シナリオ詳細
<Bloom*Bloom>朝が来る前に
オープニング
●出かけよう
「はぁ……」
花であふれた魔法世界。今は夜が満ちてきっとだれもが就寝につくころ。
「……眠くないわね」
近頃寝不足のフローラは今日も眠れず仕舞い。はぁ、と何度目かのため息をついてそっと布団を抜け出した。
「わ……あら、今日は満月なのね」
窓越しに空へと手を伸ばせば、月とぴったり重なって。
「……そうだわ!」
この女王は悪戯好きで、孤独で。
だから、ちょっとした悪戯をおもいつくのだってお茶の子さいさいなのである。
音を立てぬように気を付けて、窓を広げればひんやりと冷たい冬の風が肌を撫でた。
ネグリジェの上からケープを羽織って、羽を震わせて。
「いち、にの、」
さん! で、飛び出した。
まっくら闇を照らすのはわずかな灯りと星と月。
しるべとなるものを探すかのようにくるんとまわってみるけれど、そんなものはありはしないからぐいっと伸びをした。
「あーあ、案外つまらないわね……出かけようかしら――」
「ああああああああ!? フローラさま――」
「げっ」
とっさに魔法を使って大声の主――カナタを引き寄せて、めっと注意する。
「もう、皆が起きちゃうでしょ」
「……布団に戻って頂ければ済む話なんですけど」
「あら、わたしが言うことを聞いた試しがあって?」
「ないですね」
「そういうことよ」
はぁ、とため息をついたカナタは、置き去りにしてしまった武器を取ってきてから、フローラの近くへと降り立った。
「――さあ、でかけるわよ!」
●おてんば
「ってことでこき使われてるんだよね。もうブラックでいいんじゃないかな。フルールがブラックなら俺はもうこの仕事引退したいよねえそう思うでしょ!?」
おちついてください。
「……とりあえず今回の依頼を説明するね。
我らが女王サマ――フローラ様が夜のお散歩をご所望だ。遠くから見守るもよし、近くで一緒に遊ぶもよし。俺だけだと不安だからついてきてほしいんだ」
そろそろ疲れがたまって倒れてしまいそうなカナタは深いため息を落とす。
「頼めるかな、特異運命座標(イレギュラーズ)――?」
- <Bloom*Bloom>朝が来る前に完了
- NM名染
- 種別ライブノベル
- 難易度-
- 冒険終了日時2021年02月28日 22時20分
- 参加人数4/4人
- 相談4日
- 参加費100RC
参加者 : 4 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(4人)
リプレイ
●こえにはだせない
「眠れないの、女王様? ヒヒ。いいじゃないか、たまの夜更かし」
「ふふ、そうなのよ。もう歳かしらねえ」
「キミはまだまだ若く、未熟で、未来(さき)がある。案ずることはないさ」
夜は優しく、そして長い。
窓枠を踏み出したあの一歩より夜は始まった。
「ほら、夜に遊ぶ妖精たちもキミに興味津々だ。
眠くないなら、眠くなるまでたっぷり遊ぼうじゃないか」
「だよ、じょおーさま!」
「ぼくたちがいっしょにいてあげる!」
「そしたらさびしくないでしょ?」
「まぁ! ええ、ふふ。そうだわ。きっとそうよ!」
目覚めたばかりの妖精たちも、フローラも、武器商人も。顔を見合わせて微笑み頷けば、今宵は共犯者だ。
フローラとの空中散歩は何回か一緒したけど、楽しいものだ。武器商人はきゃあきゃあはしゃぐフローラを目にそう思う。
「ほぉら、宙返り。ヒヒヒ」
「あはは! こんなに自由にとんだの、久しいわ!」
「ぼくもできるよー!」
「あっわたしも! みてみてー!」
くるんくるん、宙返りをしながら。夜はまだまだ終わらない。
武器商人ははしゃぐフローラの手を取って、紫陽花畑の方角を示した。
「行こうか、女王様。あそこには仲良しなあのコもいるしね」
「あそこね! ええ、もちろんよ。あそこは私も大好きだもの!」
飛んで。進んで。
そうして辿りついたそこは、露でもないというのに一面咲き誇る紫陽花たち。
武器商人は裸足のフローラが足を怪我せぬようにとサンダルを用意し、そのまま紫陽花畑を歩いていく。
「女王様は、一番好きな花ってあるのかな?」
「うーん……一番は、ないわねえ。わたしが花の妖精だから、っていうのもあるのでしょうけど」
ぱちぱちと瞬いて。うーんと首を傾けてみたり、悩んでみたり。気にすることはないと笑った武器商人にフローラも頷いた。
夜の色を吸収して、紫陽花はさらに美しく咲き誇ったように見えた。
「そう、そう、覚えてる? このコの生まれ、魔法の紫陽花。
今の女王様が願うのだとしたら、さて、"我ら"に何を望むんだろね」
「……わたしの、願い?」
武器商人が指し示した紫陽花。フローラはそれに、祈りを込めた。
――叶うのならば。もう、くるしいおもいは、したくは、ない。
たすけて。
●「そもそも胃痛のネタは君も持ってきてるんだけど!?」
「カナタ……まあうんあれだ。あんまり辛いならいつでも言ってくれよ? いい職場を紹介してやるから」
「はは……ははは……胃薬のいらないとこがいいな……」
『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)はカナタの肩にぽん、と手を置いて。置かれたカナタはやれやれと肩を竦めた。
「仕事にやりがいがあって職場がアットホームなヤツ……」
「絶対に遠慮する」
「何? それは残念だ」
今回の任務は護衛ではあるが、それはやる気のあるやつに任せてしまおうと考えた世界。おい!
