PandoraPartyProject

シナリオ詳細

あなたの欲しいモノ屋さん

完了

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オープニング

□ ここではないどこか

 からんころんと、後ろでベルの音が鳴った。キィという音を立てて木製の扉が閉まる。
 店に入ったあなたの前には、大きな鏡と、小さな机。それと、卓上にはメモが一筆。
 メモを手に取れば、滑らかな紙面には青みがかったインクでこう書いてある。

『あなたの欲しいモノをお売りします。
 お代は言い値で構いません。代金はお金でなくとも大丈夫です。当店のお代はあなたのお心。鏡の中に投げ入れていただければ、お支払い完了となります。
 もし万が一商品が気に入っていただけなければ、購入の必要はございません。後ろのドアからお帰りください。
 あなたに素敵な出会いがありますように』

 どういう意味だろうか、そう考えてメモから顔を上げれば、目に入るのは相変わらず存在感を放つ大きな鏡。
 先ほどと違うのは、その鏡の中に、あなたの一番欲しいモノが閉じ込められているということ。
 例えあなたの欲するモノに形がなくとも、きっとあなたは理解する。これこそが私の望むモノだ!
 手を伸ばせば触れられる距離にある、あなたの1番欲しいモノ。

 ――さて、あなたは手を伸ばしますか?


□ ……なんてね

「という夢だよ」

 曰く、そこは言葉通りの夢世界、世界そのものが夢なのだとという。その夢に出てくる店では、何であっても欲しい物が手に入るらしい。しかも対価はなんと言い値! もちろん、そんな都合の良い話があるはずもない。ただの夢の話だ。

「君たちには、そのお店に行ってきて欲しいんだよね。商品を買うか買わないかとか、対価を何にするとか、そういうのは自由にしてくれていい。とにかく、その夢世界に行ってくれたら、夢を見てくれればそれでいい」

 結局夢なのに、何の意味が? そう思って境界案内人を見つめれば、目の前の人は苦笑して言った。

「現実にも、そんな都合の良い店があったらいいのにね」

 そう言いながら言葉を続けた。

「あくまで夢で得られるのは泡沫に過ぎない。夢から醒めれば失われるものだ」

 そこまで言うと、境界案内人はこう締めくくった。

「ま、気が向いたらよろしく。夢の手枕だって、何もないよりはいいかもしれないよ」

NMコメント

 良いものにはたくさんお金を払いたくなってしまうので、もし言い値で物の価値が決まるなら破産する自信があります。

 はじめまして、ヰヨです。
 初依頼です。頑張りたいと思います。

■ 目的
 不思議なお店の夢を見ること。
 お店では【あなたの一番欲しているモノ】が買えます。他人の私物も生物も形のないモノも買えます。
 夢を見ることが目的なので、買わずに店から出ても大丈夫です。
 お代は言い値、何だってOKです。ポケットに入っていた飴でも、家族の形見でも、はたまた感情でも。

■プレイング
 一番欲しいものを目の前にした時にどういった行動をとるのかを書いてください。
 他にも書きたいことがあれば自由に書いてくださって問題ありません。
 また、商品を買う場合は差し出すお代についての記載もあればありがたいです。
 この世界が夢だということには気付いていても気付いていなくても構いません。
 リプレイでは店を出るまで、もしくは欲しいモノを手に入れる瞬間までを描写します。

サンプルプレイング1
 鏡の中にあるのは、もしかしてこの前無くしたお財布!?
 何でここにあるんだろうね。盗まれた?
 まぁいいや、元々自分のものなんだし、お代なんて飴玉で十分でしょ。
 ……うわ、本当に私の財布だ。やったぁ、臨時収入だー!

