PandoraPartyProject

シナリオ詳細

夏休みスライムフェスタ

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●まだ夏休みって時期じゃねえや
 海。
 美しき海。
 幻想のある海岸にはこの季節、『海スライム』が打ち上げられることで知られている。
「海スライムってゆーのは、海の中をぽわわーって漂ってるスライム状のモンスターのことなのです。ぽわわー」
 スライム感を全身で表現する『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)。
 でもスライムっていうかほぼクラゲだった。
 実際クラゲみたいに漂ってきたプランクトンや魚を取り込んで喰うっていう生物なので、あんまり間違ってはいない。
 けれどグラゲと違うのは、陸に打ち上げられた後のことである。
「陸に打ち上げられた海クラゲはそのまま砂地をぞりぞり移動して近くの動物を食べちゃうことがあるのです。
 放っておくととっても厄介だし、海岸の貝や海藻も汚染されるので漁師さんたちがすっごーっく嫌な顔するのです。
 というわけで――!」
 ビシッとクラゲのポーズをとるユリーカ。
「ローレットが、退治を依頼されたのです!」

 依頼主はかのネオ・フロンティア海洋王国、ソルベ・ジェラート・コンテュール氏である。
 夏になると観光客が多くなるってーことで首都リッツパークの近海警備が盛んになっているのだが、大召喚の影響か今年の海魔がアツいらしく、細々としたところに手が回らないようだ。
 そんなわけで、ローレットが助っ人としてあちこちの穴を塞ぐ依頼を受けたワケである。
「基本的には海岸で待ち構えて、あがってくる海スライムをえいやーって倒し続けるのです。何回かの波にわけて来るので、スタミナ配分が大事! 大事なのです!」
 けど皆さんならきっと大丈夫なのです!
 と未だにクラゲのポーズのまま言うユリーカであった。

GMコメント

【オーダー】
 成功条件:海スライムの討伐(1~3ウェーブ全て)
 失敗条件:海スライムに防衛ラインを突破されること

 海クラゲが3つのウェーブに分けて上陸してきます。
 これを全て撃退するのがお仕事です。
 ウェーブごとに解説していきましょう。

●第一ウェーブ
 海スライムがまばらにぱちゃぱちゃっと上陸してきます。
 ブルーカラーの海スライムで、反応がマイナスえぐるくらい低く、防御ってもんを知りません。大体先手をとれるでしょう。
 (うっかりすり抜けて行かれないように)みんなでマークして一人一殺くらいの気持ちでぽこぽこ攻撃しまくればこのウェーブを乗り切ることができるでしょう。
 みんなの攻撃パターンを見せつけるパート、くらいの気持ちで軽くいきましょう。

●第二ウェーブ
 レッドカラーの海スライムが群れを成して上陸してきます。
 ここからが本番。前衛チームで壁になり、スライムにめっちゃ群がられている所を他の皆で攻撃しましょう。
 レッドの弱点は回避の低さです。クリーンヒットがしやすいのでBSも大体効くと思ってください。

●第三ウェーブ
 巨大な海スライムがどぱーんと上陸してきます。
 その名もジャイアント海スライム。これが三体上陸するので、海岸でしっかり留められるようにマーク要員を3人以上はつけて置いてください。
 たっぷりスライムボディのため特殊抵抗がメチャ高く、BSはまあ通じないモンだと思ってください。
 またクリティカル補正値の高い【弱点】攻撃を使ってくるので、盾役がめりめりとかされます。服はとかされません。ざんねんだね。
 ダメージも結構なモンになるので、回復よりも『やられるまえにヤレ』の勢いで攻撃にふっちゃうと安定するやもしれません。

※ウェーブ間の休憩はできません。ぶっ通しです。スタミナ配分にご注意ください。

【アドリブ度】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。

  • 夏休みスライムフェスタ完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年06月08日 21時30分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)
波濤の盾
如月 ユウ(p3p000205)
浄謐たるセルリアン・ブルー
アレフ(p3p000794)
純なる気配
清水 洸汰(p3p000845)
理想のにーちゃん
冬葵 D 悠凪(p3p000885)
氷晶の盾
宗高・みつき(p3p001078)
不屈の
雷霆(p3p001638)
戦獄獣
美面・水城(p3p002313)
イージス
ジェイド・ブラッディクロス(p3p004616)
正義馬鹿な男爵様
カシミア(p3p005160)
森の守護者

