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シナリオ詳細

厳冬恒例! 湖でワカサギ釣って食べてくる依頼!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●良い冬の夜ですね
「うわあああああああ女の子があられもない格好で濡れたり服が溶けたりしてる様子が見たいいいいい!」
 ローレットのテーブルの上で、なんか『井』の形をした生き物が、手足っぽい線をじたばたじたばたさせていた。
 彼の名前は『井』。見ての通り、よくいる旅人(ウォーカー)であり、紳士である。
「……無人でよかったですねこの時間」
 『ナーバス・フィルムズ』日高 三弦(p3n000097)はジャスミンティー(Cold)を一口飲むと心底ゴミを見る目で相手を眺めた。なお、これが練達によくいるポテサラ幻想種だったら命があぶなかった。
「だって、だって……女の子が厚着の状態から服を溶かされるの見たいし恥じる様がみたい。みたくない?」
「最近ありましたよそんな依頼。3度漬けとかなんとか騒ぎになってましたけど。暫く出ないんじゃないですか?」
「そんなあ!?」
 カウンターの上で首? 線? その辺りを傾けて問いかけた『井』は、無情な回答に叫び声を上げた。
「そこは探してよ! 情報屋でしょ!?」
「どこをどう考えればそんなものが見つかると思ったんですか!?」
 流石に三弦も半ギレだ。こいつも女だぞ。『井』の趣味じゃないんだろうが。
「そもそも正月の依頼で着手金がないとおっしゃっていませんでしたか?」
「ふふふ……心配には及ばないよ。今回は幻想貴族のバックアップがあるからね! ほら、なんだっけ兎をかわいがってる!」
「……あー」
 そういうことらしい。
 というわけで、嘘依頼が発布されて数十分後に訳知り顔の仙狸厄狩 汰磨羈 (p3p002831)がそれを取っていったのだった。
 曰く、「ここはひとつこれで現実を見せんとなあ?」だそうである。

●悪事の代償
「うう……今月まだ半分もあるのにもうお金がない……」
 コルネリア=フライフォーゲル (p3p009315)は『自称・悪人』である。ゆえに彼女は悪行を好む。
 競馬・競輪・競艇……悪行の限りを尽くしたコルネリアを待ち受けていたのは、財布が空になるという現実だった。
 ……待って待って。悪行のベクトルおかしくない? ハードル低くない? そんなツッコミはノーセンキューだ。
「ふふふ、困っておるようだなコルネリア!」
「その声は、我が友汰磨羈よねぇ?」
「如何にも」
 何だこのやり取り。
 汰磨羈はなんかちょっと高い箱から飛び降りると依頼書を彼女に突きつけた。
「ワカサギを釣って……食べる?! 納品するんじゃなくて?!」
「そうだ」
「戦闘がないのにこの依頼料! ノルマもなし! 嘘よぉ!?」
「現実だ」
「らくしてガッポガッポなのだわ……?」
「安心するといい」
 矢継ぎ早にふっかけられる質問を苦もなくいなし、汰磨羈は満足げに頷いた。
 そう、簡単な依頼だ。間違いなく――。

「って信じたアタシが馬鹿だったのだわ!」
「うわああああああシスターさんだああああああ!! 今日はよろしくお願いします!」
 というわけで幻想某領地、具体的に言うと貴族『F』領内、湖畔の森。
 なるほど湖というのは嘘ではない。その周囲だが。
 ワカサギ釣り? まあできなくはない。依頼が終わってから。そしてその依頼というのは。
「最近この森に服を溶かすだけ溶かして肉体に傷をつけない紳士スライムが現れると聞きました! 肉体には傷つけないけど心を傷つける分体も傷つくことはあるらしいです!! って全部『F』さんから聞いてきました!」
 嬉々としてコルネリアと汰磨羈、その他イレギュラーズに語る『井』。三弦がやるべき相談関連とか緩衝役はこいつがやったらしい。
「その貴族が何者なのかは分からぬが、当たらねばいいのだな。簡単だな、コルネリア!」
「アタシの回避知ってて言ってるのだわ?!」
「大丈夫だ、私も大差ないから十分ワンチャンあるぞ」
 ワンチャンあるってことはほぼ負けってことなんだよなあ。

GMコメント

 騙されたなイレギュラーズ! 貴族のパトロンがいれば『井』は無敵だ!