サンプルプレイング2
 これは夢か。だって、彼女がここにいるはずがないのだから。
 彼女はもう、死んだのだ。たとえ夢であっても手を伸ばすことなんて許されない。
 それに、俺には彼女に値する対価など持ってはいない。

  • あなたの欲しいモノ屋さん完了
  • NM名ヰヨ
  • 種別ラリー(LN)
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年03月12日 22時10分
  • 章数1章
  • 総採用数3人
  • 参加費50RC

第1章

第1章 第1節

昼子 かぐや(p3p009597)
ガンカタ巫女

「ここがほしいものが手に入る夢のお店かー」

 持ち帰れないなら買ったところで……って、いやいやちょっと待ってね。もしかして、ここでなら美味しいモノ食べても太らないんじゃない!? そんなことを考えながら、昼子は鏡を覗く。

「……って、そんな甘い話はないわよね」

 鏡の中には、幼き日にどこかに落としたはずの髪飾り。月と太陽に見立てたストーンをあしらったそれは、光を吸い込んできらきらと輝いている。

 その髪飾りを失くした時の記憶が、ふと蘇る。忘れたように思えた記憶は……例えそれが良い気分にならないものだったとしても……決して無くなったわけじゃない。

 ――うん。覚えてるよお婆ちゃん。昼子の巫女には大事な氏子さん達を守る大切な役目があるんだよね。

 過去の忘れ物の懐かしさに目を閉じて、昼子は今は亡き祖母に想いを馳せる。
 この夢が水面に映る月のように儚いものだったとしても、いつかの思い出まで無くなるわけじゃない。
 うちは元気だよ、と伝えたかった想いだって、きっと。

成否

成功


第1章 第2節

寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900)
秋縛

  実のところ、鏡を見るまでもなく、冬宮には、そこに閉じ込められているモノの正体が分かっていた。
 しーちゃんこと、秋宮史之。
 冬宮にとって、最初で最後の恋人、たった一人の愛しい人である。


 ――しーちゃんと初めて会ったのは彼がむっつ、僕がみっつの時だ。当然、まだ僕には物心なんてついてなかったけれど、なんでだろうね、彼のことは覚えてるんだ。たぶん、僕の自我はそこから始まったんだよ。
 彼への想いは、それまでの感情がすべて仮初だったと言っても過言ではないほどの強い感情だった。そう、生きていることが不思議なくらいの。

 ……色々あったけれど、僕はどうにかして生き永らえて、そしたら不思議と夢は叶って、君の伴侶になれた。

「もっとそばにきて、そんな冷たい鏡の中じゃなくて」

 婚約指輪を嵌めた左手で鏡に触れる。何とも言えない冷たい感触に身震いするけれど、構わずに奥へと手を伸ばす。
 お代なんかいらないの。もう君は僕のものなんだから。
 やっと触れられた、僕のしーちゃん。もう離さないから、早くこっちに来てよ。



 ここがどこか、なんてのは重要なことではなかった。秋宮にとって大切なのは、目の前の鏡に映るのが、我が崇敬する海洋の女王陛下だというコトだった。
 フラフラと引き寄せられるように鏡に近づけば、突然フと女王陛下の姿がかき消える。
 驚く間もなく、鏡の中に現れた別の人物に、ぽつりと言葉が漏れた。

「もうちょっと成長したって良いんだよ、十七なんだからさあカンちゃん」

 まだ幼さを残した冬宮を前に、秋宮は微かにため息をついた。


 ――初めて見たときから彼女が欲しかった。それは、ずっと心の奥底で熾火のようにくすぶっていた初恋だった。
 何度諦めようとしても、チリチリと心の奥底で燃え続けるこの想いを消すことなどできなくて。

 時は過ぎ、俺もおまえもこの混沌に呼ばれ、しがらみは焼き切れた。
 もう俺とおまえを縛るものなど何もない。だから、今度こそ共に歩いていくと決めたのだ。

「対価に、俺の魂を捧げよう」

 そう言えば、俺自身が鏡に引き摺り込まれるような感覚がした。
 怖くはなかった。そこに彼女がいると分かっていたから。
 彼女が凍える前に、早く迎えに行ってあげないと。
 これから先、何度同じことが起きたとしても、俺は何度でも魂を捧げるし、何度でもそう思うだろう。
 俺にできるのは、おまえを愛し守ることくらいなのだから。

成否

成功


第1章 第3節


「……うんうん。なかなかいいじゃないか」

 扉が開いたわけではない。ただ、まるで最初からそこに存在したかのように、その青年は店の中にいた。
 彼は自身が不在の間に店で起こった出来事を確認すると、満足そうに呟く。

「そうだなぁ、次は初心に戻って、僕も店に出ようかな」

 入り口にcloseの札をぶら下げれば――扉の外など存在しないが、それでもその行為はそれ以外の何ものでもない――店はどこからも感知されない、どこかへと消えていく。

 それではまたいつか、会いましょう。

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