リプレイ

●ネオ・フロンティア
 海鳥の声が遠のくほどに海岸沿いはざわついていた。
 オペラグラスを翳す人、指をさして語らう人、腕組みをして唸る人、ホットドックを売る人。その殆どが野次馬だが、度胸ある野次馬だ。
 毎年夏になるとやってくる海魔ウェーブ。海沿いに暮らす度胸ある人々はそれを風物詩くらいにとらえていたが、今年は一段上のアツい波が来るという。
 そのうえ今ネオ・フロンティアにはローレットというギルドのイレギュラーズたちが沢山やってきて、戦う姿が間近で見物できるという話である。
 注目を浴びた砂浜の、海風も強い真ん中。
 ピンとした獣耳を一度きゅーっと畳み、背伸びをするかのようにぴんと伸ばした。
「海だー!」
 実際背伸びしていたようで、グーにした手を突き上げてカシミア(p3p005160)は海風を満喫した。幻想の海も悪くは無いが、海洋の海はひと味違う。
「うむ……!」
 『正義馬鹿な男爵様』ジェイド・ブラッディクロス(p3p004616)は(今は見た目だけ)豪華なマントをばっさと払うと、船首に立てばさぞかし目立つであろう十字のポーズをとった。
「海! まるで心が澄んでいくようである! 頑張ろうでないか、皆の者! スライム如き何する者ぞ! 我らの力さえあればこんな困難蹴散らせてくれるわ! わはは!」
 つい最近戦いを始めたとはとても思えない堂々とした貫禄。
 準備運動をしていた『其の力は誰が為に』冬葵 D 悠凪(p3p000885)も、彼にあおられてか調子が良さそうだ。
「この炎天下、色々と気を付けないと」
「頑張ってねー!」
「たのむぜー!」
 やる気十分の悠凪たちに、堤防の上から見物人たちが声援を送ってくる。今から海スライムがウェーブ作ってやってくるというのにたいした度胸である。
「きちっと守ってみせますとも、海スライム……ここから先へは一歩も通しません」
「調子狂うな。勿論いい意味で」
 『不屈の』宗高・みつき(p3p001078)が苦笑しながら魔術書を開く。
「ネオ・フロンティアの活動こう、『待ってました』やけど……危なくないんかな、あの人たち」
 『海洋の魔道騎士』美面・水城(p3p002313)が砂地で動きにくく鳴らないようにと足踏みをしつつ振り返る。
「サーファーに多いよな、ああいうノリ」
「まぁ、うちら以上になれてそうやし、危なくなったら逃げるやろし……」
 いつもの亀の甲羅めいた盾でなく、竜鱗模様の鞘から直刀を抜いて素振りする水城。
「守ったらんと、な!」
「おう、『鉄壁の5番』と呼ばれた実力、見せてやるぜ!」
「ごばん?」

 応援されるのになれていないのかそれともたまたまか、『浄謐たるセルリアン・ブルー』如月 ユウ(p3p000205)は声援を送る人々にどこか気恥ずかしそうなリアクションをとっていた。
 『まあほっておいて被害が出るのもあれだし』的な気分で依頼を受けはしたが、ダイレクトに応援されると悪い気分はしないものだろう。トラウマのことは、別にしても。
 『堕ちた光』アレフ(p3p000794)はしばしその様子を観察してから、視線を外して手袋をはめた。
 手袋の裾を引き、地平線とその先に並ぶいくつもの船を見た。
「スライムか。相変わらず多種多様な様子だな。油断も慢心も出来る相手では無さそうだ、全力で行くとしよう」
 本来海中を漂うようとされる海スライムは、海流にのって上陸する。
 沖の船たちはそれを海中でブロックするため頑丈な網を海中にはってぷちぷち殺している海洋警備隊のものだそうだ。
 それでも網の隙間を抜けたり、網ごと突き破っちゃうジャイアントスライムがいたりでどうしても上陸を防ぎきれないらしい。そんな中でも最初に相手をすることになるのは、網を抜けた微量な海スライムだ。
 浜にべしゃんと打ち上げられ、うねうねしながら身体(?)を起こすスライム。
「うわっ、すっげーぷるぷるしてる! すっげー! でっけー!」
 こういうオモチャとか好きそうな『雲水不住』清水 洸汰(p3p000845)は上陸の様子が見やすいようにパカダクラのパカおに跨がっていた。
「こんなのがいたら、漁師さんとか困るよなー。っしゃ、このコータさんが人肌脱いでやんぜ!」
 パカおから飛び降りる洸汰。
 と同時に、堤防の上から腕組みをして海を見つめていた『海抜ゼロメートル地帯』エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)が派手に砂浜へと飛び降りた。
 肩にクロスボウを担ぎ、拳を地に着けるようにして着地。
「やはり、海が近いと頭が冴える」
 深く呼吸をして、熊のような巨躯で直立した。
 その隣では、同じくらいに大柄な『戦獄獣』雷霆(p3p001638)が熱を発している。
 胸や顔の傷から炎がめらめらと燃え上がっているのだ。
「押し寄せる敵の波、か。俺達が防波堤と言うわけだ。実に夏らしいな。満喫させて貰おうか」
 ウッドストックのついた小ぶりなライフルを肩に担ぐと、雷霆はエイヴァンと共に歩き出した。
 同時に突きだし、波打ち際の海スライムたちめがけて乱射を始める。
「さあ、パーティーを始めようか」