●成功条件
 偽っちの撃滅

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●状況
 皆さんは「湖でワカサギ釣って食べてくる依頼」だと汰磨羈さんに聞かされて集まってきました。
 結果がこれです。
 現在皆さんは某貴族の所領の湖畔の森(「の」が多いわ)にて服を溶かすモンスター「偽っち」の大量討伐任務に赴くことになりました。残念だったな。
 なお戦闘になるなんてビタイチ聞かされていないのでありあわせの装備(装備欄いじらなくて結構です。プレイングに指定してね)で戦うことになりますしワカサギ釣りだから厚着です。たりめーだろ長丁場だぞオラッ脱げ!

●偽っち×めっちゃおる
 基本攻撃:【レンジ3万能】【Mアタック中~大】【服を少しずつ溶かす】【体温増大(依頼中永続)】。
 1体辺りのHPは低いですが死亡時飛び散ります。飛び散ります。大切なことだから2度いいました。
 長丁場です。なんかすごいスキルをバーン! 範囲スキルをバーン! してもいいです。
 してもいいですがAP切れてから皆思い思いにキレッッッッキレな羞恥シーン(not誤字)を晒すことに成るがいいのか? いいんだな?
 そんなかんじで1つ 覚 悟 を 決 め て 下 さ い 。

●その他
 『井』が近くに居ます。ガン見してますが危害を加えないで下さい。
 ハイルール違反になっちゃうゾ☆

  • 厳冬恒例! 湖でワカサギ釣って食べてくる依頼!完了
  • GM名ふみの
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年03月06日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費200RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

フニクリ=フニクラ(p3p000270)
歪んだ杓子定規
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
※参加確定済み※
只野・黒子(p3p008597)
群鱗
ニル(p3p009185)
願い紡ぎ
バク=エルナンデス(p3p009253)
未だ遅くない英雄譚
コルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)
慈悪の天秤
※参加確定済み※
ノワール・G・白鷺(p3p009316)
《Seven of Cups》
一ノ瀬 由香(p3p009340)
特異運命座標

