PandoraPartyProject

シナリオ詳細

因果は廻る糸車

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●過日の咎
「まさか、まさかそんな……」
 男の手には見覚えのある栗毛色の髪とその髪によく似合うリボン。――間違いない。愛娘エリーシアのものだ。
 その場に崩折れ、一緒に同梱してあったカードを見る。
「ああ、ああ、ああ……」
 そのカードに記されているマークは、昔自分が副首領をしていた盗賊団のものに他ならない。
「とうとう、見つかってしまったのか……」
 男は十と余年前に悪逆を尽くし、暴虐の限りを思うままにしていた盗賊団の副首領であった。娘が生まれたことにより、自分のあり方に疑問を覚え、少しの戦利品とともに行方をくらましたのだ。
 転々と居場所を変え、追っ手を撒き、やっとのことで安息の地を得たのが数年前。その過酷な逃走劇で妻には先立たれた。だからこそ娘は自分が守ると誓ったのだ。
 ほそぼそながらもこの幻想(レガト・イルシオン)で飲食店を経営し、娘はその店の看板娘として幸せな生活が続くと思っていた。しかし過去の亡霊は今なお諦めずに自分を追いかけてきていたのだ。
「くそっ、くそっ」
 もし自分が過去に犯罪者であったことが、世間に明るみになればこの自分と娘の小さな城であるこの店は続けることはできないだろう。そして何も知らない娘が自分の過去を知ったら……いや、もう知ってしまっただろう。絶望に目の前が真っ暗になる。
 それでも、娘だけは助けなければならない。国の警備団にはとてもではないが頼むことはできない。それも見越して、彼らはこのタイミングをまって、自分に絶望を与えるために愛娘を浚ったのであろう。
 ギリギリと歯噛みをする。栗毛色の髪を握りしめた手は強く握りすぎたのか自らの爪が刺さりぽたりぽたりと鮮血が滴り落ちる。
――カラン、カラン。
 店のベルがなる音にビクリと身体を揺らした。
「おやっさん、軽いもの一ついいかな?」
 振り向けば馴染みの客の黒いパーカーの男が声をかけてくる。
「……ただ事ではない、ってかんじだね?」
 男はローレットの情報屋。『黒猫』のショウ。ショウ・ブラックキャット(p3n000005)だ。敏感に尋常ではない空気を感じ取ると訝しげに目を細める。
「……あいつらが、来たんだ」
 震える声で男が呟けば、なるほどとショウは返す。ショウはこの飲食店の主人の正体を知る数少ない人物である。
「そういえば、アクセル盗賊団がこのあたりに来たって情報は聞いたことがあるな。すまない。あんたにまずはそれは話すべきだったよ」
「助けてくれ! 『黒猫』! 礼ならはずむ。頼む! たった一人の娘なんだ!」
 男はショウにすがりつくようにして懇願した。
「俺はね、エリーシアの作るラザニアが好きなんだ。安心しなよ、おやっさん。俺にツテがあるよ。エリーシアのことはまかせてくれ。……でもさ、もう、隠し続けるってのは限界なのかもしれないな」
 


「やあ、その髪飾り、随分素早さが上がりそうだね」
 貴方達が酒場にいるところに、情報屋『黒猫』のショウ。がいつもの軽薄そうな声で話しかける。
「仕事の斡旋だよ。タチの悪い盗賊団に『白銀亭』の娘さんが浚われたんだ。助けにいってもらいたい」
 その声に反して内容は深刻で時間の猶予も無いものだ。貴方達の中にもその店の名前を知っている者はいるかもしれない。小さいがアットホームで優しい味が評判の飲食店だ。
「ちょっとワケアリでね。警邏隊に頼むのはできない仕事でね」
 貴方達は無言で続きを促す。
「最近、他所からアクセル盗賊団っていう質の悪い盗賊団が幻想に来ているみたいなんだ。……で、誘拐が起きたってところ」
 小さな飲食店の娘を浚ってもそれほどの金になるわけでもないの何故かと疑問を投げかける。それこそ商人の娘を浚うほうが実入りがいいだろう。
「ちょっとね……現場に行けば、嫌でもわかるさ」
 
