃げ回る博士の懐を、正確に打ち抜く。ばき、という音がして、何か小さな、スピーカーのようなものが砕けて落ちた。
「あっ、サメ誘引装置が……」
 博士が呟いた。
「誘引装置。なるほど、それでサメを呼び寄せていたのか……」
 ドゥーが納得する。いや、いくらなんでもそれだけで、こんな変な事が起きるだろうか? 一瞬疑問に思ったが、とりあえず納得することにした。
「じゃ、もう憂いはないな」
 以蔵が言った。
「あとはまとめて撃って終わりにするか」
「じゃあ、わたしにまかせて」
 Я・E・Dが言った。よいしょ、と手をかざすと、そこから破壊的な魔力の奔流が巻き起こり、博士とヨメ、その両方をまとめて飲み込んだ。刹那の後。魔力は爆発し、海上で大爆炎をあげる。博士とヨメが、昔のギャグマンガみたいにフッ飛ばされて、数秒の空中遊泳の後に、海面へと叩きつけられた。
「貴方の敗因は頭が六つあるサメとかを連れて来なかった事だよ」
 二人はひっくり返って海面にぷかぷか浮かんでいる。
 ――戦いは終わった。
「おっ、もう終わりか。結構獲れたなぁ」
 モカは凄く満足そうに、船倉いっぱいのサメを眺めていた。

●襲名・二代目サメ博士
 さて、気絶したヨメと博士を引っ張って、フェデリア島へと帰還する。そこには海洋の海上警備船が、ヨメと博士を連行すべく待機していた。
「いやぁ、大量大量。さっそく処理しなくちゃ」
 上機嫌でサメの処理を行うモカ。しばらくは、店で出すものには困るまい。
「お、皮がいらないなら譲ってくれ。あれはおろし器に使えるんだ。ワサビを擦るってんでな。結構な売り上げになるぜ」
 以蔵はそう言って、モカの船へと向かう。
「フェデリア島、サメ料理とか名物になったりしない?」
 Я・E・Dが言う。誘引装置があったとはいえ、まだこの一帯には引き寄せられたサメがいるだろう。漁をすれば結構な数のサメが手に入るかもしれない。
「そうか……新鮮なサメなら食べられるのか……」
 そんな二人の様子を見ながら、イズマがいう。ちなみに、本当に食用のサメは食べられるので、皆さんもぜひいつかの夕食にサメを探してみてください。
「なぁ、博士。あなたの情熱は素晴らしいものだと思う。
 それをもっと別の所に活かせばよかったんじゃないかな。
 例えばこの『静寂の青』でサメ達がもっと暮らしやすくするようにするとか。
 今からでもそういう道に行けないかな」
 ドゥーがそう言うのへ、博士は頭を振った。
「いや……わしは罪を重ね過ぎた。わしの後を継いでくれるものがいれば或いは……」
 そういって、海を見やる。そこで、彼は見た。
「シャークレイン……なんて」
 穏やかに笑う、スティアの姿を。そして、スティアが優しく振り上げるその手に従い、サメたちが楽しそうに、飛び跳ね、海面へと着水する姿を。
 それは、ある種の理想的な光景だった。博士がいつか夢見た、人とサメの共生の姿だった。
「ああ、スティア君」
「はい?」
 博士の言葉に、スティアが小首をかしげる。博士は意を決するように、言った。
「君に……サメ博士の称号を譲ろうと思う」
「いえ、いらないです」
 スティアは真顔で答えたが、
「そうかそうか、引き継いでくれるか!」
 元サメ博士は人の話を聞かないタイプだった。
「あの」
「どうか、これからも頑張ってくれ、スティア君……いや、二代目サメ博士! いつか、人類と鮫が手を取り合い、共に暮らすその時まで! 頼んだぞ! 頼んだぞぉぉぉぉぉぉ!!」
 元サメ博士は、ヨメと一緒に海洋の海上警備船へと連れられて行く。「あの」とスティアが思わず手をあげるが、元サメ博士は元気よく手を振り返すだけだった。
「えーと」
 スティアが死んだ魚みたいな目で、仲間達へと視線を送る。皆一斉に視線をそらした。巻き込まれるのは嫌だった。
「……おめでとうございます、二代目サメ博士……ですの」
 それでもどうにかこうにか、ノリアが気まずそうにそう言うので、
「ががーん」
 スティアは放心したようにそう呟いた。
 海では、新たなるサメ博士の誕生を祝うように、残ったサメたちが「さめー」と鳴きながら、海上を飛び跳ねていた。
 バシャバシャと波しぶきが上がり、サメたちがアーチを描く。陽光に照らされたスティアとサメたちは、いつまでもいつまでも、そこに佇んでいた。
 めでたしめでたし。

「いや、めでたしめでたしじゃねーんですが」
 マリナが言った。
 誰も何も言い返せなかった。

成否

成功

MVP

Я・E・D(p3p009532)
赤い頭巾の魔砲狼

状態異常

なし

あとがき

 さめー! さめさめさめー!
 さめさめ、さめー? さめさめー! さめ!
 さめさめさめさめ、さめさめさめさめさめー! さめー!

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