シナリオ詳細
【夢世界】ライブラリー・ウィザード
オープニング
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巨大な扉をくぐった先に見えるのは壁とも思えるような多くの本棚。そこに納められている本の数は、夢世界における歴史の長さを物語っているようにも感じさせる。ここは《レコード・ライブラリー》と呼ばれ、数々の【夢世界】における記録のすべてがこの場所に保管されている。それこそ、古の時代に起こった最上位夢魔との戦いの記録や封印された最上位夢魔に関する情報も、だ。そんな場所の地下深くにとある少女がいた。
「伝説にも名高いブラック・ドレアムの復活、そして過激化する夢魔との戦い……ここまで来たら手段を選ぶ暇はないかもしれませんね」
少女の名はライブラリアン・ユリ。この夢世界の主であるが彼女は以前、最上位夢魔の中でも最強格といえるブラック・ドレアムを《夢幻牢獄》から復活させてしまったことをかなり後悔しており、これから行うこともその事件が影響しているところがある。
「毒を以て毒を制す。最上位夢魔に対して同じく最上位夢魔をぶつけることができれば戦況も少しは変わるはずです」
そう言って彼女は部屋に入っていった。その部屋にあるのは一冊の本。その本には一体の最上位夢魔が封じ込められていた……
「……封印、解除」
長い詠唱を終え、ユリはついに最上位夢魔の封印を解き終わることに成功した。しかし、ここからが本番である。ユリはこれから最上位夢魔と交渉して自分たちと共に戦うよう協力を頼む必要があるのだ。疲れを感じながらもユリは以前のような油断をみせないようにして姿が現れるのを待ち続ける。
「へぇ、あなたが私の封印を解除したのね」
しばし待ち続けて、ついに最上位夢魔の一体であるウィザード・ドレアムが姿を見せた。
「封印されし偉大なる悪夢よ、私は司書の名を冠し主でございます。貴女にお願いがございます」
ユリは古から伝わる作法に則ってウィザード・ドレアムに交渉を持ち掛ける。すると、彼女は笑って答えた。
「ええ、大体の事情は分かったわ。おおよそ最上位夢魔が動き始めたから私を封印から説いたのでしょう?」
「そうでございます。それで、私たちに協力は……」
「してあげてもいいけど、あなたにその素質があるのかしら?」
事情をすぐに察したウィザード・ドレアムに期待をしかけたユリだったが、素質について聞かれて一瞬の緊張を見せた。
「言っておくけど、私に限らずどんな最上位夢魔でも自分より弱い存在に従うつもりはさらさらないわ。まあ、そんなことぐらい普通に考えればわかるでしょうけど」
そう言ってウィザード・ドレアムは虚空から自分と同じくらいの長さの鎌を出した。同時にユリも懐から本を取り出す。ユリのほうも、戦う準備と覚悟は最初からできていたようだ。
「領域展開! 」
二人のいる部屋の床に魔法陣が現れた。
「これは……相殺領域ね。面白い真似をするわ。かかってきなさい」
悪夢の魔術師と司書は同時に魔法陣を多数展開してそこから魔法を放っていく。こうして一つの夢世界をかけた戦いが始まっていく。
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彼女も無茶をするね……だけど、この交渉がうまくいけば夢世界での戦いもいくらか有利に進むかもしれない。そのために僕からも君たちにも協力をお願いしたい。
というわけで、今回やってもらうことは最上位夢魔の一体ウィザード・ドレアムの撃破だよ。それで可能であれば生かして交渉もしてもらえると、このあともいくらかマシになるかもしれないからお願いね。
では、君たちが無事に帰ってくることを祈るよ。
- 【夢世界】ライブラリー・ウィザード完了
- NM名桃山シュヴァリエ
- 種別ライブノベル
- 難易度-
- 冒険終了日時2021年03月06日 22時05分
- 参加人数4/4人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 4 人
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参加者一覧(4人)
リプレイ
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夢世界《レコード・ライブラリー》にやってきた四人のイレギュラーズたち。これまで脅威であった最上位夢魔を生け捕りにして仲間にするという依頼に、それぞれ張り切っているようだ。
「やばいやつに対抗するためにちょっとやばいやつを味方につけようってことだね」
「いいじゃない!然らば僕たちの力を示すのみ、だよ!」
『柔らかく、そして硬い』ムスティラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)と『数多異世界の冒険者』カイン・レジスト(p3p008357)は強敵との戦いを前に興奮しているようだ。
「最上位夢魔をなんとかする為に、最上位夢魔をなんとかする……考えただけでも目が回りそうだ」