●Sea of the Tiger
 章は区切れど時間は進んでいない。平たく射撃をしながらずんずんと歩を進める二匹の獣、雷霆とエイヴァン。
 砂地に刻まれた大きな足跡。回転して飛んでいく焼けた空薬莢。
 弾と矢は今まさに上陸しようとする海スライムたちへ次々着弾し、恐らくは内蔵されているであろう核の部分を破壊しでろでろのゼラチン状物質の死体へと変えていく。
 それを乗り越えて上陸を果たした海スライムは、やっと足がついたぜとばかりにうごうご移動し手近な餌へと食らいつこうとした。具体的には砂浜に陣取った水城たちに襲いかかるのだ。
「知っとるよ、こういうんは――」
 自らを覆わんばかりに広がった海スライム。その中央にぼんやり見える球状の内臓物めがけて刀を差し込むと、スライムは途端に結束を無くして崩れ散った。
「巨大なアメーバみたいなもんや。核を壊せば一発」
「なるほど、よし……!」
 ジェイドは(見た目は豪華な)剣を抜くと、上陸したスライムの群れめがけて突撃した。
 豪快なスイングはスライムの肉(?)を斬る。
 勢いをうしなうことなくジェイドの足に絡みつくが、ぼんやり見えた核めがけて剣を突き立ててスライムを仕留めた。
「わはは! 可愛い奴め! 俺の攻撃を喰らうがいい!」
 調子づいて剣を振り回すジェイド。
「出過ぎると囲まれるぞ! こうなったら――パカお!」
 洸汰はパカダクラに乗って海スライムの群れ、もといジェイドのすぐそばまで駆け寄らせると、背から飛ぶようにして彼の前に着地した。
 仲間の死体に紛れて不意打ちで攻撃しようとしていたスライムを両足スタンプで踏みつぶし、逃れようとする所をバットでかち割っていく。
「逃さないぞちびすけー!」
 スライムの上陸箇所はひとつだけではない。
 あちこちに打ち上げられたスライムが砂浜めがけて歩き始める。
「出番ね」
 待ち構えていたユウが手を翳すと、ブレスレットが青白く輝いた。
 そんなユウが餌に見えたのか突き進んでくるスライム。距離を詰められるより早く、ユウは自らの周囲に生まれた青い精霊力の球体を解き放っていく。ホーミングしてスライムに着弾した球体はぱちぱちと炸裂し、スライムの肉体を破壊していった。
 負けじとスライムに接近し、行く手を塞ぐアレフ。
 そこまでだとばかりに手を翳し、眼前を払うようにフィンガースナップを鳴らした。
 十字の光が無数にはじけ、スライムが足場の砂もろとも爆発四散していく。
 あちこちで迎撃が始まっている。悠凪も遅れをとらぬようにと広く展開し、上陸してきたスライムに向け、曲刀を用いて格闘攻撃を始めた。
 切り裂かれたスライムがポコポコと奇妙な音を立てて分裂する。いや、元々二体あったものが分かれたのだ。
「そっちは任せて!」
 カシミアは美しい模様の入った木製腕輪をからんと鳴らすと、小さな種をスライムへ投げつけた。
 種をうっかり飲み込んだスライムが突如として爆発。というより、種が火花を吹いて肉体(?)を吹き飛ばしたようだ。
 ダメージを受けたスライムが逃げるように陣の外側へとうねうねしていく。
 悠凪もそれを逃さぬようにと追いかけて格闘攻撃を仕掛けていった。
 ついに核を切りつけられたスライムがぐったり脱力し、地面にぺたーっと伸びていく。
 それ以上逃げないように火花の種をぺいぺい投げつけて倒しきったカシミアが、ぺたーっとのびたスライムを指先でつついてみた。
「なんか……」
「ん?」
 振り向いた悠凪に、ぽつりと漏らすカシミア。
「頑張ったら食べられそうだね!」
 と、その一方。
「よし、俺も無様な姿を見せるワケにはいかねぇな!」
 みつきは魔術書を開いて魔法のページを参照すると、書かれているスクリプトコードを詠唱し始めた。
 コードの通りに魔術が発動し、目の前の空間が歪んでいく。光の屈折というか水蒸気の破裂なのだが、海スライムを破壊するには充分な破壊力だ。接近するスライムを衝撃で吹き飛ばし、海へぼちゃんと落ちていく。
「なんだ、このペースなら楽勝だな!」
 笑うみつき。フラグのようなことを言ったからではないが……スライムの落ちた海から一気に十匹くらいの海スライムが打ち上げられてきた。
 血液が全身に漲っているのか、真っ赤な威嚇色をだして『ぼぼぼ』という煮えたスープのような音を放っていた。
 その後ろからはさらなるレッドカラーのスライムたちがざぶざぶと上陸し、まるでマグマのように泡立ちながら突き進んでくる。
 みつきは一目で理解した。
「ああこれ、やばいやつだ」

