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シナリオ詳細

憧れと役割

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●分かっているからこそ
 ずっと夢に見ている。ずっと憧れている。
 とてもキラキラしたもの。とてもフワフワしたもの。
 ……とてもピカピカしていて、美しいもの。
 ワタシがお姫様の特別だって言うなら、持ってきて着せて欲しい。
 外ツ国のお姫様はみんな着ているなら、ワタシも着れるはず。
 外ツ国のお姫様はみんな着て集まれるなら、ワタシもできるはず。
「どれす、着てみたい! 持ってきてちょうだい!!」
「申し訳ありません」
 ……なのに、なんで。そんなことを言われなくちゃいけないの?
 …………なのに、なんで。そんな悲しい顔をされないといけないの?
 それさえ着れればもう、あの子と一緒にお嫁に行きたくないなんて言わないのに。
 お役目をちゃんと、果たすのに。
 ……どうしてワタシは、どれすが着れないの?

●憧れは遠く
 混沌と境界を結ぶ図書館で、長い金髪の女の子がやや高い位置にある本を取ろうと奮闘していた。
 あなたたちのうち、一人がすっと手を差し伸ばして取ってあげれば、たちまちその顔は明るくなるだろう。
「わ、ありがとう!」
 金髪の女の子、ラプンツェルは取って貰った本を膝に置くと、器用に車椅子を半回転させて机に向かう。
 それからわざとらしい咳払いをして、机の本を頭上に掲げる。いつもの光景だ。
「ええっと、今日お願いするのは衣装人形っていうお人形さんの話」
 掲げていた本を机に戻すと、取って貰った本をペラペラと捲る。辞書だったようだ。
 今回の世界は子どもが生まれると、人形師に人形を作って貰う風習がある。
 人形の役割は持ち主の厄を肩代わりし、生涯の幸福を願うもの。
 そんな世界なので、人形にも意識と自我があり持ち主の人間はもとより、世界中の人形とテレパシーで交流できるのだ。
 そして今回、依頼をしてきたのはお姫様の侍女人形だ。
 彼女が仕えるお姫様の人形は豊穣に似た国で暮らしていて外国に強い憧れがあるのだ。
「特にわたしが着てるみたいなヒラヒラしたドレスが憧れで着てみたいんだって。そしたらワガママは言わない約束をしてくれたんだ」
 国は今、鎖国をしていて外国の物は手に入らない。
 しかも持ち主のお姫様はもうすぐ結婚するからついて行かねばならない。
「あ、ドレスのサイズはなんでも良いんだって。サイズ調整は向こうの神官さんが法力でやれるんだそう」

NMコメント

ごきげんよう、桜蝶京嵐です。
桃の節句が近いのでそれっぽい話を持ってきました

●世界観
子どもが生まれると、厄除けの人形を持たせる世界です。
舞台は豊穣っぽい和風の国で、ドレスとかロリータに憧れる衣装人形さんの話です。

●目標
ロリータとかドレスを持ってきて衣装人形さんにプレゼントします

それでは、よろしくお願いいたします。

  • 憧れと役割完了
  • NM名桜蝶 京嵐
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年03月05日 22時15分
  • 参加人数4/4人
  • 相談3日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ノリア・ソーリア(p3p000062)
半透明の人魚
ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)
月夜の蒼
フラン・ヴィラネル(p3p006816)
ノームの愛娘
雨紅(p3p008287)
ウシャスの呪い

リプレイ


 豪華な宮殿の中を歩き、これまた豪華な部屋に通された『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)、
『緑の治癒士』フラン・ヴィラネル(p3p006816)。
 その後ろ、『月夜の蒼』ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)がラプンツェルを車椅子から降ろして座椅子に座らせる。
 『刑天(シンティエン)』雨紅(p3p008287)が残った車椅子を庭の隅に置かせて貰う。
 フランとノリアもそれぞれ、三人から預かっていた荷物を部屋の隅に置いて座椅子へ腰掛ける。
 全員が落ち着いたことを確認した侍女たちがゆっくりと帳をあげていく。
 そこには華美な寝殿があり、美しい着物に似た民族衣装を着た姫様と人形が座っていた。
 そこを降りた両脇には侍女と侍女人形が控える。
「初めまして、皆様。本日は私の人形、紫代が為にありがとう存じます。私が持ち主の彩芽と申します」
 改めてよろしくお願いいたします、と彩芽姫と人形、紫代が頭を下げる。それが合図だったように背後と横の襖が静かに閉められた。
 人形とはいえ、乙女の着替えを誰それと見せるわけにはいかないのだ。