「戦況を変えるために、敵と同等の最上位夢魔を復活させた、と。これは……最終手段なんだろうな」
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)と『新たな可能性』イズマ・トーティス(p3p009471)は状況を分析し、理解しようとしている。こうして各々が準備をした後、最上位夢魔のいる部屋に足を踏み入れる。部屋では最上位夢魔の一体ウィザード・ドレアムと夢世界の主であるライブラリアン・ユリとの魔法の打ち合いがすでに始まっていた。
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イレギュラーズたちとウィザード・ドレアムとの戦い。まず最初に仕掛けたのはカインだ。
「熱砂の嵐よ、かの悪魔に執拗に絡み付け!」
カインはデイープインサイトで自身を強化してからシムーンケイジで攻撃する。その際カインは熱砂の魔力をウィザード・ドレアムに纏わりつかせる状態を維持するように展開する。
「これって……まさかあなたたちも相殺領域のことも知っているのね。そして、私の魔法を相殺させるためにこのように魔法を展開したと。でも、甘いわよ!」
しかしウィザード・ドレアムは風が纏わりついたままで大量の魔方陣を展開し、弾幕攻撃の準備に入る。
「そうきますか。でも、私も負けていません!」
ウィザード・ドレアムの動きに合わせてユリも魔法陣を展開し、直後それぞれの魔方陣から大量の魔法が同時に放たれていく。魔法の弾は相殺領域の効果もあって互いに打ち消しあっているが、ウィザード・ドレアムの弾の一部はそのままユリのもとへ向かっていく。しかし、イズマが魔法を織り交ぜた攻撃でユリに向かってくる魔法の弾を打ち消していく。またムスティラーフもカインに当たる分も含めてショウ・ザ・インパクトで打ち消しあう。だがムスティラーフはここでは追撃をしない。なぜなら……
「これでどうだ。背後からの攻撃には対応できないだろう?」
敵の背後にはアーマデルが隠れていたからだ。熱砂に紛れて姿を隠していたアーマデルはウィザード・ドレアムが大量の魔法を放ったのを見てスーパーノヴァをぶつける。強いダメージを受けたことでウィザード・ドレアムの魔法陣は一斉に解除され、魔法の弾幕攻撃は終わった。
ウィザード・ドレアムが攻勢をを崩されている間にもイレギュラーズは攻撃の手を緩めず戦っていく。アーマデルは英霊残響を駆使してウィザード・ドレアムを少しずつ弱らせていき、カインのほうは引き続きシムーンケイジで魔法を少しでも相殺させてダメージを減らしていく。イズマもユリの護衛をしながら、機をうかがっては外三光や剣魔双撃でダメージを与えていた。そしてムスティラーフはウィザード・ドレアムに接近してはぐはぐをしようとする……も、流石に女性の姿なのもあってかなりの抵抗があるのか強力な風魔法で飛ばされて失敗に終わる。だが、熱砂の魔力に妨害されてムスティラーフの身体を吹き飛ばせるほどの魔法が使いづらく、それによってウィザード・ドレアムがうまく攻撃に出れないようだ。こうしてイレギュラーズたちは戦況を有利に進めていき、カインの指示で不殺攻撃に切り替えようとしたところだったがここでウィザード・ドレアムの様子が変わった。
「ふふっ、どうやら私はあなたたちの実力を甘く見ていたようね。それに封印から解除されたばかりだから体もなまっていたし……さて、ここからが本番よ」
そう言った後、ウィザード・ドレアムの近くにいた三人が吹き飛ばされ、同時にカインが纏わせていた熱砂の魔力が霧散する。続けてウィザード・ドレアムは先程と同じ数の多くの魔方陣、に加えてこれまで見たことのないような巨大な魔法陣も同時に展開する。どうやら魔法の弾幕攻撃を行いつつ、防ぎ切ったところで大魔法を放つつもりのようだ。封印された最上位夢魔の本気を垣間見たユリとイレギュラーズたちだが、そんな強敵だからこそ燃え上がるものもいる。
「どうやらあっちは少し手を抜いていたみたいだね……けど、こういう盛り上がる展開も嫌いじゃないよ!」
「そうだな。ここで一気に肩をつけよう」
カインとイズマ、二人の闘志は他の三人にも伝染したようで、全員が立ち上がったところで最初に魔法の弾幕攻撃が始まった。襲い掛かる無数の魔法の弾はユリとカインを中心にして大量に相殺されていく。そして弾幕攻撃が切れたところで大魔法が放たれた。それと同時にムスティラーフも自身の切り札を放っていく。
「「「「大むっち砲、発射!」」」」
ムスティラーフが放つと同時に、他の四人も気分が上がったのか一斉に号令する。溶岩のごとき赤い熱線と翠玉のごとき緑の閃光は互いにぶつかり、ついに……
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戦闘開始時よりも大きく荒れた部屋。幸いにもこの場所には夢魔を封印していた本以外は本が置かれていなかったため、本棚が倒れて本が散乱している、なんて状況にはならなかったが周囲の部屋はどうなのだろうか。この図書館を預かっているユリは気が気でなかったが、それよりもまずは目の前で縛られているウィザード・ドレアムに目を向ける。