 ショウは言いよどむと説明を続ける。
「このアクセル盗賊団は本隊っていうより末端だね。幻想にも手を伸ばそうって魂胆なんだろうけど。そいつらが最近メフ・メフィートの街道沿いにアジトを構えたのさ。まあ、娘さんは十中八九そこに連れて行かれてるだろうね。まあ末端のチンピラ程度の盗賊が10人程度徒党を組んでいる」
 懐からショウは地図をだすと王都に向かう街道をなぞった。
「情報確度はA。信頼してくれて構わないよ」
 それはそのはずだ。おやっさんと別れた後彼は裏付けをとるために、奔走している。
「頭目の名前はバルザック。斧を得物にしたバーサーカーだが、それなりに頭はキレる。部下は有象無象だけどね。短剣や弓なんかで攻撃してくると思うよ。まあどっちにしろ近いうちにもっととんでもない被害は起こすだろうから、壊滅させて娘さんを助けてきてよ」
 はぁ。とため息をついたショウは「事実ってのは往々にして残酷で因果応報ってのはどこにでも転がってる。それでもさ、少しくらいは救われてもいいじゃないか。娘さんのケアも頼むよ」と呟いた。

GMコメント

鉄瓶ぬめぬめです。今回は浚われた、元盗賊団の飲食店のおやっさんの娘さんを助けてあげてください。
 因果応報はいつだって巡り巡って返ってくるものです。だとしても優しい結末があればいいと思います。
 できればで構いませんので親子のフォローもしていただけると嬉しく思います。
 警邏隊におやっさんの正体を知られれば捕縛されることにはなります。真実を知った皆様がどうするかはおまかせいたします。

・成功条件
 エリーシアの救出。
 (できれば)盗賊団の壊滅。
 
 
・白銀亭のおやっさん
 元アクセル盗賊団の副首領でしたが、娘と離脱しています。正体を隠し飲食店を経営していました。
 昔のことは幼かった娘には伝えていませんが、盗賊団に正体は明かされているでしょう。
 強面ですが人のいいおやっさんです。過去のことはそれなり以上に後悔しています。
 また、白銀亭についてはもともと知っていたり、常連でおやっさんと顔見知りでも娘さんと知り合いでも構いません。
 (ですが正体を知るものはすくないので、知らなかったことになります)
 娘を溺愛していますが、助かっても自分の正体についてギクシャクするであろうことは分かっているので戸惑いはあります。

・白銀亭の看板娘 エリーシア
 14歳のおやっさんの娘です。おやっさんの過去は知りませんが、浚われ事情は明かされております。
 初めて知る事実に動揺しています。
 とても美味しいラザニアをつくるのが得意です。


・ロケーション
 王都に向かう街道沿いの森にアジトを作っています。軽く探索すればすぐに誰かを引きずったような形跡は見つかります。
 昼間、天気は晴れ。少々肌寒いです。
 戦闘場所はアジトの中(室内)かその前の広場になります。
 アジトの建物は裏口と正面口があります。エリーシアはアジトの奥でバルザックと共にいます。
 動けないように縛られていますが、怯えているのでたとえ縛られてはいなくても動けないでしょう。

・敵さん
 リーダー バルザック
 斧を手にしたバーサーカーです。力任せの攻撃をしてきますが、それなりに統率力はあり頭もキレます。
 危機と分かればエリーシアを人質にする可能性はあります。

 部下 有象無象の9人
 ナイフや弓などで戦います。そこまでは強くないです。

  • 因果は廻る糸車完了
  • GM名鉄瓶ぬめぬめ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年01月19日 21時20分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (8人)

ルルクリィ(p3p000001)
断罪の竜精
鏡・胡蝶(p3p000010)
夢幻泡影
エマ(p3p000257)
こそどろ
エリア・アトラス・サンシール(p3p000413)
真宵の魔導師
ナナルカ=アル=ヨルトール(p3p001202)
わがまま竜姫
フィオナ=バイエルン(p3p001239)
牛柄ガーディアン
美面・水城(p3p002313)
イージス
桜坂 結乃(p3p004256)
ふんわりラプンツェル

