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シナリオ詳細

青春腐肉マラソン

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●初夏のグール狩り
 喉と鳴らす不気味な声が、あちらこちら。
 無数の人影が腐臭を伴ってやってくる。
 剣と盾を構えた傭兵団の戦士は、その一体めがけて突撃した。
「くらえ……!」
 剣が相手の首をはね、切り裂いて飛ばしていく。
 横では別の仲間が人影にコンビネーションアタックを仕掛けていた。
 地面に倒れる死体。転がる首。しかし本当の意味で死亡したのはずっと前のようで、肉体はとうに腐敗していた。
 瓶底眼鏡をかけた男がかがんで死体を観察しはじめた。
「ふうむ、やはりこれはグールのようですね」
「グール? ゾンビじゃないのか? ――おっと!
 戦士の男が振り返る。掴みかかってくる集団に盾を翳して牽制しながら。
「人間の死体に悪霊がとりついて出来上がるモンスターで、人間への執着と飢餓をコントロールされているといいます」
「……つまり?」
「人間食べるマシーンです。屍を食う鬼と書いて……屍食鬼(グール)ですよ」
 眼鏡をちゃきっとやって、瓶底眼鏡の男はポーションの瓶を放り投げた。
 格闘家の男がそれをキャッチして頭から被る。
「なるほど。それで首を落としても足を折っても止まらないわけだ」
 首無しグールや足を引きずったグールが、両腕を伸ばして掴みかかってくる。
「もう視覚とかそういうの関係ないらしいネ」
 後ろから銃をぱかぱか撃っていた女がリロードしながらぼやいた。
「けど数が多すぎない?」
「全部倒すのが仕事じゃない。ある程度は倒せればいいんだ。おい、そろそろ撤収しよう。スタミナが切れてきた」
「賛成だ。こいつらは足が遅いみたいだからな、全力で離脱するぞ!」
 戦士の男はグールを突き飛ばすと、仲間の撤退を確認してから自分も走り出した。

●パサジール・ルメスの民
「やあ、よく来たね。グール退治ってことは話して置いたと思うけど……」
 幻想からラサへつながる商業路のひとつ、通称赤色商路。
 その途中に存在する小さな村で、『黒猫の』ショウ(p3n000005)はイレギュラーズたちを待っていた。
「『パサジール・ルメス』をしてるかい? 混沌世界を移動する少数勢力で、ラサからきたキャラバン隊の護衛をしていたんだってさ。そうそう、『あの』キャラバンだよ」
 ショウはどこか楽しげだ。キャラバンにイレギュラーズたちが大挙して押し寄せた光景を思い出しているらしい。
「暫く商売したらまたラサに戻るらしいんだけどね。次に使う道がモンスターでぎゅうぎゅうになってるらしいんだ。
 というわけで、ローレットに地ならしの依頼が来てる。
 具体的には『ある程度まで』のグール退治を頼みたいんだってさ」

 グールというのは死体に悪霊が取り憑いて動くアンデッド系のモンスターだ。
 ひたすら人間を狙って襲いかかり、殺したものを食うという習性があることからグールと呼ばれている。
「個体ごとはもろくて弱いんだけど、首をはねてもまだ動くくらいタフで、そのうえ数がえらく多いんだ。
 はじめのうちはともかく、深いところまで行けば取り囲まれるのは必至だと思っていいくらいだよ」
 スタミナの管理、リスクの管理、ついでに言えば個々人の相互フォローが大事になってくるだろう。
「仕事が終わったらここへ戻ってきてよ。その時、報酬を渡すそうだからさ」

GMコメント

【オーダー】
 成功条件:グールをいっぱい倒すこと

 パサジール・ルメスは複数の傭兵団に細々とグール退治を依頼し、メンドーな数を減らそうと試みているようです。
 ローレットはそのうちの一つで、『全部倒す』みたいなことは求められていません。もっというと、全部倒すのは多分無理です。
 ですのでいっぱい倒すことを目標にして下さい。
 いっぱいはいっぱいです。五つより上はいっぱいってかぞえます。