リプレイ

●ガチ凹みを見ると申し訳無さより先に興奮しない?
「よくも騙したァ! 騙してくれたなァああああ!!! ……はい」
「うわぁ、いきなり真顔になった! ありがとうございます!」
 『歪んだ杓子定規』フニクリ=フニクラ(p3p000270)の苛烈なまでの『動』から『静』への切り替えを前に、『井』はよいものを見たとばかりにキャッキャとはしゃぐ。こいつの趣味がわからない。
「たまきぃ!! アンタ後で覚えてなさいよぉ……!」
「隙を見せれば与太は来る。そう。これが現実だぞ、コルネリア」
 『ザ・スリー』コルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)は『流麗花月』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)に偽依頼を偽依頼のまますごい圧しの強さで勧められてこの場に来ている。汰磨羈は『井』の片棒をかつぐのを薄々理解しつつ仲間を地獄におとすことに余念がなかった。最悪じゃん。
「……とはいえ」
 汰磨羈は渋い顔で周囲をチラ見する。
「この依頼、いいね! ワカサギ釣りするだけで依頼達成みたい! すごく楽しそう! ワカサギ釣り、すごーい楽しみ~!」
 この段階でも依頼に疑義がでていることを微塵も理解していない『特異運命座標』一ノ瀬 由香(p3p009340)の純朴さであるとか。
「ニルは、ワカサギ釣りはじめてなのです。とっても楽しみにしてたの……です……」
 釣り竿と各種準備を手に事実に思い当たり心から凹み散らして涙目になっている『はらぺこフレンズ』ニル(p3p009185)(性別がない)とか。
「……まぁ、女装や魔法少女になるよりは幾分マシ、幾分マシ……いや女人の前で肌を無闇に晒す事自体は問題なんじゃがのう」
 色々とアレな依頼に知見があるためもうちょっとやそっとのことで動じなくなってしまった『夜に這う』バク=エルナンデス(p3p009253)(男)とか。
「……何か、色んな意味で謝りたくなる面子が揃ったが!」
「これはこれで贅沢セットなので! 僕は大丈夫です!!」
 汰磨羈がドウシたもんかと目を泳がせたが、むしろ『井』は大歓迎と言った様子で手……手? 横棒? 上の方の。あのへんをブンブン振った。
「はーーーー……私ともあろう者が、騙されました。さっさと終わらせてワカサギ釣りしましょう、ワカサギ釣り」
「敵は数を頼りにこちらの消耗を強いてくるのだな。なら俺は、それを全力で阻止するだけだ」
 コートを新調したら溶かされる羽目になった『《Seven of Cups》』ノワール・G・白鷺(p3p009316)の気持ちは如何ばかりか。きっとろくな気持ちではない。
 『群鱗』只野・黒子(p3p008597)はこんな環境でも全く腐ることなく敵情を分析していた。真面目か。いやまあドがつくほど真面目なんだろうけどこの状況でその真面目さを遺憾なく発揮できる辺り『マジモン』だと思わざるを得ない。
「釣り竿しか持ってねぇって状況なんですけどどうしろと。あと釣れたてのワカサギで一杯キメようとワクワクしていた私の気持ちをどうしろと」
「石とか木の棒しかないじゃない、こんなんで戦うの?!」
「あっでも黒曜石とか算出されますよ、研げば武器に!」
「なんで森で採れるの!?」
 各々装備なんてもんがないので大抵の場合は釣り竿かありあわせの森の資源である。『井』が得意げに黒曜石を取り出すと、懐疑的だがコルネリアがそれをひったくった。なお、由香は実戦経験が然程多くない分警戒心は人並み以上にあったようで、杖を背負っていたりする。……まあ、それくらいはね。
「ある意味、『井』の片棒を担いだようなものだからな……その分の責任は取る。前衛で体を張ることでな!」
 素手で体を張ることを宣言した汰磨羈。困惑の表情で、しかし臨戦態勢に入るニル。多種多様な困惑からの回復を見るにつけ、『井』は卒倒せんばかりの興奮に襲われた。