リプレイ


「おやっさんの様子かい? もちろん娘さんを助けたい一心だよ。あの二人は俺の知る限りではとても仲のいい親子でさ。本当に、過去を知られたくなかったんだろうね。そりゃそうさ、知らないなら知らないままでいい。だけどそうもいかなかった。それが今回の顛末だよ」
『わがまま竜姫』ナナルカ=アル=ヨルトール(p3p001202)は自分の問いに、感情を隠すようにフードを深く被ったショウのことを思い出す。
(過去を悔いておるなら責めはせぬ)
 『牛柄ガーディアン』フィオナ=バイエルン(p3p001239)の人助けセンサーによって、以外なほど早くアジトは見つかった。
 アジト近隣の茂みに潜み、タイミングを見計らう、ナナルカは、先遣隊として向かったイレギュラーたちをみつめる。握りしめる拳は固く握られていた。
「大丈夫です。彼女らはうまくやってくれるはずです」
 『真宵の魔導師』エリア・アトラス・サンシール(p3p000413)は自分にも言い聞かせるようにそう言うと、油断なくレイピアを鞘から抜き放ち、準備を整える。
 その様子を見ながら桜坂 結乃(p3p004256) は、ヒトガタの『少女』は思う。
(ボクに何ができるんだろう。自分の体が動いたり、誰かと話ができるなんて。この世界に来るまで想像もしてなかった。――ボクは人形だったから)
 初めて見る世界、初めて感じる感覚、結乃とって世界は初めてだらけだ。だけど、わかることはある。
「悪いことをするヒトには、相応の報いを受けてもらわなきゃ」
 あの人のように世界は優しいと信じたいから。

「盗賊団覚悟!我らが討伐隊が相手だ!」
 
 待機する仲間に目配せを送り、準備が整ったことを確認すると、『海洋の魔道騎士』美面・水城(p3p002313)は扉を開け放ち盗賊に向かって叫び声をあげる。騎士然とした凛々しいその姿は物語の主人公のようだ。

 「なんだなんだ? おいおいお嬢ちゃんがた。おじさんたちは忙しいんだ。ままごとならお家にかえってやんな!」
 頭目と思わしき男が低い声で、嬲るように言い放つ。その背後には茶色の髪をざんばらに切られた少女が震えながら拘束されている。間違いない。こいつがバルザックだと『夢幻泡影』鏡・胡蝶(p3p000010)は思う。
(細かいことはわからないけれど、娘まで誘拐して復讐しようだなんて、盗賊ってのは執念深いのねぇ)
 はふぅ、とため息をつく姿は、とても性的魅力に満ちたものだ。水城の声に振り向いた盗賊たちはそんな彼女を舌なめずりしながら見つめる。
「暇潰しに盗賊団を壊滅させに来たわ。通しなさい」
『断罪の竜精』ルルクリィ(p3p000001)がよく通る声で宣言する。これが敵対する相手でなければ、きっとそのカリスマに押され彼女の思うままに、民衆は動いただろう。残念ながらここは敵地だ。通せといわれて通すようでは、話にならない。
「おいおい、この『討伐隊』のお嬢ちゃんたちは、俺達を討伐しにきたんだってよ!」
 バルザックが煽れば、盗賊たちはどっ、っと下卑た声で笑い出す。
「頭目、このお姉ちゃんたち、俺らが好きにしていいですか? 揃って綺麗どころだ。愉しませてくだせぇよ!」
「ああ、構わん。好きにしろ。だが、その貴族のねーちゃんには気をつけろよ! ただもんじゃねえオーラを感じる!」
「「「あいさー!!」」」
 9人の盗賊たちが、アジトから押し出すように突撃すれば、4人の少女たちは、かかったとばかりに広場まで下がった。
「さて、義を見てせざるは牛肉なり! いえ勇無きなりです!」
 