【深度】
 グールの群れはその中心地みたいな場所があって、そこに近づけば近づくほどグールの密度が増します。最終的には満員電車みたいになるらしいのですが、あんまり見たことある人はいません。
 なぜならば、外側のまばらな連中をざくざく削ってるうちに個体が散っていって最終的には気にしなくていいくらいの数に減るからです。

 今回の依頼に関係ある情報としては……
 深度に応じてかかるリスクが変わります。
 戦闘に自信が無いメンバーの場合、浅い所で戦ってサッと帰ってもOKです。
 自信があるなら深いところまでトライしてみるのもいいでしょう。
 どのみちヤバそうだったら帰ってください。
(今回はメンバー半数が戦闘不能になったら強制撤退とします)

・震度1
 グールがまばらにうろついている。
 人間を見つけるととりあえずわーっと集まってくるが、一人につき一体ずつ倒していれば余裕が出る程度の密度。

・震度2
 グールが群れをなしている。
 前衛が思いっきり取り囲まれたり、後衛が掴みかかられたりする。
 集中攻撃による回避マイナス補正を気にし始める頃合いです。

・震度3
 未知のぎゅうぎゅう詰めゾーン。
 控えめにいって地獄。

【グール】
 EXFの高いモンスターです。
 その他の能力はまあ低いので、タイマン張ってる分には負けないでしょう。
 恐いのは群がられてからです。

 個体数もしゃれにならないくらい多いので、APはまあ枯渇するものと考えて置いてください。
 AP不要の攻撃手段は必須。自動回復ができると便利です。
(今回は敵が次から次へわくため、APを1ターンかけてスキル1~2発分回復するのはかえって非効率になるのでご注意ください)

【アドリブ度】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。

  • 青春腐肉マラソン完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年06月06日 20時25分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

ロジャーズ=L=ナイア(p3p000569)
同一奇譚
ジョゼ・マルドゥ(p3p000624)
ノベルギャザラー
善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)
レジーナ・カームバンクル
キュウビ・M・トモエ(p3p001434)
超病弱少女
ウォリア(p3p001789)
生命に焦がれて
長月・秋葉(p3p002112)
無明一閃
秋嶋 渓(p3p002692)
体育会系魔法少女
Morgux(p3p004514)
暴牛
ロクスレイ(p3p004875)
特異運命座標
ルー・カンガ(p3p005172)
カンガルーボクサー

リプレイ

●小さな世界の小さな仕組み
 生ぬるい風の吹く草地。春を前にして雑草のはえきった平地は、ゆるやかな凹凸をもって広がっていた。
 『森の一族』ロクスレイ(p3p004875)は新緑に紛れるようなフードを改めてふかくかぶり直すと、踵をトンと打ち合わせた。
「さて、新しい魔法のお披露目といこーか」
 短く何かを唱えると、ロクスレイの身体が風を巻き、ふわりと飛び上がっていく。
 10メートル高度。常人であれば大けがをするような高さまでやってきて、ロクスレイは額に手を翳した。
「はっはー! ヒッデェ眺めだなー。まるでグールがゴミみてーだぜ」
 ロクスレイの言うとおり、平地のずっと先はグールが大量にうろうろとしていた。
 ランク付けされた深度のうち深度3のエリアも見通すことができたが、話に聞くほどぎゅうぎゅう詰めには見えなかった。だが人が入ればバーゲンセール状態になること確実だろう。
 それほどではないにしろ、地を歩く『暴牛』Morgux(p3p004514)の目にも、遠くにちらほらとうろつくグールや、そのもっと遠くでみっしりしているグールの姿が視認できた。
「グール、ねぇ……斬り心地が微妙だからあんま好きじゃねぇんだよな」
 背に担いだグレートソードに手をかける。
 彼の想像したものと同一かはわからないが、少なからず今眼前にあるグールは死んだ人体に悪霊が取り憑いて動いているアンデッド系モンスターだ。肉体の生命維持がなされていないから経過で腐敗するし、きっと組織も粗いのだろう。
 Morguxのように生命力にあふれた勇猛な戦士は、こういったタイプの存在を嫌うのかもしれない。
「一緒に汗を流す青春って考えたら、いいんですけどね!」
 『天駆翔』秋嶋 渓(p3p002692)が表情豊かに背伸びをした。
「仲間で協力してバッタバッタする! 楽しいですし思い出に残ります! 残念なことは相手がグールなのでこう、匂いとかで変な思い出になっちゃいそうなのが残念ですね!」
「それもあったな」
 臭いのことも思い出して、Morguxがげんなりと目を細めた。
 嫌な思い出の共有。それもまた青春、なのかもしれない。

