シナリオ詳細
<希譚>神に触れしモノ<呪仔>
オープニング
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幻想ローレットへと情報提供を行っているのは、阿僧祇霊園の担当者を名乗る澄原 水夜子だ。
「……彼女は、『希望ヶ浜 怪異譚』全般についての調査を中心に動いているのだそうです」
『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)が依頼に興味を持ったイレギュラーズへとこの一件について簡単に説明する。
阿僧祇霊園石神地区にて、『神様に認知された者』が突如として姿を消した。
その行き先はダムの底に沈んだ来名戸村と見られている。
彼らの救出の為、真性怪異及び悪性怪異の専門家である音呂木・ひよのが動いていたのだが、澄原病院院長、澄原 晴陽から交換条件を持ちかけられていた。
その内容とは、夜妖のプロフェッショナルである希望ヶ浜学園に『阿僧祇の作り出した元・人間であった怪異』――ゾンビ退治を願いたいというもの。
「ローレットとしては、これに協力すべく依頼を受けたいところですね」
とはいえ、依頼を受けるにしても、ただ首肯するとはいかないのが水夜子の記した次の文面。
『まあ、単純なゾンビ退治ってだけです。元・人間と言うことを除けば……』
思うことはあるが、無理やり動かされている死者は眠りにつかせるべきだとアクアベルも主張する。
「話によれば、相手は『神様の狂気に触れた存在』とのことです。取り込まれることがありませんようご注意を」
また、何かに呼ばれても振り返ってはならないとのこと。
それだけを注意し、アクアベルは説明を締めくくったのだった。
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薄暗い山道を、イレギュラーズ達は歩いていく。
大きく間隔を開けた街灯は点灯こそすれ、ほとんど機能してはおらず、闇夜に包まれた暗がりの道、撫でるように吹いてくる風、そして、時折聞こえてくる何かの呻き声。
「「オオォ、オオオオォオオォオ……」」
聞こえてくるその呻き声に合わせ、坂道に布陣するメンバー達。
近づいてくるのは、身体が腐敗したゾンビ達の群れ。
それらは生あるイレギュラーズ達を道連れにしようと近づいてくる。
数は20体ほどだが、呻き声が聞こえ、ひたりひたりと歩いてくる気配が感じられる。
さらなるゾンビが現れるのは間違いない。
ともあれ、イレギュラーズ達は依頼を果たすべく、現れたゾンビの討伐の為に構えを取るのである。
- <希譚>神に触れしモノ<呪仔>完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年02月28日 22時20分
- 参加人数8/8人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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練達再現性東京希望ヶ浜。
その阿僧祇霊園石神地区、山上ダムへと続く坂道のふもと近くイレギュラーズ一隊の姿があった。
「元人間であった怪異、そんなものまでいるのですね」
全身淡い印象を抱かせる『二人でひとつ』桜咲 珠緒(p3p004426)が思ったままを口にする。
サイバーゴーグルで視界を補助しつつ、彼女は夜目の効くフクロウをファミリアーとして召喚し、上空へと飛ばせて索敵する。
索敵を行うのは珠緒だけではない。彼女を中心として布陣するメンバー達もまた、それぞれの手段で警戒を強める。
持ち込んだランプで注意を照らす小柄な鉄騎種、『玩具の輪舞』アシェン・ディチェット(p3p008621)は珠緒の近くで超視覚を働かせ、道横の木々の奥を探っていたし、銀髪で大きな金色の瞳持つ『咎人狩り』ラムダ・アイリス(p3p008609)も吸血鬼印の飴をなめることで得た暗視の力で敵の強襲に備える。
「なにかきな臭ぇ音がすんな」
一早くそれに気づいたのは、ナイトゲイザーによって視力を高め、かつエコーロケーションで察したフリーランスのダンサー『バトルラビット』音無 九内(p3p008678)だ。