 一番手を名乗り出たのはフラン、彩芽姫の手によって着物も髪もとかれた紫代の後ろに座る。
「おめかししたい、かぁ……。憧れてるものを諦めたくないよね、うんうん」
 あたしも森の中で、都会のケーキ屋さんとか海とか色んなものに憧れてたんだぁと、笑って小さくして貰ったドレスを着せて行く。
 フランが持ってきたドレスは故郷の祭りで着用するもの。
 淡い緑色に、蔦や葉っぱの刺繍。その上にたくさんの花を飾ったものだ。
「この緑は草木から染めて、花は秘術で保存した本物なんだよ!」
 刺繍は母親が子供の成長を祈って縫うのだと教えて自らも同じものを着て、同じ髪型にして花を差し込めばお揃いと笑いかける。
『ありがとう、貴女の故郷はとっても素敵な所なのね。気に入ったわ』
 そう紫代も笑い返して、二人でこの国に最近発明されて販売されたばかりだと言う写真機で白黒写真を撮った。


 次に名乗り出たのは、雨紅でゆったり紫代の背後に座る。
「役割は違えど、私も元は誰かのために作られたモノ。……少し親近感はありますね?」
 取り出した服はラシカルロリータ系の白ブラウスで、襟元のボウタイをキツくならないよう結ぶ。その上からブラウンのジャンパースカートを合わせる。
 スカートの中にはもちろん、ふっくらとしたパニエが入っているし、足はタイツだ。
「髪型も服に合わせましょう。巻いたり、ツインテールなどでもいいですし、リボンを付けたりするだけでもとても可愛いんですよ」
 言いながら手が動き、ツインテールに結った髪にラプンツェルが用意していたリボンを付けていく。
 紫代はこの姿も雨紅と一緒に写真を撮ってから頭を下げる。
『どれすってこんなに膨らむ服だったのね。本で見た以上だわ。ありがとう』


 三番手となったルーキスもトランクを開けながら紫代を確認する。
「姫様が結婚するのだってね。ならキミもロリータ調のウエディングドレスを……って言っても伝わるかな、解りやすく言うと結婚式用?」
 言葉が伝わるか不安なルーキスだったものの、彩芽姫が「婚礼衣装ですね」と理解を示してくれたので事なきを得た。
 そんなルーキスが差し出すドレスは、白地に爽やかな水色を差し色にしたレース増し増しの豪華なドレスだった。
 そこに白から水色のグラデーションが美しいグローブを小さな手に嵌める。
「こんな手でも結構器用なんだよ?」
 ふふ、と悪戯に告げながら紫代の長い髪をうなじの辺りで大きな団子にすると、トーク帽をそっと被せて水色のレースヴェールを指と鉤爪の先で器用に整える。
 この衣装もやっぱり、二人で写真を写しておく。
『外ツ国には、ふわふわな婚礼衣装もあるのね。可愛いわ、ありがとう』


 最後のノリア・ソーリアは何となく威厳ある風に胸を張った。
「「ひらひらさせる」に関しては、一家言、ありますの。さあ……ご覧ください。わたしの、自慢のつるんとしたゼラチン質のしっぽを」
 好奇心から触りたそうなラプンツェルを抑えながら、このしっぽをイメージしてドレスを考えたのだとノリアは告げる。
 出したのはウェディングドレス。持ち主の彩芽姫より立派な結婚装束を着せて貰えることはないからと選んだもの。
 パニエでふんわり膨らんだスカートは前方は足首付近、後方は身長同程度まで伸びるフィッシュテールのスタイル。
 白いシルクの下地に透き通るレースを重ねて腰辺りにもシルクの幅広リボンを這わせ、長く尾をひく頭のヴェール。
「下地を、海の底の、砂地だとすると、レースの水のなかを、リボンが、およいでいるようには、見えないでしょうか? ……わたしも、ウェディングドレスを着る時はこういうドレスにしたいと思っていますの」
 おなじドレスを先に着られてしまうのも……とは思うのですけれど、と言いながら紫代の前髪だけを器用に編み込み、貝殻モチーフの髪飾りを添える。
 被せたヴェール越しに見つめあって強気に微笑む。
「だからって、ここで、妥協することは紫代さんの覚悟を、うらぎってしまうことにもなりますから。わたしも、おなじドレスで、しあわせに、なりますので……紫代さんも、おしあわせに」
『もちろん、なるわ。大切などれすを、ありがとう』
 そうして将来、同じドレスを着る二人はしっかりと写真を残した。