「しっかし、これ、どう考えても自然発生的なものじゃねぇだろ。確実に、何かがあるに違いねぇんだぜ」
 『カンガルーボクサー』ルー・カンガ(p3p005172)はナックルを装備しながら遠いグールの群れを眺めていた。
 ルーの所感は皆も少なからず抱いていたようで、『ノベルギャザラー』ジョゼ・マルドゥ(p3p000624)もどこか険しい顔をしていた。
「ここ風下? オイラもう鼻が潰れそうなんだけど……はー、ラサの砂の匂いが恋しいなー」
 口元を押さえ、愛用の剣を確かめるように握る。
「ところでこの国さー、なんでこんなゾンビやらグールやらが多いんだろなー」
「よその国は少ないの?」
 臭いで死にかけていた『超病弱少女』キュウビ・M・トモエ(p3p001434)が鼻を押さえて振り返った。
「オイラはあんま見なかったかな」
「見てないだけでどこにでもありそうな気がするわよ? でも、まあ、この規模は流石に……ね」
「根も葉もないのに、木だけがあるみたいだいわ」
 言わんとしてることを察したのか『レジーナ・カームバンクル』善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)が宙に指をさまよわせた。くるくると描いた円がそのまま魔方陣を形作り、魔術書が現われる。
「悪霊が死体にとりつく原理はわかるけど、これだけの数の死体と悪霊が同時に存在する理由ってなんなのかしら?」
 悪霊に関しては(グール1体につき1人分と決まってないため)古の大飢饉とかそんな所かもしれないが、肉体が白骨化していないところを見ると最近の死体の筈だ。ここまで大規模な死者が出れば大事件である。
「そういう話は……どうかしら、サーカスの狂気以降で村一つ消えるレベルの事件がないとも言い切れないわね」
 だとすれば、これはとんだ後始末ということになるのだろうか。

「それこそ元居た場所ではフィクションそのものだったけど……まさかこんなものと戦うことになるなんて思わなかったわ……」
 『無明一閃』長月・秋葉(p3p002112)は動きやすいように髪をまとめ直すと、腰に下げていた刀を試しに半分まで抜いた。
 勢いよく鞘に収め、ガチンと鳴らす。
「けど、別に全部倒せって言われてるわけでもないし。できる限りで頑張りましょう?」
「屍を貪る鬼の群れ。我等『物語』に登場する彼等とは違う個体だ。積極的に餌を求めるなど不愉快千万。此度の物語。我等『闇黒神話』直々に幕を成そう。肉壁なのは変化皆無だがな」
 話をふってみると、『Eraboonehotep』オラボナ=ヒールド=テゴス(p3p000569)がまるで笑うようにゆらゆらとしている。
 相変わらず変わった存在だ。夜空の黒さに意味を求めるようなもので、追求しても仕方ない。
 『終焉の騎士』ウォリア(p3p001789)が自らの胸を拳で叩く。
「亡者の類とは縁浅からぬオレだが、それでもこれ程に大規模な軍勢は久しぶりに見る」
 さてとばかりに斧をとり、ウォリアたちはグールの群れへと進んでいった。