 一方、『こそどろ』エマ(p3p000257)は裏口に回り込み扉を撫でるように表の様子を伺う。
「うまいこと、引っ張り出せた感じですかねぇ。……悪いことをすれば、やっぱり反って来るものですよね」
 なんて、それが怖くて盗人何てやってられますかっての。鍵のかかった扉を得意の解錠でちょちょいとすれば……ピンっと小さな音を立てて、開く。
 えひひっ、と特徴的な声で小さく笑い、気配を殺しながらそっと中を覗けば、開いたドアの前でバルザックが仁王立ちで背をむけている。外の喧騒を見物しているようだ。
 エマは足音を立てぬように、専門的な足取りで侵入すると『白銀亭』の娘、エリーシアの位置を確認する。
「……っ!」
 エリーシアが助けに来たエマの姿を見て声を上げそうになるのを指先をたて、しーっと合図すれば、涙目で頷き、気丈にも声を押し殺した。
 エマはそんな彼女にたいしてにやりと微笑むと、バルザックに気づかれぬようそっと縄を解く。

「正義のヒーロー!フィオナ=バイエルン! 只今惨状です! いえ!参上です!」
 飛び出してきた盗賊を引き寄せるように、ぷるんと大きな胸を揺らしてフィオナが名乗り口上をあげれば、数人の盗賊が彼女に向かって飛びかかっていく。それをスープレックスで投げ飛ばしていく。キャッチアンドリリース。
「あら、もてもてね。誘惑がお上手」
 金のピアスをいじりながら少しだけ羨ましそうに胡蝶が呟き、組技を至近レンジの盗賊に仕掛ける。
 心なしか盗賊の顔が緩んではいるが、その威力は馬鹿にはならない。まるで悪魔の抱擁だ。
「うわー、来すぎですぅ! 胡蝶さんお分けしますから!」
「ほら、ちゃんと戦こうて!」
 前衛に踏み込み近接距離でスピアで盗賊を串刺しにしながら、水城が悲鳴を上げる。
 
「後ずさるなんて屈辱行為をさせたこと、後悔させてあげるわ」
 まるで何事もないかのような自然な動きで、断罪の竜はナイフを持つ盗賊の胸元に手を触れるルルクリィはあどけなく笑った。
「うわぁ、なんだ!?」
 盗賊の膝ががくりと折れる。触れられただけだというのに奪われる恐怖に目を剥くがもう遅い。己の生命が逆流していく感覚に吐きそうになる。
「てめえ!!」
「後悔させると言ったでしょう?」
 下から睨みつける盗賊を睥睨し、ルルクリィは次の獲物に向かう。羽骨がはためくその姿は、美しき死神だ。恐れ知らずの盗賊がまた彼女に飛びかかっていくが、ナイフが届く直前、横合いからの突撃に目を白黒させた。真白な影が、己を貫いたと感じた直後また別の場所が突かれる感覚。
 ギアをトップに替え、飛び出したエリアの神速の刺突剣が二度盗賊を翻弄する。
「油断は、禁物です」
 少し遅れて、超遠距離からの魔力弾が盗賊に着弾すれば、エリアに串刺しにされた盗賊の体力を削りさり、二度と動かなくなった。
「ふふん、阿呆どもが釣れおったわ」
 小さくてもその竜の魔力は絶大にして破壊的だ。ナナルカの魔術は容赦という言葉からはかけ離れている。