ウィザード・ドレアムの大魔法と大むっち砲が衝突した後、どちらもしばらく拮抗したのち相殺領域の効果で同時に消滅した。結果大むっち砲がウィザード・ドレアムを貫くことはなかったが、そうなることを予感していたカインは同時に叫んだあとですぐに移動してウィザード・ドレアムの背後に回っていた。自身の気配遮断能力の高さもあって敵だけでなく味方にもバレずに背後に回れたカインは、大魔法同士が相殺された瞬間に神気閃光を浴びせてから冒険者セットにあるロープを取り出して瞬時に拘束。このカインの行動によってウィザード・ドレアムとの戦闘に終止符が打たれた。
「そういう訳で! こうして僕たちの力を示して見せたわけだけど……これで君のお眼鏡に叶ったのかな?」
ウィザード・ドレアムの動きを押さえつけながらカインは聞いた。そこへアーマデルも近づく。
「ドレアム殿は……夢魔だからとか、力がある存在だからとかじゃなくて……ドレアム殿個人としてなにかをやってみたいこととか、見てみたいものだとか……望んだことはあるか?」
アーマデルのその言葉は、ヒトとは根本的に異なる心霊の類が身近にあったからこその言葉であり、また他の夢魔とも何度か戦ってきたからこその言葉でもあった。事あるごとに夢世界に侵攻していく夢魔だが、そんな夢魔が本当に望んでいるものは何か。そんな小さな興味が彼の口を動かした。
「そうだね。僕も一緒に戦うことの条件があるなら聞くよ。けど、戦って勝ったからある程度は大目に見てほしいね」
ムスティラーフもアーマデルに同調し、ウィザード・ドレアムに微笑みかける。
「世界をどうこうする、みたいなのはさすがに無理だが、皆で飯を食いに行くとか、俺にできそうなことなら検討するぞ」
アーマデルの言葉を聞いて、ウィザード・ドレアムは口角を上げた。人々の夢を喰らい、夢の集合体である【夢世界】をも喰らいつくすために生まれた夢魔、その中でも魔法に特化したそれは自分よりも力の強いものに従って生きてきた。常に強者に従い続けて戦っていた夢魔はいつしか悪夢の魔術師と言われて恐れられていたが、その一方で夢世界に住む普通の住人達にも憧れがあった。多くの人たちとつながって成長する人々を見て羨ましいと思いながらも、その繋がりを破壊しなければならない宿命を憎んだこともある。だが、今はそうじゃない。これまで対等につながることのなかった自分でも繋がることができる。そのチャンスを、彼らは作ってくれたのだ。悪夢の魔術師は宣言する。
「まあ、私を倒したことだからあなたたちの要求はのむわ。何かあった時は私を呼びなさい。力になってあげるわ」
その一言に全員は喜び、同時に安心から力が抜けそうになる。が、まだ話があるようで一度気を引き締めなおす。
「ついでに、私が知りうる限りの夢魔に関する情報も教えてあげる。これについてはあなたたちを送り出したであろう【案内人】を通しても構わないし、私に直接聞いてもいいわ。気になることがあったら聞いてちょうだい」
どうやら、境界案内人を通して夢魔に関する情報がいつでも聴けるようになったみたいだ。
「そのかわり、戦いが全部終わったらみんなでご飯に行くわよ! 約束ね」
こうして、最上位夢魔を味方につけることができたことでさらなる情報が集まり、戦いに一筋の希望が見えてきた。
成否
成功
状態異常
なし
NMコメント
何度目かのお久しぶりです。桃山シュヴァリエです。今回も強力な敵との勝負となりますが、ちょっとしたギミックもありますので是非頑張ってください。
今回の目的
最上位夢魔ウィザード・ドレアムの撃破
※特殊条件として【不殺】属性でとどめを刺し、かつ他の最上位夢魔と戦ってくれるよう説得すればグッドエンドとして全体ストーリーへの影響が大きくなります。
※【不殺】でとどめを刺したけど説得を行わなかった、もしくはライブラリアン・ユリが撃破された場合はバッドエンドとなるため気を付けてください。
特殊ルール
今回はユリが展開した領域魔法の効果で相殺現象が起こりやすくなっています。これによって相手が神秘属性の攻撃を行ったと同時に神秘属性のスキルや通常攻撃を行うことで攻撃が相殺されて両方の効果がすべて(ダメージも含めて)無効となることがあります。使い方次第では強力なためうまく利用するといいかもしれません。
エネミーデータ
【最上位夢魔】ウィザード・ドレアム
夢世界において伝説とされていた最上位夢魔の一体。通常の人間とほぼほぼ似た姿をしている。強力な魔法(神秘属性スキル)を放つことに特化しており、また鎌による物理攻撃も注意が必要だ。
なお、今回の戦闘では他の夢魔は登場しないため、この一体の撃破に全力を注いでほしい
登場NPCについて
ライブラリアン・ユリ
夢世界《レコード・ライブラリー》の主。強力な神秘サポーターであり、支援魔法や攻撃魔法でイレギュラーズと共に戦う。
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