●The Immigrant Sea
「ちくしょう知ってたよ!」
 赤い波から全力疾走で逃げるみつき。
 魔術書を開いてコードを確認すると、走りながら後ろ向きにレッドスライムの群れを指さした。
「『ロベリアの花』!」
 悪意の毒霧が花咲くように広がり、レッドスライムたちを飲み込んでいく。
 避けるってことを知らないのかまともに霧が浸透したレッドスライムがぼこぼこと表面をはじけさせ、肉体(?)の表面を壊死させたようにぽろぽろ剥離させていく。
 プランクトンを食べる要領でうっかり取り込んでしまった毒を排出しようと抵抗を試みているらしい。
 だがチャンスだ。
「オレたちで引きつけるぞ! まずは三つに引きはがすんだ!」
 洸汰はバットで地面を叩きながらレッドスライムを呼びよせにかかった。
 スルーという言葉を知らないのか、きわめて簡単に煽られていくレッドスライムたち。
 といっても横に広く展開しているので一度に全部を引き寄せることはできない。というか、しない。
 悠凪もそれに乗じる形で別のレッドスライムたちを名乗り口上でおびき寄せ始めた。
 このときおびき寄せることが出来たのは僅か数体だったが残る連中が雪だるま式に群がっていった。
 悠凪は理力障壁で防御しながら、群がってくるレッドスライムの迎撃に入っていた。
 放って置いてもダメージを七割近く軽減できる悠凪をもってしても、大量のレッドスライムによる群がりパンチはキツいものがあるようだ。
 それは水城も同じだった。
 悠凪たちと同じように前に出て名乗り口上を用い、群がるレッドスライムにブロッキングバッシュを打ち込んでいく。
 最初に名乗り口上で敵集団を三つに分けたのがよかったようで、後から来るレッドスライムたちも三つに分かれて群がっていく。おかげで連続回避によるマイナス補正が少なくて済んだ。
 鞭のように伸びてくるレッドスライムの肉体(?)。それを素早く飛び退いてかわすも、別の鞭が水城の足に絡みつく。絡みついたレッドスライムを刀で刺し殺すも、すぐさま飛びついてきた別のレッドスライムたちが腕や首に絡みつき、水城の動きを着実に奪っていく。
 新たな鞭をくりだすレッドスライムたち。
 次は直撃コースだ、という所で――アレフが威嚇術でスライムを吹き飛ばした。
 数こそ多いが個々の戦闘力は小さなもの。そう気づいたアレフは一旦水樹の前に出ると、手を翳し神薙で上陸するスライムたちを薙ぎ払った。
「こんなところか」
「クククッ! 中々骨のある奴等ではないか! 燃えてきた!」
 ジェイドが飛び出し、レッドスライムに剣を突き立てる。と同時に、懐から取り出した火炎瓶をスライムめがけて投擲した。
 燃え上がるスライム。
 それを派手に飛び越え、カシミアが毒草の詰まった団子をスライムへと投げつける。
 うっかり飲み込んだスライムが組織崩壊をお越し、ぼこぼこと身体を崩れさせていく。
「すごい数! 本番ってこういうことだったんだね!」
「宗高、敵を引きつけている仲間の回復をしてくれ。援護する」
 エイヴァンは片膝立ちの姿勢で自らを砲台化すると、ボウガンを的確に発射していった。
 レッドスライムの核へそれぞれ突き刺さり、軽くおぼれかけていた洸汰がぷはあと顔を出す。
「…………」
 雷霆は同じように味方に群がったレッドスライムをライフルの連射でそぎ落としていった。
「まずいな」
 と、小さく呟いたが、そのことに気づくものはあまりいなかった。
「伏せてて、カッターを飛ばすわ」
 ユウが宙を払うように手を翳すと、青白い光が氷の丸鋸へと変化した。
 それをいくつも作り、作ってはスライムたちへと発射していく。
 すぱすぱと切断されたスライムたち。より正確に言うならスライムの核がいくつも切断され、ギリギリ切断を免れた個体も切断面から浸食したダメージで壊死し、どろどろと溶け崩れていった。