徐々に姿を現すそれらに、メンバー達も気づき始めて。
「ひのふのみ……ともかく、いっぱいの腐乱死体が歩いてきてるよ……正直ドン引きなんだけど……」
「……随分と惨たらしいな」
ラムダが引きつった顔をしていると、自称会社員の『アサルトサラリーマン』雑賀 才蔵(p3p009175)もそれらの有り様には眉を顰める。
神様の狂気に触れた存在。聖者を自らの死者の国へと引きずり込む始まりの神。才蔵は元居た世界の神話を思い出していたが……。
「「オオォ、オオオオォオオォオ……」」
「「ああぁあぁ、ああああぁぁああ……」」
ぼろぼろの衣服を纏い、うめき声を上げて歩く死人、ゾンビの群れ。それらはイレギュラーズ達を自分達の仲間にしようと歩み寄ってくる。
「来名戸神と同じ名を持つ村に、現れたゾンビ共。いよいよもって、きな臭さが増してきたな」
こちらも暗視を活用し、前方に注意を払っていた白髪の仙狸、『流麗花月』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)。
敵の存在を視認した汰磨羈は移動してくる痕、腐食した肉片、何より、その呻き声の大きさに、少なくない数が迫っていることを察して。
「なるほど……これは長期戦モノかな」
「チッ、発酵食品がうろうろと」
エネミーサーチを使っていた夜の一族『テスト対策中』糸色 月夜(p3p009451)も露骨に嫌悪感を示し、早くも臨戦態勢を取る。
「元人間だろうが、原産がどうであろうと関係ねェ。そうなっちまったら、運が無かっただけの話しだ」
ただ、他メンバー達は月夜ほどにはすぐ割り切ることができないでいて。
「ここの神様とかいう輩は質が悪いなぁ……」
死者を操って襲わせるなど、混沌にいる神はロクでもない奴だとラムダは確信する。
「私の推測が正しければ、対処が遅れると、碌な事にはならないぞ――!」
普段は冷静な汰磨羈がやや激情すら感じさせる一言を発する。
来名戸神の役目は、魔除け、厄除け、道中安全……そして『悪神・悪霊の侵入を防ぐ事』。
そして、ダムに沈んだ、来名戸神と同じ名を持つ村。そのダムの近辺に現れたゾンビの群れ。
これらから汰磨羈が導き出した推論は……。
「よもや、『来名戸村は黄泉平坂を塞いでいました』などというふざけた話に繋げるつもりではあるまいな?」
しかしながら、ゾンビ達はその問いに答えることは無く、それを証明する証拠はまだない。汰磨羈はそれを調べるつもりなのだろう。
「元・人間をゾンビにって、もう神様なんだか悪魔なんだか」
黒目、黒髪の眼鏡っ子、『二人でひとつ』藤野 蛍(p3p003861)は小さく首を振る。
元・人間という言葉が躊躇いを生むのは当然のこと。私に彼等を蘇らせることなんてできないことも……当然。アシェンはそう考えて。
「おやすみなさい、を言ってあげなくてはね……!」
事前にアクアベルが言った通り、自分にできることは彼らが今度こそ眠り続けられるようにしてあげることだけだと、アシェンは少し疑問を抱きつつもライフルに手をかける。
「じゃあ、始めよう……」
「まぁ、ともかく、ゾンビ達にはもう一度眠ってもらいましょう! 願わくは、安らかに――」
「せめて、苦しまぬようきっちりと……。生きる屍と化したお前達の無念を必ず晴らすべく生きて帰る……」
哀れな死者に祈りを捧げたラムダ、蛍は覚悟を決め、才蔵も一通りゾンビ達へと呼びかけてから自身のライフルの引き金に指を掛けた。
「……さぁ、仕事の時間だ!」
「着装! バトルラビット! ……んじゃ、行こうぜ皆!」
才蔵の掛け声に合わせ、ウサギをモチーフとしたバトルスーツを着用した九内は向かい来るゾンビ達の討伐に着手するのだった。
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予め、ゾンビはどれだけ現れるか分からない。
そう知らされていたイレギュラーズ達は坂の中腹辺りでそれらの群れを迎え撃つ形となる。
作戦立案は発光で周囲を照らす蛍が行い、ヒーラーとなる珠緒を中心とした陣形をとり、彼女の回復術が皆に最大限の効率で行き渡るようにする。
「珠緒さん、一緒に頑張ろう」
エールをくれたことで力をくれるのは嬉しい珠緒だが、蛍がこの類の敵は苦手そうだと感じて