『ねえ、最後に皆様とワタシたちで写真をお願い出来ないかしら?』
 紫代が控えめにそう提案すれば、五人はもちろん、と返す。そうと決まればと彩芽姫が侍女に合図をする。
 合図を受けた侍女たちは自分たちの人形を抱えて一度退室すると、次に戻ってきた時には人形の他に大きな桐箪笥を持って来ていた。
「私と紫代からのお礼として、私たちの民族衣装を良ければ貰って欲しいのです」
「こんなキレイなの、五人分も良いの?!」
 ラプンツェルが代表して聞けば、もちろんですと彩芽姫が寛容に頷き、お好きなものをどうぞと促される。
 五人は興味深く民族衣装を手に取り、どれが似合うかと当てながら決めていく。
「えぇコレ着るの? 私が?」
 ルーキスがどこか可愛げのある衣装を当てられ、気恥ずかしそうな声をあげる。
 それに対してノリアが大丈夫、と太鼓判を押す。
「ルーキスさん、髪も、肌も白いから……何色でも合わせられるですの」
「似合わなくても知らないぞ全く」
 その隣ではフランが雨紅を一生懸命にコーディネートしていた。
 今着ている赤はもちろん似合うが、神秘的な黒も似合いそうだと衣装を当てたりして悩む。
「そう真剣にされますと何だか照れますね……」
「雨紅さん美人だからね! すっごい楽しい!」
 そうして四人はそれぞれの分を選び、最後にラプンツェルの分を選んで侍女たちに着方を教えて貰う。
「準備できましたでしょうか?」
 彩芽姫の一声にノリア、フラン、ルーキスが現れ、雨紅もラプンツェルを抱いてやってくる。
 ここが一番キレイなのです、と彩芽姫に案内を受けて大きな桜の木の下で並ぶ。
『今日という軌跡に、感謝を』
 その一言を合図にシャッターが鳴る。
 やや時間がかかったものの、それぞれ現像された写真は、みんな笑顔だった。

 もうすっかり夕闇に包まれた中で、お別れとなった。
「さてこれで多少は心残りも晴れたかな? あまり贅沢を言って困らせちゃだめだぞ?」
 ルーキスがそう紫代に笑いかければ、はい、と可愛い返事が返ってくる。
 続いてフランが紫代の小さな手を取る。
「いろんな服着られて、楽しかった? 楽しかったって思ってもらえてたらいいなぁ。
彩芽姫さんも紫代さんがしょんぼりしてたら悲しいし、笑って結婚をお祝いしてくれると嬉しいと思うよ」
 それに紫代は力強く頷いて背後の彩芽姫を見る。彩芽姫もまた、優しく紫代を見つめていた。
 次にノリアが彩芽姫ごと紫代を抱き締め、彩芽姫がそっと抱き締め返す。
「彩芽さんも、紫代さんも、お元気で。しあわせ……じゃないと困り、ますからね」
 そんなノリアを彩芽姫も紫代も強く抱き締めて最後に雨紅が進み出る。
「……貴女が今こういう話をしたのは役割を果たしたいと思えるくらい彩芽姫様が大切で、でも馴染んだ場所から離れる不安もあって。
そんな自分を奮い立たせる、その為のものだったのでしょう?」
 人の為にと作られたもの同士、通じるものがあったのだろう、雨紅が確信を込めて言えば紫代は静かに頷いた。
 雨紅はその頭を優しく撫でて応援してると告げる。
「さあ、めでたしめでたしのうちに帰ろう!」
 湿った空気を払拭するようにラプンツェルが明るい声で呼び掛けると同時に、帰り道を整える。それを認めて彩芽姫も頷く。
「そうですね。あまり遅くなりますと、アヤカシが出ます。皆様、どうかお気をつけて」
『また会いに来て!』

 こうしてお姫様人形とのおしゃれを楽しむ会は幕を閉じたのだった。

成否

成功

状態異常

なし

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