●グール
 急いで駆け込む必要はない。
 グールたちはこちらの接近に気づくやいなや、声を上げて駆け寄ってくるのだ。
「屍を貪るならば死を奪え。我等『物語』が成すのは遊戯――兎角。此処に石碑を造らねば。黒色に塗れた先端を造らねば。材料は貴様等の血肉で好いな。久方振りに芸術活動の時間だ」
 オラボナはまるで祭りの始まりのごとく賑やかに『何か』をわかせ、食らいついてくるグールになすがままにされた。
 されたと述べると受け身のようだが、オラボナがただゆれているだけで外傷らしい外傷はなく、グールたちはありもしない『何か』を食らっているばかりだ。増えも減りもしない、不気味な状況がそこにはあった。
「好都合ね、そのまま……」
 キュウビは手のひらを翳すと聖なる光を解き放った。
 オラボナに組み付いているグールが光に晒された途端、苦しみもがいてまるで解けるように消えていった。と思ってみれば、解けたのは悪霊だけで肉体はその場にごろりと転がるのみ。
 言い方は月並みだが、『こうかはばつぐんだ!』である。
 外傷を与えずに倒したことで気がついたが、グールの顔が随分と整っているのが分かった。まるで美術彫刻のようだ。グールになったことで顔つきが歪んでおかしくなっていたらしい。もったいないことをするものだ……などと。
 一方。
 ロクスレイは地上すれすれを飛行しながら、グールとグールの間をすり抜けるように蛇行していく。大胆に掴みかかろうと空振りしたグールに身体ごと反転し、銃剣で毒性魔術弾を撃ち込んでいく。
 グールが高い場所を飛行する人間めがけて投石してくるのでその対策としての低空飛行だが、やってみるとなかなか格好がつくものだ。
 砕け散ったグールの血肉で靴を汚さずに済むのもいい。
「まあ投石つっても小石だし威力も大してねーが、高所で集中砲火となりゃあアレだしな」
「あー! オイラも飛べればなー!」
 ジョゼが掴みかかってくるグールを転がって回避し、すれ違いざまに脇腹へ剣を打ち込んだ。
 血を吹き出してよろめくグール。よろめくどころか半身が千切れて落ちたが、上半身だけで這いつくばってジョゼのすねへかじりつこうとした。
「はなせこのっ!」
 頭を蹴りつけ、今度こそ黙らせる。
 身体はもろくてよろよろしてるが、倒しても地味に(EXFで)粘るのが厄介だ。一人倒すのに地味に手間がかかる。
 この分だとかなり早い段階でガス欠を起こしそうだ。充填能力をアテにせねばなるまい。
 それは秋葉も同じだったようで、自主的な充填手段がない彼女は値を上げて物理で殴るシンプルな手を選択した。
「ほら、こっちよ」
 人差し指で手招きする秋葉。グールが二人ほど同時に襲いかかってきたが、秋葉は一人目の掴みかかりを回避して腕を斬り、その次を狙おうとしていた二人目に返す刀で首をはねた。
 首のないグールが掴みかかり、ありもしない口で噛みつこうと上半身を押しつけてくる。