 そうしているうちに、ついに第三の波が訪れた。
 ズドンという爆発のような音と共に陸地に飛び出したのは巨大なスライムの塊。ジャイアントスライムだ。
 ぎり、と歯噛みするユウ。
「もうそんな時間? まだレッドスライムを倒しきってないのに」
「やはりな……出るぞ」
 雷霆は突撃の構えをとると、傷口から炎を激しく吹き上げた。
 ライフルをフルオートで射撃しながら真正面より突撃。
 対するスライムは巨大な鎖鉄球状のハンマーを形成。至近距離まで迫った雷霆を殴り飛ばした。回転しながら飛んでいくライフル。
 血を吹き、砂浜を派手にバウンドしながら転がっていく雷霆。
 が、幾度か転がった所で両手をつき、獅子のような四足姿勢でさらなる突撃を仕掛けた。
 衝突と同時に拳の中に握った気功爆弾を爆破。ジャイアントスライムの一部と共に砂と海水と血とスライム溶液にまみれて乱れ飛んだ。
「なんで一人で!? 危ないよ!」
「……なるほど。そういうことか」
 慌てるカシミアとは対照的に、アレフがクールな調子で手袋をはめなおし、別のジャイアントスライムへと突撃していった。
 背中から光の翼を展開し、至近距離からの魔術を叩き込む。
 強烈な衝撃でジャイアントスライムの一部が吹き飛ぶが、対抗して繰り出されたのしかかりに対して致命的な回避失敗を起こして直撃を受けることになった。
 盾に向いているわけではないが、やるしかない。レッドスライムの全滅が遅れていることで生まれた状況だ。
「作り出すは、不倒の意志の顕現 誰かを守る絶対の鎧!」
 いち早く群がりから脱した悠凪がアンブレイカブル・リゾルヴで自らを強化し、残るレッドスライムに組み付いていく。
 暫く味方の回復に追われていたみつきも前線に加わるが、その頃には雷霆が派手に吹き飛ばされ、堤防の壁に激突していた。アレフも派手に飛ばされ、膝を突いている。
 見物人たちが慌てて逃げていく。
「土俵際のみっちゃんと恐れられた実力、見せてやるっ!」
「何で呼ばれたん」
「子供相撲だ!」
「昔の話やんそれっ」
 みつきと水城が防御を固めてジャイアントスライムへ突撃していく。
「敵は健在、我等は疲弊…だがそれがどうした! 我等は神に選ばれし者だぞ! 我等の『正義』を示す時は今だぞ! さあ、『勇気』を出せ! 守るべき『愛』する同胞達の為にも奮い立て!スライム如き……我等の敵ではない!!」
 ジェイドは仲間を鼓舞し、ユウやカシミアや洸汰たちをつれて突撃していく。
 ユウの放った氷の鎖がジャイアントスライムへ巻き付いていく。動きの大きく鈍ったところへ、ジェイトと洸汰はそれぞれ剣とバットを叩き込む。
「そろそろペチャってなっとけー!」
 大きくえぐれ、核が露出する。
「あそこへ打ち込め。弱点だ」
「わかった、一緒にだね!」
 しっかりと狙いを定め、ボウガンを構えるエイヴァン。
 カシミアは手を翳し魔力を球状に固めていく。
「今だ!」
 核に狙いを定め、同時に攻撃を叩き込んだ。
 爆ぜるように壊れ、伴い崩壊していくジャイアントスライム。

 それからなんやかんやで、イレギュラーズたちはスライムの群れを倒しきることに成功した。
 堤防に大きく入ったヒビは、海洋の人々にこの夏の熱い戦いを思い出させることだろう。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete!
 ――congratulation!

PAGETOPPAGEBOTTOM