「という訳でお前(カナタ)もたまにはゆっくり羽を伸ばすといい。
なぁに、よほどの事がない限りは他の奴等に任せておけば何とかなる。俺はともかく他のお三方なら頼りになるだろ」
「まぁ事実ではあるんだけどさ? 職務なんだけどね? 何かあったら俺が腹を切るんだけどね???」
食い気味に世界へと言い返すものの、疲れていたのも事実のようだ、のんびりと空中散歩を楽しむことにしたのだろう。寝転がるような体勢で飛び出したカナタに世界は思わず吹き出した。
「さてさっきの続きだ」
「は?」
「え? いやまだ続けるよ?」
「……………………はぁ」
ため息は同意。やれやれと肩を竦めて、カナタは世界に話すように促した。
「とりあえずさっきの転職しようってのは冗談だが、何かしらストレス軽減方法を考えてみてもいいんじゃないか?
例えば副ギルドマスターみたいなのを決めてソイツを巻きこ……手伝ってもらうとか」
「……あー。成程」
「2,3割分担してもらうだけで結構楽になるぞ。今日みたいな突発的な出来事については結局お前が付き合う事になりそうだがな。
何にせよもう少し自分の体を大切にしてくれ。このままだと(お前が倒れた時に面倒事が今まで以上にこっちに来そうで)心配になるからさ」
「ンンーーーーなんだかちょっとん? ってなりそうなことも含まれてそうだけど……俺もそろそろ有休消化したいしね。そうするかぁ」
「まあ結局何をどうするかってのは自分で決める事だから、強くあれこれは言わない。
ただ水着をペアルックした仲として一言言って置く……っておい! 嫌なこと思い出しちまったじゃねえか!」
「ええ!? それは俺のせいじゃなくて世界のせいだろ!!????」
「悪かったな畜生!! しかもあの光景がフラッシュバックしたせいで言おうとしてたこと忘れちまったぞ!!」
「うわぁ……」
ドン引きした顔で飛び出したカナタを追いかけた世界。
仲睦まじい姿は、親友のそれであった。
●夜の隣人
(夜は、奇襲に適した時間。飛ぶ鳥も少なくて…空高くを往くものを見咎めるのは、難しい。
今は敵では無いものでも、出会いがしらの不幸な事故で、敵対することも…無くはない。…鳥や虫とぶつかりそうになった事だって、あるし)
アムル・ウル・アラム(p3p009613)はふわふわと飛んでいるフローラの背中を不安げに見守っていた。
(こんなに月の明るい夜なら、不幸な事故も…待ち伏せの奇襲も、難しいのだろうけれど。それでも…不用心だよね)
「……フローラさん、こんばんは。僕はアムル、というよ。近くで様子をみているから、安心して飛んでくれると……うれしい」
「ええ、ええ。よろしくね、アムル!」
笑み浮かべ、握手といわんばかりに両手を握って上下にぶんぶん。溌剌とした雰囲気で飛ぶ彼女はきっとこんな人柄なのだろうと思った。
飛び方で性格がわかるわけではないけれど、彼女の場合はわかりやすいものだった。
天真爛漫で明るくて、ひとなつっこい。
そんな様子が手に取るようにわかって、思わず笑みが零れた。
彼女がきゃあきゃあと笑うたびに、己もつられて笑顔がこぼれてしまいそうになったから。
アムルは己の翼で飛べるから、と魔法は断って、フローラの近くに居た。
(もっと正確に、精密に、飛べるようになりたい…いや、ならなきゃいけない、から)
金の瞳は揺れて。そっと地を蹴って、そらへと踏み出した。
広げる翼は、鴉の漆黒。
昼間であればその表面に光が跳ねて、虹色が浮かぶ事もあるけれど──いまは、夜闇の色に溶け込む黒。
自在に飛ぶという事は、自由に飛ぶという事では無くて。
戦いの技術を突き詰めてゆくように、ただひとつの道筋へ、可能性を絞り込んでいく事。
フローラの位置を意識しながら、なにかあればすぐに飛んでいける距離を維持してはみるものの、とくに変わった様子もなさそうで安心してしまう。
「心配、してくれる人が。大切なもの…だと、思う」
フローラのその背に小さく零した。
とどいたかは、わからない。
ただ、それを発したあと、フローラはゆるやかに低速に飛行しはじめた。
アムルもまた。共に飛ぶ翼を持つ者が居た。今は…想い出の中に。
とおき思い出。鮮やかな過去。
今は遥か彼方の、あなたを、想う。
●やくそく
「眠れませんか、フローラ様…」
「ふふ、ちょっとね」
フローラは『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)に困ったように笑みをこぼした。その目の下にはうっすらとくまができていた。