「魂天に帰し魄地に帰さず……とかその類でしょうか」
そこで、珠緒は振り返るなという注意、神様の狂気……別世界の様々な国の思想が混ざっているような感もあると、目の前の存在に対して主観を口にする。
「構築概念がつぎはぎですと、脆くなりそうなものですけど」
理屈をこねていた珠緒は効率化と合わせ、『仕組みがわかるものは恐怖の対象になりにくい』こともあり、少しでも目の前の相手に対する蛍の心象が変わり、立ち向かい方を楽にできればと考えていたのだ。
「う、うん」
一方の蛍は珠緒の発言の真意がつかめぬまま、虚ろな視線を向けてくる死者の群れを注視する。
「珠緒さんには指一本、弾一発たりとも触れさせないんだから……!」
少しでも前で敵の攻勢を受け止めるべく、蛍は敵最前列へと踏み込んでから炎熱の桜吹雪を降らすことでゾンビどもの注意を引く。その姿からは、ゾンビに臆する素振りは感じられなかった。
「それ以上、肉体を弄ばれるのは我慢ならぬだろう? 安心しろ、直ぐに成仏させてやる!」
動きの鈍いゾンビらへ、蒼き彗星となった汰磨羈はゾンビへと攻め入って身体を貫いていく。
ただ、下手に攻め込みすぎれば、敵に囲まれてしまう為、ヒット&アウェイを心掛ける汰磨羈はすぐに元居た場所へと下がっていた。
逆方向では、囲まれぬよう敵の動向を把握していたラムダも応戦を開始していた。
「常闇は来たれり、恍惚へと誘う不吉の月は昇り咎人達の心を狂気へと駆り立て呪縛する……」
ラムダの使う対群精神感応術式「狂月」は、もはや思考もままならぬゾンビ達を狂気に包み込んでいく。
ラムダもまたゾンビから一方的に攻撃される状況となるのを避け、ヒット&アウェイで攻撃を行って。
「……痛みがあるかどうかは知らないけど、苦しまないように一気に終わらせてあげるよ」
変幻自在の間合いと機動力を組み合わせた戦闘術で、接敵したラムダは蛇腹式魔導剣「咎喰」で敵陣を薙ぎ払っていった。
傍では、才蔵が視力、聴力を働かせ、増援を気にかけつつも集まる敵を多く捉えて鋼の驟雨を撃ちつけていく。
だが、長期戦となると見ていたメンバー達だ。才蔵も連続してスキルは使わず、無理をせずに応戦を続ける。
「運が良かったな。今日キチンとお前たちを殺せるからよ、無様な肉片撒き散らして死ね!!」
殺人的思考を持つ月夜は中途半端に命が繋がった存在に苛立っていたが、月夜は唸るチェーンソーから飛ぶ斬撃を放つことでゾンビの身体を切り裂いていく。
近づいて来たゾンビは直接鋭い牙や爪で襲ってくる他、中にはナイフや斧、銃を手にする敵もおり、油断はできない。
それらで切られ、撃たれた仲間の回復にと、珠緒がタイミングを見て大いなる天の使いの救済の如く仲間の傷を癒す。
「……作り出されたモノであれば、材料・製法から対策が出やすくなります」
なお、彼女は合わせて自らのギフト「桜花水月」とアナザーアナライズによって集中し、敵能力の分析に当たっていた。
「とりあえず、試しにいくぜ!」
ゾンビに毒や麻痺が効くのかと、九内は闘気の糸を発して最も近い位置のゾンビを強く縛り付ける。
「「オオオオォオ、オオオォォ……」」
明らかに縛った敵の見た目が変色し、動きが止まったことで、効果は上々と九内は判断する。
ならばと、九内は肉弾戦で行けるかとそのゾンビの身体を殴りつけ、蹴りを叩き込む。
「相変わらず、でたらめな性能だなこのスーツ……あのウサギ博士えぐいわ」
相手の身体が崩れたことで、九内は着用するスーツを見つめ、その力を再確認してから敵に向かって叫ぶ。
「可愛いマジ神ヒーラーに手は出させねぇぜ! 回復なくなったら真っ先に死ぬ自信があるからな! 俺は!!」
九内は本音で語っているが、作戦としては珠緒中心となる為、彼女の護りは最優先とアシェンも認識する。
「持ち場を離れぬことと見張りが優先なのね」
ほとんど足を動かさぬ代わりに周囲へと視線を巡らすアシェンは、狙いを定めた銃弾でゾンビの頭を撃ち抜いていくのだった。
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最初に群がってきていたゾンビ達をイレギュラーズは順調に撃破していたが、周囲から感じる殺気がなおも迫って来ていた。
「来るぜ、地中から……」
ドーン!