「アンデット関係はこれだから……!」
 秋葉は相手を無理矢理振り払うと、蹴り飛ばして倒した。
 それでもまだ起き上がろうとするグールを豪快に踏みつぶすウォリア。
 目が燃えるように光り、側面から飛びかかるグールの顔面を掴んで持ち上げた。
「…………」
 何を語るでもなく、手にした斧でグールを切断。残った上半身を放り投げると、正面から走ってくるグールの足をローキックでへし折った。
「まずは、このあたりの少ないところからだな。一丁やるとするんだぜ」
 そこへ飛び込んだルーが格闘攻撃を仕掛けていった。
「まぁ、立ち上がったら、他の連中も攻撃してくるから起き上がるんじゃねぇよ」
 わらわらとやってくるグールに次々と格闘攻撃で対応していくルー。
 徐々にその数が増えたことから、予め設定された深度の第二段階に達したことを察した。
「このあたりは、わちゃわちゃしてやがるんだぜ。さすがに、奥に行くのは無理じゃねぇな」
 カンガルーそのものといったフォルムで、拳や蹴りを浴びせていくルー。
 しかしそれも危なくなってきた所で、Morguxが間に割り込んでいってルーを庇い始めた。
 『ウラ・フォルト』というグレートソードで身を固め、襲いかかるグールたちの攻撃をカウンターしていく。
 集中攻撃をしかけるグールによって直撃をくらうこともあったが、剛身術という内功術と持ち前の加護で回復し、その一方カウンターによるダメージでグールの体力をじわじわ削っていった。
「結構奥に来たが……うわ、何だコレ。予想してたよりずっと多いじゃねぇか。何か潰れてるグールも居るし……うん、まぁ、仕事だしやるか」
 腐ったグールの相手はやはり精神的にしんどいのだろう。Morguxはどこか顔をしかめつつ、血意変換で剛身術を使うための力を回復し始めた。
「そろそろ私の出番ですかね!」
 刺突剣でグールをばすばす倒していた渓が、ここぞとばかりにグールへ『名乗り口上』を仕掛け始めた。
 グールはどうやら回避が下手らしく、渓へおもしろいように群がってくる。
 よしきたとばかりに剣と盾を放り投げ、ファイティングポーズをとる渓。
 掴みかかろうとするグールをかわし、顔面に拳を。背後からくるグールには裏拳を。足に掴みかかるグールを踏みつぶし、掌底で両サイドから飛びかかるグールを吹き飛ばす。
 途中からMorguxが彼女を庇うように立ち回りはじめ、グールの群れを次々と迎撃していく。
「倒しきれない程の標的の依頼は初めてね。長期戦の良い経験になるのだわ」
 レジーナがそこへ低空飛行で割り込み、どこからともなく無数のナイフを召喚。右へ左へ次々に手を翳すことで発射し、グールをダーツターゲットのようにしていった。
 走り込み、跳躍して掴みかかろうとするグールを空中でひらりとかわし、呼び出したギロチンで切断するレジーナ。
「それにしても、きりがないわね」
 一体どれだけのグールがいるのだか……。