●「僕はけっこうなんでもいけますよ!」(『井』)
「何、このスライムたち!? 『偽っち』……?」
「ニルはスライム見るのもはじめてです」
「満員御礼といえば聞こえは良いですね? こんなスライムでなければ」
 由香、ニル、ノワールはありあわせ(と自前)の装備で襲いかかってくる『偽っち』達を次々と迎撃していく。
 ノワールの放った死霊弓は一撃で個体を蹴散らし、由香の放った魔弾も実力以上の威力を見せ、偽っちを次々と撃破していく。
 だが、そんな状況でも一切勢いを衰えさせずに迫ってくる大群は、(たとえ飛び散った破片が遠距離攻撃で届かなかったとしても)一同にとって脅威であることに変わりはない。
「って、ちょっと!?  そんな近くに寄って来ないで下さいませんか!?」
「近付いてくるならまとめて倒してしまいましょう!」
 ノワールは遠距離型の攻撃術師だ。接近された際の対策は決して多くない。その点において、自分を起点に広域述式を操れるニルがいたのは僥倖だった。当然だが、由香も近づかれたら途端に弱くなる。ニルの存在1つ、その有無が大きく戦局を左右するのだ。
 昏い月は纏わりつこうとした偽っち達の運命を揺さぶり、次々と破壊していく。この一手の有用性は語るべくもない……だが。
「あんまり近いところで攻撃すると、飛び散ったのがかかっちゃいますか!?」
「いやーっ!? だ、誰か、助けてー!?」
「……飛び散るの、本当に面倒ですね。『立つ鳥跡を濁さず』、演目の終了後は席を汚さずに去ってほしいのですが」
 当然ながら、偽っち達の体液がガツンと飛び散る。数が数だけにその量はかなり多く、3人を巻き込んで尚地面を濡らす程だった。
 背に腹はかえられぬと撃破したニルであったが、結果は術師組が仲良く偽っちの体液にまみれる事態を生んだ。思わず叫んだ由香を責められまい。なので自分自身の力で助かって欲しい。
 ノワールの反応が本当に冷静なのだが、多分僅かにコートの素材を溶かした現状に不快感を覚えているはずだ。新調したのにな。
(そう言えば、あたし、あんまり戦闘依頼はしてこなかったしね……緊急の場合の経験が不足してる!?)
 由香は今まで訓練とか軽微な依頼を受けたことで経験を積んできた。戦闘ができないとは言うまいが、生の情報というものとは然程触れ合っていないはずだ。それが示すは、不測の事態に対する耐性が極めて低いという事実!
「……ひゃん……気持ち悪……」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
 性別の垣根がないけどほどよく体つきが体つきなニルが初い反応を示すと、『井』が気持ち悪いくらい顕著な反応を示した。ガチ悲しみから戦闘に本気で取り組んだ挙げ句こんな初い反応見せられて興奮しないと思う? 俺はするよ。
「何故か体温が上がるので寒さを無視できるのはありがたいですが……それでも気温は気温なので寒いですね。これは不快な」
 そう、ノワールは気付いてしまった。体温が上がるということは確かに寒さをある程度無視できるが、外気温と体温の差が大きくなることで体感気温が低く感じる。よって少しでもこの均衡が崩れると一気に寒気が襲いかかってくるのだ! なんてひどい効果なんだ!
「はははははっ! 御主等の速度はそんなものか! 私に触れるには数年早いぞ!」
「たまきぃ! わかりやすいフラグ立てながらそいつら飛び散らすんじゃなっ痛!? あっ服が!」
 汰磨羈はそのころ何してやがったんだという声が聞こえそうだが、そりゃもう片っ端から最高速ガチ上げして敵を蹴散らしてましたよ。最高速の衝突で。
 つまりそれが何を齎すかというと、彼女に限らずコルネリアにまで降りかかるほどの飛沫の炸裂である。
 遠合いから一気に近付いて個体の動きを鈍らせ、以て石を飛ばしたり黒曜石を研いでぶん投げたりでなんとかヒットアンドアウェイを繰り返す彼女だが、よもや飛沫の煽りを受けるとは思ってもなかっただろう。
「よしよし、2人のにくかb、もとい囮役がしっかり動いてくれるなら私はきっちり潰していきつつ魔力回復を手伝えばいいな。ヨシ!」
 フニクリは仲間達が適度にひどい目にあいつつきっちり役割を果たしていることに満足気に頷くと、自らは気で編んだ糸を飛ばす、或いは仲間達の魔力を回復するサポートに回る。魔力効率がかなりいい方の由香、消費は多いがその分蓄積量が多いノワールなどは放っておいても大丈夫だろう。ここで一番ヤバいのは回復持ちとはいえ汰磨羈か。まあ彼女が動けなくなったら自分がヤバいしな。フニクリはその辺のリスクマネジメントがしっかりしている。しているが、相手の能力で致命的な見落としがあった。
 『自分の射程圏は相手の射程圏』。あ、と気づく間も許されず飛んできた一撃……喰らえば、服が溶けるそれ。それが数の暴力で銃数発だ。避けられるか馬鹿。
「下がりおれ! 儂が代わりに受けてやるわっ!」
 だが、その数の弾幕に身を晒す勇者がそこには居た。バクである。
 閉じたる聖域の加護を得て、ニルら術師連中の治療に手を割いていたがそういえばフニクリは性別不明。お風呂イベントもないまま脱がせていい相手ではない。彼の直感は瞬時に状況判断を終えるとフニクリを庇っていた。卓越した守り、高い抵抗力は魔力の減少はさておき体温上昇を僅かに防ぐことに成功した。だが……。
「寒っ! クッソ寒いわ! 液体を浴びて寒空の下に叩き出されたら体温上がらなきゃやってられんであろうが! バランス感覚ってもんがないのか!」
「永遠の14歳ボディと高いおべべは大事だけど……うん、そのごめんね……?」
 フニクリにも罪悪感を覚える程度の良識はあったらしい。あったらしいが、やっぱ大事なのは自分なのである。
「ほらさぁ、無礼なケツとかさぁ、ああいうの剥いたほうが楽しいでしょ」
「そっちの方はなんでか来てくれなかったんですよねえ」
 『井』は心から疑問に思ったようで、頭? を傾けた。
 そりゃまあ2度も3度もブロマイドばらまかれたりしたくないもんな。