九内の叫びと重なる様に、アスファルトを突き破って現れる新たなゾンビ達。
地中から現れたのは少数だが、新手は木々の間からもゆっくりと近づいてきている。
「陣形固めた下からとかマジ勘弁!」
ゾンビに迫られ、真っ青になる九内は両腕を使って膨張した黒の大顎を形作り、狙ったゾンビの身体を地面ごとぶち抜いてしまう。
その攻防でゾンビを撃破したものの、九内の身体には牙を突き立てられた跡が残っていた。
仲間の傷を確認すれば、珠緒が他メンバーの状態も見て、再び大天使の祝福をもたらす。
「大事なとこ! 珠緒ちゃん! マジ回復サンキュー!!!」
傷が塞がったことが嬉しいのか、はしゃぐように告げた九内の返礼に続き、珠緒は何かの声を感じ取る。
ファミリアーのフクロウに確認させるが、それらしき声の主は確認できず。
(気のせいでしょうか)
そんな珠緒を護るべく、蛍は桜吹雪の幻影を発し、嵐を巻き起こすことで残っていたゾンビを大きく吹き飛ばす。
それでも近づいてくるしつこいゾンビには、汰磨羈が頌義颰渦爪で直々に速度を伴って貫き、勢いのままに叩き潰す。
「ゾンビといえば、これだろう?」
その際、汰磨羈は敵の首を素早く跳ね、さらに頭を直接砕いて敵を倒していた。
数の多さもあり、アシェンも銃を持ったゾンビを倒してから近場に迫る敵へと応戦し、弾丸を叩き込む。
「……? 何でしょうか……?」
そこで、アシェンは何かに呼ばれたような気がして。
実年齢はともかく、内面は子供な彼女はその声に興味を持つ。
設置されている地雷は率先してでも踏んでいきたいスタイルのアシェンはそっと視線を向けようとする。
「返事はしても、振り返るな」
だが、才蔵が警告すると、びくりと体を震わせたアシェンは硬直してしまう。
才蔵もそれには気づいていたようで、ライフルのスコープを除いて出来る範囲でその正体も探る。
一方で、一瞬遅れてからアシェンが視線を巡らしたが、すでに声はなくなっており、何も感じられなくなっていた。
「うう、残念なのだわ……」
何かが必ずいたと察していただけに、その正体を確かめたかったアシェンは少ししょげつつも近づいてくるゾンビの群れの対処へと戻っていった。
(ミイラ取りがミイラにならぬようにせねばな)
狂気を発する神らしき存在のやりように腹を立てていたラムダも声の主を気がけていたが、振り返らぬようにと自制して蛇腹式魔導剣を縦横無尽に振り回す。
それはまるで四方八方から襲い掛かる大蛇の牙を思わせ、気付けば毒に侵されていたゾンビが1体、また1体と崩れ落ちていく。
才蔵は他にも、数で押し寄せるゾンビに圧倒される仲間を助けるべく、近場にまで迫るゾンビに零距離射撃「オ’レンジ・キス」を撃ち込む。
「まだ増援は来る。態勢を整えるべきだ」
「うらァ、こっちだ。俺はここにいるぜェ!」
まだ周囲には十数体の敵が群がっている。月夜は一時的に珠緒を庇うように動き、しばしチームの劣勢をしのいでいた。
ただ、個々ではさほど大きな力を持たぬゾンビ達だ。
気を抜かずに対処すれば、撃破は決して難しくはない。
多くの敵を相手にしていた蛍はゾンビが珠緒へと接近するのを防ぐべく、再度炎熱の桜吹雪を舞い散らせる。
「「オオォオォオオ……」」
それらはゾンビですら見とれる程に美しい。
ただ、それに恍惚としてしまえば、自らの身体についた炎に気付いた時には時遅く、身体は炎上してしまう。
「ピキーン! タイミングバッチリだ」
その蛍の攻撃に合わせ、九内が炎に悶える敵を捉えて。
「ぶち抜くぜ! 南無阿弥陀仏!」
黒い顎となった九内の一撃がまたも、地面ごとゾンビを喰らう。顎が消え去った時には、ゾンビの姿はなくなってしまっていた。
「「ああぁぁあああぁあ……」」
生ある者へと惹かれるようにやってくるゾンビ達。
集まる敵へと再度才蔵がライフルを向けて引き金を連続して引き、発砲した弾丸の雨を降らせてゾンビどもの身体を崩していく。
「……周囲から感じる殺気が少なくなってきた気がするな」
敵の討伐数は優に20を超えている。まだ周囲には10を超える敵が群がっているが、才蔵はその外からはもう迫り来る敵の存在を感じてはいないようだ。
「奥から来るゾンビはもういないのだわ」
アシェンも才蔵の意見に同意し、視認できる範囲内で最も遠い敵に黒色のアサルトライフルの銃口を向け、確実にゾンビとしての有り様を奪い、元の動かぬ骸へと戻す。
2人の主張通り、ゾンビの増加には歯止めがかかってきていたようで、明らかに周囲の数が減ってきていた。
「では、彼らを鎮めれば終了ということだね?」
狂月と大蛇咬を繰り返すラムダは頃合いを見て、ゾンビとの間合いを詰め、髑髏の呪いを刻み、または闇の一撃を見舞って相手を土へと還していく。
「大人しく俺に殺されろ!」
「あぁああぁ……」