 縄を解かれたエリーシアはエマと共に開け放たれたドアに向かってそっと歩きはじめた。
「なんだと? 伏兵だと!?」
 突然の闖入者の存在をバルザックは認めると、後ろを振り向く。
「やば、えひひ、えひっ……」
 ドアから抜け出す直前のエマはバルザックとばっちり目が合った。そういう魂胆かと、バルザックがエマに向かって歩をすすめる。
「娘さん!……えひっ、ここは大丈夫、逃げてくださいっす!」
 エマはエリーシアの背を押し出して、自分はバルザックに単身向かう。
 こんなの、柄じゃないっていうんですよ。えひひ。ここはいいから先に行けだなんて勇者の役目だっていうのに。
「いい根性してるじゃねぇか、お嬢ちゃん。覚悟はできてるんだろうな」
「お姉さん!」
「いいから! 私には必殺技があるんすよ、えひひっ!」
 逡巡しながらも森に向かって走り出すエリーシアを確認すると、バルザックに向かい
「許してほしい、ってむりっすよね」
「ああ……俺らはな、馬鹿にされるのが嫌いなんだよ」
 エマに向かって斧が振り下ろされるその刹那、ミスティックロアによって練り上げられた神秘の光弾が青い軌跡を曳きながらバルザックに着弾する。
 それは裏口を注視していた結乃の紡ぎあげた勇気の証。着弾箇所からはバルザックの血液が吹き出している。
ギラギラとした憎しみの目が結乃を射抜いた。こわい、こわい。血が、でてる。血がでるって怖い。傷つくってこわい。人形のころにはなかった。あの人は傷ついた。だから痛い。だから怒ったのだろう。怖い。痛いっていう感覚は、怖い……!
 それでも、仲間が傷つくのはもっと怖かった。だから……!
 もう一度、術を練り上げ、杖を構える。足がすくむ。またボクは傷つけることになる。
「サンキューです!」
 体勢を整えたエマはナイフでバルザックを斬りつけるが、防具に阻まれ、決定的なダメージを与えることはできない。それでも彼女は斬りつける。
「邪魔だ!」
 力任せの一閃がエマの胴体を薙げば、その勢いで裏口から吹き飛ばされ背後の木々で背中をしたたかに打ち付けられた。
「エマ!!」
 結乃が悲鳴をあげて、攻撃のための魔術を回復に切り替え、倒れたエマに走り寄る。
 かちり、と何かが切り替わる音がする。
 ――パンドラ。それはあらゆる災禍を詰めた函。だが、その奥底には希望もまた詰め込まれている函だ。
 駆け寄る結乃の手を掴んだエマは、立ち上がると踵を返して走る。
「娘さんは逃げましたよ、なら三十六計逃げるにしかずです!」

 表側の戦闘はまだ続く。
 序盤は確かに伏兵での不意打ちで、アドバンテージは取れた。しかし、イレギュラーズ側の足並みのタイミングは各々で注視すべき場所が分散していたこともあり、数の不利はじわじわと彼女らを締め上げていく。 
 もちろん数人は屠ることができたが、じわりじわりと体力を削られ、回復手段のないまま9対6という数の差はイレギュラーズに対して不利に働いた。
 まずは最初にフィオナが集中攻撃をうけ倒れた。多数に対しての方針が全体で共有されていなかったこともあり、散発的になった攻撃は効果的にははたらかない状況が続く。
 遠距離で攻撃する高火力のナナルカが次に狙われ、戦闘不能になる。
「殲滅は少々厄介になってきましたね」
 残りの盗賊は4人。対してイレギュラーズも4人。
「ったく、随分とおいたの激しいお嬢ちゃんたちだぜ! 小娘には逃げられた、あと盗賊の小娘、倒したと思ったら起き上がって逃げやがった。妙な技をつかうみたいだぜ」
 そこに頭目が手負いとはいえ現れたのだ。
「そう、ならばここが分水嶺やね」
 水城がため息をつく。任務は達成したのだ。殲滅に固執しすぎる必要はない。
「ええ、撤退……ですね」
 エリアが、冷静に状況を判断し、退路を探る。
「……そう、わかったわ」
「もう少しだけ誘惑したかったのだけど……」
 ルルクリィと胡蝶も頷き、戦闘不能の二人を抱え、目配せをして四方に駆け出した。
 