●ここまでひどい状況になるとこちらとしても申し訳無さが先に立つ
「皆さん大丈夫……ではなさそうですが負傷は思ったより少ないですね。これならナントカ治りょヴッ!?」
「く、黒子ーっ! 御主大丈夫か!? 今してはいけない類の骨の音がしたぞ!」
 バク以上に仲間の治療に専念していた黒子だが、当然ながらというか集中砲火に遭う運命からは逃げられなかった。彼自身もちゃんと自衛はしていたのだが、仲間の治療に全振りしていたせいでよりでかいダメージを受けてしまった……という感じ。でも彼、もともと厚着気味だからいい感じに露出が断片的で逆に男性ならではの妖艶さが感じられていいのでは?
「男性はちょっと……とかおもっててすいませんでしたッッ!」
 な? 『井』だって大満足の格好だよ。
「おらぁ!!! 服溶かしモンスター! 溶かされるのが怖くて傭兵やってられるか! かかってこいや! セクシーな肢体見て鼻血だすんじゃねぇぞ!」
 コルネリア(31)は汰磨羈の衣装がヤバい段階になりつつあるのを見て、全力で前に出た。そして挑発を始めた。自分の衣類もそれなり危ない状態だが、さりとて仲間を無視できるわけではない。……のだが、若干ポロリしてるコルネリア(31)の柔肌に、偽っち達は何故か動きを鈍らせた。なんか脱がすのしのびねえな、みたいな。
「あれ? なんでモンスター悲しそうな目で見るの? ねぇ、なんで?なんで目を逸らすの? おら!! 見ろ!! 憐れむんじゃねぇ! まだまだ若いのには負けてねぇ!」
「大丈夫だぞコルネリア……年は気にするな。十分にピチピチだぞ☆」
「そのフォローが悲しくなるから辞めろっつってんだよたまきィ!」
 汰磨羈(不明)の精一杯のフォローに(31)は救われるどころか地獄に落とされた気分になった。
「偽っちを倒さないといろいろと大変な人が出てしまう……! なら倒すしか、で、でも恥ずかしい……!」
「服が溶けて寒くなるはずなのに、体はぽかぽかで……なんだかとっても変な感じ。ニル、こういうのはじめてで……皆様、恥ずかしい、のですか?」
「そうですね。この状態は『恥ずかしい』のです」
 由香は半脱ぎの状態で体が熱っぽくて魔力のコントロールがおぼつかない状態になりつつあったが、黒子の決死の魔力供給でなんとか行動できていた。できていたが、精彩を欠く動きなのは事実だ。そんな様子を見てニルは不思議な気持ちになった。羞恥心を未だ持ち合わせていないニルにとっては、鍛人にこの状況は困惑しかなく。ノワールも知ってかしらずか、言葉を選んで慎重に彼女に諭す。
「いやだぁあ、服溶かされとうないよぉ。 このおべべ高かったんだよぉ。勘弁してよぉ……」
「ええい泣くな! 儂にも限度があるのだ!」
 フニクリはバクの守りを受けて大分マシだったが、それでもちょいちょい露出があった。ギリギリなんとか色々バレないはん中ではあるが、そもそも高い服を溶かされて気分がいいわけがない。ノワールなんて袖を通したばかりのコートだぞ。
「フッ……私がこのスライムに攻撃され続ければへっちな展開になる……誰もがそう思うだろう。
 だがしかし、ここは無辜なる混沌だ。そんな常識ばかりが通用すると思うなよ!」
 汰磨羈はそう叫ぶと、ボロボロになった服をあえて自ら……引きちぎった!