ある意味でゾンビを越える殺気を放ち、月夜はうなりを上げるチェーンソーで敵の身体を寸断していく。
相手がナイフや斧を持っていたところで、月夜はそれごと敵の身体をぶった切ってしまう。さすがは一部で神をも切り裂くと言われる武器といったところか。
残る数が見た目で数えられる程度になれば、回復に専念していた珠緒が仲間達へと呼び掛ける。
「土や粘土といった素材でできたゴーレムの線も考えたのですが……」
仲間達の協力も得て、ゾンビ達の分析も完了した彼女は険しい顔をする。ゾンビ達が事前情報通り、元・人間であると察したようだ。
人間から生み出されたゾンビはすぐには量産できないのか、これ以上増えないと珠緒は判断する。
その珠緒も一時神聖な光を発して残るゾンビを灼いていく。
メンバー達の度重なる攻撃に残る数も片手で数えられる程となって。
「それ以上、肉体を弄ばれるのは我慢ならぬだろう? 安心しろ、直ぐに成仏させてやる!」
残る数が少なくなり、汰磨羈は一気に距離を詰めたゾンビの首を跳ね飛ばす。
周囲で仲間達がゾンビを打倒したこともあり、汰磨羈が倒した1体が最後となる。
先程まで呻き声に包まれていた石神の坂はようやく、元の静けさを取り戻したのだった。
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全てのゾンビを討伐はせども、イレギュラーズは気を緩めない。
「何とかなった……のかしら?」
蛍は珠緒の手を引いて無事を喜び合うが、まだゾンビが地中から現れる可能性も否定しない。
「これが氷山の一角だとしたら。この先は、一体どうなっている……?」
汰磨羈は坂の上方、ダムの方向を見やる。そこには、新たなゾンビがうろついている可能性もあるだろう。
加え、戦闘中に聞こえた何者かの声。
「何だったのかしら……」
アシェンは首を傾げ、改めてその正体について語り合うと、月夜が苛立ちげに霊視の力で周囲を見回す。
「神だかしらねーが、随分人間を好きにしている神のようだな」
月夜はそれが祟り神といった類であると考える。
何でも神様のせいだとしてしまうのは決して良いことばかりではなく、危険なことだからこそ神様として触れぬようにしている……と。
「戦いの中でなければ、振り返ってみせたのにな」
……………………。
そこでまた、かすかに聞こえた声。
「後ろの正面だーれだってか」
皆、それを振り返るかと躊躇する中、月夜はすぐさまそれに呼びかける。
「そこにいるやつ。ぶち殺してやるから、隠れてねェで、出てこいくそカス」
……………………。
月夜が煽るように呼びかけるが、すぐにその気配は消えてしまう。
しばらく、イレギュラーズ達は何か異変が起こることも懸念して動かずにいたのだが……。
結局、何も確認できず、メンバー達は夜が明ける前に報告へと戻ることにしたのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
リプレイ、公開です。
MVPはは今作戦の立案を行った貴方へ。立役者であるヒーラーの貴方にも合わせて称号をお送りいたしました。
今回はご参加、ありがとうございました!
GMコメント
イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
夏あかねSD主導のシナリオ企画より、<希譚><呪仔>のシナリオをお送りします。
合わせて、アシェン・ディチェット(p3p008621)さんのアクターアクションで発生したシナリオです。
●概要
一定数のゾンビの討伐、撃退。
●敵……怪異
◎ゾンビ×??体
最初の地点で現れるのは20体ほどです。
人型を保ってはいますが、あちらこちらが腐食しかけている動く死体です。
毒噛みつきにマヒひっかきをメインに、数で押し寄せてこちらの動きを制限してきます。
また、中には武器を手にする個体も存在し、斧やナイフ、銃などを所持する相手もおり、増援も多数現れる為、その対処も必須です。
どこから現れるか分からない為、できる限りの想定をして戦闘に臨むとよいでしょう。
●状況
舞台は希望ヶ浜石神地区。
夜、メンバー達が山上ダムへと続く坂道を登っている間に、どこからか現れるゾンビの群れを相手することになります。
場所は疎らに木が生える緩やかな山道。ぽつりぽつりと街灯が立っており、凸凹な地面を照らしています。
周囲を見回していると、何処からか現れるゾンビの群れを相手することになります。
なお増援が現れますが、ある程度討伐を進めれば増援は止まります。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
それでは、よろしくお願いいたします。
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