●明日のために
 ローレット前で落ち合ったイレギュラーズたちは、ギルドのテーブルにつき、エリーシアと向かい合っていた。
「たすけてくれてありがとうございます。父さんが、盗賊の副首領だなんて……」
 出された飲み物に手をつけることもなくエリーシアはうつむいている。
 傷だらけのエマは現役で盗賊の自分から何をいわれても説得力がないと思い、口を挟まない。
 だが、カップに残った果実のジュースを吸い上げながら思う。
(足を洗えたおじさんは、ちょっと羨ましく思いますがね、えひひっ)
 ふと、エリーシアは頬を綺麗な手に撫でられ、そちらを向けば胡蝶が優しい微笑みでとつとつと語り始めた。
「過去は過去だし、現在は現在。貴女の目に映る、貴女が信じているお父さんを選べばいいんじゃないかしら」
 まるで、自分にも言い聞かせるように。過去の思いは自らを苛む。父親だってきっとそうだったのだろうと。
 だから新しい、今の父親を見ればいい。そこに答えはあるでしょうと、艶やかに微笑む胡蝶は、何故か絵リーシアには悲しそうに見えた。
「すぐには整理出来ないでしょうが、貴女が悔いの無いよう話あって見たらどうでしょう」
 左右で違う色合いを見せる瞳が、まっすぐにエリーシアをみつめる。真摯なその眼差しの説得力は強い。
「あと駆けつけるのが遅くなってすみません。貴方のお父さんはとても心配していたようですよ。きっとよいお父さんなのでしょうね」と締めた。
「確かに親父さんは悪い事をしとったかもしれんけどな? 君の知っとる親父さんは違ったやろ? 優しかったやろ? その事実は変わらんのよ」
 騎士のような鎧をきたままの水城は語りかける。「はい、はい、お父さんは優しいです」と頷くエリーシアに「なら、大丈夫やん」と微笑み、頭を撫でる。
「怖いのにようがんばったね」
「知っておるか? おまえの父君はこのローレットに依頼をしたとき、必死だったそうじゃよ。副首領ともあろうものが、じゃ。おまえは本当に愛されているようじゃな。エリーシア」
 小さな竜が胸をはり、にやりと笑う。お前の心はきまっているのじゃろう? とでも言うように。
「ねぇ、娘。あなたも父の話を聞いたのよね」
 骨翼の姫が問いかける。
「はい、あの、怖い人から」
「……そう、なら話が早いわ」
 屈辱的な目に合わされた、あの顔を思い出すと苛つくが飲み込んで続ける。
「人は罪を犯すもの。だから私が罰をと思っていたのだけれど……残念、私の出番はなかったの」
 物騒な言葉にエリーシアが息を飲む。
「あなたの父が受けるべき罰は平穏。その中で罪を背負って生きていくこと。因果は廻れど、あなたに罪はない。過去は過去、あなた達人間が紡げる糸は現在と未来だけなのよ」
 詩を諳んじるようなその声がエリーシアの胸に響く。
 正直なところ、結乃はなにをエリーシアに伝えればいいのかわからなかった。だけれども。
 不器用なことばでポツポツと紡ぐそれは、本心。
「ボクのね。大事なヒトはもう生きてないんだ。貴女とお父さんは生きてる・ならば、沢山話をしようよ。まずはそこからだよ」
 死んじゃったら、何もできないから。小さな韜晦の声はエリーシアに届いただろうか。
 ぽろぽろとエリーシアが涙をこぼす。14歳の少女には受け止め切れない過去だろう。だが、自分の知っている父親は、強面のくせに小心で優しい、そんな男だ。
「はい、話してみます。いっぱい、お話します。みなさん、ありがとうございました」
 そういって上げた顔は泣きながらも笑顔であることに、イレギュラーズは微笑んだ。

成否

成功

MVP

エマ(p3p000257)
こそどろ

状態異常

フィオナ=バイエルン(p3p001239) [重傷]
牛柄ガーディアン

あとがき

盗賊団の壊滅は叶いませんでしたが無事任務完了です。
エリーシアはみなさんの優しい思いでひとつ前にススメました。
ギクシャクしたものの、お父さんとは和解しました。ですが、盗賊団が残る以上、彼らはまた流浪の旅にでかけることになりましたが、きっとその未来は明るいものだと思います。
イレギュラーズのみなさまありがとうございました。

危険を顧みず、パンドラを使ってでも無事娘さんを救ってくれた勇気をたたえてあなたにMVPを!

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