 グールの密度がどんどん上がっていく。
 誰もが取り囲まれ、追いかけられ、組み付かれるような状況だ。
 ウォリアも例外では無く、腕に足に頭にと無数のグールが組み付き、なにがそうさせるのかウォリアの鎧をひたすらに殴りつけていた。
 鎧というか、むしろ本体なのかもしれないが。
『天に輝く七の星を見よ……オマエに死を告げる赫赫たる虚ろの星こそが我……生まれる時を違えた者よ、地獄に堕ちる覚悟はできているな?』
 ウォリアは身体から炎を吹き出すと、グールを真っ黒な焼死体に変えていった。
『さぁ、我がオマエを此処で殺す……終焉の時は、来たれり』
 ルーはそんなウォリアに群がったグールを片っ端から倒すべく格闘攻撃を続けていく。
「今回の依頼の内容的にも、全部は無理ってのが分かるレベルだぜ、コレは」
 やがてルーもグールに取り囲まれるようになり、次々と食らいつくグールの攻撃をかわしきれなくなってきた。
「それにしても、深度3の奥に原因があるってのだけは、何となく分かるんだぜ。超自然的か、はたまた魔術的なものか、それとも、古代文明的なのか、原因がわからないと、結果論も謎でしか無いんだよな」
 と語ってはみるが、状況はかなり切迫している。
 オラボナがここぞとばかりにグールたちへ飛びかかり、ルーを食らいつくそうとするグールを自らの身体を使って引きはがし始めた。
「我等『物語』を扱うべき領域に這入れ」
 オラボナは自らの強度と再生速度を飛躍的に上昇させると、グールたちに自らの『何か』を食らわせ始めた。
 数が数である。仮に直撃してもダメージを半減できるオラボナでも、途中から直撃以上のダメージが入り始めるようになってきた。
 一つ一つは小さいが集まるとなかなかに恐ろしい。
 が、それを受けてもまるで焦る様子を見せないオラボナもまた、奇妙な不気味さがあった。
 それでもオラボナに集中しすぎていないのは、渓が一部を引き連れているからだ。
 名乗り口上を使える分のエネルギーを使い果たしてはいたが、拳も蹴りも健在である。元気よくグールを撃退しては、囲まれすぎないように逃れもする。
「爆撃するぜ、さがってな!」
 渓のすぐ頭上を風のように飛行するロクスレイ。
 その横を並ぶように飛ぶレジーナ。
「――『天鍵:緋璃宝劔天』」
 二人は空中で謎のブレーキをかけると、グールの群れめがけて身構えた。
 ロクスレイはガチガチにカスタマイズした銃剣を、レジーナはどこかから召喚した大量のマスケット銃をそれぞれグールの群れへ向ける。
「まとめて朽ちとけ!」
 一斉射撃。
 中央のグールがたちまち蜂の巣になり、爆発して広がった呪いの霧がグールを死滅させていく。
 倒れたグールの群れを踏み越えて、奥のグールたちが大挙して押し寄せてきた。
 もはやここは深度三の段階。グールのバーゲンセールだ。勿論お目当てはこちらの肉だ。
 口元を袖で覆うキュウビ。
「うっ……」
 自分に向かって大量の人間が押し寄せるというのは結構なプレッシャーで、尚且つそれがお肉目当てだと知っていると尚のことヤバい。なんかストレスと圧で死にそうだ。
「回復するから持ちこたえてて」
「やっぱり俺か。仕方ねえな」
 Morguxが『真っ二つにしてやるよ』とばかりに剣の横一文字斬りでグールたちを薙ぎ払うと、キュウビを庇うように立ちはだかった。
 キュウビはそんな彼の体力が尽きないように必死に治癒魔術を唱え続ける。彼の体力が尽きたら襲われるのは自分だ。キュウビはMorguxほど頑丈じゃないし、取り囲まれたらそれはもう酷いことになるだろう。
「て、手伝って!」
「言われなくともー!」
 ジョゼが『ダチコー特製!』とか言いながら回復魔術を施していく。
 Morguxの再生能力と二人がかりの回復でしばらくは持ちこたえられそうだ。
 永遠にとは言えないくらい数がいるのがつらいところである。
「そろそろ潮時ね」
 秋葉はグールを蹴りつけると、撤退するように周りに呼びかけた。
「遠くに馬車を出させてる! 乗り遅れるなよー!」
 ジョゼが先導して走り出し、秋葉はしんがりを勤める形で列に加わった。
 回復担当とそれを庇う担当が列の中程を占め、あまりの猛攻に耐えきれず倒れた仲間をロスクレイたちが担いで馬車へ走るといった状態だ。
 逃がすまいと全力ダッシュで追いついてくるグールたち。
 秋葉は『早く』と仲間をせき立てつつ、後ろから追いつくグールに振り返った。
 跳躍して首筋めがけて口を開くグール。振り向きざまの回転斬りで迎撃し、同じく飛び込んできた別のグールにぶつけて転倒させる。
 仲間たちが馬車の座席へ飛び込むように駆け込んでいく。
 既に馬は走り出し、加速を始めていた。
 秋葉の足に掴みかかるグール。
 馬車から手を伸ばされたジョゼの手を掴み、地面を盛大に引きずられるグールを蹴落とした。

 馬車の速度に追いつけないと思ったのか、グールたちは立ち止まってこちらを見ている。
 遠ざかる群れを見ながら、イレギュラーズたちは深く息をついた。
 いずれ、この原因を突き止め、根本を叩かねばならないだろう。少なくとも何者かが、その依頼をよこしてくる筈だ。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete!
 ――See you next mission!

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