(毒の探知依頼をするくらいに精神をすり減らしている以上…フローラ様に害する敵は確かにいるんだろうな…口約束とはいえ契約した妖精を守れず、妖精武器としての役割を全然果たせてないのが歯がゆいものだ…)
ぎり、と歯を食いしばる。
苦しい。彼女の力になれないことが。
(まあ、落ち込んでいるわけにはいかない…いつも通りの状態で行こう)
切り替えも大事だ。自分の心をいましめて、サイズは夜空を飛んだ。
干からびた水筒にあたたかい牛乳を入れておいたサイズは、そっとフローラに差し出して。
「おやつ系はありませんけど……ホットミルクは安眠にいいと聞きました」
「ええ、おやつないの? 残念! でも、そうねえ。太っちゃうかしら、そうしましょ」
こくこくと牛乳をのみ。冷えた身体にしみわたるあたたかさにフローラはほっこりとした笑みを浮かべるのだった。
サイズが向かったのははじまりの花畑。ふたりが何者でもなかったころに出会った、小さな花畑だ。
「フローラ様、少なくとも…今この場に貴女を害する存在はいません…。
まあ、動き回りたいならあの小屋辺りまで行きますか? ああ、飛行なら勿論自前の羽があるので問題ないです」
「ふふ、それもそうね。ああ、あそこ、まだ壊されてないのかしら? それなら行ってみましょ、サイズ!」
ふわふわと飛んでいくフローラは眠たげで、少し覚束ない飛び方をしていた。
(眠くなったら…城で寝るのが不安なら小屋で寝るか? 一日くらいなら寝ずの番を引き受けるし…朝ごろに戻れば問題ないだろうか?)
うなるサイズ。フローラは小屋の扉を開けて椅子に座るなり、すやすやと眠ってしまった。
寝不足だったのだろう、誰の声も届かなかった。
「可能なら長時間警護ができればいいんだが…そういかないからな…」
開かない本の記憶がよみがえる。苦い思い出だ。
ようやく安心して眠れる環境を手に入れたのか、フローラはぐっすりと熟睡していた。
カナタに声をかけたサイズは、朝になるまで――いや、可能な限り傍に居ることをちかった。
しかし、朝の訪れとともにこちらへやってきた四人の時間が少ないことを告げられる。
フローラはまだ目覚めない。渋々帰ったサイズたちであった。
そして、フローラは、目を覚まさなくなった。
成否
成功
状態異常
なし
NMコメント
こんにちは、染です。
シナリオも頑張るぞ期間です。
●依頼内容
フローラの護衛。
お転婆女王は夜の散歩へ出かけたいようです。
近くで見守るもよし、遠くから眺めるもよし、護衛しましょう。
フローラが魔法の力で空へと飛ばしてくれますから、飛行のスキルやアイテムの心配はありません。
●世界観
魔法世界『ブルーム・ブルーム』。
花と魔法で満ちた世界。魔法で文明が築かれています。
基本的には物理攻撃よりも神秘攻撃がメインの世界です。
また、ファンタジーな世界ですので、妖精やドラゴンなど、ありえない生物がいます。
●行けるマップ
・春の島
・夏の島
・秋の島
・冬の島
・ひまわりの花畑
・人間界
・妖精城の近く
・あじさい畑 etc
行きたいところがあれば生やします。お気軽に。
●フルールについて
フルールとは、花冠師のこと。
魔法や魔術を使う人々のことを指し、この世界に住まう人々の半分は花冠師です。
現地の人々はもちろん、異世界から来た人がフルールと呼ばれる場合もあります。
また、フルールにはギルドがあり、各々所属している団体があるようです。
●NPC
・フローラ(ティターニア)
妖精女王、花の妖精。若草色の髪が特徴で、桜色の髪留めが宝物。
エルフのような長耳と少女のような凹凸の少ない身体。性格はお茶目でお転婆、然しながら王としての自覚も芽生えつつあります。
裸足なので怪我に気を付けてください。
・カナタ
花冠師ギルド『Flowers Flag』のギルドマスター。
トップクラスの実力を持つ温厚な青年です。
剣術を得意とし、フローラ達の護衛として腕を買われています。
呼ばれたら出てきます。
胃薬を飲み始めました。
●サンプルプレイング(カナタ)
いぐすり おいしい
近くに敵さえいなければいいんだけど、近くを飛んでみようかな。
俺も飛ぶのなんていつぶりかな……ま、悪くないんだけど。
以上となります。ご参加をお待ちしております。
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