 (  ˘ω˘)

 こんな感じでサラシとふんどしを晒した汰磨羈は、どうどうたる匂い立ちだ。サラシだけに晒したってな。
「喧嘩と祭りは江戸の華ァ! 皆行くぞォッ!」
「お、おおー……??」
 コルネリア、場の流れに流されて相槌を打つ。
 \ソイヤッ!/(限界を越える音)
 \セイヤッ!/(一瞬の加速でひときわ大きな偽っちに突っ込む汰磨羈)
 \Wasshoi!/(爆ぜる偽っち達)
 見事な三段オチを決めに来た汰磨羈は、くるくると回転しつつ着地する。最後の砦は溶けることなく、しかしその粘液まみれの格好は『井』にかぶりつきにさせる勢いだけはあるのだった。 
 ……コルネリアもよかったっていってたよ?

●顎がッゴイ長くて背中に光背負って現れたるイケメン
「……長く苦しい戦いだった。さぁ皆。わかさぎ釣りへレッツゴーだ!」
 あたり一面に散らばった偽っちの残骸をみて、汰磨羈はやり遂げた顔でサムズアップ。ふんどしと晒しだけの格好とは思えない爽やかさだ。
「こんなにぼろぼろで、できるのでしょうか?」
「はぁ、疲れました……正直もう体力が限界ですが、折角なのでワカサギ釣り……って寒っ……!?」
「本当に今回の趣旨はどこに……」
「出来るんでしょうか、こんな格好で……」
 ニル、ノワール、バク、黒子の4人が困惑するのも無理はない。偽っちの撃破でわずかに継続していた体温の上昇も止まり、残っているのは液体に濡れた不快感、襲い来る寒気、衣類を剥がされた羞恥心、ボロボロの釣具や準備。由香は諸々の悲劇を流すべく色々考えていたのだが、やはり寒さには耐えられずくしゃみをひとつ。このままだと本当に全員重傷で終わっちゃうんだけど? というどこか諦め気味の空気が漂った。
「釣れたてのワカサギで一杯キメようとワクワクしていた私の気持ちをどうしろと。オイ『井』ィ、お前ちゃんと落とし前つける気あるんだろうなぁ!」
「えっ……?」
「えっ? じゃなくて」
 フニクリは満足げの『井』に掴みかかると激しく揺さぶるが、『井』は全く我関せずみたいな感じでほうけた声を出した。こいつぅ……。
 だが、一同がなんやかんやしているところに草葉をかき分ける音とともに、甲高い馬のいななきが響く。
「申し訳ないがイレギュラーズ諸君、私の客人に手を挙げるのはやめてもらえまいか」
「あなたは! 領主『F』!」
 その馬にまたがって現れたのは、いかにもというふうな(だが華美ではない)貴族だった。どこがいかにもかというと、その、スパダリめいた鋭い顎が。なにあれ人を殺せそう。
「済まなかったね、依頼を出したのは僕だというのに挨拶にくるのが遅れてしまった。その様子だと不届き者の処理は済んだようだ。ワカサギ釣りにきたのだったね?」
「うむ。私はこの格好でも大丈夫なのだが……」
 『F』は馬から降りるとシャランラとか音がしそうな感じでしゃなりと歩み寄ってきた。汰磨羈、仁王立ちだ。そんな様子に「それはいけない!」と叫んだ彼は、指パッチンとともに2頭立ての馬車を呼び寄せた。ついてこさせたのだろう。
「そんな格好で釣りなどもってのほか。恩人に風邪を引かせたとあっては領主の名折れだ、湯浴みをして一晩休むといい」
 本当にこいつ領主『F』か? と首を傾げた一同だったが、結局は全員毛布にくるまれ屋敷に連行されたし手厚く保護されて事なきを得た。
 なお。
「あ~~釣れねぇ釣れねぇ……他の人釣れすぎじゃない? ちょっと?」
「ガボボボボガブガボ(ぼくを餌にしても釣れませんよ?!)」
 コルネリアは翌日ひとりボウズだったが、そりゃ『井』を餌にしようとしてドデカい穴を空けりゃそうなるんじゃねえかな。

成否

成功

MVP

コルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)
慈悪の天秤

状態異常

只野・黒子(p3p008597)[重傷]
群鱗
コルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)[重傷]
慈悪の天秤
一ノ瀬 由香(p3p009340)[重傷]
特異運命座標

あとがき

 ……なんかごめんね?

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